説明

感放射線性樹脂組成物、それに用いる重合体およびそれに用いる化合物

【課題】LWRが小さく、かつ、パターン形状に優れたレジストパターンを形成可能である感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)特定のCOO構造を側鎖に有する重合体および
(B)感放射線性酸発生剤
を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、その他のフォトリソグラフィ工程に使用される感放射線性樹脂組成物と、それに好適に用いられる重合体、該重合体に用いられる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅型感放射線性樹脂組成物は、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーに代表される遠紫外光等の放射線照射により露光部に酸を生成させ、この酸を触媒とする反応により、露光部と未露光部の現像液に対する溶解速度を変化させ、基板上にレジストパターンを形成させる組成物である。
【0003】
より精密な線幅制御を行う場合、例えば、デバイスの設計寸法がサブハーフミクロン以下であるような場合には、化学増幅型レジストは、解像性能が優れているだけでなく、レジストパターンの線幅のバラツキの指標であるLWR(Line Width Roughness)が小さく、かつ、パターン形状が矩形であることが重要となってきている。このような微細な形状を制御するために、生成した酸の拡散速度を調整するための酸拡散制御剤として塩基性化合物を添加する技術が知られている。特に、酸により解離して酸拡散制御性を失う酸拡散制御剤が、露光部と未露光部とのコントラストに優れる点で注目されているが、LWR特性やパターン形状はいまだ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平2−27660号公報
【特許文献2】特開2009−53688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題とするところは、LWRが小さく、かつ、パターン形状に優れたレジストパターンを形成可能な感放射線性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、
(A)下記式(1−1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1−1)」ともいう)および下記式(1−2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1−2)」ともいう)から選ばれる少なくとも一種(以下、繰り返し単位(1−1)と(1−2)をまとめて「繰り返し単位(1)」ともいう)を有する重合体(以下、「重合体(A)」ともいう)および
(B)感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤(B)」ともいう)
を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立に、単結合、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状の2価の炭化水素基、炭素数3〜20の環状もしくは環状の部分構造を有する2価の炭化水素基、またはこれら水素原子の一部もしくは全部がフッ素で置換された基を示し、Rは単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−基を示す(ただし、R、RおよびRがすべて単結合の場合を除く)。Xはオニウムカチオンを示す。)
【0009】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記式(1−1)および上記式(1−2)におけるXが下記式(X−1)および下記式(X−2)から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシル基を示す。)
【0012】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、重合体(A)が、さらに下記式(2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」ともいう)を有することが好ましい。
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Rは上記式(1−1)および(1−2)に同じ。R10は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であり、R11は相互に独立に炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、または2つのR11が相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。)
【0015】
本発明の重合体は、繰り返し単位(1−1)および繰り返し単位(1−2)から選ばれる少なくとも一種を有することを特徴とする。
本発明の重合体は、上記式(1−1)および上記式(1−2)におけるXが上記式(X−1)および上記式(X−2)から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の重合体は、さらに繰り返し単位(2)を有することが好ましい。
【0016】
本発明の化合物は、下記式(i)で表される。
【0017】
【化4】

