説明

成形装置及び成形方法

【課題】 熱プレス成形工程において成形素材の状態を精度よく判定することを課題とする。
【解決手段】 加熱した成形型24,28で成形素材34を加圧する。超音波発振/受信装置40は、成形型28に超音波を発振し、成形型28の表面で反射されて戻ってきた超音波反射エコーを受信する。制御部32は、超音波発振/受信装置40から供給される、超音波反射エコーの強度を表す信号に基づいて、成形型内における成形素材34の状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形素材を熱加圧成形する成形技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に組み込まれる光学部品には、薄い透明なシート材の表面に加工を施した部品がある。例えば、携帯電話機の液晶表示装置に用いられる導光板や液晶表示装置のバックライト装置に用いられる光学シートなどは、ポリカーボネートやオレフィン樹脂等の透明な樹脂シートの表面を所望の形状に成形して製造される。このような光学部品は非常に薄くて樹脂射出成形で製造することが難しいため、ホットエンボス成形法などの熱プレス成形法を用いて製造することが多い。
【0003】
熱プレス成形装置では、成形素材として薄い樹脂シートを加熱した金型で挟み込んで軟化させながら加圧することで、樹脂シートの表面に金型表面の形状を転写する。金型が加熱されているため、樹脂シートの表面部分で金型に近い部分が溶融状態となり、樹脂シートの表面部分を容易に金型表面の形状に成形することができる。
【0004】
従来の熱プレス成形装置では、型閉じ動作の制御は位置−速度制御により行われることが多い。すなわち、金型が所定の位置まで移動した時点で成形素材に接触したと判断し、それから所定の距離だけ金型を押し込んでプレス成形を行う。この場合、成形素材が金型に接触してその表面部分が溶融状態になったか否かは判定しておらず、成形素材に金型が接触してから所定の時間が経過した時点で溶融状態になったものとしてプレス加工に移行する。
【0005】
また、一般的に位置−速度制御では成形素材に金型が接触したという判定も行わないが、成形素材への接触により金型に反力が加わったことを検知して、成形素材に金型が接触したと判定することもある。反力を検出するには、金型の移動機構に設けられたロードセルを用いることができる。あるいは、金型を駆動するためのモータの駆動電流変化から、反力が加わったことを検出することができる。
【0006】
しかし、このような反力の検出による接触の判定は精度に欠ける。例えば、金型の接触により樹脂シートが溶融して液体状態になるので、反力が生じ難いことがある。このような場合、反力が検出されないまま(接触と判定されないまま)金型が接触位置を越えて押し込まれてしまうおそれがある。
【0007】
また、位置−速度制御では、プレス加工に移行した後、金型表面形状の転写が完了したか否かの判定は行われず、金型を所定の位置まで押し込んだことで転写が完了したものと推定している。金型表面形状の転写が完了したか否かの判定が行われないのは、転写形状が微細であり且つ金型に隠れて見えないため、転写状況を確認する手段が無かったためである。
【0008】
さらに、プレス工程後の型開き工程(離型工程)を開始するタイミングは、プレス工程が終了してから金型を閉じたままにして冷却し、所定の時間が経過した時点としている。すなわち、樹脂シートの溶融部分が固化したか否かを判定するわけではなく、樹脂シートの溶融部分が固化するであろう時間の経過を待ってから型開き(離型工程)を開始している。
【0009】
上述のように、従来の熱プレス成形装置では、成形素材の溶融状態や固化状態を判定することができず、金型の接触、プレス工程、型開き工程(離型工程)を精度よく行うことができなかった。
【0010】
ここで、金型内での溶融物の固化溶融状態を超音波を用いて検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術によれば、射出成形において金型内に射出された材料(金属や樹脂)の固化状態を、金型内の材料を透過してきた超音波の到達時間に基づいて判断する。すなわち、液体状態と固体状態では超音波の伝播速度が異なることを利用して固化を判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−74499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献1に開示された技術は、射出成形における材料の固化状態を検出する技術であって、熱プレス成形にそのまま適用することはできない。例えば、熱プレス成形ではまず金型が成形素材に接触したことを検出すべきであるが、射出成形ではそのような金型と成形素材の接触は無い。また、熱プレス成形では成形素材が固体状態から溶融状態となったことを検出すべきであるが、射出成形では最初から溶融状態の材料が金型内に充填されるので、固体状態から溶融状態への変化を検出する必要はない。
【0013】
また、特許文献1に開示された技術では、材料の一点における超音波の透過を利用しているが、金型内の材料全体の状態を検出しているわけではなく、金型内の位置により材料の状態変化にはばらつきがある。例えば、金型の中央部分と外周部分とでは冷却速度が異なることがあり、冷却速度が速い部分では固化状態となっていても、冷却速度の遅い部分ではまだ溶融状態となっていることがある。熱プレス成形によりシート状の成形素材を成形するような場合は、特にシート状の成形素材全体で溶融状態又は固化状態が異なることが多い。
【0014】
したがって、特許文献1で提案されているような材料のある位置において透過する超音波を利用して材料の状態を検出する方法は、そのまま熱プレス成形に適用することができない。
【0015】
