説明

微細中空体の製造方法および微細複合部品の製造方法

【課題】精度良くかつ容易に隔壁を形成する微細中空体の製造方法及び隔壁と透光性樹脂の位置精度を高度に確保した高効率で生産性の優れた微細複合部品の製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に担持された硬化性樹脂薄膜層を、凹部を有する第1成形型の表面に密着させ凹部に気体を封じ込めて覆う工程(II-1)と;減圧下に前記気体のガス圧力により、薄膜層を膨張延伸させて複数の隔壁を形成し硬化する工程(II-2)の後;以下の工程:成形型上の隔壁を保持し、微細中空部に硬化性透光樹脂を充填(隔壁高さより低位置)する工程(II-3)と;(II-3)で形成された隔壁上面に、再び、前記(II-1)と同様に薄膜層を密着させ気体を封じ込めて覆う工程(II-4)と;減圧下に前記(II-2)と同様にして薄膜層を膨張延伸させて複数の隔壁を形成し硬化する工程(II-5)と、を複数回繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に適用可能な複数の微細な部材で構成される高精度なプラスチック成形技術、特に内側に微細中空部を有する隔壁が複数連結配置されてなる微細中空体に硬化性透光樹脂が充填された微細複合部品(複写機、ファクシミリ、固体走査型プリンタ等の光走査系に用いられるプラスチックレンズやレンズ付き光伝送の導波路等およびデジタルカメラ等の受光素子レンズに応用できる部品)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形技術を用いて複数の微細な部材で構成される微小レンズアレイや微細光ファイバーアレイなどの光学部品を高精度に成形する技術開発が活発に行われている。
例えば、図1の模式図に示すような連結した複数の遮光部を有する微細中空体の中空部がレンズ部とされた微細複合部品(微小レンズアレイ)を、型を用いて射出成形により成形する場合、課題として、(イ)薄厚の遮光部(遮光隔壁)の形成、(ロ)レンズ部と遮光部(遮光隔壁)を複合化したときの位置・寸法精度の確保、が挙げられる。
【0003】
遮光部の形成方法に関しては、例えば、特許文献1に記載のように、レンズを並べた後に遮光材を注入する方法が知られている。しかし、この方法では、レンズを所定箇所に規則的に整列する操作の煩雑性と、配列に時間を要するなど生産性に問題がある。
また、型を用いて遮光部を形成した後にレンズを形成する方法が考えられるが、遮光部を硬化させた後、離型する時に遮光部が破損してしまう問題があった。また、図1に示すような20μmオーダの寸法で形成する場合、通常の射出成形では樹脂の粘度が高すぎて充填しないため加工不能な領域である。
また、特許文献2には、押し出し成形による光学部品の製造方法が提案されており、遮光部の孔にレンズを注入しプレスすることでレンズアレイを形成することを試みている。しかし、遮光部の寸法精度に高精度が要求され、またその位置合わせにも高精度が要求される。
これらを解決する方法として、特許文献3に記載のように、温度制御によって寸法管理をする手法が提案されている。これにより、高精度な複合精密成形品の製造を達成している。しかし、この手法では装置が高価であったり、成形サイクルが長くなったりしてコストアップになる難点があった。
また、これら問題点を解決する方法として、特許文献4が提案されている。特許文献4は、遮光部に透明シートを押しつけてシート材料の塑性変形でレンズ部を形成する方法である。この方法によれば、レンズと遮光部の位置ずれを解消するには有効であるが、レンズの型が無いためにレンズ形状は自由に制御できない欠点がある。
さらに、特許文献5では、マイクロレンズを形成した後、レンズの裏側に粘着性を有する紫外線硬化樹脂層を配置し、レンズを通して紫外線を照射集光させることで、遮光パターンを形成する方法が提案されている。特許文献5に記載の方法もレンズと遮光部の位置ずれ解消に有効であるが、レンズ形状によって遮光寸法や形状が制約されてしまう欠点があった。特に、集光に沿って硬化するためテーパー状の遮光パターンとなってしまう。
【0004】
一方、本出願人は先に、所定の条件で塑性変形機能を有する第1素材を、凹部を配した第1基板上に覆い、凹部空間のガス圧により中空体を形成してハニカム構造体とし、これに第2素材を注入して微細複合部材とする手法を提案した(特許文献6参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平1−107202号公報
【特許文献2】特開2004−341474号公報
【特許文献3】特開2003−80543号公報
【特許文献4】特許第3521469号明細書
【特許文献5】特開2004−45586号公報
【特許文献6】特開2007−98930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特開2007−98930号公報に記載の方法では、第1基板(レンズ型)とハニカム構造(遮光部)とを離すこと無く中空体に第2素材(レンズ材)を注入して微細複合部材(レンズ部)を形成する工程が1回であり、このような工程では形成される遮光部の高さに制約があるほか、特開2007−98930号公報に記載のようにハニカム構造体(遮光部)の高さとレンズ部の高さが同じ構成、つまりレンズ部間のみに遮光部が形成された構成では遮光効果が十分とは言えない。
すなわち、前述の図1に示す遮光部と透明なレンズ(例えば、100個以上)からなる微小レンズアレイを製造する場合の課題は、(イ)薄厚の遮光部(遮光隔壁)の形成、(ロ)レンズ部と遮光部(遮光隔壁)を複合化したときの位置・寸法精度の確保であったが、従来技術では達成できなかった。つまり、本発明が解決しようとする課題は(イ) (ロ)を同時に解決する方法を見いだすことにある。
本発明は上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイクロレンズ等の光学素子に適用できる、(1)内側に微細中空部を有する隔壁が複数連結配置されてなる微細中空体の製造方法、(2)微細中空体内部に隔壁の高さよりも低位置となるように透光性樹脂を充填し一体化してなる微細複合部品の製造方法を提供することにある。特に、(1)においては、薄厚で遮光性を有する隔壁を複数同時に精度良くかつ容易に形成する方法を提供し、(2)においては、隔壁と透光性樹脂の位置精度を高精度に確保して一体化し高効率の光学部品とする生産性の優れた方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔12〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0008】
〔1〕:前記課題は、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を、複数の凹部が配置された第1成形型の表面に密着させて、前記凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(I-1)と、
減圧下に、前記凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力により、該凹部周辺に密着した薄膜層を前記第1成形型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(I-2)の後、
