説明

感光性樹脂組成物、感光性フィルム、レジストパターンの形成方法、並びにプリント配線板及びその製造方法

【課題】FPCに用いられたときに要求される可撓性を十分に満足するとともに、難燃性及び耐熱プレス性も十分に優れたレジストパターンを形成することが可能な感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)カルボキシル基を有するポリマ−、(B)エチレン性不飽和結合を有し、ハロゲン原子を含有しない光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)フェノキシフォスファゼン化合物、(E)リン酸エステル化合物、及び(F)ハロゲン系難燃剤を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性フィルム、レジストパターンの形成方法、並びにプリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の一種として、フレキシブルプリント配線板(FlexiblePrinted Circuit;以下、「FPC」という)と呼ばれるフィルム状のプリント配線板がある。FPCは、特にカメラ、磁気ヘッド、携帯電話などの小型機器に用いられている。これは、FPCがそれ自体を折り曲げてもその機能を維持することができることから、上述のような小型機器に収容するプリント配線板として適しているためである。
【0003】
近年、各種電子機器の更なる小型化及び軽量化の要請が増えてきている。そして、電子機器の配線用にFPCを採用することにより、機器の小型化及び軽量化の要請に応えるとともに、製品コストの低減及び設計の単純化等が実現されてきている。
【0004】
従来、液状の感光性樹脂組成物、又はフィルム状の感光層を有する感光性フィルムのような感光性材料が、プリント配線板の製造に用いられている。これらの感光性材料は、例えば、銅張積層板の銅箔をエッチングする際のエッチングレジスト、又はプリント配線板のはんだ付け位置を限定又は保護するためのソルダーレジスト等を形成するために用いられる。
【0005】
FPCのソルダーレジストは、通常のプリント配線板に用いられるソルダーレジストと同様に耐有機溶剤性、高解像度、絶縁性及びはんだ耐熱性等の特性を満足することが要求され、それに加えて、FPCを折り曲げた際に破壊されないような可撓性を有することも要求される。更に、FPCを部分的に厚くしたり硬くしたりするために補強板をFPCに熱プレスにより貼り付ける場合があり、FPCのソルダーレジストは、熱プレスによる加工の際に過度に流動して周囲へのしみ出しが発生しないことが求められる。また、FPCは大部分が電子機器に用いられるため、ソルダーレジストには難燃性も求められる。
【0006】
現在のところ、上記のような各種特性の点で比較的良好であることから、接着剤付きのポリイミドフィルムを打ち抜いて形成されるカバーレイがFPCのソルダーレジストとして最も多く採用されている。
【0007】
しかし、このカバーレイの場合、型抜きに用いられる金型が非常に高価なものであること、及びカバーレイを積層する際には手作業によって位置合わせ及び貼り合わせを行うことから、製造コストが高くなってしまうという問題点がある。さらには、電子機器の小型化の要請に応えるというFPCを採用する目的を達するためには微細パターンの形成が重要であるが、カバーレイを用いると微細パターンの形成が困難になるという問題もある。
【0008】
これらの問題点を解決するために、特定のエポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との付加生成物を無水コハク酸などと反応させることによって得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を含有する液状のFPC用インキ組成物が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0009】
また、可撓性を有するソルダーレジストの形成を意図して、ノボラックエポキシ樹脂及びゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物をエチレン性不飽和カルボン酸と反応させて得られる反応生成物と、上記混合物を多塩基酸等と反応させて得られる反応生成物を含有することを特徴とする液状の感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
一方、難燃性の付与を意図したフィルムタイプの感光性材料としては、特許文献4に記載のものが挙げられる。特許文献4では、特定のブロム置換単量体及び特定粒径以下の三酸化アンチモンを含有する感光性樹脂組成物からなるフィルムが開示されている。
【特許文献1】特開平7−207211号公報
【特許文献2】特開平8−134390号公報
【特許文献3】特開平9−5997号公報
【特許文献4】特開平5−27433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、FPCに要求される可撓性のレベルは高まってきており、特許文献1〜3に記載されているものを始めとする従来の液状のFPC用インキ組成物及び感光性樹脂組成物であっても、現在FPCに要求される可撓性を十分に満足できるものではないことが明らかとなった。また、本発明者らの知見によれば、これら従来の液状のFPC用インキ組成物及び感光性樹脂組成物は、FPCに要求される耐熱プレス性及び難燃性を十分に満足できるものではない。
【0012】
更に、本発明者らは、特許文献4に記載されているフィルム状の感光性材料が、可撓性の点で改善の余地があることを見出した。これは、難燃性付与のために三酸化アンチモンを材料中に配合したことに主に起因すると考えられる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、FPCに用いられたときに要求される可撓性を十分に満足するとともに、難燃性及び耐熱プレス性も十分に優れたレジストパターンを形成することが可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基を有するポリマ−、(B)エチレン性不飽和結合を有し、ハロゲン原子を含有しない光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)フェノキシフォスファゼン化合物、(E)リン酸エステル化合物、及び(F)ハロゲン系難燃剤を含有する。
【0015】
これら特定成分を組合わせたことにより、上記本発明に係る感光性樹脂組成物は、FPCに用いられたときに要求される可撓性を十分に満足するとともに、難燃性及び耐熱プレス性も十分に優れたレジストパターンを形成することが可能なものとなった。
【0016】
(D)及び(E)の合計の含有量は、(A)及び(B)の合計量100重量部に対して3〜50重量部であることが好ましい。これにより、形成されるレジストパターンの耐熱プレス性が更に改善される。
