説明

成形体の製造方法およびそれによる成形体およびランプ

【課題】工程を簡略化すると共に、生産効率を向上し、品質の向上を図ることができる成形体の製造方法およびそれによる成形体およびランプを提供する。
【解決手段】透光性の半製品2および非透光性の半製品4を一次射出によりそれぞれ成形し、半製品2,4を突き合わせた後、その突き合わせ部に二次射出して一体化成形された成形体1の製造方法において、半製品4に部材3を取り付けた後に、部材3が半製品2,4を突き合せることにより形成される中空部6に配されるようにして二次射出し、二次射出後に、部材3と部材3が取り付けられている半製品4とをレーザ接合して一体化成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法およびそれによる成形体およびランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載されているサイドターンランプが知られている(例えば、特許文献1参照)。サイドターンランプは、ハウジングおよびレンズ部を備え、ハウジング側に電球やLEDなどの光源が配されている。近年、このサイドターンランプのレンズ部を無色透明の樹脂材を用いて製造されるものがある。このようにレンズ部を無色透明にすると、その内部が視認されやすくなり、内部に配されている光源が見えるため、見栄えが良くないという問題があり、それを解決するために、光源を見えづらくするためのキャップ部材を取り付けたものが知られるようになってきた。
【特許文献1】特許第3688289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のキャップ部材を取りつけたサイドターンランプでは、その製造方法が、レンズ部およびハウジングをそれぞれ射出成形などにより成形し、その後、ハウジング内面を成膜した後、光源を取り付け、キャップ部材をレーザ接合などにより取り付け、そしてレンズ部とハウジングとを超音波接合などにより接合して製造しており工程が煩雑となっていた。また、製造する工程において、製品を各工程ごとに搬送して接合などを行っており、生産効率が悪く、品質を維持も困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、工程を簡略化すると共に、生産効率を向上し、品質の向上を図ることができる成形体の製造方法およびそれによる成形体およびランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、透光性の半製品および非透光性の半製品を一次射出によりそれぞれ成形し、前記半製品同士を突き合わせた後、その突き合わせ部に二次射出して一体化成形された成形体の製造方法において、前記非透光性の半製品に部材を取り付けた後に、該部材が前記半製品同士を突き合せることにより形成される中空部に配置されるようにして二次射出し、二次射出後に、前記部材と該部材が取り付けられている半製品とをレーザ接合して一体化成形することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は、透光性の半製品および非透光性の半製品を一次射出によりそれぞれ成形し、前記半製品同士を突き合わせた後、その突き合わせ部に二次射出して一体化成形された成形体において、前記非透光性の半製品に部材が取り付けられ、該部材が前記半製品同士を突き合せることにより形成される中空部に配置され、二次射出後に、前記部材と該部材が取り付けられている半製品とをレーザ接合して一体化成形されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は、透光性のレンズ部と非透光性のハウジングを一次射出によりそれぞれ成形し、前記レンズ部と前記ハウジングとを突き合わせた後、その突き合わせ部に二次射出して一体化成形されたランプにおいて、前記ハウジングの内面に設けられた光源を覆うようにキャップ部材が取り付けられ、二次射出後に、前記キャップ部材と前記ハウジングとをレーザ接合して一体化成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、射出成形を行った後に、レーザ接合することで一体化成形することができるため、工程を簡略化できると共に、生産効率を向上することができる効果がある。
【0009】
請求項2に記載した発明によれば、製品製造時に製品の運搬機会を減少させることができるため、外部雰囲気などの影響による品質の低下を招くことなく、品質の向上を図ることができる効果がある。
【0010】
請求項3に記載した発明によれば、製品製造時に製品の運搬機会を減少させることができるため、外部雰囲気などの影響による品質の低下を招くことなく、品質の向上したランプを提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、成膜成形装置を用いて車両のサイドターンランプを製造する場合の説明を行う。
