説明

感光性樹脂組成物、それを用いた硬化物及び半導体素子

【課題】 比較的低露光量での微細なパターン形成が可能であり、従来のような高温での熱硬化を必要とせず、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物、(II)光重合開始剤、及び(III)ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有するケイ素化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物、それを用いた硬化物及び半導体素子に関する。本発明の感光性樹脂組成物は半導体素子用保護膜、層間絶縁膜、再配線層の絶縁膜等に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子用保護膜、半導体表層に形成される層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜には、耐熱性、電気的特性、及び機械的特性に優れるポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する感光性樹脂組成物が用いられている。前記ポリイミド前駆体を含有する感光性樹脂組成物としては、例えば、特開昭54−109828号公報(特許文献1)にポリアミド酸、重合性の不飽和結合を有する化合物、及び光重合開始剤を含有する樹脂組成物が記載されており、特開2008−83468号公報(特許文献2)にポリアミド酸エステル組成物及び光重合開始剤を含有する樹脂組成物が記載されている。このような樹脂組成物において得られる感光性ポリイミド前駆体は、不飽和結合が光重合開始剤によって光架橋されることでパターンが得られるネガ型の感光性材料である。また、前記ポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する感光性樹脂組成物としては、例えば、特開昭56−27140号公報(特許文献3)及び特開平11−237736号公報(特許文献4)にポリベンゾオキサゾール前駆体及びキノンジアジド化合物を含有する樹脂組成物が記載されている。このような樹脂組成物は、光照射によりキノンジアジドがインデンカルボン酸になることで光照射された部分(露光部)がアルカリ性現像液に溶解され、パターンが得られるポジ型の感光性材料である。
【0003】
特許文献1〜4に記載されているようなポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体は、硬化反応において脱水閉環反応を行う必要があるため、硬化せしめるためには、少なくとも230℃を超えて加熱することが必要である。しかしながら、このように加熱温度が高い場合には、半導体素子にダメージが加わる可能性があると共に、シリコンウェハー等の基板と感光性樹脂組成物からなる膜との間で線熱膨張係数が異なるため、室温に冷却するまでの温度差によって硬化後の膜内に残留応力が生じるという問題を有していた。さらに、特許文献1〜4に記載されているような感光性樹脂組成物においては、その耐熱性や機械物性を向上させることを目的として、硬化させて得られる樹脂のポリマー骨格が剛直な芳香族化合物で構成される骨格となるようにしているため、硬化後の引張弾性率が高くなり、被着体との密着性が低下したり、残留応力がいっそう大きくなるという問題を有していた。このような残留応力は、シリコンウェハー等の基板のそりの原因となり、フリップチップ実装等におけるインターポーザーとの接合信頼性の低下、半導体製造工程におけるシリコンウェハー等の基板のハンドリング性低下等の不具合が引き起こされる原因となる。特に、近年においては、半導体素子の小型化・薄型化の観点からシリコンウェハーの薄型化の進展や、量産性向上の観点からシリコンウェハーの大口径化(量産レベルでは300mm径程度、将来的には450mm径程度)の進展に伴い、このような残留応力に関する問題はより重大なものとなっている。
【0004】
また、硬化せしめる温度(硬化温度)を低下させることを目的とした感光性樹脂組成物として、特開2009−258433号公報(特許文献5)及び特開2009−175356号公報(特許文献6)には、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する樹脂組成物が記載されている。さらに、他の感光性樹脂組成物としては、例えば、特開2010−256532号公報(特許文献7)にダイマー酸から誘導されたアミン化合物及びジアミンとテトラカルボン酸二無水物との縮合反応により得られるポリアミド酸を含有する感光性樹脂組成物が記載されている。また、特表2006−526014号公報(特許文献8)には、あらかじめアミド酸構造が閉環され、重合性の官能基としてマレイミド基が導入されたポリマレインイミド化合物が記載されており、このポリマレインイミド化合物を含有する感光性樹脂組成物が米国特許出願公開第2011/0049731号明細書(特許文献9)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−109828号公報
【特許文献2】特開2008−83468号公報
【特許文献3】特開昭56−27140号公報
【特許文献4】特開平11−237736号公報
【特許文献5】特開2009−258433号公報
【特許文献6】特開2009−175356号公報
【特許文献7】特開2010−256532号公報
【特許文献8】特表2006−526014号公報
【特許文献9】米国特許出願公開第2011/0049731号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体は436nm及び365nmにおける吸収が大きいため、半導体の保護膜等の製造工程に標準的に用いられている縮小投影露光機(ステッパー;光源波長:365nm、436nm)を用いる場合には、膜厚が厚くなるにつれて底部まで到達する光が減少し、パターンを形成せしめることが困難となることを本発明者らは見出した。特に、半導体素子用保護膜等の膜厚は一般に5μm以下であるが、配線による凹凸により実際には膜厚が10μm以上である部分が存在していることが多くあり、このような部分においては十分なパターニング性能が発揮されず、チップ設計が制限されるという問題を有することを本発明者らは見出した。
【0007】
また、特許文献7に記載のポリアミド酸は、ダイマー酸から誘導されたアミン化合物(ダイマージアミン)とテトラカルボン酸二無水物から得られたポリアミド酸構造を有しており、可とう性に優れた硬化物が得られることが期待される。しかしながら、特許文献7に記載のポリアミド酸は光重合性の官能基を有していないため、光重合性化合物を樹脂組成物に添加することが必要であり、例えば、光重合性化合物として一般的なアクリル化合物等の重合性官能基を複数有する多官能重合性化合物を前記ポリアミド酸と共に用いると、光重合による架橋反応が進展して硬化後の引張弾性率が高くなるという問題を有することを本発明者らは見出した。さらに、特許文献7に記載の感光性樹脂組成物は、硬化反応においてアミド酸構造の脱水閉環反応を行わせる必要があるため、230℃を超える高温での加熱が必要であり、シリコンウェハー等の基板のそりの原因となる残留応力が生じるという問題を有することを本発明者らは見出した。
【0008】
さらに、特許文献8に記載のポリマレインイミド化合物は可溶性イミドオリゴマーとなっているため、これを含有する特許文献9に記載の樹脂組成物は比較的低温で硬化させることが可能である。しかしながら、特許文献9に記載の樹脂組成物を用いると、シリコンウェハーやチップ上に形成されているSiN膜やSiO膜等の無機表面保護膜(パッシベーション膜)や導電性の金属製配線材料(銅等)との密着性が著しく低下するという問題や、微細なパターン形成が困難であるという問題を有することを本発明者らは見出した。また、密着性を向上させる方法として、露光量を増加させることで光重合による架橋反応の効率を向上せしめる方法が挙げられるが、特許文献8に記載のポリマレインイミド化合物は通常光重合性化合物として用いられているアクリル化合物等と比較して非常に多くの露光量を必要とするため、半導体製造工程において生産性の低下をひきおこすという問題を有することを本発明者らは見出した。さらに、硬化後の膜内における残留応力を低下させたり、パターニング性能を向上させる方法として、膜厚を薄くするという方法が挙げられるが、膜厚を薄くすると本来の半導体素子用保護膜や絶縁膜としての機能が損なわれてしまうという問題を有することを本発明者らは見出した。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、比較的低露光量での微細なパターン形成が可能であり、従来のような高温での熱硬化を必要とせず、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物、それを用いた硬化物及び半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、感光性樹脂組成物において、特定のビスマレイミド化合物、光重合開始剤、及び特定のケイ素化合物とを組み合わせて用いることにより、比較的低露光量での微細なパターン形成が可能となり、また、熱硬化を必要とせず、必要に応じて熱硬化せしめる場合であっても従来のような高温での熱硬化を必要としないことを見出した。さらに、このような感光性樹脂組成物を用いることにより得られる硬化物は、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れており、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜等として特に好適に用いることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物、(II)光重合開始剤、及び(III)ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有するケイ素化合物を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物としては、前記(I)ビスマレイミド化合物が、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)と、テトラカルボン酸二無水物と、マレイン酸無水物とを反応させて得られたビスマレイミド化合物、又は、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)と、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)以外の有機ジアミン(B)と、テトラカルボン酸二無水物と、マレイン酸無水物とを反応させて得られたビスマレイミド化合物であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の感光性樹脂組成物としては、前記(I)ビスマレイミド化合物が、下記一般式(1):