【0017】
(D)は、下記一般式(1a)で表される環状構造又は下記一般式(1b)で表される非環状構造を有するフェノキシフォスファゼン化合物であることが好ましい。式(1a)中、nは2〜20の整数を示し、式(1b)中、mは1〜20の整数を示す。
【0018】
【化1】

【0019】
(E)は、下記一般式(2)で表されるリン酸エステル化合物であることが好ましい。式(2)中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0020】
【化2】

【0021】
(A)は、(メタ)アクリル酸をモノマー単位として有しエチレン性不飽和結合を有していてもよい共重合体であることが好ましい。また、(A)の酸価が90〜200mgKOH/gであり、(A)のガラス転移温度が40〜80℃であることが好ましい。
【0022】
(B)の分子量は200〜5000であることが好ましい。また、(B)の含有量は、(A)及び(B)の合計量100重量部に対して10〜80重量部であることが好ましい。
【0023】
(F)の含有量は、(A)及び(B)の合計量100重量部に対して60〜90重量部であることが好ましい。
【0024】
上記感光性樹脂組成物は、永久レジストの形成のために用いられたときに、特に有用なものである。
【0025】
本発明に係る感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に形成された上記いずれかの感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える。感光性フィルムは、感光層の支持体と反対側の面上に設けられた剥離可能な保護フィルムを更に備えていてもよい。
【0026】
本発明に係るレジストパターンの形成方法は、上記いずれかの感光性樹脂組成物からなる感光層を基板上に積層する工程と、積層された感光層の所定部分に活性光線を照射し、次いで、感光層の一部を除去してレジストパターンを形成する工程と、を備える。あるいは、本発明に係るレジストパターンの形成方法上記感光性フィルムの当該感光層を基板上に積層する工程と、積層された感光層の所定部分に活性光線を照射し、次いで、感光層の一部を除去してレジストパターンを形成する工程と、を備える。
【0027】
上記方法において、基板は絶縁性基材及び該絶縁性基材上に形成されている導体層を有しており、導体層の一部が露出する開口部が形成されるようにレジストパターンを形成することが好ましい。また、導体層は回路パターンが形成されるようにパターン化されていることが好ましい。
【0028】
本発明に係るプリント配線板は、上記方法により形成されたレジストパターンを永久レジストとして備える。このプリント配線板は、感光性樹脂組成物の光硬化物からなるレジストパターンを永久レジストとして利用したものである。この永久レジストは、難燃性、電気絶縁性及び機械的強度に優れるものであるため、高信頼性のプリント配線板が実現可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る感光性樹脂組成物によれば、FPCに用いられたときに要求される可撓性を十分に満足するとともに、難燃性及び耐熱プレス性も十分に優れたレジストパターンを形成することが可能である。また、本発明に係る感光性樹脂組成物から形成されるレジストパターンは、耐絶縁性及び機械的強度の点でも優れ、プリント配線板用の絶縁樹脂やソルダーレジストとして非常に有用である。更に、本発明の感光性樹脂組成物は、現像性、絶縁性及びはんだ耐熱性にも十分優れており、FPCの永久レジストとして極めて有用である。
【0030】
本発明に係る方法によって形成されるレジストパターンを用いることにより、エッチング又はめっきを精度よく実施することができ、プリント配線板の高密度化が有効に実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」はアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0032】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基を有するポリマ−、(B)エチレン性不飽和結合を有し、ハロゲン原子を含有しない光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)フェノキシフォスファゼン化合物、(E)リン酸エステル化合物、及び(F)ハロゲン系難燃剤を含有する。
【0033】
(A)成分は、1又は2以上のカルボキシル基を有するポリマーである。感光性樹脂組成物は、1種又は2種以上の(A)成分を含有する。(A)成分は、典型的には、(メタ)アクリル酸をモノマー単位として有する共重合体である。この共重合体は側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和結合を有していてもよい。この共重合体は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び共重合ビニルモノマーの共重合体であることが好ましい。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸及び置換基を有していないアルキルアルコールから形成されるエステル化合物である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0035】
共重合体を構成する共重合ビニルモノマ−は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸と共重合し得るビニルモノマーである。共重合ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタアクリレート、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン及びビニルトルエンが挙げられる。
【0036】
これらモノマーをモノマー単位として含む共重合体は、ラジカル重合方等の公知の重合法により得ることができる。また、市販品として入手することも可能である。
【0037】
共重合体の側鎖又は末端には、エステル結合、ウレタン結合等を介してエチレン性不飽和結合が導入されていてもよい。エチレン性不飽和結合は、例えば、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを共重合する方法により共重合体中に導入される。エチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、ウレタン結合及びアクリレート基を有するモノマーである、UA−11、UA−13(いずれも新中村化学株式会社製、商品名)が挙げられる。あるいは、共重合体中のカルボキシル基を、グリシジル基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体と反応させる方法により、エステル結合を介してエチレン性不飽和結合が導入される。
