説明

感光性組成物及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】 EBまたはEUV照射下で充分良好な感度、コントラスト、解像力、ラインエッジラフネスを実現できるポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、特定構造を有する脱離基を生じる基を有する、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂、及び活性光線または放射線の作用により酸を発生する化合物を含有するポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの超マイクロリソグラフィプロセスやその他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる感光性組成物に関するものである。詳しくは、高精細化したパターン形成しうるポジ型レジスト組成物に関し、特に電子線あるいはEUV光(Extreme Ultraviolet:波長13nm付近)を用いて半導体素子の微細加工に好適に用いることができるポジ型レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、さらにKrFエキシマレーザー光に、というように短波長化の傾向が見られる。さらには、現在では、エキシマレーザー光以外にも、電子線やX線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィーも開発が進んでいる。
【0003】
かかる電子線、X線、あるいはEUV光を用いたリソグラフィープロセスに適したレジストとしては高感度化の観点から主に酸触媒反応を利用した化学増幅型レジストが用いられており、ポジ型レジストにおいては主成分として、アルカリ現像液には不溶又は難溶性で、酸の作用によりアルカリ現像液に可溶となる性質を有するフェノール性ポリマー、及び酸発生剤からなる化学増幅型レジスト組成物が有効に使用されている。
【0004】
特開2002−62652号公報(特許文献1)は、アルカリ溶解速度コントラスト、感度、解像度、パターン形状、エッチング耐性、プロセス適応性を有するポジ型レジスト材料として、ポリスチレン繰り返し単位、側鎖にアリール基を有する(メタ)アクリル酸エステル繰り返し単位及び3級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル繰り返し単位を含有する高分子化合物を含有するレジスト材料を開示している。
特開2003−233191号公報(特許文献2)は、高解像レリーフイメージを提供すべく、アリールアルキル基を含むフォト酸レイビル単位(酸分解性基)を有する樹脂を含有するフォトレジスト組成物を開示している。
【0005】
しかしながら、感度、コントラスト、解像力、ラインエッジラフネス(LER)につき、特に電子線またはEUVで露光する場合、充分な特性が得られていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−62652号公報
【特許文献2】特開2003−233191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特に電子線またはEUV照射下で、充分良好な感度、コントラスト、解像力、ラインエッジラフネス(LER)を有する感光性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、特定構造を有する脱離基を生じる基を有する、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂を含有する感光性組成物によって上記課題を達成した。本発明に係わる感光性組成物は下記構成である。
【0009】
(1)(A)酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、下記一般式(A)で表される基を有する脱離基を生じる基を有する、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂、及び、
(B)活性光線または放射線の作用により酸を発生する化合物
を含有することを特徴とする感光性組成物。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(A)中、
1aは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表す。
Xは水素原子または有機基を表す。
n1は1〜5の整数を表す。
n2は0〜4の整数を表す。但し、n1+n2=5である。
1a及びXの各々について複数ある場合、同じであっても、異なっていてもよい。
【0012】
(2) 酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、一般式(A)で表される基を有する脱離基を生じる基が、下記一般式(Z1)〜(Z5)から選択されたいずれかの基であることを特徴とする上記(1)に記載の感光性組成物。
【0013】
【化2】

【0014】
一般式(Z1)〜(Z5)中、
11a〜R13aは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、および該アラルキル基は、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−及び−SO−から選ばれる少なくとも一つを有していてもよい。
14aおよびR15aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、および該アラルキル基は、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−及び−SO−から選ばれる少なくとも一つを有していてもよい。
16aは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、および該アラルキル基は、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−及び−SO−
から選ばれる少なくとも一つを有していてもよい。
尚、R11a、R12a、R13aのうちの2つ、またはR14a、R15a、R16aのうちの2つが結合して環構造を形成してもよい。該環構造は、環の中に、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−及び−SO−から選ばれる少なくとも一つを有していてもよい。
また、R11a、R12a、R13aのうちいずれか、R14a、R15a、R16aのうちいずれかに、上記一般式(A)で表される基を少なくとも1つ含有する。
【0015】
(3) 上記一般式(A)中のXのうち少なくとも1つが水素原子であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の感光性組成物。
【0016】
(4) 上記一般式(A)中のXのうち少なくとも1つが酸の作用により分解しアルカリ可溶性基を生じる基(酸分解性基)であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0017】
(5) 樹脂(A)が、下記一般式(I)および(II)で示される繰り返し単位のうち、少なくとも1種の繰り返し単位含むことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0018】
【化3】

【0019】
一般式(I)および(II)中、
1は、水素原子、メチル基、シアノ基、ハロゲン原子又はペルフルオロ基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
2は、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基又はアシル基を表す。
nは0〜5の整数、mは1〜5の整数であり、1≦n+m≦5である。
3〜R5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基またはアルキル基を表す。
1は単結合または2価の連結基を表す。
Zは上記一般式(Z1)〜(Z5)のうちいずれかで示される基を表す。
【0020】
(6) 上記一般式(I)中のZが上記一般式(Z2)で示される基であることを特徴とする上記(5)に記載の感光性組成物。
【0021】
(7) 上記一般式(II)中のZが上記一般式(Z4)で示される基であることを特徴とする上記(5)に記載の感光性組成物。
【0022】
(8) 樹脂(A)が、さらに下記一般式(III)および(IV)で示される繰り返し単位のうち、少なくとも1種の繰り返し単位を含むことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0023】
【化4】