そこで、熱プレス成形工程において成形素材の状態を精度よく検出することのできる技術の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
成形素材を加圧する成形型と、成形型を加熱する加熱部と、成形型に超音波を発振、成形型の表面で反射されて戻ってきた超音波反射エコーを受信する超音波発振/受信部と、超音波発振/受信部から供給される、超音波反射エコーの強度を表す信号に基づいて、成形型内における成形素材の状態を判定する制御部とを有する成形装置が提供される。
【0017】
また、成形型を加熱し、加熱した前記成形型により成形素材を加圧し、成形型に超音波を発振し、成形型の表面で反射されて戻ってきた超音波反射エコーを受信し、受信した超音波反射エコーの強度に基づいて、成形型内における成形素材の状態を判定する成形方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
上述の成形装置及び成形方法によれば、超音波反射エコー像で超音波反射エコーの強度を把握することで、型タッチ及び成形型内での成形素材の状態を精度よく判定することができる。この判定結果に基づいて成形工程を進めることで、成形工程時間を短縮することができ、且つ成形不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】熱プレス成形装置の全体を示す簡略構成図である
【図2】熱プレス成形工程中の成形素材の状態と超音波反射エコーの変化を説明するための図である。
【図3】一実施形態による成形装置の一部を示す簡略図である。
【図4】上成形型が成形素材に接触したことを判定する際の超音波反射エコー像を示す図である。
【図5】電磁誘導加熱コイルで下成形型を加熱する構造の図である。
【図6】一実施形態による熱プレス成形装置により行われる熱プレス成形工程のフローチャートである。
【図7】熱プレス成形中における、成形型と成形素材の温度、型位置、及び転写内圧を示すグラフである。
【図8】型タッチの検出を説明するための図である。
【図9】型タッチの検出を説明するための図である。
【図10】充填完了の判定を説明するための図である。
【図11】充填完了の判定を説明するための図である。
【図12】固化完了の判定を説明するための図である。
【図13】固化完了の判定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は成形装置の全体を示す簡略構成図である。図1に示す成形装置はいわゆる熱プレス成形装置10であり、プラスチックやガラスなどの成形素材の表面に微細な形状を転写して成形するための装置である。
【0022】
熱プレス成形装置10は、下固定ベース12と上固定ベース14とを有する。下固定ベース12と上固定ベース14とは、複数のタイバー16により所定の間隔をおいて接続される。下固定ベース12にプレス機構18が設けられる。プレス機構18は既知の往復移動機構であり、例えば、油圧シリンダや電動アクチュエータにより駆動されるトグルリンク機構が用いられる。
【0023】
プレス機構18により可動プラテン20がタイバー16に沿って移動可能に取り付けられる。固定プラテン22は上固定ベース14に取り付けられる。したがって、プレス機構18を駆動することで、可動プラテン20を固定プラテン22に近づけたり固定プラテン22から遠ざけたりすることができる。
【0024】
上成形型24はヒータプレート26を介して固定プラテン22に取り付けられる。したがって、ヒータプレート26により上成形型24を加熱することができる。一方、下成形型28はヒータプレート30を介して可動プラテン20に取り付けられる。したがって、ヒータプレート30により下成形型28を加熱することができる。上成形型24と下成形型28とで成形型(金型)が形成される。可動プラテン20をプレス機構18により移動することで、下成形型28を上成形型24に向けて移動し(型閉じ)、あるいは下成形型28を上成形型24から遠ざかるように移動することができる(型開き)。
【0025】
熱プレス成形装置10には、装置の動作を制御するための制御部32が設けられている。上述のヒータプレート26,30への通電は制御部32により制御される。また、プレス機構18の駆動も制御部32により制御される。制御部32は画面表示装置32aを有しており、熱プレス成形装置10への入力情報や、成形型の位置、温度等を画面表示装置32aに表示することができる。
【0026】
成形素材34の成形は以下のようにして行われる。
【0027】
まず、上成形型24と下成形型28より構成される成形型が開いた状態で、ヒータプレート26,30に通電して成形上型24と成形下型28を加熱する。成形上型24と成形下型28の温度が所定の加熱温度Thとなったら成形素材34を成形上型24と成形下型28の間に配置する。ここで、所定の加熱温度Thとは、例えば成形素材34のガラス転移温度Tgより高い温度である(Th=Tg+α)。
【0028】
成形素材34を成形上型24と成形下型28の間に配置したら、プレス機構18を駆動して型閉じを行う。すなわち、可動プラテン20を固定プラテン22に向けて移動することで、下成形型28と上成形型24との間に成形素材34を挟む。成形素材34が下成形型28と上成形型24との間に挟まれると、成形素材34の表面は下成形型28と上成形型24により加熱され溶融状態となる。
【0029】
そこで、下成形型28をさらに上成形型24に向けて移動し成形素材34を加圧する。この工程がプレス変形工程である。プレス変形工程では、成形素材34の表面付近の溶融状態になった部分が上成形型24及び下成形型28の表面に押し付けられる。成形素材34の表面付近の溶融状態になった部分は、上成形型24及び下成形型28の表面に形成された凹凸形状に充填される。
【0030】
