説明

情報読出システム、質問機、及び情報読出システムの設定方法

【課題】複数の質問機を並べて配置する場合に、各質問機の、夫々の読出対象となっている応答機からの格納情報の読出性能を向上する。
【解決手段】応答機10に格納されている情報である格納情報を送信させる要求電波を送信する送信アンテナ21と、要求電波を受信した応答機10から送信されてくる応答電波を受信する受信アンテナ22と、送信アンテナ21から送信する要求電波の変調信号を生成する変調部26と、受信アンテナ22に受信される応答電波を復調する復調部27と、を有する複数の質問機20を並べて配置してなる情報読出システム1において、隣接して配置される各質問機20の送信アンテナ21から送信される要求電波の偏波面が互いに異なるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報読出システム、質問機、及び情報読出システムの設定方法に関し、とくに複数の質問機を並べて配置する場合に、各質問機の、夫々の読出対象となっている応答機からの格納情報の読出性能を向上するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で情報を読出すシステム(以下、情報読出システムという)に用いられるRFID(Radio Frequency IDentification)が利用する周波数帯は、現在、13.56MHz帯や2.45GHz帯が主流である。昨今ではこれらに加えてUHF帯(通信距離3〜6m)を用いたRFIDの導入が検討されており、わが国においても電波法の改正等、UHF帯を用いたRFIDの導入に向けて各所で研究が行われている。UHF帯を用いるRFIDは、従来の13.56MHz帯(通信距離80cm程度)や2.45GHz帯(通信距離1.5m程度)等を用いた場合に比べて通信距離が長い(3〜6m程度)という特徴がある。またUHF帯を用いるRFIDでは、複数の応答機(例えばICタグ)に記録されている情報(以下、格納情報という)を一度に読み出すことが可能である。さらにリーダライタ装置から見えない場所にあるICタグの情報を読み出すことも可能である。
【特許文献1】特開2004−54515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらUHF帯のように通信距離が長い場合は複数の質問機を近距離に配列すると各質問機が自身の読み出し対象になっていない他の質問機が担当するICタグからの応答電波を拾ってしまうという問題がある。また隣接する質問機同士で起きる電波干渉の問題も解決しなければならない。このように、通信距離が長い周波数帯を用いるRFIDの実用化にあたっては、これらの問題を解決することが必要である。
【0004】
この発明はこのような背景に鑑みてなされたもので、複数の質問機を並べて配置する場合に、各質問機の、夫々の読出対象となっている応答機からの格納情報の読出性能を向上することを可能とする情報読出システム、質問機、及び情報読出システムの設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のうちの第1の請求項に記載の発明は、応答機に格納されている情報である格納情報を送信させる要求電波を送信する送信アンテナと、前記要求電波を受信した応答機から送信されてくる応答電波を受信する受信アンテナと、前記送信アンテナから送信する前記要求電波の変調信号を生成する変調部と、前記受信アンテナに受信される前記応答電波を復調する復調部と、を有する複数の質問機を並べて配置してなる情報読出システムであって、隣接して配置される前記各質問機の前記送信アンテナから送信される前記要求電波の偏波面が互いに異なることとする。
【0006】
このように、隣接して配置されている質問機の夫々の送信アンテナから送信される要求電波の偏波面が互いに異なるように設定されていることで、偏波面が異なることによるアイソレーションによって各質問機から送信される要求電波同士の電波干渉が起きにくくなる。従って、各質問機の、夫々の読み出し対象になっている応答機からの格納情報の読出性能が向上し、これにより各質問機は夫々が読出を担当する応答機から確実かつ安定して格納情報を読み出すことができる。
【0007】
本発明のうちの第2の請求項に記載の発明は、請求項1に記載の情報読出システムであって、隣接して配置される前記各質問機の前記受信アンテナが受信する前記応答電波の偏波面が互いに異なることとする。
このように、各質問機の前記受信アンテナが受信する前記応答電波の偏波面が互いに異なることで、偏波面が異なることによるアイソレーションによって、各質問機の受信アンテナは、隣接して配置されている質問機の読み出し対象になっている応答機から送信されてくる応答電波を受信しにくくなる。従って、各質問機の、夫々の読み出し対象になっている応答機からの格納情報の読出性能が向上し、これにより各質問機は夫々が読出を担当する応答機から確実かつ安定して格納情報を読み出すことができる。
