説明

情報記録媒体の初期化方法及び初期化装置

【課題】 1台の初期化装置で多層の記録媒体を初期化すること。
【解決手段】 相変化型光ディスク1にレーザスポットを照射する1つの対物レンズ3と、該対物レンズ3を介して該光ディスク1から反射される反射光を分配するハーフBS4と、該ハーフBS4により分配された前記反射光を各々入力し、記録層に集光した焦点を記録面に対し法線方向に任意移動可能なデフォーカス機能を有するフォーカス信号を生成する複数の光学系と、該複数の光学系からのフォーカス信号を選択するセレクタ11と、該セレクタ11により選択されたフォーカス信号を入力してレーザスポットの焦点合わせを制御するオートフォーカスサーボ制御手段13とを備え、複数の光学系からのフォーカス信号をセレクタ11によって選択して前記オートフォーカスサーボ制御手段に入力することによって、複数の多層膜の初期化を行うもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録層を持つ情報記録媒体の初期化方法及び初期化装置に係り、特に多層情報記録媒体における各層のデフォーカス量を任意に設定して初期化を容易に行うことができる初期化方法及び初期化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、書換え可能な大容量の光ディスクとして、光ディスクの片面に2つ以上の相変化記録膜を有する多層構造の相変化型光ディスクが考案されている。この相変化光ディスクの製造プロセスにおいては、記録膜生成直後の非結晶状態な記録膜を結晶状態へ変える初期化処理が必要である。
【0003】
この初期化処理は、レーザを熱源としてディスクの膜面に長円状の初期化レーザスポットを照射し、このレーザスポットを良好な結晶状態が得られる所定のレーザスポット走査速度/レーザパワー/レーザスポットのデフォーカス量で隙間無く螺旋状に光ディスクを走査させることにより光ディスク全面を初期化させるものである。
【0004】
前記レーザスポットのデフォーカス量とは、前述の長円状の初期化レーザスポットを形成するため、記録膜に対してジャストフォーカスを行わずに記録膜に対して焦点位置をずらす量である。従来技術による単層の相変化型光ディスクに対するフォーカス制御は、図2に示す如く、単数の記録層を持つ光ディスク14上に半導体レーザ素子からレーザスポット15を照射するとき、光ディスク14からの反射光を対物レンズ16及びトツレンズ17を通過して複数個のディテクタ18で受光して電気信号に変換し、該ディテクタ18からの出力信号をアンプ19にて加減算しフォーカス信号を生成し、オートフォーカスサーボ制御部21が、前記光学系より生成されたフォーカス信号をフィードバックし、前記レーザスポット15の光ディスク14上での照射径が変化しないよう制御することにより、光ディスク14の面振れや歪みに追従してレーザスポット15の焦点制御を行うことによって行われている。
【0005】
前記デフォーカス量の制御は、レーザスポット15の焦点をディスク14の記録層に合わせずに、記録層より入射光側、もしくはディスク奥側の位置にレーザスポットの焦点をあわせることにより記録層上でのレーザスポットの形状を例えば長円形状に変形させるものである。
【0006】
このデフォーカス状態の生成は、トツレンズ17の位置をマイクロメータ等の機構部品を使用して、入射光に対して前後させることによって、ディテクタ18に入射する入射光がレーザスポット15の焦点位置に応じてずれることを利用する。
【0007】
このときレーザスポットの焦点位置22を記録層を中心に上下に移動させたときの各フォーカス信号を図3を用いて説明する。図3中、符号23はデフォーカスが掛かっていないジャストフォーカス時のフォーカス信号/符号24はジャストフォーカス時のフォーカス信号の焦点位置/符号25はデフォーカスが掛かっている場合のフォーカス信号/符号26をデフォーカスが掛かっているときのフォーカス信号の焦点位置26とした場合、デフォーカスでの焦点位置26はジャストフォーカスでの焦点位置22に対してデフォーカス量(D)29だけずれてくる。
【0008】