プレス変形工程が終了したら、ヒータプレート26,30への通電が停止され、上成形型24及び下成形型28は加圧を保持状態に維持される。この工程が冷却工程である。冷却工程では、上成形型24及び下成形型28の加熱が停止されるので、上成形型24及び下成形型28の温度が下降し、成形素材34のガラス転移温度Tgより低い冷却温度Tcとなる(Tc=Tg−β)。これに伴い成形素材34の表面温度もガラス転移温度Tgより低くなり、上成形型24及び下成形型28の表面に形成された凹凸形状に充填された溶融した成形素材34は固化する。これにより、上成形型24及び下成形型28の表面の凹凸形状が成形素材34の表面に転写される。
【0031】
冷却工程が終了したら、プレス機構18を駆動して型開きを行い、成形された成形素材34を離型して成形型から取り出し、熱プレス成形工程を終了する。
【0032】
以上のような熱プレス成形において、成形工程を開始する際に、成形型を急速に閉じて上成形型24が成形素材34に接触すると、成形素材34の反力が急激に発生し、上成形型24が破損するおそれがある。そこで、型閉じ速度を落としてゆっくりと接触するように制御する。このため、型閉じ工程に時間がかかり成形工程時間が長くなってしまう。そこで、接触を検出するには成形素材34の反力を検出すればよいが、上成形型24が成形素材34にゆっくりと接触するため、接触中に成形素材34の表面が溶融して液体状態となり、反力がほとんど発生しなくなってしまうおそれがある。この場合、成形素材34の反力を検出できず、したがって、接触の検出ができないこととなってしまう。
【0033】
また、成形型を閉じてプレス変形工程において、成形型の表面の凹凸に溶融した成形素材34が十分に充填されたか否かの判断を行うことができない。すなわち、成形型が閉じているので実際の転写状況を把握することができず、転写の完了を判定できないので、必要以上に成形型を押圧したり、必要以上にプレス成形時間を長く設定してしまうおそれがある。
【0034】
さらに、プレス成形工程の後の冷却工程では、溶融して成形型の表面の凹凸に充填された成形素材34の固化状況を把握することができない。このため、安全をみて冷却工程を過大に長く設定するおそれがあり、この場合、熱プレス成形サイクル(一つの成形素材34の成形に要する時間)が長くなってしまう。
【0035】
そこで、一実施形態では、熱プレス成形工程中に成形素材34に超音波を照射し、その超音波反射エコーに基づいて、成形素材34の溶融状態、固化状態を検出する。
【0036】
図2は熱プレス成形工程中の成形素材34の状態と超音波反射エコーの変化を説明するための図である。成形型に挟まれた成形素材34に超音波を照射するために、反射型の超音波発振/受信装置として超音波発振/受信アレイ40が成形型に取り付けられる。図2に示す例では、上成形型24に超音波発振/受信アレイ40が取り付けられている。超音波発振/受信アレイ40は、超音波発振素子と超音波受信素子が対になった超音波発振/受信素子が多数個2次元マトリクス状に配置されたものである。超音波発振/受信素子の各々は、超音波を発振しその反射エコーを受信することができる。反射エコーを受信した各超音波発振/受信素子は、反射エコーの強度を表す信号を出力する。各超音波発振/受信素子は、必要であれば、反射エコーの位相を表す信号も出力することとしてもよい。なお、成形素材34として樹脂シートが用いられているものとする。
【0037】
まず、成形素材34に上成形型24が接触していない場合に発振した超音波と受信した超音波について説明する。
【0038】
成形素材34に上成形型24が接触していない場合は、図2の左側に示すように、上成形型24の表面と成形素材34の表面との間に空隙が存在する。このような状態では、超音波発振/受信アレイ40から発振した超音波Uは、上成形型24の表面で全反射し、ほぼ100%が超音波反射エコーE1となって超音波発振/受信アレイ40に戻ることとなる。上成形型24の表面で超音波Uが全反射する際、超音波反射エコーE1の位相は反転する。したがって、超音波発振/受信アレイ40から発振した超音波Uに対して、超音波発振/受信アレイ40で受信する超音波反射エコーE1は、発振した超音波Uと強度がほぼ同じで位相が反転した超音波となる。
【0039】
次に、成形素材34に上成形型24が接触して密着した時点での、発振した超音波と受信した超音波について説明する。
【0040】
成形素材34に上成形型24が接触した直後は、図2の中央に示すように、上成形型24の表面は、溶融する前の固体である成形素材34の表面に接触している。このような状態では、超音波発振/受信アレイ40から発振した超音波Uは、上成形型24の表面で大部分が反射するが、そのまま直進して成形素材34に入射する成分もある。上成形型24と成形素材34との界面で反射された超音波は位相は反転せず、同位相のまま超音波反射エコーE2となって超音波発振/受信アレイ40に戻る。
【0041】
上成形型24と成形素材34との界面で反射されずに成形素材34に入射した超音波は、成形素材34中を伝播して成形素材34の下面と下成形型28との界面に到達し、そこで反射されて超音波反射エコーE3となって再び成形素材34中を伝播する。そして超音波反射エコーE3は、成形素材34の上面と上成形型24との界面に戻り、そのまま直進して上成形型24に入射し、超音波発振/受信アレイ40に戻る。
【0042】
したがって、超音波発振/受信アレイ40から発振した超音波Uに対して、超音波発振/受信アレイ40で受信する超音波反射エコーは二つとなる。一つは発振した超音波Uよりは弱いが強度がある程度あり、発振した超音波Uと同位相の超音波反射エコーE2であり、もう一つは超音波反射エコーE2よりは弱く、発振した超音波Uと同位相の超音波反射エコーE3である。
【0043】
次に、成形素材34に上成形型24が接触した後に成形素材34の表面が溶融した時点での、発振した超音波と受信した超音波について説明する。
【0044】
