説明

感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法

【課題】 遮光性に優れ、硬化膜の弾性率が低く、高密着、高解像の画像表示装置用の隔壁を簡便に作業性よく形成することができる感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物が、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤及び(D)無機系黒色顔料を含有し、前記(B)光重合性化合物が、(B1)分子内にエチレン性不飽和基及びウレタン結合を有する化合物と、(B2)分子内にエチレン性不飽和基、並びに、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有し、前記オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基の繰り返し総数が11〜100である化合物と、を含む感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙のように薄く、持ち運びが自由で、文字や画像が表示可能な画像表示装置(PLD:Paper Like Display)が注目を集めている。かかる画像表示装置は、通常の印刷物としての紙の長所である視認性、携帯性を有し、さらに、情報を電気的に書き換え可能であるため、環境やコストの面からも紙の代替品として実用化が試みられている。
【0003】
画像表示装置の表示技術としては、電気泳動などにより粒子を移動させるタイプ、液晶タイプ、電気化学タイプなど様々なタイプが考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
特に粒子を移動させるタイプとしては、マイクロカプセル型電気泳動方式、マイクロカップ型電気泳動方式、電子粉流体方式、トナーディスプレイ等の方式が検討されている。これらの方式では、透明電極間に表示媒体である白と黒の粒子を封入し電場をかけ、これらの粒子を電気的に移動させることにより白/黒画像を形成し表示させる。また、画像表示装置の駆動方式としては、アクティブ駆動とパッシブ駆動があり、画像表示装置用の背面技術(パネル回路)の検討もなされている。
【0005】
上記粒子移動タイプの画像表示装置の場合、上述のように白/黒の粒子を封入するための隔壁が必要となる。かかる隔壁の形成方法としては、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。中でも、感光性樹脂組成物を用いて、活性光線の照射により高精細なパターンが効率よく形成できるフォトリソ法が注目されている。
【0006】
また、最近では、白/黒画像表示にカラーフィルターを組み合わせることにより、フルカラー表示を実現させるという報告例もある(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
かかるフルカラー表示を行う際、白/黒表示の画像表示装置にカラーフィルターを併用するため、各画素間のコントラストの向上が必須である。従って、各画素間の光を遮断するための遮光層が必要となる。
【0008】
フォトリソ法を用いた画像表示装置の隔壁は、以下のようにして形成される。すなわち、基板上にブラックマトリックスと呼ばれる遮光層をフォトリソ技術により積層する工程、さらに前記遮光層上に感光性樹脂組成物を塗布、又は感光性フィルムを積層することにより感光性樹脂組成物層を形成する工程、前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化させる工程、未露光部を除去して光硬化物パターンを形成する工程によって形成される。従って、画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物には、一般に、感度、解像性及び基板への密着性が要求される。
【0009】
画像表示装置を製造する場合、前記工程で得たパターン内に粒子等の表示媒体を充填する工程、前記光硬化物パターンを熱処理する工程、電極基板を貼り付ける工程などをさらに含み、感光性樹脂組成物層の硬化物を隔壁とする画像表示装置が得られる。前記工程においては高温プロセスが必須となるため、感光性樹脂組成物を用いて形成される画像表示装置の隔壁には、耐熱性等が要求される。
【0010】
さらに近年、かかる画像表示装置におけるフレキシブル化の実現が試みられている(例えば、非特許文献3参照)。これに伴い、画像表示装置の基板はITOなどにより電極が形成されたガラス基材などのようなリジット基板から、PET(ポリエチレンテレフタレート)基材、FPC基材などのようなフレキシブル基板へと移行している。
【0011】
かかるフレキシブル化を実現する際、各画素間を区切る隔壁にもフレキシブル化への対応が必須となる。したがって、弾性率の低い隔壁が必要とされる。
【0012】
一方で、感光性エレメントの低弾性化を行うと、解像性、密着性が低下する傾向にある。画像表示装置の各画素間のコントラストの向上には、表示面積を広くするため、隔壁の解像性向上が必要となる。また、各画素間を遮光することも必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−178881号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】鈴木 明、“電子ペーパーの最新動向2007”、平成19年10月10日、日本画像学会誌 第46巻 第5号:372−384(2007)
【非特許文献2】田沼 逸夫、“電子粉流体を用いたフレキシブル電子ペーパー”、平成19年10月10日、日本画像学会誌 第46巻 第5号:396−400(2007)
【非特許文献3】田中直樹、“電子ペーパー始動”、MICRODEVICES、平成20年4月1日、MICRODEVICES 第274号:31−45(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の感光性樹脂組成物を用いた画像表示装置の隔壁の形成方法では、上述のように遮光層と隔壁を各々積層する必要があるため工程数が増え、材料のコストが高くなるといった問題があった。
【0016】
また、従来の感光性樹脂組成物に黒色顔料を添加して遮光性の隔壁を形成した場合、感度、解像度及び基板への密着性が不十分であった。またフレキシブル基板へ追従できずパターンの剥がれや割れが生じるといった問題があった。
【0017】
さらに、フレキシブルプリント配線板(FPC)のカバーレイ等に使用される比較的低弾性の硬化物が得られる感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成した場合でも、紙のような画像表示装置を実現するにはまだ到らず、基板への密着性が不十分であった。
【0018】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、遮光性に優れ、硬化膜の弾性率が低く、高密着、高解像の画像表示装置用の隔壁を簡便に作業性よく形成することができる感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、[1]画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物が、
(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、
(B)光重合性化合物、
(C)光重合開始剤及び
(D)無機系黒色顔料
を含有し、前記(B)光重合性化合物が、(B1)分子内にエチレン性不飽和基及びウレタン結合を有する化合物と、(B2)分子内にエチレン性不飽和基、並びに、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有し、前記オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基の繰り返し総数nが11〜100である化合物と、を含む感光性樹脂組成物を提供する。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物は上記構成を有することにより、熱硬化後の硬化膜の弾性率が低く、遮光性に優れ、高密着、高解像の画像表示装置用の隔壁を、簡便に作業性よく形成することができる。
【0021】
また、本発明は、[2]前記(B1)成分が、イソシアヌル環構造を有する化合物を含む上記[1]に記載の感光性樹脂組成物を提供する。これにより、低弾性の硬化膜を得ることができ、フレキシブル基板への密着性を向上することができる。
【0022】
また、本発明は、[3]前記(B1)成分が、重量平均分子量2,000〜10,000の化合物を含む上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物を提供する。これにより、さらに低弾性の硬化膜を得ることができ、フレキシブル基板への密着性を一層向上することができる。
【0023】
また、本発明は、[4]前記(B2)成分が、オキシエチレン基(EO)又はオキシプロピレン基(PO)変性ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、及び、(EO)又は(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む上記[1]〜[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を提供する。これにより、硬化膜の低弾性を維持しつつ、解像度及び密着性を向上することができる。
【0024】
また、本発明は、[5]前記(B)成分が、(B3)下記一般式(1)で表される化合物をさらに含む上記[1]〜[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を提供する。これにより、解像度を一層向上することができる。
【0025】
【化1】


