説明

感圧接着剤組成物、感圧接着剤層及び感圧接着性積層体

【課題】 高粘着力を発揮すると共に、熱伝導性及び難燃性を併有し、接着面の面状態が良好な感圧接着剤層を形成できる感圧接着剤組成物、感圧接着剤層及び感圧接着剤層を具備する感圧接着性積層体を提供する。
【解決手段】 リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットを含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、熱伝導性充填剤とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧接着剤組成物、感圧接着剤層及び感圧接着性積層体に関し、特に、電子部品等の発熱体と、ヒートシンク等の放熱部品との伝熱と接着固定を行う接合部材として好適に使用できるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス技術の格段なる進歩により電気、電子機器の高集積化・高性能化が進み、半導体やパワートランジスター等の電子部品や、プラズマディスプレイ等の家電製品では、熱放散の必要性が高まっている。このため、電子部品や家電製品ではヒートシンクを接着又は機械的に固定して熱放散を行っている。これらを接合する接合部材には熱伝導性の他、熱が蓄積した場合においても発火の危険性が無いように高い難燃性が要求される。
【0003】
そこで、難燃性を付与するために、塩素や臭素等のハロゲン系化合物を難燃剤として配合したものや、ハロゲン系化合物と酸化アンチモンを併用したものが提案されている。しかしながら、難燃剤としてハロゲン系化合物を用いた場合は、燃焼時に人体へ悪影響を及ぼすハロゲン系ガスが発生することが問題となっており、ハロゲン系化合物を用いずに難燃化する方法が求められている。
【0004】
そこで、基材に、金属水酸化物系難燃剤と、赤リンとを配合したノンハロゲン難燃性放熱シートが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、シート自体には粘着性がないため、感圧接着性テープとして使用する場合、別途感圧接着剤層を設ける必要があり、充分な熱伝導性が得られないという問題があった。
【0005】
また、熱伝導性充填剤と窒素リン化合物とを含有する熱伝導難燃性感圧接着剤や(特許文献2参照)、熱伝導性充填剤を含むシート状基材と、熱伝導性充填剤と窒素リン化合物とを含む熱伝導難燃性感圧接着剤とからなる熱伝導難燃性接着テープ(特許文献3参照)が提案されている。しかしながら、難燃性化合物と熱伝導性化合物とを併用すると、それぞれの化合物同士が凝集しやすく、感圧接着剤中に凝集物が発生してしまい、良好な接着剤層が得られないという問題があった。その結果、接着面の面状態が悪く接着性に影響がでたり、所望の熱伝導性や難燃性が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−238760号公報
【特許文献2】特開2000−281997号公報
【特許文献3】特開2003−160768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高粘着力を発揮すると共に、熱伝導性及び難燃性を併有し、接着面の面状態が良好な感圧接着剤層を形成できる感圧接着剤組成物、感圧接着剤層及び感圧接着剤層を具備する感圧接着性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体に、熱伝導性充填剤を配合することにより、粘着性、熱伝導性、及び難燃性に優れ、さらに接着面の面状態が良好な感圧接着剤層を形成できる感圧接着剤組成物及び感圧接着剤層を具備する感圧接着性積層体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットを含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、熱伝導性充填剤とを含むことを特徴とする感圧接着剤組成物にある。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットは、下記一般式(1)で表されることを特徴とする第1の態様に記載の感圧接着剤組成物にある。
【0011】
【化1】

【0012】
本発明の第3の態様は、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の固形成分100質量部に対して、前記熱伝導性充填剤を40〜300質量部配合することを特徴とする第1又は2の態様に記載の感圧接着剤組成物にある。
【0013】
本発明の第4の態様は、前記熱伝導性充填剤が、金属酸化物、金属窒化物、及び水和金属化合物からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする第1〜3のいずれか一つの態様に記載の感圧接着剤組成物にある。
【0014】
本発明の第5の態様は、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と、炭素数が1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、及び前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能であり側鎖に架橋性官能基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体のうち少なくとも一方と、から構成されるものであることを特徴とする第1〜4のいずれか一つの態様に記載の感圧接着剤組成物にある。
【0015】
本発明の第6の態様は、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットの割合が15〜100モル%であることを特徴とする第1〜5の何れか一つの態様に記載の感圧接着剤組成物にある。
【0016】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れか一つの態様に記載の感圧接着剤組成物の架橋物からなる感圧接着剤層にある。
【0017】