【0024】
一般式(III)および(IV)中、
1は、水素原子、メチル基、シアノ基、ハロゲン原子又はペルフルオロ基を表す。
2は、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基又はアシル基を表す。
3〜R5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基またはアルキル基を表す。
Xは水素原子または有機基を表す。
1は水素原子または有機基を表す。
nは0〜5の整数、mは0〜5の整数であり、0≦n+m≦5である。
【0025】
(9) さらに、有機塩基性化合物を含有することを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0026】
(10) さらに、界面活性剤を含有することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0027】
(11) 上記(B)成分として、(B1)活性光線または放射線の作用により有機スルホン酸を発生する化合物を含有することを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0028】
(12) さらに、(E)溶剤を含有することを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0029】
(13) 上記溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有することを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0030】
(14) 上記溶剤としてさらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを含有することを特徴とする上記(13)に記載の感光性組成物。
【0031】
(15) 電子線またはEUVで露光するための組成物であることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の感光性組成物。
【0032】
(16) 上記(1)〜(15)のいずれかに記載の感光性組成物により、感光性膜を形成し、該感光性膜を露光、現像することを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明の感光性組成物は、特に電子線またはEUV照射下で、充分良好な感度、コントラスト、解像力、ラインエッジラフネスを実現でき、特にポジ型レジスト組成物として、良好に微細パターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明について詳細に説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0035】
〔1〕酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、一般式(A)で表される基を有する脱離基を生じる基を有する、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(A)
【0036】
本発明の酸分解性樹脂(A)は酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、下記一般式(A)で表される基を有する脱離基を生じる基を有する。
【0037】
【化5】

【0038】
一般式(A)中、
1aは水素原子、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表す。
Xは水素原子または有機基を表す。有機基は、酸分解性基でも、非酸分解性基でもよい。Xが複数ある場合、それぞれのXは同じであっても、異なっていてもよく、少なくとも1つが水素原子であり、少なくとも1つが酸分解性基であることが好ましい。
n1は1〜5の整数を表す。
n2は0〜4の整数を表す。但し、n1+n2=5である。
【0039】
1aとしてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基を好ましく挙げることができる。
【0040】
1aとしてのシクロアルキル基は、例えば炭素数3〜15個のシクロアルキル基であって、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基を好ましく挙げることができる。
【0041】
1aとしてのアラルキル基としては、好ましくは炭素数6〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0042】
1aとしてのアリール基は、例えば炭素数6〜15個のアリール基であって、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基等を好ましく挙げることができる。
【0043】
これらの基が有してもよい置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。
【0044】
Xとしての有機基は、好ましくは炭素数1〜40であり、酸分解性基であっても非酸分解性基であってもよい。Xは水素原子が好ましい。
【0045】
Xとしての非酸分解性基は、酸分解性基(酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を生じる基)でない基、即ち、露光により光酸発生剤などから発生する酸により分解して、水酸基、カルボキシ基などのアルカリ可溶性基を生じることがない基を意味する。
Xとしての非酸分解性基の具体的な基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、―OC(=O)Ra、―OC(=O)ORa、−C(=O)ORa、−C(=O)N(Rb)Ra、―N(Rb)C(=O)Ra、―N(Rb)C(=O)ORa、−N(Rb)SO2Ra、−SRa、―SO2Ra、―SO3Ra、又は―SO2N(Rb)Raを挙げることができる。ここで、Ra及びRbは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
【0046】
Xとしてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基を好ましく挙げることができる。
Xとしてのシクロアルキル基は、例えば炭素数3〜15個のシクロアルキル基であって、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基を好ましく挙げることができる。
Xとしてのアルコキシ基は、例えば炭素数1〜8の上記アルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
【0047】
Xとしてのアリール基は、例えば炭素数6〜15個のアリール基であって、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基等を好ましく挙げることができる。
【0048】
Xとしてのアシル基は、例えば炭素数2〜8個のアシル基であって、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等を好ましく挙げることができる。
【0049】
これらの基が有してもよい置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。環状構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を挙げることができる。
【0050】
Ra及びRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基は、Xとして挙げたものと同様である。
【0051】
Xの酸分解性基の有機基としては、例えば、−C(R11a)(R12a)(R13a)、−C(R14a)(R15a)(OR16a)、−CO−OC(R11a)(R12a)(R13a)を挙げることができる。
11a〜R13aは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。R14aおよびR15aは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。R16aは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。尚、R11a、R12a、R13aのうちの2つ、又はR14a、R15a、R16aのうちの2つが結合して環を形成してもよい。
なお、Xには、酸分解性基を有する基を変性により導入することもできる。このようにして、酸分解性基を導入したXは、例えば、以下のようになる。
−〔C(R17a)(R18a)〕p−CO−OC(R11a)(R12a)(R13a
17aおよびR18aは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。pは1〜4の整数である。
【0052】
Xとしての有機基は、脂環及び芳香環などから選ばれる少なくとも1つの環状構造を有することが好ましく、下記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環構造を含む構造のような酸分解性基であることが好ましい。なお、脂環構造は有橋脂環構造であってもよい。
【0053】
【化6】

