説明

感光性組成物及びパターン膜の製造方法

【課題】露光及び現像により感光性組成物の硬化物からなるパターン膜を形成する際の現像性に優れており、さらにパターン膜上に金属配線が形成されている場合、金属の腐食を抑制できる感光性組成物、並びに該感光性組成物を用いたパターン膜の製造方法を提供する。
【解決手段】SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーと、光ラジカル発生剤とを含む感光性組成物、並びに該感光性組成物を基板2上に塗工し、基板2上に感光性組成物層1を形成した後、感光性組成物層1を部分的に露光することにより、露光部1aの感光性組成物層1を硬化させて、現像液に不溶にし、次に感光性組成物層1を現像液で現像することにより、未露光部1bの感光性組成物層1を除去し、感光性組成物の硬化物からなるパターン膜1Aを形成するパターン膜1Aの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置などの電子デバイスの絶縁膜等に使用されるパターン膜を形成するのに用いられる感光性組成物に関し、より詳細には、露光及び現像により感光性組成物の硬化物からなるパターン膜を形成するのに用いられ、該パターン膜に金属が接触されている場合、金属の腐食を抑制できる感光性組成物、並びに該感光性組成物を用いたパターン膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの電子デバイスでは、小型化及び薄型化を図るために、絶縁性に優れた薄膜を形成する必要がある。また、半導体装置のパッシベーション膜やゲート絶縁膜などでは、微細パターン形状の絶縁膜を形成する必要がある。そこで、パターニング可能な感光性組成物として、アルコキシシラン縮合物を用いた感光性組成物が提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、アルカリ可溶性シロキサンポリマーと、光により反応促進剤を発生する化合物と、溶剤とを含む感光性組成物が開示されている。上記アルカリ可溶性シロキサンポリマーは、アルコキシシランに水及び触媒を加えて加水分解縮合させた反応溶液から、水及び触媒を除去して得られたアルコキシシラン縮合物である。また、上記光により反応促進剤を発生する化合物としては、光酸発生剤が用いられている。
【0004】
上記のようなアルコキシシラン縮合物を含む感光性組成物を用いて微細パターン形状の薄膜を形成する際には、先ず感光性組成物を基板上に塗布する。次に、基板上の感光性組成物層を乾燥し、マスクを介して部分的に露光する。露光により、感光性組成物中に含まれている光酸発生剤から酸が発生する。酸により上記アルコキシシラン縮合物の架橋が進行し、露光部の感光性組成物層は硬化される。硬化された露光部の感光性組成物層は、現像液に溶解しない。その後、感光性組成物層をアルカリ溶液により現像する。現像後に、残存している感光性組成物の硬化物を加熱することにより、硬質でかつ緻密な微細パターン形状の薄膜を得る。
【特許文献1】特開平6−148895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の感光性組成物では、アルコキシシラン縮合物を架橋させるのに露光により光酸発生剤から生じた酸を利用している。そのため、アルコキシシラン縮合物の架橋が充分に進行しないことがあった。従って、露光及び現像後に、アルコキシシラン縮合物をさらに架橋させるために、薄膜を加熱しなければならないことがあった。
【0006】
さらに、得られた薄膜では、露光により光酸発生剤から生じた酸又は塩基が残存している。そのため、薄膜に金属が接触されている場合、酸により金属の腐食が生じやすかった。
【0007】
本発明の目的は、露光及び現像により感光性組成物の硬化物からなるパターン膜を形成する際の現像性に優れており、さらにパターン膜に金属が接触されている場合、金属の腐食を抑制できる感光性組成物、並びに該感光性組成物を用いたパターン膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーと、光ラジカル発生剤とを含むことを特徴とする、感光性組成物が提供される。
【0009】
本発明に係る感光性組成物のある特定の局面では、前記シロキサンポリマーのSiOH基の数のSi−O−Si結合の数に対する比(SiOH基の数/Si−O−Si結合の数)が、0.02〜0.2の範囲内にある。この場合には、感光性組成物の現像性をより一層高めることができる。
【0010】
本発明に係る感光性組成物の他の特定の局面では、前記シロキサンポリマーが、ケイ素原子に炭素原子が直接結合されている有機基を有し、該有機基の5〜80%が、オレフィン二重結合を有する。この場合には、露光により上記シロキサンポリマーの架橋がより一層効果的に進行する。そのため、露光及び現像後にシロキサンポリマーをさらに架橋させるために加熱しなくてもよく、あるいは加熱したとしても比較的穏やかな条件でよい。このため、パターン膜の熱劣化を防ぐことができる。
【0011】