本発明の第8の態様は、前記感圧接着剤層は、熱伝導率が0.3W/m・K以上であることを特徴とする第7の態様に記載の感圧接着剤層にある。
【0018】
本発明の第9の態様は、基材の少なくとも片面に第8の態様に記載の感圧接着剤層を有することを特徴とする感圧接着性積層体にある。
【0019】
本発明の第10の態様は、前記感圧接着剤層の厚さが200μm以下であることを特徴とする第9の態様に記載の感圧接着性積層体にある。
【0020】
本発明の第11の態様は、前記感圧接着性積層体は、熱伝導率が0.3W/m・K以上であることを特徴とする第9又は10の態様に記載の感圧接着性積層体にある。
【発明の効果】
【0021】
本発明の感圧接着剤組成物は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体及び熱伝導性充填剤を含むものであり、熱伝導性、難燃性及び粘着性に優れ、ジッピングを防止した感圧接着剤層を形成できるものである。また、本発明によれば、熱伝導性、難燃性及び粘着性に優れ、さらに接着面の面状態が良好な感圧接着剤層及び感圧接着性積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を(1)感圧接着剤組成物、(2)感圧接着剤層、及び(3)感圧接着性積層体に項分けして詳細に説明する。
【0023】
(1)感圧接着剤組成物
本発明の感圧接着剤組成物は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットを含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、熱伝導性充填剤とを必須成分とするものである。かかる感圧接着剤組成物から形成される感圧接着剤層は、粘着性、熱伝導性、難燃性を併有するものであり、さらに接着面の面状態が良好なものとなる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸の総称であり、他の「(メタ)」もこれに準拠する。また、重合体とは単独重合体及び共重合体の総称であるものとする。
【0024】
また、感圧接着剤組成物は、従来の難燃剤、例えば、リン酸エステル等の低分子量化合物を配合したもののように、凝集物が生じたり、可塑化や粘着物性の低下を招いたりする虞のないものである。リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、分子量が大きく、リン酸エステル等の低分子量化合物のようにブリードアウトする虞がなく、また熱伝導性充填剤を配合しても凝集が生じない。感圧接着剤組成物が、凝集を生じないため、面方向において均一な粘着性を有する感圧接着剤層を形成することができる。したがって、接着面の面状態が良好なものとなる。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットを含むものである。この(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体であっても、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とリン酸エステル基を有さない他の単量体とを共重合させたものであってもよいが、リン酸エステル基を有さない他の単量体と共重合させたものが好ましく、特に、粘着特性を向上させる他の単量体や、分子内に架橋性官能基を有する他の単量体と共重合させたものであるのが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、適切な官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合させて(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主鎖部分を形成した後で、前記適切な官能基とリン酸エステル基を有する化合物を反応させて、重合体の側鎖にリン酸エステル基を導入したものであってもよい。
【0026】
リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットとしては、例えば、下記一般式(1)で表される繰返しユニットが挙げられる。下記一般式(1)で表されるリン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットを含むことにより、感圧接着剤組成物は、より難燃性に優れたものとなる。
【0027】
【化2】

【0028】
上記一般式(1)で表される繰返しユニットを形成する単量体の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジフェニルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジプロピルホスフェートなどを挙げることができる。
【0029】
また、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットは、上述したものに限定されず、リン酸エステル基と共に分子内に架橋性官能基を有したものであってもよい。
【0030】
リン酸エステル基と共に分子内に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットを形成する単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシペンチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシメチルエチルホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルエチルホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルホスフェートなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0031】
他の単量体としては、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な化合物であれば特に制限はないが、後述する粘着性を向上させる単量体、又は/及び分子内に架橋性官能基を有する単量体を共重合させるのが好ましい。