【0054】
式中、R11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、Zは、炭素原子とともに脂環式炭化水素基を形成するのに必要な原子団を表す。
12〜R16は、各々独立に、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又は脂環式炭化水素基を表し、但し、R12〜R14のうち少なくとも1つ、もしくはR15、R16のいずれかは脂環式炭化水素基を表す。
17〜R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又は脂環式炭化水素基を表し、但し、R17〜R21のうち少なくとも1つは脂環式炭化水素基を表す。また、R19、R21のいずれかは炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又は脂環式炭化水素基を表す。
22〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又は脂環式炭化水素基を表し、但し、R22〜R25のうち少なくとも1つは脂環式炭化水素基を表す。また、R23とR24は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0055】
一般式(pI)〜(pVI)において、R12〜R25におけるアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。このアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
また、上記アルキル基の更なる置換基としては、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アシル基、アシロキシ基、シアノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等を挙げることができる。
【0056】
11〜R25における脂環式炭化水素基あるいはZと炭素原子が形成する脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビ
シクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
以下に、脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例を示す。
【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
本発明においては、上記脂環式部分の好ましいものとしては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、デカリン残基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基である。
【0061】
脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基よりなる群から選択された置換基を表す。上記アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。
また、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基は、更に置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ヒドロキシ基、オキソ基、アルキルカルボニル基(好ましくは炭素数2〜5)、アルキルカルボニルオキシ基基(好ましくは炭素数2〜5)、アルキルオキシカルボニル基基(好ましくは炭素数2〜5)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)等を挙げることができる。
【0062】
樹脂(A)における、酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、下記一般式(A)で表される基を有する脱離基を生じる基の存在により、露光部におけるアルカリ溶解性が向上し、解像性、ラインエッジラフネスが良好となる。
【0063】
本発明において、樹脂(A)が有する酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、一般式(A)で表される基を有する脱離基を生じる基は、下記一般式(Z1)〜(Z5)から選択されたいずれかの基であることが好ましい。
【0064】
【化10】

【0065】
一般式(Z1)〜(Z5)中、
11a〜R13aは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、該アラルキル基は、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−、−SO−を有していてもよい。
14aおよびR15aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、該アラルキル基は、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−、−SO−を有していてもよい。
16aは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、該アラルキル基は、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−、−SO−を有していてもよい。
尚、R11a、R12a、R13aのうちの2つ、またはR14a、R15a、R16aのうちの2つが結合して環構造を形成してもよい。該環構造は、環の中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−、−SO−を有していてもよい。
また、R11a、R12a、R13aのうちいずれか、R14a、R15a、R16aのうちいずれかに、上記一般式(A)で表される基を少なくとも1つ含有することが好ましい。
【0066】
本発明において、樹脂(A)は、下記一般式(I)および(II)で示される繰り返し単位のうち、少なくとも1種の繰り返し単位含むことが好ましい。
【0067】
【化11】

【0068】
一般式(I)および(II)中、
1は、水素原子、メチル基、シアノ基、ハロゲン原子又はペルフルオロ基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
2はアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基又はアシル基を表す。
nは0〜5の整数、mは1〜5の整数であり、1≦n+m≦5である。
3〜R5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基またはアルキル基を表す。
1は単結合または2価の連結基を表す。
Zは上記一般式(Z1)〜(Z5)のうちいずれかで示される基を表す。
【0069】
1は、好ましくは水素原子、メチル基、又はCm2m+1基(mは好ましくは1)であり、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0070】
2としてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8個のアルキル基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基を好ましく挙げることができる。
2としてのアルコキシ基は、例えば炭素数1〜8の上記アルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
【0071】
2としてのアリール基は、例えば炭素数6〜15個のアリール基であって、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基等を好ましく挙げることができる。
2としてのアシル基は、例えば炭素数2〜8個のアシル基であって、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等を好ましく挙げることができる。
3〜R5としてのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5個のアルキル基であって、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基を挙げることができる。
【0072】
上記各基は、置換基を有していてもよい。有してよい置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッソ素原子、沃素原子)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アシル基(好ましくは炭素数2〜5、例えば、ホルミル基、アセチル基等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜5、例えばアセトキシ基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14、例えばフェニル基)等を挙げることができる。
【0073】
1としての2価の連結基としては、好ましくは、直鎖、分岐あるいは環状のアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、アラルキレン基並びに、−S−、−C(=O)−、−N(R6)−、−SO−、−SO2−、−CO2−、−N(R6)SO2−あるいはこれらの基を2つ以上組み合わせた2価の基を挙げることができる。ここでR6は水素原子又はアルキル基(アルキル基の具体例としては上記R2と同様のものが挙げられる)を挙げることができる。
【0074】
一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
【化12】

【0076】
以下に一般式(II)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限
定されない。
【0077】
【化13】

【0078】
樹脂(A)が、さらに下記一般式(III)および(IV)で示される繰り返し単位のうち、少なくとも1種の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0079】
【化14】