【0014】
【化1】

【0015】
[式(1)中、Rは、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)を示し、Rは、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)を示し、Rは、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)、及びダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ4価の有機基を示し、mは1〜30の整数であり、nは0〜30の整数であり、mが2以上の場合には複数あるR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合には複数あるR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で表わされるビスマレイミド化合物であることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物としては、前記(II)光重合開始剤が、オキシム構造及びチオキサントン構造からなる群から選択される少なくともいずれか1種の構造を有する化合物であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の感光性樹脂組成物としては、前記(III)ケイ素化合物の含有量が、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して0.1〜3質量部であることが好ましい。さらに、本発明の感光性樹脂組成物としては、前記(II)光重合開始剤の含有量が、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の感光性樹脂組成物としては、露光波長365nm、露光量300〜2000mJ/cmで露光後の露光部の残膜率が90%以上となることが好ましく、また、硬化後の引張弾性率が2GPa以下となることが好ましく、さらに、硬化温度が60〜230℃であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の硬化物は、上記本発明の感光性樹脂組成物を光硬化又は光熱硬化させて得られるものであることを特徴とするものである。また、本発明の半導体素子は、上記本発明の硬化物を表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜からなる群から選択される少なくとも1種として備えることを特徴とするものである。
【0020】
なお、本発明の感光性樹脂組成物によって前記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従来のマレイミド化合物は、一般に、光重合反応においては2量化反応が主として進行するため、他の光重合性化合物であるアクリル化合物と比較すると架橋反応の効率が小さい傾向にある。このため、光重合による架橋構造を十分に形成せしめるためには非常に多くの露光量が必要であると本発明者らは推察する。また、従来、マレイミド化合物は、化合物自身の光反応が310nm以下の波長でしか進行しないこと、ラジカルによる連鎖的な重合を起こしにくいこと等の理由により、主に熱重合性の化合物として用いられていた。これに対して、本発明に係る特定のビスマレイミド化合物はダイマー酸に由来する構造を含む柔軟な骨格を持つ構造であるため、このようなビスマレイミド化合物とラジカルを発生させる光重合開始剤と特定のケイ素化合物とを組み合わせることにより、マレイミド基同士が隣接しやすく且つ架橋反応の効率が向上する。従って、本発明の感光性樹脂組成物によれば、比較的低露光量での微細なパターン形成が可能となり、従来のような高温での熱硬化を必要とせず、さらに、引張弾性率が十分に小さく被着体との密着性に優れた硬化物を得ることができると本発明者らは推察する。
【0021】
また、特許文献8に記載のポリマレインイミド化合物のようなマレイミド化合物においては、アミド酸構造があらかじめ閉環されており、その分子中に極性基がほとんど存在しないため、SiN膜やSiO膜等の無機表面保護膜や銅等の金属製配線材料との密着性(接着性)が著しく低下すると本発明者らは推察する。これに対して、本発明の感光性樹脂組成物においては、特定のビスマレイミド化合物と光重合開始剤に、特定のケイ素化合物、すなわち、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有するケイ素化合物を組み合わせて用いることにより、ケイ素原子に結合したアルコキシ基が加水分解されて生成するシラノール基によって無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性(接着性)が発揮されるため、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れた硬化物を得ることができると本発明者らは推察する。さらに、本発明に係るケイ素化合物がエポキシ基や(メタ)アクリル基といった反応性のある有機基をさらに有する場合には、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物と無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性がさらに向上すると本発明者らは推察する。
【0022】
このように、本発明の感光性樹脂組成物により得られる硬化物は、引張弾性率が十分に小さいことによって被着体と十分に密着できることに加えて、特定のケイ素化合物が含有されることによって無機表面保護膜や金属製配線材料との相互作用も生じるため、被着体、特に、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れるものと本発明者らは推察する。
【0023】
また、本発明の感光性樹脂組成物においては、365nmにおける吸収が少ないため、膜厚が10μm以上であっても、半導体の保護膜等の製造工程に標準的に用いられている縮小投影露光機用いて微細なパターンを形成せしめることが可能であると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低露光量での微細なパターン形成が可能であり、従来のような高温での熱硬化を必要とせず、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物、それを用いた硬化物及び半導体素子を提供することが可能となる。
【0025】
また、本発明の感光性樹脂組成物によれば、熱硬化を必要とせず、必要に応じて熱硬化せしめる場合であっても従来より比較的低温での熱硬化が可能であり、引張弾性率が十分に小さい硬化物を得ることができるため、硬化後の膜内に生じる残留応力を十分に小さくすることができ、シリコンウェハー等の基板のそりを十分に抑制することができる。さらに、本発明の感光性樹脂組成物によれば、10μm以上の膜厚であっても、310〜436nm(好ましくは365nm)の光照射によって微細なパターン(好ましくは開口径(Via径)のアスペクト比0.3以上、より好ましくは0.5以上)を形成することが可能となる。なお、本発明において、前記開口径(Via径)のアスペクト比とは、次式:アスペクト比=(硬化膜の膜厚)/(硬化膜において形成された貫通孔の開口径)で表わされる値である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物は、(I)ビスマレイミド化合物、(II)光重合開始剤、及び(III)ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有するケイ素化合物を含有することを特徴とするものである。
【0028】
<(I)ビスマレイミド化合物>
本発明に係る(I)ビスマレイミド化合物は、マレイミド基を2個有する化合物であり、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)と環状イミド結合とを有する。このような(I)ビスマレイミド化合物は、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)と、テトラカルボン酸二無水物と、マレイン酸無水物とを反応させることにより得ることができる。
【0029】
前記ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とは、ダイマー酸に含有されるジカルボン酸から2つのカルボキシル基を除いた2価の残基を指す。本発明において、このようなダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)は、ダイマー酸に含有されるジカルボン酸が有する2つのカルボキシル基をアミノ基に置換することにより得られるジアミン(A)と、後述するテトラカルボン酸二無水物及びマレイン酸無水物とを反応させてイミド結合を形成させることによりビスマレイミド化合物中に導入することができる。
【0030】
本発明において、前記ダイマー酸とは、リノール酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和カルボン酸の不飽和結合を2量化させ、その後に蒸留精製して得られるものであり、炭素数36個のジカルボン酸を主として含有しており、通常、炭素数54個のトリカルボン酸を約5質量%を限度として、モノカルボン酸を約5質量%を限度としてそれぞれ含んでいる。本発明に係るダイマー酸から誘導されたジアミン(A)(以下、場合によりダイマー酸由来ジアミン(A)という)は、前記ダイマー酸に含有される各ジカルボン酸が有する2つのカルボキシル基をアミノ基に置換することにより得られるジアミンであり、通常は混合物であり、本発明において、このようなダイマー酸由来ジアミン(A)としては、例えば、[3,4−ビス(1−アミノヘプチル)6−ヘキシル−5−(1−オクテニル)]シクロヘキサン等のジアミンや、これらのジアミンにさらに水素添加することで不飽和結合を飽和させたジアミンが含有されているものが挙げられる。
