説明

把手付き容器とその製造方法

【課題】容器本体の底部に把手部材を一体化してなる把手付き容器において、比較的簡単な構成のもとに把手部材を確実に容器本体に一体化することのできる構造を持つ把手付き容器とその製造方法を提供する。
【解決手段】2軸延伸ブロー成形体からなる容器本体1の底部12に凹部13を形成し、その凹部13にインサート成形により一体化された把手部材2を有し、この把手部材2の容器本体1の凹部13に密着する密着部位に、容器本体1の中心軸に対応する位置を含んで当該中心軸方向に貫通する孔21bを形成し、その孔21bの内周部と当該密着部位の外周部の双方に、容器本体1を形成する樹脂が巻き込むことによって容器本体1に把手部材2が一体化された構造とすることで、把手部材2が容器本体1から外れることを防止するとともに、孔21bの存在により、2軸延伸ブロー成形工程において延伸ロッドによる押圧力が把手部材2に作用することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は把手付き容器とその製造方法に関し、特に、比較的大容量の容器に適した構造を持つ把手付き容器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭等に給水サーバーを設置し、大型容器にミネラルウォータを収容して宅配するシステムが実用化されている。この種の大型容器は、一般に6〜20リットル程度の容量であり、通常はボトルの口部を下方にした状態で給水サーバーに取り付けられる。
このような大型容器の取扱い性を向上させることを目的として、容器の底部に容器内方に窪んだ凹部を形成し、その凹部に把手をインサート成形したものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この提案においては、把手部材は容器本体との間に複数の指が挿入可能な指挿入空間を形成しており、この把手部材は容器底部の凹部内に収まり、これによって容器を接地しても把手部材による影響がでないように考慮している。
【0004】
この提案においては、把手部材として、指を挿入すべく容器本体底部の凹部表面から離れて位置する把持部と、これと所定の距離を隔てて平行で容器本体に一体化される取付部とを、両者の両端部においてそれぞれ腕部によって連結した一体の樹脂部材を用い、取付部の中央部には幅広部を形成している。
【0005】
そして、ブロー成形金型の上げ底型には上記の把手部材をインサートするための溝を形成し、その溝内に把手部材を挿入した状態で2軸延伸ブロー成形を行うことにより、容器本体を形成する樹脂の一部を把手部材の取付部の周囲に巻き込ませてこれら両者を一体化し、把手付き容器を得ている。
【0006】
また、この提案においては、把持部を両端が開口した筒状とし、その開口部に容器本体の凹部の側壁部分を入り込ませたり、あるいは腕部に突起を形成して係合凸部とし、そこに樹脂を巻き込ませる構成を追加する旨の記載もある。
【0007】
更に、上げ底型の把手部材のインサート用の溝の上面に差し渡される蓋を設け、把手部材の挿入時に上記幅広部によってその蓋を押し下げ、インサート完了状態ではその蓋が取付部と把持部との間に入り込み、成形時には取付部をその蓋で支持するようにした金型構成も記載されている。
【特許文献1】特開2003−54565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等を用いたブロー成形においては、通常、プリフォーム内に高圧エアを吹き込むブロー成形工程と同時に、あるいは若干の先行を伴ってプリフォームを延伸ロッドにより縦方向に延伸する工程を併せて実行する、いわゆる2軸延伸ブロー成形法が採用されるのであるが、上記した提案技術によると、延伸ロッドが把手部材の取付部を容器本体を形成する樹脂を介して押圧することになり、しかも、その押圧部の裏面側には把持部との間の空隙が存在しているため、この押圧される部分の強度を強くすること、換言すればこの部分の肉厚を厚くしなければならないという問題がある。
【0009】
ここで、以上の問題を解消する方策として、この提案においては、上げ底型の把手部材のインサート用の溝の上面に蓋を設け、これを把手部材の挿入時に押し下げることで、把手部材のインサート完了状態において蓋が取付部と把持部との間に入り込んで取付部を支持する金型構成を挙げているが、この対策は金型構成が複雑となって現実的ではない。
【0010】
また、上記した提案技術においては、把手部材は、基本的にその取付部の外周において容器本体を形成する樹脂に巻き込まれて一体化されるのであるが、この取付部外周への樹脂の巻き込みのみによる一体化では、その一体化強度が弱いために、これを補完することを目的として、把持部を両端が開口した筒状として、その両端開口部に樹脂を入り込ませたり、あるいは取付部と把持部とを接続する腕部に突起を形成して係合凸部とするなどの対策が必要となるという問題もある。
