説明

感放射線性樹脂組成物

【課題】感度、解像度に優れ、パターンのラインエッジラフネスが小さく、更にはパターン形状を良好に維持することが可能なレジストである感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)アルキル置換ノルボルナンラクトン環を含有する酸解離性基含有共重合体と、(B)スルホン酸エステル型の酸増殖剤と、(C)酸発生剤とを含有する感放射線性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物に関し、更に詳しくは、KrFエキシマレーザーあるいはArFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線の如き各種の放射線を使用する微細加工に有用な化学増幅型レジストとして好適に使用できる感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、最近ではArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)等を用いた100nm程度以下のレベルでの微細加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。このようなエキシマレーザーによる照射に適した感放射線性樹脂組成物として、酸解離性官能基を有する成分と放射線の照射により酸を発生する成分である酸発生剤とによる化学増幅効果を利用した化学増幅型感放射線性組成物が数多く提案されている。例えば、ノルボルナン環誘導体を有する単量体ユニットを含む特定の構造を有する重合体を樹脂成分とするフォトレジスト用高分子化合物が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。また、感度及び解像度を向上させるために、酸解離性官能基を有する成分及び酸発生剤に、更に光活性化合物を加えた感放射線性樹脂組成物が開示されている(特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、半導体分野において、より高い集積度が求められるようになると、レジストである感放射線性樹脂組成物はより優れた感度、解像度が必要とされるようになってきた。また、同時に、より微細化が進むにつれて、パターンのラインエッジラフネス(LER)を低減する要求、更にはパターン形状を良好に維持する要求もますます強まってきた。半導体産業の微細化の進歩につれ、このような感度、解像度に優れ、パターンのラインエッジラフネスが小さく、更にはパターン形状を良好に維持できるような条件を満たす感放射線性樹脂組成物の開発が急務になっている。
【特許文献1】特開2002−201232号公報
【特許文献2】特開2002−145955号公報
【特許文献3】特開2002−363123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、感度、解像度に優れ、パターンのラインエッジラフネスが小さく、更にはパターン形状を良好に維持することが可能な化学増幅型レジストである感放射線性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の感放射線性樹脂組成物は、以下に示す通りである。
【0006】
[1] (A)下記一般式(1−1)で示される繰り返し単位および下記一般式(1−2)で示される繰り返し単位を有する酸解離性基含有重合体と、(B)下記一般式(1−3)で示される化合物と、(C)放射線の照射により酸を発生する酸発生剤とを含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】

【化2】

〔一般式(1−1)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基、Zは酸の作用により脱離可能な保護基を示す。一般式(1−2)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、R2は相互に独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシ基、または、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基を表す。mは0〜3の整数である。一般式(1−3)において、R3、R4は相互に独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐のアルキル基、パーフルオロアルキル基を示す。nは1〜8の整数を、Aは酸解離性基を示し、Gはフッ素原子又は一価の有機基を表す。〕
【0007】
[2] 前記(A)酸解離性基含有重合体が、下記一般式(1−4)で示される繰り返し単位を更に有する[1]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化3】

〔一般式(1−4)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基、Xは、炭素数4〜20の置換若しくは非置換の多環型脂環式炭化水素基を表す。〕
【0008】
[3] 前記一般式(1−3)において、R3およびR4がフッ素原子である[1]又は[2]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、活性放射線、特に、ArFエキシマレーザー(波長193nm)に代表される遠紫外線に感応する化学増幅型レジストとして、放射線に対する感度、解像度等の特性バランスに優れているだけではなく、更に、現像後のレジストパターン形状が良好であり、パターンのラインエッジラフネスを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0011】
(感放射線性樹脂組成物)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、(A)下記一般式(1−1)で示される酸解離性基を有する繰り返し単位および下記一般式(1−2)で示される繰り返し単位を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性となるアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性の酸解離性基含有重合体(以下、「(A)重合体」ということがある。)と、(B)下記一般式(1−3)で示される添加剤(以下、「(B)化合物」ということがある。)と、(C)放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(以下、「(C)酸発生剤」ということがある。)とを含有するものである。
【0012】
【化4】

