説明

感放射線性樹脂組成物

【課題】高解像度であり且つLERに優れた化学増幅型レジストとして有用な感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本感放射線性樹脂組成物は、ラクトン骨格を有する繰り返し単位を含むアルカリ不(難)溶性の樹脂と、ベンゼンスルホン酸を発生する酸発生剤と、式(I−A)又は(I−B)の構造を有する化合物からなる酸発生剤とを含む。


〔Z、Zは相互に独立にフッ素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のパーフルオロアルキル基、Yは単結合又は2価の基、Rは置換基、kは0〜5、nは0〜5の整数。Rが複数存在する場合、2以上のRが相互に結合して環を形成してもよい。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、高解像度であり、且つLERに優れた化学増幅型レジストとして有用な感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、集積回路素子の製造をはじめとする微細加工の分野において、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の短波長の放射線、より具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、EUV(Extreme Ultra−Violet:極限紫外線、波長13nm等)又は電子線等が実際に利用され、また利用することが検討されている。これらの中で特にArFエキシマレーザーを用いた露光プロセスが注目されている。また、更に解像度を上げる試みとして、近年、レンズとレジストとの間に液体を満たす液浸露光技術が特に注目されている。
このような短波長の放射線を利用するリソグラフィー技術としては、酸性基を有し、その酸性基の少なくとも一部が酸解離性基によって保護された、酸解離性基修飾アルカリ可溶性樹脂と、短波長の放射線の照射(露光)によって酸を発生する感放射線性酸発生剤(単に「酸発生剤」と記す場合がある)との間の化学増幅効果を利用した化学増幅型の感放射線性樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成する技術が提案されている。
化学増幅型の感放射線性樹脂組成物は、露光により酸発生剤から酸を発生させ、その酸の作用によりアルカリ可溶性樹脂の酸性基を保護していた酸解離性基を解離させ、アルカリ可溶性樹脂の酸性基を露出させ、露光領域をアルカリ現像液に対して易溶性とすることによって、レジストパターンを形成させる組成物である。例えば、カルボキシル基(酸性基)をt−ブチル基(酸解離性基)で保護した重合体やフェノール性水酸基(酸性基)をt−ブトキシカルボニル基(酸解離性基)で保護した重合体と、ジアリールヨードニウム塩やトリアリールスルホニウム塩等の酸発生剤とを含むレジスト組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、特に半導体製造プロセスにおいて、100nmを下回る解像度が必要となってきている。このような極めて微細な加工においては様々なプロセスマージンの不足が、半導体製造時の歩留まりに致命的な影響を及ぼす。このなかでも、特にラインエッジラフネス(LER)が半導体デバイスの電気特性に大きな影響を与える事が危惧されており、高解像度でかつLERに優れる感放射線性樹脂組成物が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、高解像度であり、且つLERに優れた化学増幅型レジストとして有用な感放射線性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、(A)少なくともラクトン骨格を有する繰り返し単位を含むアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の樹脂と、(B−1)置換又は非置換のベンゼンスルホン酸を発生する感放射線性酸発生剤と、(B−2)下記一般式(I−A)又は(I−B)で表される構造を有する化合物からなる感放射線性酸発生剤と、を含むことを特徴とする感放射線性樹脂組成物である。
【化1】

〔一般式(I−A)及び一般式(I−B)において、Z及びZは相互に独立にフッ素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のパーフルオロアルキル基を示し、Yは単結合又は2価の基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜5の整数であり、nは0〜5の整数である。また、Rが複数存在する場合には、2つ以上のRが相互に結合して環を形成していてもよい。〕
【0007】
請求項2の発明は、前記(A)樹脂におけるラクトン骨格を有する繰り返し単位が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物である。
【化2】

