説明

感光性組成物及びソルダーレジスト組成物

【課題】高温下に晒されたとしても変色が生じ難く、かつ基板等に対する密着性が低下し難いレジスト膜を得ることを可能とする感光性組成物の提供。
【解決手段】1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素モノマーもしくは重合性炭化水素ポリマーである重合性炭化水素化合物(A)と、(B)1分子中に少なくとも2つの環状エーテル基を有する化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)下記の式(1)で表されるアンモニウム塩または特定構造で表されるホスホニウム塩を含む、感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にソルダーレジスト膜を形成したり、または発光ダイオードチップが搭載される基板上に光を反射させるレジスト膜を形成したりする用途に好適に用いられる感光性組成物及びソルダーレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板を高温の半田から保護するための保護膜として、ソルダーレジスト膜が広く用いられている。
【0003】
下記の特許文献1は、上記ソルダーレジスト膜を形成するための材料を開示している。より具体的には、特許文献1は、アクリレートプレポリマー樹脂を含有するソルダーレジスト材料を開示している。
【0004】
従来、様々な電子機器用途において、プリント配線基板の上面に発光ダイオード(以下、LEDと略す)チップが搭載されている。LEDから生じた光の内、上記プリント配線基板の上面側に到達した光をも利用するために、プリント配線基板の上面に、白色ソルダーレジスト膜が形成されていることがある。LEDチップの表面からプリント配線基板とは反対側に直接照射される光だけでなく、プリント配線基板の上面側に到達した光が白色ソルダーレジスト膜により反射され、該反射光も利用される。従って、LEDから生じた光の利用率を高めることができる。
【0005】
下記の特許文献2は、白色ソルダーレジスト膜を形成するための材料の一例を開示している。すなわち、特許文献2は、加水分解性アルコキシ基を有するシラン変性エポキシ樹脂と、他のエポキシ樹脂とを含有しているソルダーレジスト材料を開示している。
【0006】
他方、下記の特許文献3は、アクリレート樹脂と、エポキシ樹脂とを含有している白色ソルダーレジスト材料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−25374号公報
【特許文献2】特開2007−249148号公報
【特許文献3】特開2007−322546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されている各材料からなるレジスト膜は、半田リフロー時の温度のような200℃近くの高温の環境に晒されると、レジスト膜が黄色に変色したり、プリント配線基板などの基板に対する密着性が低下したりすることがあった。
【0009】
本発明の目的は、高温に晒されたとしても、黄変などの変色が生じ難く、かつ基板に対する密着性に優れているレジスト膜を形成することを可能とする感光性組成物、並びに該感光性組成物からなるソルダーレジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、(A)1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素モノマーもしくは重合性炭化水素ポリマーである重合性炭化水素化合物と、(B)1分子中に少なくとも2つの環状エーテル基を有する化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)下記の式(1)で表されるアンモニウム塩(D1)または下記の式(2)で表されるホスホニウム塩(D2)を含む、感光性組成物が提供される。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
式(1)または式(2)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭化水素基または酸素原子を有する有機基からなる群から選択された一種であり、Xはハロゲンを含むアニオンであり、R〜Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0014】
本発明に係る感光性組成物では、好ましくは、上記XがプロトンHと結合してなるHKのpKaが0以上、7未満である。その場合には、Xが上記環状エーテル基を有する化合物(B)と適度に反応し、水酸基を生じる。最終的に得られたレジスト膜における密着性が上記水酸基により高められる。
【0015】
本発明に係る感光性組成物では、より好ましくは、前記Xが炭素数1〜12の脂肪族モノカルボン酸、炭素数1〜12の脂肪族多価カルボン酸、炭素数6〜12の脂環式モノカルボン酸また及び炭素数6〜12の脂環式多価カルボン酸からなる群から選択された一種のカルボン酸の共役塩基である。この場合には、高温に晒されたとしても、変色し難いレジスト膜を得ることができる。
【0016】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は、本発明の感光性組成物からなるため、得られたレジスト膜では、高温に晒されたとしても、基板に対する密着性が十分であり、かつ変色が生じ難い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記特定の重合性炭化水素化合物(A)と、上記特定の環状エーテル基含有化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、上記特定の化合物(D)とを含むため、光の照射により硬化し、硬化により得られたレジスト膜などの硬化物では、高温に晒されたとしても黄変などの変色が生じ難く、かつ基板等に対する密着性が効果的に高められ る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のソルダーレジスト膜を有するLEDデバイスの一例を示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態及び実施例を挙げることにより、本発明を明らかにする。
