説明

成膜装置

【課題】成膜時に用いる圧力検知用のセンサの劣化をより高効率に抑制することが可能な成膜装置を提供する。
【解決手段】成膜を行なう成膜処理室と、成膜処理室の内部を排気する排気装置VDと、排気装置VDの排気状態を制御する制御装置CTLと、成膜処理室が成膜を行なう第1状態の際に成膜処理室の内部の圧力を検知する第1のピラニゲージPGAと、成膜処理室の内部を洗浄する第2状態の際に成膜処理室の内部の圧力を検知する第2のピラニゲージPGBとを備えている。上記制御装置CTLは、第1および第2状態の間で排気装置VDの排気状態を切換える際に用いる媒体を利用して第1および第2のピラニゲージPGA,PGBを切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜装置に関し、特に、真空状態で成膜を行なう成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空状態で成膜を行なう技術としては、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を利用した多結晶シリコンの薄膜の成膜が挙げられる。上記の成膜は、たとえばLP(Low Pressure)−CVD装置を用いることにより行なわれる。LP−CVD装置は、成膜を行なう処理室内にたとえば半導体ウェハなど成膜したい対象物を載置した状態で、たとえばシラン(SiH4)のガスを供給し、上記対象物上にて当該ガスを化学反応させることにより、多結晶シリコンの薄膜を形成する。
【0003】
しかし上記の成膜処理を続けることにより、たとえば反応炉の内壁面など、LP−CVD装置の処理室内にはシランガスの反応生成物が堆積する。このような反応生成物を除去せずに成膜処理を続けると、やがて反応生成物が剥離し、形成する薄膜に異物を生じる可能性がある。そこで定期的に処理室内をクリーニングすることにより、処理室の内壁面などに堆積した反応生成物を除去する必要がある。クリーニングの際には、たとえば三フッ化塩素(ClF3)などのフロン系ガスを処理室内に供給し、処理室内に高周波電圧を印加してプラズマ雰囲気下でフッ素ラジカルを生成する。このフッ素ラジカルが異物を分解除去するために多結晶シリコンの堆積物などが処理室内からエッチング除去される。
【0004】
一般に処理室内の真空状態(圧力)は、LP−CVD装置に備えられたピラニ測定素子により測定され、測定結果が真空計に伝達されて、真空計に表示される。しかしピラニ測定素子はクリーニング時のエッチングガス(フロン系ガス)に繰り返し晒されることにより劣化が進み、ピラニ測定素子が処理室内の圧力を検出する感度が低下する。すなわち感度の低下により、ピラニ測定素子は処理室内の実際の圧力と大きく異なる圧力を検出する。成膜処理中にピラニ測定素子が検出する圧力の値が実際の圧力と大きく異なれば、成膜速度の変動や成膜される多結晶シリコンの膜質が変化するなど、処理能力が低下する可能性がある。そこでたとえば特開平9−306899号公報(特許文献1)においては、成膜時とクリーニング時とで処理室の圧力を検知するセンサを切換えて使用するプラズマCVD装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−306899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開平9−306899号公報のように成膜時とクリーニング時とで異なるセンサを用いて圧力を検知すれば、たとえばクリーニング時には成膜時に用いるセンサは用いられない。すなわちこの場合、成膜時に用いるセンサはクリーニング時に用いるたとえばフロン系ガスの曝露を受けない。このためクリーニング時のエッチングガスに繰り返し晒されることによる、成膜時に用いるセンサの劣化が抑制される。
【0007】
しかしながら特開平9−306899号公報には、成膜時とクリーニング時との間で処理室の圧力を検知するセンサを切換える手段について具体的に記載されていない。仮に当該切換えを手動で行なう場合には、処理の効率が低下する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものである。その目的は、成膜時に用いる圧力検知用のセンサの劣化をより高効率に抑制することが可能な成膜装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例による成膜装置は以下の構成を備えている。