以下の工程;
前記第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、前記基材を剥離した隔壁の上面に、再び、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて、前記凹部と隔壁により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(I-3)と、
減圧下に、前記凹部と隔壁により囲まれた空間に封じ込められた気体のガス圧力により、前記隔壁上面に密着した薄膜層を前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(I-4)と、
を少なくとも1回繰り返すことを特徴とする微細中空体の製造方法により解決される。
【0009】
〔2〕:上記〔1〕に記載の微細中空体の製造方法において、前記硬化性樹脂が、アクリル系紫外線硬化樹脂であることを特徴とする。
【0010】
〔3〕:上記〔1〕または〔2〕に記載の微細中空体の製造方法において、前記工程(I-1)および工程(I-3)における薄膜層に遮光材が含まれていることを特徴とする。
【0011】
〔4〕:上記〔1〕または〔2〕に記載の微細中空体の製造方法において、前記工程(I-1)および/または工程(I-3)における薄膜層に遮光材が含まれておらず、前記遮光材が含まれていない薄膜層により形成された工程(I-2)および/または工程(I-4)の隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成する工程を設けたことを特徴とする。
【0012】
〔5〕:前記課題は、〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の製造方法により得られた微細中空体に、前記隔壁の高さよりも低位置となるように硬化性透光樹脂を充填し、これを硬化して光路分布を持たせて一体化することを特徴とする微細複合部品の製造方法により解決される。
【0013】
〔6〕:上記〔5〕に記載の微細複合部品の製造方法において、前記硬化性透光樹脂が、アクリル系紫外線硬化樹脂であることを特徴とする。
【0014】
〔7〕:前記課題は、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を、複数の凹部が配置された第1成形型の表面に密着させて、前記凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(II-1)と、
減圧下に、前記凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力により、該凹部周辺に密着した薄膜層を前記第1成形型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(II-2)の後、
以下の工程;
前記第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、前記基材を剥離した隔壁の高さよりも低位置となるように、該隔壁に囲まれた微細中空部に硬化性透光樹脂を充填し、これを硬化して一体化する工程(II-3)と、
前記一体化された構成体の隔壁上面に、再び、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて、前記隔壁と硬化性透光樹脂により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(II-4)と、
減圧下に、前記隔壁と硬化性透光樹脂により囲まれた空間に封じ込められた気体のガス圧力により、前記隔壁上面に密着した薄膜層を前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(II-5)と、
を少なくとも1回繰り返すことを特徴とする微細複合部品の製造方法により解決される。
【0015】
〔8〕:上記〔7〕に記載の微細複合部品の製造方法において、前記工程(II-1)および工程(II-4)における薄膜層に遮光材が含まれていることを特徴とする。
【0016】
〔9〕:上記〔7〕に記載の微細複合部品の製造方法において、前記工程(II-1)および/または工程(II-4)における薄膜層に遮光材が含まれておらず、前記遮光材が含まれていない薄膜層により形成された(II-2)および/または工程(II-5)の隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成する工程を設けたことを特徴とする。
【0017】
〔10〕:前記課題は、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を、複数の凹部が配置された第1成形型の表面に密着させて、前記凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(III-1)と、
減圧下に、前記凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力により、該凹部周辺に密着した薄膜層を前記第1成形型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(III-2)の後、
以下の工程;
前記第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、前記基材を剥離した隔壁の高さよりも低位置となるように、該隔壁に囲まれた微細中空部に硬化性透光樹脂を充填して第2成形型により中実形状を転写形成した後に該第2成形型を介して硬化性透光樹脂を硬化して一体化する工程(III-3)と、
前記第2成形型を取り除き、前記一体化された構成体の隔壁上面に、再び、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて、前記隔壁と中実形状とされた硬化性透光樹脂により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(III-4)と、
減圧下に、前記隔壁と中実形状とされた硬化性透光樹脂により囲まれた空間に封じ込められた気体のガス圧力により、前記隔壁上面に密着した薄膜層を前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(III-5)と、
を少なくとも1回繰り返すことを特徴とする微細複合部品の製造方法により解決される。
【0018】
〔11〕:上記〔10〕に記載の微細複合部品の製造方法において、前記工程(III-1)および工程(III-4)における薄膜層に遮光材が含まれていることを特徴とする。
【0019】
〔12〕:上記〔10〕に記載の微細複合部品の製造方法において、前記工程(III-1)および/または工程(III-4)における薄膜層に遮光材が含まれておらず、前記遮光材が含まれていない薄膜層により形成された工程(III-2)および/または工程(III-5)の隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成する工程を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の微細中空体の製造方法によれば、薄厚で遮光性を有する隔壁を複数同時に精度良くかつ容易に形成できる。