〔一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0又は1である。〕
【0008】
請求項3の発明は、前記(B)感放射線性酸発生剤が、フッ素置換ベンゼンスルホン酸を発生する感放射線性酸発生剤である請求項1又は2に記載の感放射線性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記構成を備えることにより、活性光線、特にArFエキシマレーザー(波長193nm)に代表される遠紫外線に感応する化学増幅型レジストとして有用であり、特に高解像度であり、かつLERに優れるため、今後ますます微細化が進行すると予想される集積回路素子の製造に極めて好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
<樹脂>
<1>樹脂(A)
本発明における樹脂(A)は、少なくともラクトン骨格を有する繰り返し単位を含むものであり、且つ、酸性基を有し、その酸性基の少なくとも一部が酸解離性基によって保護された樹脂である。この樹脂は、樹脂中の酸性基の少なくとも一部が酸解離性基によって保護された状態ではアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性を示しているが、酸の作用により酸解離性基が解離すると酸性基が露出してアルカリ可溶性を示す樹脂である。
ここでいう「アルカリ不溶性又はアルカリ難溶性」とは、樹脂(A)を含有する感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、当該レジスト被膜の代わりに樹脂(A)のみを用いた被膜を現像した場合に、当該被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を意味する。
【0011】
前記酸性基は、酸性を示す官能基であれば特に制限はない。例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基又はスルホン酸基等が挙げられる。これらのうち、アルカリに対する溶解性を向上させる効果が高いという理由から、フェノール性水酸基、カルボキシル基が好ましい。樹脂(A)は、これらのうち1種の酸性基のみを有するものであってもよいし、2種以上の酸性基を有するものであってもよい。
【0012】
前記酸解離性基としては、例えば、置換メチル基、1−置換エチル基、1−分岐アルキル基、シリル基、ゲルミル基、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシカルボニル基、直鎖状、分岐状若しくは環状のアシル基、環式酸解離性基等を挙げることができる。
【0013】
前記置換メチル基としては、例えば、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、エトキシメチル基、エチルチオメチル基、メトキシメトキシメチル基、(2−メトキシエトキシ)メチル基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルチオメチル基、フェナシル基、4−ブロモフェナシル基、4−メトキシフェナシル基、4−メチルチオフェナシル基、α−メチルフェナシル基、シクロプロピルメチル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、4−ブロモベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−メチルチオベンジル基、4−エトキシベンジル基、4−エチルチオベンジル基、ピペロニル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、n−プロポキシカルボニルメチル基、i−プロポキシカルボニルメチル基、n−ブトキシカルボニルメチル基、t−ブトキシカルボニルメチル基等を挙げることができる。
【0014】
また、前記1−置換エチル基としては、例えば、1−メトキシエチル基、1−メチルチオエチル基、1,1−ジメトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−エチルチオエチル基、1,1−ジエトキシエチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−シクロヘキシルチオエチル基、1−フェノキシエチル基、1−フェニルチオエチル基、1,1−ジフェノキシエチル基、1−ベンジルオキシエチル基、1−ベンジルチオエチル基、1−シクロプロピルエチル基、1−フェニルエチル基、1,1−ジフェニルエチル基、1−メトキシカルボニルエチル基、1−エトキシカルボニルエチル基、1−n−プロポキシカルボニルエチル基、1−i−プロポキシカルボニルエチル基、1−n−ブトキシカルボニルエチル基、1−t−ブトキシカルボニルエチル基等を挙げることができる。
【0015】
また、前記1−分岐アルキル基としては、例えば、i−プロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基等を挙げることができる。
また、前記シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0016】
また、前記ゲルミル基としては、例えば、トリメチルゲルミル基、エチルジメチルゲルミル基、メチルジエチルゲルミル基、トリエチルゲルミル基、i−プロピルジメチルゲルミル基、メチルジ−i−プロピルゲルミル基、トリ−i−プロピルゲルミル基、t−ブチルジメチルゲルミル基、メチルジ−t−ブチルゲルミル基、トリ−t−ブチルゲルミル基、フェニルジメチルゲルミル基、メチルジフェニルゲルミル基、トリフェニルゲルミル基等を挙げることができる。
また、前記直鎖状、分岐状若しくは環状のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0017】
また、前記直鎖状、分岐状若しくは環状のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、p−トルエンスルホニル基、メシル基等を挙げることができる。
【0018】
さらに、前記環式酸解離性基としては、例えば4−メトキシシクロヘキシル基、2−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロチオピラニル基、2−テトラヒドロチオフラニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基等を挙げることができる。
【0019】
これらの酸解離性基のうち、t−ブチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基等が好ましい。
【0020】
樹脂(A)は、酸性基が前記酸解離性基のうち1種の酸解離性基のみによって保護されているものであってもよいし、2種以上の酸解離性基酸性基によって保護されているものであってもよい。
【0021】
樹脂(A)は、酸性基の少なくとも一部が酸解離性基によって保護されていればよく、酸性基の全てが酸解離性基によって保護されている必要はない。酸解離性基の導入率(酸樹脂(A)中の酸性基と酸解離性基との合計数に対する酸解離性基の数の割合)は、酸解離性基の種類やベースとなる樹脂の種類によって異なる。但し、前記導入率は5〜100%の範囲であることが好ましく、10〜100%の範囲であることが更に好ましい。
【0022】
樹脂(A)の構造は、少なくともラクトン骨格を有する繰り返し単位を含んでおり、前記の性質を有する限り特に限定はなく、必要に応じて種々の構造とすることができる。また、この樹脂(A)は、ラクトン骨格を有する繰り返し単位を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
前記ラクトン骨格を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(1)で表される繰り返し単位〔以下、繰り返し単位(1)という。〕が好ましい。
【0023】
【化3】

〔一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0又は1である。〕
【0024】
また、繰り返し単位(1)以外の、ラクトン骨格を有する他の繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(2−1)〜(2−6)で表される各繰り返し単位〔以下、他の繰り返し単位(2−1)〜(2−6)という。〕が好ましい。
【0025】
【化4】

〔一般式(2−1)〜(2−6)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4の置換基を有してもよいアルキル基を示し、Rは水素原子又はメトキシ基を示す。また、Aは単結合又はメチレン基を示し、Bは酸素原子又はメチレン基を示す。更に、lは1〜3の整数を示し、mは0又は1である。
【0026】
また、樹脂(A)は、ラクトン骨格を有する繰り返し単位以外に、更に下記一般式(3)で表される繰り返し単位(3)を含有していてもよい。
【0027】
【化5】

〔一般式(3)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。各々のRは相互に独立に炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、且つ、Rは以下の(1)又は(2)の条件を満たす。
(1)Rのうちの少なくとも1つは炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体である。
(2)いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体を形成している。〕
【0028】
一般式(3)において、Rの炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基、及び何れか2つのRが相互に結合して形成した炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタンや、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類等に由来する脂環族環からなる基;これらの脂環族環からなる基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基等を挙げることができる。これらの脂環式炭化水素基のうち、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン、シクロペンタン又はシクロヘキサンに由来する脂環族環からなる基や、これらの脂環族環からなる基を前記アルキル基で置換した基等が好ましい。
【0029】
また、前記脂環式炭化水素基の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;オキソ基(即ち、=O基);ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシル基;シアノ基;シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等の炭素数2〜5のシアノアルキル基等の置換基を1種以上或いは1個以上有する基を挙げることができる。これらの置換基のうち、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、シアノメチル基等が好ましい。
【0030】
また、Rの炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基が好ましい。
【0031】
前記一般式(3)で表される繰り返し単位としては、例えば、t−ブトキシカルボニル(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位や、下記一般式で表される繰り返し単位が好ましい。
【0032】
【化6】