【0020】
〔1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有する、重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物(A)〕
本発明に係る感光性組成物は、上記特定の重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方を含む。すなわち、本発明に係る感光性組成物は、上記化合物(A)として、重合性炭化水素モノマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素ポリマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの双方を含んでいてもよい。また、上記重合性炭化水素モノマーとしては、1種の重合性炭化水素モノマーのみが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素モノマーが用いられてもよい。同様に、上記重合性炭化水素ポリマーとしても、1種の重合性炭化水素ポリマーなどが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素ポリマーが用いられてもよい。
【0021】
上記重合性炭化水素モノマーとしては、重合性不飽和基を有するモノマー、または重合性環状エーテル基を有するモノマーが挙げられる。上記重合性炭化水素ポリマーとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂またはオレフィン樹脂などが挙げられる。なお、本明細書における「樹脂」なる用語は、固形の樹脂だけでなく、液状樹脂及びオリゴマーをも含む。
【0022】
重合性不飽和基を有するモノマーは、(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリル基を有する化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコールのジ(メタ)アクリレートや、多価アルコール、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物もしくは多価アルコールのプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレートや、フェノール、フェノールのエチレンオキサイド付加物もしくはフェノールのプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートや、グルセリンジグリシジルエーテルもしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートや、メラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0023】
多価アルコールとしては、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール又はトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。フェノールの(メタ)アクリレートとしては、フェノキシ(メタ)アクリレート又はビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0025】
上記重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含むことが好ましく、より好ましくは、重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーである。重合性不飽和基を有するモノマーが、2個以上の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含む場合には、最終的に得られたレジスト膜の架橋密度を高めることができ、従って、高温に晒されたとしてもレジスト膜が変色し難い。
【0026】
上記重合性炭化水素ポリマーは、下記の(i)〜(iv)で挙げられるカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。
【0027】
(i)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合とを有する化合物を共重合させた樹脂
(ii)カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)に、1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基とを有する化合物(b2)を反応させた樹脂
(iii)1分子中に1個のエポキシ基と不飽和二重結合とを有する化合物と不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、反応により生成した第2級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた樹脂
(iv)水酸基を有するポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、反応により生成したカルボン酸基に、1分子中に1個のエポキシ基及び不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる、水酸基とカルボキシル基とを有する樹脂
【0028】
なお、レジスト膜の高温下における黄変性をより一層高めることができるので、上記重合性炭化水素ポリマーは、上記(ii)カルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。
