成膜装置及び成膜方法
【課題】電流供給時における触媒線の変位を回避させた成膜装置及び成膜方法を提供する。
【解決手段】基板Sの成膜面Saを立てて基板Sを保持する成膜ステージと、成膜面Saと対向するように吊下げられる触媒線15と、触媒線15を加熱するために触媒線15へ電流を供給する電源とを備え、加熱される触媒線15へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成し、成膜種を成膜面Saに堆積させることによって成膜面Saに薄膜を成膜する。そして、触媒線15を流れる荷電粒子に作用して触媒線15を成膜面Saに沿って拘束する拘束磁場を形成して触媒線15に拘束磁場を加える拘束線20を備える。
【解決手段】基板Sの成膜面Saを立てて基板Sを保持する成膜ステージと、成膜面Saと対向するように吊下げられる触媒線15と、触媒線15を加熱するために触媒線15へ電流を供給する電源とを備え、加熱される触媒線15へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成し、成膜種を成膜面Saに堆積させることによって成膜面Saに薄膜を成膜する。そして、触媒線15を流れる荷電粒子に作用して触媒線15を成膜面Saに沿って拘束する拘束磁場を形成して触媒線15に拘束磁場を加える拘束線20を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型FPD(Flat Panel Display )の製造技術には、原料ガスの化学反応を利用する
化学的気相成長法(CVD法:Chemical Vapor Deposition )が用いられている。CVD法としては、高温に加熱した基板表面上で化学反応を進行させる熱CVD法や、プラズマ化した雰囲気で化学反応を進行させるプラズマCVD法等が知られている。熱CVD法やプラズマCVD法では、基板を高温に加熱したり、基板をプラズマ空間に曝したりすることから、基板や下地膜に電気的、熱的損傷を与え易い問題がある。また、これらのCVD法では、膜厚の均一性を得るために、プラズマ密度や基板温度に高い均一性が要求されることから、基板の大型化に対応し難い問題がある。そこで、CVD法では、従来から、上記問題を解決するため、加熱したタングステン等の触媒線に原料ガスを接触させることにより原料ガスを成膜種に分解する、いわゆる、触媒CVD法が注目されている。
【0003】
触媒CVD法は、触媒線の表面が化学反応の進行を担い、基板へのプラズマ照射や基板の高温加熱を必要としないことから、基板や下地膜における電気的、熱的損傷を大幅に抑制できる。また、触媒CVD法は、触媒線を増量するだけで反応系を拡張できることから、基板の大型化に対しても比較的容易に対応できる。
【0004】
一方、触媒CVD法では、触媒線と基板成膜面との間の距離が短くなると、基板に到達する成膜種の量が増大し、反対に、触媒線と基板成膜面との間の距離が長くなると、基板に到達する成膜種の量が減少する。そのため、触媒線と基板成膜面との間の距離が基板成膜面の面内で大きく異なる場合には、膜厚均一性が大幅に損なわれてしまう。
【0005】
特許文献1は、膜厚均一性の向上を図るため、鉛直方向に沿って基板を立設すると共に、鉛直方向下側に延びるU字状に形成された複数の触媒線を、それぞれ基板の成膜面に沿って吊下げる。これによれば、複数の触媒線の各々が自重によって撓む場合であっても、各触媒線が鉛直方向に沿って変形し易くなるため、触媒線と基板成膜面との間の距離の変動が軽減される。そのため、基板成膜面と触媒線との間の距離が均一になる分だけ、薄膜の膜厚が、基板成膜面の面内において、より均一になる。
【特許文献1】特許2000‐303182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11は、触媒CVD法に利用される触媒CVD装置50の内部を示す図であって、上記のように、U字状に形成された複数の触媒線51の各々が、基板Sの成膜面Saに沿って吊下げられた状態を示す。図12及び図13は、それぞれ図11のA‐A断面図であって、図12は触媒線51に電流を供給しない状態を示し、図13は触媒線51に電流を供給した状態を示す。
【0007】
図11において、各触媒線51は、それぞれ鉛直方向下側へ延びる左右一対の平行な吊下げ部分52と、左右一対の吊下げ部分52の下端を結ぶ曲線状の連結部分53とに区分される。複数の触媒線51の各々は、成膜面Saの全体を覆うように、左右方向に沿って配列されている。図12において、各吊下げ部分52は、成膜面Saに沿って左右方向に略等間隔に吊下げられ、吊下げ部分52と成膜面Saとの間の距離Dを略等しくする位置(以下単に、初期位置と言う。)に配置されている。
【0008】
各触媒線51を所定温度に加熱するとき、各触媒線51には、それぞれ所定の電流Iが供給される。U字状の触媒線51に電流Iが供給されるとき、入力側の吊下げ部分52には、電流Iが鉛直方向下側へ流れ、出力側の吊下げ部分52には、電流Iが鉛直方向上側へ流れる。すなわち、左右一対の吊下げ部分52には、それぞれ相殺する方向へ電流Iが流れる。
【0009】
図13において、各吊下げ部分52にそれぞれ電流Iが流れると、各吊下げ部分52の周囲には、それぞれ吊下げ部分52を囲む閉曲線に沿って、該吊下げ部分52に流れる電流Iの方向に応じた磁場が形成される。1つの吊下げ部分52を流れる荷電粒子は、該吊下げ部分52を流れる電流により生じる磁場と、他の吊下げ部分52に流れる電流により生じる磁場と、触媒CVD装置50の外部からの磁場との正味の磁場によって力を受ける。この結果、各吊下げ部分52は、それぞれ周囲の磁場の強度分布に応じて、その初期位置から大幅に変位してしまう。
【0010】
例えば、図13において、地磁気のベクトルが左から右に向かう場合、1つの触媒線15に電流Iが供給されると、各触媒線51における左側の吊下げ部分52は上側への力を受け、右側の吊下げ部分52は下側への力を受ける。この結果、各触媒線51は、それぞれ電流Iを受けることによって、初期位置から右回りに回転し、一対の吊下げ部分52と成膜面Saとの間の距離Dにバラツキを発生させてしまう。ひいては、薄膜の膜厚均一性を大きく損なってしまう。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、電流供給時における触媒線の変位を回避させた成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の成膜装置は、基板の成膜面を立てて前記基板を保持する保持部と、前記成膜面と対向するように吊下げられる触媒線と、前記触媒線を加熱するために前記触媒線へ電流を供給する電源とを備え、加熱される前記触媒線へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成し、前記成膜種を前記成膜面に堆積させることによって前記成膜面に薄膜を成膜する成膜装置であって、前記触媒線を流れる荷電粒子に作用して前記触媒線を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成して前記触媒線に前記磁場を加える磁場印加部を備えることを要旨とする。
【0013】
請求項1に記載の成膜装置によれば、磁場印加部によって形成される磁場が、触媒線を成膜面に沿って拘束する。そのため、触媒線に電流が供給されるとき、触媒線は、所定位置に非接触的に保持される。したがって、この成膜装置は、触媒線の変位を回避でき、ひいては、触媒線と成膜面との間の距離を維持することができる。
【0014】
請求項2に記載の成膜装置は、請求項1に記載の成膜装置であって、前記保持部は、一対の基板の成膜面をそれぞれ対向させて前記一対の基板を保持し、前記触媒線は、前記一対の基板間の間隙に吊下げられる一対の吊下げ部分と、前記一対の吊下げ部分の下端を前記間隙の外側で結ぶ連結部分とからなり、前記磁場印加部は、前記間隙の外側に配置され、前記連結部分に流れる荷電粒子に作用することにより前記連結部分を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成することを要旨とする。
