説明

成膜装置のクリーニング方法および半導体製造装置

【課題】静電気の発生を抑制できる成膜装置のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】成膜装置のクリーニング方法は、成膜装置の周辺を加湿するステップ(S40)と、成膜装置を大気開放するステップ(S60)と、成膜装置の内部の堆積物を除去するステップ(S70)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置のクリーニング方法、および、成膜装置を備える半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、薄膜太陽電池などの半導体装置の製造方法において、基板にシリコン系薄膜が成膜されることがある。この成膜は、たとえばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置によって行なわれる。プラズマCVD装置において成膜処理を行なう際、成膜装置の成膜室(チャンバ)内の基板以外の構成部品や、真空容器内壁、排気配管などに、成膜物が付着する。特にプラズマ放電領域から離れた部分に付着する成膜物は、均一な膜とならずパウダ状となって付着する。たとえば、シリコン系半導体膜を成膜するプラズマCVD装置においては、プロセスガスであるシランがプラズマ放電によって固体化したポリシランなどのシリコン系付着物が、パウダ状となって堆積する。
【0003】
成膜処理を繰り返し行なうことでチャンバ内のポリシランの堆積量が増加すると、チャンバ内のポリシランが微小粉末となり、基板上に載って不良要因となったり、大量のポリシラン粉末にて排気配管が閉塞するなどの悪影響が起きる。その為、プラズマCVD装置の真空容器を定期的に大気開放し、堆積したポリシランを除去するクリーニング作業を行う必要がある。
【0004】
成膜装置のクリーニングに関し、従来、エッチング処理によってチャンバー内に堆積したポリシランを除去するクリーニング方法であり、大気開放を行わずにクリーニングを実施できるプラズマクリーニング方法の技術が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。また、成膜装置の搬送槽と処理槽とを分離し、処理槽を大気開放して槽内の洗浄を行なう技術が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−326034号公報
【特許文献2】特開平7−283099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のクリーニング方法では、大気開放せずにチャンバー内をクリーニングできる。しかしながら、プラズマCVD装置の内部には、電極・電力導入線、ガス配管、冷却管などの多数の構造物が存在する為、装置内部全体の堆積膜を全て除去するクリーニングを行なうことは実際には困難である。そのため、特許文献1のクリーニング方法によっても除去しきれない堆積物の粉末がチャンバー内に残留し、特にプラズマ放電領域から離れた排気配管に堆積物の粉末が残留する課題がある。
【0007】
そこで、特許文献2に示すように、プラズマCVD装置の真空容器を定期的に大気開放し、堆積したポリシランを除去するクリーニング作業を行う必要がある。
【0008】
プラズマCVD装置の真空容器を大気開放してクリーニングを行なうとき、装置側壁や排気配管に堆積・付着した微小粉末をブラシなどで除去する際に、微小粉末が舞い上がり、大気中に浮遊する。排気配管は内部空間が小さく、浮遊する粉末の濃度が特に高くなる。浮遊する微小粉末の濃度が高い環境において、クリーニング作業時の動作などによって静電気が生じると、その静電気により発生した火花が微小粉末と酸素との反応の起点となって発熱する場合がある。
【0009】
そのため従来、導電靴やアースバンドなどを使用してクリーニング中の作業者をアースする、ブラシやヘラなどのクリーニング治具の材質として静電気の発生が少ない材料を採用するなどの、静電気の発生を抑制して安全性を向上する対策が行なわれている。しかし、クリーニング中の静電気の発生を抑制するための技術には更なる改良の余地があり、より確実に静電気の発生を防止できる技術が求められている。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、クリーニング中の静電気の発生を抑制できる成膜装置のクリーニング方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、成膜装置のクリーニング中の静電気の発生を抑制できる半導体製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る成膜装置のクリーニング方法は、成膜装置の周辺を加湿するステップと、成膜装置を大気開放するステップと、成膜装置の内部の堆積物を除去するステップと、を備える。