【0008】
本発明のうちの第3の請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の情報読出システムであって、前記応答機はRFIDにおけるICタグであり、前記質問機は前記ICタグから前記格納情報を読み出すRFIDのリーダ装置であることとする。
【0009】
本発明のうちの第4の請求項に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の情報読出システムであって、前記送信アンテナ又は前記受信アンテナは、2点給電円偏波励振方式又は1点給電円偏波励振方式のマイクロストリップアンテナであることとする。
前記送信アンテナ又は前記受信アンテナとしてこれらのアンテナを用いることで、要求電波や応答電波の偏波面を設定する仕組みを容易に実現することができる。
【0010】
本発明のうちの第5の請求項に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の情報読出システムであって、CPU及びメモリを有する情報処理装置をさらに含み、前記情報処理装置は、前記各送信アンテナの配置を示す情報を記憶し、前記各質問機は前記情報処理装置によって制御可能な前記要求電波の偏波面を切り換える偏波面切換スイッチを有し、前記情報処理装置は、前記配置を示す情報に基づいて、隣接して配置される前記質問機の前記送信アンテナから送信される前記要求電波の偏波面が互いに異なるように前記各質問機の前記偏波面切換スイッチを設定し、前記情報処理装置は、前記配置を示す情報に基づいて、隣接して配置される前記質問機の前記受信アンテナが受信する前記要求電波の偏波面が互いに異なるように前記各質問機の前記偏波面切換スイッチを設定することとする。
【0011】
このように、送信アンテナや受信アンテナの偏波面を情報処理装置が配置情報に基づいて自動的に設定するようにすることで、偏波面を設定するためのユーザの労力を軽減することができる。また質問機を増設、変更等する場合には、配置情報を変更するだけで容易に送信アンテナや受信アンテナの偏波面を設定することができる。
【0012】
本発明のうちの第6の請求項に記載の発明は、請求項5に記載の情報読出システムであって、前記情報処理装置には複数の前記質問機が通信可能に接続し、前記偏波面切換スイッチは前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの近傍に配置され、前記各質問機の変調部及び復調部は前記情報処理装置の近傍に配置され、前記変調部は同軸ケーブルを介して前記送信アンテナに前記要求電波を供給し、前記復調部には前記同軸ケーブルを介して前記応答電波に基づく受信信号が供給され、前記情報処理装置が前記偏波面切換スイッチを制御するための制御信号は、前記同軸ケーブルに重畳されて伝送されることとする。
このように、変調部と送信アンテナ、及び復調部と受信アンテナを結合する同軸ケーブルに制御信号を重畳させることで、制御信号を伝送するためのケーブルを別途引き回す必要がなくなり、設置の容易化やコスト低減、美感性の向上等が図られる。
【0013】
本発明のうちの請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の情報読出システムに用いられる前記質問機であって、前記送信アンテナ、前記変調部、前記受信アンテナ、前記受信部、及び前記偏波面切換スイッチ、を有してなることとする。
このような構成を有する質問機を用いることで、本発明の情報読出システムを容易に実現することができる。
【0014】
本発明のうちの請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の質問機であって、前記偏波面切換スイッチは、前記送信アンテナから送信する前記要求電波の偏波面、又は前記受信アンテナが受信する前記応答電波の偏波面を手動で設定するためのユーザインタフェースを有することとする。
このように、質問機がこれらのユーザインタフェースを備えることで、ユーザは容易に偏波面の設定を行うことができる。
【0015】