(式中、R〜RおよびXの定義は上記式(1−1)に同じ。)
【発明の効果】
【0018】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、LWRが小さく、かつ、パターン形状に優れたレジストパターンを形成可能であるという効果を奏するものである。
本発明の重合体および化合物は、本発明の感放射線性樹脂組成物の原料として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
<重合体(A)>
本発明の感放射線性樹脂組成物を構成する重合体(A)は、すなわち本発明の重合体であり、繰り返し単位(1−1)および繰り返し単位(1−2)から選ばれる少なくとも一種を有する。繰り返し単位(1−1)および繰り返し単位(1−2)はオニウム塩をカチオンとするカルボン酸エステル構造を有しており、この構造は感放射線性酸発生剤(B)が発生する酸に対して塩基として働くが、活性光線または放射線の照射により分解して、感放射線性酸発生剤(B)が発生する酸に対する塩基性を消失する。これにより、重合体(A)を含有する感放射線性樹脂組成物は、露光部では酸が拡散し、未露光部における酸拡散は制御され、良好なコントラストが得られる。さらに、酸拡散制御性を有する構造が重合体中に存在することで、未露光部における均質な酸拡散制御性が発現するため、特に良好なLWR特性やパターン形状が得られるという本願特有の優れた効果が得られるものである。
【0021】
重合体(A)は、アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性を示す重合体であるが、酸の作用により脱離可能な保護基(酸解離性基)を有し、酸の作用により該保護基が脱離してアルカリ可溶性を示す重合体である。酸解離性基を有する繰り返し単位としては、繰り返し単位(2)が好適なものとして挙げられる。
【0022】
上記式(1−1)および(1−2)において、R1は水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。上記式(1−1)におけるRおよびRで示される基としては、単結合;メチレン基、エチレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基などの炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状の2価の炭化水素基;シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ジシクロペンタン、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタンなどの炭化水素から水素原子2つを除いた形の、炭素数3〜20の環状もしくは環状の部分構造を有する2価の炭化水素基と、これらの基における水素原子の一部もしくは全部がフッ素で置換された基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜4の直鎖上のアルキレン基及びシクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタンから水素原子2つを除いた形の環状アルキレン基が好ましい。上記式(1−1)におけるRは単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−基を示す。ただし、R、RおよびRがすべて単結合の場合は除く。
【0023】
繰り返し単位(1−1)を得るために用いられる単量体としては、上記式(i)で表される本発明の化合物が用いられる。当該化合物の好ましい具体例としては、例えば下記式(i−1)〜(i−17)で表される化合物が挙げられる。中でも、Rが水素原子またはメチル基の化合物が好ましく用いられる。
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、RおよびXは上記式(1−1)で定義したとおりである。)
【0026】
で表されるオニウムカチオンは、上記式(X−1)および上記式(X−2)から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0027】
上記式(X−1)で表されるスルホニウムカチオンとしては、例えば、下記式(X−1−1)〜(X−1−22)で表されるカチオンを挙げることができる。また、上記式(1−2)で表されるヨードニウムカチオンとしては、例えば、下記式(X−2−1)〜(X−2−25)で表されるカチオンを挙げることができる。
【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
上記式(1−1)および(1−2)中のMで表される上記1価のオニウムカチオンは、例えば、Advances in Polymer Science,Vol.62,p.1−48(1984)に記載されている一般的な方法に準じて製造することができる。
また、本発明の化合物は、一般に、カルボン酸部位の活性プロトンをイオン交換によりオニウムカチオンに交換することで合成することができる。
【0031】
重合体(A)は、通常、さらに繰り返し単位(2)を含有する。繰り返し単位(2)は、酸の作用により脱離可能な保護基(酸解離性基)を有し、酸の作用により該保護基が脱離して重合体(A)にアルカリ可溶性を発現させる機能を有する。
上記式(2)中、R10およびR11における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基などが挙げられる。また、R10およびR11における炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基などの有橋脂環骨格を有する基などを挙げることができる。さらに、2つのR11が相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に形成する炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、上述した1価の脂環式炭化水素基から水素原子を1つ除いた基を挙げることができる。
【0032】
繰り返し単位(2)として、好ましい例を下記式(2−1)〜式(2−9)に挙げる。
【0033】
【化8】