【0011】
本発明は上記の諸問題点を一挙に解決すべくなされたもので、容器本体の底部に形成した凹部に、比較的簡単な構造のもとに把手部材が確実に一体化された把手付き容器の提供と、その製造方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の把手付き容器は、2軸延伸ブロー成形体からなり、底部に内側に窪んでなる凹部が形成された容器本体と、その容器本体の上記凹部にインサート成形により一体化された把手部材を有し、この把手部材は、容器本体の上記凹部表面に密着して一体化される密着部位に、上記容器本体の中心軸に対応する位置を含んで当該中心軸方向に貫通する孔が形成されているとともに、その孔の内周部と当該密着部位の外周部の双方に上記容器本体を形成する樹脂が巻き込むことによって当該容器本体に一体化されていることによって特徴付けられる(請求項1)。
【0013】
ここで、本発明においては、上記把手部材を、上記密着部位を含む基部と、その基部に対して可撓部を介して一体化され、自然状態では当該基部と略同一平面に沿う姿勢となる把持部とからなる構成とすること(請求項2)ができる。
【0014】
また、本発明においては、上記把手部材を、上記密着部位を有する基部材と、その基部材に対して取り付けられる把持部材によって構成し、上記基部材を、略平板状の密着部位の両端部に上記把持部材を取り付けるための装着部を突出形成したものとすること(請求項3)ができる。
【0015】
また、本発明においては、上記把手部材に形成されている上記孔の内周部に、上記容器本体を形成する樹脂を巻き込ませるべく当該孔の中心に向けて突出する突出部を形成した構成(請求項4)を好適に採用することができる。
【0016】
一方、請求項5に係る発明の把手付き容器の製造方法は、請求項2に記載の把手付き容器を2軸延伸ブロー成形法により製造する方法であって、一端に開口部を有する有底筒状のプリフォームをブロー成形金型内に挿入した状態で、上記開口部から、延伸ロッドを挿入してプリフォームを軸方向に延伸させるとともにエアを吹き込んで膨張させることにより、上記ブロー成形金型に沿った形状の上記容器本体を成形する際、当該容器本体の底部中央の凹部に対応するブロー金型位置に形成された溝内に、上記基部と把持部とが可撓部を介して一体化された把手部材を、上記孔が延伸ロッドの移動方向延長上に位置するように自然状態で挿入しておき、上記容器本体底部の凹部に上記基部の外縁と上記孔の内周部を当該容器本体の樹脂を巻き込ませて一体化させることによって特徴付けられる。
【0017】
請求項6に係る発明の把手付き容器の製造方法は、請求項3に記載の把手付き容器を2軸延伸ブロー成形法により製造する方法であって、一端に開口部を有する有底筒状のプリフォームをブロー成形金型内に挿入した状態で、上記開口部から、延伸ロッドを挿入してプリフォームを軸方向に延伸させるとともにエアを吹き込んで膨張させることにより、上記ブロー成形金型に沿った形状の上記容器本体を成形する際、当該容器本体の底部中央の凹部に対応するブロー金型位置に形成された溝内に、上記基部材を上記孔が延伸ロッドの移動方向延長上に位置するように挿入しておき、上記容器本体底部の凹部に上記基部材の外縁と上記孔の内周部を当該容器本体の樹脂を巻き込ませて一体化させた後、基部材に上記把持部材を取り付けることによって特徴付けられる。
【0018】
本発明は、把手部材の容器本体への一体化のための密着部位に、容器本体の中心軸に対応する位置を含んでその中心軸方向に貫通する孔を形成し、その孔の内周部とこの密着部位の外周部の双方において容器本体の樹脂を巻き込ませることによって、課題を解決しようとするものである。
【0019】
すなわち、把手部材の容器本体への密着部位の容器中心軸に対応する位置に容器軸方向に貫通する孔を形成することにより、2軸延伸ブロー成形時における延伸ロッドがその孔に対応する位置でプリフォームを押すことになり、把手部材には延伸ロッドによる押圧力が作用せず、従って把手部材の肉厚を厚くしたり、あるいは金型に延伸ロッドによる把手部材の撓みを解消するための工夫をする必要がなくなる。
【0020】
しかも、密着部位の外周部のみならず、この密着部位に形成した孔の内周部においても容器本体の樹脂の巻き込みによる一体化を図っているので、把手部材はその密着部位の内外において樹脂の巻き込みによる一体化がなされ、他に一体化強度を向上させるための対策を講じることなく、この密着部位だけの一体化によって極めて高い一体化強度が得られる。
