説明

微細粉粒体シール用部材および微細粉粒体シール材

【課題】微細トナー等の微細な粉粒体のモレを防止すると共に、可動体に接触する毛羽の繊維の保持性が良好で抜け落ち難く、かつ切断した際のほつれによる繊維の脱落を防止し得るシール用部材およびシール材を提供する。
【解決手段】織編物またはそれを含む積層体からなり、前記織編物が少なくとも表側の面を構成し、当該表側の面において前記織編物の繊維が立毛を形成し、裏側の面において繊維が水流交絡処理により絡合してなることを特徴とする微細粉粒体シール用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー等の微細粉粒体のもれ防止用のシール用部材およびシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機、レーザープリンター、ファクシミリ、ワードプロセッサー等では、トナーの帯電付着したマグネットローラから感光ドラムにトナーが付与されてトナーの像を形成し、次いで感光体表面のトナーを用紙に転写して画像記録を行う。転写後に画像担持体に残留したトナーはクリーニングブレードで除去するとともにクリーニング容器内にトナーを貯留する。そして、マグネットローラの軸受け側の両端部に対応するハウジング部位やクリーニングブレードと感光ドラムが接する部分の両端にはシール材が取付けられ、隙間をシールしてトナーの飛散もれを防止している。これらのプロセスは通常、一体構造にまとめてカートリッジ化されている。
【0003】
ここで、従来のシール材としては、フッ素繊維のフェルトにクッション層を接着したものやフッ素繊維のベルベット又はそれにクッション層を接着したもの等が用いられている。
【0004】
しかし、フッ素繊維のフェルトは、フッ素繊維が高価であることに加え、長時間使用すると、繊維が抜け落ち、復元性に乏しく、シール性が低下し、トナー漏れが生ずる問題があった。特にフッ素繊維はすべりやすく、その傾向は顕著である。さらに、近年のトナーの更なる微粒子化や重合トナー等の出現により、フェルトでは十分なシール性を得ることが困難になってきている。
【0005】
また、フッ素繊維のベルベットは、繊維の抜け落ちは回避できるものの、フッ素繊維を多量に使用する必要があるためコスト高となる問題がある。
【0006】
そこで、微細トナーに対応し、かつ繊維の抜け落ちを防止するため、基布をパイル織物とすると共に裏面にコーティング層を設ける方法が開示されている(例えば、特許文献1)。しかし、織物はタテ糸とヨコ糸が規則正しく配列しているため、プレス加工により所定形状に切断すると、切断面からほつれて脱落し、実用に供しうる切断物品を得ることができないという問題があった。これは、編物の場合についても、ヨコ編であれば非常にほつれやすい点で同様であり、タテ編でも完全に防止することは困難である。そのため、コーティング層を設けて繊維のほつれを防止することが有効となるが、そのためには多量の樹脂が必要であり、柔軟なシール材を得ることが困難となる。
【0007】
なお、微細トナーのモレを防止するため、パイル織物の裏に不織布を重ね、ニードルパンチによって不織布繊維を立毛繊維間へ突入させ、立毛密度を充填化する方法が開示されている(例えば、特許文献2)。この場合、不織布層は上記の切断によってほつれる懸念は少ないものの、パイル織物層は従来と同様にほつれによる繊維の脱落が生じる問題がある。
【特許文献1】特開平11−61101号公報
【特許文献2】特開2005−283729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、微細トナー等の微細な粉粒体のモレを防止すると共に、可動体に接触する毛羽の繊維の保持性が良好で抜け落ち難く、かつ切断した際のほつれによる繊維の脱落を防止し得るシール用部材およびシール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、織編物またはそれを含む積層体からなり、前記織編物が少なくとも表側の面を構成し、当該表側の面において前記織編物の繊維が立毛を形成し、裏側の面において繊維が水流交絡処理により絡合してなることを特徴とする微細粉粒体シール用部材である。
【0010】
また、本発明は、本発明の微細粉粒体シール用部材の裏側の面にクッション層が積層されてなることを特徴とする微細粉粒体シール材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微細粉粒体シール用部材および微細粉粒体シール材は、切断した際のほつれによる繊維の脱落を防止でき、規格に適合したサイズを容易に得ることができると共に、微細トナー等の微細な粉粒体のモレを防止し、可動体に接触する毛羽の繊維の保持性が良好で抜け落ち難くため、プリンターシール材として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の微細粉粒体シール用部材は、織編物またはそれを含む積層体からなり、前記織編物が少なくとも表側の面を構成する。微細粉粒体シール用部材の表側の面、すなわち摺動面を織編物で構成することにより、長時間使用しても繊維の抜け落ちを防ぐことができる。
