説明

感光体ドラムの再生方法、感光体ドラム、ドラムカートリッジ及び画像形成装置

【課題】 使用済みの感光体ドラムの再生・再利用を量産ベースで実現することにより、感光体ドラムのコスト低減、および、コピー、プリントのランニングコストの低減を達成すること。
【解決手段】 シリンダとシリンダ表面に塗工された感光層より構成され、画像形成装置に使用される感光体ドラムの再生方法において、
感光層を除去する第1の除去工程と、
上記第1の除去工程と同時工程または別工程であるところの、シリンダの外周面を削って除去する第2の除去工程と、
第2の除去工程により外径が減少したシリンダの表面に、再び感光層を塗工する塗工工程とを有することを特徴とする感光体ドラムの再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置や静電記録方式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置に使用する感光体ドラムの芯金部(シリンダ)は加工の容易さ、電気的な導通性のよさ、感光層と芯金部間の密着性、化学的な安定性からアルミニウム材が使用されている。このアルミニウム材は、良好な感光膜を生成するために、不純物を厳しく抑制する必要があり、純度が99.9999%の高純度のものが使用されている。このため、非常に高価である。このため、感光体ドラムの芯金部(シリンダ)を再利用することが、強く望まれており、数多くの感光体ドラムの再生方法が提案されている。
【0003】
その多くは、感光層を化学的、物理的に除去した後、感光層を再塗工し、芯金の再利用を図る提案であり、下記に示す芯金部の表面に損傷が到る事例には対応できない。
【0004】
非晶質シリコンドラムは、シランガスの蒸着により感光層を生成するもので、感光層の表面硬度が固いため、耐久性の高い優れた感光体ドラムとして使用されている。しかしながら、非晶質シリコンドラムは、感光層の硬度が高いために、外部より衝撃力を受けた場合、その内部に衝撃力が伝播し、アルミニウム材である芯金部の表層に傷が及ぶことがある。このような傷は、ジャム処理などの際、ユーザーの時計や指輪などが接触することにより容易に発生する。また、サービス時、サービスマンの不注意によるビスの落下などによっても容易に発生する。
【0005】
また、OPCドラム(有機光半導体ドラム)においては、現像スリーブの位置決め部材など、感光体表面に接触する当接部材を設ける場合、上記の非晶質シリコン感光体と異なり、感光層の硬度が低いため、当接部において感光体表面が削れ、感光層のみならず、芯金表層も損傷を被る場合がある。
【0006】
このような傷、損傷の発生した感光体をリサイクル使用するに当って、芯金部の傷、損傷を取り除くために、感光層だけではなく芯金部の表層も、切削や研磨などの方法で除去することが必要である。
【0007】
このような背景を受けて、次に記載するような感光体ドラムの再生方法が提案されている。
【0008】
(イ)バルジ加工により、シリンダ(芯金部材)を塑性変形させて、シリンダの外径を大きくした後、切削加工により所定の外径とする方法。または、塑性加工と切削加工の順序を逆にした方法(特許文献1参照)。
【0009】
(ロ)芯金部材の表面を研磨し傷を除去した後、芯金部材の外径減少分を補正すべく、芯金部材の表面に導電性を有する表面処理加工を施す。次いで、その上に感光層を再蒸着する方法(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平06−19142号公報
【特許文献2】特開2000−098633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記方法は、切削あるいは研磨加工に加えて、塑性加工や表面処理加工を用いるため、生産性、加工コスト面に課題が残る。
【0011】
(イ)の公報にて示されるバルジ加工方法は、塑性加工の中では高精度化が期待できるが、個々のシリンダに対し、金型(メス型)と、ゴム型(オス型)が必要であり、高い生産性の実現は困難であると考えられる。また、工程数が多いため、加工コスト面で不利と考えられる。
【0012】
また、(ロ)の公報にて示される表面処理加工は、周知の如くコスト面で不利である。
【0013】
このように、上述した感光体ドラムの再生方法は、シリンダを再利用することにより得られるコスト低減効果が、加工コストの増大により、減少するものである。
【0014】
一方、前述した感光層を化学的、物理的に除去する再生方法は、感光層のみを除去するものであり、芯金の傷、損傷には対応できない。つまり、シリンダには傷・損傷という問題が無く、感光層のみに不具合があるものを対象にした再生方法である。使用済みドラムの全てが、シリンダに傷を有しているとは限らないため、上記の方法を用いて再生を行うことは可能であるが、生産性(歩溜まり)を考慮すると、得策とは言えない。
【0015】
このような状況下で、使用済みの感光体ドラムの再生・再利用は、あまり行われていないのが実状である。
【0016】
一方、複写機、プリンタにおいては、コピー、プリントのランニングコストを低減することが、強く求められており、消耗品である感光体ドラムのコストを低減することは、最も重要な課題となっている。感光体ドラムのシリンダは、前述したように非常に高価であり、使用済みドラムの再生・再利用が可能になると、感光体ドラムのコストが大幅に低減し、これに伴いランニングコストの低減が実現される。
【0017】
本発明は、上記した背景、問題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、使用済みの感光体ドラムの再生・再利用を量産ベースで実現することにより、感光体ドラムのコスト低減、および、コピー、プリントのランニングコストの低減を達成することである。
【0018】
また、シリンダを再利用し、アルミニウム材の使用量を削減することで、環境への配慮として、省資源、省エネルギー(精錬時の電力低減)に寄与することも、目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、感光体ドラムの再生方法は、シリンダとシリンダ表面に塗工された感光層より構成され、画像形成装置に使用される感光体ドラムの再生方法において、
感光層を除去する第1の除去工程と、
上記第1の除去工程と同時工程または別工程であるところの、シリンダの外周面を削って除去する第2の除去工程と、