本発明に係るパターン膜の製造方法は、本発明に従って構成された感光性組成物を基板上に塗工し、前記基板上に感光性組成物層を形成する工程と、前記感光性組成物層が光の照射された露光部と光の照射されていない未露光部とを有するように前記感光性組成物層を部分的に露光することにより、前記露光部の前記感光性組成物層を硬化させて、現像液に不溶にする工程と、前記感光性組成物層を現像液で現像することにより、前記未露光部の前記感光性組成物層を除去し、前記感光性組成物の硬化物からなるパターン膜を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る感光性組成物では、SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーと、光ラジカル発生剤とが含有されているので、露光によって光ラジカル発生剤から生じたラジカルにより、上記シロキサンポリマーを効果的に架橋させることができる。そのため、光酸発生剤を用いなくてもよい。光酸発生剤を用いなくてもよいので、形成されたパターン膜に酸が残存しない。従って、パターン膜に金属が接触されている場合、金属の腐食を抑制できる。
【0013】
本発明に係るパターン膜の製造方法では、本発明に従って構成された感光性組成物からなる感光性組成物層を部分的に露光し、現像するので、パターン膜に金属が接触されている場合、金属の腐食を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0015】
本発明に係る感光性組成物は、SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーと、光ラジカル発生剤とを含む。
【0016】
(シロキサンポリマー)
本発明の感光性組成物に含まれているSiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーは、SiOH基と、オレフィン二重結合とを有するものであれば特に限定されない。シロキサンポリマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
上記SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーは、オレフィン二重結合を有するアルコキシシランを縮合させて得られたアルコキシシラン縮合物、オレフィン二重結合を有するアルコキシシランと、オレフィン二重結合を有しないアルコキシシランとを縮合させて得られたアルコキシシラン縮合物、又はアルコキシシランを縮合させて得られたアルコキシシラン縮合物に、オレフィン二重結合が導入されたアルコキシシラン縮合物であることが好ましい。アルコキシシランのアルコキシ基が加水分解反応により反応し、アルコキシシランの縮合が充分に進行しなかった場合に、SiOH基が生成される。
【0018】
アルコキシシランを縮合させた後に、オレフィン二重結合を導入する方法は特に限定されない。この方法として、ヒドロシリル化反応を用いる方法等が挙げられる。
【0019】
アルコキシシラン縮合物を得る際には、1種のアルコキシシランが用いられてもよく、2種以上のアルコキシシランが用いられてもよい。
【0020】
上記オレフィン二重結合を有するアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン又は3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
上記アルコキシシランとして、様々なアルコキシシランを用いることができる。上記アルコキシシランは、下記式(1)で表されるアルコキシシランであることが好ましい。
Si(X1)(X2)(X3)4−p−q・・・式(1)
【0022】
上述した式(1)中、X1は水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を表し、X2はアルコキシ基を表し、X3はアルコキシ基以外の加水分解性基を表し、pは0〜3の整数を表し、qは1〜4の整数を表し、p+q≦4である。pが2又は3であるとき、複数のX1は同一であってもよく異なっていてもよい。qが2〜4であるとき、複数のX2は同一であってもよく異なっていてもよい。p+q≦2であるとき、複数のX3は同一であってもよく異なっていてもよい。
【0023】
上記アルコキシ基X2及びアルコキシ基以外の加水分解性基X3は、通常、過剰の水の共存下で、かつ無触媒で、室温(25℃)〜100℃に加熱されると、加水分解されてシラノール基を生成できる基、又はさらに縮合してシロキサン結合を形成できる基である。
【0024】
上記アルコキシ基X2は特に限定されない。上記アルコキシ基X2としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。
【0025】
上記アルコキシ基以外の加水分解性基X3は特に限定されない。上記アルコキシ基以外の加水分解性基X3としては、具体的には、塩素もしくは臭素等のハロゲン基、アセトキシ基、ヒドロキシル基又はイソシアネート基等が挙げられる。
【0026】
上記非加水分解性の有機基X1は特に限定されない。上記非加水分解性の有機基X1としては、加水分解を起こし難く、安定な疎水基である炭素数1〜30の有機基が挙げられる。安定な疎水基である炭素数1〜30の有機基としては、炭素数1〜30のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、芳香族置換アルキル基、アリール基、ビニル基を含む基、エポキシ基を含む有機基、アミノ基を含む有機基又はチオール基を含む有機基等が挙げられる。
【0027】
上記炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ペンチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基又はエイコシル基等が挙げられる。