【0013】
本発明の微細粉粒体シール用部材に用いる織編物の繊維としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素繊維の他、ポリエステル、ポリアミド、超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、アラミド等を用いることができる。
【0014】
ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素繊維は、摺動性に優れる点で好ましい。
【0015】
また、ポリエステル、ポリアミド、超高分子ポリエチレンは、低コストである点で好ましい。
ポリエステルとしては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体が、低コストで製造も容易な点で好ましい。
ポリアミドとしては例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12等を採用することができる。
【0016】
織編物の繊維の平均単繊維直径としては、0.1〜10μmが好ましい。10μm以下、より好ましくは5μm以下とすることで、シール性に優れる。また、0.1μm以上、より好ましくは1μm以上とすることで、摩擦による切断を防止することができる。
【0017】
本発明の微細粉粒体シール用部材は、表側の面において織編物の繊維が立毛を形成していることが重要である。そうすることで、摺動性、シール性に優れる。特に、ポリエステル、ポリアミド、超高分子ポリエチレン等、フッ素繊維と比較して摩擦係数の高い繊維を採用する場合に、摺動性、シール性を効果的に補うことができる。
【0018】
また、立毛を形成する繊維は捲縮を有することが好ましい。そうすることで、立毛同士が集束してシール性が低下するのを防ぐことができる。特に、平均単繊維繊度1dtex以下、立毛長が2mm以上の場合、集束の傾向がより顕著となるので、捲縮を有する繊維を採用することがより効果的である。
【0019】
立毛長としては、1〜10mmが好ましい。1mm以上、より好ましくは2mm以上とすることでトナー漏れを防ぐことができ、10mm以下、より好ましくは5mm以下とすることで、使用と共に立毛繊維同士が絡まりあってシール性が低下するのを防ぐことができる。
【0020】
また、立毛の傾斜方向としては、回転方向に傾斜していることが、摺動性が向上する点で好ましい。
【0021】
また、微細粉粒体シール用部材の表側の面、特に立毛部分にはフッ素系樹脂が付着していることがさらに摺動性を向上させる上で好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。フッ素系樹脂の付着量としては、5〜100g/mが好ましく、より好ましくは10〜50g/mである。5g/m以上とすることで、効果的に摺動性を向上させることができる。また、50g/m以下とすることで、樹脂の脱落による不具合を抑制することができる。
【0022】
また本発明の微細粉粒体シール用部材は、裏側の面において繊維が絡合してなることが重要である。裏側の面の繊維が絡合していることで、表側の面が織編物で構成されていても部材切断時の繊維のほつれ等を防止することができ、また、形態安定性も向上させることができる。特に、織物やヨコ編物は、経済性には優れるが部材切断時にほつれやすく、さらにヨコ編物は伸びが発生しやすいが、裏側の面の繊維を絡合させることによって、これらを効果的に抑制することができる。
【0023】
また、かかる裏側の面の繊維の絡合は、水流交絡処理によるものであることが重要である。水流交絡処理によるものとすることで、絡合させる繊維が少量である場合にも、絡合を効率的に行うことができる。裏側の面の絡合する繊維(以下、「絡合繊維」とも呼ぶ。)は、少量であることが、シール材の柔軟性を損なうことなく、かつ表面の圧縮特性を変化させない点で好ましい。一方、ニードルパンチでは、単繊維繊度が小さい場合繊維が切断するか又は突き抜ける傾向が強くなり、繊維同士を絡合させることは困難である。特に単繊維直径が10μm以下の場合、その傾向は顕著である。
【0024】
絡合繊維の平均単繊維直径としては、1〜10μmが好ましい。1μm以上とすることで、効率良く絡合して形態安定性を向上し、また、切断時の脱落をより防止できる。また、10μm以下とすることで、絡合した状態でも柔軟性を維持することができる。
【0025】
絡合繊維の態様としては、表側の面を構成する織編物の繊維の一部であり、表側の面の繊維と連続しているものが好ましい。すなわち、織編物を構成する繊維の一部が織編物の組織から不織布類似の絡合組織の一部となり、表側の層から裏側の層にかけ連続的に組織が変化する態様である。かかる態様においては、表側の層と裏側の層とが一体化しているので、ロール等の曲面に沿わせて使用する場合であっても皺の発生を抑制することができる。
【0026】