図1に示すように、サイドターンランプ1は、レンズ部2と、電球3が組み込まれるハウジング4とで構成されている。レンズ部2およびハウジング4は半割り製品である一次製品として固定金型、可動金型でそれぞれ成形し、可動金型をスライド移動させてハウジング4の内面を成膜した後に、可動金型をスライド移動させて両一次製品同士を突き合わせ、その突き合わせ面部に後述する樹脂材5を二次射出して一体成形される。
【0012】
ここで、レンズ部2とハウジング4とで構成される中空部6に、電球3を覆うように補色キャップ7が取り付けられている。補色キャップ7は透明レンズで構成されている。補色キャップ7により、電球3が外部から視認することが困難になるように取り付けられている。
【0013】
なお、レンズ部2を構成する材料は、レーザ光を透過することができる透過性樹脂、例えば、透明のポリカーボネート樹脂であり、ハウジング4を構成する材料は、レーザ光を吸収することができる樹脂、例えば、アクリル樹脂である。また、電球3はLEDでもよい。
【0014】
次に、サイドターンランプ1を成膜成形するための製造装置50について説明する。
図2に示すように、製造装置50は、可動金型51と固定金型52とを備えて構成されている。可動金型51には、レンズ部2およびハウジング4を型形成するための成形用型面53,54が形成され、固定金型52には、レンズ部2およびハウジング4を型形成するための成形用型面55,56と共に、ハウジング4を成膜するための成膜用型面57が形成されている。なお、成形用型面53〜56および成膜用型面57は、可動金型51および固定金型52にそれぞれ着脱自在に取り付けられたものである。
【0015】
成膜装置40は、公知の真空蒸着装置であり、成膜用型面57、成膜空間を真空にするための真空ポンプ41、真空ポンプ41にバルブ42を介して接続される真空流路43、蒸着する金属(例えば、アルミニウムやクロム)を入れるボート(ターゲット)44、ボート44を加熱するためのヒータ45およびヒータ45用の電源46などを備えて構成されている。
【0016】
可動金型51は、図示しないアクチュエータ(サーボモータやシリンダ)により金型同士の近接・離間方向の移動と、型表面に沿った移動とができるように構成されている。なお、各金型51,52には、補色キャップ7を射出成形するための型面を備えていてもよい。
【0017】
次に、サイドターンランプ1を成膜成形するための成膜成形装置10について説明する。
図3に示すように、成膜成形装置10は、筐体11内に製造装置50が配置されている。製造装置50は、可動金型51と固定金型52とで構成されている。また、可動金型51と固定金型52とを型締めするためのトグル機構を有する型締め装置70が、製造装置50の可動金型51に連接されて配置されている。
【0018】
筐体11の上面には、筐体11内を空調・換気するための空調機77が取り付けられており、筐体11に形成された開口部76に空調機77の下部に設けられた吹出口78が挿通され、筐体11内に空調空気を吹き出し可能に構成されている。また、筐体11の側面などには、適宜点検口12が設けられている。例えば、製造装置50の側面に対応した位置に点検口12が設けられており、容易に開閉可能に構成されている。ここで、点検口12は気密性を確保することができるタイプのものを採用することが好ましい。
【0019】
また、筐体11の側面において、製造装置50などに対応した位置近傍は透明ガラスなどで構成し、筐体11内を視認できるようにされていることが好ましい。
また、筐体11の側部近傍には、射出成形用の樹脂材料が収容された射出材料供給装置81と、成膜用の真空ポンプ41および電源46とが配置されている。
【0020】
型締め装置70は、本体部71とアーム部72とを備えている。アーム部72の一端に接続されている本体部71に、制御部などが収容されており、制御部からの信号によりアーム部72が可動するように構成されている。また、アーム部72の他端には、可動金型51が接続されている。そして、アーム部72が可動することで、可動金型51が合わせて移動し、可動金型51と固定金型52とを型締め可能に構成されている。
【0021】
成形材料供給装置81は、筐体11外に配置され、材料を収容しているタンク89、材料を金型に形成されたキャビティへ供給する供給配管90、供給配管90の途中に設けられ、供給経路を開閉可能に構成されたバルブ91とを備えている。供給配管90は、その途中で筐体11を貫通し、筐体11内へと導かれ、各金型内へ材料を供給可能に構成されている。タンク89内に収容されている材料は、図示しない制御部からの指示によりバルブ91を開状態にした後、供給配管90を介して、金型のキャビティ内へ供給され、一次射出および二次射出可能に構成されている。なお、複数の材料を用いて射出成形する場合には、成形材料供給装置81は、材料の種類分の装置が設けられることとなる。
【0022】