【0015】
請求項2に記載の成膜装置によれば、触媒線の連結部分と磁場印加部とが、一対の基板間の間隙の外側に配置され、磁場印加部によって形成される磁場が、連結部分を流れる荷電粒子に作用する。そのため、触媒線の連結部分は、触媒線の電流供給時に、一対の基板間の外側で拘束される。したがって、この成膜装置は、吊下げ部分への磁場の作用を抑え
ながら触媒線を拘束できることから、成膜種の生成反応に影響を及ぼすことなく、触媒線の変位を回避できる。
【0016】
請求項3に記載の成膜装置は、請求項1又は2に記載の成膜装置であって、前記触媒線は、鉛直方向に沿う直線状に形成される一対の吊下げ部分と、水平方向に沿う直線状に形成されて前記一対の吊下げ部分の下端を結ぶ連結部分とからなり、前記磁場印加部は、前記連結部分の近傍に設けられて前記水平方向に沿う導電線と、前記磁場を形成するために前記導電線へ電流を供給する電源とを備えることを要旨とする。
【0017】
請求項3に記載の成膜装置によれば、連結部分と導電線とが、共通する水平方向に沿って配置され、導電線を流れる電流が連結部分を拘束するための磁場を形成する。そのため、連結部分が形成する磁場と、導電線が形成する磁場とは、水平方向と直交する同一面内に沿って形成される。したがって、この成膜装置は、連結部分を流れる荷電粒子への正味の磁場を、より簡素な構成にできることから、触媒線の変位を確実に回避できる。
【0018】
請求項4に記載の成膜装置は、請求項1又は2に記載の成膜装置であって、前記触媒線は、鉛直方向に沿う直線状に形成される一対の吊下げ部分と、水平方向に沿う直線状に形成されて前記一対の吊下げ部分の下端を結ぶ連結部分とからなり、前記磁場印加部は、前記連結部分の近傍に配置されて前記磁場を形成する磁性体を備えることを要旨とする。
【0019】
請求項4に記載の成膜装置によれば、磁性体を連結部分の近傍に配置するだけで、連結部分が拘束される。したがって、この成膜装置は、より簡素な構成の下で触媒線の変位を回避できる。
【0020】
請求項5に記載の成膜方法は、基板の成膜面を立てて前記基板を保持すると共に、前記成膜面と対向するように吊下げられる触媒線へ電流を供給することにより前記触媒線を加熱し、加熱される前記触媒線へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成して前記成膜種を前記成膜面に堆積させることによって前記成膜面に薄膜を成膜する成膜方法であって、前記触媒線を流れる荷電粒子に作用して前記触媒線を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成して前記触媒線に前記磁場を加えることを要旨とする。
【0021】
請求項5に記載の成膜方法によれば、触媒線に対して加えられる磁場が、触媒線を成膜面に沿って拘束する。そのため、触媒線に電流が供給されるとき、触媒線は、成膜面に沿って非接触的に保持される。したがって、この成膜装置は、触媒線と成膜面との間の距離を維持することができ、触媒線の変位を回避できる。
【発明の効果】
【0022】
上記したように、本発明によれば、電流供給時における触媒線の変位を回避させた成膜装置及び成膜方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した第一実施形態を図面に従って説明する。図1は、成膜装置としての触媒CVD装置10を鉛直方向上側から見た図である。図1において、触媒CVD装置10は、搬入室11と、複数の成膜室12と、搬出室13とを、順にゲートバルブGVを介して連結させたインライン式の成膜装置である。なお、図1では、触媒CVD装置10が2つの成膜室12を有する構成を示す。
【0024】
搬入室11は、排気ラインPに連結される真空槽であり、外部からの基板Sを触媒CVD装置10の内部へ搬入する。搬入室11の内部には、基板Sを支持するための一対の搬
入ステージ11Sが配設されている。一対の搬入ステージ11Sは、それぞれ搬入室11に搬入された一対の基板Sを相対向するように保持すると共に、該一対の基板Sを成膜室12へ搬送する。
【0025】
各成膜室12は、それぞれ排気ラインPに連結される真空槽であり、ゲートバルブGVを介して他の真空槽に連結され、ゲートバルブGVが開くときに、他の真空槽と連通する。各成膜室12には、それぞれ図示しないガス供給系が連結され、該ガス供給系からの所定流量の原料ガスが供給される。各成膜室12の内部には、それぞれ基板Sを支持するための一対の成膜ステージ12Sが配設されている。一対の成膜ステージ12Sは、それぞれ他の真空槽からの基板Sを相対向するように保持し、一対の基板Sを所定温度に加熱すると共に、該一対の基板Sを他の真空槽へ搬送する。
【0026】
搬出室13は、排気ラインPに連結される真空槽であり、隣接する成膜室12からの基板Sを外部へ搬出する。搬出室13の内部には、基板Sを支持するための一対の搬出ステージ13Sが配設されている。一対の搬出ステージ13Sは、それぞれ搬出室13に搬入される一対の基板Sを水平方向へ倒し、該一対の基板Sを外部へ搬出する。
【0027】
各成膜室12の内部であって、一対の成膜ステージ12Sの間には、それぞれ鉛直方向下側へ延びる複数の触媒線15が吊下げられている。各触媒線15は、それぞれ基板Sの搬送方向に沿って配列されている。また、各成膜室12の内部には、それぞれ各触媒線15を挟むように、搬送方向に延びる磁場印加部としての一対の拘束線20が張設されている。
【0028】
図2は、基板Sの成膜面Saから見た成膜室12の内部を示す断面図であり、図3は、鉛直方向上側から見た成膜室12の内部を示す断面図であり、図2のA‐A断面図である。図4は、基板Sの搬送方向から見た触媒線15と拘束線20とを示す断面図である。
【0029】
図2及び図3において、各触媒線15は、それぞれタンタル、タングステン、モリブデン等からなる導電線であって、鉛直方向下側へ延びるコ字状に形成されている。各触媒線15は、それぞれ左右一対の平行な吊下げ部分16と、左右一対の吊下げ部分16の下端を水平方向に沿って結ぶ直線状の連結部分17とに区分される。各触媒線15は、それぞれ基板Sの成膜面Saの全体を覆うように、左右方向(搬送方向)に沿って配列されている。各触媒線15は、それぞれ吊下げ部分16と一対の基板Sの成膜面Saとの間の距離Dが略等しくなる位置に吊下げられている。
【0030】
各触媒線15は、それぞれ外部の直流電源に直列接続されている。各触媒線15は、直流電源からの所定の加熱電流I1を受けることにより、所定温度に昇温する。昇温した触媒線15は、原料ガスと接触することにより、原料ガスを活性化させ、基板Sの成膜面Saに成膜種を堆積させる。触媒線51に加熱電流I1が供給されるとき、入力側の吊下げ部分16には、加熱電流I1が鉛直方向下側へ流れ、出力側の吊下げ部分16には、加熱電流I1が鉛直方向上側へ流れる。そして、連結部分17には、加熱電流I1が、図2及び図3における右側から左側へ流れる。なお、本実施形態においては、各触媒線15の位置であって、加熱電流I1が供給されていない状態の位置を、初期位置と言う。
【0031】
一対の拘束線20は、それぞれ熱的及び機械的耐性を有する導電線であって、水平方向に沿って張設され、かつ、各連結部分17の下側に位置決め固定されている。一対の拘束線20は、それぞれ成膜室12の左右両側に設けられる外部端子18を介して、外部の直流電源に接続されている。直流電源からの拘束電流I2が一対の拘束線20に供給されるとき、一対の拘束線20には、それぞれ拘束電流I2が、図2及び図3における右側から左側へ流れる。すなわち、各拘束線20と各連結部分17とには、同じ方向への電流が流
れる。
【0032】