[一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はハロゲン化メチル基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基のいずれかを示し、pは0〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。−(O−A)−はオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を示し、−(O−A)−の繰り返し総数aは1〜4の整数を示す。]
【0026】
また、本発明は、[6]前記(D)無機系黒色顔料がチタンブラック含む上記[1]〜[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を提供する。これにより、遮光性が一層優れ、熱安定性を向上することができる。
【0027】
また、本発明は、[7]120℃、1時間で熱硬化した硬化膜の膜厚45μmにおける引張弾性率が、25℃で1GPa以下である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を提供する。これにより、フレキシブル基板に対応し得る隔壁が形成可能となる。
【0028】
また、本発明は、[8]支持体と、該支持体上に形成された上記[1]〜[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメントを提供する。
本発明の感光性エレメントは、上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を備えることにより、熱硬化後の硬化膜の弾性率が低く、遮光性に優れ、高密着、高解像の画像表示装置用の隔壁を、簡便に作業性よく形成することができる。
【0029】
また、本発明は、[9]前記感光性樹脂組成物層の膜厚は10〜60μmである上記[8]に記載の感光性エレメントを提供する。これにより、遮光性に優れ、高密着、高解像の画像表示装置用の隔壁を形成することができる。
【0030】
また、本発明は、[10]画像表示装置の基板上に、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、前記露光部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、を有する、画像表示装置の隔壁の形成方法を提供する。
【0031】
また、本発明は、[11]上記[10]記載の画像表示装置の隔壁の形成方法により形成された光硬化物パターンを、60〜250℃で加熱処理して熱硬化せしめる加熱工程をさらに有する、画像表示装置の隔壁の形成方法を提供する。
【0032】
また、本発明は、[12]前記基板がフレキシブル基板である、上記[10]又は[11]に記載の画像表示装置の隔壁の形成方法を提供する。
また、本発明は、[13]表示媒体を、上記[10]〜[12]のいずれかに記載の画像表示装置の隔壁の形成方法により形成された隔壁内に粒子等の表示媒体を充填する工程と、一方の基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、を有する、画像表示装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、遮光性に優れ、硬化膜の弾性率が低く、高密着、高解像の画像表示装置用の隔壁を簡便に作業性よく形成することができる感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルを意味する。
【0035】
なお、EOはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。また、POはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、(B)光重合性化合物[(B1)化合物と(B2)化合物]、(C)光重合開始剤及び(D)無機系黒色顔料を含有する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0037】
(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシル基を含有し、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシル基を有する重合性単量体としては、現像性及び安定性の観点から(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0038】
また、(A)バインダーポリマーは、密着性の見地から、スチレン又はスチレン誘導体を共重合成分として含有することが好ましい。(A)バインダーポリマーがスチレン又はスチレン誘導体を含有する場合の含有量は、密着性及び硬化膜の低弾性をバランスよく向上する観点から、全共重合成分に対して、5〜45質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜35質量%であることがさらに好ましく、20〜30質量%であることが特に好ましい。
【0039】
(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーの酸価は、解像性の観点から30mgKOH/g以上であることが好ましく、耐現像液性及び密着性の観点から250mgKOH/g以下であることが好ましく、80〜240mgKOH/gであることがより好ましく、130〜230mgKOH/gであることがさらに好ましく、180〜220mgKOH/gであることが特に好ましい。現像工程として溶剤による現像を行う場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体の使用量を抑えて調製することが好ましい。
【0040】
(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)は、耐現像液性の観点から20,000以上であることが好ましく、現像時間を短くできる観点から300,000以下であることが好ましく、25,000〜150,000であることがより好ましく、30,000〜70,000であることが特に好ましい。
【0041】
本発明における(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマーには、他のバインダーポリマーを併用することができ、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。アルカリ現像性の観点からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは単独で、または2種類以上のバインダーポリマーを組み合わせて用いることができる。2種類以上のバインダーポリマーの組み合わせの例としては、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーなどが挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。なお、必要に応じて、バインダーポリマーは感光性基を有していてもよい。
【0042】
バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。これらを単独で用いてホモポリマーとしてもよいし、2種類以上を組み合わせてコポリマーとしてもよい。
【0043】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、及びこれらの構造異性体が挙げられる。これらは、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明における(B)成分の光重合性化合物は、(B1)化合物と(B2)化合物を含有する。(B1)化合物は、分子内にエチレン性不飽和基及びウレタン結合を有する化合物であり、(B2)化合物は、分子内にエチレン性不飽和基、並びに、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有し、前記オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基の繰り返し総数が11〜100である。
【0045】
(B1)化合物は、さらにイソシアヌル環構造を有する化合物(b1)を含有することが好ましい。イソシアヌル環構造を有する(b1)化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化2】


