説明

情報端末及びその入力方法

【課題】周囲の人間に観察されることのない動作により、入力を行うことができる情報端末及び入力方法を提供する。
【解決手段】情報端末は、筐体と、ユーザの入力動作を検知するセンサと、所定の入力信号に対応するユーザの入力動作が登録されたメモリと、筐体内に設置されセンサが検知した入力動作に対応する入力信号がメモリに登録されているか否かを判定する信号解析部と、信号解析部により振動されセンサを振動させる振動素子とを備え、信号解析部は、センサが検知した入力動作に対応する入力信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報端末及びその入力方法に関し、より詳細には、ユーザからの入力を受ける機能を有する情報端末及びその入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の携帯電話やPDA等などの情報端末は、高機能化してきており、数々の決済機能を有するほか、種々のプライベート情報も蓄積し得るようになってきている。しかし、このような情報端末は、その可搬性の故、端末の盗難や置忘れによる不正利用のリスクが高まっている。そこで、一般的に、決済機能やプライベート情報を扱うときは、本人確認のための認証が事前に行われる。
【0003】
一般の個人認証技術としては、PINなどの知識に基づく認証、ICカードなどの所有物による認証、指紋や虹彩、静脈などの身体的特徴に基づくバイオメトリクスや、ジェスチャー等の行動的特徴によるジェスチャー認証などが知られている。特に、バイオメトリクスによるによる認証は、パスワードを記憶したり特定のアイテムを所持したりする必要がないため利便性が高く、情報端末への実装も行われている。
【0004】
また、従来の情報端末は、入力装置として、ダイヤルキー、カメラ、マイク、加速度センサ、タッチセンサなどを備えたものが知られている。ユーザは、情報端末のこのような入力装置から入力操作を行い、認証を行う。入力方法としてはパスワードなどのキー操作、指紋画像などの画像認識、声紋などの音声認識、ジェスチャー認識、ペン入力などがある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−32852号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、認証とは一般的に、(1)どのような認証技術が用いられているか、(2)認証を受けるキーとなる情報そのもの(例えば、パスワード、本人の指紋等)の2つの情報を組み合わせることにより行われるといえる。
【0007】
一方、情報端末は、その可搬性のため、あらゆる時間にあらゆる場所で用いられ得る。従って、ユーザが認証のための入力を行う間、周囲に人がいることが多くなる。そのため、操作の様子、操作内容を周囲の人間から覗かれる可能性が非常に高い。その結果、どのような認証技術が用いられているか、場合によっては認証を受けるキーとなる情報そのものまでをも露呈することになりかねない。
【0008】
特にバイオメトリクス認証の場合、指紋、虹彩、声紋など、外部から観察可能な身体的特徴を使っているため、例えば残留指紋や写真などから盗まれる、または偽造される可能性がある。現に、例えば指紋によるバイオメトリクス認証の場合、グミでできた人口指で認証システムを騙すことができるという研究結果が伝えられている。バイオメトリクス認証は、ユーザに固有の身体的特徴をキー情報として使っているため、キー情報が一度盗まれると、認証方法自体を変更しなければならなくなる。
【0009】
さらに、情報端末の場合、認証に用いられる操作の簡便性を損なうことは望ましくなく、短時間に達成可能で、複雑な手順を踏むことなくできるものでなければならない。従って、情報漏洩を防ぐためとはいえ、複雑な手順を導入することは難しい。
【0010】
特許文献1は、入力キー操作を隠すためのカバーを有する携帯型決済端末装置を開示している。しかし、この技術は、暗証番号入力という認証方法に限られ、認証のキーとなる暗証番号自体を隠すに過ぎず、認証の動作を行っていること自体はカバーの利用により露呈されてしまう。
【0011】