成形素材34に上成形型24が接触して成形素材34が加熱されると、図2の右側に示すように、成形素材34の表面は溶融し、上成形型24の表面は溶融した液体状の成形素材34に接触した状態となる。このような状態では、超音波発振/受信アレイ40から発振した超音波Uは、上成形型24の表面で一部が反射されるが、大部分がそのまま直進して成形素材34に入射する。上成形型24と成形素材34との界面で反射された超音波Uの一部は、位相は反転せず、同位相のまま超音波反射エコーE4となって超音波発振/受信アレイ40に戻る。
【0045】
上成形型24と成形素材34との界面で反射されずに成形素材34に入射した超音波は、成形素材34中を伝播して成形素材34の下面と下成形型28との間の界面に到達し、そこで反射されて超音波反射エコーE5となって再び成形素材34中を伝播する。そして超音波反射エコーE5は、成形素材34の上面と上成形型24との間の界面に戻り、そのまま直進して上成形型24に入射し、超音波発振/受信アレイ40に戻る。
【0046】
したがって、超音波発振/受信アレイ40から発振した超音波Uに対して、超音波発振/受信アレイ40で受信する超音波反射エコーは二つとなる。一つは発振した超音波Uよりはるかに弱く、発振した超音波Uと同位相の超音波反射エコーE4であり、もう一つは超音波反射エコーE4よりは強く、発振した超音波Uと同位相の超音波反射エコーE5である。
【0047】
以上のように、成形型の成形素材34への接触状態や成形素材34の溶融状態及び固化状態によって超音波反射エコーの強度や位相が異なるため、超音波反射エコーの強度や位相を検出することで、成形素材34の状態を把握することができる。
【0048】
次に、一実施形態による成形装置の一例として熱プレス成形装置について図3を参照しながら説明する。図3は、一実施形態による成形装置の一部(プラテン及び成形型)を示す簡略図である。
【0049】
本実施形態による熱プレス成形装置は、図1に示す熱プレス成形装置10と基本構造は同じである。ただし、図3に示すように、可動プラテン20を上側とし、固定プラテン22を下側としている。したがって、プレス機構18は上側の可動プラテン20と上固定ベース14との間に設けられ、可動プラテン20が下側の固定プラテン22に対して上下することとなる。
【0050】
上成形型24は、ヒータプレート26を介して可動プラテン20に取り付けられる。ヒータプレート26に通電して加熱することにより、上成形型24を加熱することができる。
【0051】
下成形型28はヒータプレート30の代わりに超音波発振/受信アレイ40を介して固定プラテン22に取り付けられる。下成形型28の内部にはカートリッジヒータ42が組み込まれ、カートリッジヒータ42に通電して加熱することで、下成形型28を加熱することができる。
【0052】
以上のような構成の熱プレス成形装置において、熱プレス成形工程中に超音波発振/受信アレイ40から超音波を成形素材34のほぼ全面に向けて照射し、その超音波反射エコーを検出して超音波反射エコー像を作成する。超音波反射エコー像により、超音波反射エコーの強度及び必要であれば位相の反転有無を把握することで、成形素材34の状態を判定することができる。
【0053】
なお、図3に示すように下成形型28の内部にカートリッジヒータ42を設けた場合、超音波発振/受信アレイ40と下成形型28の表面との間にカートリッジヒータ42が延在することとなる。この場合、超音波発振/受信アレイ40から超音波を発振し、下成形型28の表面からの超音波反射エコーを受信すると、カートリッジヒータ42が延在する部分では超音波がカートリッジヒータ42により反射されて超音波反射エコーとなる。したがって、超音波反射エコー像内にカートリッジヒータ42が写ってしまい、その部分では成形型の表面からの超音波反射エコーの状態を判定できない。
【0054】
超音波反射エコー像内にカートリッジヒータ42が写ってしまう例について、図4を参照しながら説明する。図4は上成形型24を下降させて型閉じを行って下成形型28が成形素材34に接触したこと(型タッチと称する)を判定する際の超音波反射エコー像を示す図である。
【0055】
制御部32は、超音波発振/受信アレイ40から超音波を発振させ、下成形型28の表面からの超音波反射エコーの強度と位相を表す信号を超音波発振/受信アレイ40から受け取る。制御部32は超音波反射エコーの強度と位相及び発振した超音波の強度に基づいて超音波反射エコー像を作成し、画面表示装置32aに表示する。この超音波反射エコー像には、超音波反射エコーの強さと位相反転の有無がわかるように画像処理が施されている。この画像処理も制御部32が行なう。このような超音波反射エコー像から型タッチを判定する方法については後述する。
【0056】
図4に示す超音波反射エコー像において上下に延在する2本の太い線42aが現れている。これがカートリッジヒータ42の像であり、この部分は下成形型28の表面からの超音波反射エコーによる像ではないので、型タッチを判定する際の判定画像とはならない。すなわち、型タッチ判定の基礎となる超音波反射エコー像の面積がカートリッジヒータ42の像の分だけ小さくなってしまう。カートリッジヒータ42の像の面積が超音波反射エコー像の全体に対して相対的に小さければ型タッチ判定への影響は少ない。しかし、カートリッジヒータ42の像の影響を無くしたい場合は、カートリッジヒータ42を下成形型28に埋め込む代わりに、外部から下成形型28を加熱することとしてもよい。
【0057】
図5は電磁誘導加熱コイルで下成形型を加熱する構造の図である。下成形型28にはカートリッジヒータは組み込まれていない。その代わり、成形型が開いた状態で上成形型24と下成形型28の間に電磁誘導加熱コイル44を配置し、電磁誘導加熱により下成形型28を加熱する。下成形型28の加熱が終了したら電磁誘導加熱コイル44を取り去り、代わりに成形素材34を上成形型24と下成形型28の間に挿入し、型閉じを行って熱プレス成形を行う。下成形型28を外部から加熱するための加熱方法は、電磁誘導加熱に限ることなく、電熱ヒータ、赤外線ヒータ、加熱ランプ等を用いた他の加熱方法で加熱することもできる。また、下成形型28だけではなく、上成形型24も外部から加熱することとしてもよい。