【0034】
(式中、Rは上記式(1)と同じ定義である。)
【0035】
重合体(A)は、さらに他の繰り返し単位を有していてもよい。好ましくは、ラクトン骨格を有する繰り返し単位をさらに含有する。ラクトン骨格を有する繰り返し単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[5.2.1.03,8]デカ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−10−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[5.2.1.03,8]ノナ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−6−オキソ−7−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシカルボニル−6−オキソ−7−オキサ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−7−オキソ−8−オキサ−ビシクロ[3.3.1]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシカルボニル−7−オキソ−8−オキサ−ビシクロ[3.3.1]オクタ−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−メチル−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−エチル−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4−プロピル−2−オキソテトラヒドロピラン−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、
【0036】
(メタ)アクリル酸−2,2−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4,4−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−4,4−ジメチル−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5,5−ジメチル−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−2−オキソテトラヒドロフラン−3−イルエステル、(メタ)アクリル酸−5−オキソテトラヒドロフラン−2−イルメチルエステル、(メタ)アクリル酸−3,3−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−2−イルメチルエステル、(メタ)アクリル酸−4,4−ジメチル−5−オキソテトラヒドロフラン−2−イルメチルエステルなどの化合物由来の繰り返し単位を挙げることができる。
その他の繰り返し単位としては、その他の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位が挙げられ、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0037】
重合体(A)における繰り返し単位(1)の割合は、全繰り返し単位において好ましくは0.1〜20モル%、特に好ましくは0.1〜10モル%である。この割合が0.1モル%未満では、パターン形状やLWR低減などの効果が不足する場合がある。また、20モル%を超えると、低感度化や透過率の悪化による形状不良という問題が生じるおそれがある。
また、繰り返し単位(2)の割合は、全繰り返し単位において好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは25〜75モル%である。この割合が25モル%未満では、十分な溶解性が得られず解像性が悪化する可能性がある。また、75モル%を超えると、基板との密着性が悪化するおそれがある。
【0038】
なお、重合体(A)における繰り返し単位(1)は、露光によりpKa3〜8程度の弱酸を発生することが好ましく、重合体(A)における酸解離性基、好ましくは繰り返し単位(2)における酸解離性基は、このような弱酸では保護基が解離しない構造を有している。一方、後述する酸発生剤(B)が露光により発生する酸はpKa2以下を有していることが望ましく、酸発生剤(B)より発生する酸が拡散した際、未分解の重合体(A)における繰り返し単位(1)とイオン交換をすることによって拡散の抑制が成される。すなわち、活性光線や放射線の照射部においては重合体(A)における繰り返し単位(1)は分解することで酸発生剤(B)より発生する酸に対しての塩基性を失うが、非照射部においてはイオン交換作用により酸発生剤(B)より発生する酸に対して拡散抑制機能を有し、結果、照射部と非照射部において良好なコントラストが得られる。
【0039】
<重合体(A)の製造方法>
本発明の重合体(A)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、所望の分子組成を構成する各繰り返し単位に対応する重合性不飽和単量体を、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下、適当な溶媒中で重合することにより製造することができる。ラジカル重合開始剤は、十分な重合速度を実現するために、十分高い濃度になるように添加することが好ましい。ただしラジカル重合開始剤量の連鎖移動剤量に対する比率が高すぎると、ラジカル−ラジカルカップリング反応が発生し、望ましくない非リビングラジカル重合体が生成するので、得られる重合体は分子量および分子量分布などの高分子特性においてコントロールされていない特性を有する部分が含まれてしまう。ラジカル重合開始剤量と連鎖移動剤量とのモル比率は、(1:1)〜(0.005:1)であることが好ましい。
【0040】
上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、熱重合開始剤、レドックス重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。具体的には例えばパーオキシドやアゾ化合物等の重合開始剤が挙げられる。さらに具体的なラジカル重合開始剤としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)等が挙げられる。
上記連鎖移動剤としては、ピラゾール誘導体、アルキルチオール類等が挙げられる。
【0041】
重合操作については通常のバッチ重合、滴下重合などの方法で重合できる。例えば、上記繰り返し単位(1−1)、(1−2)およびその他の繰り返し単位のそれぞれを形成する単量体について、必要な種類および量を有機溶媒に溶解させ、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下で重合することにより重合体(A)が得られる。重合溶媒は一般に単量体、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を溶解できる有機溶剤が用いられる。有機溶剤としてケトン系溶剤、エーテル系溶剤、非プロトン系極性溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤、線状または環状脂肪族系溶剤が挙げられる。ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。エーテル系溶剤としてはアルコキシアルキルエーテル、例えば、メトキシメチルエーテル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。非プロトン系極性溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイドなどが挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸アルキル、例えば酢酸エチル、酢酸メチルなどが挙げられる。芳香族系溶剤としては、アルキルアリール溶剤、例えばトルエン、キシレン、およびハロゲン化芳香族溶剤、例えばクロロベンゼンなどが挙げられる。脂肪族系溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0042】
重合温度は、一般に20〜120℃、好ましくは50〜110℃、さらに好ましくは60〜100℃である。通常の大気雰囲気でも重合できる場合もあるが、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下での重合が好ましい。重合体(A)の分子量は単量体量と連鎖移動剤量との比率を制御することで調整できる。重合時間は一般に0.5〜144時間、好ましくは1〜72時間、より好ましくは2〜24時間である。
重合体(A)は、分子鎖末端に連鎖移動剤由来の残基を有してもよく、分子鎖末端に連鎖移動剤由来の残基を有さなくてもよく、また、分子鎖末端に連鎖移動剤由来の残基が一部残存する状態であってもよい。
【0043】
重合体(A)は、ハロゲン、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が既定値以下、例えばHPLCによる分析で0.1質量%以下であることが好ましく、それにより、レジストとしての感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等をさらに改善できるだけでなく、液中異物や感度等の経時変化が少ないレジストとして使用できる感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0044】
重合体(A)の精製法としては、例えば以下の方法が挙げられる。金属等の不純物を除去する方法としては、ゼータ電位フィルターを用いて重合体(A)溶液中の金属を吸着させる方法や蓚酸やスルホン酸等の酸性水溶液で重合体(A)溶液を洗浄することで金属をキレート状態にして除去する方法等が挙げられる。また、残留単量体やオリゴマー成分を規定値以下に除去する方法としては、水洗や適切な溶剤を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、重合体(A)溶液を貧溶媒へ滴下することで重合体(A)を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法や、ろ別した重合体スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法がある。また、これらの方法を組み合わせることもできる。上記再沈澱法に用いられる貧溶媒としては、精製する重合体(A)の物性等に左右され一概には例示することはできないが、当業者であれば重合体の物性等に合わせて適宜選定することができる。
【0045】
重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と略称する)は、通常、1,000〜300,000、好ましくは2,000〜300,000、さらに好ましくは2,000〜12,000である。重合体(A)のMwが1,000未満では、レジストとしての耐熱性が低下する傾向があり、一方300,000をこえると、レジストとしての現像性が低下する傾向がある。
また、重合体(A)のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」と略称する)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜1.6である。
【0046】
<(B)感放射線性酸発生剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物を構成する酸発生剤(B)としては、スルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、ジスルホン類やジアゾメタンスルホン類等のスルホン化合物を挙げることができる。
酸発生剤(B)の具体的な好ましい例としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート等のトリフェニルスルホニウム塩化合物;
【0047】
4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0048】
4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0049】
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート等のジフェニルヨードニウム塩化合物;
【0050】
ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等のビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩化合物;
【0051】
1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0052】
1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0053】
1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0054】
N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等のビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド類化合物等を挙げることができる。
【0055】
酸発生剤(B)は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。酸発生剤(B)の配合量は、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、重合体(A)100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることがさらに好ましい。この場合、酸発生剤の配合量が0.1質量部未満では、感度および現像性が低下する傾向があり、一方30質量部をこえると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンが得られ難くなる傾向がある。
【0056】
<その他の成分>
本発明の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、酸拡散制御剤、脂環族添加剤、界面活性剤、増感剤等の各種の添加物を配合できる。
本発明に用いられる重合体(A)はそれ自体が酸拡散制御性を有するため、その他の酸拡散制御剤を併用しなくても、良好な解像度、パターン形状、LWR特性を得ることができるが、併用しても構わない。その他の酸拡散制御剤としては、重合体(A)を除く含窒素有機化合物が好ましく用いられる。
【0057】
含窒素有機化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」と記す場合がある)、同一分子内に2つの窒素原子を有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」と記す場合がある)、同一分子内に3つ以上の窒素原子を有するポリアミノ化合物及びその重合体(以下、まとめて「含窒素化合物(III)」と記す場合がある)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等を挙げることができる。
【0058】
【化9】