一般式(2)中、Rは、各々独立に、
【0047】
【化3】

(一般式(3)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、mは1〜14の整数である)、
【0048】
【化4】

(一般式(4)中、mは1〜14の整数である)、又は、
【0049】
【化5】

(一般式(5)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1〜9の整数であり、mは1〜14の整数である)を示し、Rのうち少なくとも1つは一般式(5)である。
弾性率、密着性の観点から一般式(2)中のRのうち2つは、一般式(5)であることがより好ましく、Rの全てが一般式(5)であることがさらに好ましい。
【0050】
一般式(3)(4)中、mは、1〜14の整数であり、1〜6であることが好ましい。mが、14を超えると、耐薬品性が低下する場合がある。また、一般式(5)中、mは、1〜14の整数であり、1〜6であることが好ましく、nは、1〜9の整数であり、3〜6であることが好ましい。mが、14を超えると、耐薬品性が低下する場合があり、nが、9を超えると、機械強度が低下する場合がある。
【0051】
※下記M−315及びM−215に関する記載を削除下さい。
上記一般式(2)で表される化合物で、市販のものとしては、例えば、NKオリゴUA−21EB(新中村化学工業株式会社、商品名、一般式(2)中、Rが全て一般式(5)である)等が挙げられる。
【0052】
また、(B1)化合物は、ポリカーボネート化合物及び/又はポリエステル化合物の末端のヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合を有し、且つ、複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物と、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と、を縮合反応させることで得ることができる化合物(b2)を含むことが好ましい。
【0053】
(b2)化合物の合成に用いる上記ウレタン化合物は、両末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物及び/又はポリエステル化合物(以下、場合によりポリカーボネート化合物及びポリエステル化合物をそれぞれ、「(1)ポリカーボネート化合物」及び「(2)ポリエステル化合物」と表記する。)とジイソシアネート化合物(以下、場合により「(3)ジイソシアネート化合物」と表記する。)とを反応させて得ることができる。特に、低弾性の硬化膜を得る観点から、(2)ポリエステル化合物と(3)ジイソシアネートとを反応させて得られるウレタン化合物を用いることが好ましい。
【0054】
(1)ポリカーボネート化合物は、アルキレン基がカーボネート結合を介して主鎖に並んだ構造を有し、公知の方法により得ることができ、例えば、ホスゲン法によりポリカーボネート化合物を得る場合は、ジオール化合物とホスゲンとを反応させる。ジオール化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エリレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、3,3,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,3,5−トリメチル−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール化合物が含まれてもよい。
【0055】
上記ポリカーボネート化合物のなかでも、1,6−ヘキサンジオール及び1,5−ペンタンジオールに由来する下記一般式(I)で表されるヘキサメチレンカーボネート及び下記一般式(II)で表されるペンタメチレンカーボネートを含むものが好ましい。
【0056】
【化6】