【0080】
一般式(III)および(IV)中、
1は、水素原子、メチル基、シアノ基、ハロゲン原子又はペルフルオロ基を表す。
2は、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基又はアシル基を表す。
3〜R5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基またはアルキル基を表す。
Xは水素原子または有機基を表す。
1は水素原子または有機基を表す。
nは0〜5の整数、mは0〜5の整数であり、0≦n+m≦5である。
mが2〜5のとき、複数のXは、同じでも異なっていても良く、nが2〜5のとき、複数のR2は、同じでも異なっていてもよい。
【0081】
1およびR2の詳細は、一般式(I)におけるR1およびR2と同様である。
3〜R5の詳細は、一般式(II)におけるR3〜R5と同様である。
Xの詳細は、一般式(A)におけるXと同様である。
【0082】
1としての有機基は、好ましくは炭素数1〜40であり、酸分解性基であっても非酸分解性基であってもよい。
【0083】
非酸分解性基としては、一般式(A)におけるXとしての非酸分解性基と同様のものを挙げることができる。
例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルオキシ基(但し、−O−第3級アルキルは除く)、アシル基、シクロアルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルアミドメチルオキシ基、アルキルアミド基、アリールアミドメチル基、アリールアミド基等が挙げられる。
非酸分解性基としては、好ましくはアシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミドオキシ基、アルキルアミド基であり、より好ましくはアシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基である。
非酸分解性基において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基の様な炭素数1〜4個のものが好ましく、シクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基の様な炭素数3〜10個のものが好ましく、アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基の様な炭素数2〜4個のものが好ましく、アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基の様な炭素数2〜4個のものが
好ましく、アリール基としてはフェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基の様な炭素数6〜14個のものが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基が好ましい。
【0084】
1の酸分解性基の有機基としては、一般式(A)におけるXとしての酸分解性基と同様のものを挙げることができる。
【0085】
1としての有機基は、脂環及び芳香環などから選ばれる少なくとも1つの環状構造を有することが好ましく、上記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環構造を含む構造のような酸分解性基であることが好ましい。なお、脂環構造は有橋脂環構造であってもよい。
【0086】
以下一般式(III)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0087】
【化15】

【0088】
【化16】

【0089】
以下一般式(IV)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0090】
【化17】

【0091】
また、樹脂(A)は、アルカリ現像液に対する良好な現像性を維持するために、アルカリ可溶性基、例えばフェノール性水酸基、カルボキシル基が導入され得るように適切な他の重合性モノマーが共重合されていてもよいし、膜質向上のためにアルキルアクリレートやアルキルメタクリレートのような疎水性の他の重合性モノマーが共重合されてもよい。
【0092】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する一般式(I)又は(II)で表される繰り返し単位以外にも、一般式(III)又は(IV)で表される繰り返し単位、あるいはその他の繰り返し単位中に、酸分解性基を有していてもよい。
【0093】
なお、他の繰り返し単位が有しうる酸分解性基としては、一般式(I)〜(IV)で表される繰り返し単位が有しうる酸分解性基に加えて、例えば、−C(=O)−X0-R0で表されるものを挙げることができる。R0としては、t−ブチル基、t−アミル基等の3級アルキル基、イソボロニル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−シクロヘキシロキシエチル基等の1−アルコキシエチル基、1−メトキシメチル基、1−エトキシメチル基等のアルコキシメチル基、3−オキソアルキル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、トリアルキルシリルエステル基、3−オキソシクロヘキシルエステル基、2−メチル−2−アダマンチル基、メバロニックラクトン残基等を挙げることができる。X0は、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO2−又は−NHSO2NH−を表す。
【0094】
樹脂(A)における、酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、式(A)で表される基を有する脱離基を生じる基を有する繰り返し単位(即ち、式(Z1)〜(Z5)で示される基を有する繰り返し単位を含む)の含有量は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して、通常1〜97モル%、好ましくは3〜90モル%、更に好ましくは5〜80モル%である。
【0095】
一般式(I)で示される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して、通常1〜97モル%、好ましくは3〜90モル%、更に好ましくは5〜80モル%である。
【0096】
式(II)で示される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して、通常3〜95モル%、好ましくは5〜90モル%、更に好ましくは7〜85モル%である。
【0097】
式(III)で示される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して、通常1〜90モル%、好ましくは3〜80モル%、更に好ましくは5〜70モル%である。
【0098】
式(IV)で示される繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して、通常1〜90モル%、好ましくは3〜80モル%、更に好ましくは5〜70モル%である。
【0099】
酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して、樹脂を構成する全繰り返し単位中、一般的には2〜97モル%、好ましくは4〜90モル%、特に好ましくは6〜85モル%である。
【0100】
樹脂(A)の合成は、欧州特許254853号、特開平2−258500号、3−223860号、4−251259号に記載されているような、アルカリ可溶性樹脂に酸で分解しうる基の前駆体を反応させる方法、もしくは、酸で分解しうる基を有するモノマーを種々のモノマーと共重合する方法など公知の合成法により合成することができる。
【0101】
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、未露光部の膜厚保持の点から1,000以上が好ましく、アルカリに対する溶解速度を高める上で200,000以下が好ましい。さらに好ましくは1,500〜100,000の範囲であり、特に好ましくは2,000〜50,000の範囲である。また、分子量分散度(Mw/Mn)は、1.0〜4.0であることが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0、特に好ましくは、1.0〜2.5である。
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーのポリスチレン換算値をもって定義される。
また、樹脂(A)は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0102】
樹脂(A)の添加量は、合計で感光性組成物の全固形分に対し、一般的には10〜96質量%であり、好ましくは15〜96質量%であり、特に好ましくは20〜95質量%である。
【0103】
〔2〕活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物(B)
本発明に於いて、活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物(酸発生剤)としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている遠紫外線(KrF、ArFエキシマレーザーなど)、F2エキシマレーザー、電子線、EUV、X線などの活性光線または放射線の作用により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物の中から適宜に選択して併用することができる。たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等を挙げることができる。
【0104】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0105】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0106】
酸発生剤の含有量は、感光性組成物の全固形分を基準として、通常0.001〜40質量%、好ましくは0.01〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。酸発生剤は1種類を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0107】
本発明においては、解像力、パターン形状等の画像性能向上の観点から活性光線または放射線の照射によりスルホン酸を発生する化合物(B1)(スルホン酸発生剤)が好ましい。
好ましいスルホン酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホンを挙げることができる。
これらの中で、特に好ましいものの例を以下に挙げる。
【0108】
【化18】

