投写光学系及びこれを備えるプロジェクター
【課題】結像面を調節可能な投写光学系及びこれを組み込んだプロジェクターを提供すること。
【解決手段】第2群40が液晶パネル18G(18R,18B)の縦方向と横方向とで異なるパワーを持つので、投写光学系20の全系としても、縦横方向に異なる焦点距離を持ち縦横方向の拡大倍率も異なるものとなり、液晶パネル18G(18R,18B)の画像の横縦比とスクリーンSC上に投写される画像の横縦比とを異なるものにできる。つまり、本投写光学系20により、幅と高さとの比であるアスペクト比の変換が可能になる。この際、駆動機構61によって、少なくとも第3群60が、第2群40の進退動作に連動して位置を変更することで、結像位置を調整できるので、第1動作状態及び第2動作状態のいずれにおいても、結像面を同一の位置に保つことで、スクリーンSCの配置に対して適したものにできる。
【解決手段】第2群40が液晶パネル18G(18R,18B)の縦方向と横方向とで異なるパワーを持つので、投写光学系20の全系としても、縦横方向に異なる焦点距離を持ち縦横方向の拡大倍率も異なるものとなり、液晶パネル18G(18R,18B)の画像の横縦比とスクリーンSC上に投写される画像の横縦比とを異なるものにできる。つまり、本投写光学系20により、幅と高さとの比であるアスペクト比の変換が可能になる。この際、駆動機構61によって、少なくとも第3群60が、第2群40の進退動作に連動して位置を変更することで、結像位置を調整できるので、第1動作状態及び第2動作状態のいずれにおいても、結像面を同一の位置に保つことで、スクリーンSCの配置に対して適したものにできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写像のアスペクト比を切り替えることができる投写光学系及びこれを備えるプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの投写光学系に用いられるアスペクト比変換用のコンバーターとして、本来の投写光学系の前面位置すなわち像側正面に進退可能に配置されるフロント配置型のコンバーターが存在する。
【0003】
しかしながら、この種のコンバーターは、プロジェクター本体から独立した外付けの光学部として設けられており、プロジェクターを大型化させるとともに、コンバーターを含めた全投写光学系の調整を複雑にし、或いは画像を著しく劣化させる。
【0004】
なお、プロジェクターの投写光学系ではなく、カメラ等の撮像光学系に使用されるアスペクト比変換用のコンバーターとして、結像光学系の像側に着脱可能に配置されるリア配置型のリレー系が存在する(特許文献1参照)。このリレー系は、第1群と第2群と第3群とからなり、これらのうち中央の第2群は、アナモフィックコンバーターであり、第1群と第3群との間に挿脱可能になっている。また、フォーカス状態を適正にするためのフランジバック調整の際に第3群を光軸方向に移動させるものが存在する(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1等に開示されたリレー系又はアナモフィックコンバーターは、撮像光学系に用いるものであり、これを投写光学系にそのまま用いると、種々の制約が生じる。
【0006】
例えば、上記のようなリア配置型のリレー系の場合、第2群のアナモフィックコンバーターの挿入時と退避時とで光路長が変化するため、投写光学系として用いると、第2群の進退によって物体面と像面との結像関係が崩れてしまう可能性があり、第2群の進退の影響が生じないような投写光学系の設計は容易でない。
【0007】
また、特許文献1等に記載の撮像光学系では、例えばアスペクト比の変換に際して特許文献2のようなフランジバック調整等が重要となり得る。一方、投写光学系では、レンズ交換が一般的に行われないので、様々な交換レンズをマウント可能にするためのフランジバック調整の機能を確保する必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−221597号公報
【特許文献2】特開2005−300902号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、結像面を調節可能な投写光学系及びこれを組み込んだプロジェクターを提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る投写光学系は、(a)画像を被投写面上に拡大投写する際に、光変調素子の画像の横縦比と、被投写面に投写される画像の横縦比とを異なるものとする投写光学系であって、(b)被投写面側から順に、ズーム動作をするズーム光学系を含む第1群と、光変調素子の縦方向と横方向とで異なるパワーを持つとともに光路上に進退可能なアナモフィック光学系を含む第2群と、正のパワーを持つ第3群とから実質的になり、(c)第3群が、第2群の進退動作に連動して光軸方向に動く。ここで、「から実質的になる」とは、上記投写光学系において、第1群、第2群及び第3群のほかに実質的にパワーを持たないレンズを追加する場合を含むことを意味する。
【0011】
上記投写光学系によれば、第2群が光路上に進退可能であり、第2群が光路上にあり横縦比を変換して投写する第1動作状態において、縦横方向に異なる焦点距離を持ち縦横方向の拡大倍率も異なるものとなり、光変調素子の画像の横縦比と被投写面上に投写される画像の横縦比とを異なるものにできる。つまり、本投写光学系により、幅と高さとの比であるアスペクト比の変換が可能になる。また、第2群を光路上から退避させて横縦比を変換しないで投写する第2動作状態において、光変調素子の画像の横縦比と被投写面上に投写される画像の横縦比とを等しいものにできる。つまり、本投写光学系により、幅と高さとの比を変換することなくそのまま保つことも可能である。以上のような被投写面への投写状態の切替すなわち投写光学系での第1動作状態と第2動作状態との切替に際して、第3群が第2群の進退動作に連動して位置を変更することで、本投写光学系による結像面を同一位置に保つことができる。この際、例えば第3群が正のパワーを持つことで、第3群の通過を想定して第2群に入射する光を比較的平行化した状態にできるので、第2群の径が大きくなることを抑制できるとともに、第2群の構成レンズの位置精度の要求を低くしつつ精度を確保することができる。
【0012】
本発明の別の側面によれば、第1群が、第3群とともに、第2群の進退動作に連動して光軸方向に動く。この場合、第3群のみならず第1群が第2群の進退動作に連動して位置を変更することで、第1動作状態及び第2動作状態のいずれにおいても、本投写光学系による結像面が適した位置にある状態を簡易に確保することができる。
【0013】
本発明の別の側面によれば、第1群が、第2群の進退動作に連動して光軸方向に沿って第3群と同じ向きに同じ量だけ動く。この場合、第1群と第3群との位置の変更を一体的に行うことができるので、移動の動作が行いやすい。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群の進退動作に伴う第1群および第3群のうち少なくとも第3群の連動を行うための連動駆動機構をさらに有する。この場合、連動駆動機構により、第2群の進退動作に応じて、必要な移動量の分だけ確実に第3群等を光軸方向に沿って移動させることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、第1群が、第2群の進退動作に対して実質的に固定され、第3群のみが第2群の進退動作に連動して光軸方向に沿って所定の移動量だけ移動する。この場合、第3群のみを、第2群の進退動作に連動して位置を所定の移動量だけ変更させることで、第2群を光路上に配置させた第1動作状態及び第2群を光路上から退避させた第2動作状態のいずれにおいても、本投写光学系による結像面が適した位置にある状態を確保することができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面によれば、第3群が、非球面レンズ群を含む。この場合、収差補正をより容易にすることができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面によれば、第1群が、フォーカス動作をするフォーカス光学系を含む。この場合、例えば第1群を全体として移動させた後に、第1群の一部の光学系をフォーカス動作させれば、フォーカスの微調整だけで容易にピント合わせができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群が、光変調素子の縦方向の断面において、被投写面側から順に、正のパワーをもつ第1の光学要素群と、負のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている。この場合、被投写面上に投写される画像を縦方向に圧縮又は短縮することができる。被投写面の横寸法が固定されている場合、投写距離を変えずに横縦比の変更が可能になる。
