説明

情報提供装置および情報提供方法

【課題】本発明は、安全運転支援システムにおいてよりロバストな出会い頭事故防止の運転支援を行い、適切なタイミングによる情報提供の供与と解除が可能な情報提供装置および情報提供方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による情報提供装置は、対象車両が走行している道路が優先道路27または優先道路27と交差点にて交差する非優先道路28のいずれかを判定する道路条件判定部13bと、対象車両と交差点で交差する移動体と対象車両とが交差点に到達するまでの交差点予測到達時間を用いて両者の交錯を判定する時間条件判定部13cと、対象車両と移動体とが交差点に到達するまでの交差点予測到達距離を用いて両者の交錯を判定する距離条件判定部13dと、対象車両の動作状態を判定する運転条件判定部13eとを含み、各判定部による判定結果に基づいて情報提供または注意喚起を行うか否かを判断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全運転支援システムにおいて提供される情報提供装置および情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を走行する車両に搭載された車載装置と、道路側に設置された道路側通信装置との間で各種情報の送受信を行う路車間通信に関して、従来から様々な技術が提案されている。その一例として、ETC(Electronic Toll Collection System)における通信技術を拡張したDSRC(Dedicated Short Range Communication)が開発されている。このような高速伝送技術を利用して、安全運転支援に関する情報提供が実用化されようとしている。
【0003】
安全運転支援に関する情報提供は、従来の光ビーコンやDSRCによる路車間通信技術などを用いて路車間通信の協調によって交通事故を防止するDSSS(Driving Safety Support Systems:交通安全支援システム)が検討されており、交通事故削減の実現への期待が高まっている。
【0004】
従来、例えば通信を利用して出会い頭事故防止に関する技術としては、非優先道を走行する車両に対して、優先道と非優先道との交差点への安全な接近を支援することによって車両相互の出会い頭事故を防止することができ、また、交差点の手前で停止している車両に対して停止後の発進を支援することによって車両相互の出会い頭事故を防止するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−163789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、優先道と非優先道との交差点における出会い頭事故を、車両相互の距離条件を用いて路側インフラによって交錯判定しているが、距離に対する運転手の判断感覚には個人差が大きく、距離を把握しにくいなど、危険検知のHMI(Human Machine Interface)情報を利用する点で有利ではない。また、路側インフラは、減速情報を車両から受信することによって交錯判定を行っており、交差点に進入する車両にとっては限られた通信条件での交錯判定となるため、通信条件の変動や欠如に対してロバストではない。そのため、安全運転支援に関する情報提供が行われた場合には、判断条件の変動や欠如によって情報提供が直ちに終了したり、終了することなく情報提供され続ける場合などがあり、運転手にとっては不確実な情報提供によって混乱し、安全運転支援としての機能が果たされないことが想定される。さらに、路側インフラによって多数の車両を同時に制御することは、路側負荷が急増するため困難となり、安全運転支援情報の提供に対する信頼性が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、安全運転支援システムにおいてよりロバストな出会い頭事故防止の運転支援を行い、適切なタイミングによる情報提供の供与が可能な情報提供装置および情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明による情報提供装置は、交通情報を取得する通信手段と、対象車両の車両情報を取得するセンサ手段と、基準となるパラメータ情報を管理するパラメータ管理手段と、交通情報、車両情報、およびパラメータ情報に基づいて、情報提供または注意喚起を行うか否かを判断する情報提供判断手段と、情報提供判断手段による判断結果に基づいて、情報提供と注意喚起とを含むHMI(Human Machine Interface)情報の出力を制御するHMI情報出力制御手段とを備え、情報提供判断手段は、対象車両が走行している道路が優先道路または優先道路と交差点にて交差する非優先道路のいずれかを判定する道路条件判定部と、対象車両と交差点で交差する移動体と対象車両とが交差点に到達するまでの交差点予測到達時間を用いて両者の交錯を判定する時間条件判定部と、対象車両と移動体とが交差点に到達するまでの交差点予測到達距離を用いて両者の交錯を判定する距離条件判定部と、対象車両の動作状態を判定する運転条件判定部とを含み、各判定部による判定結果に基づいて情報提供または注意喚起を行うか否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、情報提供判断手段は、対象車両が走行している道路が優先道路または優先道路と交差点にて交差する非優先道路のいずれかを判定する道路条件判定部と、対象車両と交差点で交差する移動体と対象車両とが交差点に到達するまでの交差点予測到達時間を用いて両者の交錯を判定する時間条件判定部と、対象車両と移動体とが交差点に到達するまでの交差点予測到達距離を用いて両者の交錯を判定する距離条件判定部と、対象車両の動作状態を判定する運転条件判定部とを含み、各判定部による判定結果に基づいて情報提供または注意喚起を行うか否かを判断するため、安全運転支援システムにおいてよりロバストな出会い頭事故防止の運転支援を行い、適切なタイミングによる情報提供の供与が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0011】