(但し、式(3)中、R12は、相互に独立して、水素原子、置換されていてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基である)
【0059】
含窒素化合物(I)としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジ(シクロ)アルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;2,2’,2”−ニトロトリエタノール等の置換アルキルアミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、2,4,6−トリ−tert−ブチル−N−メチルアニリン、N−フェニルジエタノールアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類を挙げることができる。
【0060】
含窒素化合物(II)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等を挙げることができる。
【0061】
含窒素化合物(III)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等を挙げることができる。
【0062】
アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、
【0063】
N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物のほか、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等を挙げることができる。
【0064】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等を挙げることができる。
【0065】
含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン、2,2’:6’,2”−ターピリジン等のピリジン類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を挙げることができる。
【0066】
含窒素有機化合物の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることが更に好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。上記配合量が、15質量部超であると、レジストとしての感度及び露光領域の現像性が低下するおそれがある。なお、含窒素有機化合物の配合量は、0.001質量部未満であると、プロセス条件によってはレジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0067】
次に、脂環族添加剤は、酸解離性基を有していてもよく、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を更に改善する作用を示す成分である。
【0068】
脂環族添加剤としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル、1−アダマンタンカルボン酸t−ブトキシカルボニルメチル、1−アダマンタンカルボン酸αブチロラクトンエステル、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジ酢酸ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(アダマンチルカルボニルオキシ)ヘキサン等のアダマンタン誘導体類;
【0069】
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル、デオキシコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、デオキシコール酸3−オキソシクロヘキシル、デオキシコール酸テトラヒドロピラニル、デオキシコール酸メバロノラクトンエステル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル、リトコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、リトコール酸3−オキソシクロヘキシル、リトコール酸テトラヒドロピラニル、リトコール酸メバロノラクトンエステル等のリトコール酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジn−ブチル、アジピン酸ジt−ブチル等のアルキルカルボン酸エステル類等を挙げることができる。なお、上記脂環族添加剤は、一種単独でまたは二種以上を用いることができる。
【0070】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤のほか、以下全て商品名で、KP341(信越化学工業社製)、ポリフローNo.75,同No.95(共栄社化学社製)、エフトップEF301,同EF303,同EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックスF171,同F173(大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC430,同FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−382,同SC−101,同SC−102,同SC−103,同SC−104,同SC−105,同SC−106(旭硝子社製)等を挙げることができる。なお、上記界面活性剤は、一種単独でまたは二種以上を用いることができる。界面活性剤の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましい。
【0071】
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを光酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を示し、樹脂組成物のみかけの感度を向上させる効果を有するものである。増感剤としては、例えば、カルバゾール類、ベンゾフェノン類、ローズベンガル類、アントラセン類、フェノール類等を挙げることができる。なお、上記増感剤は、一種単独でまたは二種以上を用いることができる。増感剤の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。
【0072】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、その使用に際して、通常、全固形分濃度が1〜50質量%、好ましくは3〜25質量%となるように、溶剤に溶解したのち、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過し感放射線性樹脂組成物溶液として調製される。上記感放射線性樹脂組成物溶液の調製に使用される溶剤としては、例えば、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等の直鎖状もしくは分岐状のケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の3−アルコキシプロピオン酸アルキル類のほか、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0073】
これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できるが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチルから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。
【0075】
下記の各合成例における各測定及び評価は、下記の要領で行った。
(1)Mw及びMn
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度Mw/Mnは測定結果より算出した。
(2)13C-NMR、H−NMR分析
各樹脂の13C−NMR分析及び、単量体のH−NMRは、日本電子(株)製「JNM−EX270」を用い、測定した。
【0076】
以下、重合性不飽和結合を有し、カルボン酸アニオン有するオニウム塩化合物の合成例について説明する。
【0077】
<化合物(M−1)の合成>
GEヘルスケアバイオサイエンス社製イオン交換樹脂(QAE Sephadex A−25)20gを超純水にて一昼夜膨潤させ、カラム管に充填した。そこに三菱レイヨン株式会社製の下記式(X−1)で表される化合物を炭酸水素ナトリウム等の金属塩基にて脱プロトン化したナトリウム塩31gをメタノールに溶解させた溶液を流し、カルボキシラートアニオンを樹脂に担持させた。十分量のメタノールにてフラッシュバックした後、トリフェニルスルホニウムクロライド5.2gをメタノールに溶解させた溶液をカラム管に流し、アニオン交換を行った。得られた溶液をエバポレーターにて溶剤除去したのち、室温で一昼夜乾燥し、下記化合物(M−1)を8.4g得た。
【0078】
【化10】