【0019】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群が、光変調素子の横方向の断面において、被投写面側から順に、負のパワーをもつ第1の光学要素群と、正のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている。この場合、被投写面上に投写される画像を横方向に伸張又は拡大することができる。被投写面の縦寸法が固定されている場合、投写距離を変えずに横縦比の変更が可能になる。
【0020】
本発明に係るプロジェクターは、上述の投写光学系と、光変調素子とを備える。本プロジェクターによれば、光変調素子の画像の横縦比と異なる横縦比の画像を被投写面上に投写することができる。この際、特別な投写光学系により、被投写面と結像面との調節がなされるので、画像を良好な状態で投写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターの使用状態を説明する斜視図である。
【図2】図1のプロジェクターの概略構成を示す図である。
【図3】図1のプロジェクターのうち投写光学系の構造を説明する図である。
【図4】(A)は、投写光学系の第1動作状態における横断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の第1動作状態における縦断面の構成を示す。
【図5】(A)は、投写光学系の第1動作状態を示し、(B)は、投写光学系の第2動作状態を示す。
【図6】(A)は、投写光学系の第1動作状態におけるスクリーンへの投写状態を示す図であり、(B)は、投写光学系の第2動作状態におけるスクリーンへの投写状態を示す図であり、(C)は、比較例の投写光学系の第2動作状態におけるスクリーンへの投写状態を示す図である。
【図7】投写光学系の一実施例について、第1動作状態における横断面の構成を示す図である。
【図8】投写光学系の一実施例について、第1動作状態における縦断面の構成を示す図である。
【図9】(A)〜(C)は、図8に示す実施例1の光学系のズーム動作を示す図である。
【図10】投写光学系の一実施例について、第2動作状態における縦断面の構成を示す図である。
【図11】第2実施形態に係るプロジェクターのうち投写光学系の構造を説明する図である。
【図12】投写光学系の一実施例について、第1動作状態における横断面の構成を示す図である。
【図13】投写光学系の一実施例について、第1動作状態における縦断面の構成を示す図である。
【図14】(A)〜(C)は、図13に示す実施例2の光学系のズーム動作を示す図である。
【図15】投写光学系の一実施例について、第2動作状態における縦断面の構成を示す図である。
【図16】(A)は、変形例の投写光学系の第1動作状態における横断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の第1動作状態における縦断面の構成を示す。
【図17】(A)は、別の変形例の投写光学系の第1動作状態における横断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の第1動作状態における縦断面の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態に係るプロジェクター及び投写光学系を詳細に説明する。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るプロジェクター2は、画像信号に応じて画像光PLを形成し、当該画像光PLをスクリーンSC等の被投写面へ向けて投写する。プロジェクター2の投写光学系20は、プロジェクター2内に内蔵された光変調素子である液晶パネル18G(18R,18B)の画像をスクリーン(被投写面)SC上に拡大投写する際に、液晶パネル18G(18R,18B)の画像の横縦比(アスペクト比)AR0に対して、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)AR2を異なるものとすることができる。つまり、液晶パネル18Gの表示領域A0の横縦比AR0と、スクリーンSCの表示領域A2の横縦比AR2とは、互いに異なるものとすることができるが、同一のものとすることもできる。具体的には、液晶パネル18Gの表示領域A0の横縦比AR0は、例えば1.78:1であり、スクリーンSCの表示領域A2の横縦比AR2は、例えば1.78:1、1.85:1、2.35:1、2.4:1等とされる。
【0024】
図2に示すように、プロジェクター2は、画像光を投写する光学系部分50と、光学系部分50の動作を制御する回路装置80とを備える。
【0025】
光学系部分50において、光源10は、例えば超高圧水銀ランプであって、R光、G光、及びB光を含む光を射出する。ここで、光源10は、超高圧水銀ランプ以外の放電光源であってもよいし、LEDやレーザーのような固体光源であってもよい。第1インテグレーターレンズ11及び第2インテグレーターレンズ12は、アレイ状に配列された複数のレンズ素子を有する。第1インテグレーターレンズ11は、光源10からの光束を複数に分割する。第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子は、光源10からの光束を第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子近傍にて集光させる。第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子は、重畳レンズ14と協働して、第1インテグレーターレンズ11のレンズ素子の像を液晶パネル18R、18G、18Bに形成する。このような構成により、光源10からの光が液晶パネル18R、18G、18Bの表示領域(図1の表示領域A0)全体を略均一な明るさで照明する。
【0026】
偏光変換素子13は、第2インテグレーターレンズ12からの光を所定の直線偏光に変換させる。重畳レンズ14は、第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子の像を、第2インテグレーターレンズ12を介して液晶パネル18R、18G、18Bの表示領域上で重畳させる。
【0027】
第1ダイクロイックミラー15は、重畳レンズ14から入射したR光を反射させ、G光及びB光を透過させる。第1ダイクロイックミラー15で反射されたR光は、反射ミラー16及びフィールドレンズ17Rを経て、光変調素子である液晶パネル18Rへ入射する。液晶パネル18Rは、R光を画像信号に応じて変調することにより、R色の画像を形成する。
【0028】
第2ダイクロイックミラー21は、第1ダイクロイックミラー15からのG光を反射させ、B光を透過させる。第2ダイクロイックミラー21で反射されたG光は、フィールドレンズ17Gを経て、光変調素子である液晶パネル18Gへ入射する。液晶パネル18Gは、G光を画像信号に応じて変調することにより、G色の画像を形成する。第2ダイクロイックミラー21を透過したB光は、リレーレンズ22、24、反射ミラー23、25、及びフィールドレンズ17Bを経て、光変調素子である液晶パネル18Bへ入射する。液晶パネル18Bは、B光を画像信号に応じて変調することにより、B色の画像を形成する。
【0029】
クロスダイクロイックプリズム19は、光合成用のプリズムであり、各液晶パネル18R、18G、18Bで変調された光を合成して画像光とし、投写光学系20へ進行させる。
【0030】
投写光学系20は、各液晶パネル18G,18R,18Bによって変調されクロスダイクロイックプリズム19で合成された画像光PLを図1のスクリーンSC上に拡大投写する。この際、投写光学系20は、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比AR2を、液晶パネル18G,18R,18Bの画像の横縦比AR0と異なるものとしたり、この横縦比AR0と等しいものとすることができる。
【0031】
回路装置80は、ビデオ信号等の外部画像信号が入力される画像処理部81と、画像処理部81の出力に基づいて光学系部分50に設けた液晶パネル18G,18R,18Bを駆動する表示駆動部82と、投写光学系20に設けた駆動機構(不図示)を動作させて投写光学系20の状態を調整するレンズ駆動部83と、これらの回路部分81,82,83等の動作を統括的に制御する主制御部88とを備える。
【0032】