DSSSシステムの適用サービスには、右直事故防止情報提供サービス、左折巻き込み事故防止情報提供サービス、追突事故防止情報提供サービス、一時停止事故防止情報提供サービス、出会い頭事故防止情報提供サービスなどが実施に向けて検討されている。本実施形態では、出会い頭事故防止情報提供サービスの情報提供の判断について以下に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態による情報提供装置を実装する安全運転支援システムのブロック図である。対象車両に搭載される車載装置1(情報提供装置)は、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)車載器をベースとしたDSSS判断処理機能を有する構成を想定したものである。光ビーコン受信機2とDSRC車載器3とは、それぞれ光ビーコン路側機8とDSRC路側機9との間で路車間通信情報を無線通信によって送受信することができる。ここで、無線通信メディアとしては、車車間通信装置、無線タグ、無線LAN(WiFi、WiMAXを含む)、携帯電話などであってもよい。車両センサ4は、対象車両である自車両の速度、加速度、ブレーキ、ウィンカー、アクセル、ステアリング、ワイパー、エンジン、シフトなどに関するセンサ情報を取得することができる。車載装置1からは、HMI情報である画像、音声、テキスト、コードなどを安全運転支援システムとしてカーナビ5に送信して表示7にて表示したり、カーナビ5への送信を解除したりすることができる。他処理装置6は、本実施形態による車載装置1とは異なる車載システムであり、例えばASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)における車載装置がある。車載装置1は、情報判断結果を他処理装置6に伝達することによって、カーナビ5に安全運転支援情報を別系統で表示することができる。ここで、DSRC車載器3およびカーナビ5は、ITS車載器であってもよい。
【0013】
光ビーコン路側機8は、光通信エリアが数mと狭いことから、光通信エリア内では基本的に一台の車両しか存在することができず、複数台の車両が同時に存在することはできない。従って、光ビーコン受信機2は、自車両に向けられた情報のみしか受信せず、他の車両に向けられた情報を受信することはない。よって、光ビーコン受信機2は、DSSSサービス用IDをアップリンクすることによってダウンリンク情報として安全支援情報を入手することができ、車載装置1は走行中の車線情報を取得して交差点の出会い頭に関する情報を得ることができる。
【0014】
DSRC路側機9は、電波通信エリアが数十mと広いことから、電波通信エリア内では同時に複数台の車両が存在することがある。従って、DSRC車載器3は自車両に向けられた情報以外にも、他の車両に向けられた情報を受信することがある。よって、DSRC車載器3は、ダウンリンク情報が自車両に必要な情報であるか否かを選択し、自車両に必要なダウンリンク情報のみを車載装置1に出力する。このとき、DSRC路側機9が設置されていなくても、光ビーコン路側機8からダウンリンク情報を取得してもよい。
【0015】
路側に設置される光ビーコン路側機8とDSRC路側機9は、情報中継装置29と接続されており、同様に情報中継装置29と接続されている車両検知センサ20が検知した車両検知情報および信号機25の信号情報を情報中継装置29を介して受信し、車両に送信する。
【0016】
カーナビ5は、カーナビゲーション機能を有し、車両と運転手とのHMI情報として機能する。また、カーナビ5はGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信機を備えており、GPS受信機から自車両の位置情報を取得して車両情報として出力してもよい。カーナビ5は、車載装置1から受信した安全運転支援用のHMI情報に基づいて画像表示、音声出力、テキスト表示などを行う。従って、自車両の運転手に出会い頭事故の注意喚起情報が通知されて、自車両の前方における出会い頭事故を事前に回避することができる。
【0017】
図2は、本発明の実施形態による情報提供装置のブロック図である。図2に示すように、車載装置1は、交通情報17を取得する通信手段10と、対象車両の車両情報18を取得するセンサ手段11と、基準となるパラメータ情報を管理するパラメータ管理手段14と、交通情報17、車両情報18、およびパラメータ情報に基づいて、情報提供または注意喚起を行うか否かを判断する情報提供判断手段13と、情報提供判断手段13による判断結果に基づいて、情報提供と注意喚起とを含むHMI情報16の出力を制御するHMI情報出力制御手段15とを備えている。
【0018】
車載装置1は、例えば、無線通信を用いた路車間通信であるVICS、DSRC、DSSSに対応した車載装置である。VICS、DSRC、およびDSSSのそれぞれは、UTMS(Universal Traffic Management System:新交通管理システム)の一部のシステムであって道路交通情報を提供するVICSの光ビーコン受信機2と、ETCにおける通信技術を拡張して情報提供を行うDSRCのDSRC車載器3と、光ビーコン受信機2とDSRC車載器3とのうちの少なくとも一つの装置を用いることによって交通事故を防止するための情報提供を行う車判断型のDSSS(安全運転支援システム)として稼動する。
【0019】
図3は、本発明の実施形態による情報提供判断手段13のブロック図である。図3に示すように、情報提供判断手段13は、データ管理手段12にて管理されている交通情報17を用いて出会い頭事故防止支援サービスの対象情報か否かを判定する出会い頭サービス判定部13aと、対象車両が走行している道路が優先道路または優先道路と交差点にて交差する非優先道路のいずれかを判定する道路条件判定部13bと、対象車両と交差点で交差する移動体と対象車両のそれぞれが交差点に到達するまでの交差点予測到達時間を用いて両者の交錯を判定する時間条件判定部13cと、対象車両と移動体のそれぞれが交差点に到達するまでの交差点予測到達距離を用いて両者の交錯を判定する距離条件判定部13dと、対象車両の動作状態を判定する運転条件判定部13eとを含み、各判定部による判定結果に基づいて運転手に対して情報提供または注意喚起を行うか否かを判断し、HMI情報出力制御手段15に出力される。各判定部では、交通情報17および車両情報18から得られた情報を用いて算出処理を行なっている。なお、時間条件判定部13c、距離条件判定部13d、運転条件判定部13eのそれぞれは、車載装置1の仕様に合わせて組み合わせてもよく、一部を用いてもよい。HMI情報出力制御手段15は、対象車両が運転条件判定部13eにて優先道路を走行中と判定された場合は、非優先道路を走行する移動体との交錯についてのHMI情報16を出力し、対象車両が運転条件判定部13eにて非優先道路を走行中と判定された場合は、優先道路を走行する移動体との交錯についてのHMI情報16を出力する。
【0020】
図4は、本発明の実施形態による安全運転支援システムにおけるインフラ側のシステム配置の一例を示す図である。図4では、出会い頭事故防止情報提供サービスの機能のうちの、二当車への情報提供サービスについて説明する。図4に示すように、優先道路27を交差点26に向かって走行中の二当車22(対象車両)に対して、非優先道路28を走行して交差点26に接近中の一当車23(移動体)の接近情報が交通情報として光ビーコン路側機8またはDSRC路側機9などの路側システムから提供される。一当車23の接近情報は、走行車線情報、速度情報、位置情報であってもよい。また、路側システムは、交差点26付近では、信号情報や停止線情報なども併せて提供してもよい。二当車22に搭載されている車載装置1は、路側システムから提供された交通情報を判断し、状況に応じて出会い頭事故防止についての注意喚起情報を運転手に伝達している。
