説明

情報記録媒体

【課題】場所を問わず、医療従事者に患者の医療に関する情報を的確に提示することができる情報記録媒体を提供する。
【解決手段】ICカード1は、ユーザの医療情報を記憶する記憶部11と、ユーザ本人であるか否かを認証する生体認証部13と、医療従事者が所持するICタグから医療従事者IDを読み取るRFID部16と、ユーザ本人であると認証された場合又は医療従事者IDが読み取られた場合に限り、記憶部11が記憶する医療情報の内容を電子ペーパからなる表示窓に表示する表示制御部13と、読み取られた医療従事者IDに基づいて、医療情報の閲覧レベルを決定する閲覧レベル決定部(制御部10)と、を備える。表示制御部13は、決定された閲覧レベルに従って、医療情報の内容を表示窓に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の医療に関する情報を医療従事者に的確に提供できるようにする情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院等の多くの医療機関では、初診者に対して、診療の前に、現在の自覚症状はもとより、既往症、服用中の薬についての情報、アレルギーの有無等を問診票に記入させ、これを実際の診療に役立てようとしているのが一般的である。
【0003】
しかしながら、患者自身が、既往症等について具体的な内容(実際の治療方法等のカルテに記載されるような内容)を把握していることは極めて希であり、患者自らが、事細かに問診票に記入したり、あるいは医師に対して、詳細に説明するのは困難である。
【0004】
これに対し、例えば、特許文献1には、各患者について、医療機関の利用ごとの、症状や医師の所見、処置内容、投与薬物などの情報(カルテ情報)が蓄積されたカルテ管理サーバと、各医療機関等に配置される端末装置とを備えた医療情報システムが提案されている。
【0005】
この医療情報システムでは、医師等の医療従事者は、診療対象である特定の患者のカルテ情報を、端末装置を使って、カルテ管理サーバから取得することができる。
【特許文献1】特開2002−73807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、救急車で患者を搬送中など、緊急時において、当該患者に適切な救急処置を施すことは、病状の悪化を抑止する等の観点から極めて重要である。
【0007】
これに関し、特許文献1には、上記端末装置が救急車に搭載され、医療従事者は、これを使用して、該当者のカルテ情報をカルテ管理サーバから取得でき、救急車内においても、適切な処置が行える旨の記載がある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、情報を一元管理するカルテ管理サーバからデータ通信によってカルテ情報を取得するため、通信障害や、カルテ管理サーバの障害等が発生すると、カルテ情報を取得することができない。また、外出中に突然疾病し、居合わせた医師等の医療従事者に救急処置を施してもらう場合では、このシステムを利用する患者であっても、上記端末装置がないため、カルテ情報を当該医療従事者に提供することができない。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、場所を問わず、医療従事者に患者の医療に関する情報を的確に提示することができる情報記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る情報記録媒体は、
特定ユーザの医療に係る医療情報を記憶する記憶手段と、
所定の表示素子で構成される表示窓と、
利用者の操作指示を受け付ける操作手段と、
利用者の生体情報を検出する生体情報検出センサと、
該生体情報検出センサが検出した前記生体情報に基づいて、当該利用者が前記特定ユーザであるか否かを認証する認証手段と、
医療従事者が所持するICタグと無線通信を行い、前記ICタグから当該医療従事者の職種を示す医療従事者IDを読み取るRFID手段と、
前記認証手段によって特定ユーザであると認証された場合又は前記RFID手段により医療従事者IDが読み取られた場合に限り、前記操作手段が受け付けた当該利用者の操作指示に応じて、前記記憶手段が記憶する前記医療情報の内容を前記表示窓に表示する表示手段と、
前記RFID手段により読み取られた前記医療従事者IDが示す職種に基づいて、当該利用者が前記表示窓を介して前記医療情報を閲覧できるレベルを決定する閲覧レベル決定手段と、を備え
