説明

成膜装置

【課題】ガスガイドプレートが貫通穴を有していても、薄膜の結晶性に対する影響が抑えられ、かつ、他の部品に反応生成物が堆積することを抑制することができる成膜装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るMOCVD装置100は、反応ガスを供給して基板の被成膜面を成膜する成膜装置であって、基板2を保持する基板保持台3と、基板保持台3に対向して配置され、基板2の被成膜面に対向する位置に貫通穴7を有するガスガイドプレート6と、基板保持台3とガスガイドプレート6との間に反応ガス8aを流す反応ガス配管8とを備えている。ガスガイドプレート6における基板2に対向する側において、貫通穴7にガス流の下流側で接する下流側端部13は、上流側で接する上流側端部12よりも、基板2の被成膜面との最短距離が長い。このため、反応ガス8aが、貫通穴7を通じて吹き出すことが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にガスを利用して結晶成長させるMOCVD装置等の成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザー素子、LED(Light Emitting Diode)素子等の化合物半導体の製造には、MOCVD(有機金属化学気相成長法;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置が好適に用いられている。
【0003】
一般に、MOCVD装置では、反応ガスを反応室内に導入して加熱し、基板上で気相反応させることにより、その基板上に化合物半導体結晶を成長させている。基板上に再現性良く結晶成長を行うには、基板温度を所定の温度に保つことと、反応ガスを均一な濃度分布と流量で基板上に供給することが必要である。このため、結晶成長過程における基板の反りや温度を測定して確認しつつ結晶成長を進めることが望ましい。
【0004】
基板の反りや温度を測定するためには、通常、反応ガスを封じ込めてプロセス環境を整える、チャンバと呼ばれる箱状や筒状などの反応室の外壁に、内部を視認可能なビューポートを設け、このビューポート越しに上記測定を行うことが一般的である。
【0005】
例えば、基板の反りを測定する場合、反り測定装置が測定光を出射して、ビューポート越しに基板表面を照射し、当該基板からの反射光を受光する。基板が反ると基板の反りに応じて測定光がある反射角を有して反射されるため、受光部では基板の反りが小さい場合と大きい場合とで受光位置が異なる。反り測定装置は、受光位置の違いを利用して基板の反りを測定する。
【0006】
ところで、MOCVD装置では、反応ガスを効率よく基板近傍に流すためにガスガイドプレートを設けていることが多い。ガスガイドプレートとは、基板の被成膜面側の上部空間を、基板側の空間と反応室の内壁側の空間とに隔てる隔壁である。ガスガイドプレートが設けられているMOCVD装置では、成膜中に基板の反りや温度を測定するために、ガスガイドプレートに貫通穴を設け、ビューポートから当該貫通穴を介して基板の被処理面を臨み得るようになっている。
【0007】
例えば、特許文献1に開示されたMOCVD装置について簡単に説明する。
【0008】
図8(a)は、特許文献1のMOCVD装置201を示す側面図であり、(b)はその上面図であり、(c)はその断面図である。図8(a)〜(c)に示すように、MOCVD装置201では、二重構造を構成する外管壁201および内管壁203の内側において、サセプタ205上に基板206が載置される。外管壁201には光の透過可能な窓202が設けられており、また内管壁203に光の通過する穴204が設けられている。このため、MOCVD装置201では、窓202および穴204を介して基板206に光209を照射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−188218号公報(1987年8月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ガスガイドプレートに貫通穴が設けられている従来のMOCVD装置では、基板の被成膜面側の上部空間において、基板側の空間の圧力が、反応室の内壁側の空間の圧力よりも高い場合、反応ガスが基板側の空間に留まらず、貫通穴を通じて反応室の内壁側に吹き出してしまう。この結果、基板上に得られる薄膜の結晶性などに悪影響が生じる恐れがある。