【0021】
上記のサービスによって、出会い頭事故が発生する交差点において、優先道路27を走行中の二当車22は非優先道路28から交差点26に進入しようとしている一当車23を事前に認識することができるため、一当車23の飛び出しによる出会い頭事故の防止に効果がある。
【0022】
図4に示す本実施形態によるインフラ側のシステムでは、非優先道路28と優先道路27とが交差する交差点26において、車両検知センサ20は非優先道路28側に設置されている。車両検知センサ20は、交差点26の中央から一当車23までの距離および速度の算出や一当車23の種別(四輪、二輪など)を検出することができる。光ビーコン路側機8は、交差点26の中央から優先道路27の上流に設置され、DSRC路側機9については、交差点26の中央から光ビーコン路側機8までをDSRC通信エリア19とする。なお、DSRC通信エリア19は、DSRC路側機9の送信電力に従って変更可能である。
【0023】
車載装置1の設計パラメータについて、路側インフラである光ビーコン路側機8やDSRC路側機9などの設置位置、車両検知エリア21、情報提供判断などの設計の規準となるパラメータは以下の通りとする。なお、下記のパラメータは変更可能であるものとする。
【0024】
適用上限速度は、規制速度+10km/hとする。交差点26の走行速度は、右折または左折時に20km/hまで減速するものとする。設計減速度について、注意喚起(認知ミス想定)後の減速度は、乗用車で0.3G(2.94m/s2)、大型車で0.18G(1.8m/s2)とする。設計加速度については、一時停止後に通常発進する場合における加速度とし、停止状態から車両の後端がコリジョンポイント(衝突地点)を過ぎるまでの加速度とする。このとき、車長5mの乗用車で0.1G(0.98m/s2)、車長12mの大型車で0.05G(0.49m/s2)とする。反応時間は、安全運転支援の開始から運転手が動作を開始するまでの時間とし、その時間を3.2秒とする。システム遅延時間は、最大2.0秒とする。ただし、路側インフラ+車側受信、判断処理、表示処理までの時間とし、カーナビ5への表示処理時間を含めてもよい。また、システム遅延時間=[インフラ情報伝達遅延(0.4秒:ASV仕様)]+[光ビーコン受信処理遅延(0.3秒)]+[車載装置判断処理遅延(0.3秒)]+[ナビゲーション表示処理遅延(0.5秒)]+[遅延時間変動(最大0.5秒)]としてもよく、また、各遅延時間や項目は変更可能であり、遅延時間の合計が最大2.0秒となればよい。なお、本実施形態で規定している設計パラメータは、車載装置1のパラメータ管理手段14などに保持されており、変更可能である。
【0025】
路側インフラである光ビーコン路側機8、DSRC路側機9、車両検知センサ20の設置基準を以下に示す。
【0026】
光ビーコン路側機8は、光受信部と制御部とを備えており、交差点など道路の様々な箇所に設置され、二当車22と近赤外線を用いて光通信を行っている。車載装置1は、通信手段10である光ビーコン受信機2から光ビーコン情報として安全運転支援情報を取得する。一方、DSRC路側機9は、数mから数十mのDSRC通信エリア19内にて、車載装置1に対して5.8GHz帯の電波信号を用いて電波通信を行っており、通信手段10であるDSRC車載器3からDSRC情報として安全運転支援情報を取得する。
【0027】
車両検知センサ20は、例えば、カメラ画像から車両を検知する画像センサであり、数mから数十m以上の車両検知エリア21内にて一当車23を検知して車両検知情報として出力する。車両検知情報とは、車両検知センサ20が検知した車両に関する情報のことであり、検出対象となる車両の位置、距離、速度などの情報や車種などが含まれている。なお、車両検知センサ20は、超音波センサや光センサなどの単機能なセンサで構成してもよく、車両検知センサ20を車両検知機能付きの光ビーコンやDSRC路側装置により構成してもよい。
【0028】
信号機25は、交差点26などに設置されており、信号灯器表示と信号情報とを情報中継装置29に出力する。信号情報は、信号機25における赤、黄、青、矢印などの制御信号をリアルタイムに示している。
【0029】
情報中継装置29は、光ビーコン路側機8、DSRC路側機9、車両検知センサ20、信号機25とそれぞれ接続されており、交差点26付近に設置されている。情報中継装置29は、例えば、車両検知センサ20の車両検知情報や信号機25の信号情報を取得し、車両検知情報、車種情報、信号情報などを処理し、交通情報17として光ビーコン路側機8やDSRC路側機9に対して周期的に配信している。これらの交通情報17を受信した光ビーコン受信機8やDSRC路側機9は、周期的に車両に向けて配信しているので、安全運転支援情報を提供するためには光ビーコン路側機8やDSRC路側機9の設置位置が重要となる。
【0030】
光ビーコン路側機8やDSRC路側機9から配信される交通情報17(路車間通信情報)には、出会い頭支援の支援データ区分を示す障害物検知情報、車両検知エリア21内の自車両の障害物となる四輪車や二輪車などの検知情報を表し、その位置、種類、数量、車線などを示す障害物事象表現情報または障害物検知事象表現情報、対象となる交差点の道路および歩行者信号機情報を表し、信号通行方向、交差点方路、灯器番号、灯器数、灯色などを示す信号情報、対象となる交差点の四輪車および二輪車の停止線情報を表し、車線番号、車線数、道程距離、緯度経度などを示す信号事象表現情報が含まれる。特に、光ビーコン路側機8から配信される交通情報17には、車線や車線数を示すAMIS(Advanced Mobile Information Systems)基本情報や、対象となる交差点からの道路形状を表して光ビーコンから対象交差点までの道程をノードとリンクで表現する道路線形情報などが含まれている。
【0031】
光ビーコン路側機8の設置基準は、交差点26の中央から上流方向に距離L1以上離れた地点とする。距離L1は、車載装置1を備える二当車22が光ビーコン路側機8の通過時の走行速度をサービス速度としたときの、空走距離(サービス速度×反応時間)と制動距離((サービス速度)2/2×(設計減速度))との合計距離となる。
【0032】
交差点26の中央から光ビーコン路側機8までの距離:L1[m]
二当車22のサービス速度:V2=60[km/h]
二当車22のシステム遅延時間:Tp2=2[sec]
二当車22の反応時間:Td2=3.2[sec]
二当車22の設計減速度:α2=3[m/s2
とすると、
L1=V22/2α2+V2(Tp2+Td2)≒133[m]
となる。
【0033】
DSRC路側機9のDSRC通信エリア19は、交差点26の中央から上流方向に通信エリア長L2を有する。
【0034】
L2=光ビーコン路側機8までの距離L1[m](送信電力による)
【0035】
通信エリア長L2は、DSRC路側機9の送信電力によってはL1以下、あるいはL1以上であってもよい。また、DSRC路側機9が設置できない場合は、光ビーコン路側機8のみを設置してもよい。