【0058】
次に、本実施形態による熱プレス成形装置により行われる熱プレス成形工程について、図6を参照しながら説明する。図6は本実施形態による熱プレス成形装置により行われる熱プレス成形工程のフローチャートである。この熱プレス成形工程は、図5に示す電磁誘導加熱コイル44で下成形型28を加熱する熱プレス成形装置により行われるものとして説明する。また、図7は熱プレス成形中における、成形型と成形素材の温度、上成形型の位置(型位置)、及び成形素材34の転写部分の圧力(転写内圧)を示すグラフである。図7に示す括弧付き数字は、図6において同じ括弧付き数字が付されたステップに相当する。
【0059】
熱プレス成形が開始されると、まず、ステップS1において、成形型を加熱して上成形型24と下成形型28の表面温度Tmsを成形素材のガラス転移温度Tg以上とする(Tms=Tg+α)。ここで、αを例えば50℃〜100℃とすることで、成形型が成形素材34に接触して熱が成形素材34に移行しても、直ちに型表面温度がガラス転移温度Tg以下とならないようにする。
【0060】
次に、ステップS2において、型表面温度を平均化するために、成形型を開いたまま所定の短い時間だけ保持する。所定の短い時間が経過したら、ステップS3に移り、型閉じを開始する。
【0061】
続いて、ステップS4において、型タッチしたか否かを判定する。型タッチの判定は、以下のようにして行う。まず、上成形型24が型タッチ位置に近づいたら、型閉じ速度を落として型閉じを進めながら、図8に示すように超音波発振/受信アレイ40から超音波を下成形型28を通して成形素材34に向けて照射し、超音波反射エコー像を作成する。そして、超音波反射エコー像を連続してモニタし、型閉じの進行に伴う超音波反射エコー像における変化を把握する。
【0062】
超音波反射エコー像は、超音波発振/受信アレイ40の各超音波素子から出力される、発振した超音波の強度を表す信号及び超音波反射エコーの強度と位相を表す信号に基づいて、制御部32により生成される。また、制御部32は、生成した超音波反射エコー像を画像表示装置32aに表示し、且つその表示画像のデータから以下のように型タッチの判定を行う。
【0063】
型タッチの判定では、超音波反射エコー像中に超音波反射エコーが弱い部分が現れたかを確認する。型タッチする前は図9(a)に示すように超音波反射エコー像は、画面全体が強い超音波反射エコーを示す画面となっている。すなわち、型タッチする前は成形素材34は下成形型28に対して加圧されていないため、成形素材34と下成形型28との間に空気の層(すなわち空隙)が存在する。したがって、図2で説明したように、超音波は成形素材34と下成形型28との間の界面で全反射され、位相が反転した強い超音波反射エコーが超音波発振/受信アレイ40に戻ってくる。このときの超音波反射エコーを画像にしたものが図9(a)に示されている。位相が反転した強レベルの超音波反射エコーが戻ってきた部分を画像処理により例えば濃い赤に色付けするようにしておけば、型タッチの前は超音波反射エコー像全体が濃い赤色となる。
【0064】
ここで、超音波反射エコーの強度がどの程度であれば強レベルであると判定するかは、成形型の材質や表面の状態などの条件に基づいて決定される。例えば、超音波発振/受信アレイ40から照射する超音波の強度を100%として、超音波反射エコーの強度が、照射した超音波の強度の100%から80%までの強度であるときに超音波反射エコーを強レベルと判定する。
【0065】
型閉じが進むと、型タッチすることとなるが、本実施形態では下成形型28の中央部分に転写するパターン(微細な凹凸形状)が形成されているので、下成形型28の成形素材34への接触は、転写するパターンが形成されていない外周部分の一部から始まる。下成形型28の一部が成形素材34に接触してある程度押し付けられると、その部分での空気層がなくなり、下成形型28は成形素材34に密着した状態となる。このとき、下成形型28に密着した部分は、下成形型28により加熱されて温度が上昇するが、すぐには溶融温度(ガラス転移点以上の温度)にはならない。したがって、成形素材34が下成形型28に密着した部分の界面は、金属と固体樹脂との界面となる。このような界面での超音波反射エコーは、図2で示すように照射した超音波より弱い中レベルの強度で同位相の超音波反射エコーとなる。
【0066】
同位相で中レベルの超音波反射エコーが戻ってきた部分を画像処理により例えばピンク色に色付けするようにしておけば、成形素材34が下成形型28に密着した部分のみのピンク色に変化する。このときの超音波反射エコー像が図9(b)に示されている。図9(b)において、符号Pで示された領域がピンク色に変化した領域である。
【0067】
型タッチの判定基準としては、例えばピンク色の領域が超音波反射エコー像中に現れた時点を型タッチとみなすこができる。あるいは、ピンク色の領域が超音波反射エコー像全体の例えば30%を越えたら型タッチと判定することとしてもよい。どの程度の領域が密着した(ピンク色になった)ところで型タッチと判定するかは、成形素材34の材質や形状や表面の状態、成形型の材質や形状や表面の状態等の様々な条件を考慮して適宜設定することが好ましい。例えば、本実施形態では、超音波発振/受信アレイ40から照射する超音波の強度を100%として、超音波反射エコーの強度が、照射した超音波の強度の40%から80%までの強度であるときに超音波反射エコーを中レベルと判定する。
【0068】