【0109】
【化19】

【0110】
【化20】

【0111】
【化21】

【0112】
【化22】

【0113】
【化23】

【0114】
【化24】

【0115】
また、(B1)活性光線または放射線の照射によりスルホン酸を発生する化合物(スルホン酸発生剤)と(B2)活性光線または放射線の照射によりカルボン酸を発生する化合物(カルボン酸発生剤)の併用により、コントラスト、ラインエッジラフネスがより良好となる。
【0116】
スルホン酸発生剤/カルボン酸発生剤(質量比)は、通常1/1〜100/1、好ましくは1/1〜10/1である。酸発生剤を併用することにより、露光後のアウトガスおよび現像欠陥がさらに低減される。
【0117】
カルボン酸発生剤としては、特に下記一般式(BII)で表される化合物(B2)が好ましい。
【0118】
【化25】

【0119】
一般式(BII)中、R21〜R23は各々独立に、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R24は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、Zはイオウ原子又はヨウ素原子を表す。Zがイオウ原子である場合、pは1であり、ヨウ素原子である場合はpは0である。
【0120】
一般式(BII)において、R21〜R23は、各々独立に、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
21〜R23としてのアルキル基、アルケニル基又はアリール基は、各々置換基を有していてよく、アルキル基、アルケニル基の置換基の例としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。また、アリール基の置換基の例としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、ニトロ基、シアノ基、アルキル基(メチル基、エチル基、t-ブチル基、t-アミル基、オクチル基等)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)等を挙げることができる。
21〜R23は、各々独立に、好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基又は炭素数6〜24のアリール基を表し、より好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であり、特に好ましくは炭素数6〜15のアリール基である。これらの基は各々置換基を有していてもよい。
【0121】
24は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。
24としてのアルキル基、アルケニル基、アリール基は、置換基を有していてよく、アルキル基、アルケニル基の置換基の例としては、上記R21がアルキル基である場合の置換基の例として挙げたものと同じものが挙げられる。アリール基の置換基の例としては、上記R21がアリール基である場合の置換基の例として挙げたものと同じものが挙げられる。
【0122】
24は、好ましくは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基であり、より好ましくは、炭素数1〜18のアルキル、炭素数6〜18のアリール基であり、特に好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基である。
【0123】
Zはイオウ原子又はヨウ素原子を表す。pはZがイオウ原子である場合は1であり、Zがヨウ素原子である場合は0である。
尚、式(BII)のカチオン部の2つ以上が、単結合又は連結基(例えば、−S−、−O−など)により結合し、式(BII)のカチオン部を複数有するカチオン構造を形成してもよい。
【0124】
以下に、活性光線または放射線の照射によりカルボン酸を発生する化合物(B2)の好ましい具体例を挙げるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0125】
【化26】

【0126】
【化27】

【0127】
【化28】

【0128】
〔3〕含窒素塩基性化合物(C)
本発明においては、含窒素塩基性化合物を用いることが、解像力などの性能向上、保存安定性の向上などの観点から好ましい。
本発明で用いることができる好ましい含窒素塩基性化合物とは、フェノールよりも塩基性の強い化合物である。
好ましい化学的環境として、下記一般式(A)〜(E)の構造を挙げることができる。式(B)〜(E)は、環構造の一部であってもよい。
【0129】
【化29】