【0036】
車両検知センサ20は、本実施形態ではカメラによる画像センサとする。車両検知エリア21は、交差点26の中央から一当車23を検知するセンシングエリア長Lsを有する。
交差点26の中央から一当車23の検知開始位置までの距離:Ls[m]
一当車23の速度:V1=40[km/h]
一当車23の設計減速度:α1=3[m/s2
一当車23が交差点26の中央に到達するまでの時間:T1=Tp2+Td2=5.2[sec]
とすると、
Ls=V12/2α1+V1T1≒78[m]
本実施形態において、安全運転支援の情報対象区間は、交差点26から非優先道路28の上流方向であって、車両検知センサ20である画像センサが車両検知可能な区間である。
【0037】
運転手に対する安全運転支援の情報提供の判定は、路車間データ、すなわち、障害物検知情報(支援データ区分=出会い頭)、障害物事象表現情報(障害物情報)を用いて行う。
【0038】
運転手に対する情報表示内容は、二当車22が交差点26の中央に向かって停止(車速が0km/h)することを想定し、HMI情報16として出会い頭注意喚起情報(画像、音声、テキスト、振動など)を提供する。また、一当車23が交差点26の中央から離れている場合は、交差点26が出会い頭事故防止提供サービス対象であることを示すサービス提供情報(画像、音声、テキスト、振動など)を提供する。
【0039】
運転手に提供するHMI情報16により、カーナビ5のディスプレイ表示、オーディオスピーカ出力、ハンドルやシートの振動、シートベルトの締め付けなど、搭載された車両を運転中の運転手に対して直接注意喚起できる装置を用いて安全運転支援を行う。
【0040】
図5は、本発明の実施形態による安全運転支援のためのカーナビ表示出力の一例を示す図である。図5に示すように、例えば、車載装置1が取得した交通情報17や車両情報18から、光ビーコン受信機2やDSRC車載器3がDSSSデータを受信すると、地図画面30にDSSSサービスイン32のアイコンが表示され、出会い頭事故防止サービスを示すDSSSサービス画面31が表示される。DSSSサービスイン32のアイコンは、サービスインを示すHMI情報16であって、出会い頭事故防止サービスを示す図形やテキストであってもよく、表示させなくてもよい。
【0041】
図5(a)では、非優先道路28に一当車23が存在しない場合において、交差点26が出会い頭事故防止サービス提供の対象となる交差点であることが分かるテキストや、同様の画像がDSSSサービス画面31に表示される。
【0042】
図5(b)では、非優先道路28に一当車23が存在し、出会い頭事故が発生すると判断した場合において、出会い頭事故防止のための注意喚起に有用なHMI表示、例えば、飛び出し注意などの二当車22の減速を誘導できるようなテキストや、同様の画像が表示される。なお、HMI情報16における道路情報は、優先道路27および非優先道路28を明示してもよく、注意喚起の対象となる道路に対しては塗色や形状を変えて明示してもよい。また、注意喚起の対象となる車両の車種情報、例えば、四輪車や二輪車などの種別から、車種に対応した画像に切り替えて表示してもよい。DSSSサービス画面31への画像の表示は、一画面全体であってもよく、地図画面30に重ねて表示してもよい。また、注意喚起の対象となる車両が交差点26の左右のどちらから接近するのかに合わせて、DSSSサービス画面31に表示されている交差点の左右に表示してもよい。
【0043】
運転手に対して直接注意喚起するHMI情報16を提供する別の方法として、ビープ音を車内のスピーカなどから発してもよい。例えば、非優先道路28に一当車23が存在しない場合は、一定周波数のビープ音によって単発音を発生したり、非優先道路28に一当車23が存在して出会い頭事故が発生すると判断した場合は、上記の周波数とは異なる周波数にしてもよく、当該周波数の発音の繰り返し音を発音する。このとき、車種情報に基づいて車種によって周波数を切り替えてもよい。また、非優先道路28に一当車23が存在しない場合は、障害物検知情報に基づいて出会い頭注意などと発音してもよい。
【0044】
さらに、運転手に対して直接注意喚起する別の方法として、シートやハンドルに振動と加えてもよい。例えば、非優先道路28に一当車23が存在しない場合は、一定周波数の振動で短時間に発してもよく、非優先道路28に一当車23が存在して出会い頭事故が発生すると判断した場合は、上記の周波数とは異なる周波数にしてもよく、当該周波数の振動を繰り返して発してもよい。このとき、車種情報に基づいて車種によって周波数を切り替えてもよい。また、非優先道路28に一当車23が存在しない場合は、障害物検知情報から出会い頭事故注意を示す振動をしてもよい。
【0045】
運転手に対するHMI情報16の提供条件は、障害物検知情報がある場合における「注意喚起」を時間条件または距離条件によって定義する。なお、時間条件と距離条件のいずれかを用いてもよい。
二当車22の車速:V2(60[km/h])
二当車22から交差点26の中央までの距離:L2[m]
一当車23から交差点26の中央までの距離:Ls[m]
一当車23の車速:V1(40[km/h])
とすると、HMI情報提供の各条件は以下のようになる。
【0046】
二当車22の運転手に対する情報提供を判定する時間条件判定部13cでの時間条件は、
二当車22が等速で交差点26の中央に到達するまでの時間:Tc2=L2/V2[sec]
または、
二当車22が減速して交差点26の中央に到達するまでの時間:Tc2=(Tdr+Tds)+2(L2−(Tdr+Tds)V2)/V2[sec]
一当車23が等速で交差点26の中央に到達するまでの時間:Tc1=Ls/V1[sec]
としたとき、
判定条件:Tc1≦Tc2、または、Tc1<Tc2
となる。
【0047】
二当車22の運転手に対する情報提供を判定する距離条件判定部13dでの距離条件は、
一当車23が停止後に再発進するときの加速度:α=1[m/s2
二当車22が等速で交差点26の中央に到達するまでの最小時間:Tc2min=L2/V2=8[sec]
または、
二当車22が減速して交差点26の中央に到達するまでの距離:Tc2min=(Tdr+Tds)+2(L2−(Tdr+Tds)V2)/V2[sec]
一当車23が加速して交差点26に進入することができる最大距離:Lmax=α/2×Tc2min2≒32[m]
としたとき、
判定条件:Ls≦Lmax、または、Ls<Lmax
となる。
【0048】
二当車22の運転手に対する情報提供を判定する運転条件判定部13eでの運転条件は、
ブレーキ:OFF(ブレーキを掛けていない)
二当車22の車速:最低速度(例えば、20km/h)以上
とする。
【0049】