【0011】
また、吹き出した反応ガスがビューポート近傍に到達することにより、ビューポートに反応生成物が堆積してしまい、基板の反りや温度を測定するための測定光が当該反応生成物により反射してしまう。この結果、基板の反りや温度測定から得られるデータは本来得られるはずの値とは異なった値になってしまう。
このため、ビューポートの交換や掃除が頻繁に必要になってくる。
【0012】
さらに、ビューポートだけでなく、例えばヒーターや駆動部などの他の部品についても、反応生成物が堆積すると不具合が生じてしまい、これらの部品の交換や掃除が頻繁に必要になる。
【0013】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガスガイドプレートが貫通穴を有していても、薄膜の結晶性に対する影響が抑えられ、かつ、他の部品に反応生成物が堆積することを抑制することができる成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る成膜装置は、上記課題を解決するために、反応ガスを供給して基板の被成膜面を成膜する成膜装置であって、上記基板を保持する基板保持台と、上記基板に対向して配置され、上記基板に対向する位置に貫通穴を有するガスガイドプレートと、上記基板保持台と上記ガスガイドプレートとの間に上記反応ガスを流すガス供給手段とを備え、上記ガスガイドプレートにおける上記基板に対向する側において、上記貫通穴に対して上記反応ガスによるガス流の下流側で接する下流側端部は、上記貫通穴に対して上流側で接する上流側端部よりも、上記基板の被成膜面との最短距離が長いことを特徴としている。
【0015】
上記構成において、ガスガイドプレートは、ガス供給手段によって供給された反応ガスが保持台上の基板の被成膜面に向かって流れるように、反応ガスの流路を規定している。また、ガスガイドプレートには、例えば基板の被成膜面を外部から望みえるように、当該被成膜面に対向する位置に貫通穴が形成されている。
【0016】
上記構成によれば、基板に向かって流れた反応ガスは、当該基板と貫通穴との間を流れる。ガスガイドプレートにおいて下流側端部と基板との距離は、上流側端部と基板との距離よりも大きいため、基板と貫通穴との間を流れる反応ガスの流路の断面積は、貫通穴の上流側よりも下流側において大きい。すなわち、上記反応ガスの圧力は、貫通穴の上流側から下流側にかけて減少する。このため、上記反応ガスは貫通穴の上流側から下流側に向かって流れ易くなる。これによって、反応ガスが、ガスガイドプレートと基板との間の空間から貫通穴を通じて吹き出すことを抑制することができる。
【0017】
したがって、本発明に係る成膜装置では、基板上におけるガスの濃度分布や流量の変化を抑えることができ、結果得られる薄膜の結晶性などに及ぼす影響を抑えることができる。また、ガスガイドプレートを挟んで基板とは反対側に、ビューポートやその他の部品が配置されていたとしても、これら部品と反応ガスとの接触の割合が減少するため、反応生成物による不具合を抑えることができ、交換や掃除の頻度を減少させることができる。
【0018】
本発明に係る成膜装置は、上記基板を収容する反応室と、上記反応室の壁に設けられ、上記貫通穴を介して上記被成膜面を臨み得るビューポートとを備えることが好ましい。
【0019】
上記構成において、反応室内における成膜中の基板について、ビューポートおよび貫通穴を介して観察や測定を行うことができる。上記構成によれば、反応ガスがビューポートに到達する割合が減少するため、ビューポートに反応生成物が堆積することが抑制される。このため、成膜中における基板の反りや温度の測定において、正確なデータを得ることができる。また、ビューポートの交換や掃除の頻度を減少させることができる。
【0020】
本発明に係る成膜装置において、上記ガスガイドプレートは、上記基板に対向する側において、上記下流側端部を含み、かつ上記上流側端部よりも上記基板の被成膜面との最短距離が長い任意の段差領域を有することが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、基板に向かって流れた反応ガスは、基板と貫通穴との間を経由し、さらに上記領域に向かって流れる。この反応ガスの流れる流路の断面積は、下流側における上記領域に接する空間において、貫通穴の上流側よりも大きくなる。このため、反応ガスは貫通穴の下流側に向かってより流れ易くなる。よって、反応ガスが、ガスガイドプレートと基板との間の空間から貫通穴を通じて吹き出すことをより効果的に抑制することができる。