上記成膜装置は、成膜を行なう成膜処理室と、成膜処理室の内部を排気する排気装置と、排気装置の排気状態を制御する制御装置と、成膜処理室が成膜を行なう第1状態の際に成膜処理室の内部の圧力を検知する第1のピラニゲージと、成膜処理室の内部を洗浄する第2状態の際に成膜処理室の内部の圧力を検知する第2のピラニゲージとを備えている。上記制御装置は、第1および第2状態の間で排気装置の排気状態を切換える際に用いる媒体を利用して第1および第2のピラニゲージを切換える。
【発明の効果】
【0010】
本実施例によれば、第1および第2状態の間で排気装置の排気状態を切換える際に用いる媒体を用いて、より効率的に、第1および第2のピラニゲージを切換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る成膜装置の、成膜状態とクリーニング状態との切換えの際の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る成膜装置の、成膜状態とクリーニング状態との切換え後の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る、効率的なピラニゲージの切換えが可能な成膜装置について、図に基づいて説明する。
【0013】
図1を参照して、本実施の形態における成膜装置は、装置コントローラCTLと、処理室と、真空ポンプPPと、排気装置VDとを備えている。排気装置VDは、バタフライバルブBVと、SiH4ガス排気部と、ClF3ガス排気部と、1対のバルブA1,B1とを含んでいる。
【0014】
装置コントローラCTLは、図1の成膜装置全体、特に排気装置VDの動作(排気状態)を制御する装置である。処理室は、その内部に半導体基板(ウェハ)などの成膜処理の対象物を載置し、成膜処理を行なう成膜処理室である。真空ポンプPPは、処理室の内部をたとえば大気圧に比べて十分に低い圧力である真空(高真空)状態とするために処理室の内部の気体を吸引して装置の外部に導くための装置である。排気装置VDは、真空ポンプPPにより吸引された処理室内のガスを当該成膜装置の外部に排出する装置である。
【0015】
排気装置VDを構成するバタフライバルブBVは、装置コントローラCTLから送信される信号を受けることにより開き具合が制御され、処理室内の圧力を調整するためのバルブである。SiH4ガス排気部は、成膜装置が対象物に対して成膜を行なう成膜状態(第1状態)であるときに、処理室の内部に供給されるSiH4のガスを排気する部分である。ClF3ガス排気部は、成膜装置が処理室の内部を洗浄する洗浄状態(第2状態)であるときに、処理室の内部に供給されるClF3のガスを排気する部分である。このように排気装置VDは、処理室の状態(成膜状態または洗浄状態)に応じて排気状態が切換えられる。
【0016】
バルブA1は、排気装置VDが処理室内のガスをSiH4ガス排気部から排気する際に開くバルブである。すなわちバルブA1が開いているときには、処理室内のガスはSiH4ガス排気部から排気される。バルブB1は、排気装置VDが処理室内のガスをClF3ガス排気部から排気する際に開くバルブである。すなわちバルブB1が開いているときには、処理室内のガスはClF3ガス排気部から排気される。
【0017】
またバルブA1が開いているときにはバルブB1は閉じ、バルブA1が閉じているときにはバルブB1が開くように、装置コントローラCTLにより制御される。このため処理室の状態に応じてバルブA1,B1が切換えられ、排気されるガスの種類に応じて異なる排気部から排気される。
【0018】
成膜装置がたとえば多結晶シリコンの成膜を行なう際には、処理室内にはSiH4ガスなどの、シリコンを含む気体材料が供給される。また成膜装置が処理室内を洗浄する際には、処理室内にはClF3ガスなどの、堆積された多結晶シリコンと反応して当該多結晶シリコンを処理室の内壁面などから除去する気体材料が供給される。このように成膜状態と洗浄状態(クリーニング時)とでは処理室内に供給されるガスの種類が異なるため、排気されるガスの種類に応じて、すなわち成膜状態と洗浄状態との間で排気装置VDのバルブが切換えられる。
【0019】