画像処理部81は、入力された外部画像信号を各色の諧調等を含む画像信号に変換する。画像処理部81は、投写光学系20が画像の縦横比又は横縦比(アスペクト比)を変換して投写する第1動作状態である場合、投写光学系20による横縦比の変換を逆にした画像のアスペクト比変換を予め行ってスクリーンSC上に表示される画像が縦横に伸縮しないようにする。具体的には、投写光学系20によって例えば1.78:1から例えば2.4:1となるように横方向に画像の伸張が行われる場合、予め、横方向に0.742=1.78/2.4倍の画像の圧縮が行われ、或いは、縦方向に1.35=2.4/1.78倍の画像の伸張が行われる。一方、投写光学系20が画像の横縦比又はアスペクト比を変換しないで投写する第2動作状態である場合、画像処理部81は、上記のような画像のアスペクト比変換を行わない。なお、画像処理部81は、外部画像信号に対して歪補正や色補正等の各種画像処理を行うこともできる。
【0033】
表示駆動部82は、画像処理部81から出力された画像信号に基づいて液晶パネル18G,18R,18Bを動作させることができ、当該画像信号に対応した画像又はこれに画像処理を施したものに対応する画像を液晶パネル18G,18R,18Bに形成させることができる。
【0034】
レンズ駆動部83は、主制御部88の制御下で動作し、例えば投写光学系20を構成する絞りを含む一部の光学要素を光軸OAに沿って適宜移動させることにより、投写光学系20による図1のスクリーンSC上への画像の投写倍率を変化させることができる。また、レンズ駆動部83は、投写光学系20を構成する別の一部の光学要素を光軸OA上すなわち光路上に進退させること等により、図1のスクリーンSC上に投写される画像の横縦比AR2を変化させることができる。レンズ駆動部83は、投写光学系20全体を光軸OAに垂直な上下方向に移動させるアオリの調整により、図1のスクリーンSC上に投写される画像の縦位置を変化させることができる。
【0035】
以下、図3、図4(A)及び図4(B)等を参照して、実施形態の投写光学系20について説明する。投写光学系20は、レンズ等の複数の光学要素を組み合わせてなる本体部分20aと、本体部分20aの一部又は全体を移動させることでその結像状態を調整する第1、第2、第3及び第4駆動機構61,62,63,64とを備える。
【0036】
本体部分20aは、スクリーンSC側から順に、第1群30と、第2群40と、第3群60とからなる。第1、第2、第3及び第4駆動機構61,62,63,64のうち、第1駆動機構61は、第1群30及び第3群60を移動させ、第2及び第3駆動機構62,63は、第2群40を移動させ、第4駆動機構64は、投写光学系20全体を一体的に移動させる。
【0037】
第1群30は、第1レンズ部31と、第2レンズ部32と、第3レンズ部33とを有する。第1群30全体は、後述する第2群40の光路上への進退に応じて必要となる投写光学系20による結像面の位置の微調整をするために、第1駆動機構61に駆動されて、光軸OAの方向すなわちZ方向に沿ってスライド移動可能すなわち位置調整可能となっている。この第1群30は、たとえば、第2群40の光路上への進退に伴う微調整がなされた後に、第1レンズ部31を構成する少なくとも1枚のレンズを光軸OAに沿って手動等により微動させることにより、プロジェクター2によるスクリーンSCへ向けての投写時に通常行われる本体部分20aのフォーカス状態の調整を可能にしている。つまり、第1レンズ部31は、通常のフォーカス動作を行うフォーカス光学系として機能する。また、第2レンズ部32は、固定されたレンズである。また、第3レンズ部33は、1枚以上のレンズで構成されており、第1駆動機構61に駆動されて、本体部分20aによる投写倍率を変更することができる。つまり、第3レンズ部33は、ズーム動作を行うズーム光学系として機能する。
【0038】
第2群40は、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)で異なる焦点距離を持つ調整光学要素であり、結果的に第1群30及び第3群60も含めた投写光学系20の全系としても、縦方向と横方向とで異なる焦点距離を持つことになる。すなわち、第2群40が光路上に存在することにより、本体部分20aによる縦方向と横方向の拡大倍率も異なるものとなり、液晶パネル18G(18R,18B)に表示された画像の横縦比AR0とは異なる横縦比AR2の画像をスクリーンSC上に投写することができる。第2群40は、光軸OAに対して回転非対称な面を持つ1つ以上の調整用の光学要素を含み、具体的には、図4(B)に示す縦方向(Y方向)の断面に関して、スクリーンSC側から順に、正のパワーを持つ第1の光学要素群41と、負のパワーを持つ第2の光学要素群42とで構成されている。なお、第1の光学要素群41と第2の光学要素群42とは、図4(A)に示す横方向(X方向)の断面に関して、パワーを有していない。
【0039】
このように、アナモフィック光学系である第2群40を、縦断面に関して、正の屈折力を持つ第1の光学要素群41と負の屈折力を持つ第2の光学要素群42との組合せとすることにより、第2群をアフォーカル系のように機能させることができ、簡易に変倍すなわちズーミングを行なうことができる。
【0040】
さらに、第2群40は、進退駆動機構である第1アナモフィック駆動機構62(第2駆動機構)により一体として光軸OA上すなわち光路上に進退可能となっている。これにより、投写光学系20による画像の横縦比の切替が可能となる。画像の切替について詳しくは、後述する。
【0041】
第3群60は、回転対称な光学要素回転対称レンズ群を有する。第3群60全体は、第1群30と同じく、第2群40の進退に応じて必要となる投写光学系20による結像面の位置を調整するために、第1駆動機構61に駆動されて、光軸OAの方向すなわちZ方向に沿ってスライド移動可能すなわち位置調整可能となっている。特に、第3群60は、第1群30と同期してスライド移動するものとなっている。また、第3群60を構成する回転対称な光学要素回転対称レンズには、横方向及び縦方向にパワーを持つレンズが1枚以上含まれている。第3群60は、正のパワーを有するため光変調素子から射出した光の広がりを抑えることができる。そのため、第2群40へ入射する光の角度を抑えることができ、第2群40で発生する収差を抑えることができる。結果的に、第3群60は、投写光学系20全体の収差を抑える役割があり、第3群60は補正光学要素として複数のレンズを有し、それらのレンズ中に正のパワーを有するものとし、必要であれば、非球面のものを含めるものとする。
【0042】
上述のように、第1群30及び第3群60は、光路上に配置されたままとされているが、第2群40は、第2駆動機構である第1アナモフィック駆動機構62により一体として光路上に進退する。これにより、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)を所望のタイミングで切り替えることができる。
【0043】
具体的には、図5(A)に示すように、第2群40を光路上に配置した第1動作状態とすることにより、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像を縦方向に圧縮した横縦比(例えば2.4:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。あるいは、図5(B)に示すように、第2群40を光路上から退避させた第2動作状態とすることにより、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像のままの横縦比(例えば1.78:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。第2群40によってスクリーンSC上に投写される画像を縦方向に圧縮する構成は、横寸法が固定されたスクリーンSCを使用する際に有効である。つまり、このようなスクリーンSCに対して投写光学系20による横縦比だけの変更が可能になる。
【0044】
図5(B)に示すように投写光学系20の第2群40を光路外に退避させて第2動作状態とした場合、投写光学系20内の第2群40の位置には、何も配置されない。すなわち、第2群40を退避させているとき、投写光学系20は第1群30と第3群60とが協働して回転対称な光学要素のみで構成されることになるので、液晶パネル18G(18R,18B)の表示領域A0の横縦比(アスペクト比)とスクリーンSCの表示領域A2の横縦比(アスペクト比)とは一致することになる。さらに、第2群40を退避させた際には、第2群40が光路上にある場合に比較して透過率が向上し、画像を明るくできる。
【0045】