【0012】
上記方法において好ましくは、加湿するステップにおいて、成膜装置の周辺が絶対湿度11.5g/m以上に加湿される。
【0013】
上記方法において好ましくは、成膜装置の周辺の湿度を計測するステップと、成膜装置の周辺が絶対湿度11.5g/m以上か否かを判断するステップと、を備える。判断するステップで成膜装置の周辺が絶対湿度11.5g/m未満であると判断されたとき、成膜装置の大気開放が禁止される。判断するステップで成膜装置の周辺が絶対湿度11.5g/m以上であると判断されたとき、成膜装置の大気開放が許可される。
【0014】
本発明に係る半導体製造装置は、成膜装置と、成膜装置の外部に配置され、成膜装置の周辺を加湿する加湿器と、を備える。
【0015】
上記半導体製造装置において好ましくは、成膜装置には、開口が形成されており、半導体製造装置は、開口を開放および閉塞可能な開閉自在の開閉扉をさらに備え、加湿器は、開閉扉を開いて開口を開放するときに成膜装置の周辺を加湿する。
【0016】
上記半導体製造装置において好ましくは、成膜装置の周辺の空間を仕切る間仕切り部を備え、加湿器は、間仕切り部によって仕切られた空間の開口に近接する側に配置される。
【0017】
上記半導体製造装置において好ましくは、成膜装置の周辺の湿度を計測する湿度センサを備える。
【0018】
上記半導体製造装置において好ましくは、半導体製造装置の動作を制御する制御部を備え、制御部は、成膜装置の周辺の湿度を絶対湿度11.5g/m以上に加湿するように、加湿器を作動させる。
【0019】
上記半導体製造装置において好ましくは、半導体製造装置を操作するオペレータに作業指示するためのアラーム発報機を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の成膜装置のクリーニング方法によると、クリーニング中の静電気の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態に係るプラズマCVD装置の概略図である。
【図2】図1に示すプラズマCVD装置を含む半導体製造装置の概要を示す図である。
【図3】半導体製造装置の動作を制御する制御装置の概要を示すブロック図である。
【図4】プラズマCVD装置のクリーニング方法の各ステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るプラズマCVD装置10の概略図である。図1に示すように、プラズマCVD装置10は、真空容器の内部に載置された基板1の主表面上に薄膜を成膜する処理を行なうための、成膜装置の一例である。プラズマCVD装置10は、基板1に対し上方に配置された上部電極12と、基板1に対し下方に配置された下部電極14と、を含む。上部電極12と下部電極14とは、基板1を挟むように互いに対向して配置され、一対の電極を形成する。上部電極12と下部電極14との一方はカソード電極であり、他方はアノード電極である。図示しない配線が上部電極12と下部電極14とに接続されて、その配線を介して上部電極12と下部電極14とはプラズマCVD装置10の外部の電源に接続されている。
【0024】
プラズマCVD装置10の底部には、排気配管15が設けられている。排気配管15は、プラズマCVD装置10の内部空間と、図示しない真空ポンプとを連通している。真空ポンプが駆動することにより、プラズマCVD装置10の内部空間から排気配管15を経由して排気され、真空容器の内部の圧力が低下して真空状態とされる。排気配管15は、プラズマCVD装置10から鉛直方向に沿って下方へ延びる鉛直方向延在管と、鉛直方向延在管の下端部において屈曲して水平方向に沿って延びる水平方向延在管と、を有する。鉛直方向延在管の下端部において、排気配管15には、開閉自在の開口16が形成されている。
【0025】
プラズマCVD装置10の側面の一部には、開口18が形成されている。この開口18を覆うように、開閉自在の開閉扉20が配置されている。開閉扉20が開けられることにより、開口18が開放され、プラズマCVD装置10が大気開放される。開閉扉20が閉じられることにより、開口18が密閉され、プラズマCVD装置10の内部を真空にまで減圧できる状態になる。
【0026】