【0028】
上記ハロゲン化アルキル基としては、アルキル基のフッ素化物基、アルキル基の塩素化物基又はアルキル基の臭素化物基等が挙げられる。上記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、3−クロロプロピル基、6−クロロプロピル基、6−クロロヘキシル基又は6,6,6−トリフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0029】
上記芳香族置換アルキル基としては、ベンジル基又はハロゲン置換ベンジル基等が挙げられる。上記ハロゲン置換ベンジル基としては、4−クロロベンジル基又は4−ブロモベンジル基等が挙げられる。
【0030】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、メシチル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0031】
上記式(1)で表されるアルコキシシランの具体例としては、例えば、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、エチルジメチルメトキシシラン、メチルジエチルメトキシシラン、エチルジメチルエトキシシラン、メチルジエチルエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルジエチルエトキシシラン、メチルジフェニルメトキシシラン、エチルジフェニルメトキシシラン、メチルジフェニルエトキシシラン、エチルジフェニルエトキシシラン、tert−ブトキシトリメチルシラン、ブトキシトリメチルシラン、ジメチルエトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、ジフェニルジエトキシラン、フェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジアセトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチル−トリ−n−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチル−トリ−n−プロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピル−トリ−n−プロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリプロポキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリプロポキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリプロポキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリプロポキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリプロポキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリプロポキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリプロポキシシラン、エイコシルデシルトリメトキシシラン、エイコシルトリエトキシシラン、エイコシルトリプロポキシシラン、6−クロロヘキシルトリメトキシシラン、6,6,6−トリフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、4−クロロベンジルトリメトキシシラン、4−ブロモベンジルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン又はテトラアセトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
上記カルボキシル基を有するシロキサンポリマーの重量平均分子量は、500〜30000の範囲内にあることが好ましく、1000〜20000の範囲内にあることがより好ましい。上記シロキサンポリマーの重量平均分子量が小さすぎると、露光により感光性組成物が充分に硬化しないことがある。上記シロキサンポリマーの重量平均分子量が大きすぎると、感光性組成物中にゲル状物が生じやすく、現像後に残渣が生じやすくなる。
【0033】
上記SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーは、SiOH基の数のSi−O−Si結合の数に対する比(SiOH基の数/Si−O−Si結合の数)が0.02〜0.2の範囲内にあることが好ましい。上記比が0.02未満であると、露光によりシロキサンポリマーが充分に架橋しなかったり、現像性が充分に高められなかったりすることがある。上記比が0.2を超えると、露光により充分に硬化しないことがあり、かつ現像の際に、露光された感光性組成物が溶解することがある。
【0034】
上記SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーは、ケイ素原子に炭素原子が直接結合されている有機基を有し、該有機基の5〜80%が、オレフィン二重結合を有することが好ましい。上記ケイ素原子に炭素原子が直接結合されている有機基100%中に占めるオレフィン二重結合を有する有機基の割合が5%未満であると、露光によりシロキサンポリマーが充分に架橋しないことがあり、80%を超えると、パターン膜にシロキサンポリマーのオレフィン二重結合が残存することがある。パターン膜にオレフィン二重結合が残存すると、例えばパターン膜が高熱に晒された際に、クラックが生じやすくなる。