【0079】
合成した化合物(M−1)について、H−NMRより化合物を同定した。ピーク強度およびケミカルシフトを下記に示す。
H−NMR:1.92(s, 3H, CCH3), 1.04-1.92(m, 8H, CH2), 2.23-2.25(m, 2H, COCH)4.01-4.02(m, 1H, OCH2)422-4.23(m, 3H, OCH2)5.55 (s, 1H, CCH2), 6.10 (s, 1H, CCH2), 7.65-7.89 (m, 15H, ArH)
【0080】
<化合物(M−2)の合成>
GEヘルスケアバイオサイエンス社製イオン交換樹脂(QAE Sephadex A−25)20gを超純水にて一昼夜膨潤させ、カラム管に充填した。そこにアルドリッチ社製の下記式(X−2)で表される化合物を炭酸水素ナトリウム等の金属塩基にて脱プロトン化したナトリウム塩12gをメタノールに溶解させた溶液を流し、カルボキシラートアニオンを樹脂に担持させた。十分量のメタノールにてフラッシュバックした後、トリフェニルスルホニウムクロライド5.2gをメタノールに溶解させた溶液をカラム管に流し、アニオン交換を行った。得られた溶液をエバポレーターにて溶剤除去したのち、室温で一昼夜乾燥し、下記化合物(M−2)を5.6g得た。