【化5】

【0013】
一般式(1−1)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基、Zは酸の作用により脱離可能な保護基を示す。一般式(1−2)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、R2は相互に独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシ基、または、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基を表す。mは0〜3の整数である。一般式(1−3)において、R3、R4は相互に独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐のアルキル基、パーフルオロアルキル基を示す。nは1〜8の整数を、Aは酸解離性基を示し、Gはフッ素原子又は一価の有機基を表す。
【0014】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、上述のように、(B)化合物と(C)酸発生剤とを含有するため、化学増幅型レジストとして使用し、放射線の照射により(C)酸発生剤から酸を発生させるときに、(C)酸発生剤から発生した酸の作用により(B)化合物が分解され、より多くの酸を発生することより、レジストの放射線照射部分全体に渡って大量の酸を発生させることが可能となる。このように、レジストの放射線照射部分全体に渡って大量に酸を発生させることにより、(A)重合体が有する酸解離性基を、レジストの放射線照射部分全体に渡ってより均一に解離させることが可能となるため、特に、現像後のパターンのラインエッジラフネスを低減することができるようになる。
【0015】
((A)重合体)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物に含有される(A)重合体は、酸解離性基を有する上記一般式(1−1)で示される繰り返し単位(以下、「(1−1)繰り返し単位」ということがある。)、およびラクトン骨格を含有する上記一般式(1−2)で示される繰り返し単位(以下、「(1−2)繰り返し単位」ということがある。)を有する共重合体である。(1−1)繰り返し単位はアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性を示す繰り返し単位であるが、酸解離性基を有するため、酸の作用により酸解離性基が解離した後はアルカリ可溶性を示すものとなる。上記一般式(1−1)において、酸解離性基は、保護基Zで保護された状態のカルボキシル基である。
【0016】
上記一般式(1−1)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基、Zは酸の作用により脱離可能な保護基を示す。一般式(1−1)で示される酸解離性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(2)又は(3)で示される繰り返し単位であることが好ましい。
【0017】
【化6】

〔式(2)および式(3)において、R5およびR9は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基をそれぞれ表し、R6およびR7は相互に独立に炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を、R8は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基をそれぞれ表し、R10は炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を、R11およびR12は相互に独立に水素原子、または炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基をそれぞれ表し、nは3〜7の整数を表す。〕
【0018】
式(2)におけるR6およびR7としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。R8としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロ[4.4.0.12,6.17,10]ドデカン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン、またはこれらの誘導体に由来する炭化水素基が挙げられる。R5としては例えば、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0019】
式(3)におけるR10としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。R11およびR12しては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。R9としては例えば、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0020】
式(3)において、R10がメチル基またはエチル基、R11およびR12が水素原子、およびnが4または5であることが特に好ましい。特に好ましい例を下記式(3−1)〜(3−4)に挙げる。
【0021】
【化7】

【0022】
式(3−1)〜(3−4)において、Rは水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基をそれぞれ示す。
【0023】
(A)重合体は、(1−1)繰り返し単位として、上記式(2)及び(3)で示される繰り返し単位の中の1種を有してもよいし、複数種を有してもよい。
【0024】
上記一般式(1−2)で表されるラクトン骨格含有繰り返し単位におけるR2が、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である場合、その具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルコキシ基である場合、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。R2が、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基である場合、その具体例としては、上記アルキル基の水素の一部または全部をフッ素原子で置換した基が挙げられる。上記ラクトン骨格は、これら置換基を1種以上あるいは1個以上有することが好ましい。
【0025】
(1−1)繰り返し単位は、上記式(2)及び(3)で示される繰り返し単位の他、以下に示す単量体に由来する繰り返し単位であることが好ましい。その単量体としては、(メタ)アクリル酸2−メチルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−n−プロビルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−イソプロピルアダマンタン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸1−(アダマンタン−1−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸8−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルエステル、(メタ)アクリル酸8−エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルエステル、(メタ)アクリル酸4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−イルエステル、(メタ)アクリル酸1−(テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−イル)−1−メチルエチルエステル、(メタ)アクリル酸1,1−ジシクロヘキシルエチルエステル等の酸解離性基を有する単量体が挙げられる。
【0026】
(A)重合体において、(1−1)繰り返し単位の含有率(モル比)は、(1−1)繰り返し単位と、(1−2)繰り返し単位との合計(以下、「2種の繰り返し単位の合計」ということがある。)を100モル%としたときに、10〜90モル%であることが好ましく、30〜80モル%であることが更に好ましい。上記2種の繰り返し単位をこのような範囲にすることにより、適切な溶解コントラストが得られ、良好な感度、解像度およびLERが小さく優れたパターンプロファイルを得ることが可能となる。そして、(1−1)繰り返し単位の含有率が小さすぎると、溶解コントラストの低下によりパターンプロファイルが形成されない可能性があり、(1−1)繰り返し単位の含有率が大きすぎると、適切な溶解コントラストが得られず、解像度が低下する可能性がある。更に、(1−2)繰り返し単位の含有率が小さすぎると、溶解コントラストの低下により良好なパターンプロファイルが形成されない可能性があり、(1−2)繰り返し単位の含有率が大きすぎると、(A)重合体の溶剤に対する溶解性が低下する可能性がある。
【0027】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物に含有される(A)重合体は、下記一般式(1−4)で示される繰り返し単位を更に有することが好ましい。
【化8】