〔各一般式において、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕
【0033】
【化7】

〔各一般式において、Rは水素原子又はメチル基を示す。〕
【0034】
また、前記樹脂(A)は、更に他の繰り返し単位を含んでいてもよい。そのような他の繰り返し単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−メチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフラニル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、けい皮酸等の不飽和カルボン酸類が挙げられる。
【0035】
上記樹脂(A)の分子量の範囲については特に限定はなく、必要に応じて種々の分子量の範囲とすることができる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したポリスチレン換算質量分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、通常、1000〜500000であり、好ましくは2000〜400000、より好ましくは3000〜300000である。また、分岐構造を持たない樹脂の場合は1000〜150000であることがより好ましく、更に好ましくは3000〜100000である。分岐構造を有する樹脂の場合、5000〜500000であることがより好ましく、更に好ましくは8000〜300000である。このような範囲とすることにより、得られるレジストの現像特性が優れたものとなる。
【0036】
また、上記樹脂(A)のMwと、GPCによるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」ともいう。)との比(Mw/Mn)についても特に限定はなく、必要に応じて種々の範囲とすることができる。通常は、この比が1〜10であり、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜5である。このような範囲とすることにより、得られるレジストの解像性能が優れたものとなる。
【0037】
樹脂(A)の製造方法については特に限定はない。例えば、予め製造したアルカリ可溶性樹脂中の前記酸性基に1種以上の前記酸解離性基を導入する方法の他、前記酸解離性基で保護された前記酸性基を有する1種以上の重合性不飽和単量体若しくはその1種以上の重合性不飽和単量体と1種以上の他の重合性不飽和単量体とを重合する方法、又は前記酸解離性基で保護された前記酸性基を有する1種以上の重縮合成分若しくは前記1種以上の重縮合成分と1種以上の他の重縮合成分とを重縮合する方法等によって製造することができる。
【0038】
ここで、前記酸解離性基で保護された前記酸性基を有する1種以上の重合性不飽和単量体若しくは前記1種以上の重合性不飽和単量体と1種以上の他の重合性不飽和単量体とを重合する方法では、単量体や反応媒質の種類等に応じて、ラジカル重合開始剤、アニオン重合触媒、配位アニオン重合触媒、カチオン重合触媒等の重合開始剤若しくは重合触媒を適宜に選定し、塊状重合、溶液重合、沈澱重合、乳化重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合等の適宜の重合方法により行うことができる。また、前記酸解離性基で保護された前記酸性基を有する1種以上の重縮合成分若しくは前記1種以上の重縮合成分と1種以上の他の重縮合成分とを重縮合する方法では、酸性触媒の存在下、水媒質中又は水と親水性溶媒との混合媒質中で(共)重縮合をすることができる。
【0039】
<2>感放射線性酸発生剤(B)
本発明の感放射線性樹脂組成物は、露光により酸を発生させる作用を有する感放射線性酸発生剤〔以下、酸発生剤(B)ともいう。〕を含んでいる。そして、その酸の作用によって、上記樹脂(A)中の上記酸解離性基を解離させてレジスト被膜の露光部をアルカリ現像液に易溶性とし、レジストパターンを形成することができる。
【0040】
<酸発生剤B−1>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、前記酸発生剤(B)として、置換又は非置換のベンゼンスルホン酸を発生する感放射線性酸発生剤(B−1)を含む。
この酸発生剤(B−1)としては、1価のオニウムカチオンと、1価の置換又は非置換のベンゼンスルホン酸アニオンと、の組み合わせからなるオニウム塩化合物等が挙げられる。なかでも、フッ素置換されたベンゼンスルホン酸を発生する感放射線性酸発生剤であることが好ましい。
【0041】
前記1価のオニウムカチオンとしては、例えば、O、S、Se、N、P、As、Sb、Cl、Br、I等のオニウムカチオンを挙げることができる。これらのオニウムカチオンのうち、S及びIのオニウムカチオンが好ましい。
前記1価のオニウムカチオンとしては、例えば、下記一般式(i)又は一般式(ii)で表されるものを挙げることができる。
【0042】
【化8】

〔一般式(i)において、R、R及びRは相互に独立に置換若しくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜20のアリール基を示すか、或いはR、R及びRのうちの何れか2つ以上が相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成している。〕
【0043】
【化9】

〔一般式(ii)において、R及びRは相互に独立に置換若しくは非置換の炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は置換若しくは非置換の炭素数6〜20のアリール基を示すか、或いはR及びRが相互に結合して式中のヨウ素原子と共に環を形成している。〕
【0044】
好ましい1価のオニウムカチオンとしては、例えば、下記式(i−1)〜(i−69)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(ii−1)〜(ii−39)で表されるヨードニウムカチオン等を挙げることができる。
【0045】
【化10】