【0035】
また、本発明に係る感光性組成物は、環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーをさらに含むことが好ましい。この場合には、パターン膜の基板に対する密着性を高めることができる。特に、パターン膜が形成される基板が金属又はITO等の金属酸化物からなる場合に、パターン膜の基板に対する密着性を極めて高めることができる。
【0036】
上記SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーと、上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーとは同一のシロキサンポリマーであってよく、別のシロキサンポリマーであってもよい。上記SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーと、上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーとが同一のシロキサンポリマーである場合には、上記シロキサンポリマーは、SiOH基及びオレフィン二重結合と、環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーである。
【0037】
上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーは、上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するアルコキシシランを縮合させて得られたアルコキシシラン縮合物、又はアルコキシシランを縮合させた後、上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方が導入されたアルコキシシラン縮合物であることが好ましい。
【0038】
アルコキシシランを縮合させて得られたアルコキシシラン縮合物に、上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を導入する方法は、特に限定されない。この方法として、ヒドロシリル化反応を用いる方法等が挙げられる。
【0039】
上記環状エーテル基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基、又は3,4−エポキシシクロヘキシル基などの脂環式エポキシ基等が挙げられる。
【0040】
上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するアルコキシシランとしては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、又は3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
全てのシロキサンポリマーにおけるケイ素原子に炭素原子が直接結合されている有機基100%中に占める上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有する有機基の割合は1〜90%の範囲内にあることが好ましい。上記有機基の割合が1%未満であると、パターン膜の基板に対する密着性が充分に高められないことがあり、90%以上であると、現像性が不安定になることがある。
【0042】
上記SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーと、上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーとが別のシロキサンポリマーである場合、上記SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマー100重量部に対して、上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーは10〜1000重量部の範囲内で含有されることが好ましく、20〜500重量部の範囲内で含有されることが好ましく、50〜200重量部の範囲内で含有されることが特に好ましい。上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーの量が少なすぎると、パターン膜の基板に対する密着性が充分に高められないことがある。上記環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーの量が多すぎると、感光性組成物を充分に架橋させることが困難になることがある。
【0043】
(光ラジカル発生剤)
