説明

形状評価方法

【課題】光制御板に形成された凹凸形状を簡易に評価することが可能な形状評価方法を提供する。
【解決手段】凹凸形状13が形成された第1の面11と当該第1の面11と反対側に位置する第2の面12とを有し、凹凸形状13が第1の方向11に延在しているサンプル光制御板1の凹凸形状13を評価する形状評価方法は、第1の面11から光を入射した場合の第1の全光線透過率Tt1及び第2の面12から光を入射した場合の第2の全光線透過率Tt2の少なくとも一方を用いて規定される指標を凹凸形状13を表す指標とし、サンプル光制御板1に対して、第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2の少なくとも一方を測定して上記指標を取得する取得工程と、凹凸形状が既知の基準光制御板に対して予め取得した指標と凹凸形状との相関関係に基づき、取得工程で取得した上記指標から、サンプル光制御板1の凹凸形状13を評価する評価工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状評価方法に関し、詳しくは、光制御板の表面に形成された凹凸形状を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入射する光を均一に出射させるための光学部品として光拡散板といった光制御板がある。光制御板としては、近年、表面に微細な凹凸を形成し、出射光の均一化を図ったものが知られている。このような光制御板においては、当該凹凸の形状によって出射性能が変化する。このため、形成された凹凸形状が所望の凹凸形状となっているか否かの検査が行われている。
【0003】
凹凸形状の検査のための凹凸形状を評価する方法として、特許文献1(特開2007−270132号公報)には、水平力顕微鏡を用いて光学シートに形成された凹凸形状を評価する方法が記載されている。また、特許文献2(特開平10−119096号公報)には、レーザ顕微鏡によって金型及び成形品の2次元平面像と3次元立体像とをそれぞれ取得し、これらの像から金型側の凹部の容積と成形品の凸部の容積とを算出し、凹凸形状を評価する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−270132号公報
【特許文献2】特開平10−119096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に開示された方法では、光制御板に形成された凹凸形状を顕微鏡で観察するために、凹凸形状の評価の対象となる光制御板の試験断面片を用意する必要がある。また、光制御板は透明部材であることが多いので、当該形状を顕微鏡で明確に把握するために着色をする等の工夫が必要であり手間を要する。
【0006】
本発明は、光制御板に形成された凹凸形状を簡易に評価することが可能な形状評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る形状評価方法は、凹凸形状が形成された第1の面と、当該第1の面と反対側に位置する第2の面とを有しており、凹凸形状を構成する凹部又は凸部が第1の方向に延在しているサンプル光制御板の凹凸形状を評価する形状評価方法であって、以下の取得工程及び評価工程を有する。
取得工程:第1の面から光を入射した場合の第1の全光線透過率及び第2の面から光を入射した場合の第2の全光線透過率の少なくとも一方を用いて規定される指標を凹凸形状を表す指標とし、サンプル光制御板に対して、第1及び第2の全光線透過率の少なくとも一方を測定して前記指標を取得する工程。
評価工程:凹凸形状が既知の基準光制御板に対して予め取得した指標と凹凸形状との相関関係に基づき、取得工程で取得した指標から、サンプル光制御板の凹凸形状を評価する工程。
【0008】
この形状評価方法では、顕微鏡等で観察することにより凹凸形状を評価するのではなく、第1及び第2の全光線透過率の少なくとも一方を測定することにより上記指標を取得し、光制御板の凹凸形状を評価している。これにより、光制御板の凹凸形状を評価するために、顕微鏡等で観察するための試験断面片を用意する必要がなくなる。また、上記指標を規定する第1及び第2の全光線透過率は、例えば透過率計等を用いて容易に測定することができる。この結果、光制御板に形成された凹凸形状を簡易に評価することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る形状評価方法では、第1の全光線透過率の測定の際に第1の面に入射する光は、第1の方向と直交する方向に延びるスリットを通過した光であり、第2の全光線透過率の測定の際に第2の面に入射する光は、第1の方向と一致する方向に延びるスリットを通過した光とすることができる。
【0010】
この形状評価方法では、第1の全光線透過率では、光制御板の構成材料等による影響が大きく、凹凸形状による影響が小さくなる傾向があり、第2の全光線透過率では、光制御板の構成材料等及び凹凸形状の両方に影響を受けやすいという傾向がある。ここでは、これらの第1及び第2の全光線透過率の少なくとも一方を用いて上記指標を規定している。これにより、例えば光制御板の構成材料等に応じて、適宜上記指標を規定することができるようになり、より正確に光制御板の凹凸形状を評価することが可能となる。