本発明のうちの請求項9に記載の発明は、応答機に格納されている情報である格納情報を送信させる要求電波を送信する送信アンテナと、前記要求電波を受信した応答機から送信されてくる応答電波を受信する受信アンテナと、前記送信アンテナから送信する前記要求電波の変調信号を生成する変調部と、前記受信アンテナに受信される前記応答電波を復調する復調部と、を有する複数の質問機を並べて配置してなる情報読出システムの設定方法であって、隣接して配置される前記各質問機の前記送信アンテナから送信される前記要求電波の偏波面が互いに異なるようにするステップと、隣接して配置される前記各質問機の前記受信アンテナが受信する前記応答電波の偏波面が互いに異なるようにするステップと、を含むこととする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の質問機を並べて配置する場合において、各質問機の、夫々の読出対象となっている応答機からの格納情報の読出性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかるRFID(Radio Frequency IDentification)のリーダ装置(質問機)により個体識別や分類等を行う対象物に付されているICタグ(応答機)に書き込まれている情報(以下、格納情報という)を読み出すシステム(以下、情報読出システムという)について詳細に説明する。以下に説明する情報読出システムは、例えばベルトコンベアにより航空手荷物を貨物ゲートに自動搬送する場合における航空手荷物の行き先管理やスーパーマーケットにおけるレジ精算、物流センターにおける検品業務などに適用される。
【0018】
図1に本実施形態の情報読出システム1の概略的な構成を示している。ICタグ10が付された対象物5が載置される複数の台6が、情報読出システム1が導入される室内に数m間隔で並べて配置されている。台6は実際にはベルトコンベアやスーパのレジ台、検品台等である。各台6の上方に対応する夫々の位置には、各台6の上に載置される対象物12に付されているICタグ10から格納情報を読み出すためのリーダ装置20が配置されている。なお図1では台6及びリーダ装置20を夫々3つずつ示しているが、これらの数は図1に示すものに限られない。
【0019】
図2にリーダ装置20の構成を示している。リーダ装置20はICタグ10に対して格納情報の送信を要求する電波(以下、要求電波という)を送信するための送信アンテナ21と、上記要求電波を受信したICタグ10がこれに応答して送信してくる電波(以下、応答電波という)を受信するための受信アンテナ22とを備えている。要求電波及び応答電波はいずれもUHF帯の電波であり、リーダ装置は数m以上離れている場所に置かれているICタグから格納情報を読み出すことができる。また本実施形態のリーダ装置20の送信アンテナ21及び受信アンテナ22は、右旋円偏波(RHCP(Right-Hand Circular Polarization))又は左旋円偏波(LHCP(Left-Hand Circular Polarization))のいずれかの偏波面を有する要求電波を送信(受信アンテナの場合は応答電波の受信)することができる。
【0020】
CPU23は、リーダ装置20の統括的な制御を行う中央処理装置である。メモリ24はCPU23によって実行されるプログラムや各種のデータを記憶する。リーダ装置20は通信インタフェース25を有しており、CPU23は通信ケーブルやLAN(Local Area Network)等を介してリーダ装置20によって読み出された格納情報を利用するパーソナルコンピュータ等のコンピュータ(以下、情報処理装置50という)と通信する。
【0021】
CPU23は、通信インタフェース25により情報処理装置50から要求電波の送信指示を受信すると、要求電波に載せるデータを含んだ信号(以下、要求信号という)を生成して変調部26に出力する。変調部26は要求信号をASK(Amplitude Shift Keying)やFSK(Frequency Shift Keying)等の変調方式で変調して変調信号(RF信号)を生成し、生成した変調信号を電力増幅して送信アンテナ21に出力する。復調部27は、受信アンテナ22によって受信された応答電波に基づく受信信号を復調して復調信号を生成し、これをCPU23に入力する。CPU23は入力される復調信号に含まれている格納情報を取り出して、これを情報処理装置50に送信する。
【0022】
以上の構成に加え、リーダ装置20は偏波面切換スイッチ28を有している。ユーザは偏波面切換スイッチ28に設けられているユーザインタフェースを操作することにより送信アンテナ21から送信する要求信号の偏波面を手動で切り換えることができる。またユーザは偏波面切換スイッチ28に設けられているユーザインタフェースを操作することにより受信アンテナ22が受信する応答信号の偏波面を手動で切り換えることができる。このようにリーダ装置20が上記ユーザインタフェースを備えていることで、ユーザは送信アンテナ21や受信アンテナ22についての偏波面の設定を容易に行うことができる。
【0023】