第2の除去工程により外径が減少したシリンダの表面に、再び感光層を塗工する塗工工程とを有する感光体ドラムの再生方法が提供される。
【0020】
本発明によれば、上記の感光体ドラムの再生方法により再生された感光体ドラムが提供される。
【0021】
本発明によれば、表層の再生工程により外径の変化を伴う画像形成用の感光体ドラムを備えるドラムカートリッジにおいて、該感光体ドラム表面と、該感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置を調整する位置調整手段を備えたドラムカートリッジが提供される。
【0022】
本発明によれば、表層の再生工程により外径の変化を伴う画像形成用の感光体ドラムにおいて、該感光体ドラム表面と、該感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置を調整する位置調整手段を備えた感光体ドラムが提供される。
【0023】
本発明によれば、上記のドラムカートリッジを、装置内部に装着して画像形成を行う画像形成装置が提供される。
【0024】
本発明によれば、上記の感光体ドラムを、装置内部に装着して画像形成を行う画像形成装置が提供される。
【0025】
本発明によれば、表層の再生工程により外径の変化を伴う感光体ドラム、または、これを備えるドラムカートリッジを、装置内部に装着して画像形成を行う画像形成装置において、
該感光体ドラム、または、該ドラムカートリッジは、画像形成装置と通信可能な感光体ドラムの径情報を有しており、
該画像形成装置は、該ドラム径情報に応じて、感光体ドラム表面と感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置関係を制御する位置制御手段、または、該ドラム径情報に応じて、作像条件を制御する作像条件制御手段を具備する画像形成装置が提供される。
【0026】
本発明によれば、画像形成装置に装着して画像形成を行う感光体ドラムにおいて、
該感光体ドラムは、表層の再生工程により外径の変化を伴うものであり、
該画像形成装置は、感光体ドラムの径情報に応じて、感光体ドラム表面と感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置関係を制御する位置制御手段、または、感光体ドラムの径情報に応じて、作像条件を制御する作像条件制御手段を備えており、
該感光体ドラムは、画像形成装置と通信可能な感光体ドラムの径情報を具備する感光体ドラムが提供される。
【0027】
本発明によれば、画像形成装置に装着して画像形成を行うドラムカートリッジにおいて、
該ドラムカートリッジは、表層の再生工程により外径の変化を伴う感光体ドラムを備えており、
該画像形成装置は、感光体ドラムの径情報に応じて、感光体ドラム表面と感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置関係を制御する位置制御手段、または、感光体ドラムの径情報に応じて、作像条件を制御する作像条件制御手段を備えており、
該ドラムカートリッジは、画像形成装置と通信可能な感光体ドラムの径情報を具備するドラムカートリッジが提供される。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載の感光体ドラムの再生方法によれば、感光体ドラム再生に際し、シリンダを再利用するものであるから、材料費の低減が図られる。および外径を拡張する工程を伴わないため、加工コストの低減が図られる。これら2つの効果により、大きなコスト低減効果が得られる。また、シリンダを再利用することで、アルミニウム材の使用量が削減され、省資源・省エネルギーに対しての寄与効果が生まれる。
【0029】
また、感光層を除去する第1の除去工程と、シリンダの外周面を削って除去する第2の除去工程とを同時に行えば、高い生産性が得られる。
【0030】
一方、第1の除去工程と第2の除去工程とを別工程とすれば、廃棄物となる感光層と、材料として再利用が可能なアルミニウムとを分別回収することが可能となる。
【0031】
請求項2に記載の感光体ドラムによれば、この再生感光体ドラムを使用することで、上記のさまざまな効果を得ることが可能である。
【0032】
請求項3に記載のドラムカートリッジによれば、感光体ドラム表面と、画像形成手段との相対位置調整手段を備えたものであるから、上記の再生感光体ドラムも含め、外径の変化を伴う感光体ドラムの再利用が可能となり、上述したコスト低減効果を始めとしたさまざまな効果を得ることが可能となる。
【0033】
請求項4に記載の感光体ドラムによれば、感光体ドラム表面と、画像形成手段との相対位置調整手段を備えたものであるから、上記の再生感光体ドラムも含め、外径の変化を伴う感光体ドラムの再利用が可能となり、上述したコスト低減効果を始めとしたさまざまな効果を得ることが可能となる。
【0034】
請求項5に記載の画像形成装置によれば、感光体ドラム表面と、画像形成手段との相対位置調整手段を備えたドラムカートリッジ、または、感光体ドラムを、装置内部に装着して画像形成を行うものであるから、上記の再生感光体ドラムも含め、外径の変化を伴う感光体ドラムの再利用が可能となり、上述したコスト低減効果を始めとしたさまざまな効果を得ることが可能となる。
【0035】
請求項6に記載の画像形成装置によれば、ドラム径情報に応じて、ドラム表面と画像形成手段との相対位置関係の制御を行う、もしくは、作像条件の制御を行うものであるから、上記の再生感光体ドラムも含め、外径の変化を伴う感光体ドラムの再利用が可能となり、上述したコスト低減効果を始めとしたさまざまな効果を得ることが可能となる。
【0036】
請求項7に記載の感光体ドラムによれば、ドラム径情報に応じて、ドラム表面と画像形成手段との相対位置関係の制御を行う、もしくは、作像条件の制御を行う画像形成装置に対して通信可能な感光体ドラムの径情報を備えたものであるから、上記の再生感光体ドラムも含め、外径の変化を伴う感光体ドラムの再利用が可能となり、上述したコスト低減効果を始めとしたさまざまな効果を得ることが可能となる。
【0037】
請求項8に記載のドラムカートリッジによれば、ドラム径情報に応じて、ドラム表面と画像形成手段との相対位置関係の制御を行う、もしくは、作像条件の制御を行う画像形成装置に対して通信可能な感光体ドラムの径情報を備えたものであるから、上記の再生感光体ドラムも含め、外径の変化を伴う感光体ドラムの再利用が可能となり、上述したコスト低減効果を始めとしたさまざまな効果を得ることが可能となる。