従来の単層の相変化型光ディスクに対する初期化装置のオートフォーカス制御は、ジャストフォーカスの場合はジャストフォーカスの焦点位置24に対してフィードバック制御を行い、デフォーカスの場合はデフォーカスの焦点位置26に対してフィードバック制御を行う。このフィードバック制御は、ジャストフォーカスの場合はジャストフォーカスでの焦点位置24においてレーザスポット2の光ディスク1上での照射径が変化しないよう制御し、デフォーカスの場合はデフォーカスでの焦点位置26においてレーザスポット2の光ディスク1上での照射径が変化しないよう制御するものである。
【0009】
従って、デフォーカス値がジャストフォーカスの場合に生成されたフォーカス信号23の焦点位置24が記録層に焦点があっているとすると、この記録層に焦点が合っているときのトツレンズ位置を入射光に対して前後移動させることにより、デフォーカスを掛けた状態で生成したフォーカス信号の焦点位置26が記録層に対して位置的オフセットとなる記録層に対するデフォーカス量27を持った位置28となる。このデフォーカス時の位置28は、レーザスポットの焦点を記録層より入射光側もしくはディスク奥側にオフセットした位置であり、オートフォーカス制御は、このデフォーカスでの合焦点位置28に対して行うことによって、対象記録層上でのレーザスポット形状がジャストフォーカスで動作させた場合とは異なる焦点合わせが行われ、デフォーカスをかけた状態で初期化を行うことができる。
【0010】
しかしながら、多層膜を持つ相変化型光ディスクに対するデフォーカス制御は、各記録層毎に光学的特性や熱的特性が異なり、各層ごとに良好な初期化を得るための初期化条件も異なるため、一台の装置で前記複数の記録層を有する光ディスクの各層をそれぞれ初期化する為には各層を初期化するたびに、装置上の初期化条件を変更しなければならない。
【0011】
例えば、複数の記録層を有する光ディスクを初期化可能な装置では、パラメータ上で初期化対象層を選択することにより各層からのフォーカス信号を用いて記録対象層を切り分け、記録対象層にフォーカスを掛けることが可能なため、各層ごとに良好な初期化を得るための初期化条件で初期化を行う際、初期化条件のうち、一般的にレーザパワーやレーザスポット走査速度等については初期化装置パラメータ設定入力条件を変えるだけで、マイコン制御により対応が可能となる。
【0012】
尚、前記相変化光ディスクの初期化に関する技術が記載された文献としては、下記特許文献が挙げられる。
【特許文献1】特開平2004−13988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように単層の相変化型光ディスクに対する初期化を行う初期化装置は、デフォーカス量の設定条件を変更することができる。多層の相変化型光ディスクに対する初期化条件のうちのデフォーカス量の設定条件は、デフォーカス量を設定調整するためには光学系内部のレンズの位置を機械的に変えることによりディスク記録膜面への焦点位置を焦点に対してずらし、膜面に照射される初期化レーザスポットの形状やパワー密度を変化させる必要があり、複数の記録層をもつディスクに対して、複数の記録層を連続し且つ各記録層毎に初期化特性が良好となるデフォーカス量の設定条件に設定することが困難であると言う不具合があった。
【0014】
前記不具合を解決するために、対象記録層用に調整した複数の初期化装置を用いて各記録層を初期化する方法や、フォーカス信号に電気的なオフセットを掛けデフォーカスを行う方法も考えられるが、前者は複数の初期化装置が必要になるとと言う不具合があり、後者は電気的なオフセットを掛けることによるフォーカスサーボ可能な範囲が±数umと小さく、それ以上大きなデフォーカスを掛けることができないと言う不具合もあった。
【0015】
本発明の目的は、前述の従来技術による不具合を除去することであり、複数の記録層を持つ相変化型の情報記録媒体の各層のデフォーカス量を任意に設定して初期化を容易に行うことができる記録媒体の初期化方法及び初期化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために本発明は、複数の記録層を持つ情報記録媒体にレーザスポットを照射して各記録層を初期結晶化する初期化装置において、前記相変化型光ディスクにレーザスポットを照射する1つの対物レンズと、該対物レンズを介して相変化型光ディスクから反射される反射光を分配する分配手段と、該分配手段により分配された前記反射光を各々入力し、記録層に集光した焦点を記録面に対し法線方向に任意移動可能なデフォーカス機能を有するフォーカス信号を生成する複数の光学系と、該複数の光学系からのフォーカス信号を選択するセレクタと、該セレクタにより選択されたフォーカス信号を入力してレーザスポットの焦点合わせを制御するオートフォーカスサーボ制御手段とを備え、前記複数の光学系からのフォーカス信号をセレクタによって選択して前記オートフォーカスサーボ制御手段に入力することによって、複数の多層膜の初期化を行うことを第1の特徴とする。