【0057】
また、ポリカーボネート化合物が含有する、ヘキサメチレンカーボネート及びペンタメチレンカーボネートのモル比率は、ヘキサメチレンカーボネート/ペンタメチレンカーボネート=1/9〜9/1であるものが好ましい。この含有比率が上記範囲外であると、光硬化物の伸び及び強度が低下する傾向がある。
【0058】
(2)ポリエステル化合物は、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合による公知の方法により得ることができる。多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの芳香族や脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのようなグリコール類が挙げられる。
【0059】
上記ポリカーボネート化合物及びポリエステル化合物の重量平均分子量(例えば、GPC測定し、ポリスチレン換算したもの)は600〜1000であるものが好ましい。この重量平均分子量が上記範囲外であると、光硬化物の伸び及び強度が低下する傾向がある。
【0060】
(3)ジイソシアネート化合物としては、例えば、アルキレン基等の2価の脂肪族基を有する脂肪族ジイソシアネート化合物、シクロアルキレン等の2価の脂環式基を有する脂環式ジイソシアネート化合物、及び芳香族ジイソシアネート化合物、並びに、これらのイソシアヌレート化変性物、カルボジイミド化変性物、及びビウレット化変性物が挙げられる。
【0061】
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。芳香族ジイソシアネート化合物としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トリエンジイソシアネート又は2,6−トリエンジイソシアネートの2量化重合体、(o,p又はm)−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェイト等の2以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物が含まれていてもよい。これらのなかでも光硬化物の可とう性及び強靭性をより高水準に達成する観点から脂環式ジイソシアネート化合物が好ましく、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。
【0062】
複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物(以下、場合により「(4)ウレタン化合物」と表記する。)は、(1)ポリカーボネート化合物及び/又は(2)ポリエステル化合物と(3)ジイソシアネート化合物とを反応させることで得られる。(4)ウレタン化合物は、両末端にイソシアナート基を有することが好ましく、この場合、上記の反応において(1)ポリカーボネート化合物及び(2)ポリエステル化合物の総量1モルに対して(3)ジイソシアネート化合物の配合量を1.01〜2.0モルとすることが好ましく、1.1〜2.0とすることがより好ましい。(3)ジイソシアネート化合物の配合量が1.01モル未満又は2.0モルを超えると、両末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物を安定的に得られない傾向がある。なお、(4)ウレタン化合物を合成する反応では、ジブチルチンジラウレートなどの触媒を加えることが好ましい。反応を十分に進める観点から、反応温度は60〜120℃とすることが好ましい。
【0063】
上記ウレタン化合物と反応させて(b2)化合物を得る反応において用いることのできる、分子中にヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、場合により「(5)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和化合物」という。)としては、例えば、分子中にヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げることできる。かかる化合物としては、例えば、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、これのカプロラクトン付加物又は酸化アルキレン付加物、グリセリン等の多価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、及びグリシジル(メタ)アリレートアクリル酸付加物が挙げられる。
【0064】
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのカプロラクトン付加物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・カプロラクトン付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・カプロラクトン付加物、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート・カプロラクトン付加物が挙げられ、酸化アルキレン付加物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・酸化アルキレン付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・酸化プロピレン付加物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・酸化ブチレン付加物が挙げられる。エステル化合物としては、例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの酸化エチレン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの酸化プロピレン付加物のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0065】
(b2)化合物は、(4)ウレタン化合物に(5)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和化合物を付加反応させることにより得られる。かかる付加反応においては、(4)ウレタン化合物1モルに対して(5)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和化合物の配合量を2.0〜2.4モルとすることが好ましい。(5)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和化合物の配合量が2.0モル未満であると、光重合性が不十分となる傾向があり、2.4モルを超えると、光硬化物の伸びおよび強度が低下する傾向がある。上記付加反応は、例えば、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−ヒドロキシ−トルエン等の存在下で行うことが好ましく、その他に、ジブチルチンジラウレートのような触媒を加えることが好ましい。反応温度としては、60〜90℃とすることが好ましい。60℃未満であると、反応が十分に進まない傾向があり、90℃を超えると、急激な発熱により、ゲル化する傾向がある。なお、反応の終点は、例えば、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基が消失する時点とすればよい。
【0066】
ポリカーボネート化合物及び/又はポリエステル化合物の末端のヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合を有し且つ複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物と、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と、を縮合反応させることで得ることができる化合物の重量平均分子量は、(A)成分との相溶性及び硬化膜の低弾性をバランスよく良好にする観点から、200〜100000であることが好ましく、1000〜50000であることがより好ましく、2000〜20000であることがさらに好ましく、2,000〜10,000であることが特に好ましい。
【0067】
(B1)化合物は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能な(B1)化合物としては、例えば、UF−8003M、UF−TCB−50、UF−TC4−55(以上商品名、共栄社化学株式会社製)、ヒタロイド9082−95(商品名、日立化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0068】
さらに、(B)成分の、上述以外の(B1)化合物としては、例えば、β位に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−11等が挙げられる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−13等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0069】
(B)成分は、(B2)化合物として、分子内にエチレン性不飽和基、並びに、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有し、前記オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基の繰り返し総数が、11〜100である化合物を含む。(B2)化合物がオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の双方を有する場合、これらの共重合鎖は、ブロックでもランダムでもよい。オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基の繰り返し総数は、硬化膜の密着性及び低弾性化をバランスよく向上させる観点から、15〜90であることが好ましく、15〜50であることがより好ましく、15〜30であることがさらに好ましい。
【0070】
(B2)化合物は、オキシエチレン基(EO)又はオキシプロピレン基(PO)変性ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、及び、(EO)又は(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0071】
(EO)又は(PO)変性ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0072】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられ、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0073】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビ__ス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0074】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0075】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(6)、(7)又は(8)で表される化合物が好ましい。
【0076】
【化7】