以上のような、第2群40の進退による第1動作状態と第2動作状態との切替えがなされる場合、一般的には進退に伴って、投写光学系20の全系としての結像状態が変化することになる。本実施形態では、このような観点を考慮して、第1駆動機構61により第1群30及び第3群60の位置を微調整することで、第2群40の進退の動作があっても投写光学系20による結像面を同一位置に保つことを可能にしている。
【0046】
ここで、図3に示すように、第1、第2、第3及び第4駆動機構61,62,63,64のうち、第1群30及び第3群60用の第1駆動機構61は、主要部分である位置調整駆動機構61aと、ズームフォーカス駆動機構61bとを有する。位置調整駆動機構61aは、第1群30全体及び第3群60全体を光軸OAの方向に沿ってスライド移動させるための機構である。具体的には、位置調整駆動機構61aは、第2駆動機構である第1アナモフィック駆動機構62による第2群40の進退動作に伴って、規定の量だけ第1群30及び第3群60を光軸OAに沿って移動させる。つまり、位置調整駆動機構61aは、第2群40の進退動作に対する第1群30及び第3群60の連動を行うための連動駆動機構である。これにより、第2群40の有無によって結像状態が変化しても、結像面を同一位置に保つことを可能にしている。ズームフォーカス駆動機構61bは、ズーミング及びフォーカシングを行うために第1群30のレンズ群31等の一部を移動させる機構である。
【0047】
以下、図3に示す第1駆動機構61による第2群40の進退に伴う第1群30及び第3群60の光軸方向に関する位置調整の一例について説明する。まず、ユーザーが第1動作状態から第2動作状態への切替えを行う、又は逆の切替えを行うために、第1アナモフィック駆動機構62による第2群40の進退動作がなされると、第1駆動機構61のうち位置調整駆動機構61aは、第1アナモフィック駆動機構62の動作に応じて第1群30及び第3群60を移動させる。つまり、位置調整駆動機構61aにより、第1群30及び第3群60の配置が、第2群40を光路上に配置する第1動作状態であるか第2群40を光路上から退避させた第2動作状態であるかに応じて変更される。なお、このような位置調整駆動機構61aの動作は、例えばカムを用いたメカ的機構やモータ等を用いた電気的機構等によって実現できる。
【0048】
ここで、位置調整駆動機構61aによる第1群30及び第3群60の光軸方向の移動量について説明する。ここでは、一例として、第1群30と第3群60とは、同じ方向に同じ移動量DAだけ動くものとする。つまり、第1群30から第3群60までの距離は不変となっている。この移動量DAは、例えば光学的なシミュレーションや測定等により適切な数値を算出することができ、第1群30、第3群60等の各光学要素の配置関係等を考慮して結像面の位置が適切に調整されるように固定的に定められる。位置調整駆動機構61aは、第1動作状態から第2動作状態へ切り替わるのに合わせて、この移動量DAの分だけ第1群30及び第3群60を光軸OAに沿って−Z側へ移動させる。また、逆に、位置調整駆動機構61aは、第2動作状態から第1動作状態へ切り替わるのに合わせて、この移動量の分だけ第1群30及び第3群60を光軸OAに沿って+Z側へ移動させる。この結果として、第2群40の有無によって結像状態が変化しても投写光学系20の結像面の位置を一定に保つことができる。なお、本実施形態では、位置調整駆動機構61aによって結像面の位置調整がなされるので、例えば第1群30及び第3群60を位置調整駆動機構61aにより移動させた後に、フォーカス動作させれば、フォーカスの微調整だけで容易により正確なピント合わせができる。位置調整駆動機構61aによる調整のみでピントが合っている場合には、このフォーカス動作は不要となる。
【0049】
図6(A)及び6(B)は、第1動作状態と第2動作状態とにおいて、被投写面であるスクリーンSCへの投写状態をそれぞれ示す図である。本実施形態では、上述のように、第1群30及び第3群60を光軸OAに沿って移動可能とすることで、図6(A)に示す第1動作状態の場合に画像光がスクリーンSC上で結像するのみならず、図6(B)に示す第2動作状態の場合においてもスクリーンSC上で結像するようになっている。より具体的には、図6(A)に示す第1動作状態では、第1及び第3群30、60は、それらの後端面である第1基準面S1,S2を基準位置としてそれぞれ配置されていたものが、図6(B)に示す第2動作状態では、第1基準面S1,S2から移動量DAの分だけずれた第2基準面S1a,S2aにそれぞれ移動している。この移動により、第1及び第2動作状態のいずれにおいても、投写光学系20の結像面の位置は、固定位置であるスクリーンSCの位置に適応したものとなっている。これに対して、図6(C)に示す比較例のように、第1群30や第3群60が固定されたままであると、仮に第1動作状態の場合には図6(A)のようにスクリーンSC上で結像していても、第2群40を退避させた第2動作状態となった場合には、光路長が変化することになるので、スクリーンSC上で結像しなくなり、画像が劣化する可能性がある。特に、第2群40の進退に伴う変化が大きい場合、第1群30のフォーカス機能のみでは、結像のズレを修正しきれない場合がある。これに対して、本実施形態では、第2群40の進退に伴って第1群30及び第3群60を適切な量だけ光軸OAに沿って移動させることで、結像面の位置がずれるという事態を回避することができる。なお、第1群30及び第3群60の具体的な移動量については、上記のように、第1群30、第3群60等の構成次第ではあるが、通常の構成では、多くても1mm〜数mm程度であると考えられる。また、第1群30と第3群60とを同じ量だけ同じ方向に移動させる場合、位置調整駆動機構61a(図3参照)は、第1群30と第3群60との双方を含む1つの鏡筒(不図示)を動かすだけで所期の動作を達成できるので、比較的簡易な構造にできる。
【0050】
また、図3に示すように、実施形態の投写光学系20では、第4駆動機構である全系駆動機構64によって本体部分20a全体を光軸OAに垂直な方向に移動させてシフト量(光軸のズレ量)を調整することにより、スクリーンSC上に投写される画像の光軸OAからのズレ量を増減させることができる。つまり、本体部分20aの光軸OAを液晶パネル18Gの中心軸AXに平行な状態を保ちつつ、本体部分20aの光軸OAを液晶パネル18Gの中心軸AXに対して適当なシフト量SFだけ移動させることで、光軸OAから例えば上方向(+Y方向)に外れた位置に画像を投写することができ、シフト量SFの調整によって画像の投写位置を縦方向に上下移動させることができる。なお、本体部分20aの光軸OAの液晶パネル18Gの中心軸AXを基準するズレ量であるシフト量SFは、必ずしも可変とする必要はなく、例えばゼロでない値で固定することもできる。また、全系駆動機構64により本体部分20a全体を光軸OAに沿った方向に適宜移動させることもできる。
【0051】
また、上記のような第1駆動機構61の位置調整駆動機構61aと第2駆動機構62とによる連動の場合以外にも、各駆動機構61,62,63,64は、レンズ駆動部83からの駆動信号によって単独で動作するだけでなく、複合的にも動作する。例えば、第1駆動機構61の動作に合わせて第4駆動機構である全系駆動機構64を動作させることで、ズーミング時に画像がシフトする現象等を抑制することもできる。
【0052】
以下、図3等に示す投写光学系20のその他の光学的特性について説明する。この投写光学系20の場合、液晶パネル18G(18R,18B)に比較的近い位置で第2群40が光線上に進退可能であるため、各像高の光線は比較的像高に近い経路に沿って第2群40を通過し、光線のコントロールがしやすくなる。このため第2群40の光路上への進退動作による収差の発生を抑えることができる。一般的に回転非対称な光学要素の製造は難しく、精度を出すためには第2群40の小型化が必須条件である。その点で、第2群40が液晶パネル18G(18R,18B)に近いほど光線の広がりが少なく調整光学要素としての第2群40を構成する第1の光学要素群41と第2の光学要素群42とを小型にできるので、これらの光学要素群41,42に対して高精度なレンズ加工が期待でき、投写光学系20の性能向上につながるとともに、コストダウンも可能である。さらに、投写光学系20は、液晶パネル18G(18R,18B)に最も近い第3群60を有することで、比較的簡単な光学系によって効率的で無理のない収差の補正を可能としている。このような第3群60の存在によって、さらに著しい性能向上を図ることができる。具体的には、この第3群60により、第2群40に入射するマージナル光を略平行にできる。つまり、第2群40内での光束の広がりをより確実に抑えることができ、第2群40の径が大きくなるのを防ぐことができる。また、アナモフィック型の第2群40を略アフォーカル系にすることにより、第2群40の構成レンズの位置精度の要求を低くしつつ精度を確保することができる。