【0081】
合成した化合物(M−2)について、H−NMRより化合物を同定した。ピーク強度およびケミカルシフトを下記に示す。
H−NMR:1.86 (s, 3H, CCH3), 5.05 (s, 1H, CCH2), 5.73 (s, 1H, CCH2), 7.69-7.84 (m, 15H, ArH)
【0082】
以下、樹脂(A)の各合成例について説明する。
樹脂(A)の合成に用いた各単量体を式(M−1)〜(M−4)として以下に示す。
【0083】
【化11】

【0084】
<樹脂(A−1)の合成>
上記単量体(M−1)1.6g(3モル%)、単量体(M−3)8.4g(50モル%)、および単量体(M−4)10.4g(47モル%)を、2−ブタノン60gに溶解し、更にジメチルアゾビスイソブチロニトリル1.1gを投入した単量体溶液を準備した。一方で、30gの2−ブタノンを投入した200mlの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した前記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、600gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を2度150gのメタノールにてスラリー状で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の共重合体を得た。得られた重合体のMw、Mw/Mn(分子量分散度)、収率(質量%)、及び重合体中の各繰り返し単位の割合(モル%)を測定した。結果を表2に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
<樹脂(A−2)〜(A−3)の合成>
表1に示す組み合わせ及び仕込みモル%となる質量の単量体を用いたこと以外は、樹脂(A−1)の合成と同様の方法によって、樹脂(A−2)〜(A−3)を合成した。得られた重合体のMw、Mw/Mn(分子量分散度)、収率(質量%)、及び重合体中の各繰り返し単位の割合(モル%)を測定した。結果を表2に示す。
【0088】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
表3に示す割合で、樹脂(A)、酸発生剤(B)、含窒素化合物(D)及び溶剤(C)を混合し、実施例1〜4及び比較例1〜2の感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0089】
【表3】