前記表示手段は、前記閲覧レベル決定手段による決定結果に従って、前記医療情報の内容を前記表示窓に表示する、ことを特徴とする。
【0011】
上記構成に加えて、外部装置と所定の入出力インタフェースによりデータの授受を行うデータ入出力手段をさらに備えてもよい。
【0012】
また、前記記憶手段は、救急活動を実施する救急活動機関が備えるサーバのネットワークアドレスをさらに記憶し、
前記操作手段が所定の操作指示を受け付けた場合、前記サーバに救急を依頼するためのメッセージを送信する救急通報手段をさらに備える構成にするのが好ましい。
【0013】
また、前記救急通報手段による前記メッセージの送信が正常に行われなかった場合、所定の態様で警報を行う警報手段をさらに備えてもよい。
【0014】
上記の場合、前記警報手段は、断続的に警報音を出力させ、又は、断続的に警報光を発光させることで警報を行うようにしてもよい。
【0015】
好ましくは、前記生体情報検出センサは、利用者の指紋を生態情報として検出する。
【0016】
前記表示素子は、好ましくは電子ペーパで構成される。
【0017】
この場合、前記電子ペーパの好ましい表示方式として、マイクロカプセル型電気泳動方式が採用できる。
【発明の効果】
【0018】
以上の如く、本発明によれば、場所を問わず、医療従事者に患者の医療に関する情報を的確に提示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る情報記録媒体と、これを利用した医療支援サービスの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の医療支援サービスの提供を受けるために、患者が所持する必要のある専用のICカード1(情報記録媒体)の外観を示している。このICカード1は、例えば、国等の公的な機関(以下、カード発行機関という。)によって、原則として、1ユーザに1枚発行される。
【0021】
図1に示すように、ICカード1の一方の面には、表示素子2と、機能ボタン3,4と、選択ボタン5と、通報ボタン6と、生体認証用パッド7と、スピーカ8と、発光部9と、を備える。
【0022】
表示素子2は、例えば、所定のギャップを挟んで対向する少なくとも一方が光透過する2枚のシートと、当該シートの間に充填される光学的反射濃度や色の異なる1種類もしくは複数の帯電した顔料粒子を封入したマイクロカプセルと、からなる電子ペーパで構成される。この表示素子2の制御方式(表示方式)としては、上記マイクロカプセルに電界もしくは磁界を印加することにより、顔料粒子をシート内で移動させ、光学的反射濃度や色を変化させる電気泳動方式や磁気泳動方式が好適である。なお、表示素子2を構成する電子ペーパとして、ツイスティングボール、相安定液晶、CN液晶、トナーディスプレイ、電子粉流体等の方式も採用できる。
【0023】
機能ボタン3(F1ボタン)は、当該ICカード1の所有者(患者)あるいは医療従事者が、表示素子2に当該患者の医療に係る情報(医療情報)等を表示させる際に使用するボタンであり、機能ボタン4(F2ボタン)は、当該患者がICカード1の所定機能の設定変更を行う際に使用するボタンである。
【0024】
選択ボタン5は、表示素子2に各種情報を表示する際、所望の表示項目を選択したり、表示情報をページスクロールさせたりする場合等に使用される。
【0025】
通報ボタン6は、詳細は後述するが、救急車の手配等、当該患者に対する救急を依頼するために使用されるボタンである。
【0026】
生体認証用パッド7は、利用者の指紋(例えば、右手親指)を検出する指紋センサとして機能する。また、生体認証用パッド7は、電源投入ボタンとしても機能する。
【0027】
スピーカ8は、例えば、圧電素子から構成される圧電スピーカであり、主として、通報ボタン6が押下された際、所定の条件の下で、ブザー音やアラーム音等の警報音を出力する。
【0028】
発光部9は、例えば、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子で構成され、主として、通報ボタン6が押下された際、所定の条件の下で、発光を行う。
【0029】
図2は、ICカード1の内部構成を示すブロック図である。ICカード1は、図2に示すように制御部10と、記憶部11と、生体認証部12と、表示制御部13と、操作部14と、救急通報部15と、RFID部16と、データ入出力処理部17と、電源部18と、を備える。
【0030】