【0038】
以上説明したように、本発明の再生方法は、シリンダの外周面を削るものであるから、表層に傷を有す使用済みの感光体ドラムの再生が可能なものである。また、外径を元の径に戻す工程がないため、加工コストに優れる。そして、この外径変化を伴う再生感光体ドラムを再利用することが可能なハード(感光体ドラム、ドラムカートリッジ、画像形成装置)を提供することで、感光体ドラムの再生・再利用が、初めて量産ベースで実現可能となる。
【0039】
この結果、消耗品である感光体ドラムのコスト低減が図られ、コピー、プリントのランニングコストが低減するという効果が得られる。
【0040】
また、ドラムシリンダを再利用することで、アルミニウム材の使用量の削減が図られるため、省資源・省エネルギーに対しての寄与効果が生まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、感光体ドラムの「再生方法」と「再利用」に関する発明である。以下、これらの実施形態を、順に説明する。
【0042】
<ドラムの再生方法に関する実施形態>
本発明の感光体ドラムの再生方法について、実施形態を説明する。
【0043】
図26は、感光体ドラムの断面図である。感光体ドラム1は、アルミニウム製のシリンダ2と、その表面に塗工した感光層3より構成される。
【0044】
図27は、本発明の感光体ドラムの再生方法を示す図で、図26のH部を拡大して感光体表層近傍を示している。図27(a)は、使用済みの感光体ドラムの断面図である。感光体の表面より、感光層3の厚みt1よりも深い傷Kが入り、シリンダ2の表面に傷が付いている。この感光体ドラムを再生するには、画質の維持性能が劣化した感光層を除去するとともに、このシリンダ表面の傷も除去しなければならない。
【0045】
図27(b)は、感光層3とシリンダ2表面の除去工程を示す図である。Wは、旋盤のバイトであり、切削加工により、感光層3とシリンダ2表面とを同時に除去する。切削代t3を、傷の深さt2よりも大きく設定し、シリンダ2の表面に付いた傷Kを完全に除去する。シリンダの半径は、図に示すΔだけ小さくなる。
【0046】
図27(c)は、除去工程の済んだシリンダ2に対し、新たに感光層3を塗工し、再生感光体ドラムが完成した図である。再生後の感光体ドラムの径は小さくなり、半径変化量はδ、直径変化量は2δとなる。感光層3の厚みは、画質機能を維持するため、再生前の厚みと同じ値とすることが望ましい。したがって、シリンダの半径変化量(除去量)Δと、感光体ドラムの半径変化量δは、同じ値となる。
【0047】
感光体ドラムの切削量t3は、傷の深さの頻度分布により定めれば良い。例えば、感光層3の厚みが40μmの感光体ドラムにおいて、傷の深さt2の分布が、60μm以下の傷の頻度が大半で、60〜90μmのものが一部あり、90μm以上のものはまれにしか無いという分布を想定する。この場合、切削量を60μmに設定すると歩溜まりが悪くなる。一方、90μm以上の傷も救済しようとして、例えば200μmのように切削量を大きめに設定すると、再生工程1回あたりの半径変化量が多くなり、繰り返し使用回数が減少する。したがって、この場合は、切削量を90μm程度にすることが望ましい。感光層3の厚みが40μmであるから、シリンダの除去量Δおよび感光体ドラムの半径変化量δは、50μmとなる。後述する再生ドラムを受け入れる装置側の許容量により、径変化の限界量が決まるが、仮に、限界量を400μmとした場合、再利用回数は8回となる。新品時も含めると、繰り返し使用回数は9回となり、再生・再利用効果は、かなりの量のものとなる。
【0048】
続いて、感光体ドラムの外径・内径の設定例について説明する。ここでは、既存の生産設備を利用することを考慮して、最初にドラムの内径を決める。一般に、ドラムの塗工工程に使用する設備・治工具は、ドラムの内径側を基準としている。ここでは、既存の数列より、Φ28.5を選ぶ。次に、ドラムシリンダの肉厚の限界値を求める。使用条件を考慮し、強度計算を行った結果、0.7mm以上必要と求まる。次に、1回当りの半径変化量δと、径変化の限界量を定める。ここでは、それぞれ、上記の50μm、400μmに定める。
【0049】
感光層の厚みが40μmであるドラムの場合、新品ドラムの外径をΦ30.8とすると、上記の条件を満たす。最終再生ドラムの外径は、Φ30となる。ドラムシリンダの厚みは、初期1.11mmで、最終再生品は、0.71mmとなる。
【0050】
感光層3とシリンダ2表面の除去工程として、図27(b)に示す切削加工の他に、研削加工(研磨加工)がある。また、廃棄物となる感光層と、材料として再利用可能なアルミニウムを別々に回収することを目的に、2回の工程に分けることも出来る。感光層の除去方法としては、溶剤を使用した化学的な方法や、粉体を噴射して吹き飛ばす物理的な方法がある。感光層除去後のシリンダ表面の除去方法としては、切削加工や研削加工(研磨加工)を用いれば良い。
【0051】
<ドラムの再利用に関する実施形態1>
再生工程により外径変化を伴う感光体ドラムを使用するドラムカートリッジについて、実施形態を説明する。なお、上述した感光体ドラムの再生方法は、ドラム外径の減少を伴うものであるが、本実施形態以降の実施形態にて説明するドラムカートリッジ、感光体ドラム、画像形成装置は、ドラムの外径変化に対応可能なものであり、ドラム外径の減少方向だけでなく、増大方向にも対応できる。
【0052】
図2は、感光体ドラム1とその周囲の画像形成手段とを示す断面図である。感光体ドラム1の周囲には、帯電手段として帯電ローラ21が接触して設けられ、露光手段であるレーザーユニット31よりの露光光EがA部に照射する。現像手段である現像スリーブ41は、所定のクリアランスを持って配設される。現像突き当てコロ42は、感光体ドラムの表面に当接している。記録材Pへの転写手段である転写帯電器51も同様に、所定のクリアランスを持って配設される。転写位置決め部材52は、感光体ドラムの表面に当接している。クリーニング手段であるクリーニングブレード61は、揺動自在に設けられ、加圧されてドラム表面に当接している。
【0053】
この画像形成装置において、感光体ドラム1の外径を変化させた場合、露光プロセスに問題が生じる。レーザー方式の露光光の深度許容量は、光学設計や求める画質仕様にもよるが、一般に片側で30μm程度である。したがって、前述した再生方法を用いて再生製作した50μm半径の小さな感光体ドラムを、装置内に投入すると、ドラム表面の位置が、設計位置に対し50μmずれるため、ピント不良が発生する。