【0053】
また、投写光学系20において、本体部分20aの光軸OAを液晶パネル18Gの中心軸AXに平行な状態を保ちつつ適当なシフト量SFだけ移動させた状態とできるので、アオリを利用した投写が可能になり、視聴者と画像光PLとが干渉するのを防ぐのが容易になり、設置性が向上する。投写光学系20の本体部分20aが液晶パネル18Gに対して上記のようにシフトした状態の場合、第1駆動機構61により第3レンズ部33を動作させて投写倍率を変更するズーミングを行うと、画像光PLのシフト量の絶対量が増加する。よって、ズーミングによるシフト量の増加を第4駆動機構である全系駆動機構64の動作によって補正することで、プロジェクター2の操作性・設置性を向上させことができる。この際、主制御部88の制御下で、第1駆動機構61と第4駆動機構である全系駆動機構64とを連動させて動作を自動化することにより、より操作性が向上する。
【0054】
上記実施形態の投写光学系20の場合、調整光学要素である第2群40を構成する光学要素群41,42の片面又は両面がシリンドリカルレンズ面である。シリンドリカルレンズは、加工が容易で高精度が期待でき、コストダウンが可能である。また、平面断面側の偏芯感度が低く、組立性が向上し、結果的に、高性能化が期待できる。つまり、第2群40をシリンドリカルレンズで構成することで、投写光学系20の精度を確保しつつコストダウンが可能になる。
【0055】
第2群40を構成する光学要素群41,42の片面又は両面は、シリンドリカルレンズ面に限らず、他のアナモフィックレンズ(例えばトーリック又はトロイダルレンズ)とすることができる。
【0056】
以上において、第2群40を構成するシリンドリカル型又はアナモフィックレンズ型の光学要素群41,42の片面又は両面は、横のX断面又は縦のY断面に関して非球面式、具体的には、以下の多項式hで表される形状を持つものとできる。
ここで、yは光軸OAからの像の高さ(像高)、cは基準とする球面の曲率、kは円錐定数、A2、A4、A6、A8、A10、・・・のそれぞれは所定の補正項とする。
【0057】
さらに、第2群40を構成する光学要素群41,42の片面又は両面は、自由曲面とすることができる。アナモフィックレンズを用いることにより、Y方向及びX方向の両断面で曲率をコントロールできるので、非点収差の低減が可能で、高性能化が可能になる。また、非球面とすることにより、各種収差の低減が可能で、高性能化が可能になる。さらに、自由曲面とすることにより、スクリーンSC上又は液晶パネル18G(18R,18B)上のイメージサークル面において、液晶パネル18G(18R,18B)の縦横方向以外の中間の斜め方向の結像状態の最適化も容易になり、高性能化が可能になる。
【0058】
第2群40については、2枚の光学要素群41,42に限らず3枚以上の光学要素群で構成することができる。この際、第2群40によって色収差が発生しないことが望ましい。このため、以下の関係
Σ(φi×νi)≒0
ここで、
φi:第2群40を構成する各レンズの屈折力
νi:第2群40を構成する各レンズのアッベ数
が成り立つことが望ましい。
【0059】
また、例えば、図3等に示す第1群30において、固定されたレンズとしている第2レンズ部32は、省略した構成とすることも可能である。
【0060】
また、図3等では、第1レンズ部31がフォーカス機能を有し、第3レンズ部33がズーム機能を有するものとしているが、第1レンズ部31と第3レンズ部33とが協働してフォーカス機能とズーム機能とを担うものとすることもできる。
【0061】
また、第2群40を構成する第1の光学要素群41と第2の光学要素群42とを第3駆動機構である第2アナモフィック駆動機構63により個別に又は一体的に光軸OA方向に移動させることもできる。これらの間隔を調整することにより、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)又は縦横比を連続的に増減させることができる。
【実施例1】
【0062】
図7及び図8は、第1実施形態の投写光学系20の一実施例を示す図であり、第2群40が挿入された第1動作状態を示しており、図7は、投写光学系20の横断面を示し、図8は、縦断面を示している。
【0063】
投写光学系20は、レンズL1〜L19と絞り70とからなり、このうちレンズL1〜L13によって第1群30が構成され、レンズL14〜L17によって第2群40が構成され、レンズL18,L19によって第3群60が構成されている。第1群30を構成するレンズL1〜L13のうち、レンズL1〜L4は、第1レンズ部31を構成し、レンズL5〜L7は、第2レンズ部32を構成し、レンズL8〜L13は、第3レンズ部33を構成している。これらのうち、レンズL8,L9は、第1部分レンズ群33aを構成し、レンズL10〜L13は、第2部分レンズ群33bを構成している。なお、絞り70は、第3レンズ部33を構成するレンズL9とレンズL10との間に配置されている。つまり、第1部分レンズ群33aと第2部分レンズ群33bとの間に配置されている。第2群40のうち、接合レンズL14,L15は、縦のY方向に関して正のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。また、接合レンズL16,L17は、縦のY方向に関して負のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。第3群60に含まれるレンズL18,L19は、メニスカスレンズであり、全体として正のパワーを持っている。なお、レンズL18,L19のうち少なくとも一方は、非球面レンズである。つまり、第3群60は非球面レンズ群を含んでいる。非球面式について具体的には、上述した多項式hで表される形状が同様に適用される。
【0064】
図9(A)〜9(C)は、ズーミングの動作を説明するものであり、図9(A)は、図8の状態を示し、拡大率の大きな「ワイド端」の場合を示している。また、図9(B)は、「中間」の状態の場合を示し、図9(C)は、拡大率の小さな「テレ端」の場合を示している。図示のように、例えば第3レンズ部33を構成する各レンズ群が部分レンズ群33a,33b単位で光軸OAの方向に沿って個別に動き、また、絞り70が動くことによって、ズーミングの動作がなされる。
【0065】
以下の表1に、実施例1の第1動作状態におけるレンズデータ等を示す。この表1の最上欄である第1欄において、「面番号」は、像面側から順に各レンズの面に付した番号である。また、「Ry」、「Rx」は、Y及びX曲率半径をそれぞれ示し、「D」は、次の面との間のレンズ厚み或いは空気空間を表している。さらに、「Nd」は、レンズ材料のd線における屈折率を示し、「νd」は、レンズ材料のd線におけるアッベ数を示す。
【表1】
表1の第2欄は、ズーミング動作時の一群のレンズL1〜L7の位置と、次の一群のレンズL8,L9すなわち第1部分レンズ群33aの位置と、絞り70及び一群のレンズL10〜L13すなわち第2部分レンズ群33bの位置とを示している。なお、表1の第3欄は、ズーミング動作時の投写光学系20のX方向及びY方向の焦点距離を示している。また、表1の第4欄は、ズーミング動作時の投写光学系20のX方向及びY方向の明るさ(F値)を示している。
【0066】
また、実施例1のレンズL18は、非球面で形成されている。これらの非球面形状の光軸OA方向の面頂点からの変位量hは、上述した非球面式又は多項式で表される。実施例1の場合、レンズL18に対応する各面番号の面での上記非球面式における各係数k、A2、A4、A6、A8、A10・・・の値については、表1の第5欄(最下欄)に示す通りである。
【0067】
図10は、投写光学系20の本体部分20aから第2群40を光路外に退避させたものであり、横縦比を変換しない第2動作状態となっている。本実施形態の場合、矢印AW1で示すように、投写光学系20の全体が−Z方向すなわちクロスダイクロイックプリズム19寄りにスライド移動することで、第1動作状態に比べて、第3群60からクロスダイクロイックプリズム19までの距離SDが縮まった状態となる。なお、以下の表2に、実施例1の第2動作状態におけるレンズデータ等を示す。表2の各記号については表1と同様であるが、Y及びX曲率半径については、対称性があるので1つの記号「R」によって示している。表1の面番号34での「D」の値とこれに対応する表2の面番号28での「D」の値とが異なっている。これが、距離SDが縮まったことに相当する。
【表2】
【0068】
