説明

成形体の製造方法

【課題】二次発泡の発泡倍率が高く、かつ、高いクッション性を有する成形体の製造方法を提供する。また、型形状の賦形性が良く、特に絞り形状部を有する場合、絞り形状部における成形体の外観に優れる成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】第一の発泡シートからなる基材層と、この基材層の上に設けられた第二の発泡シートからなる中間層と、この中間層の上に設けられた非発泡シートからなる表皮層と、を有する積層体からなる成形体の製造方法であって、前記積層体の基材層側の面を、前記表皮層側の面の表面温度よりも高い温度となるよう加熱する加熱工程と、密閉可能な成形型のキャビティ内に、加熱された前記積層体を、この積層体の少なくとも一方の面が、対向する成形型のキャビティ面に直接接触しないよう配置し、前記成形型を型締する型締工程と、前記キャビティ内の圧力を減少させて前記積層体を膨張させる減圧工程と、前記減圧工程を経た積層体を冷却する冷却工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一の発泡シートからなる基材層と、第二の発泡シートからなる中間層と、非発泡シートからなる表皮層と、を有する積層体からなる成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン発泡シートを基材層とし、その表面に他の樹脂からなるシートを中間層又は表皮層とした積層体は、真空成形等の成形方法によって所望の形状の成形体に賦形されている。これらの成形体は、自動車部品材料、建築材料等、種々の用途に用いられている。
積層体を賦形する方法としては、例えば所定の発泡倍率を有する発泡ポリプロピレンシートを中間層とし、その両面に熱可塑性樹脂フィルムを表皮層としてそれぞれ積層、接着することにより得られた成形体を、160℃以上190℃以下の範囲の温度に加熱した一対の熱板にて加熱軟化させた後、真空成形可能な一対の金型を用いて真空成形して発泡ポリプロピレンシートを真空成形する方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、表皮層を積層した熱可塑性樹脂シートと、予め所望の形状に賦形した熱可塑性樹脂シートと表皮層と、を真空成形によって貼り付け、一体化する方法が知られている(特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−84729号
【特許文献2】特開平2−167722号
【特許文献3】特願平11−118070号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の成形方法では、積層体全体を厚み方向に均一に加熱して真空成形を行うため、基材層と中間層に異なる発泡層を有する積層体を成形する場合、基材層を優先的に二次発泡させることが困難であり、基材層の二次発泡の発泡倍率が低く、所望の発泡倍率に到達できない場合があった。また、同時に中間層のクッション性が低下してしまい、高いクッション性を有する成形体を得ることが困難であった。また、型形状の賦形性も良くなく、特に絞り形状部を有する成形体を製造した場合、外観不良が発生する場合があった。
特許文献2、特許文献3に記載の方法は、予め所定形状に賦形した基材層と表皮層を成形型内で貼り合わせ、一体化する方法であり、基材層と表皮層を別々に成形型内に設置する必要があり、貼り合わせ時に異物の混入や発泡層と表皮層間の脱気不良等といった成形不良が発生する恐れもある。
以上の課題に鑑み、本発明は発泡シートを基材層とし、その表面に他の樹脂からなるシートを中間層又は表皮層とし、積層体の成形方法において、二次発泡の発泡倍率が高く、かつ、高いクッション性を有する成形体の製造方法を提供することを目的とする。また、型形状の賦形性が良く、特に絞り形状部を有する場合、絞り形状部における成形体の外観に優れる成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第一の発泡シートからなる基材層と、この基材層に隣接して設けられた第二の発泡シートからなる中間層と、この中間層の基材層側の面とは反対側の面に隣接して設けられた非発泡シートからなる表皮層と、を有する積層体からなる成形体の製造方法であって、
前記積層体を所定の形状に賦形して賦形体を製造する賦形工程と、