装置コントローラCTLとバルブA1との間には、ソレノイドバルブSVAが接続されており、装置コントローラCTLとバルブB1との間には、ソレノイドバルブSVBが接続されている。ソレノイドバルブSVAには、成膜装置が成膜を行なう状態の際に、装置コントローラCTLから電気信号が送信され、ソレノイドバルブSVBには、成膜装置が処理室内を洗浄する状態の際に、装置コントローラCTLから電気信号が送信される。ソレノイドバルブSVAと排気装置VD(バルブA1)とはラインL1により接続されており、ソレノイドバルブSVBと排気装置VD(バルブB1)とはラインL2により接続されている。
【0020】
本実施の形態における成膜装置は、ピラニ測定素子としての成膜用ピラニゲージPGA(第1のピラニゲージ)および洗浄用ピラニゲージPGB(第2のピラニゲージ)と、真空計VMと、リレーRYとをさらに有している。
【0021】
成膜用ピラニゲージPGAは、成膜装置が成膜を行なう状態の際に、処理室の内部の圧力を検知する。洗浄用ピラニゲージPGBは、成膜装置が処理室内を洗浄する状態の際に、処理室の内部の圧力を検知する。成膜用ピラニゲージPGAと洗浄用ピラニゲージPGBとは同一種類のピラニゲージであってもよいが、異なる種類のピラニゲージであってもよい。たとえば両者間で異なる種類のピラニゲージを用いる場合には、たとえば成膜用ピラニゲージPGAとしては1mTorr以上90mTorr以下の範囲内の圧力を検知することができるピラニゲージを用い、洗浄用ピラニゲージPGBとしては1Torr以上9Torr以下の範囲内の圧力を検知することができるピラニゲージを用いることが好ましい。
【0022】
成膜用ピラニゲージPGAと処理室とを接続するラインL3には、バルブA2が接続されている。洗浄用ピラニゲージPGBと処理室とを接続するラインL4には、バルブB2が接続されている。バルブA2は、ソレノイドバルブSVA,SVBと排気装置VDとを接続するラインL5と接続されている。バルブB2は、ソレノイドバルブSVA,SVBと排気装置VDとを接続するラインL6と接続されている。
【0023】
処理室が成膜状態にあるときは、成膜用ピラニゲージPGAが処理室内の圧力を検知するために、バルブA2が開き、バルブB2が閉じるように制御される。また処理室が洗浄状態にあるときは、洗浄用ピラニゲージPGBが処理室内の圧力を検知するために、バルブB2が開き、バルブA2が閉じるように制御される。
【0024】
図1においてはソレノイドバルブSVBとバルブB1とを結ぶラインL2から、ピラニゲージPGA,PGBに接続されるラインL5,L6が示されているが、ソレノイドバルブSVAとバルブA1とを結ぶラインからも同様に、ピラニゲージPGA,PGBに接続されるラインが配置されていてもよい。
【0025】
真空計VMはピラニゲージPGA,PGBと接続されている。真空計VMは、ピラニゲージPGA,PGBが検出した処理室内の圧力値を示す信号が入力され、入力された当該信号をさらに装置コントローラCTLに入力する機能を有する。ピラニゲージPGA,PGBから真空計VMへの信号の送信は、入力1と入力2との2種類の入力状態を有している。具体的には、処理室が成膜状態にあり、成膜用ピラニゲージPGAから真空計VMに信号が入力される場合には、真空計VMの入力状態は入力1に設定される。これに対して、処理室が洗浄状態にあり、洗浄用ピラニゲージPGBから真空計VMに信号が入力される場合には、真空計VMの入力状態は入力2に設定される。
【0026】
リレーRYは、ピラニゲージPGA,PGBから真空計VMへ入力される、圧力値を示す検出信号の入力状態(入力1または入力2)を自動的に切換えるための装置である。リレーRYは装置コントローラCTLと電気的に接続されている。リレーRYと真空計VMとは、接点Aまたは接点Bのいずれかにより電気的に接続される。処理室が成膜状態の時にはリレーRYと真空計VMとは接点Aにより接続され、処理室が洗浄状態の時にはリレーRYと真空計VMとは接点Bにより接続される。リレーRYとの真空計VMとの間は、装置コントローラCTLからリレーRYに送信される電気信号により、接点Aまたは接点Bにて接続されるように切換えられる。
【0027】
具体的には、装置コントローラCTLから電気信号を供給するラインには、装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVA,SVBに伝達するラインと、装置コントローラCTLからリレーRYに伝達するラインとを含む。このため、たとえば処理室内の状態に応じてソレノイドバルブSVAまたはソレノイドバルブSVBのいずれかに送信する電気信号は、その一部が分岐してリレーRYの方へ伝達される。言い換えれば、装置コントローラCTLから排気装置VDの方へ向かうように(ソレノイドバルブSVA,SVBに)送信する信号(たとえば電気信号)の一部を利用してリレーRYから真空計VMの方へ電気信号を送信する。これにより、装置コントローラCTLから真空計VMへ、入力1または入力2、および接点Aまたは接点Bのいずれを選択すべきであるかについての情報が送信される。