【0011】
上記の指標は、第1の全光線透過率と第2の全光線透過率との差であってもよいし、第2の全光線透過率であってもよい。
【0012】
上記指標を、第1の全光線透過率と第2の全光線透過率との差とした場合には、凹凸形状によって影響を受けた度合いを抽出することができるので、より正確に光制御板の凹凸形状を評価することができる。また、上記指標を、第2の全光線透過率とした場合には、より簡易に光制御板の凹凸形状を評価することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光制御板に形成された凹凸形状を簡易に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る形状評価方法によって測定される光拡散板の斜視図である。
【図2】樹脂シートを製造する製造装置の概略構成図及びB部を拡大して樹脂シートの層構造を模式的に示した拡大図である。
【図3】下ロールとして装着される形状ロールの要部拡大断面図である。
【図4】本実施形態に係る形状評価方法を示すフローチャートである。
【図5】全光線透過率の取得方法を説明するための模式図である。
【図6】第1の全光線透過率の取得方法を説明するための模式図である。
【図7】第2の全光線透過率の取得方法を説明するための模式図である。
【図8】本実施例に係る下ロールとして装着される形状ロールの要部拡大断面図である。
【図9】本実施例に係る形状評価方法により取得された凸部の高さ及び断面観察法により取得された凸部の高さを示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明に係る形状評価方法の実施形態について説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0016】
〔光拡散板〕
最初に、本実施形態に係る形状評価方法によって評価される凹凸形状が形成された光拡散板1について、図1を参照しながら説明する。図1に示すように、光拡散板1は、第1の面11と第2の面12とを有する。第2の面12は、第1の面11と反対側に位置する面である。第1の面11から入射した光は、第2の面12から出射可能である。
【0017】
第1の面11には、凸部13が形成されている。この凸部13は、第1の方向X11に延在すると共に、第1の方向X11と直交する第2の方向X12に並列して複数形成されている。従って、第1の面11には、複数の凸部13により凹凸形状が形成されていることになる。凸部13は、第1の方向X11に直交する断面が半円弧形状に形成されており、その高さHは、例えば5μm〜500μmに形成されている。なお、凸部13の断面形状は、図1に示すような半円弧形状のものだけでなく、例えば円柱体をその軸線を含まない平面で切ったうちのいずれか一方の部材に相当する形状(シリンドリカルレンズ形状)であってもよい。また、凸部13の断面形状としては、半楕円弧形状、扁平な湾曲線形状等であってもよい。第2の面12は、通常、平坦面であり、光拡散性を有しない平滑面とすることもできる。ただし、第2の面12は、全面に亙って光拡散性を有する面とすることもできる。このような光拡散板は、例えば液晶テレビといった透過型画像表示装置において好適に用いられ、具体的には、複数の光源上に配置され、光源からの入射光を均一化して、輝度均斉度の高い面状の光の生成に用いられる。
【0018】
〔光拡散板の製造方法〕
次に、光拡散板1の製造方法について図2及び図3を参照しながら説明する。図2(A)は、光拡散板となるべき樹脂シートを製造する製造装置の概略構成図である。図2(B)は、B部を拡大して樹脂シートの層構造を模式的に示した拡大図である。図3は、下ロールとして装着される形状ロールの要部拡大断面図である。
【0019】
光拡散板1は、図2(A)に示すような樹脂シート製造装置3によって製造される。樹脂シート製造装置3は、基層(中間層)16(図2(B)参照)の透光性樹脂を加熱溶融するための第1押出機31と、表層15(図2(B)参照)の透光性樹脂を加熱溶融するための第2押出機32と、第1及び第2押出機31,32で溶融された樹脂が供給されるフィードブロック33と、フィードブロック33内の樹脂をシート状態で押し出すためのダイ34と、ダイ34から押し出されたシート状樹脂を成形するための3つの押圧ロール35〜37とを備えている。
【0020】
第1及び第2押出機31,32としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機など、公知の押出成形機を用いることができる。第1及び第2押出機31,32には、押出機のシリンダ内に樹脂を投入するためのホッパ38,39が取り付けられている。
【0021】
フィードブロック33としては、2種以上の樹脂をダイ34に供給し、積層した状態で共押出しできる型式であれば特に制限されず、例えば2種2層分配型など、公知のフィードブロックを用いることができる。