前記賦形体の基材層側の面を、表皮層側の面の表面温度よりも高い温度となるよう加熱する加熱工程と、
密閉可能な成形型のキャビティ内に、加熱された賦形体を、この賦形体の少なくとも一方の面が、対向する成形型のキャビティ面に直接接触しないよう配置し、前記成形型を型締する型締工程と、
前記金型キャビティ内の圧力を減少させて前記賦形体を膨張させる減圧工程と、
前記減圧工程を経た賦形体を冷却する冷却工程と、
を有する成形体の製造方法及びこの方法により得られる成形体を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発泡シートを基材層とし、その表面に他の樹脂からなるシートを中間層又は表皮層とした積層体の成形方法において、二次発泡の発泡倍率が高く、高いクッション性を有する成形体の製造方法を提供することが可能となる。また、型形状の賦形性が良く、特に絞り形状部を有する場合、絞り形状部における成形体の外観に優れる成形体の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態の一つを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、第一の発泡シートと第二の発泡シートと非発泡シートとを順次積層した積層体を所定の形状に賦形する賦形工程と、賦形された積層体に加熱処理を施す加熱工程と、加熱された積層体をキャビティ内に設置し型締めを行う型締工程と、キャビティ内の圧力を減圧する減圧工程と、冷却を行う冷却工程と、を有する。以下各工程について詳細に説明する。
【0009】
<賦形工程>
賦形工程では、後述する積層体を所定の形状に賦形して、賦形体を製造する。積層体を予め賦形しておくことにより、基材層である第一の発泡シートを型形状に忠実に賦形することができる。賦形方法は特に限定されるものではないが、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法、又はこれらの方法の組み合わせにより行われることが好ましい。中でも、意匠面に対するシボ模様等の転写性と基材に対する型形状の賦形性を両立させるために、少なくとも意匠面となる表皮層側を真空吸引しながらプレス成形を行う成形方法を用いることがより好ましい。賦形体の形状は特に限定されるものではないが、一枚の積層体から複雑な形状の成形体を得ることが可能であることから、絞り形状部を有する形状であることが好ましい。
本賦形工程で用いる成形型は、後述する型締工程及び減圧工程で使用可能な密閉可能な成形型であることが好ましく、真空吸引可能な吸引孔を有する真空成形型であることがより好ましい。
【0010】
<加熱工程>
本発明における加熱工程とは、賦形工程で製造された賦形体の基材層側の面を、前記表皮層側の面の表面温度よりも高い温度となるよう加熱する工程をいう。このように温度差をつけて加熱することによって中間層の膨張を抑制し、基材層を優先的に厚み方向に膨張させることができる。また、中間層のクッション性を高くすることができる。
加熱方法は、熱風、遠赤外線ヒーター、近赤外線ヒーター、接触式熱板等の加熱装置を用いて加熱する方法が挙げられる。賦形体のドローダウンを防止し、短時間で効率的に加熱をすることができることから、賦形工程で用いた成形型で賦形体を支持しながら遠赤外線ヒーターを用いて加熱することが好ましく、特に表皮層側の面を支持しながら加熱することがより好ましい。
【0011】
本加熱工程において、基材層側の表面と表皮層側の表面の温度は、基材層を優先的に膨張させるという観点から基材層側の表面の温度を表皮層側の表面の温度よりも10℃以上高く設定することが好ましい。
また、積層体を形成する第一の発泡シートに結晶性樹脂を使用する場合には、加熱工程における基材層側の表面温度は、結晶性樹脂の融点以上、融点よりも35℃高い温度以下であることが好ましく、融点以上、融点よりも20℃高い温度以下であることがより好ましい。また、第一の発泡シートに非晶性樹脂を使用する場合には加熱工程における基材層側の表面温度は、非結晶性樹脂のガラス転移点以上、ガラス転移点よりも35℃高い温度以下であることが好ましく、ガラス転移点以上、ガラス転移点よりも20℃高い温度以下であることがより好ましい。
例えば第一の発泡シートとして融点が165℃のポリプロピレン発泡シートを使用する場合には、積層体における基材層側の表面温度は165℃以上、200℃以下であることが好ましく、165℃以上、185℃以下であることがより好ましい。