【0038】
(A)成分の酸価は90〜200mgKOH/gであることが好ましく、100〜180mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が90mgKOH/g未満であると解像度が低下する傾向があり、200mgKOH/gを超えるとレジストの耐電食性が低下する傾向がある。
【0039】
(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、40〜80℃であることが好ましく、45〜70℃であることがより好ましい。Tgが40℃未満であると塗膜形成後のタックが大きくなり、ラミネートの際の作業性が低下する。Tgが80℃を超えると、形成されるレジストパターンの柔軟性が低下する傾向がある。
【0040】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を100重量部とした場合、20〜90重量部であることが好ましく、30〜80重量部であることがより好ましい。この量が20重量部未満では、塗膜形成時の表面のタック性、塗膜の割れ、現像性及びはんだ耐熱性が低下する傾向があり、90重量部を超えると感光性樹脂組成物の感度が低下する傾向がある。
【0041】
本実施形態で用いられる(B)成分は、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物である。この光重合性化合物は、光又は光重合開始剤の作用によって重合するエチレン性不飽和結合を有する共重合体又は単量体である。光重合性化合物は、例えば脂肪族、芳香族、脂環式及び複素環などのいずれの構造を有していてもよい。また、光重合性化合物はエステル結合、ウレタン結合又はアミド結合を有していてもよい。ただし、ハロゲン原子を有する光重合性化合物は、後述の(F)ハロゲン系難燃剤として用いられる。すなわち、(B)成分はハロゲン原子を有しない光重合化合物である。感光性樹脂組成物は、1種又は2種以上の(B)成分を含有する。
【0042】
(B)成分は、好ましくは、エチレン性不飽和結合を有する官能基としてアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する。
【0043】
アクリロイル基を有する光重合性化合物としては、アクリル酸の他、ヒドロキシルエチルアクリレート及びヒドロキシルプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリル酸エステル、アクリル酸メチル及びアクリル酸ブチル等の脂肪族アルコールとアクリル酸とから形成されたアクリル酸エステル、イソシアヌレート環等の複素環を有するアルコールとアクリル酸とから形成されたアクリル酸エステル、グリシジルアクリレート等のエポキシ基を有するアクリル酸エステル、エチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート等の多価アルコールのアクリル酸エステル、テトラヒドロフルフリールアクリレート等の環状エーテル構造を有するアクリル酸エステル、ビスフェノール類のジグリシジルエーテル化物にアクリル酸が付加したエポキシアクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂にアクリル酸が付加したアクリル変性ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0044】
メタクリロイル基を有する光重合性化合物としては、メタクリル酸の他、ヒドロキシルエチルメタクリレート及びヒドロキシルプロピルメタクリレート等の水酸基を有するメタクリル酸エステル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ブチル等の脂肪族アルコールとメタクリル酸とから形成されたメタクリル酸エステル、イソシアヌレート環等の複素環を有するアルコールとメタクリル酸とから形成されたメタクリル酸エステル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を有するメタクリル酸エステル、エチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びエトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多価アルコールのメタクリル酸エステル、テトラヒドロフルフリールメタクリレート等の環状エーテル構造を有するメタクリル酸エステル、ビスフェノール類のジグリシジルエーテル化物にメタクリル酸が付加したエポキシメタクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂にメタクリル酸が付加したメタクリル変性ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0045】
エポキシアクリレート及びメタクリル変性ノボラック型エポキシ樹脂のような、エポキシ基に(メタ)アクリル酸を付加させて得られる光重合性化合物は、解像性や耐湿絶縁性などの特性が著しく損なわれない範囲で、その水酸基と飽和及び/又は無水カルボン酸との反応により変性されていてもよい。
【0046】
(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量を100重量部とした場合、10〜80重量部であることが好ましく、20〜70重量部であることがより好ましい。(B)成分の量が10重量部未満では、感光性樹脂組成物の感度が低下する傾向にあり、80重量部を超えると塗膜形成時の表面のタック性、塗膜の割れ、現像性及びはんだ耐熱性の点で十分でなくなる傾向がある。
【0047】
(B)成分の分子量は200〜5000であることが好ましく、300〜2000であることがより好ましい。分子量が200未満であると感光性樹脂組成物のタック性が強くなる傾向があり、また、5000を超えると感光性樹脂組成物におけるエチレン性不飽和結合のモル濃度が低下して、感光性樹脂組成物の感度が低下する傾向にある。
【0048】
(C)成分は光重合開始剤である。(C)成分は、使用する露光機の光波長等に応じて適宜選択される。光重合性開始剤としては、ラジカル系光重合開始剤や、光照射でルイス酸を発生するカチオン型光重合開始剤がある。
【0049】