上記問題を回避する方法として、動作を伴わない方法、例えばBCI(Brain Computer Interface)という、人の脳内に流れる電気信号を直接コンピュータに結びつけることによって、物理的な動作なしに、考えるだけでコンピュータを操作できるようにしたインターフェースや、嘘発見器のように微小な動作・生体反応を基に操作者の意図を汲み取る方法も考案されている。しかし、このような方法を情報端末の入力に簡便に導入するのは難しく、また、ユーザ自身も、微小な動作をするつもりが意図せずして観察可能な大きな動作をしてしまい、結果的に周囲の人間に認証の様子を観察されてしまうという危険が残る。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、周囲から観察されないように認証などの入力を行う方法、及び、そのような入力方法が実行できる情報端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の情報端末は、筐体と、ユーザの入力動作を検知するセンサと、所定の入力信号に対応するユーザの入力動作が登録されたメモリと、前記筐体内に設置され、前記センサが検知した入力動作に対応する入力信号がメモリに登録されているか否かを判定する信号解析部と、前記信号解析部により振動され前記センサを振動させる振動素子とを備え、前記信号解析部は、前記センサが検知した入力動作に対応する入力信号を出力する。
【0014】
この構成によれば、振動素子を振動させることにより、ユーザの入力動作が過大動作であるときにユーザにその旨を通知したり、ユーザの入力動作を振動により隠蔽することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報端末であり、前記信号解析部は、前記センサからの出力値に基づく比較変数が所定の最大値以上であるとき、前記センサが検知した動作は過大動作であると判定し、前記センサを振動させるよう振動素子を振動させる。
【0016】
この構成によれば、振動素子を振動させることにより、ユーザの入力動作が過大動作であるときにユーザにその旨を通知することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の情報端末であり、前記信号解析部は、前記振動素子が振動している間に前記センサが検知した入力動作に対応する入力信号のみを出力する。
【0018】
この構成によれば、振動素子を振動させることにより、ユーザの入力動作を隠蔽することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の情報端末であり、前記振動素子は、定常振動で、もしくは予め決められたパターンに従って、もしくはランダムに振動するよう制御される。
【0020】
この構成によれば、振動素子を振動させることにより、ユーザの入力動作を隠蔽することが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の情報端末であり、前記信号解析部は、前記センサからの出力値に基づいて前記振動素子を振動させる。
【0022】
この構成によれば、振動素子を振動させることにより、ユーザの入力動作を隠蔽することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の情報端末であり、前記信号解析部は、前記振動素子の振動の強さと、リズムと、周波数と、方向との少なくともいずれか1つを制御する。
【0024】
この構成によれば、振動素子を振動させることにより、ユーザの入力動作を隠蔽することが可能となる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の情報端末であり、前記信号解析部は、前記センサからの出力値から前記振動素子の振動成分を除去する。
【0026】
この構成によれば、より正確な入力動作の検知が可能になる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の情報端末であり、前記信号解析部は、前記振動素子を振動させるための振動制御パラメータを、ユーザと前記センサとの接触を保ちつつ、かつ前記振動素子の振動がユーザの入力動作を隠蔽する。
【0028】
この構成によれば、より正確な入力動作の検知が可能になる。
【0029】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれか1つに記載の情報端末であり、前記信号解析部は、前記センサの出力値に基づく比較変数が所定の最低値以上であって前記センサが検知した入力動作はユーザの意図的入力動作であると判定したとき、前記センサが検知した入力動作に対応する入力信号がメモリに登録されているか否かを判定する。
【0030】
この構成によれば、より正確な入力動作の検知が可能になる。
【0031】
請求項10に記載の入力方法は、周囲に入力動作を観察されないように情報端末に入力を行う方法であって、前記情報端末のセンサがユーザの入力動作を検知するステップと、前記センサが検知した動作に対応する入力信号が、メモリに登録されているか否かを信号解析部が判定するステップと、前記センサが検知した動作に対応する入力信号を信号解析部が出力するステップと、前記信号解析部が前記センサを振動させるよう振動素子を振動させるステップとを有する、周囲に入力動作を観察されずに請求項1乃至9のいずれか1つの情報端末に入力を行う方法である。