ステップS4において、型タッチしたと判定されたら、処理はステップS5に進む。ステップS5では、プレス変形工程が開始される。プレス変形工程では、上成形型24の速度をさらに落としながら成形素材34を加圧する。このとき加熱された下成形型28及び上成形型24に密着した成形素材34の表面の温度が上昇し、ガラス転移温度以上となって成形素材34の表面は溶融状態となる。したがって、溶融した成形素材34に上成形型24及び下成形型28の転写パターンが押圧され、溶融した成形素材34は容易に転写パターンに充填される。
【0069】
次に、ステップS6において、成形素材34が転写パターン全体に完全に充填されたか否か(充填完了、あるいは転写完了)が判定される。充填完了あるいは転写完了の判定は、以下のようにして行う。まず、上成形型24と下成形型28との間で成形素材34を加圧しながら、図10に示すように超音波発振/受信アレイ40から超音波を下成形型28を通して成形素材34に向けて照射し、超音波反射エコー像を作成する。そして、超音波反射エコー像を連続してモニタし、加圧の進行に伴う超音波反射エコー像における変化を把握する。
【0070】
超音波反射エコー像は、超音波発振/受信アレイ40の各超音波素子から出力される、発振した超音波の強度を表す信号及び超音波反射エコーの強度と位相を表す信号に基づいて、制御部32により作成される。また、制御部32は、生成した超音波反射エコー像を画像表示装置32aに表示し、且つその表示画像のデータから以下のように充填完了及び転写完了の判定を行う。
【0071】
充填完了あるいは転写完了の判定では、超音波反射エコー像中に超音波反射エコーが強い部分が残っているかを確認する。プレス変形工程を開始すると、溶融した成形素材34が下成形型28の表面に密着する。この部分では図2の右側に示す状態となり、弱レベルの超音波反射エコーが超音波発振/受信アレイ40に戻ってくる。すなわち、個体状態の成形素材34に密着していた部分及び転写パターンの凹部で空気が入っていた部分に液体状態の成形素材34が密着するようになる。このとき、強レベル(空気が有る状態)又は中レベル(固体に密着している状態)の超音波反射エコーは弱レベルの超音波反射エコーに変化する。そこで、超音波反射エコー像中で弱レベルの超音波反射エコーが戻ってきた部分の画像を、例えば白色になるように画像処理を施しておくと、加圧が進むにつれて濃い赤色の領域とピンク色の領域が白色に変わっていく。
【0072】
加圧中の超音波反射エコーを画像にしたものが図11(a)に示されている。図11(a)に示す超音波反射エコーを画像では、大部分の領域が白色になっており、溶融した成形素材34が下成形型28の表面に密着していることが分かる。ただし、符号Aで示す領域は濃い赤色のままであり、符号Sで示す領域はピンク色のままである。
【0073】
符号Aの濃い赤色の領域は、その領域では成形素材34と下成形型28との間にまだ空気が残っており、成形素材34が下成形型28の表面に密着していないこと、すなわち溶融した成形素材34が転写パターンに充填されていないことを示している。また、符号Sのピンク色の領域は、その領域ではまだ成形素材34が溶融しておらず、個体状態の成形素材34が下成形型28の表面に密着していることを示している。
【0074】
図11(a)に示す状態からさらに加圧を進めると、符号Sのピンク色の部分も白色に変化し、図11(b)に示す超音波反射エコー像となる。すなわち、成形素材34が固体状態で残っていた部分も溶融し、液体状態の成形素材34が下成形型28の表面に密着した状態となる。ここで、図11(b)に示す超音波反射エコー像において、符号Aの濃い赤色の領域が残っていることがわかる。この領域では、上述のように成形素材34と下成形型28との間にまだ空気が残っており、成形素材34が下成形型28に密着していない。すなわち、図11(b)に示す超音波反射エコー像は、図10に示すように転写パターンの凹部の中に空気が閉じこめられており、その部分には成形素材34が充填されていないことを示している。
【0075】
充填完了の判断は、超音波反射エコー像中で濃い赤色の領域及びピンク色の領域が全て白色に変化した時点としてもいが、続いて行なわれる内圧保持工程でも充填が進むので、例えば、超音波反射エコー像中で白色の領域が90%となった時点で充填完了と判定してもよい。また、図11(b)に示すように転写パターンの一部に空気が閉じこめられて濃い赤色の領域が残ることがあるため、製品として問題無い程度であれば濃い赤色の領域又はピンク色の領域がある程度残っていても充填完了と判定してもよい。充填完了の判定の基準は、90%に限ることなく、成形条件や製品の特性などに応じて適宜適当な値に設定することが好ましい。
【0076】
ステップS6で充填完了と判定されたら、処理はステップS7に進み、プレス内圧保持工程に移行する。プレス内圧保持工程では、成形型での加圧による成形素材34の内圧を保持して、溶融した成形素材34がさらに転写パターンに充填されるのを待つ。プレス内圧保持工程では、内圧を維持する程度に成形型での加圧を続ける。
【0077】
続いて、ステップS8において、溶融した成形素材34が転写パターンに完全に充填されたか否か(転写完了)が判定される。すなわち、充填完了と判定してからも続けて超音波反射エコー像をモニタし、超音波反射エコー像中で白色の領域が超音波反射エコー像全体の99%以上とならない場合は転写不良と判定し、処理はステップS9に進む。ステップS9では、制御部32が警告を発して転写不良であることを操作者に通知する。転写不良であることが通知されたら、操作者は熱プレス成形装置の運転を停止し、転写不良となった成形素材34を成形型から取り出して、新たに熱プレス成形サイクルを開始すれことができる。あるいは、ステップS9で警告が発せられても、通常のように後述の冷却工程に進んでから離型して転写不良の成形素材34を取り出し、その成形素材34を成形不良品として処理してもよい。
【0078】