基板1に成膜処理が行なわれる場合、開閉扉20を開き、開口18を経由して基板1がプラズマCVD装置10の内部に配置される。その後開閉扉20を閉じて開口18を閉塞させた状態で、排気配管15を経由してプラズマCVD装置10の内部の空気が排気され、プラズマCVD装置10の内部空間が減圧され真空状態とされる。続いて図示しないガス供給部から、プロセスガスがプラズマCVD装置10の内部へ供給される。上部電極12と下部電極14との間に高周波の電力を供給することにより、上部電極12と下部電極14との間でプロセスガスをプラズマ状態に励起する。これにより化学的に活性となったプロセスガスの原子や分子を、基板1の主表面に接触させて、基板1の主表面上に成膜処理が行なわれる。
【0027】
成膜処理が繰り返されると、プラズマCVD装置10の内部の構成部品や内壁などに、成膜物が付着する。プロセスガスとしてシランを使用する場合、ポリシランなどのシリコン系付着物が、プラズマCVD装置10の内部に蓄積される。このシリコン系付着物を除去するために、プラズマCVD装置10の真空容器を大気開放し、堆積したポリシランを除去するクリーニング作業が、定期的に行なわれる。クリーニングによって付着物が除去された後、成膜が再開される。
【0028】
図1に示すように、プラズマCVD装置10の外部に、加湿器30と、湿度センサ32とが配置されている。加湿器30は、プラズマCVD装置10の開口18の近傍に配置され、プラズマCVD装置10の周囲の雰囲気を加湿する。湿度センサ32は、プラズマCVD装置10の周囲の雰囲気の湿度を計測する。加湿器30は、一般的な気化法、蒸発法または水噴霧法を用いて、気体の絶対湿度を高くできる。一例としては加湿器30は、ノズルを用いた微細なミスト粒子の噴霧によって加湿するものであってもよい。
【0029】
プラズマCVD装置10のクリーニングのために開閉扉20を開いて開口18を開放し、プラズマCVD装置10を大気開放するとき、加湿器30を運転し、プラズマCVD装置10の周辺の絶対湿度を向上させる。好ましくは、絶対湿度が11.5g/m以上になるように、加湿器30を使用してプラズマCVD装置10の周辺を加湿する。
【0030】
開閉扉20を開く前に加湿器30を起動してプラズマCVD装置10の周辺の絶対湿度を11.5g/m以上にすることにより、プラズマCVD装置10を大気開放すると、絶対湿度11.5g/m以上の空気がプラズマCVD装置10へ流入する。加湿空気によって、クリーニング時にプラズマCVD装置10の内部に搬入する物体の表面の水分量が増加するので、物体表面の電気伝導率が向上し、電荷の漏洩が早くなる。そのため、物体の帯電電位が下がるので、静電気の発生を抑制することができる。
【0031】
クリーニング中の静電気の発生を抑制することで、プラズマCVD装置10の内部におけるポリシランなどの微小粉末の酸化反応を抑制できるので、熱の発生を確実に防止でき、プラズマCVD装置10のクリーニング作業時の安全性を向上することができる。また、静電気を抑制することで、プラズマCVD装置10の内部の付着物を、側壁や配管からより容易に除去することができ、加えて、側壁や配管から一度除去した付着物の微小粉末が側壁などに再付着することを抑制できるので、プラズマCVD装置10のクリーニング作業の効率を向上することができる。
【0032】
さらに、クリーニング時に付着物の微小粉末が開口18を経由してプラズマCVD装置10の外部へ浮遊しても、周辺の湿度を高めることにより、搬送装置や別の処理装置などの工場内の他の装置に微小粉末が付着して汚れることを、抑制することができる。
【0033】
加湿器30を使用したプラズマCVD装置10の周辺の空気の湿度制御は、常時行なわれてもよく、または、プラズマCVD装置10の大気開放時にのみ行なわれてもよい。
【0034】
プラズマCVD装置10の大気開放時に、真空容器に不活性ガスを供給して大気圧にまで圧力を上昇させることで、酸化反応を抑制する。このとき好ましくは、水分を含んだ不活性ガス、さらに好ましくは絶対湿度11.5g/m以上の不活性ガスを真空容器内に供給すれば、プラズマCVD装置10内での静電気の発生をより確実に抑制することができる。
【0035】
一般的に、25℃前後の室温において相対湿度が50%を下回ると、静電気の帯電電圧が大きくなり、静電気に由来する火花の発生の可能性が大きくなる。室温における相対湿度が50%以上であれば、対象物の静電気による帯電量よりも大気側への放電量が大きくなるため、静電気による火花の発生を抑えることができる。そこで、本明細書では、気温25℃で相対湿度50%に相当する絶対湿度11.5g/m以上の範囲を湿度安全領域と規定する。プラズマCVD装置10の周辺の雰囲気を湿度安全領域の範囲に保つことで、プラズマCVD装置10の大気開放時の静電気の発生を抑制し、安全にクリーニング作業を行なうことができる。