【0032】
この構成によれば、振動素子を振動させることにより、ユーザの入力動作が過大動作であるときにユーザにその旨を通知したり、ユーザの入力動作を振動により隠蔽することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、周囲の人間に観察されることのない動作により、情報端末への入力を行うことができる。
【0034】
また本発明は、そのような入力が可能な情報端末及び入力方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0036】
<第1実施例>
図1は、本発明に係る情報端末の一例としての携帯電話である。携帯電話1は、筐体2と、スクリーンと、入力キーと、センサ5と、振動素子(バイブレータ)6と、信号解析部7と、図示されないメモリ及び制御部とを有する。振動素子6と信号解析部7とは、筐体2に内蔵されている。センサ5も筐体2に内蔵されているが、ユーザの入力動作を検知するため、筐体2の表面に一部露出するよう設置されている。
【0037】
センサ5は、ユーザの微小動作が検出できるよう、高感度に設定してある。具体的には圧力センサや2つの電極から構成されるインピーダンス(皮膚とセンサとの接触インピーダンス)検出センサ、また光電センサ(皮膚に光を照射し、その反射光強度を計測)等であればよく、それ以外の物理量を計測するセンサでも構わない。ただし、微小動作を検出できる程度にまで感度を高めておく必要がある。また、指(もしくは皮膚)が接触していない場合に、センサが周囲の環境のため接触があったとご認識してしまうことを回避するため、例えばタッチセンサなどを組み合わせて、指がセンサ5に接触しているとタッチセンサが感知しているときのみ、入力信号を検出するようにすることが望ましい。
【0038】
信号解析部7は、センサ5と、振動素子(バイブレータ)6と、メモリとに機能的に接続されており、ユーザのセンサ5への入力が周囲から観察されないような微小な動作であるよう、ユーザをガイドしつつ、センサ5からの入力を、メモリに事前に格納された入力動作の記録と照合することで入力信号を確定し、制御部に入力信号として出力する。
【0039】
信号解析部7は、センサ5からの出力を取り込み、センサ5からの出力を解析することで微小動作を特定し、入力された微小動作が事前にメモリの登録動作表に登録された登録動作と一致するか否かを判定し、登録動作と一致した場合は対応する入力信号を制御部に出力し、さらに振動素子6の振動開始、停止、リズムや強度の調節などの制御を行うことができる。
【0040】
振動素子6は、信号解析部7からの指示に基づいて、携帯電話1を振動させる。振動素子6は携帯電話1全体を振動させる必要は必ずしもなく、センサ5とセンサ5に接触している指とが、ユーザの微小動作以上に振動すれば十分である。
【0041】
ユーザは、本発明にかかる入力方法を開始するに当たり、微小動作による入力モード設定の操作を行う。これは、図3のステップ101において、携帯電話1の入力キーの特殊なキーを操作するなどによって設定できる。また、例えば折り畳み式電話の場合は、情報端末が開いたときや、ユーザが情報端末に触れたときに、自動的に微小動作入力モードが設定されるようにすることもできる。また、携帯電話の使用時には自動的に微小動作による入力が行われるよう、予め携帯電話をそのように設定しておくことも可能である。その場合、微小動作入力開始に際して入力モードの設定をいちいち行う必要はない。
【0042】
次に、ステップ102では、ユーザが指先で行った動作をセンサ5が検知する。センサ5からの出力は、信号解析部7へと送られる。後述のように信号解析部7は、センサ5からの出力がユーザの意図的な入力であるか、ノイズであるかを判定し、ユーザの意図的な動作であったと判定したときは、ステップ103に移動する。ステップ103では、ユーザが行った動作が過大であるか、つまり周囲の人間から観察可能な動作であるかを判定する。もし入力動作が過大であると判定した場合には、携帯電話1の信号解析部7は振動素子6を振動させ(ステップ104)、その後、振動を終えてステップ102に戻り次のユーザの入力動作検知を待機する。一方、ステップ103において微小動作が過大ではないと判定された場合は、信号解析部7は現在解析された微小動作が事前に登録された動作であるか否かを判定する(ステップ105)。
【0043】
もし、ステップ105において解析された微小動作が事前に登録された動作でないと判定されれば、信号解析部7はステップ102に戻り次のユーザの入力動作検知を待機する。もし、解析された微小動作が事前に登録された動作であると判定された場合は、登録されている入力動作に対応した入力信号を制御部に出力する(ステップ106)。
【0044】