このように、運転条件判定部13eが二当車22(対象車両)の動作状態が所定の条件を満たし、道路条件判定部13bが二当車22が優先道路27を走行していると判定する場合において、情報提供判断手段13が、二当車22が等速で交差点26に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離、または、二当車22が減速して交差点26に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離と、非優先道路28を走行している一当車23(移動体)が等速で交差点26に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離とを比較し、予測走行時間および予測到達距離の少なくとも一方において一当車23の方が短いかまたは等しいと判断すると、HMI情報出力制御手段15は、交錯の注意喚起をHMI情報16として出力する。
【0050】
運転手に対するHMI情報16を消去する消去条件は、時間条件、距離条件、および運転条件のいずれかを満たすことにより成立し、時間条件、距離条件、運転条件の各々は、時間条件判定部13c、距離条件判定部13d、運転条件判定部13eが判定する。上述のようにHMI情報16の提供条件を満たして提供された情報は、下記の条件によって提供情報を消去する。
時間条件:固定時間[sec](例えば、4[sec](表示条件を満足しなくなってからの継続時間))
距離条件:L2≦0(交差点26の中央を通過後)、または、L2<0
運転条件:V2<最低速度(例えば、20[km/h])(表示条件を満足しなくなってからの二当車22の速度)。このときV2は、V2≦20[km/h]であってもよい。
【0051】
このように、運転条件判定部13eが二当車22(対象車両)の動作状態が所定の条件を満たし、道路条件判定部13bが二当車22が優先道路27を走行していると判定する場合において、HMI情報出力制御手段15は、HMI情報16の表示後、時間条件判定部13cでの所定の時間条件、距離条件判定部13dでの交差点26までの距離条件、運転条件判定部13eでの二当車22の速度条件を用いることによってHMI情報16を消去する。
【0052】
図6は、本発明の実施形態による情報提供装置の動作の一例を示すフローチャートである。図6では、優先道路27を走行する二当車22に対する動作判定を示している。二当車22に搭載された車載装置1を起動した後に路車間通信エリアに進入すると、光ビーコン受信機2やDSRC車載器3はDSSS情報を繰り返し取得することによって交通情報17を入手すると同時に、車両センサ4によって自車両の車両情報18を繰り返し入手する。入手した交通情報17および車両情報18は、データ管理手段12に蓄積、更新され、これらの情報を用いて二当車22の判断処理を行う。
【0053】
図6に示すように、情報提供判断手段13では、取得した交通情報17から出会い頭事故防止支援サービスであるか否かを判定し、他の支援サービスや異なる道路情報サービスである場合には出会い頭事故防止支援サービスを開始しない(ステップS601)。ステップS601にて出会い頭事故防止支援サービスが開始されると、取得した交通情報17から自車両が現在走行中の道路が優先道路27または非優先道路28のいずれであるかを判定し、自車両が優先道路27を走行中であると判定すると、二当車22に対して出会い頭事故防止支援サービスを開始する(ステップS602)。ステップS602にて優先道路27ではないと判定されると非優先道路28を走行中であると判定され、非優先道路28を走行する一当車23に対する判断処理が開始される(ステップS606)。
【0054】
ステップS602にて優先道路27であると判定されると、取得した交通情報17から道路情報を処理し、出会い頭事故防止支援サービスの対象となる交差点26の停止線前であるか否かを判定し、停止線前であると判定されるとステップS604に移行する(ステップS603)。次に、車両情報18から自車両の速度、加速度に基づいて走行速度を算出し、パラメータ管理手段14にて定義されている設計パラメータの最低速度と比較して最低速度以上であればステップS605に移行する(ステップS604)。ステップS604にて自車両が最低速度以上であると判定されると、取得した交通情報17および車両情報18から、優先道路27を走行する自車両(二当車22)と、非優先道路28を走行する車両(一当車23)または停止中の車両との交差点26における交錯を、交差点到達時間や交差点到達距離を予測することによって交錯の判定を行い(ステップS605)、判定結果をHMI情報出力制御手段15に出力し、ステップS601に戻る。情報提供判断手段13では、上記の一連の処理を繰り返し行う。
【0055】
HMI情報出力制御手段15では、情報提供判断手段13から最新の判定結果が繰り返し入力される(ステップS607)と同時に、前回入力された判定結果を保持している(ステップS608)。そして、ステップS607における最新の判定結果と、ステップS608における前回の判定結果とを比較し、情報提供判断手段13から入力された交錯の判定結果が同じかまたは異なるかの判定を行う(ステップS609)。ステップS609での判定の結果、交錯の判定が異なる場合はHMI情報16を更新し(ステップS610)、交錯の判定が同じである場合はHMI情報16を保持し(ステップS611)、これらの処理を出会い頭事故防止支援サービスが継続中に繰り返し行う。
【0056】
ステップS609における交錯の判定結果によって出力されたHMI情報16は、ステップS610にて更新された場合は注意喚起状態にあって情報表示条件に合致しているため運転手に対して表示出力される。一方、ステップS611にて保持された場合は注意喚起状態が維持され、所定の情報消去条件の判定に従って(ステップS612)、運転手に対して表示出力されているHMI情報16を消去する(ステップS613)。HMI情報出力制御手段15では、上記の一連の処理を繰り返し行う。
【0057】
このように、情報提供判断手段13が、優先道路27を走行している二当車22(対象車両)が等速で交差点26に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離、または、二当車22が減速して交差点26に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離と、非優先道路28を走行している一当車23(移動体)が一旦停止した後に等加速度で発進して交差点26に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離とを比較し、予測走行時間および予測到達距離の少なくとも一方が一当車23の方が短いかまたは等しいと判断すると、HMI情報出力制御手段15は、交錯の注意喚起をHMI情報16として出力する。従って、例えば、通信エリア内の通信状態が悪くて交通情報の一部が欠落していたとしても取得した交通情報17を基準として交錯の判定処理が行えるため、交通情報17の欠落に対してロバストとなる。
【0058】