ラジカル系光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4,4−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−ジメトキシ−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン、アゾビスイソブチルニトリル、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、3,3,4,4−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1,2−ジ−9−アクリジニルエタン、1,3−ジ−9−アクリジニルプロパン、1,4−ジ−9−アクリジニルブタン、1,7−ジ−9−アクリジニルヘプタン及び1,8−ジ−9−アクリジニルオクタンが挙げられる。
【0050】
カチオン型光重合開始剤の具体例としては、トリフェニルスルフォンヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルフォンヘキサフルオロフォスフェート、p−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、p−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、4,4−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート及び(1−6−n−クメン)(n−ジクロペンタジニエル)鉄六フッ化リン酸が挙げられる。
【0051】
(C)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の各成分の全固形分に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0052】
(D)成分はフェノキシフォスファゼン化合物である。フェノキシフォスファゼン化合物は、下記一般式(10)で表される構造を含む。感光性樹脂組成物は、1種又は2種以上の(D)成分を含有する。
【0053】
【化3】

【0054】
より具体的には、(D)成分は上記一般式(1a)で表される環状構造又は(1b)で表される非環状構造を有するフェノキシフォスファゼンオリゴマーである。式(1a)は、上記式(10)の構造が連続的に連結して構成された環状構造を表す。式(1a)中、mは2〜20の整数であり、好ましくは3〜15である。式(1b)中のnは1〜20の整数であり、好ましくは2〜15である。
【0055】
式(1a)又は(1b)で表されるフェノキシフォスファゼンオリゴマーとしては、例えば、SPS−100、SPB−100及びSPE−100(いずれも大塚化学社製、商品名)が市販品として入手可能である。
【0056】
(E)成分は、リン酸エステル基を有するリン酸エステル化合物である。(E)成分としては、上記一般式(2)で表される化合物が好ましい。式(2)中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。感光性樹脂組成物は、1種又は2種以上の(E)成分を含有する。式(2)のリン酸エステル化合物は、例えば、CR−747(大八化学工業社製、商品名)が市販品として入手可能である。
【0057】
(D)成分及び(E)成分の合計の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部に対して3〜50重量部であることが好ましく、5〜45重量部であることがより好ましい。この量が3重量部未満では形成されるレジストパターンの難燃性及び可塑性が低下する傾向があり、50重量部を超えるとタックが過度に増大したり耐熱プレス性が低下したいりする傾向がある。
【0058】
(E)成分の含有量は、(D)成分1重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.2〜10重量部であることがより好ましい。
【0059】
(F)成分は、ハロゲン原子を含有する化合物からなるハロゲン系難燃剤である。このハロゲン系難燃剤は反応性を付与されていてもよい。感光性樹脂組成物は、1種又は2種以上の(F)成分を含有する。
【0060】
ハロゲン系難燃剤は、例えば、1又は2以上のハロゲン化芳香環を有する化合物である。この場合、同一分子中の複数のハロゲン化芳香環は同一でも異なっていてもよい。ハロゲン化芳香環としては、例えば、ジブロモフェニレン、トリブロモフェニル及びペンタブロモフェニル等の臭素原子を1〜5つ有するブロモベンゼン環が挙げられる。
【0061】
ハロゲン系難燃剤は、ハロゲン原子を含有するとともに、オキシエチレン基等のオキシアルキレン基を有する光重合性化合物であってもよい。この場合、オキシアルキレン基の繰り返し単位数は、1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。
【0062】
オキシアルキレン基を有するハロゲン系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールAのビス−(3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAのビス−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAのビス−(2−メタクリルメタクリロイルオキシエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAのビス−(2−アクリルメタクリロイルオキシエチル)エーテル、2−トリブロモ−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−トリブロモフェノキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルアクリレート及びペンタブロモベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0063】
これらの光重合性化合物は常法により合成可能であり、市販品として入手することもできる。市販品としては、例えば、BR−31、GX−6094(以上、第一工業製薬社製、商品名)が挙げられる。
【0064】
(F)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100重量部に対して60〜90重量部であることが好ましく、65〜80重量部であることがより好ましい。この含有量が60重量部未満では、難燃性が低下する傾向にあり、90重量部を超えるとフィルムの可塑性が低下する傾向にある。
【0065】
感光性樹脂組成物は、本発明により得られる効果が著しく損なわれない範囲で、熱硬化剤を含有していてもよい。熱硬化剤は、加熱により感光性樹脂組成物中に架橋構造を形成する作用を有する化合物であって、上記(A)〜(F)の何れにも該当しない化合物を意味する。熱硬化剤としては、例えば、それ自体が架橋して架橋構造を形成するものや、(A)成分のカルボキシル基と反応して架橋構造を形成するものがある。
【0066】