【0028】
以上の成膜装置において、装置コントローラCTLは、装置に対して成膜状態と洗浄状態との間の切換えを行なうための信号を送信する。この信号を受けることにより、各構成要素は成膜状態または洗浄状態に切換えられる。次に図2を参照して、本実施の形態の成膜装置における、処理室の成膜状態と洗浄状態とを切換える動作について説明する。
【0029】
まずコントローラから信号が送信される(S10)。具体的には、処理室を成膜状態から洗浄状態へ、または洗浄状態から成膜状態へ切換える際には、装置コントローラCTLから排気装置VDに向けて(ソレノイドバルブSVA,SVBの方に)送信される電気信号の伝達状態が切換えられる。
【0030】
具体的には、たとえば処理室を成膜状態から洗浄状態に切換える場合には、排気装置VDのClF3排気部を使用するためにバルブB1を開く必要がある。このため装置コントローラCTLから、ソレノイドバルブSVBを閉じ、ソレノイドバルブSVAを開くための電気信号が送られる。具体的には、装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVAに向かうように流れていた電気信号が、装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVBに流れる状態となるように切換えられる。
【0031】
同様に、処理室を洗浄状態から成膜状態に切換える場合には、排気装置VDのSiH4排気部を使用するためにバルブA1を開く必要がある。このため装置コントローラCTLから、ソレノイドバルブSVAを閉じ、ソレノイドバルブSVBを開くための電気信号が送られる。具体的には、装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVBに向かうように流れていた電気信号が、装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVAに流れる状態となるように切換えられる。
【0032】
なお、たとえば成膜状態から洗浄状態への切換えは、成膜処理を行なった積算時間が36時間を経過した時点でなされるなど、装置コントローラCTLの内部で当該切換えを行なう判断基準が設定されることが好ましい。
【0033】
すると閉じようとするソレノイドバルブSVB,SVAが上記電気信号を受信する(S21)と同時に、装置コントローラCTLからソレノイドバルブへのラインから分岐したラインにより、リレーRYが装置コントローラCTLからの電気信号を受信する(S22)。
【0034】
成膜状態から洗浄状態に切換える場合は、ソレノイドバルブSVBが上記電気信号を受信することに伴い、装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVAには電気信号が送信されなくなる。同様に、洗浄状態から成膜状態に切換える場合は、ソレノイドバルブSVAが上記電気信号を受信することに伴い、装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVBには電気信号が送信されなくなる。このようにして、それまで装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVA(SVB)に電気信号が送信されていた状態から、装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVB(SVA)に電気信号が送信される状態へと切換えられる(S31)。
【0035】
またリレーRYが装置コントローラCTLから受ける信号により、真空計VMの入力状態が切換えられる(S32)。具体的には、成膜状態から洗浄状態に切換わる場合には、真空計VMが成膜用ピラニゲージPGAから圧力値の信号を受ける入力状態(入力1)から、真空計VMが洗浄用ピラニゲージPGBから圧力値の信号を受ける入力状態(入力2)に切換えられる。同様に、洗浄状態から成膜状態に切換わる場合には、真空計VMが洗浄用ピラニゲージPGBから圧力値の信号を受ける入力状態(入力2)から、真空計VMが成膜用ピラニゲージPGAから圧力値の信号を受ける入力状態(入力1)に切換えられる。