【0022】
ダイ34としては、共押出し用のダイであれば特に制限されず、例えばマルチマニホールドダイなど、公知のダイを用いることができる。
【0023】
3つの押圧ロール35〜37は、それぞれ円柱状の金属製(例えば、ステンレス鋼製、鉄鋼製など)ロールからなり、全ての回転軸が平行な状態で上下方向に連続して配置されている。本明細書では、図2(A)に示す3つの押圧ロール35〜37を、上から順に上ロール35、中間ロール36及び下ロール37と称す。なお、3つの押圧ロール35〜37は、水平方向に連続して配置されていてもよい。隣り合う押圧ロールの間には、樹脂を所定の厚さで通過させるための微小な隙間が形成されている。また、各押圧ロール35〜37の直径は、例えば100mm〜500mmである。
【0024】
上ロール35の周面及び中間ロール36の周面は、例えば鏡面加工が施されることにより平滑面とされている。下ロール37の周面には、図3に示すように、半円弧形状の凸部13とは反対型の複数の凹溝52が、下ロール37の周方向に沿って筋状に形成されている。すなわち、凹溝52は、その長手方向(周方向)に直交する切断面が略半円弧形状の輪郭を有している。凹溝52の深さDは、凸部13の高さHよりもやや大きく形成してもよい。
【0025】
次に、上記製造装置を用いた光拡散板1の製造方法について、図2(A)、図2(B)及び図3を参照しながら説明する。まず、第1押出機31のホッパ38に基層16となる透光性樹脂が投入され、溶融混練された後、フィードブロック33に供給される。一方、第2押出機32のホッパ39に表層15となる透光性樹脂が投入され、溶融混練された後、フィードブロック33に供給される。
【0026】
次に、フィードブロック33内の樹脂が、ダイ34から共押出しされる。これにより、基層16及び当該基層16を挟む表層15から形成される3層の樹脂シート2(図2(B)参照)が連続的に押し出される。
【0027】
次に、ダイ34から押し出された連続樹脂シートとしての樹脂シート2は、図2(A)に示すように、上ロール35と中間ロール36とで挟み込まれて押圧された後、中間ロール36の周面に密着して搬送され、その際に冷却される。
【0028】
その後、樹脂シート2は、中間ロール36と下ロール37とで挟み込まれて押圧される。そして、中間ロール36と下ロール37との押圧の際、樹脂シート2の一方の面2aには、下ロール37の周面に形成された凹溝52が転写される。これにより、樹脂シート2には、シートの流れ方向に平行な複数の筋状の凸部13が形成される。
【0029】
以上の工程を経て樹脂シート2が製造され、この後、樹脂シート2がさらに冷却された後、適当な大きさで切断されることにより、上記光拡散板1が得られる。このように製造された光拡散板1は3層構造のものである。なお、図1では、これらの層を明示せずに模式的に示している。
【0030】
光拡散板1は透光性材料からなる。透光性材料の屈折率は通常1.46〜1.62である。透光性材料としては、透光性樹脂材料、透光性ガラス材料が例示でき、透光性樹脂材料としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)(屈折率1.49)、シクロオレフィン樹脂(屈折率1.51〜1.55)、ポリカーボネート樹脂(屈折率:1.59)、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂)(屈折率:1.56〜1.59)、ポリスチレン樹脂(屈折率:1.59)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)(屈折率:1.56〜1.59)などが例示され、コストの面および吸湿率が低い点で、好ましくはポリスチレン樹脂である。
【0031】
〔凸部の高さの評価方法〕
次に、上記光拡散板1に形成された凸部13の形状を評価する方法(形状評価方法)について、図4〜図7を参照しながら説明する。本実施形態おいては、凹凸形状として凸部13の高さHに着目し、当該高さHを求めることにより、この凹凸形状を評価する。図4は、実施形態に係る形状評価方法を示すフローチャートである。
【0032】
本実施形態の光拡散板の形状評価方法は、光拡散板1の断面を顕微鏡で観察することによって凹凸の形状を評価する従来の形状評価方法とは異なり、後述する条件で凹凸形状の評価対象であるサンプル光拡散板(サンプル光制御板)の第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2を測定することによって凹凸形状を評価している点に特徴を有している。
【0033】
本実施形態の光拡散板の形状評価方法では、図4に示すように、まず、複数の基準光拡散板(基準光制御板)に基づいて、第1の全光線透過率Tt1と第2の全光線透過率Tt2との差によって規定される指標と、基準光拡散板における凸部の高さとの相関関係を求める(S1:準備工程)。基準光拡散板とは、既知の凹凸形状を有する光拡散板である。
【0034】