一方、ステップS8で所定時間内に超音波反射エコー像中で白色の領域が超音波反射エコー像全体の99%以上となった場合は転写完了と判定し、処理はステップS10に進む。ステップS10では冷却工程が開始される。冷却工程では、成形型の移動を停止してそのままの状態を維持し、成形素材34の溶融した部分が固化するのを待つ。冷却工程が開始されると、続いてステップS11において、成形素材34の溶融した部分が固化したか否か(固化完了)が判定される。固化完了の判定は以下のようにして行なう。
【0079】
まず、上成形型24と下成形型28との間で成形素材34を保持して冷却しながら、図12に示すように超音波発振/受信アレイ40から超音波を下成形型28を通して成形素材34に向けて照射し、超音波反射エコー像を作成する。そして、超音波反射エコー像を連続してモニタし、冷却による成形素材34の固化に伴う超音波反射エコー像における変化を把握する。
【0080】
固化完了の判定では、超音波反射エコーが中レベルの領域がどの程度の割合となっているかを確認する。転写完了の時点では、超音波反射エコー像は大部分が白色となっているが、冷却工程に移ると白色の部分が再びピンク色に変化していく。すなわち、溶融していた成形素材34が冷却されて固化するので、固化した部分では超音波反射エコーの強度が中レベル(図2の超音波反射エコーE2)となり、その領域はピンク色で表示される。
【0081】
ここで、ステップS11では、超音波反射エコー像全体に対して所定の割合の領域が固化したときに、固化完了と判定する。本実施形態では、例えば、ピンク色の領域が超音波反射エコー像全体の30%k〜50%となった時点で固化完了と判定する。この所定の割合は成形素材34が固化した部分の割合であり、型開きを開始したときに成形素材34が容易に離型することができるような割合として設定する。
【0082】
通常、成形素材34の固化は成形型の外周部分(冷却されやすい部分)から始まる。したがって、成形素材34の固化は図13(a)に示すようにその外周部分から始まる。本実施形態では、図13(a)に示すようにピンク色の領域が50%になったら固化完了と判定する。冷却工程をそのまま続けていけば、成形素材34の全体が固化し、超音波反射エコー像は最終的に図13(b)に示すようにピンク色の領域のみとなる。図13(b)に示す状態となるまでには時間がかかるので、本実施形態では、図13(a)に示す状態となった時点で固化完了と判定する。
【0083】
ステップS11で固化完了と判定されたら、処理はステップS12に進む。ステップS12では、成形型を開いて成形素材34を離型し、成形が完了した成形素材34を成形型から取り出す。ここで一回の成形サイクルが終了するが、ステップS13において次の成形があるか否かを判定し、有る場合にはステップS1に戻って次の成形を行なう。連続して成形する場合は、次の成形サイクルを始めるまで型バルク温度を維持しておき、次の成形サイクルを直ちに始められるようにしておくことが好ましい。
【0084】
以上のように、本実施形態では、成形型と成形素材の間の界面からの超音波反射エコーの強度に基づいて成形素材の状態を判定しながら熱プレス成形工程を進めるため、成形工程時間を短縮することができ、且つ成形不良の発生を抑制することができる。また、成形素材が成形型内にある状態においても転写不良を判定することができる。
【0085】
上述の実施形態では、超音波発振/受信装置として超音波発振/受信アレイ40を用い、成形素材34のほぼ全面積に相当する超音波反射エコー像を作成して成形素材の状態を判定しているが、超音波発振/受信装置はこれに限られない。例えば、超音波発振/受信装置として、成形素材34の状態を判定するために基準となる位置を複数の位置として予め定めておき、その位置での超音波反射エコーの強度を検出することで、成形素材34の状態を判定することもできる。複数の基準位置として、例えば、成形素材34の外周に相当する位置と、成形素材34の中央に相当する位置と、それらの位置の中間の位置というように3点を予め定めておくこととしてもよい。この場合、超音波反射エコー像による判定ではなく、上述の3点における超音波反射エコーの強度の値(強度レベル)を用いて直接判定を行なうことができる。
【0086】
また、例えば成形素材34の面積が小さく、一点だけでの判定で成形素材34全体の溶融状態や固化状態を判定することができるような場合は、超音波発振/受信装置は一対の超音波発振素子と超音波受信素子を備えているだけでもよい。すなわち、1点における超音波反射エコーの強度の値(強度レベル)を用いて、超音波反射エコー像を作成せずに成形素材の状態を直接判定することもできる。
【0087】
なお、上述の実施形態では転写パターンが下成形型28及び上成形型24の両方に形成されているが、必ず両方に転写パターンが形成されている必要はなく、下成形型28及び上成形型24いずれか一方に形成されていればよい。例えば、上成形型24のみに転写パターンが形成されている場合は、上成形型24に超音波発振/受信アレイ40を設けることとすればよい。
【0088】
本明細書は以下の事項を開示する。
(付記1)
成形素材を加圧する成形型と、
前記成形型を加熱する加熱部と、
前記成形型に超音波を発振し、前記成形型の表面で反射されて戻ってきた超音波反射エコーを受信する超音波発振/受信部と、
前記超音波発振/受信部から供給される、超音波反射エコーの強度を表す信号に基づいて、前記成形型内における前記成形素材の状態を判定する制御部と
を有する成形装置。
(付記2)
付記1記載の成形装置であって、
前記加熱部は、前記成形型の表面を外部から加熱する外部加熱装置である成形装置。
(付記3)
付記1又は2記載の成形装置であって、
前記超音波発振/受信部は、超音波発振素子と超音波受信素子の対よりなる超音波素子を複数個備える成形装置。
(付記4)
付記3記載の成形装置であって、