制御部10は、CPU、ROM、RAM等を備え、ROMに格納された又はデータ入出力処理部17等を介して取得した制御プログラムに従って、ICカード1全体の動作を制御する。また、制御部10のROMには、カード発行機関から付与された当該ユーザのユーザIDが記憶されている。
【0031】
記憶部11は、フラッシュメモリ等の半導体メモリから構成される。記憶部11は、当該ユーザ(患者)の個人情報、医療情報、利用可能ユーザID、診察券情報、救急通報先情報等を記憶する。個人情報には、氏名、生年月日、性別、連絡先(自宅住所、電話番号等)、生体認証用データ等が含まれる。生体認証用データは、本実施形態では、当該ユーザの右手親指の指紋データである。医療情報は、当該ユーザの医療に係る情報であり、詳細には、既往症や現在の診療履歴についての情報、薬品等に対するアレルギーについての情報、親族の病歴や遺伝についての情報等を含む。
【0032】
利用可能ユーザIDは、ICカード1を使用できる者の職種を示すIDである。ICカード1の使用とは、例えば、記憶部11に記憶されている当該ユーザの医療情報を表示素子2を介して閲覧したり、あるいは、ICカード1に外部装置とのデータ授受を行わせたりすることを意味する。本実施形態では、ICカード1は、当該ユーザを除いては、医療従事者に限って使用することが可能である。
【0033】
ここで、医療従事者とは、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、救急救命士、病院職員(例えば、診療窓口担当)等、医療に従事する者やその関係者をいう。各医療従事者には、その職種毎に固有のIDが、カード発行機関より付与されており、各医療従事者は、自己の職種を示すIDデータが記憶されたICタグを身に付けているものとする。なお、詳細は後述するが、医療従事者の職種毎に、ICカード1の使用についての権限が設定されている。
【0034】
診察券情報とは、初診時等に病院によって供給されるデータであり、当該病院についての情報(名称、連絡先など)と、患者についての情報(当該病院で付与した患者識別番号など(上記ユーザIDと同一であってもよい))と、を含む。
【0035】
通報先情報は、通報ボタン6が押下された際に通報する宛先(通報先)についての情報を示す。通報先情報には、救急活動代表機関(例えば、消防署の代表機関)情報と、所望通報先情報とが含まれる。救急活動代表機関情報は、予め、ICカード1の発行時にカード発行機関により登録されている情報である。救急活動代表機関情報には、救急活動代表機関の名称、電話番号、ネットワークアドレス等が含まれる。一方、所望通報先情報は、ユーザが任意に登録できる情報である。例えば、掛かり付けの医師(病院)や親族等の情報(名称又は氏名、ユーザ本人との関係、電話番号、電子メールアドレス、所在地又は住所等)がこれに該当する。
【0036】
記憶部11に記憶される各情報は、制御部10により、図3に示すように、その属するグループ別に階層的に管理される。ここで、各グループの閲覧及び更新制限について説明する。先ず、閲覧(即ち、表示素子2への表示)制限について説明する。「個人情報」、「利用可能ユーザID」、「診察券情報」、「通報先情報」については、特に制限はなく、当該ユーザ及び何れの医療従事者も閲覧権限を有する。さらに、詳細は後述するが、通報ボタン6が押下された際には、自動的に個人情報の一部が表示素子2に表示される。
【0037】
「医療情報」については、当該ユーザ、医師、歯科医師及び看護師のみが、全ての項目を閲覧する権限を有する。救急救命士は、既往症、診療履歴及びアレルギーの項目のみ閲覧することが可能である。薬剤師は、診療履歴及びアレルギーの項目のみ閲覧することが可能である。その他の医療従事者は、医療情報を閲覧することはできない。
【0038】
続いて、更新制限について説明する。先ず、「個人情報」については、当該ユーザのみが更新権限を有する。「医療情報」については、医師又は歯科医師のみが更新可能である。「利用可能ユーザID」については、何れの医療従事者も更新することができない。「診察券情報」については、病院職員のみが更新可能である。「通報先情報」の「救急活動代表機関」については、何れの医療従事者も更新することができないが、「所望通報先」については、当該ユーザのみが更新可能である。
【0039】
図2に戻り、生体認証部12は、生体認証用パッド7が検出した指紋と予め登録されているユーザの指紋との照合を行い、ユーザの認証を行う。ユーザの指紋(本例では、右手親指の指紋)は、予め採取され、指紋データとして、記憶部11に記憶されている。