図4において、加熱電流I1が触媒線15に供給されるとき、触媒線15における連結部分17の周囲には、連結部分17を囲む閉曲線に沿って、左回りの連結磁場B1が形成される。また、拘束電流I2が一対の拘束線20に供給されるとき、一対の拘束線20の周囲には、それぞれ拘束線20を囲む閉曲線に沿って、左周りの拘束磁場B2が形成される。連結部分17に流れる荷電粒子は、連結磁場B1と各拘束磁場B2との正味の磁場によって、鉛直方向下側への力(以下単に、作用力Fと言う。)を受ける。
【0033】
詳述すると、連結部分17を挟んで拘束線20の側(以下単に、内側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。また、連結部分17を挟んで拘束線20と反対側(以下単に、外側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される。
【0034】
そのため、連結部分17を流れる荷電粒子は、外側における正味の磁場によって相対的に大きな力を受け、内側における正味の磁場によって殆ど力を受けない。この結果、各連結部分17は、それぞれ一方の拘束線20へ向かう力と、他方の拘束線20へ向かう力との正味の力、すなわち、鉛直方向下側への作用力Fを受ける。
【0035】
この結果、触媒CVD装置10は、各触媒線15に加熱電流I1を供給し、かつ、各拘束線20に拘束電流I2を供給することにより、各連結部分17に対して、非接触的に作用力Fを加えることができる。そのため、触媒CVD装置10は、触媒線15を鉛直方向に沿って非接触的に張設することができ、触媒CVD装置10の外部からの磁場や他の触媒線15からの磁場に関わらず、各触媒線15の初期位置を維持できる。ひいては、触媒CVD装置10は、各吊下げ部分16と成膜面Saとの間の距離Dを均一にすることができ、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
【0036】
上記第一実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上記第一実施形態において、触媒CVD装置10は、触媒線15を流れる荷電粒子に作用して触媒線15を成膜面に沿って拘束する拘束磁場B2を形成する拘束線20を備え、拘束線20が、触媒線15に拘束磁場B2を加える。したがって、触媒線15に加熱電流I1が供給されるとき、触媒線15は、初期位置に非接触的に保持される。この結果、触媒CVD装置10は、触媒線15の変位を回避でき、ひいては、触媒線15と成膜面Saとの間の距離Dを維持することができる。
【0037】
(2)上記第一実施形態において、成膜ステージ12Sは、一対の基板Sの成膜面Saをそれぞれ対向させて一対の基板Sを保持し、触媒線15は、一対の基板Sの間の間隙に吊下げられる一対の吊下げ部分16と、一対の吊下げ部分16の下端を基板S間の間隙の外側で結ぶ連結部分17とからなる。そして、拘束線20は、基板S間の間隙の下側に配置され、連結部分17に流れる荷電粒子に作用することにより連結部分17を下側へ引っ張るための拘束磁場B2を形成する。
【0038】
したがって、触媒線15の連結部分17は、触媒線15の電流供給時に、一対の基板S間の外側で拘束される。この結果、触媒CVD装置10は、吊下げ部分16への拘束磁場B2の作用を抑えながら触媒線15を拘束できることから、成膜反応に影響を及ぼすことなく、触媒線15の変位を回避できる。
【0039】
(3)上記第一実施形態において、連結部分17と拘束線20とが、共通する水平方向に沿って配置され、拘束線20を流れる拘束電流I2が連結部分17を拘束するための拘束磁場B2を形成する。そのため、連結部分17が形成する連結磁場B1と、拘束線20
が形成する拘束磁場B2とは、水平方向と直交する同一面内に沿って形成される。したがって、触媒CVD装置10は、連結部分17を流れる荷電粒子への正味の磁場を、より簡素な構成にできることから、触媒線15の変位を確実に回避できる。
【0040】
(第二実施形態)
以下、本発明を具体化した第二実施形態を図面に従って説明する。第二実施形態は、第一実施形態の拘束線20を変更したものである。そのため、以下においては、その変更点について詳しく説明する。図5は、基板Sの成膜面Saから見た成膜室12の内部を示す断面図であり、図6は、図5のA‐A断面図である。図7は、基板Sの搬送方向から見た触媒線15と磁性部材30とを示す断面図である。
【0041】
図5及び図6において、成膜室12の内部であって、各連結部分17の下方には、磁場印加部としての複数の磁性部材30が配設されている。各磁性部材30は、それぞれ鉛直方向から見て、各連結部分17の両側を挟むように配置され、図示しない取り付け部材によって成膜室12に位置決めされている。
【0042】
各磁性部材30は、それぞれ連結部分17と直交する面に沿って拘束磁場B2を形成する磁性体を備えている。磁性部材30としては、例えば、外部からの電流の供給を受けることなく磁場を形成する永久磁石、あるいは、外部からの電流の供給を受けることにより磁場を形成する電磁石を用いることができる。
【0043】
図7において、各磁性部材30は、それぞれ連結部分17の側に、左周りの拘束磁場B2を形成する。連結部分17を挟んで磁性部材30の側(以下単に、内側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。また、連結部分17を挟んで磁性部材30の反対側(以下単に、外側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される。
【0044】
そのため、連結部分17を流れる荷電粒子は、外側における正味の磁場によって相対的に大きな力を受け、内側における正味の磁場によって殆ど力を受けない。この結果、各連結部分17は、それぞれ一方の磁性部材30へ向かう力と、他方の磁性部材30へ向かう力との正味の力、すなわち、鉛直方向下側への作用力Fを受ける。
【0045】
この結果、触媒CVD装置10は、各触媒線15に加熱電流I1を供給し、かつ、各磁性部材30に拘束磁場B2を形成させることにより、各連結部分17に対して、鉛直方向下側への作用力Fを非接触的に加えることができる。そのため、触媒CVD装置10は、触媒線15を鉛直方向に沿って非接触的に張設することができる。ひいては、触媒CVD装置10は、各吊下げ部分16と成膜面Saとの間の距離Dを均一にすることができ、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
【0046】
上記第二実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(5)上記第二実施形態において、磁性部材30は、連結部分17の下側近傍に配置されて拘束磁場B2を形成するための磁性体を備える。したがって、触媒CVD装置10は、磁性体を連結部分17の下側近傍に配置するだけで、連結部分17を拘束できる。この結果、触媒CVD装置10は、より簡素な構成の下で触媒線15の変位を回避できる。
【0047】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態において、磁場印加部(拘束磁場B2の発生源)は連結部分17の下方に配置される。これに限らず、拘束磁場B2の発生源は連結部分17の上方に配置される構成であっても良い。この際、図8に示すように、連結部分17を挟んで発生源PBの側(以下単に、内側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される
。また、連結部分17を挟んで発生源PBと反対側(以下単に、外側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。
【0048】
これによれば、連結部分17を流れる荷電粒子は、内側における正味の磁場によって、相対的に大きな力を受ける。その結果、連結部分17は、一方の発生源PBから離れる力と、他方の発生源PBから離れる力との正味の力、すなわち、鉛直方向下側への作用力Fを受ける。したがって、上記実施形態と同じく、触媒CVD装置10は、触媒線15を、鉛直方向に沿って非接触的に張設することができ、ひいては、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