【0029】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(b11)と、1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)とを共重合させることにより得られる。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルやグリコール変性(メタ)アクリレートが挙げられる。1種の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が用いられてもよく、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が併用されてもよい。
【0031】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート又はカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。グリコール変性(メタ)アクリレートとして、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)としては、(メタ)アクリル酸、不飽和基とカルボン酸との間が鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性などによりエステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸、マレイン酸などのカルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物が挙げられる。1種の上記化合物(b12)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b12)が用いられてもよい。
【0033】
1分子中にオキシラン環及びエチレン性不飽和基を有する化合物(b2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノアクリレートが挙げられる。なかでも、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましい。1種の化合物(b2)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b2)が用いられてもよい。
【0034】
カルボキシル基含有樹脂(i)〜(iv)の酸価は50〜150mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。酸価が50〜150mgKOH/gの範囲内にあると、現像の際の解像度を高めることができる。
【0035】
なお、化合物(i)は、1個以上の不飽和二重結合基および2個以上のカルボキシル基または酸無水物基を有する重合性炭化水素ポリマーを含有し、酸価が50〜150mgKOH/gであることがより好ましい。現像の際の解像度を高めることができる。
【0036】
なお、ここでいう「酸価」は、具体的には、化合物を溶剤(トルエン/2−プロパノール/水(体積比で5/5/0.05))に溶かして水酸化カリウムを用いて中和滴定することにより算出できる。中和滴定法としては、P−ナフトールベンゼイン指示薬法や電位差滴定法が挙げられる。
【0037】
また、重合性炭化水素ポリマーは、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。例えば、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂が挙げられる。1種のエポキシ樹脂が用いられてもよく、2種以上のエポキシ樹脂が組み合わせて用いられてもよい。
【0038】
〔1分子中に少なくとも2個の環状エーテル基を有する化合物(B)〕
本発明に係る感光性組成物は、1分子中に少なくとも2つの環状エーテル基を有する化合物を含有する。このような環状エーテル基を有する化合物(B)としては、ジシクロペンタジエンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アセタール、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレングリコールの3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸ジエステル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ヒダントイン型を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、カテコールやレゾルシノール等の多価フェノールまたはグリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテル、フタル酸またはイソフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、更にはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、水溶性エポキシ樹脂、その他ウレタン変性エポキシ樹脂、などが挙げられる。
【0039】
上記環状エーテル基を有する化合物(B)は、光重合開始剤が光の照射により活性化されると、上記重合性炭化水素モノマーもしくはポリマー(A)と反応し、感光性組成物を硬化させる。
【0040】
上記環状エーテル基を有する化合物(B)は、上記化合物(A)100重量部に対し、好ましくは、0.1〜50重量部の割合で反応し、より好ましくは1〜30重量部の割合で配合される。環状エーテル基を有する化合物(B)の配合割合が上記好ましい範囲内にある場合、高温に晒されでも変色しがたいレジスト膜を得ることができる。
【0041】
上記環状エーテル基を有する化合物は、1種のみが用いられてもよく、1種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0042】
〔重合開始剤(C)〕