本発明に係る感光性組成物に含まれている光ラジカル発生剤の具体例としては、ハロメチル化トリアジン誘導体、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、アントラキノン誘導体、ベンズアンスロン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、安息香酸エステル誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、チタノセン誘導体、α−アミノアルキルフェノン系化合物又はオキシム誘導体等が挙げられる。光ラジカル発生剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記ハロメチル化トリアジン誘導体としては、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、又は2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0045】
上記イミダゾール誘導体としては、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、又は2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等が挙げられる。
【0046】
上記ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル又はベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0047】
上記アントラキノン誘導体としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン又は1−クロロアントラキノン等が挙げられる。
【0048】
上記ベンゾフェノン誘導体としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン又は2−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0049】
上記アセトフェノン誘導体としては、2,2,−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、又は1,1,1,−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等が挙げられる。
【0050】
上記チオキサントン誘導体としては、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン又は2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0051】
上記安息香酸エステル誘導体としては、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル又はp−ジエチルアミノ安息香酸エチル等が挙げられる。
【0052】
上記アクリジン誘導体としては、9−フェニルアクリジン又は9−(p−メトキシフェニル)アクリジン等が挙げられる。
【0053】
上記フェナジン誘導体としては、9,10−ジメチルベンズフェナジン等が挙げられる。
【0054】
上記チタノセン誘導体としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、又はジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等が挙げられる。
【0055】
上記α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、4−ジメチルアミノエチルベンゾエ−ト、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエ−ト、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、又は4−(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
【0056】
上記オキシム誘導体類としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)、又はエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0057】
本発明に係る感光性組成物は、上記SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマー100重量部に対し、上記光ラジカル発生剤を0.1〜30重量部の範囲内で含むことが好ましく、1〜15重量部の範囲内で含むことがより好ましい。光ラジカル発生剤の量が少なすぎると、露光により充分な量のラジカルが発生しないことがある。光りラジカル発生剤の量が多すぎると、感光性組成物を均一に塗布することが困難となったり、現像後に残渣を生じたりすることがある。
【0058】
(その他成分)
本発明に係る感光性組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤として、感光性組成物に配合される成分を溶解し得る適宜の溶剤を用いることができる。
【0059】
上記溶剤は特に限定されない。上記溶剤としては、芳香族炭化水素化合物、飽和もしくは不飽和炭化水素化合物、エーテル類、ケトン類又はエステル類等が挙げられる。
【0060】
上記芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン又はジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0061】
上記飽和もしくは不飽和炭化水素化合物としては、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロナフタレン又はスクワラン等が挙げられる。