【0022】
本発明に係る成膜装置において、上記段差領域における上記ガス流の下流側の終端は、上記基板における上記ガス流の下流側の終端よりも、下流側にあることが好ましい。
【0023】
上記構成では、ガスガイドプレートにおける基板と対向する側において、基板の被成膜面との最短距離が上記領域よりも下流側において短くなる場合、反応ガスが上記領域よりも下流側に流れる際、当該反応ガスの流路断面積は減少する。このとき、当該反応ガスの圧力は増加するため、上記領域における下流側には反応ガスの吹きだまりが生じてしまう。
【0024】
しかしながら、上記構成によれば、上記領域における下流側の終端位置は、基板の下流側の終端よりも下流側にある。このため、上記吹きだまりが生じる空間は基板よりも下流側に位置することになり、基板に対する反応ガスの吹きだまりの影響を小さくすることができる。
【0025】
さらに、本発明に係る成膜装置において、上記ガスガイドプレートは、上記段差領域の上記終端に接する位置に、上記ガス流の下流に向かうほど上記基板の被成膜面との最短距離が短くなる傾斜面を有することが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、上記領域から傾斜面に向かって流れる反応ガスの流路断面積は徐々に減少する。このため、当該反応ガスの圧力は徐々に変化することになる。結果として、反応ガスの吹きだまりを抑えることができ、基板上における反応ガスの濃度分布の変化を抑えることができる。
【0027】
また、本発明に係る成膜装置において、上記ガスガイドプレートは、上記下流側端部を含み、かつ上記ガス流の下流に向かうほど上記基板の被成膜面との最短距離が短くなる傾斜面を有してもよい。
【0028】
上記構成によれば、傾斜面の近傍を流れる反応ガスの流路断面積は徐々に減少する。このため、当該反応ガスの圧力は徐々に変化することになる。結果として、反応ガスの吹きだまりを抑えることができ、基板上における反応ガスの濃度分布の変化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る成膜装置は、反応ガスを供給して基板の被成膜面を成膜する成膜装置であって、ガスガイドプレートにおける基板に対向する側において、貫通穴にガス流の下流側で接する下流側端部は、上流側で接する上流側端部よりも、基板の被成膜面との最短距離が長い。このため、ガスガイドプレートが貫通穴を有していても、薄膜の結晶性に対する影響が抑えられ、かつ、他の部品に反応生成物が堆積することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は本実施形態に係るMOCVD装置の概略構成を断面図であり、(b)はその貫通穴を示す上面図であり、(c)はその貫通穴を示す断面図である。
【図2】(a)は図1に示す貫通穴の変形例を示す断面図であり、(b)はその上面図であり、(c)はその拡大断面図である。
【図3】(a)は図1に示す貫通穴の他の変形例を示す断面図であり、(b)はその上面図であり、(c)はその拡大断面図である。
【図4】(a)は図1に示す貫通穴の他の変形例を示す断面図であり、(b)はその上面図であり、(c)はその拡大断面図である。
【図5】実施例に係るMOCVD装置の要部構成を示す断面図である。
【図6】(a)は従来のMOCVD装置の要部構成を示す断面図であり、(b)はその貫通穴を示す上面図であり、(c)はその貫通穴を示す断面図である。
【図7】実施例および比較例の解析結果を示す表である。
【図8】(a)は特許文献1のMOCVD装置を示す側面図であり、(b)はその上面図であり、(c)はその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図7に基づき、詳細に説明する。
【0032】
(MOCVD装置100の構成)
まず、本実施形態に係るMOCVD装置(成膜装置)100の構成について図1(a)を参照して説明する。図1(a)は、本実施形態に係るMOCVD装置100の概略構成を示す断面図である。
【0033】