本発明の微細複合部品の製造方法によれば、精度良く形成された微細中空体内部に、隔壁の高さよりも低位置となるように透光性樹脂が充填され一体化されるので、隔壁と硬化性透光樹脂の位置精度が高精度に確保されて高効率の光学部品が生産性良く製造できる。光学部品としては、例えば、複写機、ファクシミリ、固体走査型プリンタ等の光走査系に用いられるプラスチックレンズやレンズ付き光伝送の導波路等およびデジタルカメラ等の受光素子レンズが挙げられ広い分野で応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
前述のように本発明における微細中空体の製造方法は、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を、複数の凹部が配置された第1成形型の表面に密着させて、前記凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(I-1)と、
減圧下に、前記凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力により、該凹部周辺に密着した薄膜層を前記第1成形型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(I-2)の後、
以下の工程;
前記第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、前記基材を剥離した隔壁の上面に、再び、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて、前記凹部と隔壁により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(I-3)と、
減圧下に、前記凹部と隔壁により囲まれた空間に封じ込められた気体のガス圧力により、前記隔壁上面に密着した薄膜層を前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(I-4)と、
を少なくとも1回繰り返すことを特徴とするものである。
【0022】
工程(I-1)では第1成形型の表面に硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて凹部の空間に気体を封じ込め、工程(I-2)において第1成形型の表面に密着させた薄膜層を同時に膨張延伸させるので連結した複数の隔壁(各隔壁の内側に中空部を有する)が同時に形成できる。
なお、前記凹部により囲まれた空間に封じ込められた気体は、減圧環境に置かれることによって、その内包された気体のガス圧力(通常、大気圧)により発泡し、その際、隣接する各隔壁内の中空部に内包された気体により横方向への膨張は抑制され、第1成形型に略垂直方向に同時に発泡することから、密着させた基板付き薄膜層を同一方向に膨張延伸させる。
工程(I-1)と工程(I-2)の後に、工程(I-3)と工程(I-4)を複数回繰り返すことで、第1成形型および順次形成される隔壁に垂直な任意の高さで、薄厚の隔壁に囲まれた中空部を有する微細中空体が精度良くかつ容易に形成される。複数回繰り返しにおいて、各サイクルごとに前記凹部と隔壁により囲まれた空間に封じ込められた気体は、上記と同様の理由から隔壁と略垂直方向に同時に発泡し、基板付き薄膜層を同一方向に膨張延伸させる。
【0023】
ここで、前記硬化性樹脂がアクリル系紫外線硬化樹脂であれば、膨張延伸させて形成された連結した複数の隔壁が、紫外線照射により短時間で容易に硬化して良好な機械的強度が発揮され、複数回繰り返して順次隔壁を形成しても所定の形状を維持した任意の高さの微細中空体が構成される。
【0024】
また、マイクロレンズ等の光学素子に適用する際に前記隔壁を遮光性とすることが好適であり、その場合、次のような手法により遮光性隔壁とすることができる。
すなわち、前記工程(I-1)および工程(I-3)における薄膜層に、硬化性樹脂と一緒に予め遮光材を含有させ、工程(I-2)および工程(I-4)で形成される隔壁自体を遮光性とするか、あるいは、前記工程(I-1)および/または工程(I-3)における薄膜層に遮光材を含まず、前記遮光材が含まれていない薄膜層により、工程(I-2)および/または工程(I-4)で形成された隔壁の壁面に、後の工程で遮光材を含む遮光膜を形成して遮光性とする。遮光材としては、カーボンブラックなどが好ましく用いられる。
前記のような手法によって薄厚で遮光性を有する隔壁を精度良くかつ容易に形成することができる。
【0025】
図2の模式図に、工程(I-1)と工程(I-2)の後、工程(I-3)と工程(I-4)を繰り返し、第1成形型上に、隔壁(クラッド部)に囲まれた中空部を有する微細中空体を形成するステップの一部を抽出して示す(工程を省略して示している)。図2において、符号20は第1成形型、符号21は隔壁(クラッド部)、符号22は基材、符号23は薄膜層を示す。
【0026】
前記微細中空体に、隔壁(クラッド部)の高さよりも低位置となるように、コア材料(例えば、硬化性透光樹脂)を充填して一体化することにより、高精度で高効率の微細複合部品(例えば、マイクロレンズアレイ、光ファイバーアレイプレート等)が形成できる。
図3(a)の模式図に、図2に示す微細中空体の中空部に硬化性透光樹脂を充填(注入などによる)した様子を示す。なお、硬化性透光樹脂を硬化して一体化することで隔壁(クラッド部)と硬化性透光樹脂(コア部)の位置精度を確保し、マイクロレンズ等の光学素子とすることができる。図3(a)において、符号30は第1成形型、符号31は隔壁(クラッド部)、符号32は基材、符号33は薄膜層、符号34は硬化性透光樹脂(コア部)を示す。
硬化性透光樹脂としてアクリル系紫外線硬化樹脂を用いれば、紫外線照射により短時間で容易に硬化して高精度で高効率の光学部品とすることができる。
図3(b)の模式図に、工程(I-1)および工程(I-3)における薄膜層に遮光材を含まず、形成された隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成して遮光性とし、硬化性透光樹脂を充填して硬化し一体化した例を示す。
このように2工程に分けて形成する場合、予め遮光材が含まれない硬化性樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)からなる薄膜層を用いることによって、紫外線照射による硬化が効率良く行われ、短時間で完全硬化ができる。また、遮光材を多く使用できるために、遮光/光吸収効果を大きくすることができ、光の漏れを最小限に抑えることができる。
本発明においては、上記のように隔壁を任意の高さに形成した微細中空体を形成し、隔壁の高さよりも低位置となるように硬化性透光樹脂を充填して一体化するため、硬化性透光樹脂(レンズ部)よりも高い位置に隔壁が設けられる。これによって、外部における遮光性も向上して高効率の光学部品とすることができる。
【0027】
また、本発明における微細複合部品の製造方法は、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を、複数の凹部が配置された第1成形型の表面に密着させて、前記凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(II-1)と、