光重合開始剤(C)としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール、イミダゾール、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、アントラキノン、ベンズアンスロン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、安息香酸エステル、アクリジン、フェナジン、チタノセン、α−アミノアルキルフェノン、オキシム、またはこれらの誘導体等が挙げられる。1種の光重合開始剤(C)が用いられてもよく、2種以上の光重合開始剤(C)が用いられてもよい。
【0043】
上記透明な重合性炭化水素モノマーと透明な重合性炭化水素ポリマーとの合計100重量部に対して、上記光重合開始剤(C)は0.1〜30重量部の範囲内で含有されることが好ましく、1〜15重量部の範囲内で含有されることがより好ましい。光重合開始剤(C)が上記好ましい範囲内で含有される場合には、感光性組成物の感光性をより一層高めることができる。
【0044】
〔式(1)で表されるアンモニウム塩(D1)または式(2)で表されるホスホニウム塩(D2)からなる化合物(D)〕
本発明に係る感光性組成物は、上記化合物(D)を含有し、該化合物(D)の含有によ り、高温に晒されたとしても、該化合物(D)自体が分解してルイス塩基を発生し、それによって高温環境下の酸化により生じた過酸化物が分解されるので、黄変等の着色を確実に抑制することができる。
【0045】
上記化合物(D)は、下記の式(1)で表されるアンモニウム塩(D1)または下記の式(2)で表されるホスホニウム塩(D2)からなる。
【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
上記式(1)または式(2)におけるR〜Rは、それぞれ、水素原子、炭化水素基または酸素原子を有する有機基であり、Xはハロゲンを含むアニオンである。R〜Rは、同一であっても、異なっていてもよい。
【0049】
上記式(1)または式(2)で表される化合物(D)においては、好ましくは、R〜Rは、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、またはイソブチル基が挙げられる。特に好ましくは、メチル基、エチル基、n−ブチル基またはシクロヘキシル基である。R〜Rは、炭素数1〜12のアルキル基のように好ましい官能基である場合には、高温下における基板に対する密着性の低下をよりいっそう確実に抑制することができる。
【0050】
上記Xは、プロトンHと結合してなるHXのpKaが0以上、7未満である塩基である。このようなXの具体例としては、リン酸アニオン、亜硝酸アニオン、カルボキシルアニオン、炭酸アニオン、ピリジニウムアニオン、テトラフェニルボレートアニオン、テトラエチルボレートテトラブチルボレートアニオン、テトラキス(4−メチルフェニル)ボレート、テトラキス(4−tert−ブチルフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(4−メトキシフェニル)ボレートアニオン、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートアニオン、ブチルトリスフェニルボレートアニオン、ブチルトリス−4−tert−ブチルフェニルボレートアニオン、ブチルトリスナフチルボレートアニオンなどが挙げられる。
【0051】
上記化合物(D)におけるXは、好ましくは、炭素数1〜12の脂肪族モノカルボン酸、炭素数1〜12の脂肪族多価カルボン酸、炭素数6〜12の脂環式モノカルボン酸及び炭素数6〜12の脂環式族多価カルボン酸からなる群から選択された一種のカルボン酸の共役塩基であり、その場合には、感光性組成物を用いて得られたレジスト膜は、高温に晒されたとしても、よりいっそう変色し難く、基板に対する密着性もよりいっそう低下し難い。
【0052】
上記Xが好ましいカルボン酸の共役塩基である場合の上記カルボン酸の具体例として は、安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、tert−ブチル安息香酸、サリチル酸、アニス酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、イソプロポキシ安息香酸、ブトキシ安息香酸、ニトロ安息香酸、フルオロ安息香酸、レゾルシン酸、ナフタレンカルボン酸、ビフェニルカルボン酸等の炭素数7〜14の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の炭素数7〜14の芳香族多価カルボン酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、オクチル酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、トリフルオロ酢酸、フェニル酢酸、クロロ酢酸、グリコール酸、乳酸などの炭素数1〜18の脂肪族モノカルボン酸;シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンニ酸、ドデカンニ酸、ヘキサデカンニ酸、ヘプタデカンニ酸、オクタデカンニ酸、メチルマロン酸、エチルチリマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、メチルエチルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、メチルエチルコハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの炭素数1〜18の脂肪族多価カルボン酸;シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸などの炭素数6〜18脂環式多価カルボン酸などが挙げられる。
【0053】
本発明においては、上記化合物(D)は、化合物(A)と化合物(B)の合計100重量部に対し、0.01〜5重量部の割合で配合させることが好ましい。この範囲内であれば、最終的に得られたレジスト膜の基板に対する密着性が十分に高められ、かつレジスト膜の現像性を一層高めることができる。
【0054】
0.01重量部未満では、基板に対する密着性が十分でないことがあり、5重量部を超えると現像性が低下することがある。
【0055】
〔無機フィラー(E)〕