図1(a)に示すように、MOCVD装置100は、チャンバ1、基板2を保持する保持台3、基板2を回転させる回転台4、加熱手段として保持台3の下側に配置されるヒーター5、ガスガイドプレート6、反応ガス8aを供給する反応ガス配管8、パージガス9aを供給するパージガス配管9、および、測定装置11などを備えている。
【0034】
チャンバ(反応室)1は、反応ガス8aを供給して基板2の被処理面に結晶を成長させるための容器である。チャンバ1には、内部に配置された基板2の被成膜面を臨み得るようにビューポート10が形成されている。ビューポート10は、光が透過することができるような透明材料から構成される。
【0035】
保持台(基板保持台)3は、回転台4に対して等間隔に複数配置されており、その上面には基板2が配置される。回転台4は、回転軸(図示しない)を有しており、モーター(図示しない)に駆動されることによって、保持台3に配置された基板2を回転させる。これによって、複数の基板2の間における薄膜の膜厚を均一化することができる。
【0036】
なお、本実施形態において、保持台2は、基板2の被成膜面と回転台4の上面とが同一平面上になるように基板2を保持している。
【0037】
ヒーター5は、成膜過程において、基板2の温度を最大1300℃程度まで上昇させることができ、この熱によって反応ガス8aに気相反応を生じさせる。このとき、基板2には反応ガス8aの成分に応じた結晶薄膜が成膜される。
【0038】
ガスガイドプレート6は、保持台3および回転台4の上面に対向して配置されている。ガスガイドプレート6は、反応ガス8aとパージガス9aとを仕切り、かつ反応ガス8aを基板2近傍のみに流す構造を有する。また、ガスガイドプレート6には、基板2の中央部に対向する位置に貫通穴7が設けられている。なお、ガスガイドプレート6における貫通穴7周辺の形状については後述にて詳細に説明する。
【0039】
反応ガス配管(ガス供給手段)8は反応ガス源に接続されており、そのガス吹き出し口は、チャンバ1の中心部において、ガスガイドプレート6と回転台4との間に配置される。このため、反応ガス配管8から供給された反応ガス8aは、ガスガイドプレート6と回転台4との間において、チャンバ1の中心部から放射状に流れる。なお、反応ガス8aは、例えばトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム、またはアンモニアなどの原料成分と水素や窒素などのキャリアから成る。また、以下の説明において、「ガス流」とは、反応ガス8aの流れを意味するものとする。
【0040】
一方、パージガス配管9はパージガス供給源に接続されており、そのガス吹き出し口は、チャンバ1の中心部において、チャンバ1の内壁とガスガイドプレート6との間に配置される。したがって、パージガス配管9から供給されたパージガス9aは、チャンバ1の内壁とガスガイドプレート6との間において、チャンバ1の中心部から放射状に流れる。なお、パージガス9aは、反応ガスを含まないガスであればよく、例えば水素や窒素などを好適に使用することができる。
【0041】
測定装置11は、チャンバ1の外側においてビューポート10の直上に配置されている。測定装置11は、成膜中、ビューポート10および貫通穴7を介して、チャンバ1内に配置された基板2の被成膜面に対してレーザー光を照射し、基板2が反射した光を受光して、結晶成長中における基板2の反りまたは温度を測定することができる。
【0042】
(従来のガスガイドプレート106)
次に、従来のMOCVD装置におけるガスガイドプレート106について、図6を参照して説明する。図6(a)は、従来のMOCVD装置の要部構成を示す断面図であり、(b)は従来のMOCVD装置におけるガスガイドプレート106の貫通穴107を示す上面図であり、(c)は貫通穴107の中心線を含み、かつガス流速方向に平行な面における貫通穴107を示す断面図である。
【0043】
図6に示すように、従来のMOCVD装置では、基板102の被成膜面とガスガイドプレート106との間の間隔が、貫通穴7の上流側と下流側とにおいて一定である。このため、ガスガイドプレート106と基板102との間の圧力が、ガスガイドプレート106とチャンバの壁(図示しない)との間の圧力よりも高い場合、図6(a)の矢印に示すように、反応ガス108が貫通穴107を通って吹き出てしまう。この結果、得られる薄膜の結晶性に悪影響が及んだり、ビューポート(図示しない)に反応生成物が堆積したりという不具合が生じてしまう。