成膜装置40に備えられている真空ポンプ41および電源46は、筐体11外に配置され、真空ポンプ41はそれに接続している真空流路43の途中で筐体11を貫通し、筐体11内へと導かれ、成膜を行う空間内へ接続されている。また、電源46には配線が接続され、その配線が筐体11を貫通して、ヒータ45へ接続されている。なお、真空ポンプ41および電源46は、筐体11内に配置されていてもよい。
【0023】
次に、サイドターンランプ1を成膜成形する工程について、図4〜図6を用いて説明する。なお、成膜成形装置10が稼動している間は、空調機77も連動して稼動しており、筐体11内がクリーンルーム化されている。
【0024】
図4(A)に示すように、可動金型51の成形用型面53,54が固定金型52の成形用型面55,56にそれぞれ対向するように配置する。
【0025】
図4(B)に示すように、可動金型51を固定金型52方向に移動して、型締め装置70にて金型51,52同士をトグル機構が機能するように型締めした後、この状態で、レンズ部2およびハウジング4を構成する材料を一次射出することで成形する。一次射出する際は、射出材料供給装置81から射出材料を、レンズ部2およびハウジング4を成形するためのキャビティにそれぞれ供給する。
【0026】
図4(C)に示すように、一次射出完了後、可動金型51を型開き方向に移動する。このとき、レンズ部2は固定金型52側に残るように、また、ハウジング4は可動金型51側に位置するように型設計されている。
【0027】
図5(D)に示すように、可動金型51を、ハウジング4が成膜装置40と対向するよう型表面に沿う方向(水平方向)に移動する。
【0028】
図5(E)に示すように、可動金型51を型締め方向に移動してハウジング4が成形されている成形用型面54と成膜装置40が内蔵された成膜用型面57とを型締めし、封止状の成膜空間が形成された後、バルブ42を開放して成膜空間内の空気を真空ポンプ41により真空流路43から抜き、成膜空間を真空状態にする。
【0029】
この状態で、ボート44へ配置された成膜材料は、電源46により加熱したヒータ45により溶融され、蒸気化される。そして、蒸気化された金属材料からなる成膜材料により、ハウジング4における成膜用型面57から露出した面が成膜され、成膜面61が形成される。ここで、成膜工程では部材組み込み部62は図示しないマスキング材でマスキングされ、成膜面61が形成されないように構成されている。
【0030】
図5(F)に示すように、成膜完了後、可動金型51が型開き方向に移動して、ハウジング4を成膜用型面57から離間させる。
【0031】
図6(G)に示すように、電球3、端子8が図示しない部材組み込み装置よりハウジング4の部材組み込み部62に組み込まれる。
【0032】
図6(H)に示すように、補色カバー7をハウジング4の内面で、電球3などを覆うように配置する。このとき、補色カバー7が適切な位置に配されるために、補色カバー7またはハウジング4に係止部などを形成しておくとなお良い。例えば、図8に示すように、ハウジング4に補色カバー7を嵌合可能な段差部11を形成したり、図9に示すようにハウジング4に突起12を設け、補色カバー7に突起12に対応した穴13を形成し、突起12を穴13に嵌合するように構成するとよい。その後に、可動金型51が型表面に沿う方向(水平方向)に移動して、レンズ部2とハウジング4とが対向するように配置する。なお、各部材を組み込むタイミングは、レンズ部2とハウジング4とが対向するように配置された後に行ってもよい。
【0033】
図6(I)に示すように、可動金型51を固定金型52方向に移動して型締めし、この型締め状態で、レンズ部2とハウジング4との間に樹脂材5を二次射出することで一体成形する。ここで、樹脂材5は射出材料供給装置81より供給される。
【0034】
図7(J)に示すように、可動金型51を型開き方向に移動し、図示しない押し出し部材によりサイドターンランプ1を取り出す。そして、再び図4(A)の状態に可動金型51を移動し、上述の一連の工程を繰り返すことで、サイドターンランプ1を連続して製造することができる。
【0035】
さらに、図7(K)に示すように、成膜成形装置10より取り出されたサイドターンランプ1は、図示しないレーザ接合装置に移送された後に、補色キャップ7とハウジング4との当接部14をレーザ光にて溶着する。なお、レンズ部2および補色キャップ7は、レーザ光を透過する材質を採用し、ハウジング4はレーザ光を吸収する材質を採用しているため、補色キャップ7とハウジング4との間を確実にレーザ接合することができる。
上述の工程にて、電球3が補色キャップ7にて覆われたサイドターンランプ1を製造することができる。
このように構成することで、ランプとしての機能は確保しつつ、電球3が見えづらい、つまりデザイン的に優れたサイドターンランプ1を提供することができる。
【0036】