減圧下に、前記凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力により、該凹部周辺に密着した薄膜層を前記第1成形型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(II-2)の後、
以下の工程;
前記第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、前記基材を剥離した隔壁の高さよりも低位置となるように、該隔壁に囲まれた微細中空部に硬化性透光樹脂を充填し、これを硬化して一体化する工程(II-3)と、
前記一体化された構成体の隔壁上面に、再び、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて、前記隔壁と硬化性透光樹脂により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(II-4)と、
減圧下に、前記隔壁と硬化性透光樹脂により囲まれた空間に封じ込められた気体のガス圧力により、前記隔壁上面に密着した薄膜層を前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(II-5)と、
を少なくとも1回繰り返すことを特徴とするものである。
【0028】
工程(II-1)では第1成形型の表面に硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて凹部の空間に気体を封じ込め、工程(II-2)において第1成形型の表面に密着させた薄膜層を同時に膨張延伸させるので連結した複数の隔壁(各隔壁の内側に微細中空部を有する)が同時に形成できる。この場合も前述工程(I-2)で説明したのと同じ理由により、基板付き薄膜層を第1成形型に略垂直方向に同時に膨張延伸させる。
特に工程(II-1)と工程(II-2)で形成された隔壁と第1成形型を離すことなく工程(II-3)を行うことで、中空部を有する複数の隔壁からなる微細中空体の各部分間の位置寸法が狂わず、隔壁の寸法精度も高く維持され、この中空部に硬化性透光樹脂を注入等により充填するので、高精度の微細複合部品が得られる。そして、工程(II-3)〜工程(II-5)を繰り返せば任意の高さの隔壁中に硬化性透光樹脂が充填された微細複合部品とすることができる。硬化性透光樹脂を隔壁の高さよりも低位置となるようにして微細中空部に充填して一体化することにより、高精度で高効率の微細複合部品(例えば、マイクロレンズアレイ、光ファイバーアレイプレート等)が形成できる。
【0029】
図4の模式図に、工程(II-1)〜工程(II-5)を実施するステップの一部を抽出して示す(工程を省略して示している)。図4において、符号40は第1成形型(レンズ型)、符号41は凹部(レンズ形成部)、符号42は基材、符号43は薄膜層、符号44は隔壁(クラッド部)、符号45は圧力制御装置、符号46は硬化性透光樹脂(コア部)を示す。
図4に示すレンズ型は、レンズ形成部である複数の凹部が配置された第1成形型に相当するものであり、レンズのピッチ等を決定し、凹部周辺に密着した前記塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層をレンズ型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成するための大元となる型である。つまり、凹部と隔壁に囲まれた中空部にレンズを形成する型である。
レンズ型の材料としては、離形性のある材料が用いられ、例えば、撥水機能があるシリコーンゴム等が好ましく用いられる。レンズ形成部である複数の凹部の寸法や配置は、限定されるものではなく設計に応じて決められる。例えば、凹部の寸法は数十μm乃至数百μm程度の半球面とピッチとすることができ、凹部の配置(レンズアレイの配置)も任意であり、格子状や千鳥状、あるいはハニカム状など適宜選択される。
隔壁は予め遮光機能を有するものとすることもできるし、形成された隔壁の壁面にあとの工程で遮光材を含む遮光膜を形成して遮光性としても構わない。
このような遮光機能を有する遮光隔壁を構成するために用いられる隔壁形成用の材料としては、塑性変形機能を有する硬化性樹脂、例えば、紫外線硬化型樹脂が好ましく、特にアクリル系紫外線硬化樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)が好ましい。なお、硬化性樹脂の屈折率を下記硬化性透光樹脂(レンズ材)と同じに選択すれば、光の全反射が起きず光の吸収が効率良く行われる。
レンズ材は、遮光隔壁に囲まれた微細中空部に充填される硬化性透光樹脂に相当し、例えば、紫外線硬化型樹脂が好ましく、特にアクリル系紫外線硬化樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)が好ましい。硬化性透光樹脂を前記微細中空体に充填しレンズを形成する際、光路分布を持たせて一体化される。従って、設計仕様に併せた屈折率を有する硬化性透光樹脂の選択が必要となる。
本発明においては、減圧下に、凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力(通常、大気圧)により、薄膜層を膨張延伸させて複数の隔壁を形成するが、その際圧力制御装置が用いられる。すなわち、圧力制御装置は、隔壁あるいは、隔壁と硬化性透光樹脂により囲まれた空間に封じ込められた気体のガスを圧縮及び減圧制御し、隔壁(微細中空部を有する)の寸法(主に高さ)を制御する。
【0030】
図4に示す微細複合部品の製造方法の主な製造プロセスは以下のようである。
[工程(II-1)]:
剥離可能な状態で基材(例えば、透明なガラス板等)上に塗布形成された塑性変形機能を有する硬化性樹脂(アクリル系UV硬化樹脂等)からなる薄膜層(カーボンブラック等の遮光材を含む)を、複数の凹部が配置されたレンズ型の表面に密着させて、凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う。硬化性樹脂の塗布法としては、限定するものではないがスピンコートなどの方法が適用できる。遮光機能を有する薄膜層の膜厚は、例えば、0.1〜100μm程度の範囲で塗布する。
[工程(II-2)]:
前記レンズ型の表面に薄膜層を密着させた構成物を、圧力制御装置に導入する。前述のように圧力制御装置は、装置内の雰囲気圧力を制御するものであり、限定されるものではないが通常、最初は0.1MPaに制御される。圧力制御装置を減圧することで、レンズ部(凹部)空間のガスの体積膨張が始まり、その空間が広まる。このとき、隣接したレンズ部空間も同時に膨張するため横への広がりが規制され、上方へ膨張延伸して空間が広がり、微細な中空部を有する隔壁(遮光隔壁)が形成される。次いで、硬化性樹脂を硬化する。例えば、アクリル系UV硬化樹脂の場合には外部から基材(ガラス基板等)を介して紫外線を照射し、隔壁(遮光隔壁)を硬化する。
[工程(II-3)]:
圧力制御装置から形成物を取り出し、レンズ型の表面に形成された遮光隔壁を保持した構成のまま、基材をはずし、微細中空部にコア部を形成するレンズ材として硬化性透光樹脂を充填(注入)する。注入は、遠心分離器等を用いて行うことができる。この際、レンズ型と遮光隔壁を離さないのがポイントであり、さらに、遮光隔壁の高さよりも低位置となるようにレンズ材を充填することが重要である。レンズ材の充填後、これを硬化して遮光隔壁と一体化する。例えば、レンズ材がアクリル系UV硬化樹脂の場合には外部から紫外線を照射し、硬化して遮光隔壁と一体化する。