【0046】
【化11】

【0047】
【化12】

【0048】
【化13】

【0049】
【化14】

【0050】
【化15】

【0051】
【化16】

【0052】
【化17】

【0053】
【化18】

【0054】
【化19】

【0055】
【化20】

【0056】
【化21】

【0057】
【化22】

【0058】
【化23】

【0059】
【化24】

【0060】
【化25】

【0061】
【化26】

【0062】
【化27】

【0063】
【化28】

【0064】
【化29】

【0065】
【化30】

【0066】
【化31】

【0067】
【化32】

【0068】
【化33】

【0069】
【化34】

【0070】
【化35】

【0071】
【化36】

【0072】
【化37】

【0073】
【化38】

【0074】
【化39】

【0075】
【化40】

【0076】
【化41】

【0077】
【化42】

【0078】
【化43】

【0079】
【化44】

【0080】
【化45】

【0081】
【化46】

【0082】
【化47】

【0083】
【化48】

【0084】
【化49】

【0085】
【化50】

【0086】
【化51】

【0087】
【化52】

【0088】
【化53】

【0089】
【化54】

【0090】
【化55】

【0091】
【化56】

【0092】
【化57】

【0093】
【化58】

【0094】
【化59】

【0095】
【化60】

【0096】
【化61】

【0097】
【化62】

【0098】
【化63】

【0099】
【化64】

【0100】
これらの1価のオニウムカチオンのうち、例えば、前記式(i−1)、式(i−2)、式(i−6)、式(i−8)、式(i−13)、式(i−19)、式(i−25)、式(i−27)、式(i−29)、式(i−51)又は式(i−54)で表されるスルホニウムカチオン;前記式(ii−1)又は式(ii−11)で表されるヨードニウムカチオン等が好ましい。
【0101】
また、前記1価の置換又は非置換のベンゼンスルホン酸アニオンとしては、例えば、下記式(iii−1)〜(iii−16)で表されるベンゼンスルホン酸アニオン等を挙げることができる。
【0102】
【化65】

【0103】
【化66】

【0104】
【化67】

【0105】
【化68】

【0106】
これらのベンゼンスルホン酸アニオンのうち、例えば、フッ素置換された構造を有する前記式(iii−1)〜(iii−9)で表されるフッ素置換ベンゼンスルホン酸アニオン等が好ましい。
【0107】
また、これらのオニウムカチオンと、ベンゼンスルホン酸アニオンと、の組み合わせは、用途及び目的に応じて種々選択することができる。
尚、前記酸発生剤(B−1)は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用することもできる。
【0108】
<酸発生剤B−2>
更に、本発明の感放射線性樹脂組成物は、前記酸発生剤(B)として、下記一般式(I−A)又は(I−B)で表される構造を有する化合物からなる感放射線性酸発生剤(B−2)を含む。
【0109】
【化69】

〔一般式(I−A)及び一般式(I−B)において、Z及びZは相互に独立にフッ素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のパーフルオロアルキル基を示し、Yは単結合又は2価の基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜5の整数であり、nは0〜5の整数である。また、Rが複数存在する場合には、2つ以上のRが相互に結合して環を形成していてもよい。〕
【0110】
一般式(I−A)及び(I−B)において、Yの2価の基としては、例えば、−O−、−S−、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、メチレン基、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、プロピレン基、1−メチルプロピレン基、1−エチルプロピレン基、トリメチレン基、ジフルオロメチレン基、テトラフルオロ−1,2−エチレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等を挙げることができる。これらの2価の基のうち、カルボニル基、メチレン基、ジフルオロメチレン基、テトラフルオロ−1,2−エチレン基等が好ましい。
【0111】
また、Rの置換基としては、例えば、オキソ基(=O)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ホルミル基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のビニリデン基、炭素数1〜12の1価の環状有機基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキルカルボニル基、炭素数7〜20のアリールカルボニル基、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリーロキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0112】
前記炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができる。
前記炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のビニリデン基としては、例えば、カルベニル基、1,1−エチリデニル基、プロピリデニル基、1−メチルプロピリデニル基、1−エチルプロピリデニル基等を挙げることができる。
前記炭素数1〜12の1価の環状有機基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、カンホロイル基等を挙げることができる。
【0113】
前記炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−ナフチル基、1−アントラセニル基、ベンジル基等を挙げることができる。
前記炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等を挙げることができる。
前記炭素数6〜20のアリーロキシ基としては、例えば、フェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基等を挙げることができる。
【0114】
前記炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキルカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基等を挙げることができる。
前記炭素数7〜20のアリールカルボニル基としては、例えば、フェニルカルボニル基、ベンジルカルボニル基等を挙げることができる。
前記炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0115】
前記炭素数7〜20のアリーロキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等を挙げることができる。なお、これらの置換基はさらに任意の置換基、例えば前記した置換基を1種以上有することもできる。
一般式(I−A)及び(I−B)において、Rは各式中のノルボルネン環又はノルボルナン環を構成する炭素原子のいずれにも結合することができ、複数存在する場合には相互に同一でも異なってもよい。
また、Rが複数存在する場合には、2つ以上のRが相互に結合して環を形成していてもよい。即ち、少なくとも2つ以上のRが相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に環を形成していてもよい。
【0116】
一般式(I−A)及び(I−B)において、Yとしては単結合、メチレン基、カルボニル基、ジフルオロメチレン基等が好ましく、kとしては0が好ましく、nとしては0又は1が好ましい。
【0117】
また、構造(I−A)と、構造(I−B)とでは、193nm等の波長での吸収強度の観点から(I−A)の方が好ましい。
更に、構造(I−A)及び構造(I−B)の好ましい例としては、例えば、下記式(I−A−1)〜(I−A−13)、下記式(I−B−1)〜(I−B−13)で表される構造等を挙げることができる。
【0118】
【化70】

