説明

成型材料および該材料を用いた成型体、ならびに該成型体の製造方法

【課題】金属酸化物薄膜パターンの形成に適した成型材料、及び当該材料を用いて成型体を製造する際の最適条件を提供すること。
【解決手段】本発明の成型材料は、金属アルコキシドのオリゴマーを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物薄膜パターンを形成するのに好適な成型材料、および該材料を用いて得られる成型体、ならびに該成型体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、基板上への金属酸化物薄膜パターンの形成は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法、ゾル−ゲル法等によって金属酸化物薄膜を基板上に形成した後、フォトリソグラフィーによって不要部分を除去して行われてきた。
【0003】
しかしながら、この方法は、パターン形成までの工程数が多く、生産性が低いという問題があった。
【0004】
近年、金属酸化物薄膜パターンの形成を簡易に行うための方法が開発されている。例えば、特許文献1には、基板上に、シクロテトラシランやシクロペンタシラン、あるいはこれらの重合体等のシラン化合物からなる被膜を形成し、次いで被膜上にパターン状モールドを配置して加圧して、被膜にパターンを転写し、次いで熱処理を施してパターンを形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−263202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法によれば、基板上にシリコン酸化物薄膜パターンが直接形成されるため、フォトリソグラフィー工程を省略できる。
【0007】
本発明者らは、特許文献1に記載の方法を利用した金属酸化物薄膜パターンの形成に適した成型材料、及び当該材料を用いて成型体を製造する際の最適条件を提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、金属酸化物薄膜パターン形成用の成型材料として、金属アルコキシドのオリゴマーを用いるとともに、パターン状モールドによる加圧を加熱しながら行うことにより、パターン転写の精度に優れると共に、パターン形状を良好に保持できる金属酸化物薄膜パターンが得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の成型材料は、金属アルコキシドのオリゴマーを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明において、さらにアミン化合物を含むことは好ましい実施態様である。
【0011】
本発明には、上記成型材料を用いて製造されることを特徴とする成型体や、上記成型材料を基板に塗布する工程と、80℃〜250℃で乾燥する工程と、80℃〜300℃で型押しして、パターンを形成する工程と、200℃〜700℃で焼成する工程と、を含んでなる方法により製造されることを特徴とする成型体が包含される。
【0012】
さらに、本発明には、上記成型材料を基板に塗布する工程と、80℃〜250℃で乾燥する工程と、80℃〜300℃で型押しして、パターンを形成する工程と、200℃〜700℃で焼成する工程と、を含むことを特徴とする成型体の製造方法も包含される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パターン転写の精度に優れると共に、パターン形状が良好に保持される成型体を、簡易に形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(金属アルコキシドのオリゴマー)
本発明の成型材料は、金属アルコキシドのオリゴマーを含むことを特徴とする。かかる構成により、本発明の成型材料を基板上に塗布、乾燥した際に、得られる塗布膜が白化したりクラックを有するのを防ぐことができる。また、塗布膜が過度に硬化するのを防げるため、当該塗布膜への型押しによってパターンを精度よく転写できる。
【0015】
本発明で用いる金属アルコキシドのオリゴマーとしては、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、鉄、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、鉛、アンチモン、錫、タンタル、タングステン、イットリウム等の2価以上(より好ましくは3価または4価)の金属原子を1個有し、これに1個以上(より好ましくは2個以上、さらに好ましくは3個以上)のアルコキシ基が結合している化学構造を有する化合物の1種又は2種以上を、公知の方法により加水分解・重縮合して得られるオリゴマーが挙げられる。
【0016】
上記オリゴマーのうち、金属原子としてチタンを用いたオリゴマーとしては、例えば、下記式(1)で表されるオリゴマーが挙げられる。
【0017】
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基を示し、nは4以上の整数を示す。]
【0018】
式(1)中、R〜Rは、相互に同一又は異なって、置換基を含んでいてもよい炭素数1〜18個(好ましくは1〜10個、より好ましくは2〜8個、さらに好ましくは3〜6個)のアルキル基を示す。アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、分岐状の炭素数3〜18個のアルキル基が好ましい。特に好ましくは、直鎖状もしくはターシャリー(tert−)アルキル基である。
【0019】
〜Rは、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。このうち、n−ブチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基等が好ましく、n−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等がより好ましい。
【0020】