【0130】
ここで、R250 、R251 及びR252は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、ここでR250とR251は互いに結合して環を形成してもよい。これらは置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基又は炭素数3〜20のアミノシクロアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は炭素数3〜20のヒドロキシシクロアルキル基が好ましい。
また、これらはアルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含んでもよい。
【0131】
式中、R253、R254、R255及びR256は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。
更に好ましい化合物は、一分子中に異なる化学的環境の窒素原子を2個以上有する含窒素塩基性化合物であり、特に好ましくは、アミノ基と窒素原子を含む環構造の両方を含む化合物もしくはアルキルアミノ基を有する化合物である。
【0132】
好ましい具体例としては、グアニジン、アミノピリジン、アミノアルキルピリジン、アミノピロリジン、インダゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルフォリン、アミノアルキルモルフォリン等が挙げられる。これらの化合物は置換基を有していてよく、好ましい置換基としては、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、アミノアリール基、アリールアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、水酸基、シアノ基などが挙げられる。
【0133】
特に好ましい化合物として、グアニジン、1,1−ジメチルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジエチルアミノピリジン、2−(アミノメチル)ピリジン、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ−5−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、3−アミノエチルピリジン、4−アミノエチルピリジン、
【0134】
3−アミノピロリジン、ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペリジン、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ピペリジノピペリジン、2−イミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、ピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、5−アミノ−3−メチル−1−p−トリルピラゾール、ピラジン、2−(アミノメチル)−5−メチルピラジン、ピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、N−アミノモルフォリン、N−(2−アミノエチル)モルフォリンなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0135】
また、テトラアルキルアンモニウム塩型の含窒素塩基性化合物も用いることができる。
これらの中では、特に炭素数1〜8のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ-(n-ブチル)アンモニウムヒドロキシド等)が好ましい。
これらの含窒素塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0136】
酸発生剤と含窒素塩基性化合物の組成物中の使用割合は、感度及び解像力の点から、(酸発生剤の総量)/(含窒素塩基性化合物)(モル比)が2.5以上であることが好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターン及び解像力の点から、300以下が好ましい。(酸発生剤)/(含窒素塩基性化合物)(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0137】
〔4〕界面活性剤類
本発明においては、界面活性剤類を用いることができ、製膜性、パターンの密着性、現像欠陥低減等の観点から好ましい。
【0138】
界面活性剤の具体的としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、
【0139】
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(新秋田化成(株)製)、メガファックF171、F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラ−ドFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC04、SC105、SC106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)やアクリル酸系もしくはメタクリル酸系(共)重合ポリフローNo.75、No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明の組成物中の固形分100質量部当たり、通常、2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。
これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また、いくつかの組み合わせで添加することもできる。
【0140】
尚、界面活性剤としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
これらの界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0141】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)基など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C817基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、などを挙げることができる。
【0142】
界面活性剤の使用量は、感光性組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.001〜1質量%である。
【0143】
〔5〕その他の成分
本発明の感光性組成物には必要に応じて、さらに、染料、光塩基発生剤などを含有させることができる。
【0144】
1.染料
本発明においては、染料を用いることができる。
好適な染料としては油性染料及び塩基性染料がある。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS,オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、ローダミンB(CI45170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等を挙げることができる。
【0145】
2.光塩基発生剤
本発明の組成物に添加できる光塩基発生剤としては、特開平4−151156号、同4−162040号、同5−197148号、同5−5995号、同6−194834号、同8−146608号、同10−83079号、欧州特許622682号に記載の化合物が挙げられ、具体的には、2−ニトロベンジルカルバメート、2,5−ジニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、N−シクロヘキシル−4−メチルフェニルスルホンアミド、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル−N−イソプロピルカーバメート等が好適に用いることができる。これらの光塩基発生剤は、レジスト形状などの改善を目的とし添加される。
【0146】
3.溶剤類
本発明の感光性組成物は、上記各成分を溶解する溶剤に溶かして支持体上に塗布する。感光性組成物中の全固形分濃度として、通常2〜30質量%とすることが好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等が好ましく、これらの溶媒を単独あるいは混合して使用する。
【0147】
本発明の感光性組成物は基板上に塗布され、薄膜を形成する。この塗布膜の膜厚は、0.05〜4.0μmが好ましい。
【0148】
本発明においては、必要により、市販の無機あるいは有機反射防止膜を使用することができる。更に感光性組成物より形成される感光性膜の下層に反射防止膜を塗布して用いることもできる。
【0149】
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。前者は膜形成に真空蒸着装置、CVD装置、スパッタリング装置等の設備を必要とする。有機反射防止膜としては、例えば特公平7−69611号記載のジフェニルアミン誘導体とホルムアルデヒド変性メラミン樹脂との縮合体、アルカリ可溶性樹脂、吸光剤からなるものや、米国特許5294680号記載の無水マレイン酸共重合体とジアミン型吸光剤の反応物、特開平6−118631号記載の樹脂バインダーとメチロールメラミン系熱架橋剤を含有するもの、特開平6−118656号記載のカルボン酸基とエポキシ基と吸光基を同一分子内に有するアクリル樹脂型反射防止膜、特開平8−87115号記載のメチロールメラミンとベンゾフェノン系吸光剤からなるもの、特開平8−179509号記載のポリビニルアルコール樹脂に低分子吸光剤を添加したもの等が挙げられる。
【0150】
また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0151】
精密集積回路素子の製造などにおいて感光性膜上へのパターン形成工程は、基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆基板、ガラス基板、ITO基板、石英/酸化クロム被覆基板等)上に、本発明の感光性組成物を塗布し、乾燥又はベークし、感光性膜を形成し、次に、感光性膜に、遠紫外線(KrF、ArFエキシマレーザーなど)、F2エキシマレーザー、電子線、EUV、X線などの活性光線または放射線を照射し、好ましくは加熱、現像、リンス、乾燥することにより良好なパターンを形成することができる。
なお、本発明の感光性組成物は、電子線又はEUVによる露光が好ましい。
【0152】
現像において使用するアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n
−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノーアミン等のアルコ−ルアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液(通常0.1〜20質量%)を使用することができる。更に、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
これらの現像液の中で好ましくは第四アンモニウム塩、更に好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロオキシド、コリンである。
【0153】
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
【実施例】
【0154】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0155】
〔 樹脂の合成〕
合成例1:中間体1の合成
【0156】
【化30】

【0157】
ヒドロキノン55.1g、クロロエチルビニルエーテル106.6gをDMAc1.5Lに溶解させ、水酸化ナトリウム48gを加えて100℃で2時間攪拌した。その後、NaCl塩を濾過し、酢酸エチル700mlを加え、さらに水を加えて洗浄・分液操作を2回行った。有機層に硫酸マグネシウム30gを加えて脱水し、硫酸マグネシウムろ過、溶剤を減圧下留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、中間体1を77.5g得た。
【0158】
合成例2:ビニルエーテル1の合成
【0159】
【化31】

【0160】
合成例1で得られた中間体1 72.1g、4−ジメチルアミノピリジン4.9gをピリジン60gに溶解させ、室温で攪拌した。その後、無水酢酸77.4gを1時間かけて滴下した。滴下後90℃に加熱してさらに4時間撹拌した後、1NのHCl水溶液で中和し、酢酸エチル−水で洗浄、抽出を行った。有機層を無水硫酸ナトリウム40gを用いて脱水し、溶媒を留去した後、ビニルエーテル1を78.2g得た。
【0161】
合成例3:ポリマー1の合成
【0162】
【化32】