ここで、上記指標を規定する第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2について、図5〜図7を用いて説明する。なお、説明の便宜のため、サンプル光拡散板及び基準光拡散板も光拡散板1として示している。
【0035】
第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2としての全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年)に準拠して測定されるものである。すなわち、図5に模式的に示すように、光源61と光拡散板1との間にスリット62を設け、光源61から出力されスリット62を通った光を光拡散板1に照射し、積分球63で受光した当該透過光に基づいて測定されたものである。ただし、第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2は、スリット62と光拡散板1との配置関係において、下記に示すように互いに異なる。
【0036】
第1の全光線透過率Tt1は、図6に示すように、スリット62の開放部の長辺方向X22と、凸部13の延在方向X11とを互いに直交させると共に、凸部13が形成された第1の面11を光源61に向けて光拡散板1を配置することによって測定した値である。
【0037】
第2の全光線透過率Tt2は、図7に示すように、スリット62の開放部の長辺方向X21と、凸部13の延在方向X11とを互いに一致させると共に、凸部13が形成されていない第2の面12を光源61に向けて光拡散板1を配置することによって測定した値である。
【0038】
準備工程S1における上記相関関係は、例えば複数の基準光拡散板の第1の全光線透過率Tt1と第2の全光線透過率Tt2との差により規定される指標と、基準光拡散板の凸部の高さとに基づいて、最小二乗法を用いて求めることができる。基準光拡散板の凸部の高さは、例えば顕微鏡等を使用した断面観察法によって取得しておけばよい。
【0039】
図4に戻り、次に、サンプル光拡散板の第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2を測定して上記指標を取得する(S2:取得工程)。サンプル光拡散板とは、凹凸形状の評価対象となる光拡散板である。サンプル光拡散板としての光拡散板1(以下、サンプル光拡散板1と示す)の第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2は、上述したようにJIS K7361−1(1997年)に準拠して、透過率計を用いて測定される。なお、第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2についての詳細は、上述したとおりである。
【0040】
次に、準備工程S1において基準光拡散板に基づいて予め取得した相関関係に基づき、取得工程S2で取得した上記指標から、サンプル光拡散板1の凸部13の高さHを求めることにより凹凸形状を評価する(S3:評価工程)。具体的には、準備工程S1において予め相関関係として取得した関係式に、取得工程S2において第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2の測定値から取得された上記指標を代入し、サンプル光拡散板1の凸部13の高さHを求めることにより凹凸形状を評価する。
【0041】
以上に説明したように、本実施形態の形状評価方法によれば、顕微鏡等で観察することにより凸部13の高さHを求めて凹凸形状を評価するのではなく、第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2を測定することにより凸部13の高さHを求めて凹凸形状を評価している。これにより、サンプル光拡散板1の凹凸形状を評価するために、顕微鏡等で観察するための試験断面片を用意する必要がなくなる。また、上記指標を取得するための第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2は、透過率計等を用いて容易に測定することができる。この結果、サンプル光拡散板1に形成された凹凸形状を簡易に評価することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の形状評価方法によれば、指標は、第1の全光線透過率Tt1と第2の全光線透過率Tt2との差を用いて規定しているので、凹凸形状の高さ、すなわち凹凸形状を構成する凸部13の高さHをより正確に評価できる。この点について以下に説明する。
【0043】
すなわち、本発明者らは、凸部が形成された光拡散板の全光線透過率を測定方法について検討した結果、
(1)図6に示すような配置関係で取得した第1の全光線透過率Tt1では、光拡散板の凸部の高さの影響よりも、その他の要因、例えば光拡散板に添加される拡散剤の濃度等による影響の方が大きい傾向があること、
(2)図7に示すような配置関係で取得した第2の全光線透過率Tt2では、光拡散板に添加される拡散剤の濃度の影響も受けるが、光拡散板の凸部の高さの影響の方がより大きい傾向があること、
を見出した。
【0044】