【0021】
把手部材の具体的構成としては、請求項2に係る発明のように、容器本体に一体化される密着部位を含む基部と、この基部に対して可撓部を介して一体化され、自然状態では基部と略同一平面に沿った姿勢となる把持部によって構成されたものとすれば、把持部は2軸延伸ブロー成形時に邪魔になることがなく、しかも一体化された把手部材であるため、工程の簡略化を図ることができる。
【0022】
把手部材の他の具体的構成としては、請求項3に係る発明のように、容器本体に一体化される密着部位を含む基部材と、その基部材に対して取り付けられる把持部材によって構成してもよく、この場合、基部材のみをブロー金型内にインサートして成形して後で把持部材を取り付ければよい。
【0023】
また、請求項4に係る発明のように、把手部材の容器本体に対する密着部位に形成される孔の内周部に、当該孔の中心に向けて突出する突出部を形成すれば、その孔の内周部に容器本体を形成する樹脂を確実に巻き込ませることができる。
【0024】
本発明の把手付き容器の製造方法は、上記した本発明に係る把手付き容器を製造する方法であり、請求項5に係る発明は、請求項2に係る発明における把手部材を、その孔が延伸ロッドの移動方向延長上に位置するように、容器本体底部の凹部に対応するブロー金型位置に形成された溝内に自然状態で挿入しておくことで、容器本体を形成する樹脂を把手部材の基部の外周部と孔の内周部に樹脂を巻き込ませて一体化する。この2軸延伸ブロー成形工程において、延伸ロッドは把手部材の容器本体への密着部位に形成した孔を介して金型を押圧するため、把手部材には延伸ロッドの押圧力が作用せず、従って把手部材を肉厚にしたり金型構成に特殊な細工を施す必要がない。
【0025】
請求項6に係る発明は請求項3に係る発明における把手部材のうち、基部材を、上記と同様に孔が延伸ロッドの移動方向延長上に位置するように、容器本体底部の凹部に対応するブロー金型位置に形成された溝ないに挿入しておくことで、容器本体を形成する樹脂を基部材の外周部と孔の内周部に樹脂を巻き込ませて一体化する。この成形工程においても、延伸ロッドは基部材の孔を介して金型を押圧することになり、基部材に延伸ロッドの押圧力が作用することがなく、従って基部材を肉厚にしたり金型構成を特殊なものにする必要がない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、容器本体の底部に形成した凹部に把手部材が一体化され、この把手部材は、容器本体の凹部に密着する密着部位の外周部と、当該密着部位に形成された容器の軸方向に貫通する孔の内周部で容器本体を形成する樹脂が巻き込むことによって当該容器本体に一体化されるため、比較的簡単な構成のもとに容器本体に対して把手部材を高強度で一体化することができる。
【0027】
また、容器本体の2軸延伸ブロー成形時に把手部材をブロー金型内に挿入して一体化するに当たり、延伸ロッドは把手部材の容器本体への密着部位に形成した孔を介して金型を押圧するため、把手部材にはその押圧力が作用することがなく、従って把手部材を把手としての必要な強度以上に肉厚としたり、金型構成を特殊なものとする必要がなく、これによってコストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態を倒立させた状態、つまり人手による運搬状態での姿勢で示す分解斜視図であり、図2は正面図、図3はその右側面図、図4は底面図である。
【0029】
容器本体1は軸方向一端側に首部11を有し、その首部11の端部で開口している。また、容器本体1の底部12には、その中心部に内側に窪んでなる凹部13が形成されている。そして、この凹部13に把手部材2が一体化されている。
【0030】
この例における把手部材2は、図1の分解斜視図を示すように、容器本体1に一体化される基部材21と、その基部材21に対して取り付けられる把持部材22によって構成されている。
【0031】
すなわち、図5に容器本体1の底部の凹部13の近傍の拡大縦断面図を倒立状態で示すように、基部材21はその略平坦な長板状の両端部に容器本体1から離隔する向きにフック状の装着部21aが突出した形状を有している。把持部材22は、同じく略平坦な板状部材に2箇所の可撓部22aを備えるとともに、両端部に開口22bを介して棒状の被着部22cが形成された形状を有している。この把持部材22は、各可撓部22aにおいて略90°に屈曲された状態で、両端の被着部22cが基部材21の両端の装着部21aに対してスナップフィットにより取り付けられている。
【0032】