【0163】
反応容器中で、VP−8000(日本曹達製)20gをPGMEA100gに溶解し、この溶液を60℃、20mmHgまで減圧して約20gの溶剤を系中に残存している水と共に留去した。20℃まで冷却し、合成例2で得られたビニルエーテル1 40.69g、p−トルエンスルホン酸1.0gを添加し、室温にて2時間撹拌した。その後、トリエチルアミン1.16gを添加して中和した。この溶液をヘキサン1L中に滴下しポリマーを沈殿させた。ろ過した固体をアセトン150mlに溶解し、再度ヘキサン1L中に滴下、ろ過した固体を反応容器に加え、さらにテトラヒドロフラン120ml、水20ml、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド7.3gを加え4時間加熱還流を行った。その後、室温まで放冷された反応溶液に0.1N塩酸水溶液を加え中和し、反応溶液を水2L中に滴下した。沈殿したポリマーをアセトンに溶解し、再度水1L中に滴下し、沈殿した固体を濾別して減圧乾燥してポリマー1を48.0g得た。
【0164】
合成例4:ポリマーA−1の合成
【化33】

【0165】
反応容器中で、合成例3で得られたポリマー1 20gをPGMEA100gに溶解し、この溶液を60℃、20mmHgまで減圧して約20gの溶剤を系中に残存している水と共に留去した。20℃まで冷却し、2−フェノキシエチルビニルエーテル2.7g、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム0.04gを添加し、室温にて3時間撹拌した。その後、トリエチルアミン0.03gを添加して中和し、酢酸エチル40g、水40gを加えて洗浄操作を3回行った。その後、溶媒量を調整して30質量%のポリマー溶液を得た。このポリマーをA−1とする。1Hおよび13C−NMR解析から、ポリマーA−1は、ポリマー1中のOHのアセタール保護率が24.3%であるポリマーであった。
【0166】
合成例5:中間体2の合成
【0167】
【化34】

【0168】
反応容器中で(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル166.2g、脱水テトラヒドロフラン500mlを加え、攪拌しながら系中に窒素ガスを流し、溶液を氷浴で冷却した。そこにメチルマグネシウムブロミド(濃度1.0M テトラヒドロフラン溶液)2.2Lを3時間かけて滴下した。滴下後徐々に室温まで昇温し、さらに1時間攪拌した。その後飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチル-水で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウム40gを用いて脱水し、溶媒を留去した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、中間体2を144.6g得た。
【0169】
合成例6:モノマー1の合成
【0170】
【化35】

【0171】
反応容器中で合成例5で得られた中間体2 116.4g、脱水テトラヒドロフラン1000ml、ピリジン60.9gを加え、攪拌しながら系中に窒素ガスを流し、溶液を氷浴で冷却した。そこにアクリル酸クロリド69.7gのテトラヒドロフラン100ml溶液を1時間かけて滴下した。滴下後徐々に室温まで昇温し、さらに2時間攪拌した。その後飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチル-水で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウム25gを用いて脱水し、溶媒を留去した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、モノマー1を103.3g得た。
【0172】
合成例7:ポリマー2の合成
【0173】
【化36】

【0174】
反応容器中で合成例6で得られたモノマー1 66.1gをテトラヒドロフラン120mlに溶解し、攪拌しながら系中に窒素ガスを流した。そこに重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)を4.8g添加し、反応溶液を65℃に加熱した。10時間加熱攪拌した後反応溶液を室温まで放冷し、ヘキサン1.5L中に滴下しポリマーを沈殿させた。ろ過した固体をアセトン150mlに溶解し、再度ヘキサン2L中に滴下、ろ過した固体を減圧乾燥してポリマー2を48.9g得た。GPC解析から、ポリマー2の重量平均分子量は10500、分子量分散度は1.59であった。
【0175】
合成例8:ポリマーA−7の合成
【0176】
【化37】

【0177】
反応容器中に合成例7で得られたポリマー2 20gをPGMEA100gに溶解し、この溶液を60℃、20mmHgまで減圧して約20gの溶剤を系中に残存している水と共に留去した。20℃まで冷却し、2−シクロヘキシルエタノール4.7g、t−ブチルビニルエーテル3.6g、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム0.06gを添加し、室温にて1時間撹拌した。その後、トリエチルアミン0.05gを添加して中和し、酢酸エチル40g、水40gを加えて洗浄操作を3回行った。その後、溶媒量を調整して30質量%のポリマー溶液を得た。このポリマーをA−7とする。ポリマーA−7の1Hおよび13C−NMR解析から、フェノール性OHのアセタール保護率が25.6%であった。
【0178】
用いるモノマー、ポリマー、ビニルエーテルを変更する以外は同様の方法でポリマーA−2〜A−6、A−8〜A−18を得た。
ポリマーA−1〜A−18の構造を以下に示す。
【0179】
【化38】