前記超音波発振/受信部は前記超音波素子を2次元マトリクス状に配列して形成された超音波発振/受信アレイであり、前記制御部は前記超音波発振/受信アレイから供給される超音波反射エコーの強度を表す信号に基づいて超音波反射エコー像を作成する成形装置。
(付記5)
付記4記載の成形装置であって、
前記制御部は、作成した超音波反射エコー像から、型閉じ工程中に前記成形型と前記成形素材との接触を判定する成形装置。
(付記6)
付記4又は5記載の成形装置であって、
前記制御部は、作成した超音波反射エコー像から、熱加圧成形工程中に前記成形素材の表面の溶融状態を判定する成形装置。
(付記7)
付記4乃至6のうちいずれか一項記載の成形装置であって、
前記制御部は、作成した超音波反射エコー像から、冷却工程に移行する前に前記成形素材の転写不良を判定する成形装置。
(付記8)
付記4乃至6のうちいずれか一項記載の成形装置であって、
前記制御部は、作成した超音波反射エコー像から、冷却工程中に前記成形素材の表面の固化状態を判定する成形装置。
(付記9)
成形型を加熱し、
加熱した前記成形型により成形素材を加圧し、
前記成形型に超音波を発振し、前記成形型の表面で反射されて戻ってきた超音波反射エコーを受信し、
受信した超音波反射エコーの強度に基づいて、前記成形型内における前記成形素材の状態を判定する
成形方法。
(付記10)
付記9記載の成形方法であって、
複数の位置において超音波を発振して超音波反射エコーを受信し、
複数の位置における超音波反射エコーの強度に基づいて超音波反射エコー像を作成する
成形方法。
(付記11)
付記10記載の成形方法であって、
作成した超音波反射エコー像から、型閉じ工程中に前記成形型と前記成形素材との接触を判定する成形方法。
(付記12)
付記10又は11記載の成形方法であって、
作成した超音波反射エコー像から、熱加圧成形工程中に前記成形素材の表面の溶融状態を判定する成形方法。
(付記13)
付記10乃至12のうちいずれか一項記載の成形方法であって、
作成した超音波反射エコー像から、冷却工程に移行する前に前記成形素材の転写不良を判定する成形方法。
(付記14)
付記10乃至13のうちいずれか一項記載の成形方法であって、
作成した超音波反射エコー像から、冷却工程中に前記成形素材の表面の固化状態を判定する成形方法。
【符号の説明】
【0089】
10 熱プレス成形装置
12 下固定ベース
14 上固定ベース
16 タイバー
18 プレス機構
20 稼働プラテン
22 固定プラテン
24 上成形型
26,30 ヒータプレート
28 下成形型
32 制御部
32a 画面表示装置
34 成形素材
40 超音波発振/受信アレイ
42 カートリッジヒータ
44 電磁誘導加熱コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形素材を加圧する成形型と、
前記成形型を加熱する加熱部と、
前記成形型に超音波を発振し、前記成形型の表面で反射されて戻ってきた超音波反射エコーを受信する超音波発振/受信部と、
前記超音波発振/受信部から供給される、超音波反射エコーの強度を表す信号に基づいて、前記成形型内における前記成形素材の状態を判定する制御部と
を有する成形装置。
【請求項2】
請求項1記載の成形装置であって、
前記加熱部は、前記成形型の表面を外部から加熱する外部加熱装置である成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の成形装置であって、
前記超音波発振/受信部は、超音波発振素子と超音波受信素子の対よりなる超音波素子を複数個備える成形装置。
【請求項4】
請求項3記載の成形装置であって、
前記超音波発振/受信部は前記超音波素子を2次元マトリクス状に配列して形成された超音波発振/受信アレイであり、前記制御部は前記超音波発振/受信アレイから供給される超音波反射エコーの強度を表す信号に基づいて超音波反射エコー像を作成する成形装置。
【請求項5】
成形型を加熱し、
加熱した前記成形型により成形素材を加圧し、
前記成形型に超音波を発振し、前記成形型の表面で反射されて戻ってきた超音波反射エコーを受信し、
受信した超音波反射エコーの強度に基づいて、前記成形型内における前記成形素材の状態を判定する
成形方法。
【請求項6】
請求項5記載の成形方法であって、
複数の位置において超音波を発振して超音波反射エコーを受信し、
複数の位置における超音波反射エコーの強度に基づいて超音波反射エコー像を作成する
成形方法。
【請求項7】
請求項6記載の成形方法であって、
作成した超音波反射エコー像から、型閉じ工程中に前記成形型と前記成形素材との接触を判定する成形方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の成形方法であって、
作成した超音波反射エコー像から、熱加圧成形工程中に前記成形素材の表面の溶融状態を判定する成形方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のうちいずれか一項記載の成形方法であって、
作成した超音波反射エコー像から、冷却工程に移行する前に前記成形素材の転写不良を判定する成形方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のうちいずれか一項記載の成形方法であって、
作成した超音波反射エコー像から、冷却工程中に前記成形素材の表面の固化状態を判定する成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−228225(P2010−228225A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77293(P2009−77293)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】