把手部材2の基部材21には、その長板状部分の中心、換言すれば容器本体1への取付状態において当該容器本体1の中心軸を中心として、その板厚方向に貫通する孔21bが形成されている。この孔21bの内周部には、孔21bの中心に向けて突出する突出部21cが形成されている。この突出部21cは、周方向に一様であってもよいし、あるいは周方向に一定のピッチで複数個形成してもよく、軸方向には容器本体1側に形成されており、これによって孔21bの内面には容器本体1側が突出した形状の段部が形成されることになる。
【0033】
また、この基部材21には、その長板状部分の両端部に長手方向外側への突出部21dが形成されているとともに、両側の装着部21aにも同方向に突出する突出部21eが形成されている。
【0034】
そして、上記した孔21bの内周部の突出部21cと、長板状部分の両端の突出部21d、および両側の装着部21aの突出部21eに、容器本体1を形成する樹脂が巻き込むことによって、基部材21が容器本体1に一体化されている。
【0035】
このような基部材21の外側と内側の双方での樹脂の巻き込みによる容器本体1への一体化構造によれば、把手部材2を持って容器を持ち運んだときに内容物の充填状態における容器の自重により容器本体1が多少撓んでも、把手部材2が容器本体1から外れる恐れがない。また、これにより、持ち運び時等に容器本体1が多少撓んでもいいことから、容量を10〜20リットル程度の大型の容器本体1であっても、その樹脂の肉厚を従来のこの種の把手付き容器に比して薄くすることができるという利点にも繋がる。
【0036】
また、以上の把手部材2はその全体が容器本体1の凹部13内に収まり、従って容器本体1を正立させた状態(図2,図3)においては、容器本体1は凹部13の周囲の環状の平坦面14においてのみ接地し、把手部材2がその正立を阻害することがない。
【0037】
なお、この実施の形態においては、容器本体1の首部11に、把手14が一体に形成されている。この把手14には、図3に示すように首部11への連結部の近傍に可撓部14aが形成されており、内容物の充填状態における容器の持ち運びないしは取り扱いは、底部の把手部材2を持って容器を倒立状態で持ち運んでもよいし、あるいはその把手部材2と首部11に一体に形成された把手14の双方を持って持ち運んだり取り扱うことができる。
【0038】
次に、以上の本発明の実施の形態の製造方法について説明する。
容器本体1は2軸延伸ブロー成形法によって成形され、その成形時にブロー金型内に把手部材2の基部材21がインサートされ、容器本体1の成形と同時にその基部材21が一体化される。
【0039】
図6その2軸延伸ブロー成形に用いられる金型の要部構造を示す。この図6における(A),(B)は、成形工程の完了状態で互いに直交する方向から見た断面図である。
【0040】
ブロー成形金型の底型3には、把手部材2の基部材21を嵌め込むための溝31が形成されている。この溝31は基部材21がその周囲に僅かな隙間を以て嵌まり込む寸法とされている。この溝31は容器本体1の中心軸上に形成され、基部材21は、その孔21bの中心が容器本体1の中心軸と同軸上にインサートされる。また、金型内には、容器本体1の中心軸上に延伸ロッド4が挿入される。
【0041】
このような金型を用いた2軸延伸ブロー成形工程において、上記の溝31に基部材21をインサートした状態で、金型内にプリフォームを挿入して型締めした後、延伸ロッド4による延伸を開始し、それと同時もしくは若干のタイムラグを以て金型内にエアが吹き込まれる。これにより、プリフォームは軸方向並びに径方向に延伸して容器本体1の形状に成形される。この成形時に、底型3の溝31内に挿入されている基部材21の両端外縁に形成されている突出部21dと装着部21aの外側に形成されている突出部21e、並びに孔21bの内周に形成されている突出部21cに対し、容器本体1を形成する樹脂が巻き込み、基部材21が一体化される。
【0042】
そして、この成形工程において特に注目すべき点は、延伸ロッド4による押圧力が基部材21に作用しない点である。すなわち、延伸ロッド4は基部材21の孔21bに対応する位置において移動し、その押圧力はプリフォーム(容器本体1)を形成する樹脂を介して底型3を押すことになる。従って、基部材21には、この押圧力に抗して変形しないように必要以上の肉厚を付与する必要がなく、あるいはこの押圧力を受け止めるために金型構成を複雑にする必要がない。
【0043】
次に、本発明の他の実施の形態について述べる。図7は正面図で、図8はその右側面図、図9は底面図である。
この例において容器本体1は先の例と同等であり、首部11を備えるとともに、底部12には内側に窪んだ凹部13を有し、その凹部13内に収まるように把手部材20が一体化されている。また、首部14には把手14が一体に形成されている点も先の例と同等である。