図4に、信号解析部7が図3の102,103で行う処理の詳細を示す。図4(b)のステップ201から203が図3のステップ102に対応し、ステップ204がステップ103に対応する。図4(a)は図4(b)のプロセスによってユーザの微小動作がある/なしを判定し、登録動作とのマッチングを算出する際の判定情報として微小動作が発生するタイミングを使用する処理の例をしめす。図4(a)は、センサ5からの出力値の推移と、その出力値が「微小動作」と「過大動作」とのどちらかに判定されたかを示す。
【0045】
図4(b)は、図4(a)に示す出力値の判定が行われるプロセスのフローを示す。信号解析部7は、まずステップ201でセンサ5からの出力を検知する。これは、センサの出力値から推定することもできるし、別途タッチセンサを併用しての検知も可能である。そして、ステップ202でセンサ5からの出力の時系列データにピークがあるか否かを判定することによってピークを検出する。ピークが検出されない場合、ユーザはまだ何も入力していないと判定し、信号解析部7はステップ201に戻って次のセンサ出力を待つ。ピークが検出された場合、信号解析部7はステップ203に進み、そのピークがユーザの意図的な動作によるものであるのか、無意識な動作あるいはノイズによるものであるのかを判定する。より具体的には、意図的な動作の場合、比較的大きなピークが観測されるが、無意識な動作やノイズの場合、比較的小さなピークが観測される傾向にあることが知られている。そこで信号解析部7では、検知されたピーク値が両者のいずれかであるのかを判定するために両者を区別するための第1閾値(所定の最小値の一例)を設定し、検知されたピーク値と第1閾値とを比較することにより判定を行う。ここで、第1閾値との比較に用いられるピーク値(センサ5からの出力値に基づく比較変数の一例)とは、具体的にはピークの振動幅や単位時間当たりの最大振幅変動(つまり、センサ5からの出力の時間微分値)であるが、それ以外のデータによって判定を行っても構わない。ここで「ピーク値」「比較変数」とは、これら数値の総称として用いられている。ステップ203において、検知ピーク値が第1閾値よりも小さいと判定された場合は、検知ピーク値は無意識の動作またはノイズと判定され、信号解析部7はステップ201に戻って次の出力を待機する。また、検知ピーク値が第1閾値よりも大きいと判定された場合は、検知ピーク値は意識的な動作であると判定され、信号解析部7はステップ204に進む。
【0046】
ステップ204では、信号解析部7は、検知されたユーザの動作が周囲から見て分からない程度の微小な動きであるか、周囲の人間が観察可能な動きであるかを判定する。周囲から見て分からない微小な動作と観察可能な動作との境界値として、第2閾値(所定の最大値の一例)が設置される。ステップ204で検知ピーク値が第2閾値よりも大きいと判定されると、ユーザの入力動作は過大動作であると判定し、信号解析部7は振動素子6の振動を開始する(ステップ104)。振動を与えることにより、ユーザの動作は振動にまぎれて分からなくなり、さらにユーザは、今の入力動作が過大であったことに気づく。その後、信号解析部7はステップ102に戻り、更なるユーザ動作の入力を待機する。
【0047】
ステップ204で検知ピーク値が第2閾値よりも小さいと判定されると、信号解析部7は、ユーザ動作が微小な動作であると判定する。その後、信号解析部7はステップ105に移動してユーザの入力動作が登録動作であるか否かをメモリに登録された図2の登録動作表を参照しつつ判定する。ユーザの入力動作が登録動作であると判定された場合は、信号解析部7は対応する入力信号を制御部に出力する(ステップ106)。図4(a)は、このようなプロセスを経て得られた判定結果を示している。なお、第1及び第2閾値は、事前に実験的に設定することが可能である。
【0048】
図2に示す登録動作表は、携帯電話1の製造者が事前に設定してもよいし、ユーザが購入後に個々に設定してもよく、基本的にどのような動作をどのような入力に対応させるのかを定義するものであればよい。例えば図2では、動作1はトントントトントトンというリズムでありパスワード1の入力信号に対応する。動作2は、トトン・トントトンというリズムであり、パスワード2の入力信号に対応する。この表で用いられている判定情報としては、例えば、ユーザが微小動作を行うタイミングやリズムなどが使われるが、他の情報を判定情報とすることもできる。また、特定のユーザ微小動作を個人認証用の入力と対応させれば、ユーザは該当する微小動作を行うことで個人認証プロセスをクリアすることができる。また、図2の登録動作表に許容誤差範囲を含め、実際にユーザが行う動作が登録動作と異なっていても誤差として許容される範囲を示すこともできる。
【0049】
<他の実施例>