図3にこのような偏波面の設定を行うことが可能なアンテナの一例を示ししている。同図に示すアンテナは、2点給電円偏波励振方式のアンテナであり、3dbハイブリッド(3db−HB)により空間的に直交する2つの給電点F1,F2からマイクロストリップアンテナ(MSA(MicroStrip Antenna))を励振することにより、右旋円偏波又は左旋円偏波のいずれかの偏波面を有する電波を送信(受信の場合はいずれかの偏波面の電波を受信)することができる。そして偏波面切換スイッチ28により給電点をF1又はF2のいずれかに切り換えるようにすることで、右旋円偏波又は左旋円偏波のいずれかの偏波面に設定することができる。同じように偏波面を切り替えることができるアンテナとしては、1点給電円偏波励振方式のMSAを用いるものがある(なお、一点又は2点給電円偏波励振方式のアンテナについては例えば、「吉岡めぐみ、切り込みを有する小型円偏波パッチアンテナの研究、[online]、平成13年3月1日、横浜国立大学、平成16年10月15日検索、インターネット<URL:http://www.arailab.dnj.ynu.ac.jp/thesis/h12/megumi.pdf>」等を参照)。また偏波面の切り替えは、クロスダイポール等の線状アンテナを円偏波励振方式で駆動することによっても行うことができる。
【0024】
図4にICタグ10の構成を示している。本実施形態で用いるICタグ10は、リーダ装置20から送信されてくる要求電波を受信するとともに要求電波のエネルギーを利用して応答電波を送信するパッシブ型のものである。同図に示す兼用アンテナ11は、要求電波の受信と応答電波の送信の双方に兼用される。復調部12は兼用アンテナ11が受信した要求電波を復調して復調信号を生成し、これを制御部13に入力する。復調信号が入力されると制御部13は不揮発性メモリ14に記憶されている格納情報に基づいて送信信号を生成し、これを送信部15に出力する。送信部15は送信信号を変調して変調信号を生成してこれを兼用アンテナ11に出力し、これにより兼用アンテナ11から応答信号が送信される。電源部16は、兼用アンテナ11が受信した要求電波に基づく受信信号を整流し、制御部13や復調部12,送信部15等で必要とされる電力を生成する。ICタグ10が受信する要求電波とICタグ10から送信される応答電波の偏波面は逆の関係となる。すなわち、兼用アンテナ11で受信される要求電波が右旋円偏波であればその要求電波に応じて送信される応答電波は左旋円偏波となり、逆に要求電波が左旋円偏波であればその要求電波に応じて兼用アンテナ11から送信される応答電波は右旋円偏波となる。
【0025】
図1に示しているように、隣接して配置されているリーダ装置20の同士の関係では、夫々のリーダ装置20の送信アンテナ21から送信される要求電波の偏波面が互いに異なるように設定されている。例えば、図1におけるリーダ装置20(1)の送信アンテナ21(1)が右旋円偏波の要求電波を送信するように設定されている場合には、これに隣接するリーダ装置20(2)の送信アンテナ21(2)は左旋円偏波の要求電波を送信するように設定されている。またリーダ装置20(3)の送信アンテナ21(3)は右旋円偏波の要求電波を送信するように設定されている。またこの場合において、各リーダ装置20の受信アンテナ22は、夫々が受信すべき応答電波の偏波面となるように設定されている。すなわち、ICタグ10は要求電波とは逆の偏波面の応答電波を送信してくるので、リーダ装置20(1)の受信アンテナ22(1)は、左旋円偏波の応答電波を受信するように設定されている。またリーダ装置20(2)の受信アンテナ22(2)は、右旋円偏波の応答電波を受信するように設定されている。またリーダ装置(3)の受信アンテナ(3)は左旋円偏波の応答電波を受信するように設定されている。以上のような設定がなされることで、隣接して配置される各リーダ装置20の受信アンテナ22が受信する応答電波の偏波面は互いに異なるように設定されることになる。
【0026】
このように、隣接して配置されているリーダ装置20の夫々の送信アンテナ21から送信される要求電波の偏波面が互いに異なるように設定されていることで、偏波面が異なることによるアイソレーションにより各リーダ装置20から送信される要求電波同士の電波干渉は起こりにくくなる。このため、各リーダ装置20の夫々の読み出し対象になっているICタグ10からの格納情報の読出性能が向上することになる。また隣接して配置される各リーダ装置20の受信アンテナ22が受信する応答電波の偏波面が互いに異なるように設定されることで、偏波面が異なることによるアイソレーションにより各リーダ装置20の受信アンテナ22は、隣接して配置されているリーダ装置20の読み出し対象になっているICタグ10から送信されてくる応答電波を受信しにくくなる。このため、各リーダ装置20の自身の読み出し対象であるICタグ10からの格納情報の読出性能が向上する。そして以上の構成によって、各リーダ装置20は、隣接して配置されるリーダ装置20の干渉や妨害を受けることなく、自身の読み出し対象になっているICタグ10から確実かつ安定して格納情報を読み出すことができる。また以上の結果、本実施形態の情報読出システム1にあっては、リーダ装置20を近距離に配置することが可能となり、情報読出システム1は様々な環境に柔軟に適用することができる。また各リーダ装置20の要求電波として同一の周波数を利用する場合であっても、リーダ装置20を近接して配置することができる。