〜Rが含む置換基としては、水酸基、エステル基、ケトン基、エーテル基、アミノ基等が挙げられる。R〜Rが含む置換基は、相互に同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
式(1)中のn(nは繰り返し単位数の平均値を示す)は4以上の整数を示す。すなわち、式(1)で表されるオリゴマーは、平均組成としてnが4以上の整数である組成物である。nが3以下の整数では、成型材料を用いて形成した塗布膜が白化したり、クラックを有する場合がある。また、当該塗布膜が硬くなり過ぎて、パターン状モールドで型押しした際に、パターンを十分に転写できない場合がある。本発明において、nは5以上の整数(より好ましくは7以上の整数)であるのが好ましい。nは50以下の整数であるのが好ましく、30以下の整数であるのがより好ましい。nが50を超える整数では、溶解性が悪くなり、成膜できなくなる場合がある。nの値は、後述する製造方法により自由に調節できる。
【0022】
式(1)で表されるオリゴマーはいずれの方法で製造されてもよい。例えば、下記式(2)で表されるテトラアルコキシチタンを実質的に溶媒で希釈することなく、そこに、水又は水と水溶性溶媒との混合液を添加し、加水分解させて製造する方法が挙げられる。
【0023】
【化2】

[式(2)中、R〜Rは、上記式(1)と同一である。]
【0024】
式(2)で表されるテトラアルコキシチタンとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ−(sec−ブトキシ)チタン、テトラ−(tert−ブトキシ)チタン、テトラペンチルオキシチタン、テトラ(ペンチル−2−オキシ)チタン、テトラ(ペンチル−3−オキシ)チタン、テトラ−(tert−ペンチルオキシ)チタン等のアルコキシチタン類;ジオクチルオキシチタンビスオクチレングリコレート等のチタングリコレート類等が挙げられる。
【0025】
式(1)で表されるオリゴマーの製造に用いる水溶性溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類等が挙げられ、特に好ましくはアルコール類である。
【0026】
式(2)で表されるテトラアルコキシチタンに対する水の使用量は特に限定はないが、テトラアルコキシチタン1モルに対して、水0.5モル以上が好ましく、0.5モル〜0.9モルがより好ましい。水の量によって、式(1)における「n」の値が決まるので、水の量は好適なnの値になるように決められる。水の使用量が多すぎると、nが大きくなりすぎる場合がある。また、水の使用量が少なすぎると、オリゴマー化が不十分になる場合がある。
【0027】
式(2)で表されるテトラアルコキシチタンへの、「水」又は「水と水溶性溶媒との混合液」の添加方法は特に限定はないが、テトラアルコキシチタンを撹拌しながら、−10℃〜100℃で1分〜300分かけて添加するのが好ましく、20℃〜50℃で30分〜180分かけて添加するのが特に好ましい。また、添加中又は添加後、−10℃〜200℃で10分〜120分加熱するのが好ましく、50℃〜150℃で30分〜90分加熱するのがより好ましい。
【0028】
本発明では、必要であれば、加水分解反応で生成するアルコール、及び/又は水を希釈するために使用した水溶性溶媒を留去してもよい。
【0029】
(アミン化合物)
本発明の成型材料は、上記金属アルコキシドのオリゴマーに加えて、アミン化合物を含むのが好ましい。かかる構成により、本発明の成型材料を用いて得られる塗布膜が白化したりクラックを有するのを、より効果的に防げる。また、塗布膜が過度に硬化するのをより効果的に防げるため、パターン状モールドによるパターン転写を、より一層精度良く行うことができる。さらに、クラックの生じ難い成型体を形成できる。
【0030】
本発明で用いるアミン化合物としては、例えばアミン系シランカップリング剤;第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類;アミノ基を複数持つアミン類;水酸基を有するアミン類等が挙げられる。
【0031】
アミン系シランカップリング剤の具体例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等の、モノアミノアルキル基とアルコキシ基とを有するシラン化合物;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等の、ジアミノアルキル基とアルコキシ基とを有するシラン化合物;またはこれらの加水分解物等が挙げられる。
【0032】
第一級アミンの具体例としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン等が挙げられる。
【0033】
第二級アミンの具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン等が挙げられる。
【0034】
第三級アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン等が挙げられる。
【0035】
アミノ基を複数持つアミン類としては、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N−ヘキシルエチレンジアミン、N−シクロヘキシルエチレンジアミン、N−オクチルエチレンジアミン、N−デシルエチレンジアミン、N−ドデシルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N−イソプロピルジエチレントリアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
【0036】
水酸基を有するアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノ−ル、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール等が挙げられる。
【0037】
上記アミン化合物は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。本発明では、アミン化合物として、ジアミノアルキル基とアルコキシ基とを有するシラン化合物を用いるのが好ましい。