また、絡合繊維の他の態様としては、厚み0.1〜0.5mm、目付10〜50g/mの不織布を構成するものであることも好ましい。かかる不織布を、表側の面を構成する織編物と積層し絡合一体化させることもできる。かかる態様の利点としては、より高いほつれ防止効果や形態安定性向上効果が得られると共に、不織布の繊維が織編物の隙間を埋め、トナーの漏れをより防止することができる。厚みを0.1mm以上(より好ましくは0.2mm以上)、目付を10g/m以上とすることで、表側の面を構成する織編物の繊維と十分に絡合して繊維脱落を抑制すると共に、微細粉粒体シール用部材の高い形態保持力を得ることができる。一方、厚みを0.5mm以下(より好ましくは0.3mm以下)、目付を50g/m以下(より好ましくは30g/m以下)とすることで、柔軟性を維持し、ローラー等へ接着した場合に発生する皺を抑制することができる。
【0027】
かかる不織布としては、例えば抄紙法やメルトブロー法等によって得られるものを好適に使用することができる。
【0028】
本発明の微細粉粒体シール用部材は、裏側の面に樹脂が付着していることが好ましい。かかる樹脂により、繊維の脱落防止をより向上させることができる。また、後述するように、クッション層との接着剤を兼ねることも可能であり、コストの点で好ましい態様である。
【0029】
かかる樹脂としては、アクリル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル等特を採用することができ、なかでもアクリルやポリウレタンが柔軟性や接着性に優れる点で好ましい。
【0030】
本発明のシール用部材は、そのままでもシール材として用いることが出来るが、クッション性を高めて十分なシール性を得るために、裏面にクッション層を積層することが好ましい。クッション層としては、ポリウレタン等の発泡体が用いることができ、適度なシール性と柔軟性を得るためには、25%圧縮荷重値が0.1〜1kg/cmのものが好ましい。クッション層は接着剤や両面テープを介して、本発明のシール用部材と積層することができる。
【0031】
次に、本発明のシール用部材及びシール材の製造方法の例を説明する。
【0032】
本発明に好ましく用いられる、平均単繊維繊度1dtex以下の極細繊維の製造方法としては、極細繊維を直接紡糸しても良いし、極細繊維を発生することができる繊維(極細繊維発生型繊維)を紡糸した後に極細繊維を発生させても良い。
【0033】
極細繊維発生型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分・島成分とし、海成分を溶剤を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型繊維や、2成分以上の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。
【0034】
海島型繊維には、海島型複合用口金を用い海・島の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維や、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがあるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点、また十分な長さの極細繊維が得られ繊維の脱落防止にも資する点から、海島型複合繊維がより好ましい。
【0035】
海島型繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、共重合ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合成分とした共重合ポリエステル、ポリ乳酸、熱可塑性PVA系樹脂などを用いることができる。
【0036】
紡出した繊維は、延伸し、結晶化することができる。例えば未延伸糸を引き取った後、湿熱延伸または乾熱延伸、あるいはその両者によって1〜3段延伸することができる。
【0037】
得られた極細繊維又は極細繊維発生型繊維を用い、織編物を作製する。なお、立毛を形成する繊維に捲縮を付与するには、織編物とした後あるいはさらに立毛を形成させた後に熱処理等によって捲縮を発現させることもできるが、本発明においては糸状態で捲縮を発現させた後、織編物とすることが好ましい。これにより、立毛がよりばらけた状態とすることができる。また、極細繊維発生型繊維を用いる場合、極細化した後、織編物としても良いが、取り扱いの容易性からは織編物としてから極細化することが好ましい。
【0038】
立毛を有する織編物は、例えば、織編物を針布起毛させることにより得ることができる。また例えば、モケットやテレンプのようにパイルを長く出したビロード織物であるプラッシュ織、タフテッドカーペット地、ウィルトンカーペット地、ダブルトリコットやダブルラッセル機で編成したタテ編、ヨコ編などのパイル織編物を用い、ループパイルはシャーリング機によって先端を切ってカットパイルとし、二重織編組織ではナイフでセンターカットすることによって得ることができる。
【0039】
立毛の傾斜は、100〜180℃に加熱されたローラーを用いてポリッシャー加工することにより付与することができる。
【0040】
次に、裏側の面の繊維を水流交絡法により絡合させる。その方法としては、前述の様に一方の面を立毛させた織編物の他方の面に対して、直接水流交絡処理を施しても良いし、