[一般式(6)中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、r+r+sは11〜100の整数である。]
【0077】
【化8】


[一般式(7)中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、s+s+rは、11〜100の整数である。]
【0078】
【化9】

【0079】
[一般式(8)中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、r+sは11〜100の整数である。]
【0080】
上記一般式(6)、(7)及び(8)におけるオキシエチレン基及びオキシプロピレン基の総数は、より低弾性の硬化膜を得る観点から、12〜50であることが好ましく、13〜25であることがより好ましく、15〜20であることがさらに好ましい。
【0081】
上記一般式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、Rがメチル基、r+r=6(平均値)、s=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業株式会社製、商品名:FA−023M)等が挙げられる。
【0082】
上記一般式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば、Rがメチル基、r=6(平均値)、s+s=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業株式会社製、商品名:FA−024M)等が挙げられる。
【0083】
(EO)又は(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、下記一般式(9)で表される化合物が好ましい。
【0084】
【化10】


[一般式(9)中、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、−(O−B)−はオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を示し、−(O−B)−の繰り返し総数b+b+bは、11〜100の整数である。]
【0085】
また、上記一般式(9)中、より低弾性の硬化膜を得る観点から、b+b+bは、13〜60であることが好ましく、15〜50であることがより好ましく、18〜40であることがさらに好ましい。
【0086】
上記一般式(9)で表される化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記一般式(9)で表される化合物のうち、例えば、オキシエチレン基を21モル付加したトリメチロールプロパントリアクリレートとしてTMPT−21(日本化薬株式会社製)が商業的に入手可能である。
【0087】
また、(B)成分は、上記(B1)及び(B2)成分の他に、解像性を良好にする見地から、(B3)下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0088】
【化11】


[一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はハロゲン化メチル基のいずれかを示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基のいずれかを示し、pは0〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。−(O−A)−はオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を示し、−(O−A)−の繰り返し総数aは1〜4の整数を示す。]
【0089】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、及びβ−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が挙げられ、なかでも、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが好ましい。γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレートはFA−MECH(日立化成工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0090】
また、(B)成分は、解像性を良好にする見地から、下記一般式(10)で表される化合物を含むことが好ましい。一般式(10)で表される化合物、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートはNKエステル702A(新中村化学株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0091】
【化12】