なお、本発明における「融点」及び「ガラス転移温度」は、微量融点測定装置を用いた測定や、示差走査熱量測定等の測定により得られた値を用いることができる。「表面温度」は、積層体の両表面に熱電対温度計を取り付けて測定する方法や非接触式の温度センサーで測定する方法により得られた値を用いることができる。
【0012】
加熱時間は基材層側の面を形成する第一の発泡シートの原料に使用される樹脂の種類や、第一の発泡シートの発泡倍率・厚み等によって異なるが、第一の発泡シートの基材層側の面の表面温度が所望の温度になるように適宜設定すればよい。第一の発泡シートの両表面に熱電対を取り付けて温度測定を行い、温度と時間の関係を予め調べておき、加熱温度と時間を設定することが好ましい。なお、加熱工程前の第一の発泡シートは室温であるが、加熱時間の短縮のために予備加熱を行ってもよい。
【0013】
<型締工程>
本発明における型締工程とは、密閉可能な成形型のキャビティ内に、加熱された賦形体を、この賦形体の少なくとも一方の面が、対向する成形型のキャビティ面に直接接触しないように配置し、金型を型締する型締工程である。
このように賦形体の少なくともどちらか一方の面を、キャビティ面に接触させないように配置することにより賦形体とキャビティ面の間に空間が形成され、賦形体を厚み方向に膨張(二次発泡)させることができる。なおキャビティの厚み方向の距離(h)は所望の成形体厚みが得られるように適宜設定することができ、賦形工程前の積層体の厚みの1.1倍から5倍であることが好ましく1.1倍から2倍であることがより好ましい。
【0014】
成形型は、密閉可能な型であればどのような形状の型であってもよい。例えば、一方が底面とこの底面の周囲を取り囲む壁面とからなる収納部であり、他方が平板状で前記収納部の蓋となる成形型や、この収納部同士が対となる成形型、所謂雌型と雄型等の組み合わせからなる成形型が挙げられる。このうち賦形工程で使用した成形型を用いることが好ましい。
成形型の材質は、特に限定されるものではなく、耐久性、熱伝導性等の観点から金属製であることが好ましく、コストや軽量性等の面からアルミであることがより好ましい。また、成形型は、ヒーターや熱媒体等を内蔵した温度調整可能な構造であることが好ましい。
キャビティ内に賦形体を配置する際、賦形体は両端を把持具により挟持されていても、台に乗せられていても、表皮層側の面を下にしてキャビティ面に直接置かれていても構わない。
【0015】
<減圧工程>
本発明における減圧工程とは、キャビティ内の圧力を減少させて賦形体を膨張させる工程をいう。加熱工程で加熱された賦形体は、キャビティ内の圧力を減少することにより膨張(二次発泡)する。このとき、加熱工程では賦形体の基材層側の面は、表皮材側の面の表面温度よりも高い温度となるように加熱されているため、この減圧工程では、基材層側の面を構成する第一の発泡シートの方が、中間層を構成する第二の発泡シートよりも高い倍率で二次発泡をすることが可能となる。この減圧工程では、賦形体の少なくとも一方の面が、キャビティ面に接触するまで前記積層体を膨張させることが好ましい。
本工程による第一の発泡シート及び第二の発泡シートの発泡倍率は、賦形工程前の積層体中の各発泡シートの厚みを基準にして、第一の発泡シートが1.1倍から5.0倍であることが好ましく、第二の発泡シートが1.0倍から5.0倍であることが好ましい。
【0016】
キャビティ内の減圧方法としては、成形型と接続した真空ポンプの接合弁を開けて成形型内を真空吸引する方法が挙げられる。真空ポンプは、空間内の空気を短時間で排気できる能力を有するものを用いることが、得られる成形体の基材層の発泡倍率の向上の観点から好ましい。
また、使用する成形型の大きさによっては、キャビティ内の減圧を速やかに行うために真空タンクを備え付けることが好ましい。真空吸引の程度は特に限定されるものではないが、キャビティ内の真空度が−0.05MPaから−0.1MPaになるように真空吸引することが好ましい。ここで真空度とは、大気圧に対するキャビティ内の圧である。すなわち「真空度が−0.05MPa」とは、キャビティ内の圧力が0.95MPaであることを示す。なお本発明において、キャビティの真空度は、キャビディ内の真空吸引孔を用いて測定した真空度を用いる。
【0017】
<冷却工程>