加熱によりそれ自体が架橋する熱硬化剤としては、ビスマレイミド化合物が挙げられる。ビスマレイミド化合物の具体例としては、m−ジ−N−マレイミジルベンゼン、ビス(4−N−マレイミジルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−N−マレイミジルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−N−マレイミジル2,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス[(4−N−マレイミジルフェノキシ)フェニル]プロパン及び2,2−ビス[(4−N−マレイミジル−2−メチル−5−エチル)フェニル]プロパンが挙げられる。これらビスマレイミド化合物は1種で又は複数種を組合わせて用いられる。ビスマレイミド化合物は各種樹脂との変性物として用いることも可能である。
【0067】
加熱により(A)成分のカルボキシル基と反応して架橋構造を形成する熱硬化剤としては、ブロックイソシアネート化合物が挙げられる。ブロックイソシアネート化合物としては、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物及び活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0068】
ブロック化されるポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジシソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート及び2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、並びにビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが好ましく、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0069】
感光性樹脂組成物は、本発明により得られる効果が著しく損なわれない範囲で、熱硬化性樹脂を含有していてもよい。熱硬化性樹脂としては、上記のラジカル性光重合開始剤によって架橋可能な、エチレン性不飽和結合以外の官能基を有する共重合体又は単量体が例示される。
【0070】
感光性樹脂組成物は、熱重合開始剤を含有していてよい。熱重合開始剤としては、公知のものを利用することができる。熱重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド及びメチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ターシャリーブチルパーオキサイド等のアルキルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、パーオキシエステル類、並びにアルキルパーエステル類が挙げられる。
【0071】
熱重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の各成分の全固形分に対して0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがより好ましい。
【0072】
感光性樹脂組成物は、解像性及び難燃性が著しく損なわれない範囲で、フィラーを含有していてもよい。フィラーとしてはシリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水和アルミナ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、エーロジル及び炭酸カルシウム等の無機微粒子、粉末状エポキシ樹脂、粉末状ポリイミド粒子及び粉末状ポリフッ化エチレン系繊維粒子等の有機微粒子が挙げられる。これらのフィラーには予めカップリング処理が施されていてもよい。
【0073】
フィラーの分散は、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等既知の混練方法によって行われる。
【0074】
フィラーの含有量は、感光性樹脂組成物中の各成分の全固形分に対して、2〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0075】
感光性樹脂組成物は、更に、重合安定剤、レベリング剤、顔料、染料及び密着性向上剤等の他の成分を含有してもよい。これらの選択は、通常の感光性樹脂組成物と同様の考慮のもとで行われる。これらの添加量は、感光性樹脂組成物の特性が著しく損なわれない範囲とされる。具体的には、それぞれ、感光性樹脂組成中に好ましくは0.01〜10質量%の割合で添加される。
【0076】
感光性樹脂組成物は、レジストパターンの形成の際に、溶剤に希釈して溶液の状態で用いることができる。この溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン及びシクロヘキサノン等のケトン化合物、キシレン及びトルエン等の芳香族炭化水素化合物、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物が挙げられる。これらの溶剤は、単独又は混合系で用いられる。感光性樹脂組成物を効率よく溶解させるために、その溶解性に応じて、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチルエトキシプロピオネート等を用いてもよい。
【0077】
溶剤の量は、好ましくは感光性樹脂組成物100重量部に対して10〜200重量部であることが好ましく、30〜100重量部であることがより好ましい。溶剤の量が、10重量部未満の場合は溶液の粘度が高くなって均一に混合することが困難となる傾向があり、溶剤の量が100重量部を超える場合は粘度の低下により感光層を形成したときの層の厚さを制御することが困難となる傾向がある。また。溶剤の使用量が多くなって製造コストの上昇を招く傾向がある。
【0078】
図1は、感光性エレメントの一実施形態を示す断面図である。図1に示す感光性エレメント1は、支持体11、感光層12及び保護フィルム13がこの順で積層された構成を有する。
【0079】
感光層12は上述の感光性樹脂組成物から形成されている。感光層12の厚さは特に制限はないが、典型的には10〜150μmの範囲内である。
【0080】
感光層12は、例えば、感光性樹脂組成物を溶剤に溶解した溶液を支持体11上に均一な厚さに塗付し、塗布された溶液を加熱して溶剤を除去する方法により形成される。溶液の塗布は、コンマコータ、ブレードコータ、リップコータ、ロッドコータ、スクイズコータ、リバースコータ又はトランスファロールコータ等を用いて行われる。
【0081】
支持体11は、感光層12及び保護フィルムを13を支持するキャリアフィルムとして機能するフィルムである。支持体11としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム及びポリスチレンフィルム等のフィルムが好適に用いられる。
【0082】