【0031】
このようなダイマー酸由来ジアミン(A)を用いてビスマレイミド化合物中に導入される、本発明に係るダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)としては、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)から2つのアミノ基を除いた残基であることが好ましい。また、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)を用いて本発明に係るビスマレイミド化合物を得る際には、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)として1種を単独で用いても組成の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、このようなダイマー酸由来ジアミン(A)としては、例えば、「PRIAMINE1074」(クローダジャパン株式会社製)等の市販品を用いてもよい。
【0032】
本発明において、環状イミド結合とは、2つのイミド結合が環状に連結された結合を指す。本発明において、このような環状イミド結合は、テトラカルボン酸二無水物と前述のダイマー酸由来ジアミン(A)及び後述の有機ジアミン(B)とを反応させてイミド結合を形成させることによりビスマレイミド化合物中に導入することができる。
【0033】
前記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,2’,3,3’−、2,3,3’,4’−又は3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−、1,2,4,5−、1,4,5,8−、1,2,6,7−又は1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−又は2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−(又は1,4,5,8−)テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−(又は2,3,6,7−)テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−、2,2’,3,3’−又は2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’−、2,3,3’’,4’’−又は2,2’’,3,3’’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)−プロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−又は3.4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,3,8,9−、3,4,9,10−、4,5,10,11−又は5,6,11,12−ペリレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−、1,2,6,7−又は1,2,9,10−フェナンスレン−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物が挙げられる。これらの中でも、365nmにおける光透過性に優れた光硬化性樹脂組成物が得られ、また、耐熱性に優れた硬化物が得られるという観点から、前記テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物であることが好ましい。また、これらのテトラカルボン酸二無水物を用いて本発明に係るビスマレイミド化合物を得る際には、これらのテトラカルボン酸二無水物のうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
さらに、本発明に係る(I)ビスマレイミド化合物としては、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)と、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)以外の有機ジアミン(B)と、前記テトラカルボン酸二無水物と、前記マレイン酸無水物とを反応させて得られたビスマレイミド化合物であってもよい。前記ダイマー酸由来ジアミン(A)以外の有機ジアミン(B)を共重合せしめることにより、得られる硬化物の引張弾性率をさらに低下させるというような必要に応じた要求物性の制御が可能となる。
【0035】
前記ダイマー酸由来ジアミン(A)以外の有機ジアミン(B)(以下、場合により単に有機ジアミン(B)という)とは、本発明において、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)に含まれるジアミン以外のジアミンを指す。このような有機ジアミン(B)としては、特に制限されず、例えば、1,6−ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ジアミン;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン;3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン;4,4−ジアミノベンゾフェノン;4,4−ジアミノジフェニルスルフィド;2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。これらの中でも、引張弾性率がより低い硬化物が得られるという観点からは、1,6−ヘキサメチレンジアミン等の炭素数6〜12個の脂肪族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン等のジアミノシクロヘキサン;2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族骨格中に炭素数1〜4個の脂肪族構造を有する芳香族ジアミンであることがより好ましい。また、これらの有機ジアミン(B)を用いて本発明に係るビスマレイミド化合物を得る際には、これらの有機ジアミン(B)のうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記ダイマー酸由来ジアミン(A)と、前記テトラカルボン酸二無水物と、前記マレイン酸無水物とを反応させる方法、又は、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)と、前記有機ジアミン(B)と、前記テトラカルボン酸二無水物と、前記マレイン酸無水物とを反応させる方法としては、特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができ、例えば、先ず、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)と、前記テトラカルボン酸二無水物と、必要に応じて前記有機ジアミン(B)とを、トルエン、キシレン、テトラリン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒又はこれらの混合溶媒等の溶媒中で室温(23℃程度)において30〜60分間攪拌することでポリアミド酸を合成し、次いで、得られたポリアミド酸にマレイン酸を加えて室温(23℃程度)において30〜60分間攪拌することで両末端にマレイン酸が付加したポリアミド酸を合成する。このポリアミド酸にトルエン等の水と共沸する溶媒をさらに加え、イミド化に伴って生成する水を除去しながら温度100〜160℃において3〜6時間還流することで目的とするビスマレイミド化合物を得ることができる。また、このような方法においては、ピリジン等の触媒をさらに添加してもよい。
【0037】
前記反応における原料の混合比としては、(ダイマー酸由来ジアミン(A)に含まれる全ジアミン及び有機ジアミン(B)の合計モル数):(テトラカルボン酸二無水物の合計モル数+マレイン酸無水物のモル数の1/2)が1:1となるようにすることが好ましい。また、前記有機ジアミン(B)を用いる場合には、ダイマー酸に由来する柔軟性が発現し、より低弾性率の硬化物が得られる傾向にあるという観点から、(有機ジアミン(B)のモル数)/(ダイマー酸由来ジアミン(A)に含まれる全ジアミンのモル数)が1以下となることが好ましく、0.4以下となることがより好ましい。なお、前記有機ジアミン(B)を用いる場合には、ダイマー酸由来ジアミン(A)及びテトラカルボン酸二無水物からなるアミド酸単位と、有機ジアミン(B)及びテトラカルボン酸二無水物からなるアミド酸単位との重合形態はランダム重合であってもブロック重合であってもよい。
【0038】
このようにして得られる(I)ビスマレイミド化合物としては、下記一般式(1):
【0039】
【化2】

【0040】
で表わされるビスマレイミド化合物であることが好ましい。前記式(1)中、Rは、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)を示し、Rは、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)を示し、Rは、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)、及びダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ4価の有機基を示す。
【0041】
前記式(1)中の前記ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)としては、前述のとおりである。また、本発明において、前記式(1)中のダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)とは、前記有機ジアミン(B)から2つのアミノ基を除いた2価の残基を指す。但し、同一化合物において、前記ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)と前記2価の有機基(b)とは同一ではない。さらに、前記式(1)中の前記4価の有機基とは、前記テトラカルボン酸二無水物から−CO−O−CO−で表わされる基を2つ除いた4価の残基を指す。