【0062】
上記エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジプロピルエーテル又はジブチルエーテル等が挙げられる。
【0063】
上記ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又はシクロヘプタノン等が挙げられる。
【0064】
上記エステル類としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル又はステアリン酸ブチル等が挙げられる。
【0065】
例えば基板上に感光性組成物を塗工し、感光性組成物層を形成する際に、均一に塗工されるように、上記溶剤の配合量は適宜設定される。溶剤は、固形分濃度が0.5〜70重量%の範囲内になるように含有されることが好ましく、固形分濃度が2〜50重量%の範囲内になるように含有されることがより好ましい。
【0066】
本発明に係る感光性組成物には、必要に応じて、他の添加剤をさらに添加してもよい。上記添加剤としては、フィラーなどの充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、可塑促進剤又はタレ防止剤等が挙げられる。
【0067】
(パターン膜の製造方法)
以下、図1(a)〜(c)を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るパターン膜の製造方法を説明する。
【0068】
図1(a)に示すように、先ず、本発明の感光性組成物を基板2上に塗工し、基板2上に感光性組成物からなる所定の厚みの感光性組成物層1を形成する。
【0069】
塗工方法としては、一般的な塗工方法を用いることができる。例えば、浸漬塗工、ロール塗工、バー塗工、刷毛塗工、スプレー塗工、スピン塗工、押出塗工又はグラビア塗工等により、感光性組成物が塗工される。感光性組成物層1の厚さは、10nm〜10μm程度である。
【0070】
感光性組成物層1が溶剤を含む場合、溶剤を除去するために、露光前に、感光性組成物層1を熱処理することが望ましい。露光前熱処理温度は、一般的には、40〜200℃の範囲内である。露光前熱処理温度は、溶剤の沸点や蒸気圧に応じて適宜選択される。
【0071】
次に、図1(b)に示すように、感光性組成物層1が光の照射された露光部1aと光の照射されていない未露光部1bとを有するように、感光性組成物層1を部分的に露光する。
【0072】
感光性組成物層1を部分的に露光するには、例えば開口部3aと、マスク部3bとを有するマスク3を用いればよい。マスク3としては、市販されている一般的なマスクが用いられる。
【0073】
光の照射された露光部1aの感光性組成物層1では、光ラジカル発生剤からラジカルが発生する。光の照射されていない未露光部1bの感光性組成物層1では、光ラジカル発生剤からラジカルは発生しない。
【0074】
上記シロキサンポリマーはSiOH基及びオレフィン二重結合を有するので、露光部1aの感光性組成物層1では、光ラジカル発生剤から発生したラジカルの作用により、上記シロキサンポリマーの架橋が効果的に進行する。シロキサンポリマーが架橋すると、露光部1aの感光性組成物層1は硬化する。その結果、露光部1aの感光性組成物層1は現像液に不溶になる。未露光部1bの感光性組成物層1は、感光しない。従って、未露光部1bの感光性組成物層1は硬化せずに、現像液に可溶である。
【0075】
露光する際に、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を照射するための光源は、特に限定されない。上記光源として、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ又はエキシマレーザー等を使用できる。これらの光源は、感光性組成物の構成成分の感光波長に応じて適宜選択される。光の照射エネルギーは、所望とする膜厚や感光性組成物の構成成分により適宜選択される。光の照射エネルギーは、一般に、10〜3000mJ/cmの範囲内である。光の照射エネルギーが10mJ/cm未満であると、露光部1aの感光性組成物層1が充分に硬化しないことがある。光の照射エネルギーが3000mJ/cmを超えると、露光時間が長すぎることがあり、パターン膜の製造効率が低下するおそれがある。
【0076】
次に、感光性組成物層1を現像液により現像する。現像により、未露光部1bの感光性組成物層1が現像液に溶解して除去される。この結果、図1(c)に示すように、感光性組成物の硬化物膜からなるパターン形状のパターン膜1Aが得られる。このパターンは、未露光部1bの感光性組成物層1が除去されることから、ネガ型パターンといわれる。
【0077】
現像の操作は、アルカリ水溶液等の現像液により、感光性組成物層1を処理する様々な操作を含む。現像の操作としては、感光性組成物層1を現像液に浸漬する操作、感光性組成物層1の表面を現像液で洗い流す操作、又は感光性組成物層1の表面に現像液を噴射する操作等が挙げられる。
【0078】
現像液とは、感光性組成物層1を部分的に露光した後に、未露光部1bの感光性組成物層1を溶解する液である。露光部1aの感光性組成物層1は硬化しているため、現像液に溶解しない。現像液はアルカリ水溶液に限られない。現像液として溶媒を用いてもよい。溶媒としては、前述した溶剤等が挙げられる。
【0079】