支持体11は単層構造であってもよく、組成の異なる複数のフィルムを積層した多層構造を有していてもよい。支持体11の感光層12と反対側の面にはエンボス加工、コロナ処理等の処理が施されていてもよい。支持体11の厚みは特に制限されないが、好ましくは5〜150μm、より好ましくは8〜20μm、さらに好ましくは10〜16μmである。支持体11の厚みが5μm未満では、感光性フィルム1から支持体11を剥離除去する際に支持体11が破れ易くなる傾向があり、150μmを超えると感光性フィルム1全体の柔軟性が低下して、感光性フィルム1を凹凸表面にラミネートするときに表面の凹凸への追従性が低下する傾向がある。
【0083】
保護フィルム13は、感光性フィルム1をラミネートする前に剥離される。そのため、保護フィルム13としては、可撓性を有し、感光層12に剥離可能に接着でき、乾燥炉の温度で損傷を受けないフィルムが用いられる。保護フィルム13は、透明であっても非透明であってもよく、離型処理が施されたものであってもよい。
【0084】
保護フィルムの厚みは、特に制限されないが、ロール状に巻いた場合のサイズの点を考慮すると、10〜30μmであることが好ましく、10〜25μmであることがより好ましく、10〜20μmであることが更に好ましい。
【0085】
保護フィルム13の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニル及びポリ塩化ビニル等のハロゲン含有ビニル重合体、ナイロン等のポリアミド、セロファン等のセルロース、ポリスチレン等のフィルムが挙げられる。離型紙等の紙を保護フィルム13として用いてもよい。
【0086】
市販品として入手可能な保護フィルムとしては、王子製紙(株)製の製品名E−200H、タマポリ(株)製の製品名NF−13等が挙げられる。
【0087】
図2は、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法の一実施形態を示す断面図である。図2に示す実施形態は、感光層12を基板20上に積層する工程と、積層された感光層12の所定部分に活性光線を照射し、次いで、感光層12の一部を除去してレジストパターン24を形成する工程とを備える。
【0088】
本実施形態では、先ず、絶縁性基材22及び絶縁性基材22上に形成されている導体層21,23を有する基板を準備する(図2の(a))。導体層23は所定の回路パターンが形成されるようにパターン化されている。導体層21はパターン化されることなく絶縁性基材22の片面全体を覆っている。基板20は、例えば、両面金属張積層板(例えば、両面銅張積層板)の片面をエッチングする公知の方法により得られる。
【0089】
基板20のパターン化された導体層23側の面上に、感光層12が積層される(図2の(b))。感光層12は、上述の感光性フィルム1を、保護フィルム13を剥がしてから基板20に感光層12が基板20と隣接する向きで重ね、ホットロールラミネーター等を用いて加熱及び加圧して貼り合わせる方法で積層される。感光層12を積層後、支持体11を剥離してもよいし、支持体11を残した状態で露光を行ってもよい。
【0090】
あるいは、感光性樹脂組成物の溶液を基板20上に塗付し、塗布された溶液を加熱して溶剤の大部分を除去する方法で感光層12を形成させてもよい。この場合、溶液の塗布方法としては、ディップコート法、ロールコート法、フローコート法、スクリーン印刷法、スプレー法及び静電スプレー法が挙げられる。
【0091】
次いで、積層された感光層12のマスク5を介して活性光線を画像状に照射して、感光層12の一部を光硬化させる(図2の(c))。マスク5は感光層12上に直接載置してもよいし、透明なフィルムを挟んで感光層12上に配置させてもよい。
【0092】
露光光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いられる。
【0093】
なお、感光層12には、印刷法、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等を用いたレーザ穴明け法などで像的樹脂膜を形成することも可能である。
【0094】
露光後、アルカリ性水溶液を現像液として用いた現像により、感光層12の光硬化した部分以外の部分が除去される。残った感光層により、導体層13の一部が露出する開口部26が形成されたパターンを有するレジストパターン24が形成される(図2の(d))。現像は、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により行われる。現像液は、アルカリ現像液が標準的に用いられる。ただし、露光部にダメージを与えず、未露光部を選択的に溶出するものであれば、その種類については特に制限はなく、用いた感光性樹脂組成物の組成等に応じて、準水系現像液、溶剤現像液など一般的なものから適宜選択して用いることができる。例えば、特開平7−234524号公報に記載の水及び有機溶剤を含むエマルジョン現像液を使用することができる。
【0095】
例えば、有機溶剤成分としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、2,2−ブトキシエトキシエタノール、乳酸ブチル、乳酸シクロヘキシル、安息香酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等の有機溶剤を10〜40重量%含有するエマルジョン現像液が特に有用である。
【0096】
また、アルカリ現像液を用いる場合には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、4−ホウ酸ナトリウム、アンモニア及びアミン類等を含むアルカリ水溶液と上記有機溶剤とのエマルジョン現像液を用いることもできる。
【0097】
レジストパターン24を形成した後、1〜5J/cmの露光及び/又は100〜200℃、30分〜12時間の加熱による後硬化をさらに行ってもよい。
【0098】
以上のようにして、回路パターンが形成されるようにパターン化された導体層23が絶縁基材22上に形成された基板20と、導体層23の一部が露出する開口部26が形成されるようにパターン化されたレジストパターン24と、を備えるプリント配線板2が得られる。
【0099】
プリント配線板2においては開口部26が形成されているため、CSP、BGA等の実装部品を回路パターンを有する導体層24に対してはんだなどにより接合することができる。すなわち、いわゆる表面実装が可能である。
【0100】
レジストパターン24は、感光性樹脂組成物の硬化物からなる。レジストパターン24は、実装部品の接合時に、導体層上の不必要な部分へのはんだの付着を防ぐソルダーレジストとして機能する。また、実装部品を接合後は、導体層23を保護するための永久マスクとして機能する。すなわち、レジストパターン24は永久レジストである。
【0101】
レジストパターン24は、高温高湿下における絶縁劣化が抑制されており、耐電食性に優れている。また、PCT試験での変色及びふくれも抑制される。