【0036】
成膜状態から洗浄状態に切換わる場合には、それまでソレノイドバルブSVAに入力される電気信号により、ソレノイドバルブSVAの近傍に備えられた供給源からバルブA1に向けて、ラインL1を媒体(たとえばエア)が流れてバルブA1が開いていた状態から、ソレノイドバルブSVBに入力される電気信号により、ソレノイドバルブSVBの近傍からバルブB1に、ラインL2を当該媒体が流れてバルブB1が開く状態に切換わる。同様に、洗浄状態から成膜状態に切換わる場合には、それまでソレノイドバルブSVBに入力される電気信号により、ソレノイドバルブSVBの近傍に備えられた供給源からバルブB1に向けて、ラインL2を媒体(たとえばエア)が流れてバルブB1が開いていた状態から、ソレノイドバルブSVAに入力される電気信号により、ソレノイドバルブSVAの近傍からバルブA1に、ラインL1を当該媒体が流れてバルブA1が開く状態に切換わる。
【0037】
このようにして排気装置VDにおけるバルブA1,B1の開閉状態が切換えられる(S41)。これと同時に、成膜状態から洗浄状態に切換わる際には、バルブB1に向けてラインL2を流れる当該媒体の一部が、ラインL2から分岐したラインL6を通ってバルブB2に到達し、バルブB2を開くように作用する。このとき、それまでソレノイドバルブSVAからバルブA1に流れる媒体の一部がバルブA2に流れるように作用していた状態が解消され、バルブA2が閉じられる。以上により、作動するピラニゲージが成膜用ピラニゲージPGAから洗浄用ピラニゲージPGBに切換えられる(S42)。
【0038】
同様に、洗浄状態から成膜状態に切換わる際には、バルブA1に向けてラインL1を流れる当該媒体の一部が、ラインL1から分岐した図示されないラインを通ってバルブA2に到達し、バルブA2を開くように作用する。このとき、それまでソレノイドバルブSVBからバルブB1に流れる媒体の一部がバルブB2に流れるように作用していた状態が解消され、バルブB2が閉じられる。以上により、作動するピラニゲージが洗浄用ピラニゲージPGBから成膜用ピラニゲージPGAに切換えられる(S42)。
【0039】
以上のように、排気装置VDのバルブA1,B1を切換えるために用いられる媒体の一部を利用することにより、ピラニゲージPGA(PGB)からピラニゲージPGB(PGA)へと切換えるバルブA2,B2が切換えられる。この切換えは装置コントローラCTLから出力される、図2のフローチャートに基づく制御信号に従い、装置コントローラCTLからソレノイドバルブSVA(SVB)に送信される電気信号、および当該電気信号に伴いソレノイドバルブSVA(SVB)の近傍の供給源から供給される媒体を利用して、自動的に行なわれる。この切換えにより、ピラニゲージPGA,PGBは常にいずれか一方のみが処理室内の圧力を検知し、上記の他方は作動しない状態とすることができる。
【0040】
次に図3を参照して、上記のバルブ切換えがなされた後の、成膜(洗浄)状態の最中における成膜装置の動作について説明する。成膜状態の最中においては成膜用ピラニゲージPGAが、洗浄状態の最中においては洗浄用ピラニゲージPGBが、処理室内の圧力を検知し、真空計VMへ圧力値の信号を送信する(S100)。すると真空計VMは、ピラニゲージPGA,PGBから受信した真空度の情報を装置コントローラCTLへ送信する(S200)。装置コントローラCTLは、真空計VMから受けた真空度の情報をもとに、バタフライバルブBVの開度を制御する信号を出力する(S300)。すなわち真空計VMから受けた処理室内の圧力の情報をもとに、バタフライバルブBVの開き具合を調整して処理室からの排気量を調整することにより、当該処理室内の圧力が時間変化なくほぼ一定値を保つように制御する。一般的に処理室内の圧力は、成膜状態の最中においては約73Pa(0.55Torr)に、洗浄状態の最中においては約120Pa(0.9Torr)に制御されることが好ましい。