【0044】
(本実施形態のガスガイドプレート6)
次に、本実施形態に係るMOCVD装置100におけるガスガイドプレート6について図1(b)(c)を参照して説明する。図1(b)は、ガスガイドプレート6の貫通穴7を示す上面図であり、(c)は貫通穴7の中心線を含み、かつガス流速方向に平行な面における貫通穴7を示す断面図である。
【0045】
なお、以下の説明において、ガス流の上流側を「上流側」と称し、ガス流の下流側を「下流側」と称する。また、以下の説明において、単に「反応ガス8a」と称するとき、特段の断りがない限り、基板2と貫通穴7との間を流れる反応ガス8aについて述べるものとする。
【0046】
図1(b)(c)に示すように、ガスガイドプレート6は、貫通穴7を通る線と貫通穴7の周囲に接する線とのそれぞれに沿って折り曲げられている。これによって、ガスガイドプレート6には、貫通穴7の下流側において、貫通穴7の下流側との間に段差dを有する段差領域6aが形成される。
【0047】
ここで、図1(c)に示すように、ガスガイドプレート6における基盤2に対向する面において貫通穴7の縁を構成する端部のうち、上流側の端部、すなわち反応ガス配管8のガス吹き出し口に最も近い端部を上流側端部12とする。また、下流側の端部、すなわち反応ガス配管8のガス吹き出し口に最も遠い端部を下流側端部13とする。なお、下流側端部13は段差領域6aに含まれる。このとき、ガスガイドプレート6における基板2側の面と基板2表面との間の最短距離に関して、下流側端部13における距離は、上流側端部12における距離よりも長くなる。
【0048】
上記構成によれば、反応ガス8aの流路断面積は、貫通穴7の上流側から下流側にかけて増加しているため、反応ガス8aの圧力は、貫通穴7の上流側から下流側にかけて減少している。このため、反応ガス8aは、貫通穴7の上流側から下流側へ向かって流れやすくなっている。
【0049】
この結果、反応ガス8aがガスガイドプレート6の貫通穴7を通じて吹き出し難くなるため、反応ガス8aがビューポート10へ到達する割合も減少する。したがって、基板2上における反応ガス8aの濃度分布や流量の変化を抑えることができ、基板2の被成膜面に得られる薄膜の結晶性への悪影響を抑制することができる。
【0050】
また、ビューポート10に到達する反応ガス8aの割合を減少させることができるため、ビューポート10に対して反応生成物が堆積することを抑制できる。このため、測定装置11は、堆積物に測定光を阻害されることなく、成膜中における基板2の反りや温度などを正確に測定することができる。また、ビューポート10の交換や掃除の頻度を減らすことができる。
【0051】
さらに、反応生成物が堆積してしまうと問題になってしまう部品、例えばヒーターや駆動部などについても、反応ガス8aが到達する割合を減少させることができるため、これらの部材の交換や掃除の頻度を減らすことができる。
【0052】
(ガスガイドプレート6の他の例)
ガスガイドプレート6の下流側端部13を含む端部の形状は、種々の変形が可能である。ガスガイドプレート6の他の例について図2〜図4を参照して説明する。
【0053】
なお、以下に記載する各変形例と上述した実施形態とは、ガスガイドプレート6における基板2側の面と基板2表面との間の最短距離に関して、下流側端部13における距離は上流側端部12における距離よりも長くなる点において共通している。このため、上述した本実施形態の効果は、全て以下の各変形例にも適用される。
【0054】
図2に示すように、ガスガイドプレート6は、基板2に対向する側において、下流側端部13を含み、かつ上流側端部12との間に段差を有する段差領域6bを有していてもよい。なお、段差領域6bは、ガスガイドプレート6における任意の領域の厚みを薄く形成することによりを実現することができる。本変形例によれば、ガスガイドプレート6において段差領域6bのみを加工すればよいため、加工にかかるコストを抑えることができる。
【0055】