【0032】
粘着性を向上させる単量体としては、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、粘着性に優れた感圧接着剤組成物とすることができる。
【0033】
分子内に架橋性官能基を有する単量体としては、官能基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアナート基、エポキシ基の少なくとも1種を含むものが好ましい。分子内に架橋性官能基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、勿論、本発明の効果を損なわない範囲で、ビニル安息香酸、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;ビニルグリシジルエーテルなどのビニルエーテル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物等の他の単量体を共重合させてもよい。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、特に、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と、炭素数が1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、及び前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能であり側鎖に架橋性官能基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体のうち少なくとも一方とから構成されるものが好ましい。粘着性がより優れたものとなるためである。
【0036】
リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、重量平均分子量(Mw)は、10,000〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは60,000〜900,000である。これにより、ブリードアウトを防止して、粘着物性に優れた感圧接着剤層を形成できる感圧接着剤組成物とすることができる。なお、重量平均分子量はGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットを含むものであればよいが、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットの割合が15〜100モル%であることが好ましく、さらに好ましくは18〜80モル%、特に好ましくは20〜70モル%である。リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットの配合割合を15モル%以上とすることにより、難燃性に優れたものとなる。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体を重合する際には、開始剤を用いて重合すればよく、開始剤の例としては、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。
【0039】
共重合体の形態については特に限定はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0040】
また、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、有機溶剤系、エマルション系、無溶剤系等のいずれの形態であってもよい。
【0041】
熱伝導性充填剤とは、熱伝導性が高い充填剤である。本発明で用いる熱伝導性充填剤は、熱伝導率が10W/m・K以上である。また、熱伝導性充填剤は、電気絶縁性を付与するために、体積抵抗値が1.0×1013Ω・cm以上のものが好ましい。なお、ここでいう体積抵抗値は、充填剤をシート状に成形して測定したものである。熱伝導充填剤としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、及び水和金属化合物から選択でき、熱伝導率が所望のものを選定する。金属酸化物としては、酸化チタン(TiO2 、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化鉄(Fe23)、酸化カルシウム(CaO2)等が挙げられ、金属窒化物としては、窒化アルミニウム(AlN)等が挙げられ、水和金属化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。また、その他の例として、酸化シリコン(SiO2)、ホウ化チタン(TiB2)、窒化ホウ素(BN)、窒化シリコン(Si34)等も用いることもできる。これらの熱伝導充填剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
また、熱伝導性充填剤の粒子形状は、球状、針状、フレーク状、スター状などのいかなる形状であってもよい。また、熱伝導性充填剤の平均粒子径は、0.5〜250μmのものが好ましく、さらに好ましくは1〜100μm、特に好ましくは5〜30μmであるのが好ましい。なお、ここでいう平均粒子径は、針状、フレーク状、スター状などの場合は、長径を指す。平均粒子径が250μmより大きくなると、感圧接着組成物より形成される感圧接着剤層の表面の平滑性が得られなくなる虞がある。また、平均粒子径が0.5μm未満となると凝集する虞がある。
【0043】
熱伝導性充填剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の固形成分100質量部に対して、熱伝導性充填剤を30〜400質量部含有することが好ましく、50〜250質量部がさらに好ましい。30質量部未満となると、良好な熱伝導性が得られにくく、また400質量部より多くなると、被着体表面への密着性が低下したり、粘着力が阻害されるなどの問題が起こりやすい。
【0044】