【0092】
上記(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の塗膜性および、光硬化物の機械的強度の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、40〜80質量部とすることが好ましく、45〜70質量部とすることがより好ましい。
【0093】
上記(B1)化合物の含有量は、(B)成分の総量100質量部に対し20〜95質量%とすることが好ましく、30〜70質量%とすることがより好ましい。また、上記(B2)化合物の含有量は、(B)成分の総量100質量部に対し5〜80質量%とすることが好ましく、10〜40質量%とすることがより好ましい。
【0094】
本発明における(C)成分の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどが挙げられる。中でも、解像性を良好にする観点から、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンの双方を含むことが好ましい。また、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせでもよい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0095】
上記(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。この含有量が0.1質量部未満では光感度が不充分となる傾向があり、20質量部を超えると露光の際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不充分となる傾向がある。
【0096】
本発明で用いる(D)成分の無機系黒色顔料としては、例えば、チタンブラック、カーボンブラック、コバルトブラック等が挙げられ、後加熱処理時の退色を抑制する観点から、チタンブラックが好ましく用いられる。
【0097】
前記(D)無機系黒色顔料の含有量は、感光性樹脂組成物の遮光性、分散安定性及び感光性エレメント形成時の塗膜外観の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましい。
【0098】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを、(A)成分および(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有することができる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用される。
【0099】
本発明の感光性樹脂組成物は、たとえば、含有成分をロールミル、ビーズミル等で均一に混練、混合することにより得ることができる。また、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤、または、これらの混合溶剤に溶解して、固形分30〜60質量%程度の溶液として用いることができる。
【0100】
得られた感光性樹脂組成物を用いて画像表示装置の基板上に感光性樹脂組成物層を形成する方法としては、特に制限はないが、前記基板上に感光性樹脂組成物を液状レジストとして塗布して乾燥することができる。また、必要に応じて感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを被覆することができる。さらに、後に詳しく述べるが感光性樹脂組成物層を感光性エレメントの形態で用いることが好ましい。塗布される感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μm程度であることが好ましい。液状レジストとして塗布後、保護フィルムを被覆して用いる場合の保護フィルムとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムが挙げられる。
【0101】
本発明の感光性エレメントは、支持体と、その上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える。
【0102】
支持体としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の重合体フィルムを好ましく用いることができる。重合体フィルムの厚みは、1〜100μm程度とすることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。
【0103】
支持体上への感光性樹脂組成物層の形成方法は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の溶液を塗布、乾燥することにより好ましく実施できる。塗布される感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μmであることが好ましい。画像表示装置の隔壁として用いる場合、感光性樹脂組成物層の厚みは、乾燥後の厚みで10〜60μmであることがより好ましく、20〜55μmであることがさらに好ましい。
塗布は、たとえば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができる。乾燥は、70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。また、感光性樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0104】
支持体として用いられる上記重合体フィルムを保護フィルムとして用いて、感光性樹脂組成物層表面を被覆してもよい。保護フィルムとしては、感光性樹脂組成物層と支持体の接着力よりも、感光性樹脂組成物層と保護フィルムの接着力の方が小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。さらに、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層、支持体および任意の保護フィルムの他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層を有していてもよい。
【0105】
製造された感光性エレメントは、通常、円筒状の巻芯に巻きとって貯蔵される。なお、この際支持体が外側になるように巻き取られることが好ましい。上記ロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。上記巻芯としては、たとえば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックが挙げられる。
【0106】
次に、本発明の画像表示装置の隔壁の形成方法について説明する。すなわち、画像表示装置の基板上に、感光性樹脂組成物、又は感光性エレメントを用いて感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、前記露光部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、を有する。
【0107】
まず、上述した本発明の感光性樹脂組成物層を画像表示装置の基板上に積層する。前記基板としては、ガラス基板若しくはポリマー基板のような絶縁基板又はシリコン基板などの半導体基板若しくはITOのような電極が形成された半導体基板、フレキシブル基板が挙げられる。中でも、画像表示装置におけるフレキシブル化の実現が試みられていることからフレキシブル基板が好ましく用いられる。積層方法としては、上述した塗布方法が用いられる他、感光性エレメントを用いることもできる。
【0108】
感光性エレメントを用いる積層方法は、感光性樹脂組成物層上に保護フィルムが存在している場合には、保護フィルムを除去しながら基板上へ積層する。前記積層条件としては、例えば、感光性樹脂組成物層を70〜130℃程度に加熱しながら、基板上に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着することにより積層する方法などが挙げられ、減圧下で積層することも可能である。基板表面の形状は、通常は平坦であるが、必要に応じて凹凸や電極パターンが形成されていてもよい。
【0109】
感光性樹脂組成物の積層後、感光性樹脂組成物層に画像状に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる。画像状に活性光線を照射させる方法としては、感光性樹脂組成物層上にマスクパターンを設置して画像状に活性光線を照射し、露光部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる方法がある。マスクパターンは、ネガ型でもポジ型でもよく、一般に用いられているものを使用できる。活性光線の光源としては、公知の光源、たとえば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、露光方法としては、マスクパターンを用いずにレーザーで直接パターンを描画する、直接描画露光法を用いることもできる。
【0110】
露光後に未露光部の感光性樹脂組成物層を現像により選択的に除去することにより、画像表示装置用の基板上に光硬化物パターンが形成される。なお現像工程は、支持体が存在する場合は、現像に先立ち、支持体を除去する。現像は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去することにより行われる。本発明においては、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。このアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。上記現像の方式としては、たとえば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。
【0111】
現像後の処理として、形成された前記光硬化物パターンを、必要に応じて60〜250℃程度の加熱処理によりさらに硬化してもよい。
【0112】
本発明の感光性樹脂組成物は、120℃、1時間で熱硬化した硬化膜の膜厚45μmにおける引張弾性率(25℃)が、1GPa以下であると好ましい。これにより、フレキシブル基板に対応し得る隔壁が形成可能となる。引張弾性率を1GPa以下とするには、(A)成分、(B)化合物、特に(B2)化合物に屈曲性に富む材料を多く用いることや架橋密度を低くすることで達成できる。(B2)化合物としてオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基の繰り返し総数が多いほど弾性率は低下できる傾向にある。
【0113】
本発明の画像表示装置の製造方法は、粒子等の表示媒体を前記工程で得た隔壁内に充填する工程と、一方の基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、を有する。前記基板としては、ガラス基板若しくはポリマー基板のような絶縁基板又はシリコン基板などの半導体基板若しくはITOのような電極が形成された半導体基板が挙げられる。
【実施例】
【0114】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0115】
表1及び表2に示す材料を撹拌混合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
(合成例1)
[バインダーポリマー(a)の合成]
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比3:2であるメチルセロソルブ及びトルエンの配合物500gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、85℃まで加熱した。一方、重合性単量体としてメタクリル酸150g、メタクリル酸メチルエステル110g、アクリル酸エチルエステル65g、メタクリル酸ブチルエステル50g及びスチレン125gと、アゾビスイソブチロニトリル2.5gとを混合した溶液(以下、「溶液a」という)を用意し、85℃に加熱された質量比3:2であるメチルセロソルブ及びトルエンの上記配合物に溶液aを4時間かけて滴下した後、85℃で撹拌しながら2時間保温した。さらに、質量比3:2であるメチルセロソルブ及びトルエンの配合物150gにアゾビスイソブチロニトリル0.5gを溶解した溶液を、10分かけてフラスコ内に滴下した。滴下後の溶液を撹拌しながら85℃で5時間保温した後、冷却して不揮発分(固形分)は43質量%になるように、質量比3:2であるアセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合溶媒で希釈してバインダーポリマー(a)を得た。得られたバインダーポリマー(a)の重量平均分子量は50000、分散度は2.0、酸価は195mgKOH/gであった。
【0116】
なお、バインダーポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は、以下に示す。
[GPC測定条件]
ポンプ:日立 L−6000型(株式会社日立製作所製)
カラム:Gelpack GL−R420 + Gelpack GL−R430 +
Gelpack GL−R440(計3本)(以上、日立化成工業株式会社製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:25℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI(株式会社日立製作所製)
【0117】
【表1】