〔一般式(1−4)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基、Xは、炭素数4〜20の置換若しくは非置換の多環型脂環式炭化水素基をあらわす。〕
【0028】
上記一般式(1−4)において、Xは、炭素数4〜20の置換若しくは非置換の多環型脂環式炭化水素基である。非置換の多環型脂環式炭化水素基としては、炭素原子および水素原子のみからなる多環型脂環式炭化水素基が好ましい。また、置換の多環型脂環式炭化水素基としては、上記多環型脂環式炭化水素基の環構造を形成する炭素原子に結合する水素原子の一部がヒドロキシル基に置換された基(以下、「OH置換多環型脂環式炭化水素基」ということがある。)が好ましい。また、Xで示される置換基は酸の作用によっては脱離しないものである。
【0029】
上記多環型脂環式炭化水素基としては、例えば、下記式(4a)〜(4e)に示すように、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(1a)、ビシクロ[2.2.2]オクタン(1b)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(1c)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン(4d)、アダマンタン(4e)等のシクロアルカン類に由来する脂環族環からなる炭化水素基が挙げられる。
【0030】
【化9】

【0031】
これらのシクロアルカン由来の脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基等が挙げられ、これらの1種以上あるいは1個以上を置換基として有する脂環族環も好ましい。これらは例えば、以下の式(4f)〜(4l)に示す具体例で表されるが、これらだけに限定されるものではない。またこれらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0032】
【化10】

【0033】
また、上記一般式(1−4)において、Xが、炭素数4〜20のOH置換多環型脂環式炭化水素基である場合には、上記(1−4)繰り返し単位としては、下記一般式(4)で表されるヒドロキシアダマンタン基含有繰り返し単位を挙げることができる。
【0034】
【化11】

【0035】
一般式(4)において、Rは水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基、pは1〜3の整数である。また、ヒドロキシル基が結合するアダマンタン骨格の位置は3位であることが好ましい。
【0036】
(A)重合体において、(1−4)繰り返し単位の含有率(モル比)は、(1−1)繰り返し単位、(1−2)繰り返し単位および(1−4)繰り返し単位の合計を100モル%としたときに、0〜50モル%であることが好ましく、0〜30モル%であることが更に好ましい。(1−4)繰り返し単位の含有率が小さすぎると、適切な溶解コントラストが得られず、解像度が低下することがあり、(1−4)繰り返し単位の含有率が大きすぎると、現像液に対する溶解性が低下し、感度、パターンプロファイルが低下することがある。
【0037】
本実施形態において、(A)重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。また、この(A)重合体はアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性であるが、酸の作用により(1−1)繰り返し単位が有する酸解離性基が解離し、アルカリ易溶性となる。
【0038】
((B)化合物)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物に含有される(B)化合物は、上記一般式(1−3)で示される酸増殖剤である。酸増殖剤とは、一次的に発生した(存在する)酸の作用により分解されて、その一時的に発生した酸より更に多くの酸を二次的に発生し、全体としてより多くの(少なくとも一時的に発生した酸より多くの)酸を発生させることが可能な化合物である。このように本実施の形態の感放射線性樹脂組成物は、(B)化合物が分解され、より多くの酸を発生することより、レジストの放射線照射部分全体に渡って大量の酸を発生させることが可能となる。このように、レジストの放射線照射部分全体に渡って大量に酸を発生させることにより、(A)重合体が有する酸解離性基を、レジストの放射線照射部分全体に渡ってより均一に解離させることが可能となるため、特に、現像後のパターンのラインエッジラフネスを低減することができるようになる。
【0039】
以下に、酸増殖剤についてさらに詳細に説明する。本発明の微細パターン形成方法に用いる感光性組成物(感光性樹脂)中の、酸触媒の存在下において分解し、新たな酸分子を生成する化合物(酸増殖剤)としては、分子構造中に芳香環を含まない化合物を用いることが特徴である。言い換えれば、本発明の微細パターン形成方法に用いる酸増殖剤としては、酸の残基と、水素と、脂肪族、脂肪環、縮合脂肪環、ヘテロ環及びその誘導体のうち1つ以上のみとから構成された化合物を用いることが特徴である。このような化合物(酸増殖剤)としては、各種の化合物が上げられるが下記の一般式(5)で表されるスルホン酸エステル化合物が好適である。
【0040】
【化12】