【0044】
この例のの特徴は把手部材20の構造にあり、この例では、把手部材20は一体物であって、容器本体1に密着する基部201と、その基部201に対して可撓部201aを介して一体化された把持部202によって構成されており、基部201と把持部202は自然状態、つまり力を加えない状態では互いに略同一平面に沿った姿勢をとる。
【0045】
この把手部材20の基部201とは略円環状であり、その中心に容器本体1の軸方向に貫通する孔201bが形成されており、この孔201bが容器本体1の中心軸と同軸となるように容器本体1に対して一体化されている。また、図10は容器本体1の底部の凹部13の近傍の拡大縦断面図を倒立状態で、かつ、把持部202を起こした状態で示すように、孔201bの内周部には、先の例と同様に中心に向けて突出する突出部201cが形成されている。また、この基部201の外周部には、外側に向けて突出する突出部201dが形成されている。
【0046】
そして、上記の孔201bの内周部の突出部201cと、基部201の外周の突出部201dを、容器本体1を形成する樹脂が巻き込むことによって、基部材21が容器本体1に一体化されている。
【0047】
このような基部201の外側と内側の双方での樹脂の巻き込みによる容器本体1への一体化構造により、先の例と同様、把手部材20を持って容器を持ち運んだときに内容物の充填状態における容器の自重により容器本体1が多少撓んでも、把手部材20が容器本体1から外れる恐れがなく、容量を10〜20リットル程度の大型の容器本体1であっても、その樹脂の肉厚を従来のこの種の把手付き容器に比して薄くすることができる。
【0048】
次に、この実施の形態の製造方法について説明する。先の例と同様に、容器本体1は2軸延伸ブロー成形法によって成形され、その成形時にブロー金型内に把手部材20が自然状態でインサートされ、容器本体1の成形と同時にその把手部材20が基部201において一体化される。
【0049】
図11にその2軸延伸ブロー成形に用いられる金型の要部構造を示す。この図11における(A),(B)は、成形工程の完了状態で互いに直交する方向から見た断面図である。
【0050】
ブロー成形金型の底型30には、把手部材2を自然状態、つまり基部201と把持部202とが略同一平面上に沿った状態で嵌め込むための溝3011が形成されている。この溝301に把手部材20を嵌め込んだ状態では、基部201の孔201bの中心が容器本体1の中心軸と同軸上にインサートされるた状態となる。そして、金型内には、容器本体1の中心軸上に延伸ロッド40が挿入される。
【0051】
この例においても、以上のような金型を用いた2軸延伸ブロー成形工程において、上記の溝301に把手部材20をインサートした状態で、金型内にプリフォームを挿入して型締めした後、延伸ロッド40による延伸を開始し、それと同時もしくは若干のタイムラグを以て金型内にエアが吹き込まれる。これにより、プリフォームは軸方向並びに径方向に延伸して容器本体1の形状に成形される。この成形時に、底型30の溝301内に挿入されている把手部材20の基部201の外周に形成されている突出部201dと、孔201bの内周に形成されている突出部201cに対し、容器本体1を形成する樹脂が巻き込み、把手部材20が一体化される。
【0052】
そして、この成形工程においても、延伸ロッド40は把手部材20の孔201bに対応する位置において移動してプリフォームを押圧し、その押圧力はプリフォーム(容器本体1)を形成する樹脂を介して底型30を押すことになる。従って、把手部材201には延伸ロッド40の押圧力が作用せず、よって押圧力に抗して変形しないように必要以上の肉厚を付与する必要がなく、あるいはこの押圧力を受け止めるために金型構成を複雑にする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態を倒立させた状態で示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の正面図である。
【図3】図2の右側面図である。
【図4】図2の底面図である。
【図5】本発明の実施の形態の底部の凹部13の近傍の拡大縦断面図を倒立状態で示す図である。
【図6】本発明の実施の形態の製造に際しての2軸延伸ブロー成形工程に用いられる金型の要部構造を示す図であり、(A),(B)はそれぞれ成形工程の完了状態で互いに直交する方向から見た断面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態の正面図である。
【図8】図7の右側面図である。