配合量の単位:g(固形分)
【0118】
【表2】

配合量の単位:g(固形分)
【0119】
表1及び表2で使用した材料を以下に示す。
HT−9082−94:末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物、有機イソシアネート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた光重合性化合物からなり、重量平均分子量は4000である(商品名、日立化成工業株式会社製、75質量%メチルエチルケトン溶液)。
UF−TC−4−55:末端にヒドロキシル基を有するポリエステル化合物、有機イソシアネート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた光重合性化合物からなり、重量平均分子量は20000である(商品名、共栄社化学株式会社製、60質量%メチルエチルケトン溶液)。
UF−8003M:末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物に、2−ヒドロキシエチルアクリレート2モルを反応させて得られた光重合性化合物からなり、重量平均分子量は3500である(商品名、共栄社化学株式会社製、80質量%メチルエチルケトン溶液)。
UA−21EB:一般式(2)中、Rが全て一般式(5)であり、n=6、m=4、Rがメチル基である化合物(新中村化学工業株式会社、商品名)
BPE−1300:2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学工業株式会社製、製品名)
FA−023M:一般式(6)中、Rがメチル基、r+r=6(平均値)、s=12(平均値)である化合物(日立化成工業株式会社製、商品名)
FA−024M:一般式(7)中、Rがメチル基、r=6(平均値)、s+s=12(平均値)である化合物(日立化成工業株式会社製、商品名)
TMPT−21:一般式(9)中、Rが水素原子、b1+b2+b3=21(平均値)である化合物(日本化薬株式会社製)
FA−MECH:γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート(日立化成工業株式会社製、製品名)
702A:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名)
FA−321M:2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成工業株式会社製、商品名)
A−GLY−9E:グリセリンノナエトキシトリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名)
N−1717:1,7−ビス(N−アクリジニル)ヘプタン(株式会社ADEKA製)
イルガキュア651(I-651):2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(長瀬産業株式会社製、製品名)
TPS:トリブロモメチルフェニルスルホン(住友精化株式会社製、製品名)
EAB:N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学工業株式会社製、商品名)
シランカップリング剤:SZ−6030:メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名)
TLS:トルエン
MAL:メタノール
【0120】
表1で得られた感光性樹脂組成物の溶液を、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:HTR−02)上に均一に塗布し、90℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥した後、ポリエチレン製保護フィルム(フィルム長手方向の引張強さ:16MPa、フィルム幅方向の引張強さ:12MPa、商品名:NF−15、タマポリ株式会社製)で保護して感光性エレメントを得た。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、45μmであった。
【0121】
<遮光性の評価>
上述のようにして得られた感光性エレメントを20cm四方に切り出し、感光性樹脂組成物層を保護フィルム上から目視で観察し、黒色であるものを○、それ以外を×とした。結果を表3及び表4に示した。
【0122】
一方、ITO付きPET基材(東洋紡績株式会社製)のITO面上に、上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がITO面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。得られた積層物の構成は、ITO付きPET基材、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムの順となる。この積層物について、感度、密着性及び解像度の評価を行った。結果を表3及び表4に示した。
【0123】
<感度の評価>
高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、41段ステップタブレットを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、100mJ/cmのエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で30秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数を求め、これを感度(ST=x/41)とした。この値が大きいほど感度が高いことを示す。
【0124】
<密着性の評価>
高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、密着性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が400/6〜400/47(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールと、41段ステップタブレットを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で30秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して密着性を評価した。密着性は現像液により剥離されずに残ったラインの幅(μm)で表され、この数値が小さい程、細いラインでもPET基材基板から剥離せずに密着していることから、密着性が高いことを示す。
【0125】
<解像度の評価>
41段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が400/6〜400/47(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で30秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して解像度を評価した。解像度は現像処理によって未露光部が良好に除去された最も小さいスペース幅(μm)で表され、この数値が小さいほど解像度は良好である。
【0126】
<弾性率の評価>
ポリ四フッ化エチレンシート(日東電工株式会社製、製品名「ニトフロンフィルムNo.900U」)上に上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がポリ四フッ化エチレンシート表面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。得られた積層物の構成は、ポリ四フッ化エチレンシート、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムの順となる。上記積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上から平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、露光した。なお、積層物の露光にあったっては41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量とした。さらに、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で30秒間スプレーすることにより現像を行った。ついで、紫外線照射装置(東芝電材株式会社製、定格電圧200V、定格消費電力7.2kW)を使用し紫外線照射(紫外線照射度:2J/cm)を行った後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、120℃に加熱した箱型乾燥機(三菱電機株式会社製、型番:NV50−CA)内に60分間静置した。加熱処理後の積層物を10mm幅に切り出し、チャック間距離を50mmとし、速度2cm/minの一定速度で引っ張り弾性率(25℃)を求めた。
【0127】
【表3】