本発明における冷却工程とは、減圧工程を経た積層体を冷却する工程をいう。減圧工程を経て所望の倍率に膨張(二次発泡)した積層体は、各層が固化状態となるまでキャビティ内で冷却され、キャビティ内を常圧にした後成形型を開いて取り出される。
冷却方法としては外気による冷却や、熱媒体による冷却等、が挙げられる。また、キャビティ内を常圧にする方法としては、成形型と真空ポンプとの接合弁を閉じてパージ弁を開けて成形型内を常圧にする方法が挙げられる。
なお冷却工程では、膨張した積層体の形状を保持するという観点から、キャビティ内の圧力を減少させながら冷却を行うことが好ましい。即ち、上記減圧工程で減圧を止めることなく冷却を行うことが好ましい。
【0018】
<積層体>
ここで、本発明で用いられる積層体について説明する。
積層体は基材層と、この基材層に隣接して設けられた中間層と、この中間層の基材層側の面とは反対側の面に隣接して設けられた表皮層と、を有する。そして基材層と中間層はそれぞれ第一の発泡シート、及び第二の発泡シートで構成されている。
【0019】
基材層を形成する第一の発泡シート、及び中間層を形成する第二の発泡シートは、結晶性樹脂、又は非晶性樹脂のどちらかの樹脂を原料として用いる。第一の発泡シート及び第二の発泡シートは、同じ樹脂を原料として用いても、異なる樹脂を原料として用いても構わない。
結晶性樹脂としては、例えばエチレン樹脂、プロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。
非晶性樹脂としては、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0020】
これらのうち、得られる成形体の剛性、耐熱性等の観点から、プロピレン樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は単独で使用してもよく、複数の樹脂を併用してもよい。
プロピレン樹脂としては、プロピレンホモポリマーや、プロピレン由来のモノマー単位を50モル%以上含むプロピレン共重合体を挙げることができる。共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。好ましく用いられるプロピレン共重合体の例としては、エチレンまたは炭素原子数4〜10のα−オレフィンとプロピレンとの共重合体を挙げることができる。炭素原子数4〜10のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセンおよび1−オクテンが挙げられる。プロピレン共重合体中のプロピレン以外のモノマー単位の含有量は、エチレンについては15モル%以下、炭素原子数4〜10のα−オレフィンについては30モル%以下であることが好ましい。プロピレン樹脂は1種類でもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、長鎖分岐プロピレン樹脂や重量平均分子量が1×105以上の高分子量プロピレン系樹脂を、発泡層を構成する熱可塑性樹脂の50質量%以上用いることにより、微細な気泡を有するプロピレン樹脂発泡シートを得ることができる。さらにこのようなプロピレン樹脂の中でも、シートリサイクル時にゲルを生じにくいことから非架橋のプロピレン樹脂が好ましく使用される。
【0021】
第一の発泡シート及び第二の発泡シートは、押出発泡法、ビーズ型発泡法、電子線架橋や化学架橋発泡法等の方法を用いて製造することが可能であるが、生産性やリサイクル性の観点から押出発泡法を用いて製造することが好ましい。第一の発泡シートの発泡倍率は、発泡前のシートの厚みを基準として、1.2倍から5.0倍であることが好ましく、第二の発泡シートの発泡倍率は、10倍から30倍であることが好ましい。このような発泡倍率の発泡シートを用いることにより基材の剛性、中間層のクッション性を両立することができる。
また、第一の発泡シート及び第二の発泡シートの厚みは、第一の発泡層の厚みが、1.1mmから6.0mmであることが好ましく、第二の発泡層の厚みは1.1mmから3.0mmであることが好ましい。
【0022】