【0054】
以下、この課題を解決する構成について述べる。
【0055】
図3は、装置本体に装着されたドラムカートリッジの上視図で、図4は正面図である。ドラムカートリッジ11は、感光体ドラム1、カートリッジ容器12を備える。感光体ドラム1は、ドラムフランジ4を備え、カートリッジ容器12に対して、軸受け16を介して回転自在に支持される。軸受け16は、装置本体81に対するドラムカートリッジ11の位置決め部材を兼ねるもので、軸受け16の係合部16aが、本体側板82の溝部83に対して係合する。溝部83は、位置決め部83aを備える。
【0056】
続いて、装置本体81に対する感光体ドラム1の相対位置関係を説明する。説明のために、ξ−η座標を定義する。η軸は露光光と平行に設定する。
【0057】
前述の本体側板82に設けられた位置決め部83aは、η軸と直交するように設定しているので、装置本体81に対する感光体ドラム1のη軸方向の相対位置関係は、位置決め部83aに突き当たる所の係合部16aと軸受け内径16bとの相対距離で定まる。感光体ドラム1の中心は、当然のことながら、軸受け内径16bの中心と同じであり、図中、C1で示す。
【0058】
一方、感光体ドラム1の外径が変化しても、露光位置Aが変位しないようにするには、本体81に対するドラム中心位置C1を、η軸方向に変位可能に構成できれば良い。
【0059】
このため、軸受け16に、感光体ドラム1との位置決め部(軸受け内径16b)と、本体81との位置決め部(係合部16a)を設け、これらの相対位置関係がη軸にて調整可能となるようにした。具体的には、係合部16aを円形形状とし、軸受け内径16bの中心C1に対し、その中心を偏心するように設けた。
続いて、位置調整について説明する。ここで、本実施例における再生ドラムの条件について、先に説明する。本実施例でも、先述の実施例と同様に、再生1回あたりの感光体ドラムの半径変化量δを50μmとし、最大再生回数を8回とする。
【0060】
図4が新品の感光体ドラム100を備えたドラムカートリッジと装置本体を示す図であるのに対し、図5は、再生回数が4回目である4次再生ドラム104の図である。η軸にて、感光体ドラム中心C1と、本体側板の位置決め部83aとの距離は、新品ドラムの場合、図4に示すように、Lである。これに対し、4次再生品の場合は、図5に示すように、L+4δとなるようにする。ドラムの中心位置が4δだけ、η軸上、図の上方向に移動し、ドラムの露光位置Aは、ドラムの外径が変化しても維持される。なお、図に示すΦDは、新品の感光体ドラム100の外径である。
【0061】
図1は、感光体ドラム1とその周囲の画像形成手段とを示す断面図である。新品ドラム100と、4次再生ドラム104、8次再生ドラム108を重ねて示す。図に示したように、感光体ドラム1の外径が変化しても、露光位置Aは維持されるため、ピント不良は未然に防止される。実線は、4次再生ドラム104と、これに対応する画像形成手段を表す。露光手段以外の画像形成手段は、全て、感光体ドラム表面に対し、当接もしくは位置決めされるようにしているため、ドラム表面との相対位置関係が維持され、好適な画像形成が可能である。
【0062】
続いて、位置調整手段である軸受け16の調整方法について説明する。図4、5に示したように、軸受け16の偏心量は4δに設定している。これにより、軸受け16を半回転させると、0〜8δの範囲で相対位置が調整可能となる。図6は、新品の感光体ドラム100を備えたドラムカートリッジ11の軸受け16の位相を示す図である。この状態を初期位相として、再生の都度22.5°ずつ位相をずらすと、η軸上の相対位置関係は、δずつ変化する。図7は、4次再生ドラム104の装着例を示すもので、相対位置関係を4δ変化させるため、90°位相を変えている。位相の管理は、図6、7に示すように、カートリッジ容器12と、軸受け16とに、それぞれマーキングを設けて行えば良い。図中の三角マーク、数値は、マーキングである。
【0063】
上述の位置調整手段(軸受け16)は、位置調整部(係合部16a)が円形形状であるので、連続的な調整(より細かな調整)が可能である。これを受けて、再生ドラムの外径は、予め定めてある段階的な値に限定せず、任意の値としても良い。これにより、例えば、切削量を、傷の深さに応じた任意の値とすることも可能である。
【0064】
軸受けの位相調整が終了した後は、ドラムの再生回数(またはドラム径)の層別・管理が不必要となる。完成したドラムカートリッジは、ドラム径に依らず等しく扱えるため、サービス性、ユーザービリティを損なうことが無い。
【0065】
上記の例は、露光位置を優先してドラムの位置を定めたものであるが、優先すべき対象(画像形成手段)は、露光位置(露光手段)に限定するものではない。
【0066】
例として、転写位置を優先する場合について説明する。複数の感光体ドラムを並列に配設して、記録材搬送ベルトに担持された記録材もしくは、中間転写体ベルト上に、トナー像を転写する装置においては、複数の転写位置を同じ面内に揃えることが望ましい。これを実現するには、上述の方法を用いて、転写位置を維持するようにすれば良い。これにより、露光位置が変位するが、後述する光路長補正などの方法を併用することで対応可能であり、好適な画像形成がなされる。
【0067】
<ドラムの再利用に関する実施形態2>
前述の実施形態では、感光体ドラムと画像形成手段との相対位置関係維持のため、装置本体に対するドラムカートリッジの位置決め部に、位置調整手段を用いる例について説明した。本実施形態では、ドラムカートリッジ外部にある画像形成手段の位置決め部に、位置調整手段を用いて、感光体ドラムとの相対位置関係を維持する例について説明する。
【0068】
前述の実施形態では、現像スリーブ41の位置決めは、現像突き当てコロ42を感光体ドラムの表面に当接させることで行っている。しかしながら、この構成は、現像器の振動が感光体ドラム1に伝播しやすい。解像度の高い潜像を形成する装置においては、感光体ドラムの振動により、画像濃度ムラ(バンディング)が発生する場合がある。
【0069】
これを防止するには、現像突き当てコロを感光体ドラムの表面では無く、別の箇所に当接する構成に変更して、伝播経路が長くなるようにすれば良い。
【0070】