【0027】
偏波面切換スイッチ28の設定はリーダ装置20のレイアウト(配置)に応じて遠隔操作により自動的に行われるようにすることができる。図5はそのように構成した情報読出システム1の一実施形態である。同図に示す情報読出システム1では、図2に示したリーダ装置20の構成する要素のうち、送信アンテナ21、受信アンテナ22及び偏波面切換スイッチ28(以下、これらをアンテナ系201という)については台6が設置されている側に設け、復調部27、変調部26、CPU23、メモリ24、及び通信インタフェース(以下、これらを信号処理系202という)については情報処理装置50が設置されている側に設けている。アンテナ系201と信号処理系202とは同軸ケーブル60を介して結合されている。情報処理装置50が偏波面切換スイッチ28を制御するための制御信号はこの同軸ケーブル60に重畳されて伝送される。なお、図5には一台のリーダ装置20のみを記載しているが、実際には情報処理装置50にはこのようにアンテナ系201と信号生成系202とに構成要素が分割された複数のリーダ装置20が存在している。そして各リーダ装置20の信号生成系202は情報処理装置50の近傍に集約して配置されており、これらの信号生成系202は、夫々、通信ケーブルやLAN等を介して情報処理装置50に接続されている。
【0028】
図6は本実施形態における情報処理装置50のハードウエア構成である。情報処理装置50は、CPU51、メモリ52、ハードディスク53、キーボードやマウス等の入力装置54、ディスプレイ等の表示装置55、リーダ装置20と通信するための通信インタフェース56を備えている。情報処理装置50では偏波面切換スイッチ28を制御するためのプログラム(以下、偏波面設定プログラムという)が実行されている。
【0029】
情報処理装置50のハードディスク53には、各リーダ装置20のアンテナ系201のレイアウトを示す情報(以下、配置情報という)が記憶されている。配置情報は、例えば偏波面設定プログラムが有する機能を利用してユーザが入力したものである。図7に配置情報の一例を示している。同図に示す配置情報では、アンテナ系201のレイアウトが2次元のアドレス空間<i,j>(i=1〜5、j=1〜4)にマッピングされて表現されている。偏波面設定プログラム28は、この配置情報に基づいて、隣接して配置されているリーダ装置20の送信アンテナ21から送信される要求電波の偏波面、及び各リーダ装置20の受信アンテナ22が受信する応答電波の偏波面が、夫々互いに異なるように偏波面切換スイッチ28を設定する。
【0030】
図8は偏波面設定プログラムによって行われる偏波面の設定に関する処理を説明するフローチャートである。偏波面設定プログラムは、まずハードディスク53からメモリ52に配置情報を読み出して(S811)、各送信アンテナ21についての偏波面を設定する(S812)。偏波面の設定は例えば次のようにして行われる。すなわち、偏波面設定プログラムはまず<1,1>の位置に配置されている送信アンテナ21の偏波面を設定する。ここではこの送信アンテナ21は右旋円偏波に設定されたものとする。次に<1,1>に右旋円偏波に設定された送信アンテナに隣接する<2,1>、<1,2>の位置に配置されている送信アンテナ21の偏波面を、<1,1>の位置に配置されている送信アンテナ21とは異なる偏波面、すなわち左旋円偏波に設定する。そして偏波面設定プログラムは、このような処理を各送信アンテナ21について繰り返し行って、全ての送信アンテナ21について偏波面を設定する。このようにして設定された各送信アンテナ21の偏波面を図9Aに示している。
【0031】
次に偏波面設定プログラムは、各リーダ装置20の受信アンテナ22の偏波面を設定する(S813)。受信アンテナ22の偏波面の設定は、例えば各リーダ装置20の受信アンテナ22の偏波面を各リーダ装置20の送信アンテナ21について設定した偏波面と異なる偏波面に設定することにより行われる。例えば<1,1>の位置に配置されている送信アンテナ21は右旋円偏波に設定されているので、偏波面設定プログラムはそのリーダ装置20の受信アンテナ22は左旋円偏波に設定する。このようにして各受信アンテナ22について設定された偏波面を図9Bに示している。
【0032】