また、第一の発泡シート及び第二の発泡シートを製造する際に使用される発泡剤は、いわゆる化学発泡剤および物理発泡剤のいずれでもよく、これらを併用してもよい。化学発泡剤としては、例えば分解されて窒素ガスを発生する熱分解型発泡剤(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等)、分解されて炭酸ガスを発生する熱分解型無機発泡剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等)等の熱分解型発泡性化合物が挙げられる。物理発泡剤としては、具体的にはプロパン、ブタン、窒素、水蒸気、炭酸ガス等が挙げられる。このうち水蒸気や炭酸ガスを用いることがより好ましい。
【0023】
発泡剤の添加量は、用いる発泡剤や樹脂の種類に応じて適宜選択すればよく、原料の樹脂100質量部に対して0.5質量部から20質量部であることが好ましい。
なお、第一の発泡シート及び第二の発泡シートの原料樹脂は、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、フィラー、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、剥離剤、流動性付与剤、滑剤等が挙げられる。フィラーとしては、具体的にはガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレー、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の無機粒子等が挙げられる。
【0024】
表皮層を形成する非発泡シートは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、セルロース繊維等を原料として用いる。熱可塑性樹脂としては、エチレン樹脂、プロピレン樹脂、等のオレフィン樹脂;塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。セルロース繊維としては、綿、麻、竹等が挙げられる。このうち質感等の観点から熱可塑性エラストマーであることが好ましい。これら表皮層にはシボなどの凹凸模様、印刷や染色が施されていてもよく、単層構成であっても多層構成であってもよく、ソフト感を付与する為にクッション層を設けた表皮層を用いてもよい。
非発泡シートは、原料樹脂を混練した後に押出機を用いて押出成形することにより得ることができる。得られる非発泡シートの厚みは0.1mmから1.0mmであることが好ましい。
【0025】
第一の発泡シート、第二の発泡シート、及び非発泡シートはドライラミネーション、サンドラミネーション、熱ロール貼合、熱風貼合等の方法により貼合して積層体とすることが好ましい。
【0026】
以下、本発明に係る成形体の製造方法の好適な実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態では、図1−(1)に記載されているように、基材層11としてポリプロピレン発泡シートが、中間層12としてポリプロピレン発泡シートが、表皮層13としてポリプロピレンエラストマーシートが順次積層されている積層体を使用する。そして、この積層体の表皮層側を真空吸引しながらプレス成形し、絞り形状部を有する賦形体に賦形する(賦形工程)。なお、賦形工程では真空吸引用の吸引孔を有する雌雄一対の成形型を用いる。
図1−(1)は、加熱工程の様子を示した図である。図1−(1)で示すように賦形体1は、賦形工程で使用した成形型の雌型31のキャビティ面に表皮層13側の面が対向するようにして配置される。そしてこの賦形体1の両端を把持具4により固定し、これらを加熱手段2で加熱する。本実施形態では加熱手段2として遠赤外線ヒーターを用いる。本実施形態における加熱温度は、370℃である。
【0027】
図1−(2)は、型締工程の様子を示した図である。雌型31の上に雄型32を移動させ、型締めを行う。このとき賦形体1の基材層11は、これと対抗するキャビティ面310に直接接しないようになっている。雌型31のキャビティ面310と雄型32のキャビティ面310との距離hは、成形体における基材層の厚みが所望の基材厚みとなる距離に適宜設定する。
型締めは成形型3の雄型32を閉じることで行なわれる。
【0028】
図1−(3)は、減圧工程の様子を示した図である。キャビティ内の減圧は成形型3の両脇に設けられている真空ポンプ(図示せず)を用いて行う。減圧は型締めと同時若しくは型締め後10秒以内の任意の時点で開始する。キャビティ内が減圧されることにより、賦形体1の第一の発泡シート及び第二の発泡シートが膨張(二次発泡)する。このとき基材層11を形成する第一の発泡シートは、加熱工程で表皮層13を構成する第二の発泡シートよりも高い温度に加熱されているため、第二の発泡シートよりも高い倍率で膨張する。