図2に示す変形例において、反応ガス8aが、段差領域6bからさらに下流側に流れる際、反応ガス8aの流路断面積は減少するため、反応ガス8aの圧力は増加する。これにより、段差領域6bの下流側には反応ガス8aの吹きだまりが生じてしまう。しかし、本変形例によれば、反応ガス8aの流速方向において、段差領域6bの下流側の終端は、基板2の下流側の終端よりも下流側にある。このため、吹きだまりが生じる空間は基板2よりも下流側になり、基板2の直上に対する反応ガス8aの吹きだまりの影響を小さくすることができる。
【0056】
また、図3に示すように、ガスガイドプレート6は、基板2に対向する側において、上記の段差領域6bと同様の構成である段差領域6cと、段差領域6cの下流側に形成された傾斜面14とを有していてもよい。本変形例によれば、ガスガイドプレート6において段差領域6cおよび傾斜面14を加工すればよいため、加工にかかるコストを抑えることができる。
【0057】
図3に示す変形例では、傾斜面14近傍の空間における反応ガス8aの流路断面積は、下流に向かうほど徐々に減少している。このため、反応ガス8aが段差領域6cから下流側に流れる際、反応ガス8aの圧力は徐々に変化することになる。結果として、反応ガス8aの吹きだまりを抑えることができ、基板2上における反応ガスの濃度分布の変化を抑えることができる。
【0058】
また、図4に示すように、ガスガイドプレート6は、基板2に対向する側において、下流側端部13を含む傾斜面15を有していてもよい。本実施例によれば、ガスガイドプレート6の加工を要する範囲が、図2および図3に示す変形例よりも小さいため、加工に係るコストをより抑えることができる。
【0059】
図4に示す変形例では、反応ガス8aの流速方向において、傾斜面15の下流側の終端位置が、基板2の中心位置と下流側の端部との間にある。このような構造においても、傾斜面15近傍の空間における反応ガス8aの流路断面積は、下流に向かうほど徐々に減少している。このため、反応ガス8aが貫通穴7の下流側に流れる際、反応ガス8aの圧力は徐々に変化することになる。結果として、反応ガス8aの吹きだまりを抑えることができ、基板2上における反応ガスの濃度分布の変化を抑えることができる。
【0060】
なお、ガスガイドプレート6の平面における段差領域6aの形状については、図面において図示した形状に限定されず、下流側端部13からガス流の下流側に広がる領域であればよい。また、段差の大きさについても特に限定されず、例えば1mmであってもよいし、10mmであってもよい。
【0061】
なお、本実施形態において、ガスガイドプレート6の貫通穴7の形状や大きさは、測定装置11が基板2の温度や反りを測定する時に、基板2からの放射や反射を直接観測できるのであれば特に限定されず、任意の形状や大きさであってもよい。また、ガスガイドプレート6において、反応ガス8aが流れない面(チャンバ1の内壁に対向する面)は、貫通穴7の上流側と下流側とにおいて一致していなくてもよい。
【実施例】
【0062】
次に実施例を示して本発明の効果を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
本実施形態に係るMOCVD装置100を実施例とし、従来技術に係るMOCVD装置を比較例として、ガスガイドプレートの貫通穴付近における反応ガスの流速のシミュレーションを行った。
【0064】
図5は、実施例として用いたMOCVD装置100の要部構成を示す図である。図5に示すように、ガスガイドプレート6は段差領域6bを有するものとする。反応ガス8aの流速方向における貫通穴7の長さlは3mmである。ガスガイドプレート6における貫通穴7の上流側の厚みtは5mmであり、下流側の段差領域6bの段差dは1mmである。また、段差領域6bの下流側の端部は、反応ガス8aの流速方向において、基板2の端部より下流にある。
【0065】
一方、比較例は、図6に示す構成を有するものとする。ガスガイドプレート106は、段差を有さず、ガスガイドプレート6と基板2との間隔はすべて同じである。また、ガスガイドプレート106の厚みは5mmである。なお、反応ガス108の流速方向における貫通穴107の長さは、実施例と同じく3mmである。
【0066】
実施例および比較例の各シミュレーション条件として、MOCVD装置に供給する反応ガスの流速を4.5m/sとし、パージガスの流速を0.0075m/sとした。なお、シミュレーションは2次元で行い、貫通穴の奥行き方向の形状はスリット形状とした。
【0067】
シミュレーションでは、ガスガイドプレートの貫通穴の直上における、基板の被成膜面に対する法線方向の流速の最大値について測定した。その結果を図7に示す。