【0049】
・上記実施形態において、触媒CVD装置10は、1つの連結部分17に対して、一対の磁場印加部を具備する。これに限らず、触媒CVD装置10は、1つの連結部分17に対して、1つあるいは3つ以上の磁場印加部を具備する構成でも良い。
【0050】
例えば、図9に示すように、触媒CVD装置は、連結部分17の直下に、1つの磁場印加部による拘束磁場B2を形成する。そして、連結部分17を挟んで下側では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。また、連結部分17を挟んで上側では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される。
【0051】
これによれば、連結部分17が一つの磁場印加部によって鉛直方向下側への作用力Fを受けることから、より簡便な構成の下で、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
・上記実施形態において、連結部分17は鉛直方向下側への作用力Fを受ける。これに限らず、連結部分17は鉛直方向上側への作用力Fを受ける構成であっても良い。すなわち、図10に示すように、拘束磁場B2の発生源PBが連結部分17の上方に配置される。そして、連結部分17を挟んで発生源PBの側(以下単に、内側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。また、連結部分17を挟んで発生源PBと反対側(以下単に、外側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される構成であっても良い。
【0052】
これによれば、連結部分17を流れる荷電粒子は、外側における正味の磁場によって相対的に大きな力を受ける。この結果、連結部分17に鉛直方向上側への作用力Fが加えられる分だけ、各吊下げ部分16に対して、基板Sへの移動が抑えられる。その結果、触媒CVD装置10は、各吊下げ部分16と成膜面Saとの間の距離Dを均一にすることができ、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
【0053】
・上記実施形態において、各触媒線15は、一つの直流電源に直列接続される。これに限らず、各触媒線15は、それぞれ一つの直流電源に並列接続されても良い。さらに、各触媒線15は、それぞれ異なる直流電源に接続されても良い。
【0054】
・上記実施形態において、連結部分17は、水平方向に沿って延びる直線状を呈する。これに限らず、連結部分17は、成膜面Saに沿って延びる直線状、あるいは、曲線状であっても良い。すなわち、連結部分17は、連結部分17を流れる荷電粒子が拘束磁場B2を受けることにより、連結部分17が成膜面Saに沿う作用力Fを受ける構成であれば良い。
【0055】
・上記実施形態において、磁場印加部を構成する拘束線20や磁性部材30は、それぞれ連結部分17に拘束磁場B2を加える。これに限らず、磁場印加部は、吊下げ部分16に拘束磁場B2を加える構成であっても良い。すなわち、磁場印加部は、触媒線15を流れる荷電粒子に作用して触媒線15を成膜面Saに沿って拘束する拘束磁場B2を形成する構成であれば良い。
【0056】
・上記実施形態において、基板Sの成膜面Saは、鉛直方向に沿って立てられる。これに限らず、基板Sの成膜面Saは、鉛直方向に対して傾斜する方向に立てられる構成であっても良い。
【0057】
・上記実施形態において、連結部分17は、一対の基板Sの間の間隙の外側に配置されるが、これに限らず、連結部分17は、一対の基板Sの間の間隙に配置される構成であっても良い。
【0058】
・上記第二実施形態において、各連結部分17が形成する拘束磁場B2は、それぞれ図7における左回りである。これに限らず、各連結部分17が形成する拘束磁場B2は、それぞれ図7における右回りと左回りのいずれか一方であっても良い。この際、連結部分17が、該連結部分17に対応する磁性部材30に近い側において、拘束磁場B2を相殺するように、連結磁場B1を形成する構成であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】触媒CVD装置を模式的に示す図。
【図2】第一実施形態における成膜室の内部を示す断面図。
【図3】図2のA‐A線断面図。
【図4】第一実施形態における磁性部材の作用を示す断面図。
【図5】第二実施形態における成膜室の内部を示す断面図。
【図6】図5のA‐A線断面図。
【図7】第二実施形態における磁性部材の作用を示す断面図。
【図8】変更例における拘束磁場の作用を示す断面図。
【図9】変更例における拘束磁場の作用を示す断面図。
【図10】変更例における拘束磁場の作用を示す断面図。
【図11】従来例における触媒CVD装置を模式的に示す図。
【図12】従来例における触媒線の位置を示す断面図。
【図13】従来例における触媒線の位置を示す断面図。
【符号の説明】
【0060】
B1…連結磁場、I1…加熱電流、I2…拘束電流、S…基板、Sa…成膜面、12S…保持部としての成膜ステージ、10…成膜装置としての触媒CVD装置、15…触媒線、16…吊下げ部分、17…連結部分、20…磁場印加部を構成する導電線としての拘束線、30…磁場印加部を構成する磁性部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型FPD(Flat Panel Display )の製造技術には、原料ガスの化学反応を利用する
化学的気相成長法(CVD法:Chemical Vapor Deposition )が用いられている。CVD法としては、高温に加熱した基板表面上で化学反応を進行させる熱CVD法や、プラズマ化した雰囲気で化学反応を進行させるプラズマCVD法等が知られている。熱CVD法やプラズマCVD法では、基板を高温に加熱したり、基板をプラズマ空間に曝したりすることから、基板や下地膜に電気的、熱的損傷を与え易い問題がある。また、これらのCVD法では、膜厚の均一性を得るために、プラズマ密度や基板温度に高い均一性が要求されることから、基板の大型化に対応し難い問題がある。そこで、CVD法では、従来から、上記問題を解決するため、加熱したタングステン等の触媒線に原料ガスを接触させることにより原料ガスを成膜種に分解する、いわゆる、触媒CVD法が注目されている。
【0003】
触媒CVD法は、触媒線の表面が化学反応の進行を担い、基板へのプラズマ照射や基板の高温加熱を必要としないことから、基板や下地膜における電気的、熱的損傷を大幅に抑制できる。また、触媒CVD法は、触媒線を増量するだけで反応系を拡張できることから、基板の大型化に対しても比較的容易に対応できる。
【0004】
一方、触媒CVD法では、触媒線と基板成膜面との間の距離が短くなると、基板に到達する成膜種の量が増大し、反対に、触媒線と基板成膜面との間の距離が長くなると、基板に到達する成膜種の量が減少する。そのため、触媒線と基板成膜面との間の距離が基板成膜面の面内で大きく異なる場合には、膜厚均一性が大幅に損なわれてしまう。
【0005】
特許文献1は、膜厚均一性の向上を図るため、鉛直方向に沿って基板を立設すると共に、鉛直方向下側に延びるU字状に形成された複数の触媒線を、それぞれ基板の成膜面に沿って吊下げる。これによれば、複数の触媒線の各々が自重によって撓む場合であっても、各触媒線が鉛直方向に沿って変形し易くなるため、触媒線と基板成膜面との間の距離の変動が軽減される。そのため、基板成膜面と触媒線との間の距離が均一になる分だけ、薄膜の膜厚が、基板成膜面の面内において、より均一になる。