【0036】
加湿器30によるプラズマCVD装置10周辺の絶対湿度の上限値は、飽和水蒸気量となる。飽和水蒸気量は温度によって変動し、絶対湿度の上限値は、各温度における相対湿度100%のときの絶対湿度である。たとえばプラズマCVD装置10の周辺の温度が25℃のときの絶対湿度の上限値は23g/mであり、温度が30℃のときの絶対湿度の上限値は30g/mである。
【0037】
プラズマCVD装置10のクリーニング時に、排気配管15の内部もクリーニングする必要がある。排気配管15は細く、また下部電極14などのプラズマCVD装置10内部の構造物に遮られる場合があり、プラズマCVD装置10の内部側から排気配管15の内部にアクセスするのは一般的に困難である。そこで、排気配管15に開口16を設けることにより、プラズマCVD装置10の外部から排気配管15に容易にアクセスして、開口16を開くことにより、排気配管15の内部のクリーニング作業をより効率的に行なうことができる。
【0038】
図2は、図1に示すプラズマCVD装置10を含む半導体製造装置100の概要を示す図である。図2には半導体製造装置100を構成する工場のレイアウトを平面視した概略図が示される。半導体製造装置100は、図1を参照して説明したプラズマCVD装置10と、他のプラズマCVD装置40と、成膜処理以外の他の工程で使用される装置62,64,66と、を備える。プラズマCVD装置10と装置62との間には、搬送装置60が配置されている。プラズマCVD装置10で成膜処理される基板1は、搬送装置60によって装置62からプラズマCVD装置10へ搬送され、またはプラズマCVD装置10から装置62へ搬送される。
【0039】
プラズマCVD装置10,40は、半導体製造装置100を構成する工場の内部の、区切られた一区画の内部に配置されている。半導体製造装置100は、プラズマCVD装置10,40の周辺の空間を仕切る間仕切り部50を備える。プラズマCVD装置10,40は、矩形状の側壁と天井とを有する間仕切り部50によって取り囲まれている。間仕切り部50によって囲繞された空間70の内部にプラズマCVD装置10,40が配置され、間仕切り部50の外部の空間80に他の装置62,64,66が配置されている。
【0040】
プラズマCVD装置10の周辺を加湿する加湿器30は、間仕切り部50によって仕切られた、プラズマCVD装置10に近接する側の空間70に配置されている。間仕切り部50は、プラズマCVD装置10の外部の、プラズマCVD装置10に形成された開口18付近の空間を仕切り、加湿器30は、間仕切り部50が区切る空間のうち、開口18に近接する側の空間70に配置されている。加湿器30は、空間70内の雰囲気中の湿度を増加させる。間仕切り部50によって、プラズマCVD装置10と加湿器30とをその内部に含む小部屋が形成され、加湿器30が供給する水蒸気を当該小部屋の内部から拡散させないようにすることで、プラズマCVD装置10の周辺をより早くより効率よく加湿することができる。
【0041】
間仕切り部50は、図2に示すようなプラズマCVD装置10を取り囲む形状を有し、プラズマCVD装置10の周囲にほぼ閉空間を形成できる構成であれば、より確実にプラズマCVD装置10の周辺からの水蒸気の拡散を抑制できるので望ましい。但し間仕切り部50は、この構成に限られるものではない。たとえば、開口18の側方の両側に衝立状の一対の間仕切り部を設ける構成としても、プラズマCVD装置10の開口18近傍の絶対湿度を効率的に上昇させることができる。このように、プラズマCVD装置10を大気開放するとき、開口18を経由して、加湿器30により加湿された空気をプラズマCVD装置10の内部へより好適に流入させることのできる構成であれば、間仕切り部はどのような構成であってもよい。
【0042】
間仕切り部50の一部分には開口部52が形成されており、搬送装置60は開口部52を経由して空間70と空間80との両方に亘って配置されている。搬送装置60はプラズマCVD装置10と装置62との間で、基板1を搬送する。開口部52は、基板1の搬送中に開口部52の周囲の間仕切り部50が基板1に干渉しない程度に大きく、かつ、加湿器30により空間70内に供給された水蒸気の空間80への拡散を抑制できる程度に小さく、形成されている。
【0043】