二次発泡の際の発泡倍率は、第一の発泡シートが1.1倍から5.0倍であり、第二の発泡シートが1.0倍から5.0倍である。
【0029】
図1−(4)は、冷却工程を経た後の賦形体の様子を示した図である。図1−(3)において真空ポンプとの接合弁(図示せず)を閉め、パージ弁(図示せず)を開くことで、キャビティ内を常圧にした後、成形型を開いて成形体5となった積層体を取り出す。このようにして得られた成形体は自動車の内装材等に使用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
(積層体)
表皮層として厚さ0.5mmのオレフィン系熱可塑性エラストマーシートを用い、中間層として発泡倍率20倍、厚さ3mmのポリオレフィン系発泡シートを用い、基材層として発泡倍率3倍、厚さ3mmのポリプロピレン発泡シート(住化プラステック株式会社製 商品名スミセラー発泡ポリプロピレンシート)を用いた。
なお、表皮層と中間層は予め熱ロール貼合されているシート(東レ株式会社製 商品名トーレペフ)を用い、このシートと基材層を熱風で貼合し、積層体として用いた。このときの基材層の厚さを計測し、表1に記載の「賦形工程前の基材層の厚み(mm)」とした。
【0031】
(成形体の製造)
上記積層体を、真空成形機(株式会社佐藤鉄工所製、VAIM0301)を用いて予めドアトリム形状の賦形体を製造した。このときの成形型は図1−(2)に記載されるような雌雄一対のアルミ製の成形型であって、ドアトリム形状に賦形可能であり、雌型雄型の両方のキャビティ面に真空吸引用の真空孔を有するものを用いた。また、成形時の金型の温度は40℃に調整した。
次いで雌型キャビティ面と雄型キャビティ面の間の距離を5.5mmにし、遠赤外線ヒーターを用いて積層体の基材層側の表面温度が204℃、表皮材側の表面温度が207℃となるように加熱し、型締を行った。次いで、真空ポンプを用いて雌型の真空孔からキャビティ内の減圧を行った。このときの真空度は−0.009MPaであった。真空吸引を停止して金型を開き、ドアトリム形状に賦形された賦形体を取り出した。
【0032】
その後成形型を開き、図1−(2)に記載されているように、遠赤外線ヒーターを用いて賦形体の基材層側の表面温度が180℃となるように加熱させた後、雌型キャビティ面と雄型キャビティ面の間の距離が9mmになるように設定して型締めを行い、両金型から真空度−0.09MPaで真空吸引を行った。
その後、図1−(3)に示すように、成形型を密閉し、成形型に接続されている真空ポンプとの接合弁を開けて、キャビティ内を減圧することにより、賦形体を膨張させて冷却固化させた。得られた成形体の基材層の厚みを「基材層最終厚み(mm)」とし、クッション性及び絞り形状部の外観を評価した。その評価結果を表1に示す。
【0033】
〔比較例1〕
実施例と同じ成形機、成形型を用いた。成形型の温度を40℃に調整し、雌型キャビティ面と雄型キャビティ面の間の距離を5.5mmにし、積層体を、遠赤外線ヒーターを用いて積層体の表皮層側の表面温度が207℃、基材層側の表面温度が204℃となるように加熱し、雌型の真空孔からキャビティ内の減圧を行いながら、型締を行った。このときの真空度は−0.09MPaであった。真空吸引を停止して金型を開き、ドアトリム形状に賦形された成形体を取り出した。得られた成形体の基材層の厚み、クッション性及び絞り形状部の外観を評価した。その評価結果を表1に示す。
【0034】
〔比較例2〕
実施例と同じ成形機、金型を用いた。成形型の温度を40℃に調整し、雌型キャビティ面と雄型キャビティ面との間の距離を9mmにした。遠赤外線ヒーターを用いて積層体の表皮層側の表面温度が207℃、基材層側の表面温度が204℃となるように加熱し、型締めを行った。型締め後、雌型と雄型の両方の真空孔から−0.09MPaの真空度で真空吸引を開始してキャビティ内の減圧を行った。真空吸引を停止して金型を開き、ドアトリム形状に賦形された成形体を取り出した。得られた成形体の基材層の厚み、クッション性及び絞り形状部の外観を評価した。その評価結果を表1に示す。
【0035】
成形体の評価は以下のようにして行った。
(基材層の厚み)