本発明に係る感光性組成物は無機フィラーを含有してもよい。このような無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド粉末、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、タルク、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、クレー、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マイカ、雲母粉、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、窒化チタン、フッ化セリウム又は酸化セリウムが挙げられる。
【0056】
なお、無機フィラーは、煮沸法により測定されたpHが6.8以上11以下であることが好ましく、その場合には、レジスト膜の黄変をより一層抑制できる。より好ましくはpH7.0以上、さらに好ましくはpH7.4以上であり、さらに好ましくはpH8.1以上である。感光性組成物のポットライフをより一層良好にすることができるので、上記無機フィラーの煮沸法により測定されたpHは10.0以下であることが好ましく、より好ましくはpH9.0以下である。
【0057】
なお、上記煮沸法とは、(a)上記無機フィラー5gを純水100mLに加えた液を加熱し、5分間沸騰させた後、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得、(b)次に、得られた沸騰処理液に、沸騰に際し蒸発した量の水を加えて、全量を100mLとして得られた液のpHを測定する方法である。
【0058】
上記煮沸法では、具体的には、上記無機フィラー5gを純水100mLに加えた液を、開口を有する容器内に入れる。上記容器を加熱することにより容器内の液を加熱し、容器内の液を沸騰させる。沸騰し始めてから5分間、沸騰状態を維持する。その後、容器の開口に栓体を取り付けて、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得る。容器の開口から栓を取り外して、得られた沸騰処理液に、沸騰により蒸発した水量の水を加えて、水量を100mLとする。容器の開口に栓体を取り付けて、1分間振り混ぜた後、5分間静置する。このようにして、測定液を得る。得られた測定液のpHは、JIS Z8802の7.に記載された操作に準拠して測定できる。
【0059】
上記無機フィラーとしては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、鉛白、硫化亜鉛、チタン酸カリウム又はチタン酸鉛が挙げられる。なかでも、取り扱いやすいことから、酸化チタンが好ましい。
【0060】
上記無機フィラーは、ルチル型酸化チタンであることが好ましい。ルチル型酸化チタンの場合、ソルダーレジスト膜が光に晒されたときに、黄変し難い。
【0061】
上記無機フィラーは、表面を塩基性にするために、塩基性金属酸化物もしくは塩基性金属水酸化物で被覆されて表面が塩基性とされていることが好ましい。上記無機フィラーの表面が塩基性であると、高温に晒されてもレジスト膜が黄変しにくくすることができる。
【0062】
塩基性金属酸化物もしくは塩基性金属水酸化物としては、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、ストロンチウム、アンチモン、バリウムまたはカルシウムなどの金属化合物もしくは塩基性金属水酸化物が挙げられる。なかでも、高温に晒されたときに黄変する恐れを少なくできるので、無機フィラーを被覆する材料に酸化ジルコニウムが含まれていることが好ましい。
【0063】
無機フィラーの被覆方法としては、被覆する無機フィラーを水または水を主成分とする媒液中に分散させる方法が挙げられる。この際に、無機フィラーの凝集程度に応じて、サンドミル、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて、予備粉砕を行ってもよい。スラリーのpHは、無機フィラーによって適宜設定することが好ましいが、例えば酸化チタンであればpHは9以上であることが好ましい。次に、スラリー中に被覆する金属の水溶性塩を添加する。その後、中和、固液分離、乾燥及び乾式粉砕を実施し、これによって、被覆された無機フィラーを得ることができる。
【0064】
上記無機フィラーは、無機フィラーの表面の塩基性を高めるために、無機フィラーの酸性部位と反応することができる化合物を含有することが好ましい。また、無機フィラーの塩基性を高めるために、無機フィラーの酸性部位と反応することができる化合物で覆われた無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーの酸性部位と反応することができる化合物としては、(1)トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、もしくはペンタエリスリトール等の多価アルコール、(2)モノエタノールアミン、モノプロパノールアミンジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミン、もしくはトリプロパノールアミン等のアルカノールアミン、(3)クロロシランまたは(4)アルコキシシランが挙げられる。
【0065】
無機フィラーの酸性部位と反応することができる化合物が塩基性化合物であれば、無機フィラーの塩基性をより高めることができ、好ましい。このような好ましい塩基性化合物としては、アルカノールアミンが挙げられる。
【0066】
無機フィラーに上記化合物で表面処理する方法としては、(1)有機化合物を添加した無機フィラーを流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機を用いて粉砕する方法、(2)ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用いて、乾式粉砕した後の無機フィラーを上記化合物と攪拌、混合する方法、(3)無機フィラーの水性スラリーに上記化合物を添加し撹拌する方法が挙げられる。特に、(1)の方法は、無機フィラーの粉砕と上記化合物による表面処理とを同時に行うことができ好ましい。乾式粉砕機としては、流体エネルギー粉砕機が好ましく、ジェットミルなどの旋回式粉砕機がより好ましい。