【0017】
また本発明は、複数の記録層を持つ情報記録媒体にレーザスポットを照射して各記録層を初期結晶化する初期化装置の初期化方法において、該初期化装置に、前記相変化型光ディスクにレーザスポットを照射する1つの対物レンズと、該対物レンズを介して相変化型光ディスクから反射される反射光を分配する分配手段と、該分配手段により分配された前記反射光を各々入力し、記録層に集光した焦点を記録面に対し法線方向に任意移動可能なデフォーカス機能を有するフォーカス信号を生成する複数の光学系と、該複数の光学系からのフォーカス信号を選択するセレクタと、該セレクタにより選択されたフォーカス信号を入力してレーザスポットの焦点合わせを制御するオートフォーカスサーボ制御手段とを設け、前記複数の光学系からのフォーカス信号をセレクタによって選択して前記オートフォーカスサーボ制御手段に入力することによって、複数の多層膜の初期化を行うことを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明による複数の記録層を持つ相変化型光ディスクの初期化装置及び初期化方法は、各記録対象層それぞれに対応した任意移動可能なデフォーカス機能を有した独立したフォーカス信号生成光学系を設けたことにより、各記録層に対して良好な初期化条件を設定することができる。本発明による相変化型光ディスクの初期化装置及び初期化方法は、各記録対象層それぞれに対応した任意移動可能なデフォーカス機能を有した独立したフォーカス信号生成光学系を設けることによって、寿命等の懸念事項の生ずるレンズ位置移動機構等のメカ的な可動部を初期化実行ごとに可動させる必要がなく、高耐久性及び高信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態による複数の記録層を持つ相変化型光ディスクの初期化装置及び初期化方法を説明するものであるが、本願発明の原理を説明する。
<原理説明>
まず、一般に複数の記録層を持つ相変化型光ディスクでは、各記録層ごとに光学的特性や熱的特性が異なり、良好な初期化特性を得るための初期化条件が異なる。
【0020】
このため複数の記録層を有する相変化型光ディスクを初期化可能な初期化装置は、一般的にレーザパワーやレーザスポット走査速度等のパラメータ設定入力条件を変えることにより対応ができるものの、前述したデフォーカス量の設定は、トツレンズの位置を機械的に移動させる必要がある。
【0021】
このため発明者らは、複数の記録層を持つ相変化型光ディスクの各層を異なるデフォーカス量設定で初期化するにあたって、記録対象層の変更毎にトツレンズの位置を機械的に変えることにより記録膜面への焦点位置を変化させることにより、デフォーカス量を変えることが出来ることから、モータ等の駆動系機構を使用してトツレンズを移動させる構造を検討した。
【0022】
しかしながら、この初期化装置は光ディスク製造工程に使用されるものであるため、n層の記録層をもつ相変化型光ディスクの場合、ディスク一枚の初期化工程処理に最低n回、トツレンズを駆動させる必要があり機構部の耐久性並びに信頼性に欠けると言う不都合を発見した。
【0023】
このため発明者らは、複数の記録層を持つ相変化型光ディスクの各記録層を異なるデフォーカス量設定で初期化するにあたって、複数の相変化記録膜を有する多層構造の相変化型光ディスクに対して、複数の記録層分の数の光学系構造を組んでおき、この複数の記録層分の数をもつ光学系構造をそれぞれの記録層用に割り当てておく本願発明を成した。
【0024】
この各記録層ごとに割り当てられた光学系構造は、それぞれ専用の任意移動可能なデフォーカス機能を有する独立したフォーカス信号生成光学系を持つものとし、それぞれの記録層に対して初期化特性が良好となるデフォーカス量条件を予め設定しておくことが望ましい。
【0025】