図5は、本発明の第2実施例に係る入力処理プロセスのフローチャートである。図5の入力処理プロセスと図3の入力処理プロセスとの違いは、本実施例においては振動素子6が振動している間にしか、信号解析部7ユーザの入力動作を受け付けられない点である。従って、図3の入力処理プロセスにおいてはステップ103でユーザの動作が過大動作であるか否かを判定するのに対し、図5の入力処理プロセスの対応するステップ305では、振動素子6が振動中にユーザ動作が検知されたか否かを判定し、振動中であればステップ306に進んでユーザの入力動作が登録動作であるか否かを判定する。振動素子6の振動は、ユーザ入力動作の判定とは独立して制御されるが、振動の開始と終了はユーザ入力動作判定プロセスの進行に呼応する。例えば図5のプロセスでは、ユーザがステップ301で入力モードを設定した後、ステップ302(図4(b)のステップ201に対応)で何らかの入力を検知すると、振動が開始される(ステップ303)。ステップ302での入力検知は、センサの出力値から推定することもできるし、別途タッチセンサを併用しての検知も可能である。その後、ステップ302で検知した入力がユーザ動作であるか否かをステップ304で判定し、もしユーザ動作であったと判定されると、ステップ305に進んでユーザ動作が振動中に検知されたか否かを判定する。ここで、ステップ304は図4(b)のステップ202、203に対応する。もしユーザ動作が振動中に行われたものであれば、ユーザ動作が登録動作であるかをステップ306にて判定する。もし登録動作であれば、ステップ307で振動を終了し、ステップ308で入力信号を出力する。ステップ306でユーザ動作が登録動作でないと判定された場合、ステップ305で振動中のユーザ動作でないと判定された場合、並びにステップ304で入力がユーザ動作の検知ではないと判定された場合は、ステップ309で振動を終了し、ステップ302に戻って新たな入力を待つ。振動のリズム、周期などは独立に制御され、振動素子6は、一定期間にわたって振動を続けるように設定されていてもよい。また、入力動作と無関係に、定常的に、もしくは予め決められたパターンに従って、もしくはランダムに振動してもよい。
【0050】
この実施例に係る入力処理プロセスでは、ユーザは入力時に、入力動作を微小にしようと敢えて意識することなく、かつ周囲に入力動作を観察されることなく入力を行うことができる。
【0051】
図6は、本発明の第3実施例に係る入力処理プロセスのフローチャートである。図6の入力処理プロセスと図5の入力処理プロセスとの違いは、本実施例においては振動中か否かの判定を行わない点である。この場合、ユーザの周囲の人は、携帯電話が振動することに注目するため、ユーザの動作には注意を払わなくなる。結果的に、ユーザの入力動作が隠蔽される。
【0052】
図6のプロセスでは、ユーザがステップ401で入力モードを設定した後、ステップ402で何らかの入力が検知されると、振動が開始される(ステップ403)。ステップ402での入力検知は、センサの出力値から推定することもできるし、別途タッチセンサを併用しての検知も可能である。ユーザ動作が登録動作であるか否かを判定した(ステップ405)後、または入力がユーザ動作の検知ではなかったと判定された(ステップ404)後、ステップ406またはステップ408で振動が終了されるようになっている。振動のリズム、周期などは独立に制御され、振動素子6は、一定期間にわたって振動を続けるように設定されていてもよい。また、入力動作と無関係に、定常振動で、もしくは予め決められたパターンに従って、もしくはランダムに振動されてもよい。
【0053】
第2及び第3実施例に係る入力処理プロセスにおいては、ユーザの入力動作は振動素子6が振動している間に行われるもののみ受け入れられる。振動中は、ユーザの入力動作が同じでも振動素子6の振動のためセンサ5からの出力が大きくなる傾向がある。従って、ステップ304、404に対応するステップ203において使用される第1閾値を、振動中の状態に合わせることが望ましい。
【0054】
図7は、本発明の第4実施例に係る入力処理プロセスのフローチャートである。図7の入力処理プロセスと図6の入力処理プロセスとの違いは、本実施例においては、入力される動作の大きさ、即ちセンサ5からの出力値の大きさに応じて振動素子6の振動が制御される点である。ステップ501で本実施例の入力モードが設定され、ステップ502で何らかの入力が検知されると、ステップ503で振動素子6の振動が開始される。ステップ502での入力検知は、センサの出力値から推定することもできるし、別途タッチセンサを併用しての検知も可能である。その後、ステップ504で、センサ5がユーザの入力動作を検知したか否かを判定する。ユーザの入力動作の検知であったと判定されると、信号解析部7は、振動素子6を制御するための振動制御パラメータをステップ505で抽出する。信号解析部7による振動制御の振動制御パラメータとしては、例えばセンサ5からの出力の振幅値を用いた、振動素子6の振動の強さや、リズムや、周波数や、方向などの制御がある。