【特許文献1】特許2000‐303182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11は、触媒CVD法に利用される触媒CVD装置50の内部を示す図であって、上記のように、U字状に形成された複数の触媒線51の各々が、基板Sの成膜面Saに沿って吊下げられた状態を示す。図12及び図13は、それぞれ図11のA‐A断面図であって、図12は触媒線51に電流を供給しない状態を示し、図13は触媒線51に電流を供給した状態を示す。
【0007】
図11において、各触媒線51は、それぞれ鉛直方向下側へ延びる左右一対の平行な吊下げ部分52と、左右一対の吊下げ部分52の下端を結ぶ曲線状の連結部分53とに区分される。複数の触媒線51の各々は、成膜面Saの全体を覆うように、左右方向に沿って配列されている。図12において、各吊下げ部分52は、成膜面Saに沿って左右方向に略等間隔に吊下げられ、吊下げ部分52と成膜面Saとの間の距離Dを略等しくする位置(以下単に、初期位置と言う。)に配置されている。
【0008】
各触媒線51を所定温度に加熱するとき、各触媒線51には、それぞれ所定の電流Iが供給される。U字状の触媒線51に電流Iが供給されるとき、入力側の吊下げ部分52には、電流Iが鉛直方向下側へ流れ、出力側の吊下げ部分52には、電流Iが鉛直方向上側へ流れる。すなわち、左右一対の吊下げ部分52には、それぞれ相殺する方向へ電流Iが流れる。
【0009】
図13において、各吊下げ部分52にそれぞれ電流Iが流れると、各吊下げ部分52の周囲には、それぞれ吊下げ部分52を囲む閉曲線に沿って、該吊下げ部分52に流れる電流Iの方向に応じた磁場が形成される。1つの吊下げ部分52を流れる荷電粒子は、該吊下げ部分52を流れる電流により生じる磁場と、他の吊下げ部分52に流れる電流により生じる磁場と、触媒CVD装置50の外部からの磁場との正味の磁場によって力を受ける。この結果、各吊下げ部分52は、それぞれ周囲の磁場の強度分布に応じて、その初期位置から大幅に変位してしまう。
【0010】
例えば、図13において、地磁気のベクトルが左から右に向かう場合、1つの触媒線15に電流Iが供給されると、各触媒線51における左側の吊下げ部分52は上側への力を受け、右側の吊下げ部分52は下側への力を受ける。この結果、各触媒線51は、それぞれ電流Iを受けることによって、初期位置から右回りに回転し、一対の吊下げ部分52と成膜面Saとの間の距離Dにバラツキを発生させてしまう。ひいては、薄膜の膜厚均一性を大きく損なってしまう。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、電流供給時における触媒線の変位を回避させた成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の成膜装置は、基板の成膜面を立てて前記基板を保持する保持部と、前記成膜面と対向するように吊下げられる触媒線と、前記触媒線を加熱するために前記触媒線へ電流を供給する電源とを備え、加熱される前記触媒線へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成し、前記成膜種を前記成膜面に堆積させることによって前記成膜面に薄膜を成膜する成膜装置であって、前記触媒線を流れる荷電粒子に作用して前記触媒線を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成して前記触媒線に前記磁場を加える磁場印加部を備えることを要旨とする。
【0013】
請求項1に記載の成膜装置によれば、磁場印加部によって形成される磁場が、触媒線を成膜面に沿って拘束する。そのため、触媒線に電流が供給されるとき、触媒線は、所定位置に非接触的に保持される。したがって、この成膜装置は、触媒線の変位を回避でき、ひいては、触媒線と成膜面との間の距離を維持することができる。
【0014】
請求項2に記載の成膜装置は、請求項1に記載の成膜装置であって、前記保持部は、一対の基板の成膜面をそれぞれ対向させて前記一対の基板を保持し、前記触媒線は、前記一対の基板間の間隙に吊下げられる一対の吊下げ部分と、前記一対の吊下げ部分の下端を前記間隙の外側で結ぶ連結部分とからなり、前記磁場印加部は、前記間隙の外側に配置され、前記連結部分に流れる荷電粒子に作用することにより前記連結部分を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成することを要旨とする。
【0015】
請求項2に記載の成膜装置によれば、触媒線の連結部分と磁場印加部とが、一対の基板間の間隙の外側に配置され、磁場印加部によって形成される磁場が、連結部分を流れる荷電粒子に作用する。そのため、触媒線の連結部分は、触媒線の電流供給時に、一対の基板間の外側で拘束される。したがって、この成膜装置は、吊下げ部分への磁場の作用を抑え
ながら触媒線を拘束できることから、成膜種の生成反応に影響を及ぼすことなく、触媒線の変位を回避できる。
【0016】
請求項3に記載の成膜装置は、請求項1又は2に記載の成膜装置であって、前記触媒線は、鉛直方向に沿う直線状に形成される一対の吊下げ部分と、水平方向に沿う直線状に形成されて前記一対の吊下げ部分の下端を結ぶ連結部分とからなり、前記磁場印加部は、前記連結部分の近傍に設けられて前記水平方向に沿う導電線と、前記磁場を形成するために前記導電線へ電流を供給する電源とを備えることを要旨とする。
【0017】
請求項3に記載の成膜装置によれば、連結部分と導電線とが、共通する水平方向に沿って配置され、導電線を流れる電流が連結部分を拘束するための磁場を形成する。そのため、連結部分が形成する磁場と、導電線が形成する磁場とは、水平方向と直交する同一面内に沿って形成される。したがって、この成膜装置は、連結部分を流れる荷電粒子への正味の磁場を、より簡素な構成にできることから、触媒線の変位を確実に回避できる。
【0018】
請求項4に記載の成膜装置は、請求項1又は2に記載の成膜装置であって、前記触媒線は、鉛直方向に沿う直線状に形成される一対の吊下げ部分と、水平方向に沿う直線状に形成されて前記一対の吊下げ部分の下端を結ぶ連結部分とからなり、前記磁場印加部は、前記連結部分の近傍に配置されて前記磁場を形成する磁性体を備えることを要旨とする。
【0019】
請求項4に記載の成膜装置によれば、磁性体を連結部分の近傍に配置するだけで、連結部分が拘束される。したがって、この成膜装置は、より簡素な構成の下で触媒線の変位を回避できる。
【0020】
請求項5に記載の成膜方法は、基板の成膜面を立てて前記基板を保持すると共に、前記成膜面と対向するように吊下げられる触媒線へ電流を供給することにより前記触媒線を加熱し、加熱される前記触媒線へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成して前記成膜種を前記成膜面に堆積させることによって前記成膜面に薄膜を成膜する成膜方法であって、前記触媒線を流れる荷電粒子に作用して前記触媒線を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成して前記触媒線に前記磁場を加えることを要旨とする。
【0021】
請求項5に記載の成膜方法によれば、触媒線に対して加えられる磁場が、触媒線を成膜面に沿って拘束する。そのため、触媒線に電流が供給されるとき、触媒線は、成膜面に沿って非接触的に保持される。したがって、この成膜装置は、触媒線と成膜面との間の距離を維持することができ、触媒線の変位を回避できる。
【発明の効果】
【0022】
上記したように、本発明によれば、電流供給時における触媒線の変位を回避させた成膜装置及び成膜方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した第一実施形態を図面に従って説明する。図1は、成膜装置としての触媒CVD装置10を鉛直方向上側から見た図である。図1において、触媒CVD装置10は、搬入室11と、複数の成膜室12と、搬出室13とを、順にゲートバルブGVを介して連結させたインライン式の成膜装置である。なお、図1では、触媒CVD装置10が2つの成膜室12を有する構成を示す。
【0024】