現像液としてアルカリ水溶液が好適に用いられる。本実施形態では、現像に際し、比較的低濃度のアルカリ溶液を現像液として用いることができる。よって、作業環境の悪化を防止でき、かつ廃液による環境負荷を低減できる。さらに、アルカリ水溶液を用いた場合には、防爆設備が不要であり、腐蝕等による設備負担も低減できる。
【0080】
上記アルカリ水溶液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、珪酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液又は炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。現像時間は、感光性組成物層1の厚みや溶剤の種類により適宜設定される。効率良く現像でき、かつ製造効率を高めることができるため、現像時間は、1秒〜10分の範囲内にあることが好ましい。現像後に、パターン膜1Aを蒸留水で洗浄し、パターン膜1A上に残存しているアルカリ水溶液等の現像液を除去することが好ましい。
【0081】
環状エーテル基及びチオール基の内の少なくとも一方を有するシロキサンポリマーを含む感光性組成物を用いた場合には、パターン膜1Aの基板2に対する密着性を高めることができる。
【0082】
現像後に、基板2上に残存している感光性組成物の硬化物からなるパターン膜1Aを加熱してもよい。パターン膜1Aを加熱すると、パターン膜1Aがさらに焼成される。このため、より一層緻密でかつ硬質のパターン膜を得ることができる。
【0083】
上記加熱の温度は150〜500℃程度である。上記加熱の時間は、30分〜2時間程度である。
【0084】
また、上記パターン膜1Aの形成に際し、上記シロキサンポリマーの架橋が、露光により光ラジカル発生剤から生じたラジカルにより効果的に進行するため、シロキサンポリマーを架橋させるのに光酸発生剤を用いなくてもよい。この場合には、形成されたパターン膜に酸が残存しない。よって、得られたパターン膜1Aでは、酸が残存していないので、パターン膜1Aに例えば金属が接触されている場合に、金属の腐食を抑制できる。本発明に係る感光性組成物は、金属の腐食を抑制できるので、光酸発生剤を含まないことが好ましい。
【0085】
(パターン膜の用途)
本発明に係る感光性組成物により形成されたパターン膜は、様々な装置のパターン膜を形成するのに好適に用いられる。例えば、電子デバイスの絶縁保護膜などの保護膜、液晶表示素子などの表示素子の配向膜、保護膜、EL素子の保護膜又は電界放出ディスプレイのギャップスペーサー等が、本発明の感光性組成物により形成される。
【0086】
上記保護膜としては、ブラックマトリックス、スペーサー、パッシベーション膜又はオーバーコート膜等が挙げられる。
【0087】
また、拡散板、プリズムレンズシート、導光板、位相差板、レンチキュラーシート、マイクロレンズアレイ、屈折率傾斜シート、複屈性フィルム、楕円レンズ、導波路、光スイッチ、無反射膜、ホログラム、光ディスクHVD、感光性カバーレイ、樹脂コアバンプ、チップ積層用ギャップ保持剤、CCDのダム材、部品内臓基板用コイル材料、LSIテスティングプローバの芯、三次元配線材料、バイオフィルム、凸版原版、凹版原版、樹脂型又は研磨テープ等に、本発明の感光性組成物を用いることができる。
【0088】
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明をより明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
感光性組成物を調製するに際し、以下の材料を用意した。
【0090】
シロキサンポリマーA〜Jを合成するために、アルコキシシランとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシランの内の少なくとも1種を用いた。
【0091】
(シロキサンポリマーA)
冷却管をつけた100mlのフラスコに、メチルトリメトキシシラン12.2gと、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.3gと、シュウ酸0.1gと、水5mlと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート7.5mlとを加え、溶液を得た。
【0092】
半円形型のメカニカルスターラーを用いて、得られた溶液を撹拌しながら、マントルヒーターにより、70℃で3時間反応(反応条件)させた。次に、エバポレーターを用いて、水との縮合反応で生成したエタノールと残留水とを、2000Paで、40℃で2時間かけて除去した。その後、フラスコを室温になるまで放置し、シロキサンポリマーAを含む溶液を得た。得られたシロキサンポリマーAを含む溶液の固形分濃度は、50重量%であった。
【0093】
得られたシロキサンポリマーAは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定されたポリスチレン換算重量平均分子量Mwが4800であった。また、シロキサンポリマーAのSiOH基の数のSi−O−Si結合の数に対する比(SiOH基の数/Si−O−Si結合の数)は、H−NMRの5.0〜6.5ppmのブロードなピークの積分値と、メチル基の積分値の比から算出したところ、0.105であった。また、シロキサンポリマーAのケイ素原子に炭素原子が直接結合されている有機基100%中に占めるオレフィン二重結合を有する有機基の割合は20%であった。