偏波面設定プログラムは、各リーダ装置20の送信アンテナ21及び受信アンテナ22についての偏波面を設定すると、次に各リーダ装置20の送信アンテナ21及び受信アンテナ22がこれらについて設定した偏波面の要求電波を送信し又は応答電波を受信するように制御するための制御信号(例えば右旋円偏波の場合には’0’、左旋円偏波の場合には’1’となる信号)を、同軸ケーブル60を介して各偏波面設定スイッチ28に送信する(S814)。これにより各リーダ装置20の偏波面設定スイッチ28は、送信アンテナ21については上記制御信号に応じた偏波面の要求信号を送信するように、また受信アンテナ22については上記制御信号に応じた偏波面の応答信号を受信するように設定される。
【0033】
このように、本実施形態の情報読出システム1にあっては、各リーダ装置20の送信アンテナ21から送信される要求電波の偏波面、及び受信アンテナ22が受信する応答電波の偏波面が、配置情報に基づいて情報処理装置50からの遠隔制御により自動的に設定される。このため、ユーザは各リーダ装置20のアンテナ系201の設置場所までわざわざ足を運ぶことなく送信アンテナ21から送信される要求電波の偏波面及び受信アンテナ22が受信する応答電波の偏波面を設定することができる。これによりユーザの偏波面の設定にかかる負担が大幅に軽減され、とくにリーダ装置20の数が多数である場合には効率よく偏波面の設定を行うことができる。また情報読出システム1が適用される場面では、送信アンテナ21及び受信アンテナ22の配置変更や増設、撤去等が行われると考えられるが、このような場合、ユーザは情報処理装置50に記憶されている配置情報を変更するだけで偏波面の設定を行うことができる。
【0034】
また情報処理装置50が偏波面切換スイッチ28を制御するための制御信号は、変調信号や受信信号とともに同軸ケーブル60に重畳されて伝送される。このため、制御信号を伝送するためのケーブルを別途引き回す必要がなくなり、設置の容易化やコスト低減、美感性の向上が図られる。また上記実施形態では、リーダ装置20の構成要素のうちアンテナ系201と信号処理系202を分離して配置しているが、アンテナ系201と信号処理系202の双方を台6側に配置するようにしてもよい。
【0035】
なお、以上の実施形態の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば上述の実施形態では要求電波及び応答電波は円偏波であったが、本発明は要求電波及び応答電波は直線偏波であってもよい。またリーダ装置20はRFIDのリーダライタ装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態にかかる情報読出システム1の概略的な構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるリーダ装置20の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる送信アンテナ21又は受信アンテナ22として用いられるアンテナの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるICタグ10の構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる偏波面切換スイッチ28の設定をリーダ装置20のレイアウト(配置)に応じて遠隔操作により自動的に行うように構成した情報読出システム1の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる情報処理装置50のハードウエア構成を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる配置情報の一例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる偏波面設定プログラムによって行われる偏波面の設定に関する処理を説明するフローチャートである。
【図9A】本発明の一実施形態にかかる送信アンテナ21について設定された偏波面の一例を示す図である。
【図9B】本発明の一実施形態にかかる受信アンテナ22について設定された偏波面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 情報読出システム 5 対象物
6 台 10 ICタグ
11 兼用アンテナ 12 復調部
13 制御部 14 不揮発性メモリ
15 送信部 16 電源部
20 リーダ装置 21 送信アンテナ
22 受信アンテナ 23 CPU
24 メモリ 25 通信インタフェース
26 変調部 27 復調部
25 通信インタフェース 28 偏波面切換スイッチ