【0119】
【化71】

【0120】
【化72】

【0121】
【化73】

【0122】
【化74】

【0123】
【化75】

【0124】
【化76】

【0125】
【化77】

【0126】
また、酸発生剤(B−2)のうち、イオン性化合物としては、例えば、下記一般式(II−A)又は(II−B)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物(以下、「スルホン酸オニウム塩化合物(1)」という。)を挙げることができる。スルホン酸オニウム塩化合物(1)は、前記構造(I−A)又は(I−B)中のスルホニル基が酸素アニオンと結合してスルホン酸アニオンを形成した化合物である。
【0127】
【化78】

〔一般式(II−A)及び一般式(II−B)において、Z及びZは相互に独立にフッ素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のパーフルオロアルキル基を示し、Yは単結合又は2価の基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜5の整数であり、nは0〜5の整数である。また、Mは、1価のオニウムカチオンを示す。〕
【0128】
なお、一般式(II−A)及び(II−B)におけるZ、Z、Y、R、k及びnについては、前記一般式(I−A)及び一般式(I−B)におけるZ、X、Y、R、k及びnの説明をそのまま適用することができる。
また、Mについては、前記酸発生剤(B−1)におけるオニウムカチオンと同様のものを用いることができる。特に、前記式(i−1)、式(i−2)、式(i−6)、式(i−8)、式(i−13)、式(i−19)、式(i−25)、式(i−27)、式(i−29)、式(i−51)又は式(i−54)で表されるスルホニウムカチオン;前記式(ii−1)又は式(ii−11)で表されるヨードニウムカチオン等が好ましい。
【0129】
一般式(II−A)及び(II−B)で表されるスルホン酸オニウム塩化合物におけるオニウムアニオンの好ましい例としては、例えば、前記式(I−A−1)〜(I−A−13)及び(I−B−1)〜(I−B−13)で表される構造におけるスルホニル基(−SO−)が酸素アニオンと結合してスルホン酸アニオン(−SO)を形成した化合物等を挙げることができる。
【0130】
また、酸発生剤(B−2)のうち、非イオン性化合物としては、例えば、下記一般式(III−A)又は(III−B)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物(以下、「N−スルホニルオキシイミド化合物(2)」という。)を挙げることができる。
【0131】
【化79】

〔一般式(III−A)及び一般式(III−B)において、Z及びZは相互に独立にフッ素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のパーフルオロアルキル基を示し、Yは単結合又は2価の基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜5の整数であり、nは0〜5の整数である。また、R及びR10は相互に独立に水素原子又は置換若しくは非置換の1価の有機基を示すか、或いはR及びR10が相互に結合してそれらが結合している炭素原子と共に環を形成しており、Yは単結合、二重結合又は2価の有機基を示す。〕
【0132】
一般式(III−A)及び(III−B)におけるZ、Z、Y、R、k及びnについては、前記一般式(I−A)及び一般式(I−B)におけるZ、X、Y、R、k及びnの説明をそのまま適用することができる。
また、一般式(III−A)及び(III−B)におけるR、R10としての置換若しくは非置換の1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
また、一般式(III−A)及び(III−B)におけるYとしての2価の有機基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−CHCF−、−CF−、−C(CF−、−CHC(CF−等が挙げられる。
【0133】
また、一般式(III−A)及び(III−B)で表されるN−スルホニルオキシイミド化合物(2)としては、前記式(I−A−1)〜(I−A−13)及び(I−B−1)〜(I−B−13)で表される構造を備えるものが好ましい。
また、各式中のスルホニルオキシ基(SO−O−)に結合した好ましいイミド基としては、例えば、下記式(III−1)〜(III−9)の基等を挙げることができる。これらのイミド基のうち、例えば、下記式(III−1)、式(III−4)、式(III−8)又は式(III−9)で表される基等が好ましい。
【0134】
【化80】

【0135】
【化81】

【0136】
【化82】

【0137】
尚、前記酸発生剤(B−2)は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用することもできる。
【0138】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物は、前記酸発生剤(B)として、前記酸発生剤(B−1)及び(B−2)以外の他の酸発生剤を含んでいてもよい。この他の酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物及びスルホン酸化合物等を挙げることができる。
他の酸発生剤において、具体的なオニウム塩としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む。)、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等を挙げることができる。また、具体的なハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物及びハロアルキル基含有複素環式化合物等を挙げることができる。また、具体的なジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物及びジアゾナフトキノン化合物等を挙げることができる。また、具体的なスルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンや、これらの化合物のα−ジアゾ化合物等を挙げることができる。また、具体的なスルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、アルキルスルホン酸イミド、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等を挙げることができる。
これらの他の酸発生剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用することもできる。
【0139】
上記酸発生剤(B−1)の含有量は、上記樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、更に好ましくは0.5〜10質量部である。
この含有量の合計を0.1質量部以上とすると、感度及び現像性の低下を防止することができるので好ましく、一方、20質量部以下とすると、放射線に対する透明性の低下を防止して、矩形のレジストパターンが得られ易くなるので好ましい。
上記酸発生剤(B−2)の含有量は、上記樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、更に好ましくは0.5〜10質量部である。
この含有量の合計を0.1質量部以上とすると、感度及び現像性の低下を防止することができるので好ましく、一方、20質量部以下とすると、放射線に対する透明性の低下を防止して、矩形のレジストパターンが得られ易くなるので好ましい。
【0140】
<3>その他の成分
<酸拡散抑制剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物には、酸拡散抑制剤を配合することができる。酸拡散抑制剤は、露光により酸発生剤等から生じる酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域での好ましくない化学反応を抑制する作用を有する添加剤である。また、酸拡散抑制剤を配合することにより、感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。更に、酸拡散抑制剤を配合することにより、レジストの解像度を向上させると共に、露光から現像処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができる。その結果、プロセス安定性に極めて優れた感放射線性樹脂組成物が得られるという利点がある。
【0141】
前記酸拡散抑制剤としては、レジストパターンの形成工程中の露光や加熱処理により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。前記含窒素有機化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(イ)」という。)、同一分子内に窒素原子を2個有するジアミノ化合物(以下、「含窒素化合物(ロ)」という。)、アミド基含有化合物、含窒素複素環式化合物等が挙げられる。そして、これらの含窒素有機化合物の中では、前記含窒素化合物(イ)、含窒素化合物(ロ)及び含窒素複素環式化合物等が好ましい。これらの酸拡散抑制剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0142】
【化83】