そこで、本実施形態では、上記傾向(1)及び(2)を用いて、例えば光拡散板1に添加される拡散剤の濃度等のその他の要因と、光拡散板に形成された凸部の高さとの要因とを切り分けている。すなわち、第1の全光線透過率Tt1と第2の全光線透過率Tt2との差により規定される指標を用いることにより、凸部13の高さHによって影響を受けた度合いを明確に抽出することができるので、より正確に光拡散板1の凸部13の高さH、すなわち凹凸形状を評価することができる。
【0045】
〔実施例〕
以下、本実施形態における形状評価方法の実施例について、主に図8及び図9を参照しながら説明する。図8(A)及び図8(B)は、本実施例に係る下ロールとして装着される形状ロールの要部拡大断面図である。図9は本実施例に係る形状評価方法により取得された凸部の高さ及び断面観察法により取得された凸部の高さを示した図表である。
【0046】
<樹脂シートの原料>
本実施例では、樹脂シートの原料として、以下に示す2種類の透光性樹脂A,Bを用意した。
(1)透光性樹脂A
スチレン樹脂(東洋スチレン製「HRM40」、屈折率1.59)
(2)透光性樹脂B
MS樹脂(新日鐵化学製「MS200NT」、屈折率1.57、スチレン/メタクリル酸メチル=80質量部/20質量部)
【0047】
<樹脂シートの製造装置の構成>
本実施例では、図2に示すような樹脂シート製造装置3と同様の構成を有する装置を用いた。その際、下ロール37として装着される2種類の形状ロール51A,51Bを用意した。
(1)形状ロール51A
形状ロール51Aの周面には、図8(A)に示すように、周方向に一周する断面半円弧形状の複数の凹溝52Aが、互いに平行に筋状に形成されている。隣り合う凹溝52AのピッチPは300μmであり、凹溝52Aの深さDは210μmである。
(2)形状ロール51B
形状ロール51Bの周面には、図8(B)に示すように、周方向に一周する断面半円弧形状の複数の凹溝52Bが、互いに平行に筋状に形成されている。隣り合う凹溝52BのピッチPは250μmであり、凹溝52Bの深さDは110μmである。
【0048】
<樹脂シートの製造>
樹脂シート製造装置3における下ロール37として形状ロール51Aを装着した。次いで、上記透光性樹脂Aを、シリンダ内の温度が190〜250℃の第1押出機31で溶融混練した後フィードブロック33に供給した。また、上記透光性樹脂Bを、シリンダ内の温度が190〜250℃の第2押出機で溶融混練した後、フィードブロック33に供給した。
【0049】
次いで、第1押出機31からフィードブロック33に供給された樹脂が基層16となり、第2押出機32からフィードブロック33に供給された樹脂が表層15となるように、フィードブロック33内の樹脂を、押出樹脂温度250℃でダイ34により共押出成形をした。そして、共押出成形された樹脂シート2を、上ロール35、中間ロール36及び形状ロール51Aで押圧・冷却した。このようにして、厚さ2.0mmの3層(中間層1.9mm、表層0.05mm×2)から構成される樹脂シート2を製造した。この後、樹脂シート2をさらに冷却し、適当な大きさで切断して光拡散板を作製した。
【0050】
樹脂シートの作製過程では、ダイ34から共押出しされた樹脂は、形状ロール51Aと中間ロール36とで挟み込まれて押圧される際、樹脂シート2の一方の面2aは、形状ロール51Aの周面に形成された凹溝52Aが転写され、微細な凸部13が形成される。この際、形状ロール51Aの表面温度を変化させることで、転写率をそれぞれ調整した光拡散板101〜103を作製した。
【0051】
次いで、樹脂シート製造装置3における下ロール37として形状ロール51Bを装着し、上記と同様の方法により、光拡散板104〜107を作製した。
【0052】
<全光線透過率の測定>
上述の方法により作製された、光拡散板101〜107のそれぞれについての第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2を、透過率計(村上色彩技術研究所製「HM−150」)を用いて、JIS K7361−1(1997年)に準拠して測定した。なお、測定時には、図5に示すスリット62と被測定物となる光拡散板101〜107における光源61側の面までの距離を13.1mm、被測定物となる光拡散板101〜107における積分球63側の面と積分球63までの距離を1.0mmとした。積分球63は、その直径が150mm、その入口開口が20mmΦのものを使用し、その内面にはBaSoを塗布した。また、光源61としては、ダイクロイックミラー付ハロゲンランプ(12V50W)を採用し、その光束が14mmΦのものを使用した。
【0053】
また、図6に示すように、スリット62の開放部の長辺方向X22と、凸部13の延在方向X11とを互いに直交させると共に、凸部13が形成された第1の面11を光源61に向けてサンプル光拡散板としての光拡散板101〜107を配置することによって、第1の全光線透過率Tt1を測定した。また、図7に示すように、スリット62の開放部の長辺方向X21と、凸部13の延在方向X11とを互いに一致させると共に、凸部13が形成されていない第2の面12を光源61に向けてサンプル光拡散板としての光拡散板101〜107を配置することによって、第2の全光線透過率Tt2を測定した。測定された光拡散板101〜107の第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2は、図9に示すとおりである。