【0041】
上記の一般式(5)において、R3、R4は相互に独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐のアルキル基、パーフルオロアルキル基を示す。nは1〜8の整数を示し、Gはフッ素原子又は一価の有機基を表す。上記の一般式(5)のA1ないしA3は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立な水素原子または芳香環構造を含まない一価の有機基を示す。かかる一価の有機基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル等の置換あるいは非置換の鎖状アルキル、シクロプロピル、シクロブチル、ピペリジル、テトラヒドロフラニル、ピラニル等の置換あるいは非置換の脂肪族環もしくはヘテロ環をあげることができる。このとき、A1ないしA3から選ばれる二つが各々結合している炭素原子を含む環を形成していてもよい。
【0042】
また、上記酸増殖剤は酸触媒の存在下で分解して酸解離定数(PKa)が3以下である化合物(JSO3H)を生成する(Jは(1−3)式中の(CR34nG基を表す)。酸の強度は酸解離定数(Pka)として3以下、より好ましくは酸解離定数が2以下である。これより弱い酸では、酸増殖剤の分解反応を促進する触媒として有効に働くことができないためである。
【0043】
一般式(5)で示した化合物は、スルホン酸エステル化合物であって、酸触媒の作用により水酸基が容易に脱離して炭素陽イオンを形成し、水素移動によってスルホン酸化合物(JSO3H)を発生させる。酸触媒の存在によりこの脱離反応を大幅に活性化できるため、酸触媒の不存在下では安定であるが、酸触媒の存在下では容易に熱化学反応によって酸を発生させることが可能となる。このとき、酸触媒反応によって分解する反応で新たな酸が発生するため、一回の反応で1つ以上の酸が増えており、酸触媒反応によって発生した酸自体が次の反応の触媒となるため、反応の進行に従って酸触媒反応が加速的に進行する。
【0044】
また、発生するスルホン酸化合物(JSO3H)は、ArFエキシマーレーザー光のような短波長の露光波長における透明性を持たせるため、その構造中に芳香環を含んではならない。そのようなスルホン酸化合物(JSO3H)として好適な構造の例を以下の化学式(5−1)〜(5−9)に示すがこれに限定されるものではない。なお、式中のnは、1〜8の整数を表す。
【0045】
【化13】

【0046】
これらの構造中、その一部または全部の水素原子を、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基や、メチル、エチル、正プロピル、イソプロピル、正ブチル、イソブチル、3級ブチル、ペンチル、イソペンチル等の置換あるいは非置換の鎖状アルキル基、シクロヘキシル、メンチル、ノルボルニル、イソボルニル、アダマンチル等の環状のアルキル基で置き換えても構わない。特に一般式(5−3)のアルキル基の水素の一部または全部をフッ素原子のようなハロゲン原子に置換することにより、生成されるスルホン酸化合物の酸解離定数が大きくなるなどの効果があり特に好適である。
【0047】
また、上記の一般式(5)で示した化合物分子の構造中に1つ以上の脂肪族環とくに縮合脂肪族環をもつことにより多くの利点が得られる。かかる利点としては例えば酸増殖剤の熱安定性の向上、酸増殖剤の融点の上昇によるこれを含むレジスト膜の耐熱性の向上、酸増殖剤の蒸気圧の低下による加熱処理時のレジスト表面からの蒸発の抑制などがあげられる。こうした脂肪族環としては、各種のものを用いることが可能であるが、入手、合成の容易さ、安全性および化学的安定性の面から、シクロヘキサン、メンタン、アダマンタン、カンファン(ボルナン)、ノルボルナン、ピナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンおよびシクロペンタジエン重合体が特に好ましい。これらの脂肪環、縮合脂肪環の例を下記(5−10)〜(5−18)に示す。
【0048】
【化14】

【0049】
上記一般式中、nは1以上の整数を表す。これらの脂肪族環は、その一部または全部の水素原子を、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、メチル、エチル、正プロピル、イソプロピル、正ブチル、イソブチル、3級ブチル、ペンチル、イソペンチル等の置換あるいは非置換の鎖状アルキル基で置き換えても構わない。また、こうした有機基に含まれる一部の炭素原子を、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等と置き換えても構わない。
【0050】
こうした脂肪族環を構造中に持つことにより酸増殖剤の分子量が上がるため、その分解によって発生させられる酸の単位質量あたりの量が低下する等の問題が生じる可能性がある。一般式(5)で示されるものにおいて、A1もしくはA2と、A3とが互いに結合して脂肪族環を形成することにより、酸増殖剤の分子量を上げることなく上記したような脂肪族環の利点を得ることができるので好適である。こうした化合物の例を以下の一般式(5−19)に示すがこれに限定されるものではない。
【0051】
【化15】