基材層の厚みは積層体及び成形体の中央部を切断し、ノギスを用いて測定した。
(絞り形状部外観評価)
評価は目視で行った。外観不良が認められなければ○判定、外観不良が認められれば×判定とした。
(クッション性評価)
成形体を50mm角に切り取り、オートグラフ(株式会社島津製作所製、AGS−500D)の平坦なステージ上に設置した。圧縮冶具(φ11.85mm)でサンプルの表皮層側から4kgfの荷重を10秒間加え、120秒後に表皮の形状が回復しているか目視で判断した。形状が回復していれば○判定、形状が回復しなければ×判定とした。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例では、基材層の厚みが厚く、クッション性が高く、絞り形状部外観不良のない成形体が得られた。比較例1では、クッション性が高く、絞り形状部外観不良はないが、実施例と比較すると、基材層の厚みが薄い成形体が得られた。比較例2では、基材層の厚みは厚いが、クッション性が低く、絞り形状部外観不良が発生した成形体が得られた。
【符号の説明】
【0038】
1 賦形体
11 基材層
12 中間層
13 表皮層
2 加熱手段
3 成形型
31 雌型
32 雄型
310 キャビティ面
4 把持具
5 成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の発泡シートからなる基材層と、この基材層に隣接して設けられた第二の発泡シートからなる中間層と、この中間層の基材層側の面とは反対側の面に隣接して設けられた非発泡シートからなる表皮層と、を有する積層体からなる成形体の製造方法であって、
前記積層体を所定の形状に賦形して賦形体を製造する賦形工程と、
前記賦形体の基材層側の面を、表皮層側の面の表面温度よりも高い温度となるよう加熱する加熱工程と、
密閉可能な成形型のキャビティ内に、加熱された賦形体を、この賦形体の少なくとも一方の面が、対向する成形型のキャビティ面に直接接触しないよう配置し、前記成形型を型締する型締工程と、
前記金型キャビティ内の圧力を減少させて前記賦形体を膨張させる減圧工程と、
前記減圧工程を経た賦形体を冷却する冷却工程と、
を有する成形体の製造方法。
【請求項2】
前記賦形工程は、プレス成形法及び/又は真空成形法を用いて行われる工程である請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記減圧工程は、前記賦形体の少なくとも一方の面が、前記金型キャビティ面に接触するまで前記賦形体を膨張させる工程である請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記賦形工程は、前記積層体を絞り形状部を有する形状に賦形する工程である請求項1から3いずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程は、前記賦形体を前記賦形工程で用いた成形型で支持しながら行われる工程である請求項1から4いずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記冷却工程は、前記キャビティ内の圧力を減少させながら冷却を行う工程である請求項請求項1から5いずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
前記第一の発泡シート及び前記第二の発泡シートは、オレフィン樹脂からなるシートである請求項1から6いずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
前記非発泡シートは、熱可塑性エラストマー樹脂からなるシートである請求項1から7いずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8いずれかに記載の方法により製造される成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−131525(P2011−131525A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294379(P2009−294379)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(597075823)住化プラステック株式会社 (37)
【Fターム(参考)】