さらに、感圧接着剤組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、軟化剤(可塑剤)、硬化促進剤、その他の充填剤、老化防止剤、粘着付与剤、顔料、染料、カップリング剤等の各種添加剤等を添加することができる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン及びその誘導体、ポリテルペン、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。軟化剤としては、例えば、液状ポリエーテル、グリコールエステル、液状ポリテルペン、液状ポリアクリレート、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル等が挙げられる。
【0045】
感圧接着剤組成物は、必要に応じて有機溶剤系、エマルション系等の溶媒を含んでいてもよい。また、感圧接着剤組成物が溶媒を含む場合、固形成分(リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の固形成分、熱伝導性充填剤、架橋剤)の濃度は特に限定されず、所定の基材にそのまま塗工できる濃度であっても、塗工の際に希釈して用いる濃度であってもよい。
【0046】
かかる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;およびこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;などが挙げられる。
【0047】
本発明の感圧接着剤組成物は、必要に応じて希釈した後、所定の基材に塗工して、架橋させることにより感圧接着剤層となる。なお、感圧接着剤組成物を塗工する際は、塗工の利便さから、これらの有機溶剤等を使用して、固形分濃度が10〜60質量%の範囲になるように調製するのが好ましい。
【0048】
(2)感圧接着剤層
本発明の感圧接着剤層は、上述した感圧接着剤組成物の架橋物からなるものである。感圧接着剤組成物の架橋は、感圧接着剤組成物をベース基材へ塗布、乾燥を通して行うのが一般的であるが、感圧接着剤組成物の架橋物からなる感圧接着剤層を先に作製した後、ベース基材などに転写することもできる。
【0049】
架橋剤は、種類に特に制限はなく、具体例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、メラミン系樹脂、アジリジン化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられる。適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましく用いられる。これらの化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
イソシアネート化合物としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキセンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートL,東洋インキ社製、商品名:BHS−8515、綜研化学社製、商品名:L−45)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートHX)などのイソシアネート付加物;などが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
エポキシ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(三菱瓦斯化学社製、商品名:TETRAD−X)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製、商品名:TETRAD−C)などとして市販されているものが挙げられる。これらの化合物は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
これらの架橋剤は、本発明の感圧接着剤組成物に予め含有させておいてもよい。これらの架橋剤の使用量は、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体100質量部に対して、0.01〜15質量部含有されていることが好ましく、0.5〜5質量部含有されていることがより好ましい。架橋剤を上記範囲とすることにより、良好な密着性と耐久性が得られる。架橋剤の含有量が0.01質量部よりも少ない場合、架橋形成が不十分となり、感圧接着剤組成物の凝集力が小さくなって、十分な難燃性が得られないことや、糊残りの原因となることがある。一方、含有量が15質量部より多い場合、凝集力が大きくなり、流動性が低下し、被着体への濡れが不十分となって、はがれの原因となることがある。
【0053】
本発明の感圧接着剤層は、熱伝導率が0.3W/m・K以上であるのが好ましく、さらに好ましくは0.4W/m・K以上である。また、感圧接着剤層は、体積抵抗値が1.0×1011Ω・cm以上であるのが好ましい。
【0054】
また、感圧接着剤層の厚さは、乾燥状態で1〜200μm程度が好ましく、10〜100μm程度がより好ましい。上述した感圧接着剤組成物を架橋することにより、このように非常に薄く且つ熱伝導性の高いものを実現することができる。したがって、本発明の感圧接着剤層は、小型化した装置において特に好適に使用することができる。
【0055】
本発明の感圧接着剤層は、熱伝導性、及び難燃性が要求される際に好適に用いられるものであり、例えば、電子部品等の発熱体と、ヒートシンク等の放熱部品との伝熱と接着固定を行うのに好適に用いることができる。
【0056】
(3)感圧接着性積層体
本発明の感圧接着性積層体は、基材上の片面又は両面に、本発明の感圧接着剤層を有するものである。ここでいう基材は、ベース基材の他、剥離シートを含むものである。
【0057】
なお、感圧接着性積層体の基本的構成は、ベース基材の少なくとも片面に感圧接着剤層を有するものである。感圧接着性積層体は、勿論、ベース基材の両面に感圧接着剤層を有するものであってもよい。また、必要に応じて感圧接着剤層の上に剥離シートを貼着してもよい。剥離シートにより、感圧接着剤層を保護することができる。