【0052】
ここでRとしては例えば一般式(5−1)ないし(5−9)で示された(JSO3H)で表されるスルホン酸化合物のJで表される構造があげられる。
【0053】
本実施形態において、(B)化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。(B)化合物の使用量は、レジストとしてのラインエッジラフネスの低減という観点から、(A)重合体100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部が更に好ましい。この場合、(B)化合物の使用量が0.5質量部未満では、ラインエッジラフネスの低減が不十分になることがあり、10質量部を超えると、過剰な酸の発生により適切なパターンプロファイルが形成されない可能性がある。
【0054】
((C)酸発生剤)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物を構成する(C)酸発生剤としては、スルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、ジスルホン類やジアゾメタンスルホン類等のスルホン化合物を挙げることができる。
【0055】
(C)酸発生剤の具体的な好ましい例としては、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート等のトリフェニルスルホニウム塩化合物;
【0056】
4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0057】
4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
【0058】
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート等のジフェニルヨードニウム塩化合物;
【0059】
ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等のビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩化合物;
【0060】
1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0061】
1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0062】
1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
【0063】
N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等のビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド類化合物等を挙げることができる。
【0064】
本実施形態において、(C)酸発生剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。(C)酸発生剤の使用量は、レジストとしての感度および現像性を確保する観点から、(A)重合体100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.1〜20質量部が更に好ましい。この場合、酸発生剤の使用量が0.1質量部未満では、感度および現像性が低下する傾向があり、一方30質量部をこえると、放射線に対する透明性が低下して、矩形のレジストパターンが得られ難くなる傾向がある。
【0065】
(その他添加物)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて、酸拡散制御剤、酸解離性基を有する脂環族添加剤、酸解離性基を有しない脂環族添加剤、界面活性剤、増感剤等の各種の添加物を配合できる。
【0066】
上記酸拡散制御剤は、照射により(C)酸発生剤から生じる酸および(B)化合物から発生する酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非照射領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有する成分である。このような酸拡散制御剤を配合することにより、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上し、またレジストとしての解像度がさらに向上するとともに、照射から現像処理までの引き置き時間(PED)の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。上記酸拡散制御剤としては、レジストパターンの形成工程中の照射や加熱処理により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。
【0067】
このような含窒素有機化合物としては、「3級アミン化合物」、「アミド基含有化合物」、「4級アンモニウムヒドロキシド化合物」、「含窒素複素環化合物」等が挙げられる。
【0068】
「3級アミン化合物」としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;トリエタノールアミン、ジエタノールアニリンなどのアルカノールアミン類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼンテトラメチレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,3−ビス[1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル等が挙げられる。
【0069】
「アミド基含有化合物」としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−ピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−ピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−ピペリジン、N−t−ブトキシカルボニル−モルホリン等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物のほか、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0070】
「4級アンモニウムヒドロキシド化合物」としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0071】
「含窒素複素環化合物」としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール等のイミダゾール類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、tert−ブチル−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート等のピペリジン類、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0072】
上記含窒素複素環化合物のうち、3級アミン化合物、アミド基含有化合物、含窒素複素環化合物が好ましく、また、アミド基含有化合物の中ではN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物が好ましく、含窒素複素環化合物の中ではイミダゾール類が好ましい。
【0073】
上記酸拡散制御剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。酸拡散制御剤の配合量は、(A)重合体100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下が更に好ましく、5質量部以下が特に好ましい。この場合、酸拡散制御剤の配合量が15質量部をこえると、レジストとしての感度および放射線照射部の現像性が低下することがある。なお、酸拡散制御剤の配合量が0.001質量部未満であると、プロセス条件によってはレジストとしてのパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0074】
また、酸解離性基を有する脂環族添加剤、または酸解離性基を有しない脂環族添加剤は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等をさらに改善する作用を示す成分である。
【0075】
このような脂環族添加剤としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル、1−アダマンタンカルボン酸t−ブトキシカルボニルメチル、1−アダマンタンカルボン酸α−ブチロラクトンエステル、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジ酢酸ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(アダマンチルカルボニルオキシ)ヘキサン等のアダマンタン誘導体類;デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル、デオキシコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、デオキシコール酸3−オキソシクロヘキシル、デオキシコール酸テトラヒドロピラニル、デオキシコール酸メバロノラクトンエステル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル、リトコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、リトコール酸3−オキソシクロヘキシル、リトコール酸テトラヒドロピラニル、リトコール酸メバロノラクトンエステル等のリトコール酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジn−ブチル、アジピン酸ジt−ブチル等のアルキルカルボン酸エステル類等が挙げられる。
【0076】
これらの脂環族添加剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。脂環族添加剤の配合量は、(A)重合体100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下が更に好ましい。この場合、脂環族添加剤の配合量が50質量部をこえると、レジストとしての耐熱性が低下する傾向がある。
【0077】
また、添加物としての界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤のほか、以下商品名で、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75,同No.95(共栄社化学(株)製)、エフトップEF301,同EF303,同EF352(トーケムプロダクツ(株)製)、メガファックスF171,同F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430,同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−382,同SC−101,同SC−102,同SC−103,同SC−104,同SC−105,同SC−106(旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0078】
これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。界面活性剤の配合量は、酸解離性基含有重合体100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましい。
【0079】
「増感剤」としては、例えば、カルバゾール類、ベンゾフェノン類、ローズベンガル類、アントラセン類、フェノール類等が挙げられる。これら増感剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。増感剤は、放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤に伝達し、それにより酸の生成量を増加させる作用を示すもので、感放射線性樹脂組成物のみかけの感度を向上させる効果を有する。増感剤の配合量は、(A)重合体100質量部に対して、好ましくは50質量部以下である。
【0080】
さらに、上記以外の添加物としては、ハレーション防止剤、接着助剤、保存安定化剤、消泡剤等が挙げられる。
【0081】