以上のように本実施形態の投写光学系20によれば、第2群40が液晶パネル18G(18R,18B)の縦方向と横方向とで異なるパワーを持つので、全系の投写光学系20としても、縦横方向に異なる焦点距離を持ち縦横方向の拡大倍率も異なるものとなり、液晶パネル18G(18R,18B)の画像の横縦比とスクリーンSC上に投写される画像の横縦比とを異なるものにできる。つまり、本投写光学系20により、幅と高さとの比であるアスペクト比の変換が可能になる。この際、第1駆動機構61によって、第1群30及び第3群60が、第2群40の進退動作に連動して位置を変更することで、結像位置を調整できるので、第1動作状態及び第2動作状態のいずれにおいても、結像面を同一の位置に保つことで、スクリーンSCの配置に対して適したものにできる。
【0069】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る投写光学系等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の投写光学系等の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0070】
図11は、本実施形態に係るプロジェクターのうち投写光学系の構造を説明する図であり、第1実施形態の図3に対応するものである。本実施形態の投写光学系120の場合、図示のように、第1駆動機構161を構成する位置調整駆動機構161aが、第3群60にのみ接続しており、第2群40の進退に伴って、第3群60のみが連動して光軸OAに沿ってスライド移動し、第1群30は、第2群40に連動せず、実質的に固定されたものとなっている。なお、第1群30は、第2群40の進退との関係では固定的な状態であるが、ズーミングやフォーカシングについては、ズームフォーカス駆動機構161bによってなされる。つまり、第1群30を構成する個々のレンズ等は、ズームやフォーカスに際して光軸OAに沿って移動可能となっている。
【0071】
本実施形態の場合、第2群40の光路上への進退動作に対する第1群30の連動を行うための連動駆動機構である位置調整駆動機構161aによって、第3群60のみを移動させて、投写光学系120としての結像面の調整が可能となっている。この場合、第3群60の位置調整に伴い、第1群30と第3群60との相対的な位置が変動することになる。これに対して、例えば第3群60の移動量DAは、第1実施形態の場合と同様、例えば光学的なシミュレーションや測定等により適切な数値を算出することができる。これにより、投写光学系120の結像面の位置を一定に保つことができる。位置調整駆動機構161aは、第1動作状態から第2動作状態へ切り替わるのに合わせて、この移動量DAの分だけ第3群60を光軸OAに沿って−Z側に移動させ、逆に、位置調整駆動機構161aは、第2動作状態から第1動作状態へ切り替わるのに合わせて、この移動量の分だけ第3群60を光軸OAに沿って+Z側へ移動させる。
【実施例2】
【0072】
図12及び図13は、第1実施形態の投写光学系20の一実施例を示す図であり、第2群40が挿入された第1動作状態を示しており、図12は、投写光学系20の横断面を示し、図13は、縦断面を示している。
【0073】
投写光学系20は、レンズL1〜L19と絞り70とからなり、このうちレンズL1〜L13によって第1群30が構成され、レンズL14〜L17によって第2群40が構成され、レンズL18,L19によって第3群60が構成されている。第1群30を構成するレンズL1〜L13のうち、レンズL1〜L4は、第1レンズ部31を構成し、レンズL5〜L7は、第2レンズ部32を構成し、レンズL8〜L13は、第3レンズ部33を構成している。なお、絞り70は、第3レンズ部33を構成するレンズL9とレンズL10との間に配置されている。第2群40のうち、接合レンズL14,L15は、縦のY方向に関して正のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。また、接合レンズL16,L17は、縦のY方向に関して負のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。第3群60に含まれるレンズL18,L19は、メニスカスレンズであり、全体として正のパワーを持っている。なお、レンズL18,L19のうち少なくとも一方は、非球面レンズである。つまり、第3群60は非球面レンズ群を含んでいる。非球面式について具体的には、上述した多項式hで表される形状が同様に適用される。
【0074】
図14(A)〜14(C)は、ズーミングの動作を説明するものであり、図14(A)は、図13の状態を示し、拡大率の大きな「ワイド端」の場合を示している。また、図14(B)は、「中間」の状態の場合を示し、図14(C)は、拡大率の小さな「テレ端」の場合を示している。図示のように、例えば第3レンズ部33を構成する各レンズ群が部分レンズ群33a,33b単位で光軸OAの方向に沿って個別に動き、また、絞り70が動くことによって、ズーミングの動作がなされる。
【0075】
以下の表3に、実施例2の第1動作状態におけるレンズデータ等を示す。この表3の各欄においての記載は、表1の場合と同様である。
【表3】
【0076】
図15は、投写光学系20の本体部分20aから第2群40を光路外に退避させたものであり、横縦比を変換しない第2動作状態となっている。本実施形態の場合、矢印AW2で示すように、第3群60が−Z方向すなわちクロスダイクロイックプリズム19寄りにスライド移動することで、第1動作状態に比べて、第2群40が退避した後の第1群30から第3群60までの距離SD1がさらに延びる一方、第3群60からクロスダイクロイックプリズム19までの距離SD2が縮まった状態となる。なお、以下の表4に、実施例1の第2動作状態におけるレンズデータ等を示す。表4の各記号については表3と同様であるが、Y及びX曲率半径については、対称性があるので1つの記号「R」によって示している。表3の面番号34での「D」の値とこれに対応する表4の面番号28での「D」の値とが異なっている。これが、距離SD2が縮まっていることを示すものである。なお、距離SD1の変化については、表3と表4とのうち可変である面番号34での「D」の値の変化に含まれている。
【表4】
【0077】
本実施形態においても、第3群60が、第2群40の光路上への進退に伴って、第2群40を構成するレンズの構成に応じで予め定められた量だけ光軸OAに沿ってスライド移動することで、結像位置を調整できるので、第1動作状態及び第2動作状態のいずれにおいても、結像面を同一の位置に保つことで、スクリーンSCの配置に対して適したものにできる。
【0078】
特に、第3群60とズーム光学系である第1群30との間に着脱可能な第2群40があり、第3群60を第1群30と別鏡筒で作ることは、比較的容易である。そのため、例えば第3群60に、第1群30とは別個に独自の駆動機構として位置調整駆動機構161aを付けることが可能となる。また、第3群60は、主として収差補正等を担うものであり、ズーミングやフォーカシング等の動作に寄与しないものである。従って、第3群60を結像位置の調整のためにスライド移動させても、これに伴う投写光学系120全体への光学的な影響が極力抑えられる。また、位置調整駆動機構161aは、ズーミングやフォーカシングのための機構を要しないため、比較的簡易な構造で所期の動作を達成できる。
【0079】
〔その他〕
図16(A)及び16(B)は、図4(A)及び4(B)に示す第1実施形態に示す投写光学系20又は第2実施形態に示す投写光学系120の変形例を説明する図である。投写光学系220の第2群140は、縦方向(Y方向)と横方向(X方向)で異なる焦点距離を持っており、結果的に第1群30も含めた投写光学系220の全系としても、縦方向と横方向とで異なる焦点距離を持つことになる。この場合、第2群140は、横方向(X方向)の断面に関して、スクリーンSC側から順に、負のパワーを持つ第1の光学要素群141と、正のパワーを持つ第2の光学要素群142とで構成されている。図16(B)に示すように、この第2群140を光路上から退避させた場合、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像のままの横縦比(例えば1.78:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。また、図16(A)に示すように、第2群40を光路上に配置して、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像を横方向に伸張した横縦比(例えば2.4:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。さらに、第2群140を構成する第1の光学要素群141と第2の光学要素群142とを図3の第2アナモフィック駆動機構63(第3駆動機構)により光軸OA方向に移動させてこれらの間隔を調整することにより、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比又はアスペクト比を連続的に増減させることもできる。なお、第2群40によってスクリーンSC上に投写される画像を横方向に伸張する構成は、縦寸法が固定されたスクリーンSCを使用する際に有効である。つまり、このようなスクリーンSCに対して投写光学系20による投写距離等を変えずに横縦比だけの変更が可能になる。