本実施形態では、ドラムカートリッジ11の内部に、現像突き当てコロ43の受け面を設けたものについて説明する。図8は、ドラムカートリッジ11と現像器40の上視図で、図9は正面図である。前述の例と同様、感光体ドラム1を回転自在に支持する軸受け17を、ドラムカートリッジ11が備えており、この軸受け17が、感光体ドラム1と現像スリーブ41との位置調整手段を有する。現像突き当てコロ43の受け面17aは、ドラム中心C1(軸受け内径17bの中心)に対して、相対距離が可変となるように設けてある。前述の例と同様の機構原理に基づき、感光体ドラム1と現像スリーブ41の相対位置調整が可能である。機構原理が同一であるため、機構の動作説明は省く。再生ドラムの装着に際し、同様の組付け手順を踏むことで、ドラム径が変化しても、現像ギャップを一定に維持することが可能となる。これにより、画像濃度ムラ(バンディング)の対策を講じながら、再生ドラムの再利用が可能となる。
【0071】
<ドラムの再利用に関する実施形態3>
続いて、ドラムカートリッジ内部の画像形成手段に対し、位置調整手段を適用する例について説明する。
【0072】
図10は、クリーニング手段を備えるドラムカートリッジを示す上視図で、図11は、その正面図である。このクリーニングブレード61は、カートリッジ容器12に対してビス固定されている。前述の揺動加圧方式とは異なる方式で、一般に侵入量調整方式と呼ばれている。
【0073】
軸受け18は、カートリッジ容器12との位置決め部(軸受け外径18a) と、感光体ドラム1との位置決め部(軸受け内径18b)を備えている。軸受けの外径18aと内径18bとは偏心している。この軸受け18を位相調整することで、感光体ドラム1とクリーニングブレード61との相対位置調整が可能である。前述の例と同一の機構原理であるため、機構の動作説明は省く。
【0074】
以上説明したように、本発明は、露光手段や現像手段などのドラムカートリッジ外部の画像形成手段だけではなく、クリーニング手段などドラムカートリッジ内部の画像形成手段にも適用が可能である。
【0075】
<ドラムの再利用に関する実施形態4>
続いて、複数の画像形成手段に対して位置調整を行う場合について説明する。図12は、クリーニング手段を備えるドラムカートリッジと、装置本体とを示す上視図で、図13は、その正面図である。
【0076】
図に示す軸受け19は、実施形態1にて説明した軸受け16と、実施形態3にて説明した軸受け18とを組合せた部材であり、露光手段31と固定式のクリーナ手段61の2つの画像形成手段に対して、位置調整機能を有すものである。
【0077】
軸受け19は、感光体ドラム1との位置決め部(軸受け内径19b)と、本体側板82との係合部19aと、カートリッジ容器12との位置決め部(軸受け外径19c)とを備える。以降の動作構成については、前述と同一のため、説明は省く。
【0078】
再生ドラムをドラムカートリッジに装着する際は、前述の例と同様、容器に対して軸受けの位相調整を行う。1回の組立て調整により、2箇所の位置調整が同時に為されるものである。
【0079】
以上説明したように、複数の位置調整部を設けることで、複数の画像形成手段に対して位置調整が可能となる。上記例は位置調整部の数が2つであるが、その数をさらに追加することは、容易に可能である。このように1つの部材で複数の位置調整を行うことは、機能面だけでなく、組立性、コストにも優れている。
【0080】
なお、位置調整手段の実施形態として、偏心部を備える軸受けを用いて説明を行ったが、本発明は、これに限定するものではない。例えば、クリーナブレード調整にて、スペーサーを位置調整手段として使用することが可能である。また、LED方式の露光手段に対しては、受け面の高さが可変であるスライド自在の位置調整部材を、設けても良い。
【0081】
<ドラムの再利用に関する実施形態5>
続いて、感光体ドラム表面と画像形成手段との位置調整手段を有する感光体ドラムについて説明する。図14、図15は、装置本体に装着された感光体ドラムの上視図と、正面図である。実施形態1と同様、露光位置を維持する場合について説明する。
【0082】
感光体ドラム1は、シリンダ2、感光層3、フランジ4に加え、位置調整手段である位置決めコロ5を有する。この位置決めコロ5の直径dは、感光体ドラムの外径に応じて、変更するものである。一方、装置本体81は、本体側板82の溝部83に設けられた位置決め部83b、83cを備える。位置決め部83b、83cは、それぞれη軸に対し±45°の角度に設定している。
【0083】
以下、4次再生ドラムを例に、寸法関係を説明する。露光位置Aを維持するため、ドラム中心C1の移動量は、ドラムの半径変化量4δと等しい。新品ドラム100に対応する位置決めコロ5の直径d0と、4次再生ドラム104に対応する位置決めコロ5の直径d4と、ドラム中心C1の移動量(4δ)との寸法関係は、図のようになる。つまり、直径d4は、直径d0と半径変化量4δおよび本体側の位置決め部83b、83cの形状にて、幾何学的に一義的に定まるものである。
【0084】
これにより、本実施形態においても、図1にて示したのと同様、感光体ドラムの外径が変化しても、露光位置が変化せず、好適な画像形成が可能である。
以上説明したように、位置調整手段を備えるものは、ドラムカートリッジに限定されるものでは無く、感光体ドラムそのものでも良い。
【0085】
また、位置調整手段は、実施例1〜4にて説明したような調整機能を有する一つの部材を用いるものだけでなく、本実施例にて示したような、付け替え方式でも良い。
【0086】
<ドラムの再利用に関する実施形態6>
続いて、感光体ドラムの外径情報を用いて、感光体ドラムと画像形成手段との相対位置関係を制御する例について説明する。
【0087】
図16は、感光体ドラム1と、レーザーユニット31より感光体ドラム表面に照射する露光光Eとを表す図である。100は、新品ドラムを示し、101は、1次再生ドラムを示す。図の左右は、主走査方向である。
【0088】
図に示すように、主走査方向の両端部では、感光体ドラム1に対する入射角が中央部よりも傾く。本例では、その角度を30°とする。この光学系に、外径の変化した感光体ドラムを、ドラムの中心位置を変えずに投入すると、画像幅は、B0よりB1に変化する。つまり、倍率が狂うことになり、主走査方向の画像位置が、正規の位置よりずれることになる。この主走査方向の位置ずれは、中央では0であり、両端部に行くほど大きな値となる。例えば、1次再生ドラムの半径変化量δが、50μmの場合、端部での位置ずれ量αは、29μmとなる。
【0089】