本実施形態によれば、レンズ部2およびハウジング4を一次射出によりそれぞれ成形し、レンズ部2とハウジング4とを突き合わせた後、その突き合わせ部に二次射出して一体化成形するサイドターンランプ1の製造方法において、ハウジング4に補色キャップ7を取り付けた後に、補色キャップ7がレンズ部2とハウジング4とを突き合せることにより形成される中空部6に配置されるようにして二次射出し、二次射出後に、補色キャップ7とハウジング4とをレーザ接合して一体化成形するようにしたため、一次射出および二次射出を行った後に、レーザ接合することで一体化成形でき、サイドターンランプ1を製造する工程を簡略化できると共に、生産効率を向上することができる。
【0037】
ここで、レンズ部2および補色キャップ7には、レーザ光を透過可能な透過性樹脂を採用し、ハウジング4にはレーザ光を吸収可能な樹脂を採用したため、中空部6に配置された補色キャップ7とハウジング4とをレーザ接合する際に、確実に接合することができる。なお、レンズ部2および補色キャップ7は、無色透明に限らず、レーザ光を透過可能なものであれば色付の樹脂材料を用いることもできる。
【0038】
また、上述の工程により製造されたサイドターンランプ1は、製品製造時に製品の運搬機会を減少させることができるため、外部雰囲気などの影響による品質の低下を招くことなく、品質の向上を図ることができる。さらに、本実施形態のような製造装置を用いれば、一次射出工程から二次射出工程までを一つの型内で行うことができ、ハウジング4と補色レンズ7とのレーザ接合のみを他の装置で行うだけであるため、より高品質のサイドターンランプ1を供給することができる。
【0039】
尚、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、補色キャップとハウジングとの係合箇所を構成する各部材の形状などの具体的な構成については上記実施形態に限ることなく適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態におけるサイドターンランプの側面図である。
【図2】本発明の実施形態における製造装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態における成膜成形装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態におけるサイドターンランプの製造工程を示す説明図である。
【図5】図4に続く製造工程を示す説明図である。
【図6】図5に続く製造工程を示す説明図である。
【図7】図6に続く製造工程を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態における補色キャップとハウジングとの係合部を示す要部拡大断面図である。
【図9】図7とは別の態様を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…サイドターンランプ(成形体) 2…レンズ部(半製品) 4…ハウジング(半製品) 6…中空部 7…補色キャップ(部材、キャップ部材) 10…成膜成形装置 51…可動金型(成形体用金型) 52…固定金型(成形体用金型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の半製品および非透光性の半製品を一次射出によりそれぞれ成形し、前記半製品同士を突き合わせた後、その突き合わせ部に二次射出して一体化成形された成形体の製造方法において、
前記非透光性の半製品に部材を取り付けた後に、該部材が前記半製品同士を突き合せることにより形成される中空部に配置されるようにして二次射出し、
二次射出後に、前記部材と該部材が取り付けられている半製品とをレーザ接合して一体化成形することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
透光性の半製品および非透光性の半製品を一次射出によりそれぞれ成形し、前記半製品同士を突き合わせた後、その突き合わせ部に二次射出して一体化成形された成形体において、
前記非透光性の半製品に部材が取り付けられ、該部材が前記半製品同士を突き合せることにより形成される中空部に配置され、
二次射出後に、前記部材と該部材が取り付けられている半製品とをレーザ接合して一体化成形されていることを特徴とする成形体。
【請求項3】
透光性のレンズ部と非透光性のハウジングを一次射出によりそれぞれ成形し、前記レンズ部と前記ハウジングとを突き合わせた後、その突き合わせ部に二次射出して一体化成形されたランプにおいて、
前記ハウジングの内面に設けられた光源を覆うようにキャップ部材が取り付けられ、
二次射出後に、前記キャップ部材と前記ハウジングとをレーザ接合して一体化成形されていることを特徴とするランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−221530(P2008−221530A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60500(P2007−60500)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000149468)株式会社大嶋電機製作所 (89)
【Fターム(参考)】