【0042】
前記式(1)において、mは、前記ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)を含む繰り返し単位(以下、場合によりダイマー酸由来構造という)の数であり、1〜30の整数を示す。mの値が前記上限を超える場合には溶媒への溶解性が低下し、特に後述する現像時の現像液への溶解性が低下する。また、mの値としては、現像時の現像液への溶解性が好適になるという観点から、3〜10であることが特に好ましい。
【0043】
前記式(1)において、nは、前記2価の有機基(b)を含む繰り返し単位(以下、場合により有機ジアミン由来構造という)の数であり、0〜30の整数を示す。nの値が前記上限を超える場合には得られる硬化物の柔軟性が悪化し、硬くもろい樹脂となる。また、nの値としては、低弾性率の硬化物を得ることができる傾向にあるという観点から、0〜10であることが特に好ましい。
【0044】
さらに、前記式(1)中のmが2以上の場合にはR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、前記式(1)中のnが2以上の場合にはR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。さらに、前記式(1)で表わされるビスマレイミド化合物としては、前記ダイマー酸由来構造及び前記有機ジアミン由来構造がランダムであってもブロックであってもよい。
【0045】
また、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)、前記マレイン酸無水物、前記テトラカルボン酸二無水物及び必要に応じて前記有機ジアミン(B)から本発明に係るビスマレイミド化合物を得る場合において、反応率が100%であるときには、前記n及びmは、前記ダイマー酸由来ジアミン(A)に含まれる全ジアミン、前記有機ジアミン(B)、前記マレイン酸無水物及び前記テトラカルボン酸二無水物の混合モル比により表すことができる。すなわち、(m+n):(m+n+2)は(ダイマー酸由来ジアミン(A)に含まれる全ジアミン及び有機ジアミン(B)の合計モル数):(マレイン酸無水物及びテトラカルボン酸二無水物の合計モル数)で表わされ、m:nは(ダイマー酸由来ジアミン(A)に含まれる全ジアミンのモル数):(有機ジアミン(B)のモル数)で表わされ、2:(m+n)は(マレイン酸無水物のモル数):(テトラカルボン酸二無水物のモル数)で表わされる。
【0046】
さらに、本発明に係る(I)ビスマレイミド化合物において、前記mとnとの和(m+n)としては、より低弾性率の硬化物が得られる傾向にあるという観点から、2〜30であることが好ましい。また、前記mとnとの比率(n/m)としては、ダイマー酸に由来する柔軟性が発現し、より低弾性率の硬化物が得られる傾向にあるという観点から、1以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明に係る(I)ビスマレイミド化合物としては、市販の化合物を適宜用いてもよく、例えば、「BMI−3000」(DESIGNER MOLECURES Inc.製);ダイマージアミン、ピロメリット酸二無水物及びマレイン酸無水物より合成されたもの;m+nは4〜7)を好適に用いることができる。また、本発明に係る(I)ビスマレイミド化合物としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
<(II)光重合開始剤>
本発明に係る(II)光重合開始剤としては、特に制限されず、従来用いられているものを適宜採用することができ、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、チオキサトン、2−クロロチオキサソン、2−メチルチオキサトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2,4−ジメチルチオキサントン等の光重合開始剤が挙げられる。このような(II)光重合開始剤としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
これらの中でも、本発明に係る(II)光重合開始剤としては、半導体の保護膜等の製造工程に標準的に用いられている縮小投影露光機(ステッパー;光源波長:365nm、436nm)を用いて微細なパターン形成ができるという観点から、露光波長310〜436nm(より好ましくは365nm)において効率よくラジカルを発生するものを用いることが好ましい。また、マレイミド基は一般にラジカルによる単独重合を行わず、主に光重合開始剤から発生したラジカルとの反応によりビスマレイミド化合物の2量化反応が進行して架橋構造が形成される。このため、ビスマレイミド化合物は一般に光重合性化合物として用いられるアクリル化合物等と比較して見かけ上反応性が乏しいと本発明者らは推察する。従って、より効率的にラジカルを発生させることができ、露光波長310〜436nm(より好ましくは365nm)における反応性が高くなるという観点から、本発明に係る(II)光重合開始剤としては、オキシム構造及びチオキサントン構造からなる群から選択される少なくともいずれか1種の構造を有する化合物であることがさらに好ましい。
【0050】
このような(II)光重合開始剤としては、例えば、オキシム構造を有する1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASFジャパン製、「IRGACURE OXE−01」)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE−02」)、チオキサントン構造を有する2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、「DETX−S」)が挙げられる。このような光によるラジカル生成能力が高い光重合開始剤は、通常のアクリル化合物等の光重合に用いる場合には反応性が高すぎて反応の制御が難しくなる傾向にあるが、本発明においては好適に用いることができる。
【0051】
<(III)ケイ素化合物>
本発明に係る(III)ケイ素化合物は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有する。本発明においては、このような(III)ケイ素化合物を前記(I)ビスマレイミド化合物及び(II)光重合開始剤と組み合わせて用いることにより、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜といった無機表面保護膜や銅等の金属製配線材料との密着性(接着性)に優れた硬化物を得ることができ、さらに、比較的低露光量においても微細なパターン形成が可能となる。
【0052】
本発明に係る(III)ケイ素化合物において、前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基が4未満である場合には、低露光量での微細なパターン形成が困難となり、得られる硬化物における無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性が低下する。また、本発明に係る(III)ケイ素化合物としては、前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基が4〜40個であることが好ましく、6〜30個であることがより好ましい。前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数が前記下限未満の場合には、得られる硬化物における無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性が低下する傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、溶媒への溶解性が低下する傾向にあり、現像時に開口箇所において残渣が残存するという問題が発生するおそれがある。
【0053】
また、本発明に係る(III)ケイ素化合物としては、得られる硬化物における無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性がさらに向上するという観点から、メチル基、エチル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基等の有機基をさらに有することが好ましい。また、このような有機基を有する場合、その1分子あたりの平均含有量は2〜30個であることが好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合にはさらなる密着性の向上が期待できない傾向にあり、他方、前記上限を超えるものは合成が困難となる傾向にある。
【0054】
このような(III)ケイ素化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表わされる、ケイ素原子にアルコキシ基及び有機基が結合した1価のシリル基、
【0055】
【化3】

【0056】
下記一般式(3)で表わされる、ケイ素原子にアルコキシ基及び有機基が結合した2価のシリル基からなる群から選択される少なくとも1種のシリル基を、ケイ素原子に結合したアルコキシ基が4個以上となるように有するケイ素化合物が挙げられる。
【0057】
【化4】

【0058】
また、このようなケイ素化合物としては、さらに、下記一般式(4)で表わされる、ケイ素原子に有機基が結合した2価のシリル基を有していてもよい。
【0059】
【化5】

【0060】
前記式(2)〜(4)中、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ1価の有機基を示す。前記1価の有機基としては、メチル基、エチル基、アクリル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基が挙げられ、これらの中でも、ビスマレイミド化合物との反応又は相互作用により、得られる硬化物において無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性がさらに向上する傾向にあるという観点から、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基がより好ましく、エポキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基がさらに好ましい。また、前記式(2)〜(4)中、Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれメチル基又はエチル基を示す。さらに、前記式(2)中、pは0〜2の整数を示す。本発明において、ケイ素原子に結合したアルコキシ基が加水分解されて生じるシラノール基及び前記1価の有機基がビスマレイミド化合物と反応又は相互作用することにより、得られる硬化物において無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性がさらに向上するという観点から、前記pとしては1〜2の整数であることが好ましい。