[工程(II-4)]:
前記一体化された構成体の隔壁上面に、再び、剥離可能な状態で基材(例えば、透明なガラス板等)上に塗布形成された塑性変形機能を有する硬化性樹脂(アクリル系UV硬化樹脂等)からなる薄膜層(カーボンブラック等の遮光材を含む)を、前記隔壁上面に密着させて、隔壁と硬化性透光樹脂により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う。
[工程(II-5)]:
工程(II-4)で構成したものを、再び圧力制御装置内に入れ、圧力制御装置によって減圧状態とし、前記工程(II-2)と同様にして隔壁上面に密着した硬化性樹脂からなる薄膜層を、前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成する。そして、硬化性樹脂を硬化する。例えば、アクリル系UV硬化樹脂の場合には外部から基材(ガラス基板等)を介して紫外線を照射し、隔壁(遮光隔壁)を硬化する。
前記工程(II-1)と工程(II-2)の後、工程(II-3)およびそれ以降の工程(II-4)、工程(II-5)を少なくとも1回繰り返すことによって、任意の高さを持った高精度で高効率の微細複合部品(例えば、マイクロレンズアレイ、光ファイバーアレイプレート等)が形成できる。
【0031】
上記工程(II-1)および工程(II-4)における薄膜層には遮光材(例えば、カーボンブラック等)が含まれているものであったが、工程(II-1)および/または工程(II-4)における薄膜層に遮光材を含まず、隔壁を形成後に遮光機能を持たせることが可能である。すなわち、工程(II-1)と工程(II-4)のいずれにも遮光機能を持たせないもので先ず隔壁を形成し、後の工程で隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成し、遮光性の隔壁とすることも可能である。工程(II-1)と工程(II-4)のいずれかが遮光機能を持たない薄膜層の場合も同様に、後の工程で隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成して遮光性の隔壁とすることができる。
【0032】
遮光機能を持たせた隔壁を2工程に分けて形成する場合の製造方法の主なプロセスを図5の模式図に示す。前記図4に示す微細複合部品の製造方法における工程(I-2)の後に隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成する工程が導入される。なお、符号47は遮光膜を示し、ほかの符号は図4と同じである。例えば、隔壁を形成した後に、揮発性溶剤に混ぜたカーボンブラック粒を隔壁内に注入する等の工程により遮光膜が形成できる。レンズ型としてシリコーンゴムを用いれば撥水性を呈するので、注入液は隔壁の周りのみ付着し、その状態で乾燥することによってカーボンブラック粒は隔壁に付着し遮光膜となる。
【0033】
このように2工程に分けて形成する場合、予め遮光材が含まれない硬化性樹脂(例えば、アクリル系UV硬化樹脂)からなる薄膜層を用いることによって、紫外線照射による硬化が効率良く行われ、短時間で完全硬化ができる。また、遮光材を多く使用できるために、遮光/光吸収効果を大きくすることができ、光の漏れを最小限に抑えることができる。
【0034】
また、本発明における微細複合部品の製造方法は、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を、複数の凹部が配置された第1成形型の表面に密着させて、前記凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(III-1)と、
減圧下に、前記凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力により、該凹部周辺に密着した薄膜層を前記第1成形型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(III-2)の後、
以下の工程;
前記第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、前記基材を剥離した隔壁の高さよりも低位置となるように、該隔壁に囲まれた微細中空部に硬化性透光樹脂を充填して第2成形型により中実形状を転写形成した後に該第2成形型を介して硬化性透光樹脂を硬化して一体化する工程(III-3)と、
前記第2成形型を取り除き、前記一体化された構成体の隔壁上面に、再び、剥離可能な状態で 基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて、前記隔壁と中実形状とされた硬化性透光樹脂により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(III-4)と、
減圧下に、前記隔壁と中実形状とされた硬化性透光樹脂により囲まれた空間に封じ込められた気体のガス圧力により、前記隔壁上面に密着した薄膜層を前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(III-5)と、
を少なくとも1回繰り返すことを特徴とするものである。
【0035】
工程(III-1)および工程(III-2)はそれぞれ前記工程(II-1)および工程(II-2)と同様である。本方法においては、工程(III-2)の後、第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、微細中空部に硬化性透光樹脂を充填し、第2成形型を用いて中実形状を転写形成し、第2成形型を介して硬化性透光樹脂を硬化して一体化する工程(III-3)を設けている。特に工程(III-1)と工程(III-2)で形成された隔壁と第1成形型を離すことなく工程(III-3)を行うことで、微細中空部を有する複数の隔壁からなる微細中空体の各部分間の位置寸法が狂わず、高精度で中実形状が転写された構成体が形成される。また、硬化性透光樹脂は隔壁の高さよりも低位置となるように充填することが重要である。さらに、第2成形型は、該第2成形型を介して硬化性透光樹脂を硬化させることから、透明であることが必要である。
そして、工程(III-3)〜工程(III-5)を繰り返せば任意の高さの隔壁中に硬化性透光樹脂が充填された高精度で高効率の微細複合部品(例えば、マイクロレンズアレイ、光ファイバーアレイプレート等)が形成できる。
【0036】
図6の模式図に、工程(III-1)〜工程(III-5)を実施するステップの一部を抽出して示す。以下、限定されるものではないが具体的な例を挙げて図6を説明する。
図6における名称等は図4をベースにしており共通し、図4で示した工程(I-3)のレンズ材(アクリル系UV硬化樹脂)の充填までは同じである。 図6の工程(III-3)で微細中空部に充填されたレンズ材(アクリル系UV硬化樹脂)は、レンズ型2(第2成形型)(48)を用いて中実形状を転写形成され、その後レンズ型2を介して紫外線照射によりレンズ材が硬化され遮光隔壁と一体化する。例えば、紫外線が透過するレンズ型2を、微細中空部に充填されたレンズ材上に載せ紫外線を所定時間照射し、レンズ材を硬化させてレンズ部を作製する。その際、レンズ部は隔壁の高さよりも低位置ととなるようにする。