また、前述のような特定の厚み・目付の不織布を積層させて水流交絡処理を施しても良い。また、これらを併用しても良い。
【0041】
不織布として好ましく用いられる抄紙不織布は、例えば平均繊維長0.1〜1cmの繊維を、水溶性樹脂等を含む水中で叩解し、0.0001〜0.1%程度の濃度で分散させた分散液を金網等に抄造して製造することができる。本発明で好ましく用いられる1〜10μmの繊維とする場合、直接紡糸法により1〜10μmの繊維を製造し、次いで叩解して抄造することが好ましい。
【0042】
水流交絡法としては、例えば、直径0.06〜0.15mmのノズルから圧力1〜60MPaで水を噴出させると良い。ノズルの直径を0.15mm以下、より好ましくは0.10mm以下とすることで、付き抜けを防ぎつつ絡合性を向上させることができる。一方、0.06mm以上、より好ましくは0.09mm以上とすることで、ノズル詰まりを防ぎ、水を高度に濾過する必要なくコストを抑えることができる。
また、水の噴出圧力を60MPa以下、より好ましくは40MPa以下、さらに好ましくは20MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下とすることで、繊維の付き抜けを抑えることができる。
【0043】
裏側の面に樹脂を付着させる方法としては例えば、樹脂の溶液や分散液をコーティングすることが挙げられる。この際、コーティング液の粘度を調整し、表側の立毛が接着収束しないように注意することが好ましい。
【0044】
表側の面にフッ素系樹脂を付与する方法としては例えば、フッ素樹脂の溶液や分散液をスプレー、コーティング、ディップニップ、等で付与する方法が挙げられる。
【0045】
クッション層を積層する方法としては、微細粉粒体シール用部材の裏側の面に樹脂を付与した後、硬化する前に重ね合わせる方法や、新たに接着剤を使用して重ね合わせる方法がある。また、両面テープにより接着しても良い。
【実施例】
【0046】
[測定方法]
(1)目付
JIS L 1096:1999 8.4.2に記載された方法で測定した。
20cm×20cmの試験片を3枚採取し、それぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した。
【0047】
(2)厚み
JIS L 1096:1999 8.5に準じて測定した。試料の異なる10か所について厚さ測定機(尾崎製作所製、商品名“ピーコックH”)を用いて、厚さを落ち着かせるために10秒間待った後に厚さを測定し、平均値を算出した。
【0048】
(3)見掛け密度
上記目付の値を上記厚みの値で割って、繊維見掛け密度(g/cm)を求めた。
【0049】
(4)平均単繊維直径
測定対象の側の面を光学顕微鏡にて拡大し、100箇所をランダムに選んで直径を測定した後、数平均を求めた。
【0050】
[実施例1]
(極細繊維立毛編物)
5−ナトリウムスルホイソフタル酸をフタル酸成分に対し8モル%共重合した共重合ポリエステルを海成分とし、ポリエチレンテレフタレートを島成分とした。当該海成分・島成分を用い、8島/ホールの海島型複合口金を用いて、紡糸温度285℃、島/海質量比率80/20、紡糸速度1100m/分にて溶融紡糸した。次いで、ホットロール−ホットロール系延伸機を用いて、延伸温度78℃、熱セット温度125℃で延伸し、糸繊度90dtex、36フィラメントの海島型複合繊維糸を得た。
上記海島型複合繊維糸をパイル糸とし、ポリエチレンテレフタレートからなる糸繊度90dtex、36フィラメントの仮撚加工糸をグランド糸として用い、ダブルラッセル編機で釜間3mm24ゲージの条件で編成した。次に、編成物の厚み中央をスライスして、海島型複合繊維立毛編物を得た。
【0051】
次に、当該海島型複合繊維立毛編物を、マレイン酸1g/Lを添加したpH2.5の酸性水溶液中に130℃で30分間浸けた後、水洗し、水酸化ナトリウム6質量%水溶液に90℃で30分間浸けて海成分を除去して、平均単繊維繊度0.25dtex(平均単繊維直径4.8μm)の極細繊維をパイル部に有しパイル長約1.3mmの極細繊維立毛編物を得た。
【0052】
(起毛処理・水流交絡処理)
上記極細繊維立毛編物の裏側面を針布起毛し、次いで、ノズル直径80μm、ピッチ0.2mmのノズルを用いて8MPaの圧力で裏側面から3回、水流交絡処理を施し、繊維を絡合させた。
この時、表面の立毛は絡合していなかった。
【0053】
(ポリッシャー加工・クッション材積層)
上記の裏側面を絡合させた極細繊維立毛編物の表側面をポリッシャー加工して、立毛繊維を傾斜させた。
次いで、裏側面にアクリル系エマルジョンをコーティングし、厚さ1.5mmのポリウレタンフォームクッション材を積層させて、シール材を得た。
【0054】
得られたシール材は、打ち抜き切断した場合においても繊維のほつれがみられず、また良好なトナーシール性を有していた。
【0055】
[比較例1]
(極細繊維立毛編物)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0056】
(起毛処理・水流交絡処理)