【0061】
このようなケイ素化合物は、例えば、前記Rとして挙げた1価の有機基を有するトリアルコキシシラン化合物(SiR(OR)又はジアルコキシシラン化合物(Si(R(OR)のアルコキシ基の一部又は全部を加水分解した化合物を縮合させることにより得ることができる。また、本発明に係る(III)ケイ素化合物は、前記Rとして挙げた1価の有機基のうち、ビニル基、(メタ)アクリル基等の不飽和結合を有する有機基を有するトリアルコキシシラン化合物(SiR(OR)、ジアルコキシシラン化合物(Si(R(OR)、モノアルコキシシラン化合物(Si(R(OR))の不飽和結合をラジカル重合させることによっても得ることができる。
【0062】
このような(III)ケイ素化合物としては、より具体的には、例えば、下記一般式(5)で表わされるアルコキシシランオリゴマーが挙げられる。本発明において、得られる硬化物において無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性がより向上する傾向にあるという観点からは、前記(III)ケイ素化合物として、このようなアルコキシシランオリゴマーのようにシロキサン骨格に4個以上のアルコキシ基及びエポキシ基や(メタ)アクリル基といった有機基を有するケイ素化合物や、主鎖にアルキレン骨格を含み置換基として4個以上のアルコキシ基及びエポキシ基や(メタ)アクリル基といった有機基を有するケイ素化合物を用いることが好ましい。
【0063】
【化6】

【0064】
前記式(5)中、R及びRは、前記式(2)〜(4)中のR及びRとそれぞれ同義であり、jはアルコキシシランモノマーの平均重合度であり、2以上の整数を示す。本発明において、前記アルコキシシランオリゴマーは、アルコキシシラン化合物の−Si−O−で表わされるシロキサン結合による低次重合体であり、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を少なくとも4個以上有する。このようなアルコキシシランオリゴマーは、例えば、前述のアルコキシシラン化合物の加水分解において、酸触媒の使用の有無や使用する場合の使用量、反応系に存在させる加水分解用の水の量、反応温度、反応時間といった反応条件を調節することにより重合度を制御して得ることができる。
【0065】
本発明において、本発明に係る(III)ケイ素化合物が前記アルコキシシランオリゴマーである場合には、前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数が1分子あたりの平均値で4個以上(前記式(5)中、jが2以上)であることが好ましく、4〜32個(前記式(5)中、jが2〜30)であることがより好ましく、6〜22個(前記式(5)中、jが4〜20)であることがさらに好ましい。前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数の平均値が前記下限未満である場合には、得られる硬化物において無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、溶媒に不溶化したりビスマレイミド化合物との相溶性が悪くなって均質な硬化物を得ることが困難となる傾向にある。
【0066】
なお、本発明において、前記(III)ケイ素化合物の分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができ、前記(III)ケイ素化合物におけるケイ素原子に結合したアルコキシ基の数は、ケイ素化合物の核磁気共鳴(NMR)法等を用いた構造解析により求めることができる。
【0067】
このような本発明に係る(III)ケイ素原子に結合したアルコキシ基が4個以上のケイ素化合物を従来のポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体を含有する感光性樹脂組成物に用いると、ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体における酸性基の影響によってケイ素化合物に由来する不溶物が生成しやすくなる傾向にあるが、本発明においては不溶物が生成しにくく、好適に用いることができる。
【0068】
本発明に係る(III)ケイ素化合物としては、市販のものを適宜用いてもよく、例えば、信越化学化学工業株式会社製の「KR−513」(ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数の平均値:1分子あたり4個以上、有機基:アクリル基)、「X−40−2655A」(ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数の平均値:1分子あたり4個以上、有機基:メタクリル基)、「X−40−1059A」(ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数の平均値:1分子あたり4個以上、有機基:エポキシ基)、「X−12−984S」(ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数:1分子あたり4個以上、有機基:エポキシ基)を用いてもよい。また、本発明に係る(III)ケイ素化合物としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は前記(I)ビスマレイミド化合物、前記(II)光重合開始剤、及び前記(III)ケイ素化合物を含有する。本発明の感光性樹脂組成物においては、前記(II)光重合開始剤の含有量が、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、露光時において、光照射による2量化反応が十分に進行せず、現像時に重合膜が無機表面保護膜から剥離する傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、反応が進行しすぎて未露光部の重合反応が進行してしまうため、微細なパターンを形成することが困難となる傾向にある。
【0070】
また、本発明の感光性樹脂組成物においては、前記(III)ケイ素化合物の含有量が、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して0.1〜3質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着力(接着力)が低下する傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、硬化物内にケイ素化合物の凝集により異物が生じる傾向にある。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物としては、前記(I)ビスマレイミド化合物、前記(II)光重合開始剤、及び前記(III)ケイ素化合物を含有していればよく、特に制限されないが、前記組成物が有機溶剤により溶解されているものであることが好ましい。前記有機溶剤としては、トルエン、キシレン、テトラリン等の芳香族溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類溶媒;テトラヒドロキシフラン等の環状エーテル類溶媒;安息香酸メチル等の有機溶媒が挙げられ、これらの有機溶剤としては1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、これらの有機溶剤としては、ビスマレイミド化合物が析出しない範囲内で、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のビスマレイミド化合物が溶解しにくい溶媒を含有していてもよい。前記有機溶剤に前記(I)ビスマレイミド化合物、前記(II)光重合開始剤、及び前記(III)ケイ素化合物を溶解させる際の濃度としては、好適な粘度になるという観点から、感光性樹脂組成物の固形分濃度として20〜70質量%であることが好ましい。
【0072】
また、本発明の感光性樹脂組成物としては、さらに、増感剤を含有していてもよい。前記増感剤としては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。本発明において前記増感剤を含有せしめる場合、その含有量としては、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましく、0.05〜0.5質量部であることがより好ましい。このような増感剤を含有せしめることにより、感光性樹脂組成物の光に対する感度をより高めることができる。
【0073】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物としては、さらに、多官能重合性化合物を含有していてもよい。前記多官能重合性化合物とは、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基等の重合性官能基を複数有する化合物を指す。前記多官能重合性化合物を含有せしめることにより、感光性樹脂組成物の光に対する感度をより高めることができる。前記多官能重合性化合物としては、光重合による架橋反応をより起こしやすいという観点から、多官能アクリレートが好ましい。前記多官能アクリレートとしては、水添ジシクロペンタジエニルジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリエチレングリコール600ジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、ビス(アクリロキシエトキシ)テトラブロモビスフェノールA、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル等が挙げられる。
【0074】