【0040】
表示制御部13は、制御部10の指令に従って、記憶部11に保存されている情報を上述した表示方式にて電子ペーパで構成される表示素子2に表示する。操作部14は、図1の機能ボタン3,4、選択ボタン5、通報ボタン6の操作有無(ユーザによる押下有無)を検出し、かかる検出結果を制御部10に供給する。
【0041】
救急通報部15は、データ送信部150と、発光制御部151と、警報音制御部152と、を備え、通報ボタン6が押下された際、制御部10の指令に従って、救急を依頼するための各種処理(救急通報処理)を実行する。データ送信部150は、通報先情報に含まれる救急活動代表機関宛に救急依頼データを所定の通信方式にて送信する。
【0042】
図4は、ICカード1を使用した救急通報システムの構成を示す概略図である。図4に示すように、この救急通報システムは、ICカード1と、救急活動代表機関に設置されるサーバ20と、消防署毎に設置されるサーバ30と、複数の地点に設置されるアクセスポイントAPと、を備える。サーバ20、サーバ30は、ワークステーション等のコンピュータである。サーバ20、各サーバ30及び各アクセスポイントAPは、所定のデータ通信網であるネットワークNに接続する。
【0043】
ユーザ等により通報ボタン6が押下されると、ICカード1のデータ送信部150は、所定の無線通信方式にて、最寄りのアクセスポイントAPに接続し、該アクセスポイントAPを介して、サーバ20に救急依頼データを送信する。
【0044】
送信される救急依頼データには、当該ユーザのユーザID、氏名、住所等が含まれる。サーバ20は、救急依頼データを受信すると、対応する消防署のサーバ30に救急を依頼する緊急メッセージを送信する。より詳細には、救急活動代表機関のサーバ30は、当該救急依頼データを中継したアクセスポイントAPの設置位置と、ユーザの自宅住所とに基づいて、当該通報の場所が、ユーザの自宅であるか否かの判定を行う。サーバ20は、当該通報の場所が、ユーザの自宅であると判定した場合には、救急の現場位置をユーザの自宅住所に設定した緊急メッセージを当該住所に対応する消防署のサーバ30に送信する。一方、当該通報の場所が、ユーザの自宅でないと判定した場合には、サーバ20は、救急の現場位置を当該アクセスポイントAPの設置位置に設定した緊急メッセージを当該設置位置に対応する消防署のサーバ30に送信する。
【0045】
かかる緊急メッセージを受けた消防署は、設定された救急の現場位置に向けて救急車を出動させる。
【0046】
データ送信部150は、上記救急依頼データの送信処理を救急活動代表機関のサーバ30が正常に受信できるまで、一定時間毎に繰り返し行う。但し、ユーザ等により、再度、通報ボタン6が押下されると、制御部10は、救急通報部15による救急通報処理を中止する。
【0047】
図2に戻り、発光制御部151は、通報ボタン6が押下された際、制御部10の指令に従って、発光部9を断続発光させる。より具体的には、データ送信部150の通信可能エリア内にアクセスポイントAPが存在しない等の理由により、救急依頼データの送信ができない場合、制御部10は、発光制御部151に制御信号を送出する。かかる制御信号を受けた発光制御部151は、発光部9を制御して、断続発光させる。
【0048】
同様に、警報音制御部152は、通報ボタン6が押下された際に、救急依頼データの送信ができない場合、制御部10の指令に従って、スピーカ6から警報音を断続的に出力する。
【0049】
このような断続発光や警報音の断続出力により、ユーザは、救急依頼データの送信ができない旨を容易に認識でき、また、周囲の者に異常事態である旨を察知させることもできる。
【0050】
また、救急通報部15は、通報ボタン6が押下されると、当該ユーザの氏名、ユーザID等のユーザを特定する情報と、救急が必要である旨を示す情報を表示制御部13を介して表示素子2に表示する。これにより、救急依頼データの送信ができず、しかも、容態が悪く、携帯電話等を使って当該ユーザが自ら通報できない状態であっても、周囲の者に救急車の手配をしてもらうことが可能となる。
【0051】
なお、救急通報部15は、通報先情報に所望通報先の情報が含まれている場合には、これも表示素子2に表示してもよい。
【0052】
RFID部16は、RFID(Radio Frequency Identification)方式にて、他のICタグと無線通信を行い、ICタグから送信された変調波を図示しないアンテナ(例えば、平面ループアンテナ)を介して受信し、受信した変調波を増幅して復調し、復調により得られたデータ(IDデータ)を制御部10に供給する。