【0080】
図17(A)及び17(B)は、図4(A)及び4(B)に示す第1実施形態に示す投写光学系20又は第1実施形態に示す投写光学系120の別の変形例を説明する図である。投写光学系320の第2群240は、縦方向(Y方向)の断面に関して、スクリーンSC側から順に、負のパワーを持つ第1の光学要素群241と、正のパワーを持つ第2の光学要素群242とで構成されている。この場合、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像を横方向に縮小した横縦比でスクリーンSC上に映像を投写することができる。
【0081】
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0082】
まず、第1実施形態では、第1群30及び第3群60の双方が移動するものであるのに対して、第2実施形態では、第3群60のみが移動するものとなっているが、どちらのタイプを採用するかは、全体の光学設計に対する利便性によって適宜選択することができる。例えば、第3群60の移動のみでは結像面の調節が十分に行えない場合には、第1実施形態の投写光学系20のようにさらに第1群30も動かす構成とすることができる。逆に、例えば第1群30全体を光軸方向にあまり動かすことができない設計となっている場合には、第2実施形態の投写光学系120のように第1群30を動かさない構成とすることができる。
【0083】
また、第1実施形態において、第1群30と第3群60とは、同じ方向に同じ量だけ動くものとしているが、移動量は、第1群30と第3群60とで異なるものとすることも可能である。
【0084】
また、第3群60や第1群30の移動量は、第2群40の配置状態のみならず、例えば投写距離に応じて定めるものとすることも可能である。
【0085】
また、第2群40を回転非対称型の光学要素群41,42のみで構成する必要はなく、第2群40中に非対称型の光学要素群を追加することもできる。
【0086】
液晶パネル18G,18R,18Bは、透過型に限らず、反射型とすることができる。ここで、「透過型」とは、液晶パネルが変調光を透過させるタイプであることを意味しており、「反射型」とは、液晶パネルが変調光を反射するタイプであることを意味している。
【0087】
以上のプロジェクター2では、複数の液晶パネル18G,18R,18Bで形成された各色の画像を合成しているが、単一の光変調素子であるカラー又はモノクロの液晶パネルで形成された画像を投写光学系20で拡大投写することもできる。この場合、クロスダイクロイックプリズム19が不要となるので、投写光学系20の光学設計上の自由度が高まる。
【0088】
プロジェクターとしては、投写面を観察する方向から画像投写を行う前面投写型のプロジェクターと、投写面を観察する方向とは反対側から画像投写を行う背面投写型のプロジェクターとがあるが、図2等に示すプロジェクターの構成は、いずれにも適用可能である。
【0089】
液晶パネル18G,18R,18Bに代えて、マイクロミラーを画素とするデジタル・マイクロミラー・デバイス等を、光変調素子として用いることもできる。
【0090】
また、上記実施形態において、各群30,40,60等を構成するレンズの前後又は間に1つ以上の実質的にパワーを持たないレンズを追加することができる。
【符号の説明】
【0091】
2…プロジェクター、 10…光源、 15,21…ダイクロイックミラー、 17B,17G,17R…フィールドレンズ、 18B,18G,18R…液晶パネル、 19…クロスダイクロイックプリズム、 20…投写光学系、 20a…本体部分、 30…第1群、 31…第1レンズ部(フォーカス光学系)、 32…第2レンズ部、 33…第3レンズ部(ズーム光学系)、 40…第2群(アナモフィック光学系)、 41,42,141,142…光学要素群(第1の光学要素群、第2の光学要素群)、 60…第3群(非球面レンズ群)、 50…光学系部分、 61…第1駆動機構、 61a,161a…位置調整駆動機構(連動駆動機構)、 61b,161b…ズームフォーカス駆動機構、 62…第1アナモフィック駆動機構(第2駆動機構)、 63…第2アナモフィック駆動機構(第3駆動機構)、 64…全系駆動機構(第4駆動機構)、 70…絞り、 80…回路装置、 81…画像処理部、 83…レンズ駆動部、 88…主制御部、 A0…表示領域、 A2…表示領域、 AR0…横縦比、 AR2…横縦比、 AX…中心軸、 L1-L19…レンズ、 OA…光軸、 PL…画像光、 SC…スクリーン(被投写面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写像のアスペクト比を切り替えることができる投写光学系及びこれを備えるプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの投写光学系に用いられるアスペクト比変換用のコンバーターとして、本来の投写光学系の前面位置すなわち像側正面に進退可能に配置されるフロント配置型のコンバーターが存在する。
【0003】
しかしながら、この種のコンバーターは、プロジェクター本体から独立した外付けの光学部として設けられており、プロジェクターを大型化させるとともに、コンバーターを含めた全投写光学系の調整を複雑にし、或いは画像を著しく劣化させる。
【0004】
なお、プロジェクターの投写光学系ではなく、カメラ等の撮像光学系に使用されるアスペクト比変換用のコンバーターとして、結像光学系の像側に着脱可能に配置されるリア配置型のリレー系が存在する(特許文献1参照)。このリレー系は、第1群と第2群と第3群とからなり、これらのうち中央の第2群は、アナモフィックコンバーターであり、第1群と第3群との間に挿脱可能になっている。また、フォーカス状態を適正にするためのフランジバック調整の際に第3群を光軸方向に移動させるものが存在する(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1等に開示されたリレー系又はアナモフィックコンバーターは、撮像光学系に用いるものであり、これを投写光学系にそのまま用いると、種々の制約が生じる。
【0006】
例えば、上記のようなリア配置型のリレー系の場合、第2群のアナモフィックコンバーターの挿入時と退避時とで光路長が変化するため、投写光学系として用いると、第2群の進退によって物体面と像面との結像関係が崩れてしまう可能性があり、第2群の進退の影響が生じないような投写光学系の設計は容易でない。
【0007】
また、特許文献1等に記載の撮像光学系では、例えばアスペクト比の変換に際して特許文献2のようなフランジバック調整等が重要となり得る。一方、投写光学系では、レンズ交換が一般的に行われないので、様々な交換レンズをマウント可能にするためのフランジバック調整の機能を確保する必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−221597号公報
【特許文献2】特開2005−300902号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題に鑑みてなされたものであり、結像面を調節可能な投写光学系及びこれを組み込んだプロジェクターを提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る投写光学系は、(a)画像を被投写面上に拡大投写する際に、光変調素子の画像の横縦比と、被投写面に投写される画像の横縦比とを異なるものとする投写光学系であって、(b)被投写面側から順に、ズーム動作をするズーム光学系を含む第1群と、光変調素子の縦方向と横方向とで異なるパワーを持つとともに光路上に進退可能なアナモフィック光学系を含む第2群と、正のパワーを持つ第3群とから実質的になり、(c)第3群が、第2群の進退動作に連動して光軸方向に動く。ここで、「から実質的になる」とは、上記投写光学系において、第1群、第2群及び第3群のほかに実質的にパワーを持たないレンズを追加する場合を含むことを意味する。
【0011】