【0102】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物を用いてレジストパターンをマスクとして用いて、導体層のエッチング、又は導体層上におけるめっきを行うことができる。この場合、導体層が露出しているレジストパターンの開口部においてエッチング又はめっきが行われる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0104】
1.感光性樹脂組成物溶液の調製
実施例1
以下に示す材料を混合して、感光性樹脂組成物溶液を調製した。
(A)カルボキシル基を有するポリマ−
メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル及びスチレンを16:35:39:10の重量割合で共重合させた共重合体(重量平均分子量90,000、酸価104mg/g、Tg49.9℃):70重量部(固形分)
(B)エチレン性不飽和結合を有し、ハロゲン原子を含有しない光重合性化合物
ウレタン結合含有モノマ−(UF−TCB−50、共栄化学株式会社製、商品名):30重量部(固形分)
(C)光重合開始剤
イルガキュア369(チバガイギー株式会社製、商品名):5重量部
(D)フェノキシフォスファゼン化合物
SPB−100(大塚化学株式会社製、商品名):20重量部
(E)リン酸エステル化合物
CR−747(大八化学社製、商品名):5重量部
(F)ハロゲン系難燃剤
エチレン性不飽和結合を1つ有する臭素含有アクリレート(BR−31、第一工業製薬社製):50重量部
エチレン性不飽和結合を2つ有する臭素含有アクリレート(GX6094、第一工業製薬社製、商品名)20重量部
(溶剤)
メチルエチルケトン:20重量部
【0105】
実施例2
(A)成分として、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル及びスチレンを18:32:40:10の重量割合で共重合させた共重合体(重量平均分子量90,000、酸価117mg/g、Tg49.4℃):70重量部(固形分)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物溶液を調製した。
【0106】
実施例3
(D)成分として、SPS−100(大塚化学株式会社製、商品名)20重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物溶液を調製した。
【0107】
実施例4
フェノキシホスファゼン化合物(SPB−100)の量を60重量部、リン酸エステル化合物(CR−747)の量を60重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物溶液を調製した。
【0108】
比較例1
(D)成分のフェノキシフォスファゼン化合物(SPB−100)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物溶液を調製した。
【0109】
比較例2
(E)成分のリン酸エステル化合物(CR−747)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物溶液を調製した。

【0110】
2.感光性樹脂組成物の評価
調製した感光性樹脂組成物溶液を、それぞれ、支持体としての16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人社製、商品名「G2−16」)上に均一に塗布し、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で約10分間塗膜を加熱して乾燥した。乾燥により溶剤の大部分が除去され、膜厚が38μmの感光層が支持体上に形成された感光性フィルムを得た。
【0111】
18μm厚の銅箔がポリイミド基材に積層されたフレキシブルプリント配線板用基板(ニッカン工業社製、商品名「F30VC1」)の銅箔表面を酸処理し、水洗後、乾燥した。次いで、上記で得た感光性フィルムをその感光層が銅箔に密着するようにフレキシブルプリント配線板用基板上に積層した。積層は、プレス式真空ラミネータ(名機製作所社製、商品名「MVLP−500」)を用いて、ラミネート温度60℃、ラミネート圧力0.4MPa、真空度10×10、真空時間20秒、加圧時間20秒の条件で行った。
【0112】
積層された感光層に対して、オーク製作所社製HMW−201GX型露光機を用いて、トーファー21段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量でポリエチレンテレフタレートフィルムの側から露光を行った。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を40秒間スプレーして現像を行った。現像後、80℃で10分間加熱することにより乾燥した。
【0113】
そして、感光層に対してオーク製作所社製紫外線照射装置を用いて1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、さらに160℃で60分間加熱した。
【0114】
以上のようにして、フレキシブルプリント配線板用基板上に永久レジストであるカバーレイとしてレジストパターンが形成された評価用フレキシブルプリント配線板(評価用FPC)を得た。実施例1〜3及び比較例1、2の感光性樹脂組成物溶液をそれぞれ用いて作製した評価用FPCについて、以下のようにして可撓性及び耐熱プレス性の評価を行った。
【0115】
可撓性(耐折性)
評価用FPCを、ハゼ折りにより180°折り曲げを5回繰り返して行い、その際のカバーレイにおけるクラックの発生状況を目視により観察し、下記基準で評価した。評価結果を表1に示す。
「A」:カバーレイにクラックが認められなかったもの
「B」:カバーレイにクラックが認められたもの
【0116】
耐熱プレス性
30tハンドプレス機(東洋精機製作所(株)製)を用いて、プレス温度175℃、プレス圧力1470N(150kgf)の条件により評価用FPCを30分間厚さ方向にプレスした。その際のカバーレイからの感光性樹脂組成物成分のしみ出しの有無を目視により観察し、次の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
「A」:カバーレイから感光性樹脂組成物成分のしみ出しが認められなかったもの
「B」:カバーレイから感光性樹脂組成物成分のしみ出しが認められたもの
【0117】
難燃性
銅箔張積層板(新日鐵化学製、商品名「エスパネックスMB」のシリーズ)の銅箔をエッチングにより除去して厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの両面に、上述の評価用FPCの場合と同様にして感光性フィルムを積層し、感光層に対して評価用FPCの場合と同様の条件で全面露光及び加熱の処理をおこなって、ポリイミドフィルムの両面に硬化された感光層が形成された難燃性評価用サンプルを得た。この難燃性評価用サンプルついて、UL94規格に準拠した薄材垂直燃焼試験を行った。評価はUL94規格に基づいて、VTM−0又はVTM−1と表した。評価結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