そして、レンズ型2を取り除いた後、工程(III-3)〜工程(III-4)〜工程(III-5)を繰り返せば任意の高さの隔壁中に硬化性透光樹脂が充填され、中実形状とされた高精度で高効率の微細複合部品(例えば、マイクロレンズアレイ、光ファイバーアレイプレート等)が形成できる。図示していなが、隔壁等に未硬化部がある可能性もあるので、加熱(例えば、150℃程度)により、完全硬化をさせてもよい。
【0037】
また、上記工程(III-1)および工程(III-4)における薄膜層には遮光材(例えば、カーボンブラック等)が含まれているものであったが、前記工程(III-1)および工程(III-4)における薄膜層に遮光材が含まず、後で遮光機能を持たせることが可能である。
この場合には、工程(III-1)および工程(III-4)のいずれにも遮光機能を持たせないもので先ず隔壁を形成し、後の工程で隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成し、遮光性の隔壁とすることも可能である。工程(III-1)と工程(III-4)のいずれかが遮光機能を持たない薄膜層の場合も同様に、後の工程で隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成して遮光性の隔壁とすることができる。
【0038】
遮光機能を持たせた隔壁を2工程に分けて形成する場合の製造方法の主なプロセスを図7の模式図に示す。図7における名称等は図4をベースにしており共通し、工程(III-3)のレンズ材(例えば、アクリル系UV硬化樹脂)の充填までは図4で示した工程(I-3)と同じである。前記図7に示す微細複合部品の製造方法における工程(III-2)および工程(III-5)の後に隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成する工程が導入される。例えば、隔壁を形成した後に、揮発性溶剤に混ぜたカーボンブラック粒を隔壁内に注入する等の工程により遮光膜が形成できる。
このように2工程に分けて形成する場合、予め遮光材が含まれない硬化性樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)からなる薄膜層を用いることによって、紫外線照射による硬化が効率良く行われ、短時間で完全硬化ができる。また、遮光材を多く使用できるために、遮光/光吸収効果を大きくすることができ、光の漏れを最小限に抑えることができる。
なお、形成されたレンズ面を撥水処理することで、遮光材塗布時の汚れ等を予防することができる。図7では、両方凸形状のレンズの例を示すが、図8に示すような凹レンズとしてもよく、前記同様に作製することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制約を受けるものではない。
【0040】
(実施例1)
下記第1成形型(レンズ型)、隔壁形成用の硬化性樹脂、レンズ部形成用の硬化性透光樹脂、および圧力制御装置等を準備し、前記図4で示した微細複合部品の製造方法の主な製造プロセスに準拠してレンズアレイを作製した。
〔第1成形型(レンズ型) 〕:撥水機能を有するシリコーンゴムを用いた。そして、シリコーンゴム表面にはレンズ形成部である複数の凹部(φ180μmの半球面を有する)をタテ、ヨコそれぞれ13個×13個(合計169個)、200μmのピッチで格子配置し、レンズアレイ状に形成したものを用いた。
〔隔壁形成用の硬化性樹脂〕:隔壁形成用の硬化性樹脂(塑性変形機能を有する)として屈折率が1.56のアクリル系UV硬化樹脂を用いた。アクリル系UV硬化樹脂にカーボンブラックを0.5wt%添加したものを薄膜層とし、遮光機能を有する隔壁を形成する。
〔レンズ部形成用の硬化性透光樹脂〕:屈折率が1.56のアクリル系紫外線硬化樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)を用いた。
[圧力制御装置]:隔壁と硬化性透光樹脂により囲まれた空間に封じ込められた気体のガスを圧縮及び減圧制御し、隔壁(微細中空部を有する)の寸法(主に高さ)を制御可能に構成した装置を用いた。
【0041】
上記材料等を用いて以下のプロセスでレンズアレイを作製した。
[工程(II-1)]:
紫外線が透過する平坦性の高いガラス板にスピンコートした薄膜層(アクリル系UV硬化樹脂にカーボンブラックを0.5wt%添加して遮光機能を持たせたもの)を、複数の凹部が配置されたレンズ型の表面に密着させて、凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆った。本例ではスピンコートにより膜厚20μmを形成した。なお、薄膜層はガラス板に剥離可能な状態で担持されている。
[工程(II-2)]:
上記レンズ型の表面に薄膜層を密着させた状態のものを圧力制御装置に収容した後、最初0.1MPaに制御していた圧力制御装置内の圧力を0.03MPaへ減圧した。減圧させることでレンズ部空間のガスの体積膨張が始まり空間を広げ、カーボンブラックを含むアクリル系UV硬化樹脂の薄膜層がレンズ型と略垂直方向に同時に膨張延伸し、連結した複数の遮光隔壁が形成された。次いで、外部からガラス基板を介して紫外線を10秒間程度照射し、遮光隔壁を硬化した。
[工程(II-3)]:
圧力制御装置から形成物を取り出し、レンズ型の表面に形成された遮光隔壁を保持した構成のまま、ガラス板をはずし、微細中空部に遠心分離器を用いて3000G、30秒の条件で硬化性透光樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)を注入(充填)した。なお、遮光隔壁の高さよりも低位置となるようにアクリル系UV硬化樹脂を充填した。アクリル系UV硬化樹脂を充填後、これに外部から紫外線を照射し、硬化して遮光隔壁と一体化した。
[工程(II-4)]:
上記一体化された構成体の隔壁上面に、再び、紫外線が透過する平坦性の高いガラス板にスピンコートした薄膜層(アクリル系UV硬化樹脂にカーボンブラックを0.5wt%添加して遮光機能を持たせたもの)を密着させ、前記隔壁と硬化性透光樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆った。
[工程(II-5)]:
カーボンブラックを含むアクリル系UV硬化樹脂の薄膜層を前記レンズ型および隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の遮光隔壁を形成した後、外部からガラス基板を介して紫外線を照射して遮光隔壁を硬化した。
【0042】
以上の工程により、薄厚で遮光性を有する隔壁とアクリル系UV硬化樹脂(レンズ材)の位置精度が高度に維持され、レンズ材が隔壁の高さよりも低位置とされた高効率のレンズアレイ(形状としては、図1に示した構成のものと同様)が得られた。
【0043】
(実施例2)
実施例1において、薄膜層にカーボンブラックを含有しないものを用いて工程(II-2)、工程(II-5)で隔壁を形成し、この隔壁内に揮発性溶剤にカーボンブラック粒子を混ぜた溶液を注入して隔壁面に遮光膜を形成したほかは実施例1と同様にしてレンズアレイを作製した。すなわち、前記図5で示した微細複合部品の製造方法の主な製造プロセスに準拠してレンズアレイを作製した。なお、カーボンブラック粒子は隔壁に付着し遮光膜となる。