【0055】
ステップ506で、信号解析部7は、抽出された振動パラメータを基に振動素子6を制御する。より具体的には、センサ5からの出力が小さい場合は大きな振動を与え、大きい場合は小さい振動を与えるよう、予め決められた関数に応じて振動を制御する。このような関数は例えば、センサ5からの出力値に対して第3の閾値を設け、その第3閾値よりも出力値が大きい場合は所定の小さい振動を、小さい場合は所定の大きい振動を加えるようにすることができる。若しくは、センサ5からの出力値に対して逆の相関関係にある関数を用いてもよい。さらに、ステップ506における振動制御は、振動の大きさのみでなく、振動のリズムの変更などによって行ってもよい。
【0056】
これにより、周囲の人間が、ユーザの微小な入力動作を観察しにくくなり、ユーザの入力動作を観察されるのを防ぐことができる。
【0057】
ここで、上記振動制御のパラメータとしては、振動の周波数、強さ、リズム、方向などが上げられるが、いずれのパラメータに関しても、センサ5の出力に比して適切に設定される必要がある。振動の周波数が低すぎたり強さが強すぎたりする場合、振動により指がセンサ5から離れてしまい、指とセンサ5とが再接触する時センサ5から大きな出力が観測されてしまう。一方、振動の周波数が高すぎたり強さが弱すぎたりする場合、周囲の人間がユーザの微小動作を観察できてしまう。特に、振動の方向がユーザの微小動作と一致しない場合、ユーザの微小動作は周囲に観察されやすくなる。これらを避けるため、振動制御のパラメータを適切に、つまりユーザとセンサ5との接触を保ちつつ、かつ振動素子6の振動がユーザの入力動作を隠蔽するよう設定することが必要である。このようなパラメータは、実験により求めることができ、さらに、センサ(剛体)と指(変形可能な柔軟な物体)とをモデル化しシミュレーションによって求めることもできる。
【0058】
また、センサ5からの出力値に、振動素子6からの振動成分が混じるのは好ましくない。そこで、信号解析部7は、センサ5からの出力における振動素子6からの振動成分を除去することもできる。この場合振動解析部7は、振動素子6の振動制御のオン・オフ、さらに制御するパラメータについて把握している。例えば、信号解析部7が周波数Xヘルツの振動を振動素子6に与えた場合、センサ5からの出力にもXヘルツの振動成分が混入することになる。しかし一般に、振動の周波数成分は、ユーザの微小動作の周波数成分よりも高く設定されている。従って、バンドリジェクションフィルタ、ローパスフィルタなどで、振動素子6に与えられた振動を除去することができる。
【0059】
また、振動素子6の振動制御のパラメータは、ユーザの微小動作を確実に隠蔽しなければならない。ユーザが過大入力動作を行いがちである場合、振動素子6の振動が小さすぎると過大入力動作を周囲の人間に観察されてしまう。従って、振動の振幅値等を大きくしてユーザの過大入力動作を隠蔽するようにすることが望ましい。一方、ユーザが本発明による入力方式に熟練しており、過大入力動作が行われないと想定可能な場合は、振動素子6の振動をユーザの微小動作よりも大きくする必要はなく、ユーザへの力覚フィードバックとして振動を用いることができる。また、振動素子6の振動が一定周波数のみの振動である場合、ユーザの微小動作は非定常な動きであるため、如何に微小な動作であっても感知されてしまうことがある。そこで、振動の、周波数、強度などが変化するように振動素子6を制御することにより、隠蔽効果を高めることができる。どのような振動にするか、どのように振動を変化させるかは、ユーザ毎に設定されていればよく、具体的な振動制御パラメータは、隠蔽効果が良好に発揮されるよう、実験またはシミュレーションなどによって決定可能である。
【0060】
上記実施例では、情報端末の例として携帯電話について説明したが、本発明にかかる情報端末はこの例に限られるものではなく、例えばPDAなどのハンドヘルド装置、ネットワーク端末など、ユーザからの入力を受け付ける情報端末であれば何でも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、周囲の人間に観察されることのない動作により認証などの入力を行うことができる。また本発明は、そのような入力方法が実行可能な情報端末を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態にかかる携帯電話の概要を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる携帯電話のメモリ中の登録動作表の例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる入力方法を示すフローチャートである。