搬入室11は、排気ラインPに連結される真空槽であり、外部からの基板Sを触媒CVD装置10の内部へ搬入する。搬入室11の内部には、基板Sを支持するための一対の搬
入ステージ11Sが配設されている。一対の搬入ステージ11Sは、それぞれ搬入室11に搬入された一対の基板Sを相対向するように保持すると共に、該一対の基板Sを成膜室12へ搬送する。
【0025】
各成膜室12は、それぞれ排気ラインPに連結される真空槽であり、ゲートバルブGVを介して他の真空槽に連結され、ゲートバルブGVが開くときに、他の真空槽と連通する。各成膜室12には、それぞれ図示しないガス供給系が連結され、該ガス供給系からの所定流量の原料ガスが供給される。各成膜室12の内部には、それぞれ基板Sを支持するための一対の成膜ステージ12Sが配設されている。一対の成膜ステージ12Sは、それぞれ他の真空槽からの基板Sを相対向するように保持し、一対の基板Sを所定温度に加熱すると共に、該一対の基板Sを他の真空槽へ搬送する。
【0026】
搬出室13は、排気ラインPに連結される真空槽であり、隣接する成膜室12からの基板Sを外部へ搬出する。搬出室13の内部には、基板Sを支持するための一対の搬出ステージ13Sが配設されている。一対の搬出ステージ13Sは、それぞれ搬出室13に搬入される一対の基板Sを水平方向へ倒し、該一対の基板Sを外部へ搬出する。
【0027】
各成膜室12の内部であって、一対の成膜ステージ12Sの間には、それぞれ鉛直方向下側へ延びる複数の触媒線15が吊下げられている。各触媒線15は、それぞれ基板Sの搬送方向に沿って配列されている。また、各成膜室12の内部には、それぞれ各触媒線15を挟むように、搬送方向に延びる磁場印加部としての一対の拘束線20が張設されている。
【0028】
図2は、基板Sの成膜面Saから見た成膜室12の内部を示す断面図であり、図3は、鉛直方向上側から見た成膜室12の内部を示す断面図であり、図2のA‐A断面図である。図4は、基板Sの搬送方向から見た触媒線15と拘束線20とを示す断面図である。
【0029】
図2及び図3において、各触媒線15は、それぞれタンタル、タングステン、モリブデン等からなる導電線であって、鉛直方向下側へ延びるコ字状に形成されている。各触媒線15は、それぞれ左右一対の平行な吊下げ部分16と、左右一対の吊下げ部分16の下端を水平方向に沿って結ぶ直線状の連結部分17とに区分される。各触媒線15は、それぞれ基板Sの成膜面Saの全体を覆うように、左右方向(搬送方向)に沿って配列されている。各触媒線15は、それぞれ吊下げ部分16と一対の基板Sの成膜面Saとの間の距離Dが略等しくなる位置に吊下げられている。
【0030】
各触媒線15は、それぞれ外部の直流電源に直列接続されている。各触媒線15は、直流電源からの所定の加熱電流I1を受けることにより、所定温度に昇温する。昇温した触媒線15は、原料ガスと接触することにより、原料ガスを活性化させ、基板Sの成膜面Saに成膜種を堆積させる。触媒線51に加熱電流I1が供給されるとき、入力側の吊下げ部分16には、加熱電流I1が鉛直方向下側へ流れ、出力側の吊下げ部分16には、加熱電流I1が鉛直方向上側へ流れる。そして、連結部分17には、加熱電流I1が、図2及び図3における右側から左側へ流れる。なお、本実施形態においては、各触媒線15の位置であって、加熱電流I1が供給されていない状態の位置を、初期位置と言う。
【0031】
一対の拘束線20は、それぞれ熱的及び機械的耐性を有する導電線であって、水平方向に沿って張設され、かつ、各連結部分17の下側に位置決め固定されている。一対の拘束線20は、それぞれ成膜室12の左右両側に設けられる外部端子18を介して、外部の直流電源に接続されている。直流電源からの拘束電流I2が一対の拘束線20に供給されるとき、一対の拘束線20には、それぞれ拘束電流I2が、図2及び図3における右側から左側へ流れる。すなわち、各拘束線20と各連結部分17とには、同じ方向への電流が流
れる。
【0032】
図4において、加熱電流I1が触媒線15に供給されるとき、触媒線15における連結部分17の周囲には、連結部分17を囲む閉曲線に沿って、左回りの連結磁場B1が形成される。また、拘束電流I2が一対の拘束線20に供給されるとき、一対の拘束線20の周囲には、それぞれ拘束線20を囲む閉曲線に沿って、左周りの拘束磁場B2が形成される。連結部分17に流れる荷電粒子は、連結磁場B1と各拘束磁場B2との正味の磁場によって、鉛直方向下側への力(以下単に、作用力Fと言う。)を受ける。
【0033】
詳述すると、連結部分17を挟んで拘束線20の側(以下単に、内側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。また、連結部分17を挟んで拘束線20と反対側(以下単に、外側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される。
【0034】
そのため、連結部分17を流れる荷電粒子は、外側における正味の磁場によって相対的に大きな力を受け、内側における正味の磁場によって殆ど力を受けない。この結果、各連結部分17は、それぞれ一方の拘束線20へ向かう力と、他方の拘束線20へ向かう力との正味の力、すなわち、鉛直方向下側への作用力Fを受ける。
【0035】
この結果、触媒CVD装置10は、各触媒線15に加熱電流I1を供給し、かつ、各拘束線20に拘束電流I2を供給することにより、各連結部分17に対して、非接触的に作用力Fを加えることができる。そのため、触媒CVD装置10は、触媒線15を鉛直方向に沿って非接触的に張設することができ、触媒CVD装置10の外部からの磁場や他の触媒線15からの磁場に関わらず、各触媒線15の初期位置を維持できる。ひいては、触媒CVD装置10は、各吊下げ部分16と成膜面Saとの間の距離Dを均一にすることができ、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
【0036】
上記第一実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上記第一実施形態において、触媒CVD装置10は、触媒線15を流れる荷電粒子に作用して触媒線15を成膜面に沿って拘束する拘束磁場B2を形成する拘束線20を備え、拘束線20が、触媒線15に拘束磁場B2を加える。したがって、触媒線15に加熱電流I1が供給されるとき、触媒線15は、初期位置に非接触的に保持される。この結果、触媒CVD装置10は、触媒線15の変位を回避でき、ひいては、触媒線15と成膜面Saとの間の距離Dを維持することができる。
【0037】
(2)上記第一実施形態において、成膜ステージ12Sは、一対の基板Sの成膜面Saをそれぞれ対向させて一対の基板Sを保持し、触媒線15は、一対の基板Sの間の間隙に吊下げられる一対の吊下げ部分16と、一対の吊下げ部分16の下端を基板S間の間隙の外側で結ぶ連結部分17とからなる。そして、拘束線20は、基板S間の間隙の下側に配置され、連結部分17に流れる荷電粒子に作用することにより連結部分17を下側へ引っ張るための拘束磁場B2を形成する。
【0038】
したがって、触媒線15の連結部分17は、触媒線15の電流供給時に、一対の基板S間の外側で拘束される。この結果、触媒CVD装置10は、吊下げ部分16への拘束磁場B2の作用を抑えながら触媒線15を拘束できることから、成膜反応に影響を及ぼすことなく、触媒線15の変位を回避できる。
【0039】
(3)上記第一実施形態において、連結部分17と拘束線20とが、共通する水平方向に沿って配置され、拘束線20を流れる拘束電流I2が連結部分17を拘束するための拘束磁場B2を形成する。そのため、連結部分17が形成する連結磁場B1と、拘束線20
が形成する拘束磁場B2とは、水平方向と直交する同一面内に沿って形成される。したがって、触媒CVD装置10は、連結部分17を流れる荷電粒子への正味の磁場を、より簡素な構成にできることから、触媒線15の変位を確実に回避できる。
【0040】
(第二実施形態)