実施例1と同様に、薄厚で遮光性を有する隔壁とレンズ材の位置精度が高度に維持され、レンズ材が隔壁の高さよりも低位置とされた高効率のレンズアレイが得られた。特に、本実施例においては、隔壁を形成する薄膜層に遮光材が入っていないため、紫外線による硬化が効率良く行われ短時間の照射で完全硬化ができた。また、隔壁形成後に遮光膜を形成するため、遮光材を多く使用でき、光の漏れを最小限におさえる(遮光/光吸収効果を大きくする)ことができた。
【0044】
(実施例3)
実施例1において、第1成形型(レンズ型)における複数の凹部を千鳥配列で配置したものに替えたほかは実施例1と同様にして、レンズアレイを作製した。
図9に示すようなハニカム形状に連結した薄厚で遮光性を有する隔壁とレンズ材の位置精度が高度に維持され、レンズ材が隔壁の高さよりも低位置とされた高効率のレンズアレイが得られた。
【0045】
(実施例4)
実施例1において用いたレンズ型と、隔壁形成用の硬化性樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)、レンズ部形成用の硬化性透光樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)に加えて、第2成形型(微細中空部に充填された硬化性透光樹脂に中実形状を転写形成する透明性を有する型)を用いて、前記図6で示した微細複合部品の製造方法の主な製造プロセスに準拠し、レンズアレイを作製した。すなわち、前記(III-1)と工程(III-2)の後に、工程(III-3)〜工程(III-5)を実施してレンズアレイを作製した。
薄厚で遮光性を有する隔壁とレンズ材の位置精度が高く、レンズ材が隔壁の高さよりも低位置とされた高効率のレンズアレイが得られた。
(実施例5)
実施例4において、薄膜層にカーボンブラックを含有しないものを用い、前記図7で示した微細複合部品の製造方法の主な製造プロセスに準拠し(図10に工程の一部をさらに示す)、工程(III-2)、工程(III-5)でそれぞれ隔壁を形成し、この隔壁内に揮発性溶剤にカーボンブラック粒子を混ぜた溶液を注入して隔壁面に遮光膜を形成したほかは実施例4と同様にしてレンズアレイを作製した。なお、カーボンブラック粒子は隔壁に付着し遮光膜となる。
実施例4と同様に、薄厚で遮光性を有する隔壁とレンズ材の位置精度が高度に維持され、レンズ材が隔壁の高さよりも低位置とされた高効率のレンズアレイが得られた。本実施例においては、隔壁を形成する薄膜層に遮光材が入っていないため、紫外線による硬化が効率良く行われ短時間の照射で完全硬化ができた。また、隔壁形成後に遮光膜を形成するため、遮光材を多く使用でき、光の漏れを最小限におさえる(遮光/光吸収効果を大きくする)ことができる。
【0046】
(実施例6)
実施例1において用いたレンズ型と、隔壁形成用の硬化性樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)を用いて、前記図2で示した微細中空体の製造方法の主な製造プロセスに準拠して微細中空体を作製した。すなわち、前述の工程(I-1)と工程(I-2)の後に、工程(I-3)と工程(I-4)を2回繰り返して図11に示すような微細中空体を作製した。第1成形型と略垂直方向に膨張延伸した薄厚で遮光性を有する隔壁が複数同時に精度良く形成された。
【0047】
(実施例7)
実施例6で作製した微細中空体に、実施例1で用いたレンズ部形成用の硬化性透光樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)を前記図3(a)で示した微細中空体の製造方法の主な製造プロセスに準拠して充填した。なお、アクリル系UV硬化樹脂は隔壁の高さよりも低位置となるように充填し、紫外線照射により硬化させた(光路分布を持たせて一体化)。隔壁と透光性樹脂の位置精度が高いレンズアレイが得られた。
【0048】
(実施例8)
実施例1において用いたレンズ型と、薄膜層にカーボンブラックを含有しないものを用いて、前述の工程(I-1)と工程(I-2)の後に、工程(I-3)と工程(I-4)を2回繰り返し、隔壁の壁面にカーボンブラックを含む遮光膜を形成して図12に示すような微細中空体を作製した。薄厚で遮光性を有する隔壁を複数同時に精度良く形成された。
【0049】
(実施例9)
実施例8で作製した微細中空体に、実施例1で用いたレンズ部形成用の硬化性透光樹脂(アクリル系UV硬化樹脂)を充填した。なお、アクリル系UV硬化樹脂は隔壁の高さよりも低位置となるように充填し、紫外線照射により硬化させた。隔壁と透光性樹脂の位置精度が高いレンズアレイが得られた。
【0050】
上記結果から、本発明の微細中空体の製造方法によれば、容易に、薄厚で遮光性を有する隔壁を複数同時に精度良く作製することができる。また、本発明の微細複合部品の製造方法によれば、遮光性を有する隔壁とレンズ材の位置精度を高くすることができ、高効率の光学部品が作製でき、生産性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】成形課題を説明するために例示する微細中空体の中空部がレンズ部とされた微細複合部品の概略断面図である。
【図2】本発明における微細中空体の製造方法における工程を模式的に示すフロー図である。
【図3】本発明における微細複合部品の製造方法における工程を模式的に示すフロー図(3a、3b)である。
【図4】本発明における微細中空体の製造方法における別の工程を模式的に示すフロー図である。
【図5】本発明における微細中空体の製造方法における他の工程を模式的に示すフロー図である。
【図6】本発明における微細複合部品の製造方法において第2成形型を用いる工程を模式的に示すフロー図である。
【図7】本発明における微細複合部品の製造方法における第2成形型を用いる別の工程を模式的に示すフロー図である。
【図8】図7において第2成形型で形成されるレンズ部が凹レンズ形状であるものを模式的に示す図である。
【図9】実施例3において作製したハニカム形状に連結した隔壁とレンズ材が一体とされたレンズアレイの模式図である。
【図10】実施例4の製造プロセスを模式的に示したフロー図である。
【図11】実施例6において作製した微細中空体の模式図である。
【図12】実施例8において作製した微細中空体の模式図である。を示す模式図である。
【符号の説明】
【0052】
11 遮光部
12 レンズ部
20 第1成形型
21 隔壁(クラッド部)
22 基材
23 薄膜層
30 第1成形型
31 隔壁(クラッド部)
32 基材
33 薄膜層
34 硬化性透光樹脂(コア部)
40 第1成形型(レンズ型)
41 凹部(レンズ形成部)
42 基材
43 薄膜層
44 隔壁(クラッド部)
45 圧力制御装置
46 硬化性透光樹脂(コア部)
47 遮光膜
48 第2成形型(レンズ型2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を、複数の凹部が配置された第1成形型の表面に密着させて、前記凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(I-1)と、
減圧下に、前記凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力により、該凹部周辺に密着した薄膜層を前記第1成形型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(I-2)の後、