【0038】
アミン化合物は、金属アルコキシドのオリゴマー100質量部に対し、5質量部〜200質量部(より好ましくは10質量部〜100質量部)含まれるのが好ましい。アミン化合物の含有量が5質量部未満の場合には、当該化合物を用いる効果が十分に得られない場合がある。アミン化合物の含有量が200質量部を超える場合には、成型材料中の縮合反応が進まず、パターン状モールドによる型押し後に離型した際、元の形状に戻る(パターンが消失する)おそれがある。
【0039】
(成型体の製造方法)
本発明の成型体は、上記成型材料を用いて製造されるものであれば、いずれの方法で作製されてもよく、従来公知の製造方法を適用できるが、下記の方法で製造するのが簡便で好ましい。
【0040】
すなわち、本発明の成型体の製造方法は、上記成型材料を基板に塗布する工程と、80℃〜250℃で乾燥する工程と、80℃〜300℃で型押しして、パターンを形成する工程と、200℃〜700℃で焼成する工程とを含むことを特徴とする。以下、本発明の成型体の製造方法について、詳細に説明する。
【0041】
<塗布工程>
本発明で用いる基板としては、後の型押し工程での加熱によって影響を受けないものであれば特に限定されず、例えば、石英;ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス等のガラス;カーボン;金、銀、銅、シリコン、ニッケル、チタン、アルミニウム、タングステン等の金属;これらの金属、またはその酸化物もしくは混合酸化物等を表面に有するガラス等が挙げられる。前記混合酸化物としては、例えば、ITO等の透明導電性酸化物が挙げられる。
【0042】
基板に成型材料を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、成型材料を溶媒に溶解した塗布液を、基板上に、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法等によって塗布する方法が挙げられる。
【0043】
本発明で用いる溶媒としては、本発明の成型材料を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、極性溶媒等が挙げられる。
【0044】
炭化水素溶媒としては、具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ジシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0045】
エーテル溶媒としては、具体的には、ジプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(2−メトキシエタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、p−ジオキサン等が挙げられる。
【0046】
極性溶媒としては、具体的には、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
塗布液中の成型材料の濃度は、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、1質量%〜30質量%であることがより好ましい。これにより、塗布液において成型材料の不均一な析出を防止できるとともに、良好な塗布性を確保できる。
【0048】
基板上への塗布液の塗布量は、基板上に形成される金属酸化物薄膜の膜厚が0.01μm〜10μmとなるように、適宜調整すればよい。
【0049】
<乾燥工程>
本発明では、基板上に成型材料の塗布液を塗布した後に、80℃〜250℃(好ましくは100℃〜150℃)で加熱して、塗布膜中の溶媒を除去する。加熱温度が80℃未満では、溶媒を除去するのに長時間を要する場合がある。加熱温度が250℃を超えると、塗布膜中の金属アルコキシドのオリゴマーの縮合反応、あるいは当該オリゴマーとアミン化合物との縮合反応によって塗布膜が硬くなり過ぎて、後に行う型押し工程でのパターンの転写を行えない場合がある。
【0050】
<型押し工程>
本発明では、上記工程を経て得られた成型材料の塗布膜上に、パターン状モールドを配置した後、80℃〜300℃(好ましくは150℃〜200℃)で、好ましくは5分〜60分(より好ましくは10分〜50分)加圧して、型押しして、パターンを形成する工程を含む。本発明の成型材料は、金属アルコキシドのオリゴマーを含み、さらに必要に応じてアミン化合物を含むため、上記型押し工程によって、成型材料の塗布膜にパターンを精度よく転写できる。
【0051】
本工程を行う温度が80℃未満では、塗膜が十分に柔らかくならず、パターンが転写できない場合がある。また、成型材料中の縮合反応が進まず、パターン状モールドによる型押し後に離型した際、元の形状に戻る(パターンが消失する)場合がある。逆に、当該温度が300℃を超えると、縮合反応が進み過ぎて膜が硬くなり、パターンを転写できなくなる場合がある。
【0052】
本発明では、パターン状モールドを押し付ける際の押し付け圧は1MPa〜20MPaであるのが好ましく、1MPa〜15MPaであるのがより好ましい。
【0053】
本工程で用いるパターン状モールドとしては、基板を構成する材料として上記したものと同様の材料からなるものを使用することができる。これらのうち、微細なパターンの形成が可能であること、加工性等の観点から、シリコン、石英、酸化膜付きシリコン、金属等が好ましい。
【0054】
パターン状モールドには、予め離型処理を施しておくのが好ましい。ここで使用することのできる離型剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤や、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等が挙げられる。
【0055】
パターン状モールドの有するパターンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、ラインアンドスペースパターン、円柱状もしくは多角柱状(例えば4角柱状)、円錘状もしくは多角錘状(例えば4角錘状)またはこれらを平面で切断した形状の突起または孔、またはこれらの組み合わせからなるパターン等が挙げられる。