〔一般式(4)において、R11、R12及びR13は相互に独立に水素原子、置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基又は置換若しくは非置換のアラルキル基を示す。〕
【0143】
前記一般式(4)において、置換若しくは非置換の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基としては、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0144】
また、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、1−ナフチル基等が挙げられる。
更に、置換若しくは非置換のアラルキル基としては、炭素数7〜19、好ましくは7〜13のアラルキル基、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0145】
前記含窒素化合物(イ)としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、1−ナフチルアミン等の芳香族アミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。
【0146】
前記含窒素化合物(ロ)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン等が挙げられる。
【0147】
前記アミド基含有化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0148】
前記含窒素複素環式化合物としては、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、N−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8−オキシキノリン、アクリジン等のピリジン類の他、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、1−ピペリジンエタノール、2−ピペリジンエタノール、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0149】
また、前記含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する含窒素化合物を用いることもできる。酸解離性基を有する含窒素化合物としては、例えば、N―(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン、N―(t−ブトキシカルボニル)イミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)ベンズイミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)2フェニルベンズイミダゾール、N―(t−ブトキシカルボニル)ジオクチルアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N―(t−ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0150】
前記酸拡散抑制剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常は15質量部以下であり、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.005〜5質量部である。酸拡散抑制剤の配合量を15質量部以下とすると、レジストとしての感度や露光部の現像性を向上させることができるため好ましい。また、酸拡散抑制剤の配合量を0.001質量部以上とすると、プロセス条件によって、レジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下することを抑制できるため好ましい。
【0151】
<溶解制御剤>
また、本発明の感放射線性樹脂組成物には、溶解制御剤を配合することができる。溶解制御剤は、アルカリ現像の際に樹脂の溶解性を調節するという作用を有する添加剤であり、溶解制御剤を配合することにより、レジストとしたときの溶解コントラスト及び溶解速度がより適切に制御されるという好ましい効果を得ることができる。この溶解制御剤としては、例えば、デオキシコール酸t−ブチルが挙げられる。
【0152】
前記溶解制御剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、通常は20質量部以下であり、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0〜5質量部である。配合量が20質量部を超えると、解像度が低下する傾向がある。一方、5質量以下の溶解制御剤を配合すると、ラインエッジラフネス(LER、レジストパターンのゆらぎ・がたつき)の改善という効果を得られるため好ましい。
【0153】
<溶剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物には、溶剤を配合することができる。この溶剤としては、例えば、エーテル類、エステル類、エーテルエステル類、ケトン類、ケトンエステル類、アミド類、アミドエステル類、ラクタム類、ラクトン類、(ハロゲン化)炭化水素類等を挙げることができる。具体的には、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、酢酸エステル類、ヒドロキシ酢酸エステル類、乳酸エステル類、アルコキシ酢酸エステル類、(非)環式ケトン類、アセト酢酸エステル類、ピルビン酸エステル類、プロピオン酸エステル類、N,N−ジアルキルホルムアミド類、N,N−ジアルキルアセトアミド類、N−アルキルピロリドン類、γ−ラクトン類、(ハロゲン化)脂肪族炭化水素類、(ハロゲン化)芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0154】
より具体的には、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、イソプロペニルアセテート、イソプロペニルプロピオネート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
これらのなかでも、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヘプタノン、乳酸エステル類、2−ヒドロキシプロピオン酸エステル類、3−アルコキシプロピオン酸エステル類等を用いると、塗布時の膜面内均一性が良好となるため好ましい。これらの溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0155】
また、前記溶剤には、必要に応じて、前記溶剤以外の他の溶剤(以下、「他の溶剤」という。)を含むものとすることができる。前記他の溶剤としては、例えば、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等の高沸点溶剤等が挙げられる。前記他の溶剤も1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0156】
前記溶剤の使用量は、通常、前記均一溶液中の全固形分濃度が5〜50質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは10〜25質量%となる量である。かかる範囲とすることにより、塗布時の膜面内均一性が良好となるため好ましい。また、前記溶剤が前記他の溶剤を含有する場合、前記他の溶剤の使用量は、全溶剤に対して、通常50質量%以下であり、30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下とすることが更に好ましい。
【0157】
<界面活性剤>
本発明の感放射線性樹脂組成物には、界面活性剤を配合することができる。この界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又は両性の界面活性剤のいずれも用いることができるが、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類等の他、以下いずれも商品名で、「KP」(信越化学工業社製)、「ポリフロー」(共栄社油脂化学工業社製)、「エフトップ」(トーケムプロダクツ社製)、「メガファック」(大日本インキ化学工業社製)、「フロラード」(住友スリーエム社製)、「アサヒガード」及び「サーフロン」(旭硝子社製)等の各シリーズ等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0158】
本発明の感放射線性樹脂組成物に添加することができる前記界面活性剤は、感放射線性樹脂組成物の塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す。前記界面活性剤を配合する場合、その配合量は、感放射線性樹脂組成物中の全樹脂成分100質量部に対して、界面活性剤の有効成分として、通常2質量部以下、好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0159】
更に、上記以外の添加剤についても、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて適宜配合することができる。上記以外の添加剤としては、例えば、ハレーション防止剤、接着助剤、保存安定化剤、消泡剤等を配合することができる。
【0160】
<4>感放射線性樹脂組成物の調製
本発明の感放射線性樹脂組成物は、通常は、使用時に各成分を溶剤に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば孔径0.2μm程度のフィルター等で濾過することにより調製される。
【0161】
<5>レジストパターンの形成
本発明の感放射線性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際には、前記の方法等により調製された感放射線性樹脂組成物溶液を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の手段によって、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウエハー等の基板上に塗布することによりレジスト被膜を形成する。そして、場合により予め加熱処理(以下、この加熱処理を「PB」という。)を行い、次いで、所定のマスクパターンを介して前記レジスト被膜に露光する。露光の際に使用される活性光線又は放射線としては使用される酸発生剤の種類等に応じて、例えば、220nm以下の波長のものを適宜選定して使用でき、特にArFエキシマレーザー(波長193nm)が好ましく挙げられる。また、放射線量等の露光条件は、本発明の感放射線性樹脂組成物の配合組成、添加剤の種類等に応じて適宜選定される。
【0162】
また、本発明の感放射線性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際、露光後に加熱処理(以下、この加熱処理を「PEB」という。)を行うと、レジストの見掛けの感度を向上させることができるので好ましい。前記PEBの加熱条件は、本発明の感放射線性樹脂組成物の配合組成、添加剤の種類等により変化するが、通常30〜200℃、好ましくは50〜150℃である。
【0163】
その後、露光されたレジスト被膜をアルカリ現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。前記アルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の1種以上を溶解したアルカリ性水溶液が使用される。特に好ましいアルカリ現像液は、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類の水溶液である。
また、前記アルカリ性水溶液の濃度は、通常10質量%以下、好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは2〜5質量%である。前記アルカリ性水溶液の濃度が10質量%以下とすると、非露光部が現像液に溶解することを抑制することができるので好ましい。
【0164】
また、前記アルカリ性水溶液からなる現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。これにより、レジストに対する現像液の濡れ性を高めることができるので好ましい。なお、前記アルカリ性水溶液からなる現像液で現像した後は、一般に、水で洗浄して乾燥する。
【実施例】
【0165】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。
【0166】
合成例における各測定・評価は、下記の要領で行った。
(1)Mw及びMn
東ソー株式会社製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度Mw/Mnは測定結果より算出した。
(2)13C-NMR分析
各重合体の13C−NMR分析は、日本電子(株)製「JNM−EX270」を用い、測定溶媒としてCDClを使用して実施した。
【0167】
以下、合成例1及び合成例2について説明する。尚、下記合成例において、各化合物の記載〔例えば、下記合成例1の「化合物(M−1)」42.40g(40モル%)〕におけるモル%とは、各合成例における単量体溶液中の全単量体を100モル%とした場合のモル%を示す。また、各化合物の詳細を下記に示す。
【0168】
【化84】