【0053】
データ入出力処理部17は、ICカード1の表面に設けられた図示しない接触電極を介して、外部装置とデータの入出力を行う。具体的に説明すると、ICカード1と外部装置とのデータの入出力は、専用のカードリーダライタを使用して行われる。図5(a)は、ユーザ端末とデータの授受を行う場合の例を示す。ここでは、専用のカードリーダライタ40は、パーソナルコンピュータ等の汎用の情報処理装置であるユーザ端末50とUSBケーブル等の汎用ケーブル60を介して接続される。
【0054】
この場合、ICカード1がカードリーダライタ40のカード挿入口41から挿入され、セットされると、ICカード1の接触電極は、カードリーダライタ40の図示しない接触端子と直接接触する。これにより、ICカード1に対するデータの入出力が可能となる。ユーザは、ユーザ端末50の図示しない入力装置(キーボード、マウス等)を操作して、当該ユーザの「個人情報」項目や「通報先情報」の「所望通信先」項目の内容をICカード1からカードリーダライタ40を介して取得させ、あるいは、これらの項目の内容を更新させることができる。なお、制御部10は、生体認証部12により当該ユーザが認証された場合に限り、データ入出力処理部17に、ユーザ端末50とICカード1との間のデータ入出力処理の実行を許可する。
【0055】
また、例えば、医師用端末とデータの授受を行う際には、図5(b)に示すように、カードリーダライタ40は、汎用ケーブル60を介して医師用端末70に接続される。医師用端末70は、パーソナルコンピュータ等の汎用の情報処理装置であり、例えば、病院の各診察室に設置され、医師によって使用される。
【0056】
医師によって、ICカード1がカードリーダライタ40にセットされた後、医師用端末70の図示しない入力装置(キーボード、マウス等)が操作されることで、例えば、患者の診療情報(病名、処置情報、処方箋情報)が、医師用端末70からカードリーダライタ40を介してICカード1に送信される。また、医師は、医師用端末70を操作することで、「医療情報」の内容を適宜、編集することができる。
【0057】
また、ICカード1から当該患者の医療情報をカードリーダライタ40を介して取得させ、取得した医療情報を医師用端末70が備える図示しないモニタ等に表示させることもできる。なお、制御部10は、RFID部16によって取得された利用者のIDが医師を示すIDである場合に限り、データ入出力処理部17に、医師用端末70とICカード1との間のデータ入出力処理の実行を許可する。
【0058】
また、ICカード1のユーザは、機能ボタン4(F2ボタン)を使用した機能設定により、予め、データ入出力処理部17によるデータ入出力処理の実行を禁止させることもできる。かかる機能設定について、以下、図6(a)〜(c)を参照して説明する。ユーザにより生体認証用パッド7が押下され、ユーザが認証されると、制御部10は、表示制御部13を制御して、図6(a)に示すような初期画面を表示素子2に表示する。
【0059】
ここで、ユーザにより機能ボタン4(F2ボタン)が押下されると、制御部10は、表示制御部13を制御して、図6(b)に示すような操作対象項目を表示素子2に表示する。ユーザは、選択ボタン5を使って所望の操作対象項目を選択することができる。ここで、ユーザにより「個人情報」又は「医療情報」が選択され、機能ボタン3(F1ボタン)が押下されると、図6(c)に示すように、当該選択項目について、入力又は出力処理を実行できるか否かを設定する画面に移行する。
【0060】
図6(c)の画面において、「読み出し」又は「書き込み」項目については、ユーザにより選択され、F1ボタンが押下される度に、“OK”と“NG”が交互に切り替わる。ここで“OK”ならば、データ入出力処理部17による当該処理(読み出し(即ち、出力処理)あるいは書き込み(即ち、入力処理))が、実行可能であることを意味し、“NG”ならば、実行不可能であることを意味する。なお、図6(b),図6(c)の画面において、「戻る」項目が選択され、F1ボタンが押下されると、それぞれ前画面に移行する。
【0061】
図2に戻り、電源部18は、例えば、リチウムイオンポリマー二次電池や有機ラジカル電池等のフレキシブル電池で構成され、ICカード1の上記各構成部に電力を供給する。電源部18による電力の供給は、生体認証用パッド7がタッチされるか、又は、通報ボタン6が押下されることで開始される。