以下、本発明を具体化した第二実施形態を図面に従って説明する。第二実施形態は、第一実施形態の拘束線20を変更したものである。そのため、以下においては、その変更点について詳しく説明する。図5は、基板Sの成膜面Saから見た成膜室12の内部を示す断面図であり、図6は、図5のA‐A断面図である。図7は、基板Sの搬送方向から見た触媒線15と磁性部材30とを示す断面図である。
【0041】
図5及び図6において、成膜室12の内部であって、各連結部分17の下方には、磁場印加部としての複数の磁性部材30が配設されている。各磁性部材30は、それぞれ鉛直方向から見て、各連結部分17の両側を挟むように配置され、図示しない取り付け部材によって成膜室12に位置決めされている。
【0042】
各磁性部材30は、それぞれ連結部分17と直交する面に沿って拘束磁場B2を形成する磁性体を備えている。磁性部材30としては、例えば、外部からの電流の供給を受けることなく磁場を形成する永久磁石、あるいは、外部からの電流の供給を受けることにより磁場を形成する電磁石を用いることができる。
【0043】
図7において、各磁性部材30は、それぞれ連結部分17の側に、左周りの拘束磁場B2を形成する。連結部分17を挟んで磁性部材30の側(以下単に、内側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。また、連結部分17を挟んで磁性部材30の反対側(以下単に、外側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される。
【0044】
そのため、連結部分17を流れる荷電粒子は、外側における正味の磁場によって相対的に大きな力を受け、内側における正味の磁場によって殆ど力を受けない。この結果、各連結部分17は、それぞれ一方の磁性部材30へ向かう力と、他方の磁性部材30へ向かう力との正味の力、すなわち、鉛直方向下側への作用力Fを受ける。
【0045】
この結果、触媒CVD装置10は、各触媒線15に加熱電流I1を供給し、かつ、各磁性部材30に拘束磁場B2を形成させることにより、各連結部分17に対して、鉛直方向下側への作用力Fを非接触的に加えることができる。そのため、触媒CVD装置10は、触媒線15を鉛直方向に沿って非接触的に張設することができる。ひいては、触媒CVD装置10は、各吊下げ部分16と成膜面Saとの間の距離Dを均一にすることができ、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
【0046】
上記第二実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(5)上記第二実施形態において、磁性部材30は、連結部分17の下側近傍に配置されて拘束磁場B2を形成するための磁性体を備える。したがって、触媒CVD装置10は、磁性体を連結部分17の下側近傍に配置するだけで、連結部分17を拘束できる。この結果、触媒CVD装置10は、より簡素な構成の下で触媒線15の変位を回避できる。
【0047】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態において、磁場印加部(拘束磁場B2の発生源)は連結部分17の下方に配置される。これに限らず、拘束磁場B2の発生源は連結部分17の上方に配置される構成であっても良い。この際、図8に示すように、連結部分17を挟んで発生源PBの側(以下単に、内側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される
。また、連結部分17を挟んで発生源PBと反対側(以下単に、外側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。
【0048】
これによれば、連結部分17を流れる荷電粒子は、内側における正味の磁場によって、相対的に大きな力を受ける。その結果、連結部分17は、一方の発生源PBから離れる力と、他方の発生源PBから離れる力との正味の力、すなわち、鉛直方向下側への作用力Fを受ける。したがって、上記実施形態と同じく、触媒CVD装置10は、触媒線15を、鉛直方向に沿って非接触的に張設することができ、ひいては、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
【0049】
・上記実施形態において、触媒CVD装置10は、1つの連結部分17に対して、一対の磁場印加部を具備する。これに限らず、触媒CVD装置10は、1つの連結部分17に対して、1つあるいは3つ以上の磁場印加部を具備する構成でも良い。
【0050】
例えば、図9に示すように、触媒CVD装置は、連結部分17の直下に、1つの磁場印加部による拘束磁場B2を形成する。そして、連結部分17を挟んで下側では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。また、連結部分17を挟んで上側では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される。
【0051】
これによれば、連結部分17が一つの磁場印加部によって鉛直方向下側への作用力Fを受けることから、より簡便な構成の下で、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
・上記実施形態において、連結部分17は鉛直方向下側への作用力Fを受ける。これに限らず、連結部分17は鉛直方向上側への作用力Fを受ける構成であっても良い。すなわち、図10に示すように、拘束磁場B2の発生源PBが連結部分17の上方に配置される。そして、連結部分17を挟んで発生源PBの側(以下単に、内側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1を打ち消すように形成される。また、連結部分17を挟んで発生源PBと反対側(以下単に、外側と言う。)では、拘束磁場B2が連結磁場B1に沿うように形成される構成であっても良い。
【0052】
これによれば、連結部分17を流れる荷電粒子は、外側における正味の磁場によって相対的に大きな力を受ける。この結果、連結部分17に鉛直方向上側への作用力Fが加えられる分だけ、各吊下げ部分16に対して、基板Sへの移動が抑えられる。その結果、触媒CVD装置10は、各吊下げ部分16と成膜面Saとの間の距離Dを均一にすることができ、成膜面Saにおける膜厚分布を均一にできる。
【0053】
・上記実施形態において、各触媒線15は、一つの直流電源に直列接続される。これに限らず、各触媒線15は、それぞれ一つの直流電源に並列接続されても良い。さらに、各触媒線15は、それぞれ異なる直流電源に接続されても良い。
【0054】
・上記実施形態において、連結部分17は、水平方向に沿って延びる直線状を呈する。これに限らず、連結部分17は、成膜面Saに沿って延びる直線状、あるいは、曲線状であっても良い。すなわち、連結部分17は、連結部分17を流れる荷電粒子が拘束磁場B2を受けることにより、連結部分17が成膜面Saに沿う作用力Fを受ける構成であれば良い。
【0055】
・上記実施形態において、磁場印加部を構成する拘束線20や磁性部材30は、それぞれ連結部分17に拘束磁場B2を加える。これに限らず、磁場印加部は、吊下げ部分16に拘束磁場B2を加える構成であっても良い。すなわち、磁場印加部は、触媒線15を流れる荷電粒子に作用して触媒線15を成膜面Saに沿って拘束する拘束磁場B2を形成する構成であれば良い。
【0056】
・上記実施形態において、基板Sの成膜面Saは、鉛直方向に沿って立てられる。これに限らず、基板Sの成膜面Saは、鉛直方向に対して傾斜する方向に立てられる構成であっても良い。
【0057】
・上記実施形態において、連結部分17は、一対の基板Sの間の間隙の外側に配置されるが、これに限らず、連結部分17は、一対の基板Sの間の間隙に配置される構成であっても良い。
【0058】