【0067】
感光性組成物100重量%中の無機フィラーの含有量は、3重量%以上、80重量%以下であることが好ましい。より好ましい下限は10重量%であり、より好ましい上限は75重量%である。
【0068】
〔その他の成分〕
本発明に係る感光性組成物は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、溶剤、着色剤、充填剤、消泡剤、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含有してもよい。
【0069】
〔調製方法〕
本発明に係る感光性組成物は、例えば、各配合成分を撹拌混合した後、3本ロールにて均一に混合することにより調製できる。
【0070】
感光性組成物を硬化させるために使用される光源として、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を発光する照射装置が挙げられる。上記光源として、例えば、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ又はエキシマレーザーが挙げられる。これらの光源は、感光性組成物の構成成分の感光波長に応じて適宜選択される。光の照射エネルギーは、所望とする膜厚又は感光性組成物の構成成分により適宜選択される。光の照射エネルギーは、一般に、10〜3000mJ/cmの範囲内である。
【0071】
〔LEDデバイス〕
本発明に係る感光性組成物は、LEDチップが基板に実装されているLEDデバイス中のソルダーレジスト膜の形成に好適に用いられる。図1は、本発明に係る感光性組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を有するLEDデバイスを模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【0072】
図1に示すLEDデバイス1では、基板2の上面2a上に、ソルダーレジスト膜3が形成されている。ソルダーレジスト膜3上に、LEDチップ7が搭載されている。
【0073】
基板2は、ガラス層5と樹脂層6とを有する積層基板からなる。もっとも、基板2は特に限定されず、樹脂と他の材料からなる積層基板に限らず、セラミック多層基板などの他の積層基板により形成されていてもよい。さらに、基板2は、単一の樹脂材料からなる樹脂基板であってもよい。基板2の上面2a上には、電極4a,4bが形成されている。電極4a,4bは、適宜の金属もしくは合金からなる。
【0074】
ソルダーレジスト膜3は、本発明の感光性組成物を基板2の上面2a上に塗工し、露光・現像することにより形成されている。より具体的には、電極4a,4bを形成した後に、基板2の上面2a上の全面に感光性組成物を塗工する。次に、下方に電極4a,4bが位置する部分が遮光部とされているマスクを用いて感光性組成物を上方から選択的に露光する。露光により、光が照射された領域では、感光性組成物が硬化する。遮光部で覆われた領域では感光性組成物の硬化は進行しない。従って、硬化していない感光性組成物を溶解する溶剤を用いて、露光されていない感光性組成物部分を除去する。このようにして、図1に示す開口部3a,3bを有するソルダーレジスト膜3を得ることができる。開口部3a,3bには、上記電極4a,4bがそれぞれ露出している。
【0075】
次に、下面7aに端子8a,8bを有するLEDチップ7をソルダーレジスト膜3上に搭載し、半田9a,9bにより端子8a,8bと電極4a,4bとをそれぞれ接合する。このようにして、LEDデバイス1が得られる。
【0076】
LEDデバイス1では、LEDチップ7を駆動すると、破線で示すように光が発せられる。この場合、LEDチップ7から基板2の上面2aとは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、ソルダーレジスト膜3に到達した光が矢印Aで示すように反射される。ソルダーレジスト膜3は、白色であり、上記光を高い効率で反射させる。従って、矢印Aで示す反射光も利用されるので、LEDチップ7の光の利用効率を高めることができる。
【0077】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。
【0078】
まず、実施例及び比較例の評価方法を説明する。
【0079】
(評価方法)
(1)測定サンプルの調製
80mm×90mm×厚さ0.8mmのガラスエポキシ基板、品番:FR−4からなる基板上に、スクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルバイアス製スクリーン印刷版を用いて、感光性組成物を全面に印刷した。印刷後、80℃のオーブン内で20分間印刷された感光性組成物層を乾燥させた。次に、紫外線照射装置を用い、未露光領域が遮光部とされているパターンを有するフォトマスクを介し、感光性組成物層に、波長365nmの紫外線を照射エネルギーが400mJ/cmとなるように、100mW/cmの紫外線照度で4秒間照射した。紫外線による硬化が進行し、白色のレジスト膜が形成された。照射後、炭酸ナトリウムの1重量%水溶液にレジスト膜を浸漬して現像し、未露光部の感光性組成物層部分を除去した。このようにして、遮光部が開口部とされているパターンを有するレジスト膜を得た。しかる後、150℃のオーブン内でレジスト膜を1時間加熱し、硬化させ、レジスト膜が形成されているサンプルを得た。なお、得られたサンプルにおけるレジスト膜の厚みは20μmであった。
【0080】
(2)耐熱性
(1)で得たサンプルを加熱オーブン内に入れ、270℃で5分間加熱した。
【0081】
色彩・色差計(コニカミノルタ社製、CR−400)を用いて、熱処理される前のサンプルのL*、a*、b*を測定した。また、熱処理された後の評価サンプルのL*、a*、b*を測定し、これら2つの測定値からΔE*abを求めた。
【0082】
〔黄変度の評価基準〕