裏側面への起毛処理および水流交絡処理は、行わなかった。
【0057】
(ポリッシャー加工・クッション材積層)
上記極細繊維立毛編物を、実施例1と同様にしてポリッシャー加工し、アクリルエマルジョンをコーティングし、ポリウレタンフォームクッション材を積層させて、シール材を得た。
【0058】
得られたシール材は、打ち抜き切断した場合に繊維がほつれて脱落した。
【0059】
[実施例2]
(極細繊維立毛編物)
ポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸温度285℃、吐出量0.15g/分・ホール、紡糸速度3000m/分にて溶融紡糸した。次いで、仮撚加工機にて、180℃で1.5倍に延伸しながら仮撚加工を施し糸繊度50dtex、144フィラメント(単繊維直径5.7μm)のポリエチレンテレフタレート繊維糸を得た。
得られた仮撚加工糸を100℃で湿熱処理した後、ダブルラッセル編機で、釜間3mm、24ゲージの条件で編成した。次に、編成物の厚み中央をスライスして、極細繊維立毛編物を得た。
【0060】
(起毛処理・水流交絡処理)
上記極細繊維立毛編物に対して、実施例1と同様にして起毛処理・水流交絡処理を施した。
この時、表面の立毛は絡合していなかった。
【0061】
(ポリッシャー加工・クッション材積層)
上記の裏側面を絡合させた極細繊維立毛編物を、実施例1と同様にしてポリッシャー加工し、アクリルエマルジョンをコーティングし、ポリウレタンフォームクッション材を積層させて、シール材を得た。
【0062】
得られたシール材は、打ち抜き切断した場合においても、繊維のほつれはみられず、また実施例1よりも良好なトナーシール性を有していた。
【0063】
[実施例3]
(極細繊維立毛編物)
実施例2で用いたのと同様のものを用いた。
【0064】
(不織布の積層・水流交絡処理)
上記極細繊維立毛編物の裏側に、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる抄造ウェブ(単繊維直径5.3μm、平均繊維長5mm、目付30g/m)を積層し、次いで、ノズル直径80μm、ピッチ0.2mmのノズルを用いて8MPaの圧力で裏側面から3回、水流交絡処理を施し、繊維を絡合させた。
この時、裏面の繊維は絡合すると共に、編物の隙間に入り込み、表面の立毛は絡合していなかった。
【0065】
(ポリッシャー加工・クッション材積層)
上記の裏側面を絡合させた極細繊維立毛編物を、実施例1,2と同様にしてポリッシャー加工し、アクリルエマルジョンをコーティングし、ポリウレタンフォームクッション材を積層させて、シール材を得た。
【0066】
得られたシール材は、打ち抜き切断した場合においても、繊維のほつれはみられず、また実施例2よりも良好なトナーシール性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の微細粉粒体シール用部材および微細粉粒体シール材は、電子写真複写機、レーザープリンター、ファクシミリ、ワードプロセッサー等のトナーカートリッジにおけるトナーのシール材として好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織編物またはそれを含む積層体からなり、前記織編物が少なくとも表側の面を構成し、当該表側の面において前記織編物の繊維が立毛を形成し、裏側の面において繊維が水流交絡処理により絡合してなることを特徴とする微細粉粒体シール用部材。
【請求項2】
前記裏側の面の絡合する繊維が前記織編物を構成する繊維の一部であり、前記表側の面の繊維と連続している、請求項1に記載の微細粉粒体シール用部材。
【請求項3】
前記裏側の面の絡合する繊維が、厚み0.1〜0.5mm、目付10〜50g/mの不織布を構成する、請求項1に記載の微細粉粒体シール用部材。
【請求項4】
前記立毛を形成する繊維が捲縮を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の微細粉粒体シール用部材。
【請求項5】
前記立毛を形成する繊維の平均単繊維直径が0.1〜10μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の微細粉粒体シール用部材。
【請求項6】
前記裏側の面の絡合する繊維の平均単繊維直径が1〜10μmである、請求項1〜6のいずれかに記載の微細粉粒体シール用部材。
【請求項7】
前記表側の面にフッ素系樹脂が付着してなる、請求項1〜6のいずれかに記載の微細粉粒体シール用部材。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の微細粉粒体シール用部材の裏側の面にクッション層が積層されてなることを特徴とする微細粉粒体シール材。

【公開番号】特開2010−69819(P2010−69819A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242249(P2008−242249)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】