【0128】
【表4】

【0129】
表2および表3から明らかなように、実施例1〜8は、優れた遮光性及び感度を有し、なおかつ硬化膜が十分に低弾性で、解像度及び密着性に優れていることが明らかである。
これに対し、(B2)成分を有しない比較例1〜3は、弾性率が高い。
本発明の実施例2〜4は、実施例1、5〜8よりも高水準の解像度及び密着性が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、前記感光性樹脂組成物が、
(A)カルボキシル基を有するバインダーポリマー、
(B)光重合性化合物、
(C)光重合開始剤及び
(D)無機系黒色顔料
を含有し、前記(B)光重合性化合物が、
(B1)分子内にエチレン性不飽和基及びウレタン結合を有する化合物と、
(B2)分子内にエチレン性不飽和基、並びに、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有し、前記オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基の繰り返し総数が11〜100である化合物と、
を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B1)成分が、イソシアヌル環構造を有する化合物を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B1)成分が、重量平均分子量2,000〜10,000の化合物を含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B2)成分が、オキシエチレン基(EO)又はオキシプロピレン基(PO)変性ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、及び、(EO)又は(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、(B3)下記一般式(1)で表される化合物をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

[一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はハロゲン化メチル基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基のいずれかを示し、pは0〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。−(O−A)−はオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を示し、−(O−A)−の繰り返し総数aは1〜4の整数を示す。]
【請求項6】
前記(D)無機系黒色顔料がチタンブラックを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
120℃、1時間で熱硬化した硬化膜の膜厚45μmにおける引張弾性率が、1GPa以下である請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメント。
【請求項9】
前記感光性樹脂組成物層の膜厚が10〜60μmである、請求項8に記載の感光性エレメント。
【請求項10】
画像表示装置の基板上に、請求項1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、
前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、
前記露光部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、
を有する、画像表示装置の隔壁の形成方法。
【請求項11】
請求項10記載の画像表示装置の隔壁の形成方法により形成された光硬化物パターンを、60〜250℃で加熱処理して熱硬化せしめる加熱工程をさらに有する、画像表示装置の隔壁の形成方法。
【請求項12】
前記基板がフレキシブル基板である、請求項10又は11に記載の画像表示装置の隔壁の形成方法。
【請求項13】
表示媒体を、請求項10〜12のいずれかに記載の画像表示装置の隔壁の形成方法により形成された隔壁内に表示媒体を充填する工程と、
一方の基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、
を有する、画像表示装置の製造方法。

【公開番号】特開2010−169934(P2010−169934A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12902(P2009−12902)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】