【図4】(a)は、本発明の一実施形態にかかる入力方法による、センサからの出力結果の表示グラフの例である。(b)は、本発明の一実施形態にかかる入力方法の一部を示すフローチャートである。
【図5】本発明の別の実施形態にかかる入力方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の別の実施形態にかかる入力方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の別の実施形態にかかる入力方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 携帯電話
2 筐体
5 センサ
6 振動素子
7 信号解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
ユーザの入力動作を検知するセンサと、
所定の入力信号に対応するユーザの入力動作が登録されたメモリと、
前記筐体内に設置され、前記センサが検知した入力動作に対応する入力信号がメモリに登録されているか否かを判定する信号解析部と、
前記信号解析部により振動され前記センサを振動させる振動素子とを備え、
前記信号解析部は、前記センサが検知した入力動作に対応する入力信号を出力することを特徴とする、情報端末。
【請求項2】
前記信号解析部は、前記センサからの出力値に基づく比較変数が所定の最大値以上であるとき、前記センサが検知した動作は過大動作であると判定し、前記センサを振動させるよう振動素子を振動させることを特徴とする、請求項1に記載の情報端末。
【請求項3】
前記信号解析部は、前記振動素子が振動している間に前記センサが検知した入力動作に対応する入力信号のみを出力することを特徴とする、請求項1に記載の情報端末。
【請求項4】
前記振動素子は、定常振動で、もしくは予め決められたパターンに従って、もしくはランダムに振動するよう制御されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1つに記載の情報端末。
【請求項5】
前記信号解析部は、前記センサからの出力値に基づいて前記振動素子を振動させることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の情報端末。
【請求項6】
前記信号解析部は、前記振動素子の振動の強さと、リズムと、周波数と、方向との少なくともいずれか1つを制御することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の情報端末。
【請求項7】
前記信号解析部は、前記センサからの出力値から前記振動素子の振動成分を除去することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の情報端末。
【請求項8】
前記信号解析部は、前記振動素子を振動させるための振動制御パラメータを、ユーザと前記センサとの接触を保ちつつ、かつ前記振動素子の振動がユーザの入力動作を隠蔽するよう設定することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1つに記載の情報端末。
【請求項9】
前記信号解析部は、前記センサの出力値に基づく比較変数が所定の最低値以上であって前記センサが検知した入力動作はユーザの意図的入力動作であると判定したとき、前記センサが検知した入力動作に対応する入力信号がメモリに登録されているか否かを判定することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1つに記載の情報端末。
【請求項10】
周囲に入力動作を観察されないように情報端末に入力を行う方法であって、
前記情報端末のセンサがユーザの入力動作を検知するステップと、
前記センサが検知した動作に対応する入力信号が、メモリに登録されているか否かを信号解析部が判定するステップと、
前記センサが検知した動作に対応する入力信号を信号解析部が出力するステップと、
前記信号解析部が前記センサを振動させるよう振動素子を振動させるステップとを有することを特徴とする、周囲に入力動作を観察されずに請求項1乃至9のいずれか1つの情報端末に入力を行う方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−186079(P2008−186079A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16760(P2007−16760)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】