即ち、発明者らは、複数の記録層の中から、ある希望の記録層を初期化する際、複数の記録層の中のどの記録層を初期化指定するか等の情報を含む制御信号を用い、前記複数の光学系構造を切り替えるセレクタを設け、各層用の光学検出系から得られたフォーカス信号の中から指定した記録層のフォーカス信号をセレクトすることにより、ある希望の記録層のフォーカス信号に対し、その記録層に最適となる初期化条件をもたせてフォーカシング制御を行う相変化型光ディスクの初期化装置及び初期化方法を発明した。
【0026】
以下、本発明による記録媒体の初期化方法及び初期化装置の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態による記録媒体の初期化装置の基本構成を示す図、図4は本初期化装置における第1の記録層の初期化動作を説明するための図、図5は本初期化装置における第2の記録層の初期化動作を説明するための図、図6は本初期化装置における複数の記録層の連続初期化動作を説明するための図である。
<構成の説明>
【0027】
本発明の一実施形態による複数の記録層を持つ相変化型光ディスクの初期化方法を適用した初期化装置は、図1に示す如く、相変化型光ディスクが記録層を2つもつ2層ディスクの場合、2層の記録層をもつ相変化型光ディスク1上にレーザスポット2を照射する半導体レーザ素子(図示せず)と、相変化型光ディスク1上の記録対象層にレーザスポット2を合焦点させるために光軸方向上下に移動する対物レンズ3と、前記記録層から反射された反射光を各記録層用の光学系に分配させるハーフ(ミラー)BS4と、第1の記録層(L1)用の光学系と、第2の記録層(L2)用の光学系と、該両光学系のオートフォーカスサーボを行うオートフォーカスサーボ制御部13と、前記両光学系の切り替えを行うセレクタ11と、前記セレクタ11の切り替え他を制御するマイクロプロセッサ12とを備える。尚、前記ハーフBS4は、反射光を分配する分配手段に相当する。
【0028】
前記第1の記録層(L1)用の光学系は、前記ハーフBS4によって第1の記録層(L1)用の光学系に分配された入射光に対して外部よりマイクロメータ等にて前後(相変化型光ディスク面に対する法線方向)に位置を移動させることのできるL1層用のトツレンズ5と、該トツレンズ5を通過した第一の記録層からの入射光を検出する複数個のディテクタ6と、該複数個のディテクタ6からの出力信号を加減算することによりフォーカス信号を生成するアンプ7とから構成される。
【0029】
前記第2の記録層(L2)用の光学系は、前記ハーフBS4によって第2の記録層用の光学系に分配された入射光に対して外部よりマイクロメータ等にて前後(相変化型光ディスク面に対する法線方向)に位置を移動させることのできるトツレンズ8と、該トツレンズ8を通過した第一の記録層からの入射光を検出する複数個のディテクタ9と、該複数個のディテクタ9からの出力信号を加減算を行うことによりフォーカス信号を生成するアンプ10とから構成される。
【0030】
前記セレクタ11は、第1の記録層用の光学系から出力されるフォーカス信号Aと、第2の記録層用の光学系から出力されるフォーカス信号Bを切り替えることにより、マイクロプロセッサ12からのフォーカス制御対象層の指定に従って前記フォーカス信号を選択する。前記オートフォーカスサーボ制御部13は、前記セレクタ11により選択されたいずれかの記録層用の光学系より生成されたフォーカス信号をフィードバック入力し、前記レーザスポット2の光ディスク1上での照射径が変化しないよう制御することにより、光ディスク1の面振れや歪みに追従してレーザスポット2の焦点制御を行うものである。
<動作説明>
【0031】
次に前述のように構成された2層の記録層を持つ相変化型光ディスクの初期化装置は、第1の記録層を初期化する場合、図4に示す如く、マイクロプロセッサ12からの指示によりセレクタ11が第1の光学系を選択することによって第1の記録層用の光学系からのフォーカス信号Aをオートフォーカスサーボ部13にフィードバックし、該オートフォーカスサーボ部13が前記レーザスポットの光ディスク1上での照射径が変化しないよう対物レンズ3を上下方向に制御することにより、光ディスクの面振れや歪みに追従してレーザスポットの焦点制御を行う。
【0032】
このとき第1の記録層用の入射光に対して前後移動可能なトツレンズ5を第1の記録層に最適なデフォーカス値を設定する位置に移動することにより、初期化に必要なレーザスポット2aの形状やパワー密度を設定することができる。この第1の記録層用デフォーカス量調整値と、第1の記録層に対する位置的オフセットとなる記録層に対するデフォーカス量(D)33は比例関係にある。