【0169】
【化85】

【0170】
【化86】

【0171】
<合成例1>
上記化合物(M−1)42.40g(40モル%)、化合物(M−2−1)45.24g(45モル%)、化合物(M−3−1)12.37g(15モル%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)8.33gを投入した単量体溶液を準備した。
一方、100gの2−ブタノンを投入した1000mlの三口フラスコを用意し、30分窒素パージした。窒素パージの後、三口フラスコ内の内容物を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(73g、収率73%)。この重合体はMwが7200、Mw/Mnが1.8、13C-NMR分析の結果、化合物(M−1)、化合物(M−2−1)、化合物(M−3−1)に由来する各繰り返し単位の含有率が37.6:49.0:13.4(モル%)の共重合体であった。この重合体を樹脂(A−1)とする。
【0172】
また、前記各化合物を用いることにより、合成例1と同様にして、下記の樹脂(A−2)〜(A−8)を、それぞれ調製した。
樹脂(A−2);
(M−1)/(M−2−1)/(M−3−1)=53.3/14.2/32.5(モル%)、分子量:7200、Mw/Mn:1.7
樹脂(A−3);
(M−1)/(M−2−1)/(M−3−2)=54.7/35.5/9.8(モル%)、分子量:8100、Mw/Mn:1.7
樹脂(A−4);
(M−1)/(M−2−1)/(M−3−3)=59.7/25.2/15.1(モル%)、分子量:7700、Mw/Mn:1.8
樹脂(A−5);
(M−1)/(M−2−2)/(M−3−1)=51.2/17.5/30.7(モル%)、分子量:7500、Mw/Mn:1.7
樹脂(A−6);
(M−1)/(M−2−3)/(M−3−1)=42.5/22.3/35.2(モル%)、分子量:7100、Mw/Mn:1.6
樹脂(A−7);
(M−1)/(M−2−4)/(M−3−1)=53.3/14.2/32.5(モル%)、分子量:7800、Mw/Mn:1.7
樹脂(A−8);
(M−1)/(M−3−1)=51.2/48.8(モル%)、分子量:8000、Mw/Mn:1.7
【0173】
<合成例2>
前記化合物(M−1)53.92g(50モル%)、化合物(M−2−1)35.38g(40モル%)、化合物(M−3−2)10.69g(10モル%)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)3.37gを2−ブタノン251gに溶解した溶液Aを準備した。
次いで、下記式(5)で表される連鎖移動剤を2.81g、2−ブタノンを15g投入した1000mlの三口フラスコを用意し、減圧置換法にて窒素パージした。窒素パージの後、三口フラスコ内の内容物を攪拌しながら80℃に加熱し、15分後、溶液Aを、送液ポンプを用いて3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に4時間攪拌した。重合終了後、重合溶液は放冷することにより30℃以下に冷却した。その後、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)11.17gを重合溶液に加え、80℃に加熱し3時間攪拌した。反応終了後、溶液は放冷し30℃以下に冷却し、4000gのイソプロピルアルコールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を2度2000gのイソプロピルアルコールにてスラリー状で洗浄した後、ろ別し、60℃にて17時間乾燥し、白色粉末の重合体を得た(85g、収率85%)。この重合体はMwが7600、Mw/Mnが1.32であり、13C-NMR分析の結果、化合物(M−1)、化合物(M−2−1)、化合物(M−3−2)で表される繰り返し単位、各繰り返し単位の含有率が53.1:38.4:8.5(モル%)の共重合体であった。この重合体を樹脂(A−9)とする。
尚、上記連鎖移動剤としては、下記の化合物(5)を用いた。
【0174】
【化87】