【0058】
なお、感圧接着性積層体は、ベース基材がない構成としてもよく、感圧接着剤層の少なくとも一方に剥離シートを有するものを例示することができる。
【0059】
ベース基材は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリノルボルネン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリイミド等からなる樹脂フィルム、プラスチックフィルムの表面にポリイミド等の樹脂をコーティングしたもの、含浸紙等の紙、金属箔、織布、不織布、又はこれらの積層体が挙げられる。また、ベース基材には、熱伝導性が良好な充填剤を分散させてもよい。ベース基材は、感圧接着性積層体の用途により、適宜、選択する。このようなベース基材の厚さは、通常6〜300μm、好ましくは12〜200μmである。
【0060】
剥離シートは、特に限定されるものではなく、グラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、クラフト紙、または上質紙にポリエチレン等のフィルムをラミネートした紙、ポリエステルフィルムのようなプラスチックフィルム等に剥離剤であるフッ素樹脂やシリコーン樹脂等を乾燥質量で0.1〜3g/m2程度になるように塗工し、熱硬化やUV硬化等によって剥離層を設けたものが適宜使用される。
【0061】
基材としては、熱伝導率が0.3W/m・K以上であるものを用いるのが好ましく、さらに好ましくは0.4W/m・K以上であり、例えば、ポリイミド、金属箔、プラスチックフィルムの表面にポリイミド等の樹脂をコーティングしたフィルム、熱伝導性が良好な充填剤を分散させたプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0062】
本発明の感圧接着性積層体の製造方法について説明する。
【0063】
まず、有機溶剤系、エマルション系、無溶剤系等の形態からなる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を適宜、溶剤(分散液)で希釈し、これに、分散機等を用いて熱伝導性充填剤を分散させて感圧接着剤組成物塗工液を得る。なお、感圧接着剤組成物塗工液は、架橋剤、分散安定剤、粘着付与剤等の添加物を含有してもよい。
【0064】
そして、得られた感圧接着剤組成物塗工液を基材の表面に塗工して、基材上に感圧接着剤層を形成する。この際、架橋を促進させるために、感圧接着剤層を加熱処理してもよく、加熱処理温度は、例えば、50〜150℃である。感圧接着剤組成物を基材上へ塗工する方法としては特に限定されず、例えばロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディッピング等の方法が挙げられる。感圧接着剤組成物を架橋してなる感圧接着剤層の厚さは、乾燥状態で1〜200μm程度が好ましく、10〜100μm程度がより好ましい。
【0065】
その後、感圧接着剤層の基材を有する側とは反対の面に剥離シートを設けてもよい。
【0066】
本発明の感圧接着性積層体は、上述した感圧接着剤組成物の架橋物からなる感圧接着剤層を具備するものであり、熱伝導性、及び難燃性に優れるものである。感圧接着性積層体は、熱伝導率が0.3W/m・K以上であるのが好ましく、さらに好ましくは0.4W/m・K以上である。また、体積抵抗値が1.0×1011Ω・cm以上であるのが好ましい。
【0067】
本発明の感圧接着性積層体は電子部材、またはそれらを構成する材料として好適に使用できるものである。また、電子部品等の発熱体と、ヒートシンク等の放熱部品との伝熱と接着固定を行うのに好適に用いることができる。
【0068】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0069】
(実施例1)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、及び温度計を取り付けた反応容器に、アクリル酸n−ブチル47質量部(0.36モル)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル3質量部(0.025モル)、メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスフェート(大八化学工業製:MR−260)50質量部(0.13モル)、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部、酢酸エチル150質量部を投入し、常温で1時間かけて窒素置換をした。その後、70℃に昇温し、8時間重合を行った。得られたポリマーをGPC(ポリスチレン換算)にて分子量測定を行ったところ、重量平均分子量(Mw)が650,000であった。得られたポリマー溶液に、酸化亜鉛(堺化学社製:LP−ZINC5,平均粒子径5μm)40質量部、イソシアナート系架橋剤(綜研化学製:L−45)1.0質量部を加え、感圧接着剤組成物を得た。得られた感圧接着剤組成物を、剥離フィルム(リンテック社製:PET381031)にアプリケーターを用いて塗布し、100℃で1分間加熱・乾燥することにより、厚さ約50μmの感圧接着剤層からなる感圧接着剤積層体を作製した。
【0070】
(実施例2)
実施例1において、酸化亜鉛を100質量部とした以外は同様にして、感圧接着剤積層体を作製した。
【0071】
(実施例3)
実施例1において、酸化亜鉛を300質量部とした以外は同様にして、感圧接着剤積層体を作製した。
【0072】
(実施例4)
実施例2において、酸化亜鉛の代わりに酸化アルミニウム(日本軽金属社製:A−31,平均粒子径5μm)100質量部を用いた以外は同様にして、感圧接着剤積層体を作製した。
【0073】