また、前記多官能重合性化合物を含有せしめる場合、その含有量としては、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましい。前記多官能重合性化合物の含有量が前記上限を超える場合には、多官能重合性化合物単独での光重合による架橋反応が進行し、得られる硬化物の引張弾性率が高くなる傾向にある。また、多官能重合性化合物はラジカルに対して反応性が高いため、本発明において好適に用いられるオキシム構造及びチオキサントン構造からなる群から選択される少なくともいずれか1種の構造を有する光重合開始剤のように反応性の高い光重合開始剤を用いた場合には、反応の制御をすることが困難になる傾向にある。なお、一般に、多官能重合性化合物を加えると得られる硬化物の引張弾性率が高くなり、柔軟性が損なわれる傾向にあるが、本発明に係る(I)ビスマレイミド化合物は多官能重合性化合物を加えても得られる硬化物において引張弾性率が高くなりにくく、柔軟性が損なわれにくい。これは、本発明に係る(I)ビスマレイミド化合物が両末端にのみ反応性のマレイミド基を有しており、分子鎖中に架橋性の反応基を持たないためと本発明者らは推察する。また、本発明の感光性樹脂組成物としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、さらにレベリング剤、消泡剤等を含有していてもよい。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物は、通常知られている使用方法で使用することができる。例えば、先ず、前記有機溶媒によって粘度を調整した本発明の感光性樹脂組成物を支持体に塗布した後、50〜180℃、好ましくは80〜140℃において5〜30分間乾燥せしめることにより、フィルム状感光性樹脂組成物とすることができる。前記支持体としては、例えば、シリコンウェハー、セラミック基板、リジット基板、フレキシブル基板、及びシリコンウェハー上にSiN膜やSiO膜等の無機表面保護膜が形成されたものが挙げられる。本発明によれば、支持体として前記無機表面保護膜が形成されたシリコンウェハーを用いても、前記無機表面保護膜との密着性(接着性)に優れた硬化物を得ることができる。
【0076】
前記塗布方法としては、特に制限されないが、スピンコーター、スリットコーター、ロールコーター等を用いた塗布や、スクリーン印刷等が挙げられる。これらの中でも、例えば、シリコンウェハーに対する塗布方法としては、スピンコーターを用いた塗布方法を採用することが好ましい。また、前記フィルム状感光性樹脂組成物の膜厚としては、前記感光性樹脂組成物の濃度や、塗布厚みを調整することにより任意に調整することができ、特に制限されないが、例えば、半導体素子用保護膜や層間絶縁膜とする場合には、乾燥後の膜厚が3〜50μmとなることが好ましく、5〜30μmとなることがより好ましく、5〜20μmとなることがさらに好ましい。前記膜厚が前記下限未満である場合には、膜の下にある素子や回路を十分に保護できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、微細なパターン形成が困難になる傾向にある。本発明においては10μm以上(好ましくは10〜20μm)の膜厚であっても、微細なパターン形成が可能となり、後述の露光及び現像により形成される貫通孔の開口径(Via径)のアスペクト比が0.3以上(より好ましくは0.5以上)となるようなパターンを形成することが可能となる。
【0077】
次いで、このようにして得られたフィルム状感光性樹脂組成物に、所定のパターン形状を有するマスクを適用して露光を行い、本発明の感光性樹脂組成物を光重合せしめる。前記露光方法としては、コンタクト露光又は縮小投影露光が挙げられる。露光波長としては200〜500nmの紫外線〜可視光であることが好ましく、標準的に用いられている縮小投影露光機(ステッパー)を用いることができ、且つ、微細なパターン形成ができるという観点から、310〜436nmであることがより好ましく、365nmであることがさらに好ましい。露光量としては、特に制限されないが、本発明においては、比較的低露光量であっても微細なパターン形成が可能であり、多くの露光量を必要としないため、2000mJ/cm以下であることが好ましく、300〜2000mJ/cmであることがより好ましい。
【0078】
次いで、前記露光後のフィルム状感光性樹脂組成物の未露光部を現像液で溶解除去する現像を行うことにより、所定のパターンを有する重合膜(重合物)を得ることができる。すなわち、露光部においては、光重合開始剤から光照射によって発生したラジカルがマレイミド基と反応し、主に2量化反応によって前記(I)ビスマレイミド化合物間が架橋され、現像液に対して不溶化する。これに対して、未露光部は現像液に溶解するため、露光部と未露光部との現像液に対する溶解度差を利用することにより所定の開口径(Via径)の貫通孔等のパターンを有する重合膜を得ることができる。前記現像液としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒;テトラヒドロキシフラン等の環状エーテル系溶媒:及びこれらの混合溶媒が挙げられる。また、前記現像液としては、現像時の溶解性を調整するためにメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒をさらに含有していてもよい。前記現像方法としては、スプレー法、パドル法、ディップ法等の方法が挙げられる。
【0079】
また、前記現像により得られた所定のパターンを有する重合膜をシクロペンタノン又はシクロペンタノンとエタノールとの混合溶媒等の有機溶剤でさらにリンスすることが好ましい。前記現像後における重合膜としては、表面荒れの発生が抑制され、また、寸法設計が容易になるという観点から、残膜率が90%以上となっていることが好ましい。本発明において、前記残膜率とは、乾燥後(露光前)のフィルム状感光性樹脂組成物の膜厚に対する、現像後の重合膜の膜厚の比のことを指す。
【0080】
次いで、前記現像により得られた所定のパターンを有する重合膜を加熱して硬化せしめることにより、所定のパターンを有する硬化膜(硬化物)を得ることができる。前記加熱温度(硬化温度)としては、60〜230℃であることが好ましく、150〜230℃であることがより好ましい。また、前記加熱時間としては、30〜120分間であることが好ましい。なお、前記硬化温度とは、本発明において、前記露光時に未反応で残っているマレイミド基を熱反応によって熱硬化せしめるのに必要な温度のことを指す。このような熱硬化反応により前述の光重合において未反応であったマレイミド基を架橋せしめるが、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合には、従来のポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体のように硬化温度を高くする必要がない。これは、本発明に係る(I)ビスマレイミド化合物においては脱水閉環反応が不要である。
【0081】
このように、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、微細なパターンを有する硬化膜を得ることができる。前記パターンとしては、形成された貫通孔の開口径(Via径)のアスペクト比が0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。なお、本発明において、前記開口径は、光学顕微鏡(ニコン社製、「ECLIPSE ME600L)又は走査型電子顕微鏡(SEM、日立社製、「S−3000N」)を用いて測定することにより求めることができる。
【0082】
また、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた硬化膜においては、引張弾性率が2GPa以下となり、より好ましくは1GPa以下、さらに好ましくは0.05〜0.8GPaとなる。このように本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた硬化物は前記硬化温度が十分に低く、且つ、引張弾性率が十分に低いため、シリコンウェハー等の基板のそりが発生せず、その後の工程におけるハンドリング性に優れたものとなる。なお、本発明において、前記引張弾性率は、オリエンテック社製「テンシロンRTA−250」を用い、温度23℃、引張速度5mm/minの条件で測定することにより求めることができる。
【0083】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた硬化膜においては、割れを抑制することができるという観点から、破断伸度が20〜200%であることが好ましい。なお、本発明において、前記破断伸度は、オリエンテック社製「テンシロンRTA−250」を用い、温度23℃、引張速度5mm/minの条件で測定することにより求めることができる。
【0084】
このように、本発明の感光性樹脂組成物によれば、従来より比較的低温での熱硬化及び低露光量での微細なパターン形成が可能であり、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜や金属製配線材料との密着性に優れた硬化物を得ることができる。また、熱硬化せしめる場合であっても従来より比較的低温での熱硬化が可能であり、引張弾性率が十分に小さい硬化膜を得ることができるため、硬化後の膜内に生じる残留応力を十分に小さくすることができ、シリコンウェハー等の基板のそりを十分に抑制することができる。さらに、本発明によれば、310〜436nm(好ましくは365nm)の露光波長、2000mJ/cm以下の低露光量においても微細なパターン形成が可能となり、貫通孔の開口径(Via径)のアスペクト比が0.3以上(より好ましくは0.5以上)となるようなパターンを形成することが可能となる。これは、本発明の感光性樹脂組成物においては365nmにおける吸収が少なく、マレイミド基の反応が主に2量化反応であるため、アクリル化合物のように連鎖反応よって未露光部まで重合が進行することが抑制されるためと本発明者らは推察する。
【0085】