図7は、本発明の実施形態による安全運転支援システムにおけるインフラ側のシステム配置の一例を示す図である。図7では、出会い頭防止情報提供サービスのうちの、一当車23への情報提供サービスについて説明する。図7に示すように、非優先道路28を交差点26に向かって走行中の一当車23に対して、優先道路27を走行している交差点26に接近中の二当車22の接近情報が路側システムから提供される。二当車22の接近情報は、走行車線情報、速度情報、位置情報であってもよい。また、交差点26付近では、信号情報や停止線情報なども併せて提供してもよい。一当車23に搭載されている車載装置1は、路側システムから提供された情報を判断し、状況に応じて出会い頭事故防止についての注意喚起情報を運転手に伝達している。
【0059】
上記のサービスによって、二当車22にとって目視が困難な交差点26において、非優先道路28を走行中の一当車23は優先道路27から交差点26に進入しようとしている二当車22を事前に認識することができるため、出会い頭での交錯事故の防止に効果がある。
【0060】
図7に示す本実施形態によるインフラ側のシステムでは、非優先道路28と優先道路27とが交差する交差点26において、車両検知センサ20は優先道路27側に設置されている。車両検知センサ20は、交差点26の中央から二当車22までの距離および速度の算出や二当車22の種別(四輪、二輪など)を検出することができる。光ビーコン路側機8は、交差点26の中央から非優先道路28の上流に設置され、DSRC路側機9については、交差点26の中央から停止線を含む光ビーコン路側機8までをDSRC通信エリア19とする。なお、DSRC通信エリア19は、DSRC路側機9の送信電力に従って変更可能である。
【0061】
路側インフラである光ビーコン路側機8、DSRC路側機9、車両検知センサ20の設置基準を以下に示す。
【0062】
光ビーコン路側機8は、停止線から下流方向に距離L4の位置に設置する。
【0063】
DSRC路側機9のDSRC通信エリア19は、交差点26の中央から上流方向に通信エリア長L2を有する。L2は、送信電力やアンテナ利得に従って可変であるものとする。
【0064】
車両検知センサ20は、本実施形態ではカメラによる画像センサとする。車両検知エリア21は、交差点26の中央から二当車22を検知するセンシングエリア長Lsを有する。
交差点26の中央から二当車22の検知開始位置までの距離:Ls[m]
二当車22の速度:V2=60[km/h]
二当車22の設計減速度:α2=3[m/s2
二当車22が交差点26の中央に到達するまでの時間:T2=Tp2+Td2=5.2[sec]
とすると、
Ls=V22/2α2+V2T2≒133[m]
本実施形態において、安全運転支援の情報対象区間は、交差点26から優先道路27の上流方向であって、車両検知センサ20である画像センサが車両検知可能な区間である。
【0065】
運転手に対する安全運転支援の情報提供の判定は、路車間データ、すなわち、障害物検知情報(支援データ区分=出会い頭)、障害物事象表現情報(障害物情報)を用いて行う。
【0066】
運転手に対する情報の表示内容は、二当車22が交差点26に接近しているときに、一時停止後に発車しようとしている一当車23の発進を抑制するような注意喚起を行うHMI情報16(画像、音声、テキスト、振動など)を提供する。HMI情報16の表示方法は、前述の図5についての説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。ただし、前述の図5についての説明中において、一当車23と二当車22とを読み替え、また、非優先道路28と優先道路27とを読み替えるものとする。
【0067】
運転手に対するHMI情報16の提供条件は、障害物検知情報がある場合における「情報提供」および「注意喚起」を時間または相対距離によって定義する。なお、時間条件と距離条件のいずれかを用いてもよい。
二当車22の車速:V2(60[km/h])
二当車22から交差点26の中央までのセンサ検出距離:L2[m]
一当車23の車両反応時間:Tp1=3.2[sec]
一当車23のディスプレイ反応時間:Td1=0.5[sec]
一当車23による交差点26の中央までの空走時間:T1=Tp1+Td1=3.5[sec]
一当車23の設計加速度:α1[m/s2
一当車23が交差点26を通過する時間:T0=2[sec](普通車)、4[sec](大型車)
とすると、HMI情報提供の各条件は以下のようになる。
【0068】
一当車23の運転手に対する情報提供を判定する時間条件判定部13cでの時間条件は、 二当車22が交差点26の中央に到達するまでの時間:Tc2=L2/V2[sec]
としたとき、
判定条件:Tc2≦max(T1、T0)、または、Tc2<max(T1、T0)
となる。ここで、交差点26に複数のセンサ領域がある場合は、短い方のTc2によって二当車22の接近を判定する。
【0069】
一当車23の運転手に対する情報提供を判定する距離条件判定部13dでの距離条件は、
二当車22が交差点26の中央に到達するまでの距離:Lc2=L2[m]
としたとき、
判定条件:Lc2≦max(1/2α12T1、1/2α12T0)、または、Lc2<max(1/2α12T1、1/2α12T0)
となる。
【0070】
一当車23の運転手に対する情報提供を判定する運転条件判定部13eでの運転条件は、
ブレーキ:OFF(ブレーキを掛けていない)
一当車23の車速:最低速度(例えば、20km/h)未満
とする。なお、情報表示条件の成立後、ブレーキがONからOFFに解除されると再度情報を表示するようにしてもよい。
【0071】
このように、道路条件判定部13bが一当車23(対象車両)が非優先道路28を走行していると判定する場合において、情報提供判断手段13が、一当車23が等速で交差点26に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離、または、一当車23が減速して交差点26に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離と、優先道路27を走行している二当車22(移動体)が等速で交差点26に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離とを比較し、予測走行時間および予測到達距離の少なくとも一方が二当車22の方が短いかまたは等しいと判断すると、HMI情報出力制御手段15は、交錯の注意喚起をHMI情報16として出力する。
【0072】
一当車23の運転手に対するHMI情報16を消去する消去条件は、時間条件、距離条件、および運転条件のいずれかを満たすことにより成立する。上述のようにHMI情報16の提供条件を満たして提供された情報は、下記の条件によって提供情報を消去する。
時間条件:二当車22の最後尾車両のTc2+交差点通過余裕時間[sec]後とする。ここで、例えば、交差点通過余裕時間=0.5[sec]であってもよく、T0経過後であってもよい。
位置条件:交差点26の通過後
速度条件:V1>最低速度(例えば、20[km/h])、または、V2≧最低速度であってもよい。