【0056】
<焼成工程>
本発明は、型押し工程後に200℃〜700℃(好ましくは300℃〜600℃)で、好ましくは10分〜240分(より好ましくは30分〜120分)焼成する工程を含む。本工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよく、あるいは加熱温度を連続的に変化させつつ行ってもよい。
【0057】
焼成温度が200℃未満であると、成型材料中の金属アルコキシドのオリゴマーの縮合反応が十分に進まない、あるいは、有機分が残留する場合がある。焼成温度が700℃を超えると、転写したパターンが崩れる場合がある。
【0058】
本工程は、パターン状モールドを配置した状態のまま行っても、パターン状モールドから離型した後に行ってもよい。パターン状モールドを配置したまま行った場合には、焼成工程後にパターン状モールドから離型すればよい。
【0059】
<エッチング工程>
本発明では、必要に応じて、焼成工程の後にエッチングしてもよい。本工程で用いるエッチング方法は特に限定されず、従来公知の方法を適用できる。
【0060】
(成型体の用途)
本発明の成型材料を用いることにより、あるいは、当該材料を用いて本発明の製造方法を適用することにより、パターン精度が高く、かつクラック等のない成型体を形成できる。従って、本発明の成型体は、半導体デバイス、光学デバイス、表示デバイスとして好適に用いることができる。上記半導体デバイスとしては、例えば、太陽電池、トランジスタ、発光ダイオード、メモリ、IC、LSI、CPU等が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお下記実施例および比較例において「部」、「%」とあるのは、それぞれ質量部、質量%を意味する。
【0062】
先ず、本発明で用いた成膜性、パターン転写性、及びパターン保持性の評価方法について説明する。
【0063】
(1)成膜性
塗布工程、および乾燥工程を経て得た塗布膜を目視にて観察し、下記のように評価した。
◎:塗布膜に欠陥なし
○:塗布膜に若干の荒れあり
△:塗布膜に荒れあり
×:塗布膜が白化、あるいは塗布膜にクラック発生
【0064】
(2)パターン転写性
転写工程後の膜を、SEM(日本電子社製)およびAFM(ビーコ社製)で観察し、下記のように評価した。
◎:パターンに欠陥なし
○:パターンの端に若干の崩れあり
△:パターンの転写はあるものの、クラック発生
×:パターンの転写なし
【0065】
(3)パターン保持性
焼成工程後の膜を、SEMおよびAFMで観察し、下記のように評価した。
◎:パターンに変化なし
○:パターン端部に若干のクラック発生
△:パターンにクラック発生
×:パターンに著しくクラックが発生し、パターンの認識が困難
【0066】
実施例1〜4、及び比較例1〜4
(塗布液の調製)
冷却管と窒素導入管を接続した三つ口フラスコに、表1に記載の金属アルコキシド、アミン化合物、及び溶媒を加え、窒素フローしながら、100℃で30分撹拌した。冷却後に、溶液を0.1μmのフィルターを用いてろ過し、塗布液を調製した。
【0067】
(塗布工程)
基板としてのシリコンウェハー上に、成型材料の塗布液を、スピンコートを用いて2,500rpm、30秒の条件で塗布した。
【0068】
(乾燥工程)
塗布後、80℃で3分乾燥を行った。その際、成膜性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0069】
(転写工程)
下記の転写機械、モールド、及び条件で転写工程を行った。その際、パターン転写性の評価を行った。その結果を表1に示す。
転写機械:東芝機械社製ST−50
モールド:NTT−AT社製PH−350
条件:成型材料の塗布膜を形成した基板を、転写機械に設置し、180℃まで加熱した後、180℃の温度を保持しながら10MPaの圧力で30分転写を行った。
【0070】
(焼成工程)
モールドから離型した後、電気炉を用いて、焼成を行った。10℃/分で600℃まで昇温し、1時間保持し、その後、冷却した。その際、パターン保持性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の成型材料を用いることにより、あるいは、当該材料を用いて本発明の製造方法を適用することにより、パターン精度が高く、かつクラック等のない成型体を形成できる。従って、本発明の成型体は、半導体デバイス、光学デバイス、表示デバイスとして好適に用いることができる。上記半導体デバイスとしては、例えば、太陽電池、トランジスタ、発光ダイオード、メモリ、IC、LSI、CPU等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アルコキシドのオリゴマーを含むことを特徴とする成型材料。
【請求項2】
さらに、アミン化合物を含む請求項1に記載の成型材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成型材料を用いて製造されることを特徴とする成型体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の成型材料を基板に塗布する工程と、
80℃〜250℃で乾燥する工程と、
80℃〜300℃で型押しして、パターンを形成する工程と、
200℃〜700℃で焼成する工程と、
を含んでなる方法により製造されることを特徴とする成型体。
【請求項5】
請求項1または2に記載の成型材料を基板に塗布する工程と、
80℃〜250℃で乾燥する工程と、
80℃〜300℃で型押しして、パターンを形成する工程と、
200℃〜700℃で焼成する工程と、
を含むことを特徴とする成型体の製造方法。

【公開番号】特開2013−100437(P2013−100437A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245898(P2011−245898)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】