【0062】
生体認証用パッド7がタッチされて電源が投入されると、制御部10は、生体認証部12に、電源を投入したユーザの認証処理を実行させる。また、制御部10は、RFID部16を起動させ、他のICタグからIDデータを取得する処理を実行させる。その結果、ユーザが認証されず、さらに、利用可能ユーザIDに該当するIDデータが取得できなかった場合、制御部10は、表示制御13を制御して、使用できない旨を示すメッセージを表示素子2に表示させ、しかる後、電源部18に電力の供給を停止させ、電源をオフにする。
【0063】
また、制御部10は、電源部18による電力供給の開始後、ユーザ等により操作が行われない状態が一定時間続くと、電源部18に電力の供給を停止させる。
【0064】
続いて、ICカード1の記憶部11に記憶されている各種情報の閲覧について説明する。上述したように、当該ユーザを除いては、医療従事者に限って、ICカード1に記憶されている医療情報等の当該ユーザの情報を閲覧することが可能である。医療従事者は、図7に示すように、身分証明書であるIDカード80を携帯する(例えば、紐を通して首にかける)。IDカード80には、ICタグ81が取り付けられている。ICタグ81は、メモリを備えたICチップとアンテナ(何れも図示せず)を搭載し、RFID方式にて、ICカード1と無線通信を行う。このICチップのメモリには、当該医療従事者の職種を示すIDデータが記憶されている。
【0065】
ICカード1の制御部10は、生体認証パッド7が何者かによってタッチされ、電源が投入されると、当該電源投入者の閲覧権限を識別し、識別した閲覧権限に基づいて、閲覧制限の程度(閲覧制限レベル)を決定する処理(立ち上げ処理)を実行する。図8は、立ち上げ処理の手順を示すフローチャートである。先ず、電源が投入されると、制御部10は、生体認証部12に、ユーザの認証処理を実行させると共に、RFID部16を起動させ、ICタグ81からIDデータを取得する処理を実行させる。
【0066】
生体認証部12によりユーザが本人であることが認証されると(ステップS101でYES)、制御部10は、閲覧制限レベルにユーザ本人に対応した値を設定する(ステップS102)。この場合、閲覧制限レベルには、閲覧に制限が無い(即ち、全情報が閲覧可能である)ことを示す値(例えば、“0”)が設定される。これにより、ユーザ本人は、記憶部11に記憶されている全情報(「個人情報」、「医療情報」、「利用可能ユーザID」、「診察券情報」、「通報先情報」)の内から所望の情報を適宜選択して閲覧することができる。
【0067】
次に、制御部10は、表示制御部13を制御して、図6(a)に示すような初期画面を表示素子2に表示する(ステップS103)。一方、電源投入者がユーザ本人でない場合(ステップS101でNO)、制御部10は、RFID部16によりIDデータが取得できたか否かをチェックする(ステップS104)、その結果、IDデータが取得できなかった場合(ステップS104でNO)、制御部10は、表示制御部13を制御して、使用できない旨を示すメッセージ(エラーメッセージ)を表示素子2に所定時間表示し(ステップS105)、その後、電源部18に電力の供給を停止させ、電源をオフにする(ステップS106)。
【0068】
RFID部16によりIDデータが取得できた場合(ステップS104でYES)、制御部10は、取得したIDを記憶部11に記憶する利用可能ユーザIDと照合し、指定された医療従事者か否かの判定を行う(ステップS107)。その結果、当該電源投入者が、指定された医療従事者でない場合(ステップS107でNO)、制御部10は、エラーメッセージを所定時間表示し、電源をオフにする(ステップS105、ステップS106)。
【0069】
一方、当該電源投入者が、指定された医療従事者である場合(ステップS107でYES)、制御部10は、閲覧制限レベルに当該医療従事者の職種に対応した値を設定する(ステップS108)。例えば、当該医療従事者が、医師、歯科医師又は看護師である場合、閲覧制限レベルには、ユーザ本人と同様、閲覧に制限が無いことを示す値(例えば、“0”)が設定される。また、当該医療従事者が救急救命士である場合、「医療情報」の「親族の病歴」及び「遺伝」項目について閲覧が禁止されていることを示す値(例えば、“1”)が設定される。また、当該医療従事者が薬剤師である場合には、「医療情報」の「既往症」、「親族の病歴」及び「遺伝」項目について閲覧が禁止されていることを示す値(例えば、“2”)が設定され、その他の医療従事者である場合には、「医療情報」の全項目を閲覧できないことを示す値(例えば、“3”)が設定される。