【0175】
<<感放射線性樹脂組成物の評価>>
表1に示す成分からなる各組成物について各種評価を行い、その評価結果を表2に示す。尚、表1に示す樹脂以外の成分は以下の通りである。
【0176】
<酸発生剤(B−1)>
B−1−1;
1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウム−4−フルオロベンゼンスルホネート
【化88】

B−1−2;
トリフェニルスルホニウム−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート
【化89】

B−1−3;
4−シクロヘキシルフェニル−ジフェニルスルホニウム−2,4−ジフルオロベンゼンスルホネート
【化90】

B−1−4;
1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウム−1−フルオロベンゼンスルホネート
【化91】

B−1−5;
1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウム−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホネート
【化92】

【0177】
<酸発生剤(B−2)>
B−2−1;
1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウム−1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ノルボルナン−2−イル)エタンスルホネート
【化93】

B−2−2;
トリフェニルスルホニウム−1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ノルボルナン−2−イル)エタンスルホネート
【化94】

B−2−3;
1−(4−n−ブトキシナフチル)テトラヒドロチオフェニウム−1,1−ジフルオロ−2−(ノルボルナン−2−イル)エタンスルホネート
【化95】

【0178】
<酸拡散制御剤(C)>
D−1:N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール
D−2:3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール
D−3:N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
D−4:2,6−ジイソプロピルアニリン
<溶剤(D)>
E−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
E−2:2−ヘプタノン
E−3:シクロヘキサノン
E−4:γ−ブチロラクトン
【0179】
また、評価方法は以下の通りである。
<評価方法>
基板として、表面に膜厚77nmの反射防止膜(日産化学社製、「ARC29A」)を形成したシリコンウエハーを用いた。各組成物溶液を基板上にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、表2に示す条件でPBを行って膜厚0.20μmのレジスト被膜を形成した。得られたレジスト被膜を用いて下記の評価を行った。
(1)感度:
上記により作製したレジスト被膜にNikon社製フルフィールド縮小投影露光装置S306C(開口数0.75)により、マスクパターンを介して露光した。その後、表2に示す条件でPEBを行った後、2.38質量%のTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液により、25℃で60秒現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、寸法100nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅100nmの1対1ラインアンドスペースに形成される露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。
(2)解像度:
前記最適露光量で露光したときに解像されるライン・アンド・スペースパターン(1L1Sパターン)の最小寸法(nm)を解像度とした。
(3)ラインエッジラフネス(LER):
上記により作製したレジスト被膜を用いて、線幅100nmのライン・アンド・スペース(1L1S)のマスクパターン寸法を再現する露光量により(最適露光量により)形成したレジストパターンについて、走査型電子顕微鏡(日立製作所製測長SEM:S9220)を用い、パターンエッジの片側表面を複数位置で観察することにより、パターンのライン方向と垂直な方向のばらつきの分散(3σ)を算出して評価した。
【0180】
【表1】

【0181】
【表2】

【0182】
【表3】

【0183】
表3から明らかなように、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いると、高解像度であり、LERが向上することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくともラクトン骨格を有する繰り返し単位を含むアルカリ不溶性又はアルカリ難溶性の樹脂と、(B−1)置換又は非置換のベンゼンスルホン酸を発生する感放射線性酸発生剤と、(B−2)下記一般式(I−A)又は(I−B)で表される構造を有する化合物からなる感放射線性酸発生剤と、を含むことを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
【化1】

〔一般式(I−A)及び一般式(I−B)において、Z及びZは相互に独立にフッ素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のパーフルオロアルキル基を示し、Yは単結合又は2価の基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜5の整数であり、nは0〜5の整数である。また、Rが複数存在する場合には、2つ以上のRが相互に結合して環を形成していてもよい。〕
【請求項2】
前記(A)樹脂におけるラクトン骨格を有する繰り返し単位が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化2】

〔一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0又は1である。〕
【請求項3】
前記(B−1)感放射線性酸発生剤が、フッ素置換ベンゼンスルホン酸を発生する感放射線性酸発生剤である請求項1又は2に記載の感放射線性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−155925(P2007−155925A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348402(P2005−348402)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】