((A)重合体の製造方法)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物を構成する(A)重合体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、所望の分子組成を構成する各繰り返し単位に対応する重合性不飽和単量体を、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下、適当な溶媒中で重合することにより製造することができる。ラジカル重合開始剤は、十分な重合速度を実現するために、十分高い濃度になるように添加することが好ましい。ただしラジカル重合開始剤量の連鎖移動剤量に対する比率が高すぎると、ラジカル−ラジカルカップリング反応が発生し、望ましくない非リビングラジカル重合体が生成するので、得られる重合体は分子量および分子量分布などの高分子特性においてコントロールされていない特性を有する部分が含まれてしまう。ラジカル重合開始剤量と連鎖移動剤量とのモル比率は、(1:1)〜(0.005:1)であることが好ましい。
【0082】
上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、熱重合開始剤、レドックス重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。具体的には例えばパーオキシドやアゾ化合物等の重合開始剤が挙げられる。さらに具体的なラジカル重合開始剤としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)等が挙げられる。
【0083】
上記連鎖移動剤としては、ピラゾール誘導体、アルキルチオール類等が挙げられる。
【0084】
重合操作については通常のバッチ重合、滴下重合などの方法で重合できる。例えば、上記(1−1)繰り返し単位、(1−2)繰り返し単位及びその他の繰り返し単位のそれぞれに対応する単量体について、必要な種類および量を有機溶媒に溶解させ、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下で重合することにより(A)重合体が得られる。重合溶媒は一般に単量体、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤を溶解できる有機溶剤が用いられる。有機溶剤としてケトン系溶剤、エーテル系溶剤、非プロトン系極性溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤、線状または環状脂肪族系溶剤が挙げられる。ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。エーテル系溶剤としてはアルコキシアルキルエーテル、例えば、メトキシメチルエーテル、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。非プロトン系極性溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイドなどが挙げられる。エステル系溶剤としては、酢酸アルキル、例えば酢酸エチル、酢酸メチルなどが挙げられる。芳香族系溶剤としては、アルキルアリール溶剤、例えばトルエン、キシレン、およびハロゲン化芳香族溶剤、例えばクロロベンゼンなどが挙げられる。脂肪族系溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0085】
重合温度は、一般に20〜120℃、好ましくは50〜110℃、さらに好ましくは60〜100℃である。通常の大気雰囲気でも重合できる場合もあるが、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下での重合が好ましい。(A)重合体の分子量は単量体量と連鎖移動剤量との比率を制御することで調整できる。重合時間は一般に0.5〜144時間、好ましくは1〜72時間、より好ましくは2〜24時間である。
【0086】
(A)重合体は、分子鎖末端に連鎖移動剤由来の残基を有してもよく、分子鎖末端に連鎖移動剤由来の残基を有さなくてもよく、また、分子鎖末端に連鎖移動剤由来の残基が一部残存する状態であってもよい。
【0087】
(A)重合体は、ハロゲン、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が既定値以下、例えばHPLCによる分析で0.1質量%以下であることが好ましく、それにより、レジストとしての感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等をさらに改善できるだけでなく、液中異物や感度等の経時変化が少ないレジストとして使用できる感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0088】
(A)重合体の精製法としては、例えば以下の方法が挙げられる。金属等の不純物を除去する方法としては、ゼータ電位フィルターを用いて(A)重合体溶液中の金属を吸着させる方法や蓚酸やスルホン酸等の酸性水溶液で(A)重合体溶液を洗浄することで金属をキレート状態にして除去する方法等が挙げられる。また、残留単量体やオリゴマー成分を規定値以下に除去する方法としては、水洗や適切な溶剤を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、(A)重合体溶液を貧溶媒へ滴下することで(A)重合体を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した重合体スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法がある。また、これらの方法を組み合わせることもできる。上記再沈澱法に用いられる貧溶媒としては、精製する(A)重合体の物性等に左右され一概には例示することはできないが、当業者であれば重合体の物性等に合わせて適宜選定することができる。
【0089】
(A)重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と略称する)は、通常、1,000〜300,000、好ましくは2,000〜300,000、さらに好ましくは2,000〜12,000である。(A)重合体のMwが1,000未満では、レジストとしての耐熱性が低下する傾向があり、一方300,000をこえると、レジストとしての現像性が低下する傾向がある。
【0090】
また、(A)重合体のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」と略称する)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜1.6である。
【0091】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、その使用に際して、通常、全固形分濃度が3〜50質量%、好ましくは5〜25質量%となるように、溶剤に溶解したのち、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過し感放射線性樹脂組成物溶液として調製される。上記感放射線性樹脂組成物溶液の調製に使用される溶剤としては、例えば、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等の直鎖状若しくは分岐状のケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状のケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の3−アルコキシプロピオン酸アルキル類のほか、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0092】
これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できるが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチルから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。ただし、シクロヘキサノンは溶解性の点からは、有効な溶剤であるが、その毒性からは使用はできるだけ避けることが好ましい。
【0093】
本発明の感放射線性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際には、上記のようにして調製された組成物溶液を、回転塗布等の適宜の塗布手段によって、例えばシリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウエハー等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成し、場合により予めプレベーク(以下、PBという。)を行った後、所定のレジストパターンを形成するように該レジスト被膜に露光する。その際に使用される放射線としては、ArFエキシマレーザー(波長193nm)が使用される。また、露光量等の露光条件は、組成物の配合組成等に応じて、適宜選定される。本発明においては、レジスト被膜見かけの感度を向上させるために、露光後に過熱処理(以下、PEBという。)を行うことが好ましい。その加熱条件は、組成物の配合組成等により変わるが、通常30〜200℃、好ましくは40〜150℃である。また、レジストパターンを形成する際に、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、レジスト被膜上に保護膜を設けることもできる。次いで、露光されたレジスト被膜をアルカリ現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。前記アルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属水酸化物;アンモニア水;モノ−、ジ−あるいはトリ−アルカノールアミン類;複素環式アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドキシド;コリン;1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4,3,0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を、通常、1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%の濃度となるように溶解したアルカリ性水溶液が使用される。また、前記アルカリ性水溶液からなる現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤を適量添加することもできる。なお、このようにアルカリ性水溶液からなる現像液を使用する場合には、一般に現像後、水洗する。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部は、特記しない限り質量基準である。
【0095】
実施例および比較例における各測定・評価は、下記の要領で行った。
【0096】
(Mw)
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0097】
(感度)
ウエハー表面に膜厚780オングストロームのARC29(ブルワー・サイエンス(Brewer Science)社製)膜を形成したシリコーンウエハー(ARC29)を用い、各組成物溶液を、基板上にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、表2に示す条件でPBを行って形成した膜厚0.20μmのレジスト被膜に、ニコン製ArFエキシマレーザー露光装置(開口数0.75)を用い、マスクパターンを介して露光した。その後、表2に示す条件でPEBを行ったのち、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、25℃で表2に示す条件で現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、線幅0.090μmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度とした。
【0098】
(解像度)
最適露光量で解像される最小のレジストパターンの寸法を、解像度とした。
【0099】
(パターン形状)
線幅0.090μmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)の方形状断面の下辺寸法Lbと上辺寸法Laとを走査型電子顕微鏡により測定し、0.85≦La/Lb≦1を満足し、かつパターン形状が裾を引いていない場合を、パターン形状が“良好”とし、0.85>La/Lbのとき、パターン形状が“不良”とした。
【0100】
(ラインエッジラフネス(LER))
最適露光量にて解像した90nm(1L/1S)パターンの観測において、日立製作所社製測長SEM:S9220にてパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで観測し、その測定ばらつきを3シグマで表現した場合に、その値が10nm以上の場合を不良、10nm未満の場合を良好と表現した。
【0101】
【化16】