熱処理された後のサンプルのΔE*abが、2以下の場合を「◎」、2を超え、3以下の場合を「○」、3を超え、3.5以下の場合を「△」、3.5を超える場合を「×」として、結果を下記の表1に示した。
【0083】
〔耐熱密着性の評価基準〕
得られたサンプルにおいて、レジスト膜の基板に対する密着性を評価した。JIS K5600に準拠して、カッターを用いて、平面視したときに1mm×1mmの大きさになるように基板上のレジスト膜を切断し、レジスト膜を100個に分割した。分割されたレジスト膜に、粘着テープ(ニチバン社製、セロファンテープ、LP−18)を貼りつけ、粘着テープをレジスト膜ごと剥離するようにして、剥離を試みた。テープとともにレジスト膜が剥離されるか否かを観察し、密着性を下記評価基準で評価した。
【0084】
◎:分割されたレジスト膜100個中、剥離しなかったレジスト膜が100個
○:分割されたレジスト膜100個中、剥離しなかったレジスト膜が90個〜99個
△:分割されたレジスト膜100個中、剥離しなかったレジスト膜が80個〜89個
×:分割されたレジスト膜100個中、剥離しなかったレジスト膜が0個〜79個
【0085】
(3)現像性
厚み40μmの銅回路が上面に形成されており、80mm×90mm×厚さ1.0mmのプリント配線基板を用意した。該プリント配線基板の上面に、感光性組成物を、100メッシュのポリエステルバイアス製のスクリーン版を使用して全面にスクリーン印刷した。その後、80℃の熱風オーブン内で印刷された感光性組成物層を20分間乾燥させた。
【0086】
次に、遮光部を有するフォトマスクを介して感光性組成物層に選択的に紫外線を照射した。具体的には、紫外線照射装置(オーク製作所社製、HMW−680GX)を用いて、365nmの波長の紫外線を、照射エネルギーが600mJ/cmとなるように50mW/cmの紫外線照度で12秒間照射した。
【0087】
上記紫外線の照射により、感光性組成物層において硬化が進行し、レジスト膜が形成された。このレジスト膜を、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用い、0.2MPaの圧力下で90秒間浸漬して現像し、次に、150℃の熱風オーブン内で60分間乾燥した。このようにして、厚みが20μmのレジスト膜を得た。このレジスト膜を第2のサンプルとした。
【0088】
上記第2のサンプルのレジスト膜を得る際に、現像後にパターンが形成されているか否かを電子顕微鏡を用いて観察して現像性を下記の評価基準で評価した。なお、L/S100μmは10μm間隔をあけて幅10μmのレジストパターンを形成させたことを意味する。
【0089】
〔評価基準〕
○:L/S 100μmのパターンが形成されていた
△:L/S 100μmのパターンが形成されていたものの、パターンの長さ方向寸法に10%以上のばらつきがあった
×:L/S 100μmのパターンが形成されていなかった
【0090】
(合成例1)(アクリルポリマー1)
温度計、攪拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてエチルカルビトールアセテート、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃に加熱し、メタクリル酸とメチルメタクリレートを30:70のモル比で混合したモノマーを約2時間かけて滴下した。さらに1時間攪拌した後、温度を120℃にまで上げた。
【0091】
この溶液を室温まで冷却した後、触媒として臭化テトラブチルアンモニウム1gを投入し、グリシジルアクリレートをメタクリル酸及びメチルアクリレートの合計100に対し10のモル比となるように投入し、100℃で30分間得られた樹脂のカルボキシル基の等量と付加反応させ、しかる後室温まで冷却した。冷却後フラスコから溶液を取り出した。この溶液を分析したところ、固形分の酸価は60mgKOH/gであり、重量平均分子量が15,000のカルボキシル基含有樹脂を50質量%(不揮発分)を含む溶液であることが確かめられた。この溶液を、以下、アクリルポリマー1と呼ぶ。
【0092】
(合成例2)(アクリルポリマー2)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル750gおよびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート17.9gを仕込み、95℃に昇温後、メタクリル酸241.4g、コハク酸変性ε−カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製プラクセルFM1A)205.4gを2,2´−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)17.9gと共にジプロピレングリコールモノメチルエーテル中に3時間かけて滴下し、さらに8時間熟成することによってカルボキシル基を有するビニル共重合体溶液を得た。反応はN気流下で行った。次にビニル共重合体溶液にエポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製サイクロマーA200)303.3g、トリフェニルフォスフィン3.03g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.5gを加え、100℃に昇温し、攪拌することによってエポキシの開環付加反応を行った。反応は空気気流下で行った。
【0093】
10時間後、内容物を取り出し、内容物の溶液を分析した。その結果、酸価76.5mgKOH/g、固形分濃度55%、重量平均分子量20000の不飽和基含有硬化性樹脂溶液であることが確かめられた。以下、この樹脂溶液を、アクリルポリマー2と呼ぶ。
【0094】
(実施例1)
アクリルポリマー1を15重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)5重量部と、ルチル型酸化チタン(D−918、堺化学社製)40重量部と、光ラジカル重合開始剤(TPO、日本シイベルヘグナー社製)2重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(828、ジャパンエポキシレジン社製)と、テトラメチルアンモニウムp-トルエンスルホネート0.1重量部とを配合し、混合機(練太郎SP−500、シンキー社製)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合した。その後、混合機(SP−500、シンキー社製)を用いて、混合物を3分間脱泡することにより、感光性組成物を得た。