(実施例5)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、及び温度計を取り付けた反応容器にメタクリロイルオキシエチルジフェニルホスフェート(大八化学工業製:MR−260)100質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.3質量部、酢酸エチル150質量部を投入し、1時間かけて窒素置換をした。その後、70℃に昇温し8時間重合を行った。得られたポリマーのMwは78,000であった。得られたポリマー溶液に、平均粒子径5μmの酸化亜鉛(堺化学社製:LP−ZINC5)100質量部、イソシアナート系架橋剤(綜研化学製:L−45)1.0質量部を加え、感圧接着剤組成物を得た。この感圧接着剤組成物を、剥離フィルム(リンテック社製:PET381031)にアプリケーターを用いて塗布し、100℃で1分間加熱・乾燥することにより、厚さ約50μmの感圧接着剤層からなる感圧接着剤積層体を作製した。
【0074】
(実施例6)
実施例1で得られた感圧接着剤組成物を25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製:カプトン100H)にアプリケーターを用いて塗布し、100℃で1分間加熱・乾燥することにより、厚さ約50μmの感圧接着剤層とし、この層の面に剥離フィルム(リンテック社製:PET381031)をラミネートし、感圧接着剤積層体を作製した。
【0075】
(実施例7)
実施例6において、実施例2で得られた感圧接着剤組成物を使用した以外は同様にして感圧接着剤積層体を作製した。
【0076】
(実施例8)
実施例6において、実施例3で得られた感圧接着剤組成物を使用した以外は同様にして感圧接着剤積層体を作製した。
【0077】
(実施例9)
実施例6において、実施例4で得られた感圧接着剤組成物を使用した以外は同様にして感圧接着剤積層体を作製した。
【0078】
(実施例10)
実施例6において、実施例5で得られた感圧接着剤組成物を使用した以外は同様にして感圧接着剤積層体を作製した。
【0079】
(比較例1)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、及び温度計を取り付けた反応容器にアクリル酸n−ブチル94質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル6質量部、酢酸エチル150質量部、およびアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を投入し、1時間かけて窒素置換をした。その後、70℃に昇温し8時間重合を行った。得られたポリマーのMwは550,000であった。このポリマー溶液に、酸化亜鉛(堺化学社製:LP−ZINC5,平均粒子径5μm)100質量部、イソシアナート系架橋剤(綜研化学製:L−45)1.5質量部を加え、感圧接着剤組成物を得た。得られた感圧接着剤組成物を、剥離フィルム(リンテック社製:PET381031)にアプリケーターを用いて塗布し、100℃で1分間加熱・乾燥することにより、厚さ約50μmの感圧接着剤層からなる感圧接着剤積層体を作製した。
【0080】
(比較例2)
比較例1において、酸化亜鉛を40質量部とし、赤リン50質量部を加えた以外は同様にして、感圧接着性積層体を得た。
【0081】
(比較例3)
比較例1において、酸化亜鉛を40質量部とし、赤リン10質量部を加えた以外は同様にして、感圧接着性積層体を得た。
【0082】
(比較例4)
比較例1で得られた感圧接着剤組成物を25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製:カプトン100H)にアプリケーターを用いて塗布し、100℃で1分間加熱・乾燥することにより、厚さ約50μmの感圧接着剤層とし、この層の面に剥離フィルム(リンテック社製:PET381031)をラミネートし、感圧接着剤積層体を作製した。
【0083】
(比較例5)
比較例1において、比較例2で得られた感圧接着剤組成物を使用した以外は同様にして感圧接着剤積層体を作製した。
【0084】
(比較例6)
比較例1において、比較例3で得られた感圧接着剤組成物を使用した以外は同様にして感圧接着剤積層体を作製した。
【0085】
(試験例1)粘着力試験
実施例6〜10及び比較例4〜6の感圧接着剤積層体のSUS板に対する粘着力をJIS Z 0237に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0086】
(試験例2)難燃性評価試験
実施例6〜10及び比較例4〜6の感圧接着剤積層体の剥離フィルムを剥離し、アンダーライダーズラボラトリーズ社発行のプラスチック材料の燃焼性試験規格UL94の垂直燃焼試験方法に準じてUL94VTMランクを判定した。結果を表2に示す。
【0087】
(試験例3)感圧接着剤層の熱伝導率
実施例1〜5及び比較例1〜3の感圧接着剤積層体から剥離フィルムを剥離し、それぞれ感圧接着剤層の厚みが4mmとなるまで積層し、50mm×100mmの大きさに切断して試験片を作製した。23±2℃の雰囲気下で、迅速熱伝導率計QTM500(京都電子工業社製)により、標準物質であるPE発泡体、シリコンスポンジ、シリコンゴム、石英の熱伝導率を測定した。その後、各標準物質の上に試験片を接着し、同様に熱伝導率を測定し、標準物質の熱伝導率との熱伝導率の偏差をプロットして、内挿法により当該感圧接着剤層の熱伝導率を求めた。また、測定を各5回行い、標準偏差を求めた。結果を表1に示す。
【0088】
(試験例4)感圧接着剤積層体の熱伝導率
実施例6〜10及び比較例4〜6の感圧接着剤積層体から剥離シートを剥離し、サンプルを厚みが約1mmになるまで積層し、50mm×100mmの大きさに切断し試験片とした。23±2℃の雰囲気下で、迅速熱伝導率計QTM500(京都電子工業社製)により、標準物質であるPE発泡体、シリコンスポンジ、シリコン、石英の熱伝導率を測定した。その後、各標準物質の上に試験片を接着し、同様に熱伝導率を測定し、標準物質の熱伝導率との熱伝導率の偏差をプロットして、内挿法により当該感圧接着剤積層体の熱伝導率を求めた。また、測定を各5回行い、標準偏差を求めた。結果を表2に示す。
【0089】
(試験例5)感圧接着剤層の面状態の観察
実施例1〜5及び比較例1〜3において、加熱・乾燥後の感圧接着剤層の面状態を目視にて観察した。結果を表1に示す。