【0102】
(合成例1)
化合物(S1−1)48.59g(50mol%)、化合物(S1−2)20.67g(20mol%)と化合物(S1−3)30.74g(30mol%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)4.03gを投入したモノマー溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mLの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した前記モノマー溶液を滴下漏斗を用いて、10mL/5minの速度で滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末を炉別する。炉別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状にして洗浄した後、炉別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の樹脂を得た(74g、収率74%)。この樹脂は、分子量が9800であり、化合物(S1−1)、化合物(S1−2)および化合物(S1−3)で表される繰り返し単位のそれぞれの含有比が、(S1−1):(S1−2):(S1−3)=33.2:15.8:51.0(mol比)の共重合体であった。この樹脂を樹脂(A−1)とする。
【0103】
【化17】

【0104】
(合成例2)
化合物(S2−1)10.70g(13mol%)、化合物(S2−2)39.14g(37mol%)と化合物(S2−3)50.16g(50mol%)を2−ブタノン200gに溶解し、更に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.52gを投入したモノマー溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mLの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した前記モノマー溶液を滴下漏斗を用いて、10mL/5minの速度で滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末を炉別する。炉別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状にして洗浄した後、炉別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の樹脂を得た(78g、収率78%)。この樹脂は、分子量が8700であり、化合物(S2−1)、化合物(S2−2)および化合物(S2−3)で表される繰り返し単位のそれぞれの含有比が、(S2−1):(S2−2):(S2−3)=14.7:34.2:51.1(mol比)の共重合体であった。この樹脂を樹脂(A−2)とする。
【0105】
【化18】