このような本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた光硬化後又は光熱硬化(光硬化と熱硬化とを併用した硬化)後の硬化物としては、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜からなる群から選択される少なくとも1種の膜に好適に用いることができる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、このような膜において、10μm以上の膜厚が必要であり、且つ、貫通孔の開口径(Via径)のアスペクト比が0.3以上(より好ましくは0.5以上)となるようなパターニングが必要な場合においては特に有効である。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例におけるパターニング性能評価及び機械物性評価はそれぞれ以下のように行った。
【0087】
<パターニング性能評価>
[必要露光量測定]
先ず、シリコンウェハー上にSiN(窒化ケイ素)膜を0.5μm(5000Å)厚みに形成させたものを基材として用い、形成されたSiN膜上に各実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物をスピンコーターを用いて塗布後、温度100℃において10分間乾燥させ、前記SiN膜上にフィルム状感光性樹脂組成物を形成させた。乾燥後のフィルム状感光性樹脂組成物の膜厚は10μmとなるように感光性樹脂組成物の塗布厚みを調整した。次いで、形成されたフィルム状感光性樹脂組成物上にパターンを形成するためのマスク(所定の直径(Via径)を有する円が配置されたもの)を載せ、前記マスク上から高圧水銀灯を用い、波長365nmにて800〜3000mJ/cmの各露光量においてそれぞれ露光(コンタクト露光)を行った。
【0088】
次いで、現像液(シクロペンタノン:エタノール=85:15(重量比))を露光後のフィルム状感光性樹脂組成物上に全体が現像液に浸るまで滴下し、温度23℃、70rpmで80秒間のパドル現像を行った後、2000rpm、10秒間の条件で現像液を除去した。次いで、前記現像液を再度シリコンウェハー基板上に全体が現像液に浸るまで滴下し、温度23℃、70rpmで10秒間リンスした後、2000rpm、15秒間の条件で現像液を除去して所定のパターンを有する重合膜を得た。
【0089】
次いで、現像後におけるフィルム状感光性樹脂組成物(重合膜)の膜厚を測定し、乾燥後のフィルム状感光性樹脂組成物の膜厚(10μm)に対する現像後の重合膜の膜厚の比(残膜率)が90%以上となっているものに要した露光量を必要露光量(mJ/cm)とした。
【0090】
[開口径(Via径)測定]
上記必要露光量測定において各必要露光量で得られた現像後の重合膜を温度175℃において60分間加熱し、所定のパターンを有する硬化膜を得た。得られた硬化膜において形成されたパターンは光学顕微鏡(ニコン社製、「ECLIPSE ME600L」)又は走査型電子顕微鏡(SEM、日立社製、「S−3000N」)を用いて観察し、マスクにより形成されたパターン(Via)が底部まで開口しているもの(貫通孔)の径を開口径(Via径、μm)とし、次式:アスペクト比=(硬化膜の膜厚)/(貫通孔の開口径)から各開口径のアスペクト比を求めた。なお、前記アスペクト比が大きい程、微細なパターン形成がされているといえる。
【0091】
<機械物性評価>
先ず、厚み12μmの銅箔上に各実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物をスピンコーターを用いて塗布後、温度100℃において10分間乾燥させ、銅箔上にフィルム状感光性樹脂組成物を形成させた。乾燥後のフィルム状感光性樹脂組成物の膜厚は10μmとなるように感光性樹脂組成物の塗布厚みを調整した。このフィルム状感光性樹脂組成物に対して高圧水銀灯を用い、波長365nm、露光量1500mJ/cmにて露光を行い、次いで、温度175℃において60分間加熱して硬化させた後、銅箔をエッチングによって除去することにより、硬化膜を得た。
【0092】
次いで、得られた硬化膜を10mm長さに切断し、温度23℃において、オリエンテック社製「テンシロンRTA−250」を用い、引張速度5mm/minの条件で破断伸度(%)及び引張弾性率(MPa)を測定して求めた。
【0093】
<密着性(接着性)評価>
先ず、3mm角のマスクを用い、露光量を1500mJ/cmとしたこと以外は上記必要露光量測定と同様にして、シリコンウェハー上に形成されたSiN膜上に3mm角の重合膜を形成させた。次いで、形成された重合膜(層間膜)上にダイアタッチフィルム(新日鐵化学製、「NEX−130SX」)付の2mm角のシリコンダイ(厚み750μm)を100℃において5秒間仮圧着させ、さらに120℃において1時間硬化させて接着せしめ、シリコンウェハー/SiN膜/層間膜(硬化物)/ダイアタッチフィルム/シリコンダイの順に積層された評価用サンプルを得た。このサンプルについて、ダイシェア試験機(DAGE社製、「4000PXY」)を用いてダイシェア強度(剥離強度)を測定し、さらに、破壊が起きた箇所(破壊モード)を確認して密着性を評価した。
【0094】
また、SiN膜をSiO(酸化ケイ素)膜としたこと以外は上記と同様にして密着性を評価した。さらに、SiN膜をCu(銅)スパッタ膜(約3μm厚)としたこと以外は上記と同様にして密着性を評価した。
【0095】
(実施例1)
先ず、(I)成分としてビスマレイミド化合物1(DESIGNER MOLECURES Inc.製、「BMI−3000」、固形分100%)100質量部、(II)成分として光重合開始剤1(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE−01」)1質量部、及び(III)成分としてケイ素化合物1(信越化学工業株式会社製、「X−40−2655A」)0.25質量部を、固形分濃度が50質量%となるように溶剤(キシレン)に添加し、攪拌機により十分に攪拌して固形分を溶解せしめた。次いで、この溶解液を1μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、不溶物を除去して感光性樹脂組成物を得た。
【0096】
得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量1500mJ/cmにおいて開口径20μm(アスペクト比0.5)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は93MPaであり、従来のポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂からなる感光性材料と比較して一桁小さいものであった。また、破断伸度も114%と十分なものであった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。
【0097】
(実施例2)
(II)成分として光重合開始剤2(BASFジャパン製、「IRGACURE OXE−02」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量800mJ/cmにおいて開口径30μm(アスペクト比0.3)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は90MPaであり、破断伸度は103%であった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。
【0098】
(実施例3)
(III)成分としてケイ素化合物2(信越化学工業株式会社製、「X−40−1059A」)を1質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量1500mJ/cmにおいて開口径20μm(アスペクト比0.5)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は95MPaであり、破断伸度は98%であった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。
【0099】
(実施例4)
(III)成分としてケイ素化合物3(信越化学工業株式会社製、「X−12−984S」)を0.5質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量1500mJ/cmにおいて開口径20μm(アスペクト比0.5)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は92MPaであり、破断伸度は101%であった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。さらに、得られた感光性樹脂組成物を用いて密着性評価を行った結果を表3に示す。
【0100】
(実施例5)
(II)成分として光重合開始剤3(日本化薬株式会社製、「DETX−S」)を用い、(III)成分としてケイ素化合物2を1質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量1500mJ/cmにおいて開口径25μm(アスペクト比0.4)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は89MPaであり、破断伸度は105%であった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。
【0101】
(実施例6)
(III)成分としてケイ素化合物4(信越化学工業株式会社製、「KR−513」)を1質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量1500mJ/cmにおいて開口径20μm(アスペクト比0.5)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は103MPaであり、破断伸度は95%であった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。
【0102】
(実施例7)
(III)成分としてケイ素化合物2を1質量部用い、さらに、多官能重合性化合物(共栄社化学株式会社製、「ライトアクリレートDCP−A」)を5質量部加えたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価を行った結果、必要露光量1000mJ/cmにおいて開口径25μm(アスペクト比0.4)のパターンが形成されたことが確認された。また、機械物性評価を行った結果、得られた硬化膜における引張弾性率は92MPaであり、破断伸度は46%であった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表1に示す。
【0103】
(比較例1)