【0090】
尚、表3に示す酸発生剤(B)、含窒素化合物(D)及び溶剤(C)の詳細を以下に示す。また、表中、「部」は、特記しない限り質量基準である。
<酸発生剤(B)>
(B−1):トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
(B−2):トリフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2’−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート
(B−3) トリフェニルスルホニウム2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2’−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、
<含窒素化合物(D)>
(D−1):N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
<溶剤(C)>
(C−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(C−2):シクロヘキサノン
(C−3):γ−ブチロラクトン
【0091】
<感放射線性樹脂組成物の評価>
実施例1〜4および比較例1〜2の各感放射線性樹脂組成物について、以下のように各種評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0092】
<感度>
ArF光源にて露光を行う場合、ウェハ表面に膜厚770ÅのARC29(日産化学工業株式会社製)膜を形成したシリコンウェハを用い、各組成物溶液を、基板上にクリーントラックACT8(東京エレクトロン製)を用い、スピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、表4に示す条件でPBを行って膜厚0.09μmのレジスト被膜を形成した。上記のようにして形成したレジスト被膜に、ニコン製ArFエキシマレーザー露光装置「S306C」(開口数0.78)を用いて、マスクパターンを介して露光した。表4に示す条件でPEBを行ったのち、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、23℃で60秒間現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、マスクにおいて直径0.090μmのラインアンドスペースパターン(1L1S)が直径0.090μmのサイズになるような露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。
【0093】
<パターンの断面形状(パターン形状>
上記した、感度の測定における0.090μmラインアンドスペースパターンの断面形状を、日立ハイテクノロジーズ社製の「S−4800」にて観察し、T−top形状(即ち、矩形以外の形状)を示していた場合を「不良」とし、矩形形状を示していた場合を「良好」とした。
【0094】
<LWR(ラインウィドゥスラフネス)>
前記最適露光量において、基板上のレジスト被膜に形成された0.090μm(1L/1S)パターンを、測長SEM(日立製作所社製、型番「S9380」)を用いて、パターン上部から観察し、直径を任意のポイントで測定し、その測定ばらつきを3シグマで表現する。
尚、この値は小さいほど好ましく、9.0nm以下である場合を良好とした。
【0095】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1−1)で表される繰り返し単位および下記式(1−2)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも一種を有する重合体および
(B)感放射線性酸発生剤
を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、RおよびRはそれぞれ独立に、単結合、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状の2価の炭化水素基、炭素数3〜20の環状もしくは環状の部分構造を有する2価の炭化水素基、またはこれら水素原子の一部もしくは全部がフッ素で置換された基を示し、Rは単結合、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−基を示す(ただし、R、RおよびRがすべて単結合の場合を除く)。Xはオニウムカチオンを示す。)
【請求項2】
上記式(1−1)および上記式(1−2)におけるXが下記式(X−1)および下記式(X−2)から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】

(式中、R〜Rは各々独立に水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシル基を示す。)
【請求項3】
(A)重合体が、さらに下記式(2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化3】

(式中、Rは上記式(1−1)および(1−2)に同じ。R10は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であり、R11は相互に独立に炭素数1〜4のアルキル基または炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基であるか、または2つのR11が相互に結合して、両者が結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成する。)
【請求項4】
上記式(1−1)で表される繰り返し単位および上記式(1−2)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも一種を有する重合体を有することを特徴とする重合体。
【請求項5】
上記式(1−1)および上記式(1−2)におけるXが上記式(X−1)および上記式(X−2)から選ばれる少なくとも一種である、請求項4に記載の重合体。
【請求項6】
さらに上記式(2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項4に記載の重合体。
【請求項7】
下記式(i)で表される化合物。
【化4】

(式中、R〜RおよびXの定義は上記式(1−1)に同じ。)

【公開番号】特開2010−275431(P2010−275431A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129665(P2009−129665)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】