開口部52を形成し開口部52を貫いて搬送装置60を配置することにより、プラズマCVD装置10への基板1の自動搬送が可能になる。開口部52を十分に小さく形成すれば、加湿器30によるプラズマCVD装置10の周辺を加湿する効果を十分に得ることができる。代替的には、開口部52を開閉するゲートバルブを設け、ゲートバルブの開閉により開口部52の開閉を制御してもよく、または、開口部52をエアカーテンなどで遮断してもよい。
【0044】
図3は、半導体製造装置100の動作を制御する制御装置の概要を示すブロック図である。半導体製造装置100は、図3に示す制御装置を含む。制御装置は、半導体製造装置100全体を制御するための、CPU(Central Processing Unit)などの制御部90を含む。制御部90は、プラズマCVD装置10、加湿器30、湿度センサ32のそれぞれに配線により接続される。制御部90は、プラズマCVD装置10および加湿器30に、運転および停止を指令する。制御部90はまた、湿度センサ32から、湿度センサ32により計測されたプラズマCVD装置10の周辺の絶対湿度を示す信号を受ける。
【0045】
制御装置はまた、制御部90で実行するプログラムを記憶するためのメモリ92を含む。制御部90は、メモリ92に記憶されるプログラムを読み出して、当該プログラムを実行することにより、プラズマCVD装置10、加湿器30などの半導体製造装置100を構成する各装置類を運転または停止する。
【0046】
制御装置はさらに、アラーム発報機96を含む。アラーム発報機96は、たとえば警報ランプや警報ブザーなどを有し、アラーム発報機96が作動することにより、半導体製造装置100を操作するオペレータに作業指示をする。
【0047】
図4は、プラズマCVD装置10のクリーニング方法の各ステップを示す流れ図である。図4を参照して、プラズマCVD装置10の内部に堆積したポリシランなどのシリコン系付着物をクリーニングする方法について説明する。
【0048】
まずステップ(S10)において、プラズマCVD装置10がクリーニングすることを要求する。プラズマCVD装置10のクリーニングの要否は、たとえば成膜処理の累積回数などで判断される。次にステップ(S20)において、湿度センサ32が、プラズマCVD装置10の周辺の湿度を計測する。続いてステップ(S30)において、湿度センサ32によって計測された絶対湿度が、静電気の発生を抑制するための閾値として設定された11.5g/m以上であるか否かが判断される。
【0049】
ステップ(S30)で絶対湿度が11.5g/m未満であると判断された場合、次にステップ(S40)において、加湿器30を作動させることによりプラズマCVD装置10の周辺の湿度を増加させる、加湿運転が行なわれる。湿度センサ32によって計測されたプラズマCVD装置10の周辺の絶対湿度が11.5g/m以上になるまで、ステップ(S30)の判断とステップ(S40)の加湿運転が繰り返される。絶対湿度が11.5g/m未満である間は、プラズマCVD装置10の大気開放を禁止する警報を、アラーム発報機96を用いて発報してもよい。
【0050】
プラズマCVD装置10の周辺の絶対湿度が11.5g/m以上になるまで加湿され、ステップ(S30)で絶対湿度が11.5g/m以上であると判断されると、プラズマCVD装置10の大気開放が許可される。続いてステップ(S50)へ進み、クリーニングを実施させる警報を、アラーム発報機96を用いて発報する。半導体製造装置100を操作する作業者は、このクリーニングを実施させる警報を受けて、ステップ(S60)でプラズマCVD装置10を大気開放し、ステップ(S70)でプラズマCVD装置10の内部の堆積物を除去するクリーニングを開始する。
【0051】
次にステップ(S80)で、作業者がクリーニング完了の情報を入力したか否かを判断する。クリーニング完了の情報の入力は、アラーム発報機96もしくはプラズマCVD装置10を介して行なわれてもよく、または制御部90に直接入力されてもよい。
【0052】
クリーニング完了の情報の入力がなければ、続いてステップ(S90)で、湿度センサ32によって計測された絶対湿度が11.5g/m以上であるか否かが再度判断される。ステップ(S90)で絶対湿度が11.5g/m以上であると判断されれば、ステップ(S80)の判断に戻る。ステップ(S90)で絶対湿度が11.5g/m未満であると判断されれば、ステップ(S100)において、加湿運転が行なわれる。このようにして、クリーニング作業実施中のプラズマCVD装置10の周辺の絶対湿度を、常に11.5g/m以上に保つように制御する。典型的には、クリーニング作業実施中、常時加湿器30の運転が続けられる。