×:目視にて確認できる凝集物があり、塗工スジが発生し、面状態が悪かった。
○:塗工スジが発生しておらず、面状態が良好であった。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
(結果のまとめ)
実施例1〜5の感圧接着剤層は、面状態が良好であり、いずれも熱伝導率が0.44(W/m・K)以上で熱伝導性に優れるものであり、標準偏差が2.43以下でばらつきも少なかった。また、実施例1〜5の感圧接着剤層をそれぞれ具備する実施例6〜10の感圧接着剤積層体は、いずれも粘着力、難燃性、及び熱伝導率が高く、熱伝導率の標準偏差が小さかった。
【0093】
これに対し、リン酸エステル基を含まないアクリル酸エステル系重合体からなる比較例1の感圧接着剤層は、熱伝導率が0.50(W/m・K)であったが、比較例1の感圧接着剤層を具備する比較例4は、難燃性がなかった。
【0094】
また、アクリル系粘着剤に赤リンと酸化亜鉛を配合した比較例2の感圧接着剤層は、熱伝導率が0.49(W/m・K)であった。感圧接着剤層は塗工スジが発生し、面状態が悪かった。熱伝導性充填剤と難燃剤との分散性が悪く、凝集物が発生したためである。このため、比較例2の感圧接着剤層を具備する比較例5の感圧接着剤積層体は、ジッピングが発生した。
【0095】
また、比較例5の感圧接着剤積層体は難燃剤と熱伝導性充填剤の分散性が悪く、シートに均一に難燃剤が存在しないために十分な難燃性が得られなかった。
【0096】
また、アクリル系粘着剤に赤リン及び酸化亜鉛を配合した比較例3の感圧接着剤層は、塗工スジが発生し、面状態が悪かった。また、比較例3の感圧接着剤層を具備する比較例6の感圧接着剤積層体は、熱伝導率が0.42(W/m・K)であり高い粘着力を有したが、赤リンの配合量が少なかったため難燃性が発現しなかった。
【0097】
さらに、比較例2及び3の感圧接着剤層(比較例5及び6の感圧接着剤積層体)は難燃剤と熱伝導性充填剤の分散性が悪く、シートの組成が均一でないため、熱伝導率測定において標準偏差が大きく、熱伝導性能にばらつきが大きかった。
【0098】
以上より、本発明にかかるリン酸エステル基を含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、熱伝導性充填剤を配合しても、形成される感圧接着剤層の面状態が良好となり、高い粘着性を有するものであることがわかった。すなわち、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットを含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、熱伝導性充填剤を含む感圧接着剤組成物は、粘着性、熱伝導性、及び難燃性に優れ、接着面の面状態が良好なものであることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットを含む(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、熱伝導性充填剤とを含むことを特徴とする感圧接着剤組成物。
【請求項2】
前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットは、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の感圧接着剤組成物。
【化1】

【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の固形成分100質量部に対して、前記熱伝導性充填剤を30〜400質量部配合することを特徴とする請求項1又は2に記載の感圧接着剤組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性充填剤が、金属酸化物、金属窒化物、及び水和金属化合物からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、
リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と、
炭素数が1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体、及び前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能であり側鎖に架橋性官能基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体のうち少なくとも一方と、
から構成されるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の感圧接着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、前記リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる繰返しユニットの割合が15〜100モル%であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の感圧接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の感圧接着剤組成物の架橋物からなる感圧接着剤層。
【請求項8】
前記感圧接着剤層は、熱伝導率が0.3W/m・K以上であることを特徴とする請求項7に記載の感圧接着剤層。
【請求項9】
基材の少なくとも片面に請求項8に記載の感圧接着剤層を有することを特徴とする感圧接着性積層体。
【請求項10】
前記感圧接着剤層の厚さが200μm以下であることを特徴とする請求項9に記載の感圧接着性積層体。
【請求項11】
前記感圧接着性積層体は、熱伝導率が0.3W/m・K以上であることを特徴とする請求項9又は10に記載の感圧接着性積層体。

【公開番号】特開2010−235846(P2010−235846A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86910(P2009−86910)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】