以下の工程;
前記第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、前記基材を剥離した隔壁の上面に、再び、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて、前記凹部と隔壁により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(I-3)と、
減圧下に、前記凹部と隔壁により囲まれた空間に封じ込められた気体のガス圧力により、前記隔壁上面に密着した薄膜層を前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(I-4)と、
を少なくとも1回繰り返すことを特徴とする微細中空体の製造方法。
【請求項2】
前記硬化性樹脂が、アクリル系紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の微細中空体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(I-1)および工程(I-3)における薄膜層に遮光材が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の微細中空体の製造方法。
【請求項4】
前記工程(I-1)および/または工程(I-3)における薄膜層に遮光材が含まれておらず、前記遮光材が含まれていない薄膜層により形成された工程(I-2)および/または工程(I-4)の隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成する工程を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の微細中空体の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により得られた微細中空体に、前記隔壁の高さよりも低位置となるように硬化性透光樹脂を充填し、これを硬化して一体化することを特徴とする微細複合部品の製造方法。
【請求項6】
前記硬化性透光樹脂が、アクリル系紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の微細複合部品の製造方法。
【請求項7】
剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を、複数の凹部が配置された第1成形型の表面に密着させて、前記凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(II-1)と、
減圧下に、前記凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力により、該凹部周辺に密着した薄膜層を前記第1成形型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(II-2)の後、
以下の工程;
前記第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、前記基材を剥離した隔壁の高さよりも低位置となるように、該隔壁に囲まれた微細中空部に硬化性透光樹脂を充填し、これを硬化して一体化する工程(II-3)と、
前記一体化された構成体の隔壁上面に、再び、剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて、前記隔壁と硬化性透光樹脂により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(II-4)と、
減圧下に、前記隔壁と硬化性透光樹脂により囲まれた空間に封じ込められた気体のガス圧力により、前記隔壁上面に密着した薄膜層を前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(II-5)と、
を少なくとも1回繰り返すことを特徴とする微細複合部品の製造方法。
【請求項8】
前記工程(II-1)および工程(II-4)における薄膜層に遮光材が含まれていることを特徴とする請求項7に記載の微細複合部品の製造方法。
【請求項9】
前記工程(II-1)および/または工程(II-4)における薄膜層に遮光材が含まれておらず、前記遮光材が含まれていない薄膜層により形成された(II-2)および/または工程(II-5)の隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成する工程を設けたことを特徴とする請求項7に記載の微細複合部品の製造方法。
【請求項10】
剥離可能な状態で基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を、複数の凹部が配置された第1成形型の表面に密着させて、前記凹部の空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(III-1)と、
減圧下に、前記凹部の空間に封じ込められた気体のガス圧力により、該凹部周辺に密着した薄膜層を前記第1成形型と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(III-2)の後、
以下の工程;
前記第1成形型上に形成された隔壁を保持した構成のまま、前記基材を剥離した隔壁の高さよりも低位置となるように、該隔壁に囲まれた微細中空部に硬化性透光樹脂を充填して第2成形型により中実形状を転写形成した後に該第2成形型を介して硬化性透光樹脂を硬化して一体化する工程(III-3)と、
前記第2成形型を取り除き、前記一体化された構成体の隔壁上面に、再び、剥離可能な状態で 基材上に担持された少なくとも塑性変形機能を有する硬化性樹脂からなる薄膜層を密着させて、前記隔壁と中実形状とされた硬化性透光樹脂により囲まれた空間に気体を封じ込めつつ覆う工程(III-4)と、
減圧下に、前記隔壁と中実形状とされた硬化性透光樹脂により囲まれた空間に封じ込められた気体のガス圧力により、前記隔壁上面に密着した薄膜層を前記隔壁と略垂直方向に同時に膨張延伸させて連結した複数の隔壁を形成し、これを硬化する工程(III-5)と、
を少なくとも1回繰り返すことを特徴とする微細複合部品の製造方法。
【請求項11】
前記工程(III-1)および工程(III-4)における薄膜層に遮光材が含まれていることを特徴とする請求項10に記載の微細複合部品の製造方法。
【請求項12】
前記工程(III-1)および/または工程(III-4)における薄膜層に遮光材が含まれておらず、前記遮光材が含まれていない薄膜層により形成された工程(III-2)および/または工程(III-5)の隔壁の壁面に遮光材を含む遮光膜を形成する工程を設けたことを特徴とする請求項10に記載の微細複合部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−58380(P2010−58380A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226692(P2008−226692)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】