【0073】
このように、運転条件判定部13eが一当車23(対象車両)の動作状態が所定の条件を満たし、道路条件判定部13bが一当車23が非優先道路28を走行していると判定する場合において、HMI情報出力制御手段15は、HMI情報16の表示後、時間条件判定部13cでの所定の時間条件、距離条件判定部13dでの交差点26までの距離条件、運転条件判定部13eでの一当車23の速度条件を用いることによってHMI情報16を消去する。
【0074】
図8は、本発明の実施形態による情報提供装置の動作の一例を示すフローチャートである。図8では、非優先道路28を走行する一当車23に対する動作判定を示している。図8に示すフローチャートにおいて、HMI情報出力制御手段15での処理動作(ステップS809〜ステップS815)については、図6におけるHMI情報出力制御手段15での処理動作(ステップS607〜ステップS613)と同様であるためここでは説明を省略し、情報提供判断手段13での処理動作(ステップS801〜ステップS808)についてのみ説明する。
【0075】
図8に示すように、情報提供判断手段13では、取得した交通情報17から出会い頭事故防止支援サービスであるか否かを判定し、他の支援サービスや異なる道路情報サービスである場合には出会い頭事故防止支援サービスを開始しない(ステップS801)。ステップS801にて出会い頭事故防止支援サービスが開始されると、取得した交通情報17から自車両が現在走行中の道路が優先道路27または非優先道路28のいずれであるかを判定し、自車両が非優先道路28を走行中であると判定すると、一当車23に対して出会い頭事故防止支援サービスを開始する(ステップS802)。ステップS802にて非優先道路28ではないと判定されると優先道路27を走行中であると判定され、優先道路27を走行する二当車22に対する判断処理が開始される(ステップS806)。
【0076】
ステップS802にて非優先道路28であると判定されると、取得した交通情報17から道路情報を処理し、出会い頭事故防止支援サービスの対象となる交差点26の停止線前であるか否かを判定し、停止線前であると判定されるとステップS804に移行する(ステップS803)。次に、車両情報18から自車両の速度、加速度に基づいて走行速度を算出し、パラメータ管理手段14にて定義されている設計パラメータの最低速度と比較して最低速度以上であればステップS805に移行する(ステップS804)。ステップS804にて自車両が最低速度以上であると判定されると、取得した交通情報17および車両情報18から、非優先道路28を走行する自車両(一当車23)と、優先道路27を走行する車両(二当車22)または停止中の車両との交差点26における交錯を、交差点到達時間や交差点到達距離を予測することによって交錯の判定を行い(ステップS805)、判定結果をHMI情報制御手段15に出力し、ステップS801に戻る。情報提供判断手段13では、上記の一連の処理を繰り返し行う。
【0077】
また、一当車23に対する出会い頭事故防止支援サービスは、一当車23が停止線を通過した後であってもサービスを続行してもよい。すなわち、一当車23が停止線前にて一時停止した後に再発進した場合においてもサービスを続行する。図8に示すように、ステップS803にて自車両(一当車23)が停止線前ではないと判定されると(自車両が停止線後であると判断されると)、一当車23が一時停止後に再発進しているか否かを判定する(ステップS807)。ステップS807にて一当車23が再発進していると判定されると、一当車23の走行速度が最適速度未満であるか否かを判定する(ステップS808)。ステップS808にて一当車23が最適速度未満で走行していると判定されると、ステップS805に移行する。
【0078】
上記のように、一当車23が停止線を通過した後の場合では上記条件判断からHMI情報16が消去されてることから、一当車23が停止線付近にて一時停止後に再発進したときの加速度や速度に基づいて交差点進入状況を判断する。また、交差点26に進入してくる二当車22の動きを取得した情報から予測し、一当車23の運転手に対して、二当車22が交差点22を通過するまでの間は交差点26に進入しないように注意喚起となるHMI情報16を出力して発車の抑制を行う。このような動作処理を繰り返し行い、二当車22が交差点を通過するか、または、二当車23が交差点を通過した後に、一定条件下でHMI情報16を消去する。
【0079】
以上のことから、安全運転支援システムにおいてよりロバストな出会い頭事故防止の運転支援を行い、適切なタイミングによる情報提供の供与と解除が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態による情報提供装置を実装する安全運転支援システムのブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による情報提供装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による情報提供判断手段のブロック図である。
【図4】本発明の実施形態による安全運転支援システムにおけるインフラ側のシステム配置の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による安全運転支援のためのカーナビ表示出力の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態による情報提供装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態による安全運転支援システムにおけるインフラ側のシステム配置の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による情報提供装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 車載装置、2 光ビーコン受信機、3 DSRC車載器、4 車両センサ、5 カーナビ、6 他処理装置、7 表示、8 光ビーコン路側機、9 DSRC路側機、10 通信手段、11 車両情報、12 データ管理手段、13 情報提供判断手段、13a 出会い頭サービス判定部、13b 道路条件判定部、13c 時間条件判定部、13d 距離条件判定部、13e 運転条件判定部、14 パラメータ管理手段、15 HMI情報出力制御手段、16 HMI情報、17 交通情報、18 車両情報、19 DSRC通信エリア、20 車両検知センサ、21 車両検知エリア、22 二当車、23 一当車、24 交錯予測地点、25 信号機、26 交差点、27 優先道路、28 非優先道路、29 情報中継装置、30 地図画面、31 DSSSサービス画面、32 DSSSサービスイン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通情報を取得する通信手段と、
対象車両の車両情報を取得するセンサ手段と、