50 情報処理装置 60 同軸ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応答機に格納されている情報である格納情報を送信させる要求電波を送信する送信アンテナと、前記要求電波を受信した応答機から送信されてくる応答電波を受信する受信アンテナと、前記送信アンテナから送信する前記要求電波の変調信号を生成する変調部と、前記受信アンテナに受信される前記応答電波を復調する復調部と、を有する複数の質問機を並べて配置してなる情報読出システムであって、
隣接して配置される前記各質問機の前記送信アンテナから送信される前記要求電波の偏波面が互いに異なることを特徴とする情報読出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報読出システムであって、
隣接して配置される前記各質問機の前記受信アンテナが受信する前記応答電波の偏波面が互いに異なることを特徴とする情報読出システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報読出システムであって、
前記応答機はRFIDにおけるICタグであり、前記質問機は前記ICタグから前記格納情報を読み出すRFIDのリーダ装置であることを特徴とする情報読出システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の情報読出システムであって、
前記送信アンテナは、2点給電円偏波励振方式又は1点給電円偏波励振方式のマイクロストリップアンテナであることを特徴とする情報読出システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の情報読出システムであって、
CPU及びメモリを有する情報処理装置をさらに含み、
前記情報処理装置は、前記各送信アンテナの配置を示す情報を記憶し、
前記各質問機は前記情報処理装置によって制御可能な前記要求電波の偏波面を切り換える偏波面切換スイッチを有し、
前記情報処理装置は、前記配置を示す情報に基づいて、隣接して配置される前記質問機の前記送信アンテナから送信される前記要求電波の偏波面が互いに異なるように前記各質問機の前記偏波面切換スイッチを設定し、
前記情報処理装置は、前記配置を示す情報に基づいて、隣接して配置される前記質問機の前記受信アンテナが受信する前記要求電波の偏波面が互いに異なるように前記各質問機の前記偏波面切換スイッチを設定すること
を特徴とする情報読出システム。
【請求項6】
請求項5に記載の情報読出システムであって、
前記情報処理装置には複数の前記質問機が通信可能に接続し、
前記偏波面切換スイッチは前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの近傍に配置され、
前記各質問機の変調部及び復調部は前記情報処理装置の近傍に配置され、
前記変調部は同軸ケーブルを介して前記送信アンテナに前記要求電波を供給し、
前記復調部には前記同軸ケーブルを介して前記応答電波に基づく受信信号が供給され、
前記情報処理装置が前記偏波面切換スイッチを制御するための制御信号は、前記同軸ケーブルに重畳されて伝送されること
を特徴とする情報読出システム。
【請求項7】
請求項5に記載の情報読出システムに用いられる前記質問機であって、
前記送信アンテナ、前記変調部、前記受信アンテナ、前記受信部、及び前記偏波面切換スイッチ、を有してなることを特徴とする質問機。
【請求項8】
請求項7に記載の質問機であって、
前記偏波面切換スイッチは、前記送信アンテナから送信する前記要求電波の偏波面、又は前記受信アンテナが受信する前記応答電波の偏波面を手動で設定するためのユーザインタフェースを有することを特徴とする質問機。
【請求項9】
応答機に格納されている情報である格納情報を送信させる要求電波を送信する送信アンテナと、前記要求電波を受信した応答機から送信されてくる応答電波を受信する受信アンテナと、前記送信アンテナから送信する前記要求電波の変調信号を生成する変調部と、前記受信アンテナに受信される前記応答電波を復調する復調部と、を有する複数の質問機を並べて配置してなる情報読出システムの設定方法であって、
隣接して配置される前記各質問機の前記送信アンテナから送信される前記要求電波の偏波面が互いに異なるようにするステップと、
隣接して配置される前記各質問機の前記受信アンテナが受信する前記応答電波の偏波面が互いに異なるようにするステップと、
を含むことを特徴とする情報読出システムの設定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2006−113869(P2006−113869A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301464(P2004−301464)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(504385708)マイティカード株式会社 (11)
【Fターム(参考)】