【0094】
(シロキサンポリマーB〜J)
アルコキシシランの種類及び配合量と、上記反応条件とを下記の表1,2に示すように変更したこと以外は、シロキサンポリマーAと同様にして、シロキサンポリマーB〜Jを含む溶液を得た。得られたシロキサンポリマーB〜Jを含む溶液の固形分濃度は、50重量%であった。
【0095】
得られたシロキサンポリマーB〜Jの重量平均分子量と、シロキサンポリマーB〜Jの上記比(SiOH基の数/Si−O−Si結合の数)と、シロキサンポリマーB〜Jのケイ素原子に炭素原子が直接結合されている有機基100%中に占めるオレフィン二重結合を有する有機基の割合とを下記の表1,2に示した。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
(光開始剤)
種類A:イルガキュア907(チバスペシャリティーケミカル社製、光ラジカル発生剤)
種類B:イルガキュア819(チバスペシャリティーケミカル社製、光ラジカル発生剤)
種類C:PAI−101(みどり化学社製、光酸発生剤)
【0099】
(実施例1〜14及び比較例1)
下記表3,4に示す割合で各成分を混合した後、溶剤であるテトラヒドロフラン500重量部に溶解させ、感光性組成物を調製した。
【0100】
(評価)
(1)現像性
表層にアルミニウムが蒸着されたガラス基板を用意した。ガラス基板上に各感光性組成物を回転数1500rpmでスピン塗工した。塗工後、120℃の熱風オーブンで5分間乾燥させ塗膜を形成した。
【0101】
次に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗膜が露光部と未露光部とを有するように、塗膜に部分的に、紫外線照射装置(ウシオ電機社製、スポットキュアSP−5)を用いて、365nmの波長の紫外線を、照射エネルギーが500mJ/cmとなるように100mW/cmの紫外線照度で5秒間照射した。比較例1の感光性組成物では、紫外線の照射後、100℃で2分、ベイクを行った。
【0102】
その後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液に塗膜を浸漬して現像し、未露光部の感光性組成物層を除去した。未露光部の感光性組成物層を除去した後、蒸留水で洗浄し、残存しているアルカリ水溶液を除去し、基板上に露光部の感光性組成物の硬化物からなるパターン膜を得た。
【0103】
上記パターン膜を得る際に、現像後にパターンが生じているか否かを、電子顕微鏡を用いて観察することにより下記評価基準で評価した。
【0104】
〔現像性の評価基準〕
○:L/S 20μmのパターンが形成されていた
△:L/S 20μmのパターンが形成されているものの、パターンの長さ方向寸法に10%以上のばらつきがあった
×:L/S 20μmのパターンが形成されていなかった
【0105】
(2)腐食性
上記(1)現像性の評価で得られたパターン膜を85℃及び相対湿度85%の条件で、1000時間放置することにより、評価サンプルを得た。得られた評価サンプルにおいて、金属の腐食が生じているか否かを顕微鏡で観察し、下記の評価基準で評価した。
【0106】
〔腐食性の評価基準〕
○:アルミニウムパターンに変化無し
×:アルミニウムパターンに変化有
結果を下記表3,4に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るパターン膜を製造する方法を説明するための各工程を模式的に示す正面断面図。
【符号の説明】
【0110】
1…感光性組成物層
1a…露光部
1b…未露光部
1A…パターン膜
2…基板
3…マスク
3a…開口部
3b…マスク部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiOH基及びオレフィン二重結合を有するシロキサンポリマーと、光ラジカル発生剤とを含むことを特徴とする、感光性組成物。
【請求項2】
前記シロキサンポリマーのSiOH基の数のSi−O−Si結合の数に対する比(SiOH基の数/Si−O−Si結合の数)が、0.02〜0.2の範囲内にある、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記シロキサンポリマーが、ケイ素原子に炭素原子が直接結合されている有機基を有し、該有機基の5〜80%がオレフィン二重結合を有する、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性組成物を基板上に塗工し、前記基板上に感光性組成物層を形成する工程と、
前記感光性組成物層が光の照射された露光部と光の照射されていない未露光部とを有するように前記感光性組成物層を部分的に露光することにより、前記露光部の前記感光性組成物層を硬化させて、現像液に不溶にする工程と、
前記感光性組成物層を現像液で現像することにより、前記未露光部の前記感光性組成物層を除去し、前記感光性組成物の硬化物からなるパターン膜を形成する工程とを備えることを特徴とする、パターン膜の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−39054(P2010−39054A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199665(P2008−199665)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】