【0053】
作業者は、クリーニングを終了し開閉扉20を閉じた後に、クリーニング完了の情報を制御部90に入力する。このときステップ(S80)でクリーニング完了の情報が入力されたと判断され、ステップ(S110)に進み、プラズマCVD装置10を使用した半導体の生産が再開される。加湿器30を使用したプラズマCVD装置10の周辺の空気の湿度制御がプラズマCVD装置10の大気開放時にのみ行なわれる設定であれば、このステップ(S110)において、加湿器30が停止される。
【0054】
以上説明したプラズマCVD装置10のクリーニング方法では、プラズマCVD装置10の周辺の湿度を湿度センサ32で計測し、湿度が11.5g/m以上であると判断された場合にのみ、プラズマCVD装置10を大気開放する。絶対湿度11.5g/m以上の湿度安全領域でクリーニング作業を行なうことにより、クリーニング中の静電気の発生を抑制できるので、発熱の可能性を回避でき、より安全にクリーニング作業を行なうことができる。
【0055】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、プラズマCVD装置を備える半導体素子の製造プロセスに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 基板、10,40 プラズマCVD装置、15 排気配管、16,18 開口、20 開閉扉、30 加湿器、32 湿度センサ、50 間仕切り部、52 開口部、60 搬送装置、70,80 空間、90 制御部、96 アラーム発報機、100 半導体製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜装置の周辺を加湿するステップと、
前記成膜装置を大気開放するステップと、
前記成膜装置の内部の堆積物を除去するステップと、を備える、成膜装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記加湿するステップにおいて、前記成膜装置の周辺が絶対湿度11.5g/m以上に加湿される、請求項1に記載の成膜装置のクリーニング方法。
【請求項3】
前記成膜装置の周辺の湿度を計測するステップと、
前記成膜装置の周辺が絶対湿度11.5g/m以上か否かを判断するステップと、を備え、
前記判断するステップで前記成膜装置の周辺が絶対湿度11.5g/m未満であると判断されたとき、前記成膜装置の大気開放が禁止され、
前記判断するステップで前記成膜装置の周辺が絶対湿度11.5g/m以上であると判断されたとき、前記成膜装置の大気開放が許可される、請求項1または請求項2に記載の成膜装置のクリーニング方法。
【請求項4】
成膜装置と、
前記成膜装置の外部に配置され、前記成膜装置の周辺を加湿する加湿器と、を備える、半導体製造装置。
【請求項5】
前記成膜装置には、開口が形成されており、
前記開口を開放および閉塞可能な開閉自在の開閉扉をさらに備え、
前記加湿器は、前記開閉扉を開いて前記開口を開放するときに前記成膜装置の周辺を加湿する、請求項4に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記成膜装置の周辺の空間を仕切る間仕切り部を備え、
前記加湿器は、前記間仕切り部によって仕切られた空間の前記開口に近接する側に配置される、請求項5に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記成膜装置の周辺の湿度を計測する湿度センサを備える、請求項4から請求項6のいずれかに記載の半導体製造装置。
【請求項8】
前記半導体製造装置の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記成膜装置の周辺の湿度を絶対湿度11.5g/m以上に加湿するように、前記加湿器を作動させる、請求項4から請求項7のいずれかに記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記半導体製造装置を操作するオペレータに作業指示するためのアラーム発報機を備える、請求項4から請求項8のいずれかに記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33866(P2013−33866A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169445(P2011−169445)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】