【0095】
得られた感光性組成物を、FR−4からなる基板上に、スクリーン印刷法により、塗工した。塗工後、80℃のオーブンで20分間乾燥させ、レジスト材料層を基板上に形成した。次に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、紫外線照射装置を用い、レジスト材料層に365nmの波長の紫外線を、照射エネルギーが400mJ/cmとなるように100mW/cmの紫外線照度で4秒間照射した。紫外線を照射した後、炭酸ナトリウムの1重量%水溶液にレジスト材料層を浸漬して現像し、未露光部のレジスト材料層を除去することにより、基板上にレジスト膜のパターンを形成した。その後、150℃のオーブン内で1時間加熱しレジスト膜を後硬化させることで、レジスト膜を得た。得られたレジスト膜の厚みは20μmであった。
【0096】
(実施例2〜8および比較例1〜2)
表1に記載された組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして感光性組成物を調製した。
【0097】
【表1】

【0098】
表1から明らかなように、式(1)または式(2)で表される化合物(D)を含む実施例1〜8によれば、比較例1に比べ、高温に晒されたとしても、レジスト膜が変色し難い。すなわち、レジスト膜の耐熱性が高められている。これは、レジスト膜の変色は、アクリル樹脂のカルボキシル基や残存している二重結合が高温下において酸化により過酸化物を生じ、該過酸化物から生成する着色物質により色が生じていることによると考えられる。化合物(D)が含まれていると、化合物(D)は、高温に晒されるとそれ自体が分解しルイス塩基を発生する。ルイス塩基により過酸化物から生成される着色物質が分解され、それによってレジスト膜が変色し難くなると考えられる。ルイス塩基は、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素化合物(A)と、1分子中に少なくとも2つの環状エーテル基を有する化合物(B)との硬化反応を促進し、それによって、レジスト膜における架橋密度が高められる。その結果、レジスト膜の変色が抑制されていると考えられる。
【0099】
また、実施例3,4の結果から明らかなように、プロトンHと結合したHXのpKaが0以上、7未満であるXの場合には、基板に対する密着性がさらに高められ、高温に晒されたとしても、レジスト膜の密着性が低下し難い。これは、pKaが0以上、7未満となるXは、エーテル基含有化合物(B)と適度に反応し、水酸基を発生し、この水酸基により密着性が高められていることによると考えられる。
【0100】
実施例5,6から明らかなように、Xが、炭素数1〜12の脂肪族モノもしくは多価カルボン酸または炭素数6〜12の脂肪族モノもしくは多価カルボン酸の共役塩基である場合には、基板に対する密着性がよりいっそう高められ、レジスト膜の高温下における変色もよりいっそう生じ難い。これは、カルボン酸が、環状エーテル基含有化合物(B)と容易に反応し、水酸基が発生し、それによって密着性がより一層高められていることによると考えられる。
【0101】
実施例7,8から明らかなように、感光性組成物がpH6.8上、11以下の無機フィラーを含有している場合には、レジスト膜の変色がより一層生じ難い。これは、式(1)または式(2)で表される化合物(D)のルイス塩基性がよりいっそう高められ、それによって、環状エーテル基含有化合物(B)との硬化反応が速やかに進行しレジスト膜における架橋密度がよりいっそう高められていることによると考えられる。
【符号の説明】
【0102】
1…LEDデバイス
2…基板
2a…上面
3…ソルダーレジスト膜
3a,3b…開口部
4a,4b…電極
5…ガラス層
6…樹脂層
7…LEDチップ
7a…下面
8a,8b…端子
9a,9b…半田




【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素モノマーもしくは重合性炭化水素ポリマーである重合性炭化水素化合物(A)と、
(B)1分子中に少なくとも2つの環状エーテル基を有する化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)下記の式(1)で表されるアンモニウム塩(D1)または下記の式(2)で表されるホスホニウム塩(D2)を含む、感光性組成物。
【化1】

【化2】

(式(1)または(2)において、R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭化水素基または酸素原子を有する有機基からなる群から選択された一種であり、Xはハロゲンを含むアニオンであり、R〜Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記XがプロトンHと結合したHXのpKaが0以上、7未満である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記Xが炭素数1〜12の脂肪族モノカルボン酸、炭素数1〜12の脂肪族多価カルボン酸、炭素数6〜12の脂環式モノカルボン酸また及び炭素数6〜12の脂環式多価カルボン酸からなる群から選択された一種のカルボン酸の共役塩基である、請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性組成物からなるソルダーレジスト組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2010−175608(P2010−175608A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15306(P2009−15306)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】