基準となるパラメータ情報を管理するパラメータ管理手段と、
前記交通情報、前記車両情報、および前記パラメータ情報に基づいて、情報提供または注意喚起を行うか否かを判断する情報提供判断手段と、
前記情報提供判断手段による判断結果に基づいて、前記情報提供と前記注意喚起とを含むHMI(Human Machine Interface)情報の出力を制御するHMI情報出力制御手段と、
を備え、
前記情報提供判断手段は、前記対象車両が走行している道路が優先道路または前記優先道路と交差点にて交差する非優先道路のいずれかを判定する道路条件判定部と、前記対象車両と前記交差点で交差する移動体と前記対象車両とが前記交差点に到達するまでの交差点予測到達時間を用いて両者の交錯を判定する時間条件判定部と、前記対象車両と前記移動体とが前記交差点に到達するまでの交差点予測到達距離を用いて両者の交錯を判定する距離条件判定部と、前記対象車両の動作状態を判定する運転条件判定部とを含み、
前記各判定部による判定結果に基づいて前記情報提供または前記注意喚起を行うか否かを判断することを特徴とする、情報提供装置。
【請求項2】
前記運転条件判定部が前記対象車両の動作状態が所定の条件を満たし、前記道路条件判定部が前記対象車両が前記優先道路を走行していると判定する場合において、
前記情報提供判断手段が、前記対象車両が等速で前記交差点に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離、または、前記対象車両が減速して前記交差点に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離と、前記非優先道路を走行している前記移動体が等速で前記交差点に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離とを比較し、前記予測走行時間および前記予測到達距離の少なくとも一方が前記移動体の方が短いかまたは等しいと判断すると、
前記HMI情報出力制御手段は、交錯の注意喚起を前記HMI情報として出力することを特徴とする、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記情報提供判断手段が、前記対象車両が等速で前記交差点に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離、または、前記対象車両が減速して前記交差点に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離と、前記非優先道路を走行している前記移動体が一旦停止した後に等加速度で発進して前記交差点に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離とを比較し、前記予測走行時間および前記予測到達距離の少なくとも一方が前記移動体の方が短いかまたは等しいと判断すると、
前記HMI情報出力制御手段は、交錯の注意喚起を前記HMI情報として出力することを特徴とする、請求項2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記運転条件判定部が前記対象車両の動作状態が所定の条件を満たし、前記道路条件判定部が前記対象車両が前記優先道路を走行していると判定する場合において、
前記HMI情報出力制御手段は、前記HMI情報の表示後、前記時間条件判定部での所定の時間条件、前記距離条件判定部での前記交差点までの距離条件、前記運転条件判定部での前記対象車両の速度条件を用いることによって前記HMI情報を消去することを特徴とする、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記道路条件判定部が前記対象車両が前記非優先道路を走行していると判定する場合において、
前記情報提供判断手段が、前記対象車両が等速で前記交差点に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離、または、前記対象車両が減速して前記交差点に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離と、前記優先道路を走行している前記移動体が等速で前記交差点に到達するまでの予測走行時間および予測到達距離とを比較し、前記予測走行時間および前記予測到達距離の少なくとも一方が前記移動体の方が短いかまたは等しいと判断すると、
前記HMI情報出力制御手段は、交錯の注意喚起を前記HMI情報として出力することを特徴とする、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記運転条件判定部が前記対象車両の動作状態が所定の条件を満たし、前記道路条件判定部が前記対象車両が前記非優先道路を走行していると判定する場合において、
前記HMI情報出力制御手段は、前記HMI情報の表示後、前記時間条件判定部での所定の時間条件、前記距離条件判定部での前記交差点までの距離条件、前記運転条件判定部での前記対象車両の速度条件を用いることによって前記HMI情報を消去することを特徴とする、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項7】
通信手段が交通情報を取得するステップと、
センサ手段が対象車両の車両情報を取得するステップと、
パラメータ管理手段が基準となるパラメータ情報を管理するステップと、
情報提供判断手段が前記交通情報、前記車両情報、および前記パラメータ情報に基づいて、情報提供または注意喚起を行うか否かを判断するステップと、
HMI情報出力制御手段が前記情報提供判断手段による判断結果に基づいて、前記情報提供と前記注意喚起とを含むHMI情報の出力を制御するステップと、
前記情報提供判断手段が情報提供または注意喚起を行うか否かを判断するステップは、道路条件判定部が前記対象車両が走行している道路が優先道路または前記優先道路と交差点にて交差する非優先道路のいずれかを判定するステップと、時間条件判定部が前記対象車両と前記交差点で交差する移動体と前記対象車両とが前記交差点に到達するまでの交差点予測到達時間を用いて両者の交錯を判定するステップと、距離条件判定部が前記対象車両と前記移動体とが前記交差点に到達するまでの交差点予測到達距離を用いて両者の交錯を判定するステップと、運転条件判定部が前記対象車両の動作状態を判定するステップとを含み、前記情報提供判断手段が前記各判定部による判定結果に基づいて前記情報提供または前記注意喚起を行うか否かを判断することを特徴とする、情報提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−123026(P2010−123026A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297724(P2008−297724)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】