この値は、一般的には、単色の倍率誤差としては許容されるものである。しかしながら、複数の感光体ドラムを有するカラー画像形成装置において、ドラム径が不揃いとした場合、主走査方向の色ずれが発生することになる。色ずれは、一般に複数の要因が重畳することで、大きな値となるため、個々の要因を一つずつ抑制していく必要がある。この観点で評価すると、上記の値は、色ずれとしては許容されないと判定される。
【0090】
一方、感光体ドラムの表面位置が変化するため、光路長が変化し、ピントが合わなくなる。これら「主走査方向位置ずれ」と「深度ずれ」は、光路長を補正することで同時に解決される。
【0091】
図17は、折り返しミラーの位置を制御することで、光路長の補正を行う実施形態を説明する図である。レーザーユニット31は、不図示のレーザー光源、ポリゴンミラー、レンズ系、および折り返しミラー32を備える。感光体ドラム1は、新品ドラム100を実線で、1次再生ドラム101を2点鎖線で示す。これらのドラム中心位置は同じである。1次再生ドラム101の装着時は、ドラムの表面位置が後退するため、光路長が長くなる。露光光のドラム表面に対する入射角は90°近傍に設定されているため、光路長のずれ量は、ドラムの半径変化量δとほぼ等しい。
【0092】
この光路長のずれを、折り返しミラー32の位置を変更することで、補正する。図に示すm1だけ、右方向に移動して、光路長を元々の値(設計値)に合わせる。ミラーの移動量m1は、ドラムの半径変化量を与えることで、一義的に求まる。
【0093】
なお、光路長補正に際し、上述したように折り返しミラーを平行移動する方法をとると、図よりも明らかなように、露光光の照射位置Aが、感光体ドラム周方向にずれる。したがって、このままでは、副走査方向の位置ずれが発生する。これを防止するには、画像の書き出しタイミングの補正を行えば良い。このタイミング値も、ドラムの半径変化量に応じて、一義的に求まるものである。
【0094】
図18は、ドラム径情報の入出力部と位置関係の制御部とを表したブロック図である。
【0095】
感光体ドラム1の外径情報は、ドラムカートリッジ11に備えられる。ドラムカートリッジ11のROM13の中に、ドラム径情報がインプットされる。工場出荷されたドラムカートリッジ11を、装置本体に装着すると、ROM13内のドラム径情報は、コネクタ91を介して、装置本体のCPU(制御部)93に取り込まれる。
【0096】
アクチュエータ94は、画像形成手段71の位置調整手段である。上記の例にあてはめると、折り返しミラー32(画像形成手段71)の移動動作を行う位置調整手段である。
【0097】
CPU(制御部)93は、ドラム径情報に応じて、位置調整手段であるアクチュエータ94を動作させ、折り返しミラー32(画像形成手段71)を所定量移動する。なお、ROM13に入力する径情報として、再生回数などの値でも良い。この場合、再生回数と再生ドラム径の関係を、予め定義しておく。
【0098】
図19も、また、ドラム径情報の入出力部と位置関係の制御部とを表したブロック図である。図18と異なるところは、感光体ドラムの外径情報を、感光体ドラム1が備えるところである。図20は、図19に示される感光体ドラムの側面図である。
【0099】
図19、図20に示したように、ドラムフランジ4は、突起4aを備えており、突起の数と再生回数(再生ドラム径)とが対応付けられている。装置本体は、フォトインタラプタなどの検知手段92を備え、この情報を取り出す。突起の数の運用例を、以下に示す。例えば、新品ドラムの突起を9本とする。回収または再生の都度、突起を1本ずつ削除すると、8次再生品は1本となる。8次再生品使用後、回収時に、残りの1本を削除すると突起は無くなり、再生不可の目印となる。
【0100】
上述は、アクチュエータにより移動を行う対象として、折り返しミラー32を例として説明したが、これに限定するものでは無く、例えば、感光体ドラム1、ドラムカートリッジ11やレーザーユニット31の移動でも構わない。つまり、感光体ドラムと対象となる画像形成手段の内、どちらか片方、あるいは双方移動することで、相対位置関係の調整が、為されれば良い。
【0101】
また、対象とする画像形成手段は、露光手段に限定するものでは無く、ありとあらゆる所に適用が可能である。その一つとして、例えば、現像器の位置決め面などの位置調整に用いることも出来る。
【0102】
上述したように、ドラム径を情報化し位置制御を行うことで、相対位置調整の適用範囲が広がるという効果を得られる。
【0103】
<ドラムの再利用に関する実施形態7>
続いて、感光体ドラムの外径情報を用いて、感光体ドラムに作用する画像形成手段の作像条件を制御する例について説明する。
【0104】
実施形態6では、「主走査方向位置ずれ」と「深度ずれ」に対応するため、光路長補正を行う例について説明した。
【0105】
本実施形態では、「主走査方向位置ずれ」に対する別の補正方法について述べる。本実施形態で述べる方法は、再生ドラムの使用に際し、ドラムの中心位置の変更を行わず、かつ、光路長の補正も行わないものである。当然のことながら懸念される「深度ずれ」について、先に説明する。
【0106】
図21は、ドラムの外径変化により生じる「ドラム表面位置のズレ量」と「光路長のズレ量」とを表す図である。図の黒丸および実線で示されるように、ドラムの半径が減少するのに伴い、光路長は増加する。そして、その変化量は等しい。ここで、再生ドラムの再利用を2回行うことを考える。この場合、新品ドラムも含めて、ドラムの半径は3段階となり、1回当りの半径変化量を50μmとすると、「ドラム表面位置のズレ量」のレンジは、100μmとなる。したがって、「光路長のズレ量」のレンジも、100μmとなる。
【0107】
前述したように、レーザー方式の露光光の深度許容量は、光学設計や求める画質仕様にもよるが、一般的には、片側で30μm程度(レンジで60μm程度)である。そこで、上記の「光路長のズレ量」のレンジ100μmよりも、深度ずれの許容範囲が広くなるように、光学設計を行えば、「ドラム表面位置」がレンジ100μm内で変化しても「深度ずれ」は発生しないことになる。本例では、深度の許容範囲がレンジで120μmである光学系を備えるものとした。
【0108】
なお、図に示したように、1次再生ドラム使用時に、「光路長のズレ量」が0となるようにしている。これは、ドラムの半径変化は3段階であり、1次再生ドラムがその中央であるためである。したがって、光学系の設計は、この1次再生ドラムの外径に対し行うものである。
【0109】