【0180】
【化39】

【0181】
【化40】

【0182】
合成したポリマーの重量平均分子量、分子量分散度および組成比を表1に示す。
【0183】
【表1】

【0184】
〔実施例1〜18及び比較例1〕
〔感光性組成物の調製〕
表2に示す本発明の樹脂:0.948g(固形分換算)
酸発生剤: 0.05g
有機塩基性化合物:0.003g
界面活性剤: 0.002g
を下記表2に示す溶剤16.79gに溶解させ、固形分濃度が5.0質量%の溶液を調製した。この溶液を孔径0.1μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで濾過し、感光性組成物(ポジ型レジスト液)を得た。なお、比較例用の組成物では、本発明以外の樹脂(比較樹脂1)を用いた。
【0185】
〔パターン作製および評価(電子線)〕
上記のように調製したポジ型レジスト液をスピンコータを利用して、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコンウエハー上に均一に塗布し、120℃90秒間加熱乾燥を行い、膜厚0.3μmの感光性膜を形成した。この感光性膜に対し、電子線描画装置((株)日立製作所製HL750、加速電圧50KeV)を用いて電子線照射を行った。照射後に110℃、90秒ベークし、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。得られたパターンを下記の方法で評価した。
【0186】
〔感度〕
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製 S−4300)を用いて観察した。150nmライン(ライン:スペース=1:1)を解像する時の最小照射エネルギーを感度とした。
【0187】
〔解像力〕
上記の感度を示す照射量における限界解像力(ラインとスペースが分離解像)を解像力とした。
【0188】
〔ラインエッジラフネス〕
上記の感度を示す照射量における150nmラインパターンの長さ方向50μmにおける任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いてエッジがあるべき基準線からの距離を測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。
【0189】
評価結果を表2に示す。
【0190】
【表2】

【0191】
表2における記号は以下のとおりである。
【0192】
〔酸発生剤〕
【0193】
【化41】

【0194】
〔界面活性剤〕
D−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)
D−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)
D−3:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
D−4:ポリオキシエチレンラウリルエーテル
【0195】
〔溶剤〕
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S−2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0196】
〔塩基性化合物〕
N−1:トリオクチルアミン
N−2:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン
N−3:2,4,6−トリフェニルイミダゾール
【0197】
比較樹脂1:重量平均分子量 8900、分子量分散度 1.54、
組成比(モル比) 70/10/20
【0198】
【化42】

【0199】
表2の結果から、本発明の感光性組成物は、電子線の照射によるパターン形成に関し、比較例の組成物に比べて、高解像力であり、ラインエッジラフネスに優れていることがわかる。
【0200】
[実施例19〜25及び比較例2]
〔パターン作製および評価(EUV)〕
上記実施例1、3、4、6、7、15、18および比較例1の各感光性組成物を用い、
実施例1と同様の方法で感光性膜を得た。但し、感光性膜厚は0.15μmとした。得られた感光性膜にEUV光(波長13nm)を用いて、露光量を0〜10.0mJの範囲で0.5mJづつ変えながら面露光を行い、さらに110℃、90秒ベークした。その後2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて、各露光量での溶解速度を測定し、感度曲線を得た。この感度曲線において、レジストの溶解速度が飽和するときの露光量を感度とし、また感度曲線の直線部の勾配から溶解コントラスト(γ値)を算出した。γ値が大きいほど溶解コントラストに優れている。これらの結果をそれぞれ実施例19〜25および比較例2とし、表3に示す。
【0201】
【表3】

【0202】
表3の結果から、本発明の感光性組成物は、EUV光の照射による特性評価において、比較例の組成物に比べて、高感度で高コントラストであり、優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、下記一般式(A)で表される基を有する脱離基を生じる基を有する、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂、及び、
(B)活性光線または放射線の作用により酸を発生する化合物
を含有することを特徴とする感光性組成物。
【化1】

一般式(A)中、
1aは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表す。
Xは水素原子または有機基を表す。
n1は1〜5の整数を表す。
n2は0〜4の整数を表す。但し、n1+n2=5である。
1a及びXの各々について複数ある場合、同じであっても、異なっていてもよい。
【請求項2】
酸の作用により分解して、アルカリ可溶性基を生じるとともに、一般式(A)で表される基を有する脱離基を生じる基が、下記一般式(Z1)〜(Z5)から選択されたいずれかの基であることを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。
【化2】

一般式(Z1)〜(Z5)中、
11a〜R13aは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、および該アラルキル基は、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−または−SO−を有していてもよい。
14aおよびR15aは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、および該アラルキル基は、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−及び−SO−から選ばれる少なくとも一つを有していてもよい。
16aは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基またはアリール基を表す。該アルキル基、該シクロアルキル基、該アルケニル基、および該アラルキル基は、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−及び−SO−から選ばれる少なくとも一つを有していてもよい。
尚、R11a、R12a、R13aのうちの2つ、またはR14a、R15a、R16aのうちの2つが結合して環構造を形成してもよい。該環構造は、環の中に、それぞれ途中に、−O−、−S−、−CO2−、−CO−、−SO2−及び−SO−から選ばれる少なくとも一つを有して
いてもよい。
また、R11a、R12a、R13aのうちいずれか、R14a、R15a、R16aのうちいずれかに、上記一般式(A)で表される基を少なくとも1つ含有する。
【請求項3】
上記一般式(A)中のXのうち少なくとも1つが水素原子であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
上記一般式(A)中のXのうち少なくとも1つが酸の作用により分解しアルカリ可溶性基を生じる基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項5】
樹脂(A)が、下記一般式(I)および(II)で示される繰り返し単位のうち、少なくとも1種の繰り返し単位含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性組成物。
【化3】

一般式(I)および(II)中、
1は、水素原子、メチル基、シアノ基、ハロゲン原子又はペルフルオロ基を表す。
2は、アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基又はアシル基を表す。
nは0〜5の整数、mは1〜5の整数であり、1≦n+m≦5である。
3〜R5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基またはアルキル基を表す。
1は単結合または2価の連結基を表す。
Zは上記一般式(Z1)〜(Z5)のうちいずれかで示される基を表す。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の感光性組成物により、感光性膜を形成し、該感光性膜を露光、現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2006−30232(P2006−30232A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204239(P2004−204239)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】