【0070】
制御部10は、閲覧制限レベルを決定すると、表示制御部13を制御して、図9に示すような医療従事者用の初期画面を表示素子2に表示する(ステップS109)。医療従事者用の初期画面では、医療従事者が当該ユーザ(患者)の特定をし易くするため、当該ユーザの個人情報の一部を表示する。
【0071】
ユーザ本人又は医療従事者により、図6(a)又は図9の初期画面において、機能ボタン3(F1)ボタンが押下されると、制御部10により、図10(a)に示すような、記憶部11に記憶されている各種情報の大項目が表示される。ユーザ本人又は医療従事者は、選択ボタン5を使って所望の項目を選択することができる。項目の選択後、機能ボタン3(F1ボタン)が押下されると、選択した項目の下位階層の項目あるいは情報が表示される。なお、「戻る」項目が選択され、F1ボタンが押下されると前画面に戻る。
【0072】
例えば、図10(a)の画面で「医療情報」項目が選択され、F1ボタンが押下されると、図10(b)に示すように、さらに下位の項目が表示される。なお、当該医療従事者が閲覧制限を受けている場合には、制御部10は、該当する項目を非表示にしたり、あるいは、非選択状態(グレー表示)にする。
【0073】
当該ユーザに既往症がある場合、図10(b)の画面で、ユーザ本人又は医療従事者により、「既往症」項目が選択され、F1ボタンが押下されると、図10(c)に示すように、さらに下の階層の項目(即ち、当該ユーザの病歴)が表示される。図10(c)の例では、当該ユーザは、「心筋梗塞」、「狭心症」及び「気管支炎」を患っていたことが示されている。さらに、これらの病名項目の何れかを選択し、F1ボタンが押下されると、当該病気の治療実績が表示される。図10(d)の画面は、「心筋梗塞」の治療実績の表示例を示している。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係るICカード1(情報記録媒体)は、当該ユーザの医療情報を内部に蓄積して記憶し、医療従事者にこれを閲覧させる機能を有する。したがって、医療従事者は、当該患者の救急に必要な情報を直ちに取得することができる。また、患者の医療データを管理するサーバ等からデータを取得するための端末装置等を必要とせず、医療従事者は、医療従事者であることを示すIDを記憶したICタグを所持していれば、場所を問わず、情報を閲覧することができる。これにより、例えば、当該ユーザが外出中に突然疾病した場合でも、居合わせた医師等の医療従事者は、当該患者の医療情報を容易に入手できるため、適切な救急処置を施すことが可能となる。
【0075】
また、本実施形態に係るICカード1は、ユーザ本人であるか否かを認証する機能と、利用者が医療従事者であるか否かを識別する機能を備え、これにより、ICカード1の使用権限を決定し、情報の閲覧や外部装置とのデータの入出力処理に制限を加えている。したがって、権限のない第三者への不正な情報流出や、情報内容の不正改ざん等を効果的に防止できる。
【0076】
また、本実施形態に係るICカード1は、消防署等の救急活動機関に救急を依頼するための救急通報機能を備えているため、容態が悪く、電話等を使用して通報できない状態であっても、容易に救急の依頼をすることが可能である。
【0077】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0078】
例えば、ICカード1とカードリーダライタ40との間のデータの授受は、非接触のデータ通信方式(例えば、RFID方式)により行われてもよい。
【0079】
また、ユーザの認証方法は、指紋照合に限定されず、例えば、音声照合、声紋照合、虹彩照合等も採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態に係るICカードを説明するための図である。
【図2】図1のICカードの内部構成を示すブロック図である。
【図3】記憶部に記憶される各種情報の管理構造を示す概念図である。
【図4】図1のICカード使用した救急通報システムの構成を示す概略図である。
【図5】図1のICカードと外部装置との間のデータの入出力を説明するための図であり、(a)は外部装置がユーザ端末である場合、(b)は外部装置が医師用端末である場合を示す。