【図9】図7の底面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態の底部の凹部13の近傍の拡大縦断面図を倒立状態で示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態の製造に際しての2軸延伸ブロー成形工程に用いられる金型の要部構造を示す図であり、(A),(B)はそれぞれ成形工程の完了状態で互いに直交する方向から見た断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 容器本体
11 首部
12 底部
13 凹部
14 把手
2 把手部材
21 基部材
21a 装着部
21b 孔
21c,21d,21e 突出部
22 把持部材
22a 可撓部
22b 開口
22c 被着部
3 底型
4 延伸ロッド
20 把手部材
201 基部
201a 可撓部
201b 孔
201c,201d 突出部
202 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2軸延伸ブロー成形体からなり、底部に内側に窪んでなる凹部が形成された容器本体と、その容器本体の上記凹部にインサート成形により一体化された把手部材を有し、この把手部材は、容器本体の上記凹部表面に密着して一体化される密着部位に、上記容器本体の中心軸に対応する位置を含んで当該中心軸方向に貫通する孔が形成されているとともに、その孔の内周部と当該密着部位の外周部の双方に上記容器本体を形成する樹脂が巻き込むことによって当該容器本体に一体化されていることを特徴とする把手付き容器。
【請求項2】
上記把手部材が、上記密着部位を含む基部と、その基部に対して可撓部を介して一体化され、自然状態では当該基部と略同一平面に沿う姿勢となる把持部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の把手付き容器。
【請求項3】
上記把手部材が、上記密着部位を有する基部材と、その基部材に対して取り付けられる把持部材によって構成され、上記基部材は、略平板状の密着部位の両端部に上記把持部材を取り付けるための装着部が突出形成されていることを特徴とする請求項1に記載の把手付き容器。
【請求項4】
上記把手部材に形成されている上記孔の内周部に、上記容器本体を形成する樹脂を巻き込ませるべく当該孔の中心に向けて突出する突出部が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の把手付き容器。
【請求項5】
請求項2に記載の把手付き容器を2軸延伸ブロー成形法により製造する方法であって、 一端に開口部を有する有底筒状のプリフォームをブロー成形金型内に挿入した状態で、上記開口部から、延伸ロッドを挿入してプリフォームを軸方向に延伸させるとともにエアを吹き込んで膨張させることにより、上記ブロー成形金型に沿った形状の上記容器本体を成形する際、当該容器本体の底部中央の凹部に対応するブロー金型位置に形成された溝内に、上記基部と把持部とが可撓部を介して一体化された把手部材を、上記孔が延伸ロッドの移動方向延長上に位置するように自然状態で挿入しておき、上記容器本体底部の凹部に上記基部の外縁と上記孔の内周部を当該容器本体の樹脂を巻き込ませて一体化させることを特徴とする把手付き容器の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の把手付き容器を2軸延伸ブロー成形法により製造する方法であって、 一端に開口部を有する有底筒状のプリフォームをブロー成形金型内に挿入した状態で、上記開口部から、延伸ロッドを挿入してプリフォームを軸方向に延伸させるとともにエアを吹き込んで膨張させることにより、上記ブロー成形金型に沿った形状の上記容器本体を成形する際、当該容器本体の底部中央の凹部に対応するブロー金型位置に形成された溝内に、上記基部材を上記孔が延伸ロッドの移動方向延長上に位置するように挿入しておき、上記容器本体底部の凹部に上記基部材の外縁と上記孔の内周部を当該容器本体の樹脂を巻き込ませて一体化させた後、基部材に上記把持部材を取り付けることを特徴とする把手付き容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−150060(P2008−150060A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337837(P2006−337837)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(594186865)佐原化学工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】