【0033】
次に本初期化装置は、第2の記録層を初期化する場合、図5に示す如く、マイクロプロセッサ12からの指示によりセレクタ11が第2の光学系を選択することによって第2の記録層用の光学系からのフォーカス信号Bをオートフォーカスサーボ部13にフィードバックし、該オートフォーカスサーボ部13が前記レーザスポットの光ディスク1上での照射径が変化しないよう対物レンズ3を上下方向に制御することにより、光ディスクの面振れや歪みに追従してレーザスポットの焦点制御を行う。
【0034】
このとき第2の記録層用の入射光に対して前後移動可能なトツレンズ8を第2の記録層に最適なデフォーカス値を設定する位置に移動することにより、初期化に必要なレーザスポットの形状やパワー密度を設定することができる。この第2の記録層用デフォーカス量調整値と、第2の記録層に対する位置的オフセットとなる記録層に対するデフォーカス量(D)45は比例関係にある。
【0035】
この様に本実施形態による初期化装置は、複数の記録層に対応した複数の光学系(移動可能なトツレンズ/ディテクタ/アンプ)と、該両光学系に反射光を分配するハーフBSと、前記両光学系のオートフォーカスサーボ部への出力を切り替えるセレクタとを設け、該セレクタの切り替え乃至トツレンズの適正デフォーカス量の位置調整を行うことによって多層の相変化型光ディスクの各層に対する良好な初期化を行うことができる。
【0036】
この多層の相変化型光ディスクに対する初期化動作におけるオートフォーカス制御を図6を参照して説明する。図6は、2つの記録層を持つ相変化型光ディスクの各層を異なるデフォーカス量設定で連続に初期化するにあたっての、各記録層用の光学系からのフォーカス信号、焦点位置と各層初期化動作実行時にフィードバック制御に用いるフォーカス制御信号の関係を説明するための図である。
【0037】
このオートフォーカス制御は、図6下段に示した第2の記録層(L2)に対してはデフォーカスを掛けた状態でフィードバック制御を行い、次に上段に示した第1の記録層(L1)に対してはジャストフォーカスの状態でフィードバック制御を行うことを想定して説明する。
本実施形態による初期化装置は、レーザスポットの焦点位置56を記録層を中心に奥側から手前側に動かしたとき、図6中段の第1の記録層用の光学系からのフォーカス信号57と、第2の記録層用の光学系からのフォーカス信号58とがそれぞれ検出される。
【0038】
本初期化装置は、第1記録時は第1の記録層用の光学系により検出したフォーカス信号と、第2記録時は第2の記録層用の光学系により検出したフォーカス信号とをセレクタ11により切り替えてオートフォーカスサーボ制御部13に入力することによって、フィードバック制御用フォーカス信号59を生成することができる。
【0039】
本実施形態による初期化装置は、前記第1層を初期化する場合、第1の記録層真の焦点位置63に対してフィードバック制御を行い、第2層を初期化する場合は、第2の記録層用光学系からのフォーカス信号58により、第2の記録層真の焦点位置62から真の焦点位置に対するデフォーカス量(D)65をずらした位置をフォーカシングサーボ中心64としてフィードバック制御を行うことにより、1台の初期化装置で複数の記録層を持つ相変化型光ディスクに対し、異なったデフォーカス量の初期化スポットにて初期化を行うことができる。また、本構造の場合各記録層に適したデフォーカス量を予め設定しておけば、各記録層の初期化のたびにトツレンズを移動させる必要がないため、機械的な駆動機構を持たせない為に高信頼且つ高耐久の初期化装置を構成することができる。
【0040】
この様に本実施形態による初期化装置及び方法は、複数の記録層を持つ相変化型光ディスクの各層を異なるデフォーカス量設定で初期化するにあたって、記録対象層の数だけ光学系を持たせ、この各記録層用の光学系ごとに入射光に対して前後移動可能なトツレンズを配置し、前記光学系を切り替えることによって1台の装置で多層の相変化型光ディスクの初期化を行うことができる。
【0041】
尚、前記実施形態においては、複数の記録層を持つ同一種の相変化型光ディスクの各層を異なるデフォーカス量設定で初期化する例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば複数の各光学系で各々異なるデフォーカスの値を設定可能なことを利用し、初期化に好適なデフォーカス値が異なる多種の相変化型光ディスク/複数の記録層を持たない相変化型光ディスクに対して、一台の初期化装置を用い、同一のラインで多種の相変化型光ディスクを初期化することもできる。