・上記第二実施形態において、各連結部分17が形成する拘束磁場B2は、それぞれ図7における左回りである。これに限らず、各連結部分17が形成する拘束磁場B2は、それぞれ図7における右回りと左回りのいずれか一方であっても良い。この際、連結部分17が、該連結部分17に対応する磁性部材30に近い側において、拘束磁場B2を相殺するように、連結磁場B1を形成する構成であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】触媒CVD装置を模式的に示す図。
【図2】第一実施形態における成膜室の内部を示す断面図。
【図3】図2のA‐A線断面図。
【図4】第一実施形態における磁性部材の作用を示す断面図。
【図5】第二実施形態における成膜室の内部を示す断面図。
【図6】図5のA‐A線断面図。
【図7】第二実施形態における磁性部材の作用を示す断面図。
【図8】変更例における拘束磁場の作用を示す断面図。
【図9】変更例における拘束磁場の作用を示す断面図。
【図10】変更例における拘束磁場の作用を示す断面図。
【図11】従来例における触媒CVD装置を模式的に示す図。
【図12】従来例における触媒線の位置を示す断面図。
【図13】従来例における触媒線の位置を示す断面図。
【符号の説明】
【0060】
B1…連結磁場、I1…加熱電流、I2…拘束電流、S…基板、Sa…成膜面、12S…保持部としての成膜ステージ、10…成膜装置としての触媒CVD装置、15…触媒線、16…吊下げ部分、17…連結部分、20…磁場印加部を構成する導電線としての拘束線、30…磁場印加部を構成する磁性部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の成膜面を立てて前記基板を保持する保持部と、
前記成膜面と対向するように吊下げられる触媒線と、
前記触媒線を加熱するために前記触媒線へ電流を供給する電源とを備え、
加熱される前記触媒線へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成し、前記成膜種を前記成膜面に堆積させることによって前記成膜面に薄膜を成膜する成膜装置であって、
前記触媒線を流れる荷電粒子に作用して前記触媒線を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成して前記触媒線に前記磁場を加える磁場印加部を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記保持部は、
一対の基板の成膜面をそれぞれ対向させて前記一対の基板を保持し、
前記触媒線は、
前記一対の基板間の間隙に吊下げられる一対の吊下げ部分と、前記一対の吊下げ部分の下端を前記間隙の外側で結ぶ連結部分とからなり、
前記磁場印加部は、
前記間隙の外側に配置され、前記連結部分に流れる荷電粒子に作用することにより前記連結部分を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成することを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成膜装置であって、
前記触媒線は、
鉛直方向に沿う直線状に形成される一対の吊下げ部分と、水平方向に沿う直線状に形成されて前記一対の吊下げ部分の下端を結ぶ連結部分とからなり、
前記磁場印加部は、
前記連結部分の近傍に設けられて前記水平方向に沿う導電線と、
前記磁場を形成するために前記導電線へ電流を供給する電源とを備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の成膜装置であって、
前記触媒線は、
鉛直方向に沿う直線状に形成される一対の吊下げ部分と、水平方向に沿う直線状に形成されて前記一対の吊下げ部分の下端を結ぶ連結部分とからなり、
前記磁場印加部は、
前記連結部分の近傍に配置されて前記磁場を形成する磁性体を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
基板の成膜面を立てて前記基板を保持すると共に、前記成膜面と対向するように吊下げられる触媒線へ電流を供給することにより前記触媒線を加熱し、加熱される前記触媒線へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成して前記成膜種を前記成膜面に堆積させることによって前記成膜面に薄膜を成膜する成膜方法であって、
前記触媒線を流れる荷電粒子に作用して前記触媒線を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成して前記触媒線に前記磁場を加えることを特徴とする成膜方法。
【請求項1】
基板の成膜面を立てて前記基板を保持する保持部と、
前記成膜面と対向するように吊下げられる触媒線と、
前記触媒線を加熱するために前記触媒線へ電流を供給する電源とを備え、
加熱される前記触媒線へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成し、前記成膜種を前記成膜面に堆積させることによって前記成膜面に薄膜を成膜する成膜装置であって、
前記触媒線を流れる荷電粒子に作用して前記触媒線を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成して前記触媒線に前記磁場を加える磁場印加部を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記保持部は、
一対の基板の成膜面をそれぞれ対向させて前記一対の基板を保持し、
前記触媒線は、
前記一対の基板間の間隙に吊下げられる一対の吊下げ部分と、前記一対の吊下げ部分の下端を前記間隙の外側で結ぶ連結部分とからなり、
前記磁場印加部は、
前記間隙の外側に配置され、前記連結部分に流れる荷電粒子に作用することにより前記連結部分を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成することを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成膜装置であって、
前記触媒線は、
鉛直方向に沿う直線状に形成される一対の吊下げ部分と、水平方向に沿う直線状に形成されて前記一対の吊下げ部分の下端を結ぶ連結部分とからなり、
前記磁場印加部は、
前記連結部分の近傍に設けられて前記水平方向に沿う導電線と、
前記磁場を形成するために前記導電線へ電流を供給する電源とを備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の成膜装置であって、
前記触媒線は、
鉛直方向に沿う直線状に形成される一対の吊下げ部分と、水平方向に沿う直線状に形成されて前記一対の吊下げ部分の下端を結ぶ連結部分とからなり、
前記磁場印加部は、
前記連結部分の近傍に配置されて前記磁場を形成する磁性体を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
基板の成膜面を立てて前記基板を保持すると共に、前記成膜面と対向するように吊下げられる触媒線へ電流を供給することにより前記触媒線を加熱し、加熱される前記触媒線へ原料ガスを供給することにより成膜種を生成して前記成膜種を前記成膜面に堆積させることによって前記成膜面に薄膜を成膜する成膜方法であって、
前記触媒線を流れる荷電粒子に作用して前記触媒線を前記成膜面に沿って拘束する磁場を形成して前記触媒線に前記磁場を加えることを特徴とする成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−182150(P2009−182150A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19784(P2008−19784)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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