光重合開始剤1を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価及び機械物性評価を行ったが、露光量3000mJ/cmでも重合膜を得ることができず、現像時に露光部まで全て溶解してしまい、パターンを形成させることができなかった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表2に示す。
【0104】
(比較例2)
ケイ素化合物1を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価及び機械物性評価を行ったが、露光量3000mJ/cmでも現像時に重合膜がシリコンウェハー上に形成したSiN膜から剥がれ落ちてしまい、硬化膜を得ることができなかった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表2に示す。
【0105】
(比較例3)
ケイ素化合物1に代えて比較ケイ素化合物1(信越化学工業株式会社製、「KBM−5103」、ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数:1分子あたり3個)を1質量部用いたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価及び機械物性評価を行ったが、露光量3000mJ/cmでも現像時に重合膜がシリコンウェハー上に形成したSiN膜から剥がれ落ちてしまい、硬化膜を得ることができなかった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表2に示す。
【0106】
(比較例4)
先ず、窒素を流した300ml三口フラスコ中において、ダイマージアミン(クローダジャパン製、「PRIAMINE1074」)14.3gを、N,N’−ジメチルアセトアミド56g、及びキシレン24gに溶解させた。次いで、この溶解液に、室温(23℃)においてピロメリット酸無水物5.7gを攪拌しながら添加し、1時間攪拌した。その後、脱水トラップを前記三口フラスコに取り付け、温度160℃において6時間、脱水還流しながら攪拌することにより、マレイミド構造を含まないポリイミド化合物(比較化合物1)を得た。次いで、ビスマレイミド化合物1に代えて前記比較化合物1(固形分100質量部)を用いたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を得た。得られた感光性樹脂組成物を用いてパターニング性能評価及び機械物性評価を行ったが、露光量3000mJ/cmでも重合膜を得ることができず、現像時に露光部まで全て溶解してしまい、パターンを形成させることができなかった。各評価結果を感光性樹脂組成物の組成と共に表2に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜7で得られた本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合には、低露光量であっても十分に小さい開口径が得られ、微細なパターンを形成することが可能であることが確認された。また、10μmの膜厚であっても365nmの光照射によってアスペクト比0.3以上という微細なパターン形成が可能であることが確認された。さらに、実施例1〜7で得られた本発明の感光性樹脂組成物は、高温による熱硬化によらなくとも引張弾性率が十分に小さく無機表面保護膜等の被着体との密着性に優れた硬化物を得ることができることが確認された。これに対して、比較例1〜4で得られた感光性樹脂組成物を用いた場合には、3000mJ/cmの露光量でもパターンを形成させることができず、感光性樹脂組成物として使用できないことが確認された。
【0111】
また、表3に示した結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた硬化物を層間膜として備える評価用サンプルにおいては、ダイシェア強度が十分に高く、また、破壊が起きた箇所も硬化物と被着体との接着面ではなくシリコンダイであることから、本発明の硬化物は、無機表面保護膜(窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜等)や、金属製配線材料(銅等)との密着性(接着性)に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上説明したように、本発明によれば、比較的低露光量(2000mJ/cm以下)での微細なパターン形成が可能であり、従来のような高温での熱硬化を必要とせず、引張弾性率が十分に小さく、無機表面保護膜(窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜等)や、導電性の金属製配線材料(銅等)との密着性に優れた硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物、それを用いた硬化物及び半導体素子を提供することが可能となる。
【0113】
また、本発明によれば、熱硬化を必要とせず、必要に応じて熱硬化せしめる場合であっても従来より比較的低温(60〜230℃)での熱硬化が可能であり、引張弾性率が十分に小さい硬化物を得ることができるため、硬化後の膜内に生じる残留応力を十分に小さくすることができ、シリコンウェハーのそりを十分に抑制することができる。さらに、本発明によれば、膜厚が厚くても365nmの光照射によって微細なパターン形成をすることが可能となる。従って、このような本発明の感光性樹脂組成物は、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜等として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)環状イミド結合とダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)とを有するビスマレイミド化合物、(II)光重合開始剤、及び(III)ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4個以上有するケイ素化合物を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(I)ビスマレイミド化合物が、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)と、テトラカルボン酸二無水物と、マレイン酸無水物とを反応させて得られたビスマレイミド化合物、又は、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)と、ダイマー酸から誘導されたジアミン(A)以外の有機ジアミン(B)と、テトラカルボン酸二無水物と、マレイン酸無水物とを反応させて得られたビスマレイミド化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(I)ビスマレイミド化合物が、下記一般式(1):
【化1】

[式(1)中、Rは、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)を示し、Rは、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)を示し、Rは、ダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)、及びダイマー酸に由来する2価の炭化水素基(a)以外の2価の有機基(b)からなる群から選択されるいずれか1種を示し、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ4価の有機基を示し、mは1〜30の整数であり、nは0〜30の整数であり、mが2以上の場合には複数あるR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の場合には複数あるR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]
で表わされるビスマレイミド化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(II)光重合開始剤が、オキシム構造及びチオキサントン構造からなる群から選択される少なくともいずれか1種の構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(III)ケイ素化合物の含有量が、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して0.1〜3質量部であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(II)光重合開始剤の含有量が、前記(I)ビスマレイミド化合物100質量部に対して0.1〜15質量部であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
露光波長365nm、露光量300〜2000mJ/cmで露光後の露光部の残膜率が90%以上となることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
硬化後の引張弾性率が2GPa以下となることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
硬化温度が60〜230℃であることを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を光硬化又は光熱硬化させて得られるものであることを特徴とする硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物を表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線層の絶縁膜からなる群から選択される少なくとも1種として備えることを特徴とする半導体素子。

【公開番号】特開2013−83958(P2013−83958A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209417(P2012−209417)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【出願人】(000006644)新日鉄住金化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】