続いて、「主走査方向位置ずれ」の補正方法として、主走査方向の倍率補正について説明する。図22は、感光体ドラム1と、レーザーユニット31より感光体ドラム表面に照射する露光光Eとを表す図である。100は新品ドラムを示し、101は1次再生ドラムを、102は2次再生ドラムを示す。画像幅は、それぞれ、F0、F1、F2で示される。ドラム径変化にともない、画像幅は変化し、主走査方向位置ずれが発生する。主走査方向位置ずれ量は、ドラムの径変化により一義的に定まる。したがって、前述の例と同様、ドラムカートリッジもしくは感光体ドラムに外径情報を備えるようにして、装置側でこの情報を受け取り、その情報に応じて補正制御を行えば良い。
【0110】
主走査方向の倍率補正は、潜像書き込みに際して、画像情報を主走査方向に圧縮または伸張することで行う。本例では、前述したように1次再生ドラムに対して光学設計を行うものであるから、画像幅F1が、画像幅の設計値となる。したがって、画像幅F0、F2を、画像幅F1に合うように倍率補正を行うと良い。
【0111】
以上説明したように、倍率補正制御を行うことで、例えば、複数の感光体ドラムを有するカラー画像形成装置において、色ずれのない好適な画像形成がなされる。
【0112】
続いて、作像条件の制御に関して、別の例を説明する。
【0113】
図23は、感光体ドラムと、帯電手段、読み取り手段を示す図である。これらの画像形成手段は、装置本体に固定されており、ドラムの径が変化すると、その相対距離が変化するものである。
【0114】
感光体ドラム1の外径が変化すると、帯電手段である1次帯電器22や転写帯電器51との相対距離が変化するため、感光体表面の電位に影響が及ぶ。したがって、電位を狙い通りに制御するため、相対距離の変化(ドラム径変化)に応じて、これら帯電器の高圧出力を調整制御すると良い。
【0115】
図24は、ドラム径情報の入出力部と作像条件の制御部とを表したブロック図である。感光体ドラムもしくは、ドラムカートリッジが備える外径情報を、制御部93が取り込む。(図では、感光体ドラムの例のみ示す。)この外径情報に応じて、画像形成手段71の作像条件の制御を行う。帯電器の場合、画像形成手段71は、1次帯電器22や転写帯電器51であり、制御手段は、高圧回路を備えた制御部93である。先の倍率補正の場合は、画像形成手段71は、露光手段31であり、制御手段は、レーザードライバ回路を備えた制御部93である。また、感光体ドラムの周速を一定とするために、ドラムを駆動する駆動モータの回転数を制御する場合は、画像形成手段71は、ドラム駆動部であり、制御手段は、モータードライバ回路を備えた制御部93となる。
【0116】
続いて、感光体ドラム1の周囲に読み取り手段を設け、その読み取り値に応じて制御を行う装置について説明する。読み取り手段としては、図23に示す電位センサ96や、感光体上のトナー濃度を検知するトナー濃度検知手段97、不図示の温度センサなどが挙げられる。これらの読み取り手段もまた、ドラムの径変化により、その相対距離が変化するものであるため、その読み取り値、あるいは、出力変換テーブルに対して、外径変化に応じた補正制御を行うと良い。
【0117】
図25は、ドラム径情報の入出力部と、読み取り部と、作像条件の制御部とを表したブロック図である。感光体ドラムもしくは、ドラムカートリッジが備える外径情報を、制御部93が取り込む。読み取り手段95の読み取り値と、外径情報に応じて、画像形成手段71の作像条件の制御を行う。
【0118】
電位センサを用いた電位制御の場合、読み取り手段95は、電位センサ96であり、画像形成手段71は、1次帯電器のグリッドバイアスや現像バイアスであり、制御手段は、高圧回路を備えた制御部93である。トナー濃度検知手段を用いた画像濃度制御の場合、読み取り手段95は、トナー濃度検知手段97であり、画像形成手段71は、トナー補給部を備える現像器であり、制御手段は、トナー補給信号を生成する制御部93である。温度センサを用いて感光体ドラムの温調を行う場合、読み取り手段95は、温度センサであり、画像形成手段71は、感光体ドラムの温調ヒータであり、制御手段は、ヒータ制御回路を備えた制御部93である。
【0119】
以上説明したように、ドラムの外径情報に応じて、感光体ドラムに作用する画像形成手段の作像条件を制御することで、さまざまな作像条件が適正化されるため、好適に画像形成を行うことが可能となる。
【0120】
<ドラムの再利用に関する実施形態8>
上述したドラム再利用の例は、いずれも、感光体ドラムの外径が減少するものとして、説明を行ったが、本発明で提案する感光体ドラム、ドラムカートリッジ、画像形成装置は、外径の変化に対応可能なもので、変化方向は減少方向に限定せず、増加方向にも適用可能である。以下、このような事例について簡単に説明する。
【0121】
画像形成装置Iは、ドラム径がΦ30.8で設計してある。これに対し、画像形成装置Jは、ドラム径がΦ32で設計してある。画像形成装置Jで使用されたΦ32のドラムを、本発明の再生方法により、Φ31.6に再生する。画像形成装置Iは、ドラムの径変化に対応可能な装置であり、半径変化の限界量は400μmである。直径で表すとΦ30.8±0.8mmの範囲で対応可能である。Φ31.6の再生ドラムは、画像形成装置Iにて使用可能であり、その後の再生に際し、1回当りの半径変化量δを50μmとするならば、画像形成装置Iにおいて合計17回の使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の再生感光体ドラムとその周囲の画像形成手段を示す断面図である。
【図2】感光体ドラムとその周囲の画像形成手段を示す断面図である。
【図3】本発明のドラムカートリッジおよび装置本体を示す上視図である。
【図4】図3に示すドラムカートリッジおよび装置本体の正面図である。
【図5】本発明の再生感光体ドラムを備えたドラムカートリッジおよび装置本体の正面図である。
【図6】図4に示すドラムカートリッジの正面図である。
【図7】図5に示すドラムカートリッジの正面図である。
【図8】本発明のドラムカートリッジおよび現像器を示す上視図である。
【図9】図8に示すドラムカートリッジおよび現像器の正面図である。
【図10】本発明のドラムカートリッジを示す上視図である。
【図11】図10に示すドラムカートリッジの正面図である。
【図12】本発明のドラムカートリッジおよび装置本体を示す上視図である。
【図13】図12に示すドラムカートリッジおよび装置本体の正面図である。
【図14】本発明の感光体ドラムおよび装置本体を示す上視図である。
【図15】図14に示す感光体ドラムおよび装置本体の正面図である。