【0054】
<光拡散板の形状の評価>
上述した方法で測定された第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2を、予め求めた下記式(1)に代入して、凸部13の高さHを求めた。下記式(1)は、複数の基準光拡散板に基づいて、Tt1とTt2との差と凸部13の高さHの測定値とに基づいて、最小二乗法を用いて求めた。下記式(1)においては、各転写率での透過率測定値の平均が、断面測定の値の平均と比較して、5μm以内に収まるように関係式を規定した。
【0055】
H={K1×(Tt2−Tt1+80)+{K2×(Tt2−Tt1+80)}+K3・・・(1)
K1:0.068
K2:−13.8
K3:687
Tt1:75%≦Tt1≦90%
この結果、求められた光拡散板101〜107の凸部13の高さHは、図9に示すとおりである。そして、求められたこれらの凸部13の高さHに基づいて、サンプル光拡散板1としての光拡散板101〜107の凹凸形状を評価する。
【0056】
なお、上記式(1)における定数K1は、0.068±0.0005の範囲で設定することができる。定数K2は、−13.8±0.08の範囲で設定することができる。定数K3は、687±0.5の範囲で設定することができる。また、上記式(1)は、最小二乗法を用いて求めた例を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0057】
<評価の検証>
このようにして求められた凸部13の高さHと、断面観察法による形状高さhとの整合性を検討するため、光拡散板101〜107について顕微鏡を用いた断面観察法により凸部13のピッチp及び高さhを測定した。この断面観察法により測定された光拡散板101〜107のピッチp及び高さhは、図9に示すとおりである。
【0058】
例えば断面観察法による形状ピッチpの測定値が300μm、形状高さhの測定値が190.7mm光拡散板101については、第1の全光線透過率Tt1が81.6%、第2の全光線透過率Tt1が48.1%であった。そして、この第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2を上記関係式(1)に代入して凸部13の高さHを求めると、その値は180.5となった。なお、他の光拡散板102〜107については図9に示す図表のとおりであり、ここでの説明は省略する。図9に示すように光拡散板101〜107について、本実施形態の形状評価方法により求められる凸部13の高さHは、断面観察法によって測定される凸部13の高さhとほぼ一致することが確認できた。これにより、本実施形態の形状評価方法により求められる高さHと断面観察法によって測定される高さhとの間には整合性があり、凹凸形状を適切に評価できることが確認できた。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
上記実施形態においては、第1の全光線透過率Tt1と第2の全光線透過率Tt2との差を指標とする例を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。指標は、第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2の少なくとも一方を用いて規定すればよく、指標を、第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2の一方を用いて規定する場合には、より簡易に光拡散板1の凸部13の高さHを求めて、凹凸形状の評価をすることが可能である。なお、より正確に測定する観点から、第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2の一方を用いて規定する指標を使用する場合、光拡散板1に添加されている拡散剤の濃度が既知であり、当該濃度が低い場合(拡散剤の屈折率にもよるが、例えば3%以下、より好ましくは1%以下の場合)であることが好ましい。凹凸形状の影響が全光線透過率により反映されやすいからである。更に、第1及び第2の全光線透過率Tt1,Tt2の一方を指標として用いる場合には、第2の全光線透過率Tt2を指標とすることがより好ましい。第2の全光線透過率の測定では、出射側に凹凸形状が配置されているので、全光線透過率に凹凸形状の影響が反映されやすいからである。
【0061】