具体的には、各々デフォーカス設定値が異なるCD-RWディスクとDVD-RWディスクの初期化を行う場合、従来技術においては初期化装置のラインに流すディスクの種類を例えばCD-RWディスク→DVD-RWへ、またDVD-RWディスク→CD-RWへ変える度に、デフォーカスメータの値を機械的に変える必要があったものを、本発明の如く複数の各々が固有のデフォーカス設定値を有する光学系を設けことによって、パラメータで対象光学系を選ぶだけでデフォーカス値の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態による多層記録媒体用初期化装置の基本構成を示す図。
【図2】単層の記録媒体を初期化する際のデフォーカス制御の説明図。
【図3】単層の記録媒体における各フォーカス信号等を示す図。
【図4】本初期化装置における第1記録層の初期化動作の説明図。
【図5】本初期化装置における第2記録層の初期化動作の説明図。
【図6】本初期化装置における複数の記録層の連続初期化動作の説明図
【符号の説明】
【0043】
1:相変化型光ディスク、2:レーザスポット、3:対物レンズ、5:トツレンズ、6:ディテクタ、7:アンプ、8:トツレンズ、9:ディテクタ、10:アンプ、11:セレクタ、12:マイクロプロセッサ、13:オートフォーカスサーボ制御部、14:光ディスク、15:レーザスポット、16:対物レンズ、17:トツレンズ、18:ディテクタ、19:アンプ、21:オートフォーカスサーボ制御部、22:焦点位置、23:フォーカス信号、24:焦点位置、26:焦点位置、27:デフォーカス量、28:合焦点位置、56:焦点位置、57:フォーカス信号、58:フォーカス信号、59:フィードバック制御用フォーカス信号、62:焦点位置、63:焦点位置、64:フォーカシングサーボ中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層を持つ情報記録媒体にレーザスポットを照射して各記録層を初期結晶化する初期化装置であって、
前記相変化型光ディスクにレーザスポットを照射する1つの対物レンズと、該対物レンズを介して相変化型光ディスクから反射される反射光を分配する分配手段と、該分配手段により分配された前記反射光を各々入力し、記録層に集光した焦点を記録面に対し法線方向に任意移動可能なデフォーカス機能を有するフォーカス信号を生成する複数の光学系と、該複数の光学系からのフォーカス信号を選択するセレクタと、該セレクタにより選択されたフォーカス信号を入力してレーザスポットの焦点合わせを制御するオートフォーカスサーボ制御手段とを備え、前記複数の光学系からのフォーカス信号をセレクタによって選択して前記オートフォーカスサーボ制御手段に入力することによって、複数の多層膜の初期化を行うことを特徴とする記録媒体の初期化装置。
【請求項2】
複数の記録層を持つ情報記録媒体にレーザスポットを照射して各記録層を初期結晶化する初期化装置の初期化方法であって、
該初期化装置に、前記相変化型光ディスクにレーザスポットを照射する1つの対物レンズと、該対物レンズを介して相変化型光ディスクから反射される反射光を分配する分配手段と、該分配手段により分配された前記反射光を各々入力し、記録層に集光した焦点を記録面に対し法線方向に任意移動可能なデフォーカス機能を有するフォーカス信号を生成する複数の光学系と、該複数の光学系からのフォーカス信号を選択するセレクタと、該セレクタにより選択されたフォーカス信号を入力してレーザスポットの焦点合わせを制御するオートフォーカスサーボ制御手段とを設け、前記複数の光学系からのフォーカス信号をセレクタによって選択して前記オートフォーカスサーボ制御手段に入力することによって、複数の多層膜の初期化を行うことを特徴とする記録媒体の初期化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−12147(P2007−12147A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190643(P2005−190643)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】