【0041】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態においては、処理室内の圧力を検知するピラニゲージが、成膜用ピラニゲージPGAと洗浄用ピラニゲージPGBとに分別されている。そして洗浄状態においては洗浄用ピラニゲージPGBが作動し、成膜用ピラニゲージPGAは作動しない。洗浄状態においては処理室と成膜用ピラニゲージPGAとの間に接続されたバルブA2が閉じており、成膜用ピラニゲージPGAには処理室内のガスが進入しない。このため成膜用ピラニゲージPGAが、洗浄状態において処理室内に導入されるClF3などのエッチングガスによるダメージを受けて劣化するなどの不具合の発生を抑制することができる。
【0042】
なお洗浄用ピラニゲージPGBは使用時に当該エッチングガスの曝露を受けて劣化する可能性がある。しかし洗浄用ピラニゲージPGBは洗浄時に用いられるピラニゲージであるため、成膜用ピラニゲージPGAほどの精度を要求されない。したがって繰り返しの使用により検知精度が低下し、検知される圧力値に誤差が発生しても、実使用上の影響は小さい。
【0043】
また本実施の形態においては、成膜状態と洗浄状態との間の切換えが、装置コントローラCTLから電気信号が送られるソレノイドバルブをSVAからSVBに、またはSVBからSVAに切換えることによりなされる。この装置コントローラCTLからソレノイドバルブに向けて送られる電気信号により、ソレノイドバルブの近傍から排気装置に向けて送られる信号(エアなどの媒体の信号)が自動的に切換えられ、排気装置が切換えられる。排気装置を切換える当該媒体の信号を利用して(排気装置の切換えに連動して)、ピラニゲージが自動的に切換えられる。すなわち、新たに電気信号および媒体の信号の供給源を設けることなく既存の電気信号および媒体の信号を利用して自動的にピラニゲージを切換えることができる。このため、たとえばピラニゲージを切換えるための信号供給源を別途設ける場合と比較して高効率にピラニゲージを切換えることができる。
【0044】
さらに本実施の形態においては、装置コントローラCTLからソレノイドバルブに向けて送られる電気信号の一部をリレーRYに送ることにより、リレーRY(接点Aおよび接点B)および、ピラニゲージから真空計への入力状態(入力1および入力2)の切換えが自動的になされる。このため、リレーRYおよび真空計の状態の切換えについても、新たな信号供給源を設けることなく既存の信号を利用して自動的に行なうことができる。このため、状態を切換えるための信号供給源を別途設ける場合と比較して高効率に状態を切換えることができる。
【0045】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、真空状態で成膜を行なう成膜装置に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0047】
A1,A2,B1,B2 バルブ、BV バタフライバルブ、CTL 装置コントローラ、L1,L2,L3,L4,L5,L6 ライン、PGA 成膜用ピラニゲージ、PGB 洗浄用ピラニゲージ、PP 真空ポンプ、RY リレー、VD 排気装置、VM 真空計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜を行なう成膜処理室と、
前記成膜処理室の内部を排気する排気装置と、
前記排気装置の排気状態を制御する制御装置と、
前記成膜処理室が成膜を行なう第1状態の際に前記成膜処理室の内部の圧力を検知する第1のピラニゲージと、
前記成膜処理室の内部を洗浄する第2状態の際に前記成膜処理室の内部の圧力を検知する第2のピラニゲージとを備えており、
前記制御装置は、前記第1および第2状態の間で前記排気装置の排気状態を切換える際に用いる媒体を利用して前記第1および第2のピラニゲージを切換える、成膜装置。
【請求項2】
前記第1および第2のピラニゲージからの検出信号が入力される真空計と、前記第1および第2のピラニゲージから前記真空計への前記検出信号の入力状態を切換えるリレーとをさらに備えており、
前記制御装置は、前記第1および第2状態の間の切換えの際に、前記排気装置に向けて送信する信号を利用して前記リレーに信号を送信することにより、前記真空計への前記検出信号の入力状態を自動的に切換える、請求項1に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1960(P2013−1960A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134283(P2011−134283)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】