【図16】本発明の感光体ドラムおよびドラム表面に照射する露光光を表す図である。
【図17】本発明の感光体ドラムおよび露光手段を示す断面図である。
【図18】本発明に係わる制御部を表したブロック図である。
【図19】本発明に係わる制御部を表したブロック図である。
【図20】図19に示される感光体ドラムの側面図である。
【図21】ドラム表面位置のズレ量と光路長のズレ量とを表す図である。
【図22】本発明の感光体ドラムおよびドラム表面に照射する露光光を表す図である。
【図23】本発明の再生感光体ドラムとその周囲の画像形成手段を示す断面図である。
【図24】本発明に係わる制御部を表したブロック図である。
【図25】本発明に係わる制御部を表したブロック図である。
【図26】感光体ドラムの断面図である。
【図27】本発明の感光体ドラムの再生方法を示す図である。
【符号の説明】
【0123】
1 感光体ドラム
2 シリンダ
3 感光層
4 ドラムフランジ
4aドラムフランジの突起
5 位置決めコロ
11 ドラムカートリッジ
12 カートリッジ容器
13 ROM
16、17、18、19 軸受け
16a、19a 係合部
17a 受け面
16b、17b、18b、19b 軸受け内径部
18a、19c 軸受け外径部
21 帯電ローラ
22 1次帯電器
31 露光手段(レーザーユニット)
32 折り返しミラー
40 現像器
41 現像スリーブ
42、43 現像突き当てコロ
51 転写帯電器
52 転写位置決め部材
61 クリーニングブレード
71 画像形成手段
81 画像形成装置(装置本体)
82 本体側板
83 溝部
83a、83b、83c 位置決め部
91 コネクタ
92 検知手段(フォトインタラプタ)
93 CPU(制御部)
94 アクチュエータ
95 読み取り手段
96 電位センサ
97 トナー濃度検知手段
100 新品の感光体ドラム
101 1次再生ドラム
104 4次再生ドラム
108 8次再生ドラム
d、d0、d4 位置決めコロの直径
t1 感光層の厚み
t2 傷の深さ
t3 感光体ドラムの切削量(旋盤の切削代)
A 露光位置
B0、B1 画像幅
C1 感光体ドラムの中心
E 露光光
F0、F1、F2 画像幅
K 感光体ドラム表層の傷
P 記録材
α 端部での位置ずれ量
δ 感光体ドラムの半径変化量
Δ シリンダの半径変化量
ΦD 新品の感光体ドラムの外径
ξ 座標軸
η 座標軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダとシリンダ表面に塗工された感光層より構成され、画像形成装置に使用される感光体ドラムの再生方法において、
感光層を除去する第1の除去工程と、
上記第1の除去工程と同時工程または別工程であるところの、シリンダの外周面を削って除去する第2の除去工程と、
第2の除去工程により外径が減少したシリンダの表面に、再び感光層を塗工する塗工工程とを有することを特徴とする感光体ドラムの再生方法。
【請求項2】
請求項1に記載の感光体ドラムの再生方法により、再生されたことを特徴とする感光体ドラム。
【請求項3】
表層の再生工程により外径の変化を伴う画像形成用の感光体ドラムを備えるドラムカートリッジにおいて、
該感光体ドラム表面と、該感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置を調整する位置調整手段を備えたことを特徴とするドラムカートリッジ。
【請求項4】
表層の再生工程により外径の変化を伴う画像形成用の感光体ドラムにおいて、
該感光体ドラム表面と、該感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置を調整する位置調整手段を備えたことを特徴とする感光体ドラム。
【請求項5】
請求項3に記載のドラムカートリッジを、装置内部に装着して画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4に記載の感光体ドラムを、装置内部に装着して画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
表層の再生工程により外径の変化を伴う感光体ドラム、または、これを備えるドラムカートリッジを、装置内部に装着して画像形成を行う画像形成装置において、
該感光体ドラム、または、該ドラムカートリッジは、画像形成装置と通信可能な感光体ドラムの径情報を有しており、
該画像形成装置は、該ドラム径情報に応じて、感光体ドラム表面と感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置関係を制御する位置制御手段、または、該ドラム径情報に応じて、作像条件を制御する作像条件制御手段を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置に装着して画像形成を行う感光体ドラムにおいて、
該感光体ドラムは、表層の再生工程により外径の変化を伴うものであり、
該画像形成装置は、感光体ドラムの径情報に応じて、感光体ドラム表面と感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置関係を制御する位置制御手段、または、感光体ドラムの径情報に応じて、作像条件を制御する作像条件制御手段を備えており、
該感光体ドラムは、画像形成装置と通信可能な感光体ドラムの径情報を具備することを特徴とする感光体ドラム。
【請求項9】
画像形成装置に装着して画像形成を行うドラムカートリッジにおいて、
該ドラムカートリッジは、表層の再生工程により外径の変化を伴う感光体ドラムを備えており、
該画像形成装置は、感光体ドラムの径情報に応じて、感光体ドラム表面と感光体ドラムに作用する画像形成手段との相対位置関係を制御する位置制御手段、または、感光体ドラムの径情報に応じて、作像条件を制御する作像条件制御手段を備えており、
該ドラムカートリッジは、画像形成装置と通信可能な感光体ドラムの径情報を具備することを特徴とするドラムカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2006−126454(P2006−126454A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313929(P2004−313929)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】