【0106】
(合成例3)
化合物(S3−1)35.38g(40mol%)、化合物(S3−2)10.69g(10mol%)と化合物(S3−3)53.93g(50mol%)を2−ブタノン200gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.59gを投入したモノマー溶液を準備し、100gの2−ブタノンを投入した1000mLの三口フラスコを30分窒素パージする。窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した前記モノマー溶液を滴下漏斗を用いて、10mL/5minの速度で滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末を炉別する。炉別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状にして洗浄した後、炉別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の樹脂を得た(81g、収率81%)。この樹脂は、分子量が6600であり、化合物(S3−1)、化合物(S3−2)および化合物(S3−3)で表される繰り返し単位のそれぞれの含有比が、(S3−1):(S3−2):(S3−3)=39.8:7.7:52.5(mol比)の共重合体であった。この樹脂を樹脂(A−3)とする。
【0107】
感放射線性樹脂組成物溶液を、以下の実施例1〜6および比較例1に示すように作製した。樹脂(A−1)〜(A−3)以外の成分は以下の通りである。各感放射線性樹脂組成物溶液の組成を表1に示す。
【0108】
(化合物(B))
(B−1):ピナンジオール−カンファースルホン酸エステル(下記式(B−1)参照)
(B−2):ピナンジオール−トリフルオロメタンスルホン酸エステル(下記式(B−2)参照)
【0109】
【化19】

【0110】
(酸発生剤(C))
(C−1):トリフェニルスルホニウム・ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
(C−2):1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
【0111】
(酸拡散制御剤(D))
(D−1):tert−ブチル−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート
【0112】
(溶剤(E))
(E−1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0113】
(実施例1)
樹脂(A−1)100部、化合物(B−1)2部、酸発生剤(C−1)2部、酸発生剤(C−2)2.5部、酸拡散制御剤(D−1)0.55部、溶剤(E−1)900部を混合して感放射線性樹脂組成物を得た。
【0114】
(実施例2)
化合物(B−1)の代わりに(B−2)を使用した以外は実施例1と同様にして感放射線性樹脂組成物を得た。
【0115】
(実施例3)
樹脂(A−1)を樹脂(A−2)とした以外は実施例1と同様にして感放射線性樹脂組成物を得た。
【0116】
(実施例4)
化合物(B−1)の代わりに(B−2)を使用した以外は実施例3と同様にして感放射線性樹脂組成物を得た。
【0117】
(実施例5)
樹脂(A−1)を樹脂(A−3)とした以外は実施例1と同様にして感放射線性樹脂組成物を得た。
【0118】
(実施例6)
化合物(B−1)の代わりに(B−2)を使用した以外は実施例5と同様にして感放射線性樹脂組成物を得た。
【0119】
(比較例1)
化合物(B−1)を使用しなかった以外は実施例1と同様にして感放射線性樹脂組成物を得た。
【0120】
得られた各感放射線性樹脂組成物溶液について、各種評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【0124】
表3より、実施例1〜6の感放射線性樹脂組成物は、ラインエッジラフネス(LER)、パターン形状、解像度及び感度に優れるものであった。これに対し、比較例1の感放射線性樹脂組成物は、化合物(B)を有しないため、特にLERおよびパターン形状に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、KrFエキシマレーザーあるいはArFエキシマレーザーに代表される遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線の如き各種の放射線を使用する微細加工に有用な化学増幅型レジストとして好適に使用することができ、今後さらに微細化が進むと予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1−1)で示される繰り返し単位および下記一般式(1−2)で示される繰り返し単位を有する酸解離性基含有重合体と、(B)下記一般式(1−3)で示される化合物と、(C)放射線の照射により酸を発生する酸発生剤とを含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】

【化2】

〔一般式(1−1)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基、Zは酸の作用により脱離可能な保護基を示す。一般式(1−2)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表し、R2は相互に独立に、水素原子、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシ基、または、炭素数1〜4の直鎖状あるいは分岐状のフッ素化アルキル基を表す。mは0〜3の整数である。一般式(1−3)において、R3、R4は相互に独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐のアルキル基、パーフルオロアルキル基を示す。nは1〜8の整数を、Aは酸解離性基を示し、Gはフッ素原子又は一価の有機基を表す。〕
【請求項2】
前記(A)酸解離性基含有重合体が、下記一般式(1−4)で示される繰り返し単位を更に有する請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化3】

〔一般式(1−4)において、R1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基、Xは、炭素数4〜20の置換若しくは非置換の多環型脂環式炭化水素基を表す。〕
【請求項3】
前記一般式(1−3)において、R3およびR4がフッ素原子である請求項1又は2に記載の感放射線性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−52182(P2007−52182A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236524(P2005−236524)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】