上記実施形態では、第1の全光線透過率は、図6に示すような配置関係で取得した例を挙げて説明したがこれに限定されるものではない。例えば、図6に示す光拡散板1を、凸部13の延在方向X11がスリット62の長辺方向X22と一致するように配置して、第1の全光線透過率を測定してもよい。また、第2の全光線透過率についても同様であり、図7に示す光拡散板1を、凸部13の延在方向X11がスリット62の長辺方向X21と直交するように配置して、第2の全光線透過率を測定してもよい。この場合、光拡散板1の構成材料等の特性に応じて、適宜、上記指標を規定し、当該指標と凸部の高さとの相関関係を予め求めておけばよい。そうすれば、このような第1及び第2の全光線透過率の測定結果を用いる場合でも、上記実施形態と同様に、凸部13の高さHを求めることができる。
【0062】
また、上記実施例においては、樹脂シートの原料として、スチレン樹脂と、MS樹脂とを併用して使用する例に挙げて説明したがこれに限定されるものではなく、公知の透光性樹脂を用いることができる。透光性樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、環状オレフィン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)などが挙げられる。また、上記透光性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、図2(B)に示すように、光拡散板1が3層により構成される例を挙げて説明したがこれに限定されるものではなく、1層、2層、または4層以上の層により構成される光拡散板であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、複数の凸部13によって凹凸形状が形成された光拡散板1を例に挙げて説明したが、複数の凹部が形成されることによって凹凸形状が形成されていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、光制御板を光拡散板1として説明したが、これに限定されるものではなく、複数の光源から出力された光の、複数の光源が配置される平面に平行な平面内での輝度の均一性を調整する光部品であればよい。例えば、光制御板は、光拡散剤を含有しておらず透明材料からなる板の光の入射側に上述した凹凸形状を有する輝度調整板であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、凹凸形状を評価するために凸部13の高さHを求める例を挙げて説明した。すなわち、例えばピッチ等は、ほぼ型どおりに転写されているとした。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、凹凸形状を構成する並列配置された凸部のアスペクト比等を求めることにより凹凸形状を評価することができる。この場合、アスペクト比に対して相関関係を取得しておけばよい。
【符号の説明】
【0067】
1…光拡散板(光制御板)、2…樹脂シート、3…樹脂シート製造装置、11…第1の面、12…第2の面、13…凸部、15…表層、16…基層、31…第1押出機、32…第2押出機、33…フィードブロック、34…ダイ、35…上ロール、36…中間ロール、37…下ロール、38,39…ホッパ、51A,51B…形状ロール、52,52A,52B…凹溝、61…光源、62…スリット、63…積分球、101〜107…光拡散板(光制御板)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状が形成された第1の面と、当該第1の面と反対側に位置する第2の面とを有しており、前記凹凸形状を構成する凹部又は凸部が第1の方向に延在しているサンプル光制御板の前記凹凸形状を評価する形状評価方法であって、以下の取得工程及び評価工程を有する形状評価方法。
取得工程:前記第1の面から光を入射した場合の第1の全光線透過率及び前記第2の面から光を入射した場合の第2の全光線透過率の少なくとも一方を用いて規定される指標を前記凹凸形状を表す指標とし、前記サンプル光制御板に対して、前記第1及び前記第2の全光線透過率の少なくとも一方を測定して前記指標を取得する工程。
評価工程:凹凸形状が既知の基準光制御板に対して予め取得した前記指標と前記凹凸形状との相関関係に基づき、前記取得工程で取得した前記指標から、前記サンプル光制御板の前記凹凸形状を評価する工程。
【請求項2】
前記第1の全光線透過率の測定の際に前記第1の面に入射する前記光は、前記第1の方向と直交する方向に延びるスリットを通過した光であり、
前記第2の全光線透過率の測定の際に前記第2の面に入射する前記光は、前記第1の方向と一致する方向に延びるスリットを通過した光である、
請求項1に記載の形状評価方法。
【請求項3】
前記指標は、前記第1の全光線透過率と前記第2の全光線透過率との差である、
請求項2に記載の形状評価方法。
【請求項4】
前記指標は、前記第2の全光線透過率である、
請求項2に記載の形状評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−37484(P2012−37484A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180471(P2010−180471)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】