表1に示されるように、実施例1〜4は、可撓性(耐折性)、耐熱プレス性及び難燃性の何れの点でも優れた特性を示した。特に、(D)成分と(E)成分の合計量が(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対して3〜50重量部の範囲内にある実施例1〜3は、実施例4と比較して耐熱プレス性が更に改善された。一方、比較例1、2は、可撓性(耐折性)、耐熱プレス性及び難燃性のいずれかの点で必ずしも十分なものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】感光性フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図2】レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法の一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
1…感光性フィルム、2…プリント配線板、11…支持体、12…感光層、13…保護フィルム、20…基板、21…導体層、22…絶縁性基材、23…導体層、24…永久レジスト(レジストパターン)、26…開口部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基を有するポリマ−、
(B)エチレン性不飽和結合を有し、ハロゲン原子を含有しない光重合性化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)フェノキシフォスファゼン化合物、
(E)リン酸エステル化合物、及び
(F)ハロゲン系難燃剤
を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)及び前記(E)の合計の含有量が、前記(A)及び前記(B)の合計量100重量部に対して3〜50重量部である、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)が、下記一般式(1a)で表される環状構造又は下記一般式(1b)で表される非環状構造を有するフェノキシフォスファゼン化合物である、請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【化1】


[式(1a)中、nは2〜20の整数を示し、式(1b)中、mは1〜20の整数を示す。]
【請求項4】
前記(E)が、下記一般式(2)で表されるリン酸エステル化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】


[式(2)中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項5】
前記(A)が、(メタ)アクリル酸をモノマー単位として有しエチレン性不飽和結合を有していてもよい共重合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)の酸価が90〜200mgKOH/gであり、
前記(A)のガラス転移温度が40〜80℃である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)の分子量が200〜5000である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(B)の含有量が、前記(A)及び前記(B)の合計量100重量部に対して10〜80重量部である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(F)の含有量が、前記(A)及び前記(B)の合計量100重量部に対して60〜90重量部である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
永久レジストの形成のために用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える感光性フィルム。
【請求項12】
前記感光層の前記支持体と反対側の面上に設けられた剥離可能な保護フィルムを更に備える、請求項11記載の感光性フィルム。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載された感光性樹脂組成物からなる感光層を基板上に積層する工程と、
積層された前記感光層の所定部分に活性光線を照射し、次いで、前記感光層の一部を除去してレジストパターンを形成する工程と、
を備えるレジストパターンの形成方法。
【請求項14】
請求項11又は12記載の感光性フィルムの当該感光層を基板上に積層する工程と、
積層された前記感光層の所定部分に活性光線を照射し、次いで、前記感光層の一部を除去してレジストパターンを形成する工程と、
を備えるレジストパターンの形成方法。
【請求項15】
前記基板は絶縁性基材及び該絶縁性基材上に形成されている導体層を有しており、
前記導体層の一部が露出する開口部が形成されるように前記レジストパターンを形成する、請求項13又は14記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項16】
前記導体層は回路パターンが形成されるようにパターン化されている、請求項15記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項17】
前記レジストパターンが永久レジストである、請求項13〜16のいずれか一項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項18】
請求項15又は16記載の方法により基板上にレジストパターンを形成する工程を備えるプリント配線板の製造方法。
【請求項19】
導体層が露出しているレジストパターンの開口部においてエッチング又はめっきを行う工程を備える、請求項18記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項20】
請求項15又は16記載の方法により形成されたレジストパターンを永久レジストとして備える、プリント配線板。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−304543(P2007−304543A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221990(P2006−221990)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】