【図6】図1のICカードの機能設定を説明するための画面例であり、(a)は初期画面、(b)は操作対象項目表示画面、(c)は設定画面を示す。
【図7】図1のICカードの閲覧機能を説明するための図である。
【図8】図1のICカードが実行する立ち上げ処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】医療従事者用の初期画面例である。
【図10】図1のICカードの閲覧機能を使用する際に表示される画面例であり、(a)は大項目表示画面、(b)は(a)の下位画面の一例、(c)は(b)の下位画面の一例、(d)は(c)の下位画面の一例を示す。
【符号の説明】
【0081】
1 ICカード
2 表示素子
3 機能ボタン(F1ボタン)
4 機能ボタン(F2ボタン)
5 選択ボタン
6 通報ボタン
7 生体認証用パッド
8 スピーカ
9 発光部
10 制御部
11 記憶部
12 生体認証部
13 表示制御部
14 操作部
15 救急通報部
150 データ送信部
151 発光制御部
152 警報音制御部
16 RFID部
17 データ入出力処理部
20,30 サーバ
40 カードリーダライタ
41 カード挿入口
50 ユーザ端末
60 汎用ケーブル
70 医師用端末
80 IDカード
81 ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定ユーザの医療に係る医療情報を記憶する記憶手段と、
所定の表示素子で構成される表示窓と、
利用者の操作指示を受け付ける操作手段と、
利用者の生体情報を検出する生体情報検出センサと、
該生体情報検出センサが検出した前記生体情報に基づいて、当該利用者が前記特定ユーザであるか否かを認証する認証手段と、
医療従事者が所持するICタグと無線通信を行い、前記ICタグから当該医療従事者の職種を示す医療従事者IDを読み取るRFID手段と、
前記認証手段によって特定ユーザであると認証された場合又は前記RFID手段により医療従事者IDが読み取られた場合に限り、前記操作手段が受け付けた当該利用者の操作指示に応じて、前記記憶手段が記憶する前記医療情報の内容を前記表示窓に表示する表示手段と、
前記RFID手段により読み取られた前記医療従事者IDが示す職種に基づいて、当該利用者が前記表示窓を介して前記医療情報を閲覧できるレベルを決定する閲覧レベル決定手段と、を備え
前記表示手段は、前記閲覧レベル決定手段による決定結果に従って、前記医療情報の内容を前記表示窓に表示する、
ことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
外部装置と所定の入出力インタフェースによりデータの授受を行うデータ入出力手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記記憶手段は、救急活動を実施する救急活動機関が備えるサーバのネットワークアドレスをさらに記憶し、
前記操作手段が所定の操作指示を受け付けた場合、前記サーバに救急を依頼するためのメッセージを送信する救急通報手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記救急通報手段による前記メッセージの送信が正常に行われなかった場合、所定の態様で警報を行う警報手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記警報手段は、断続的に警報音を出力させ、又は、断続的に警報光を発光させることで警報を行う、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記生体情報検出センサは、利用者の指紋を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記表示素子は、電子ペーパで構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項8】
前記電子ペーパの表示方式は、マイクロカプセル型電気泳動方式である、
ことを特徴とする請求項7に記載の情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−39872(P2010−39872A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203587(P2008−203587)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】