【0068】
図7に示すように、実施例では、貫通穴7の直上における、基板2の被成膜面に対する法線方向の最大流速は、0.07m/sであった。なお、貫通穴7の直下の圧力は0.38Paであり、貫通穴7の直上の圧力は0.23Paであった。
【0069】
一方、比較例では、貫通穴107の直上における、基板102の被成膜面に対する法線方向の最大流速は、0.31m/sであった。なお、貫通穴107の直下の圧力は0.63Paであり、貫通穴107の直上の圧力は0.29Paであった。
【0070】
上記結果によれば、実施例では、比較例に比して、貫通穴7の直上における、基板2の被成膜面に対する法線方向の反応ガス8aの流速を、1/4以下に抑えることができることが分かった。これは、貫通穴107の直下の圧力が低くなることにより、反応ガス8aが貫通穴7を通ってビューポート10側に吹き出すことが効果的に抑制されていることを表している。
【0071】
これにより、反応ガス8aがビューポート10へ到達する割合も下がり、ビューポート10の交換や掃除の頻度を1/4以下にすることができる。また、基板2上におけるガスの濃度分布や流量の変化を抑えることができ、結果得られる薄膜の結晶性などに及ぼす影響を抑えることができる。
【0072】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、化合物半導体分野で用いられる成膜装置として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 チャンバ
2 基板
3 保持台
4 回転台
5 ヒーター
6 ガスガイドプレート
6a〜6c 段差領域
7 貫通穴
8 反応ガス配管
8a 反応ガス
9 パージガス配管
9a パージガス
10 ビューポート
11 測定装置
12 上流側端部
13 下流側端部
14、15 傾斜面
100 MOCVD装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスを供給して基板の被成膜面を成膜する成膜装置であって、
上記基板を保持する基板保持台と、
上記基板に対向して配置され、上記基板に対向する位置に貫通穴を有するガスガイドプレートと、
上記基板保持台と上記ガスガイドプレートとの間に上記反応ガスを流すガス供給手段とを備え、
上記ガスガイドプレートにおける上記基板に対向する側において、上記貫通穴に対して上記反応ガスによるガス流の下流側で接する下流側端部は、上記貫通穴に対して上流側で接する上流側端部よりも、上記基板の被成膜面との最短距離が長いことを
特徴とする成膜装置。
【請求項2】
上記基板を収容する反応室と、
上記反応室の壁に設けられ、上記貫通穴を介して上記被成膜面を臨み得るビューポートとを備えることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
上記ガスガイドプレートは、上記基板に対向する側において、上記下流側端部を含み、かつ上記上流側端部よりも上記基板の被成膜面との最短距離が長い任意の段差領域を有することを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
上記段差領域における上記ガス流の下流側の終端は、上記基板における上記ガス流の下流側の終端よりも、下流側にあることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
上記ガスガイドプレートは、上記段差領域の下流側の終端に接する位置に、上記ガス流の下流に向かうほど上記基板の被成膜面との最短距離が短くなる傾斜面を有することを特徴とする請求項3または4に記載の成膜装置。
【請求項6】
上記ガスガイドプレートは、上記下流側端部を含み、かつ上記ガス流の下流に向かうほど上記基板の被成膜面との最短距離が短くなる傾斜面を有することを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−249516(P2011−249516A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120417(P2010−120417)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】