上記投写光学系によれば、第2群が光路上に進退可能であり、第2群が光路上にあり横縦比を変換して投写する第1動作状態において、縦横方向に異なる焦点距離を持ち縦横方向の拡大倍率も異なるものとなり、光変調素子の画像の横縦比と被投写面上に投写される画像の横縦比とを異なるものにできる。つまり、本投写光学系により、幅と高さとの比であるアスペクト比の変換が可能になる。また、第2群を光路上から退避させて横縦比を変換しないで投写する第2動作状態において、光変調素子の画像の横縦比と被投写面上に投写される画像の横縦比とを等しいものにできる。つまり、本投写光学系により、幅と高さとの比を変換することなくそのまま保つことも可能である。以上のような被投写面への投写状態の切替すなわち投写光学系での第1動作状態と第2動作状態との切替に際して、第3群が第2群の進退動作に連動して位置を変更することで、本投写光学系による結像面を同一位置に保つことができる。この際、例えば第3群が正のパワーを持つことで、第3群の通過を想定して第2群に入射する光を比較的平行化した状態にできるので、第2群の径が大きくなることを抑制できるとともに、第2群の構成レンズの位置精度の要求を低くしつつ精度を確保することができる。
【0012】
本発明の別の側面によれば、第1群が、第3群とともに、第2群の進退動作に連動して光軸方向に動く。この場合、第3群のみならず第1群が第2群の進退動作に連動して位置を変更することで、第1動作状態及び第2動作状態のいずれにおいても、本投写光学系による結像面が適した位置にある状態を簡易に確保することができる。
【0013】
本発明の別の側面によれば、第1群が、第2群の進退動作に連動して光軸方向に沿って第3群と同じ向きに同じ量だけ動く。この場合、第1群と第3群との位置の変更を一体的に行うことができるので、移動の動作が行いやすい。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群の進退動作に伴う第1群および第3群のうち少なくとも第3群の連動を行うための連動駆動機構をさらに有する。この場合、連動駆動機構により、第2群の進退動作に応じて、必要な移動量の分だけ確実に第3群等を光軸方向に沿って移動させることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、第1群が、第2群の進退動作に対して実質的に固定され、第3群のみが第2群の進退動作に連動して光軸方向に沿って所定の移動量だけ移動する。この場合、第3群のみを、第2群の進退動作に連動して位置を所定の移動量だけ変更させることで、第2群を光路上に配置させた第1動作状態及び第2群を光路上から退避させた第2動作状態のいずれにおいても、本投写光学系による結像面が適した位置にある状態を確保することができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面によれば、第3群が、非球面レンズ群を含む。この場合、収差補正をより容易にすることができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面によれば、第1群が、フォーカス動作をするフォーカス光学系を含む。この場合、例えば第1群を全体として移動させた後に、第1群の一部の光学系をフォーカス動作させれば、フォーカスの微調整だけで容易にピント合わせができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群が、光変調素子の縦方向の断面において、被投写面側から順に、正のパワーをもつ第1の光学要素群と、負のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている。この場合、被投写面上に投写される画像を縦方向に圧縮又は短縮することができる。被投写面の横寸法が固定されている場合、投写距離を変えずに横縦比の変更が可能になる。
【0019】
本発明のさらに別の側面によれば、第2群が、光変調素子の横方向の断面において、被投写面側から順に、負のパワーをもつ第1の光学要素群と、正のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている。この場合、被投写面上に投写される画像を横方向に伸張又は拡大することができる。被投写面の縦寸法が固定されている場合、投写距離を変えずに横縦比の変更が可能になる。
【0020】
本発明に係るプロジェクターは、上述の投写光学系と、光変調素子とを備える。本プロジェクターによれば、光変調素子の画像の横縦比と異なる横縦比の画像を被投写面上に投写することができる。この際、特別な投写光学系により、被投写面と結像面との調節がなされるので、画像を良好な状態で投写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターの使用状態を説明する斜視図である。
【図2】図1のプロジェクターの概略構成を示す図である。
【図3】図1のプロジェクターのうち投写光学系の構造を説明する図である。
【図4】(A)は、投写光学系の第1動作状態における横断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の第1動作状態における縦断面の構成を示す。
【図5】(A)は、投写光学系の第1動作状態を示し、(B)は、投写光学系の第2動作状態を示す。
【図6】(A)は、投写光学系の第1動作状態におけるスクリーンへの投写状態を示す図であり、(B)は、投写光学系の第2動作状態におけるスクリーンへの投写状態を示す図であり、(C)は、比較例の投写光学系の第2動作状態におけるスクリーンへの投写状態を示す図である。
【図7】投写光学系の一実施例について、第1動作状態における横断面の構成を示す図である。
【図8】投写光学系の一実施例について、第1動作状態における縦断面の構成を示す図である。
【図9】(A)〜(C)は、図8に示す実施例1の光学系のズーム動作を示す図である。
【図10】投写光学系の一実施例について、第2動作状態における縦断面の構成を示す図である。
【図11】第2実施形態に係るプロジェクターのうち投写光学系の構造を説明する図である。
【図12】投写光学系の一実施例について、第1動作状態における横断面の構成を示す図である。
【図13】投写光学系の一実施例について、第1動作状態における縦断面の構成を示す図である。
【図14】(A)〜(C)は、図13に示す実施例2の光学系のズーム動作を示す図である。
【図15】投写光学系の一実施例について、第2動作状態における縦断面の構成を示す図である。
【図16】(A)は、変形例の投写光学系の第1動作状態における横断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の第1動作状態における縦断面の構成を示す。
【図17】(A)は、別の変形例の投写光学系の第1動作状態における横断面の構成を示し、(B)は、投写光学系の第1動作状態における縦断面の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態に係るプロジェクター及び投写光学系を詳細に説明する。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るプロジェクター2は、画像信号に応じて画像光PLを形成し、当該画像光PLをスクリーンSC等の被投写面へ向けて投写する。プロジェクター2の投写光学系20は、プロジェクター2内に内蔵された光変調素子である液晶パネル18G(18R,18B)の画像をスクリーン(被投写面)SC上に拡大投写する際に、液晶パネル18G(18R,18B)の画像の横縦比(アスペクト比)AR0に対して、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)AR2を異なるものとすることができる。つまり、液晶パネル18Gの表示領域A0の横縦比AR0と、スクリーンSCの表示領域A2の横縦比AR2とは、互いに異なるものとすることができるが、同一のものとすることもできる。具体的には、液晶パネル18Gの表示領域A0の横縦比AR0は、例えば1.78:1であり、スクリーンSCの表示領域A2の横縦比AR2は、例えば1.78:1、1.85:1、2.35:1、2.4:1等とされる。
【0024】
図2に示すように、プロジェクター2は、画像光を投写する光学系部分50と、光学系部分50の動作を制御する回路装置80とを備える。
【0025】
光学系部分50において、光源10は、例えば超高圧水銀ランプであって、R光、G光、及びB光を含む光を射出する。ここで、光源10は、超高圧水銀ランプ以外の放電光源であってもよいし、LEDやレーザーのような固体光源であってもよい。第1インテグレーターレンズ11及び第2インテグレーターレンズ12は、アレイ状に配列された複数のレンズ素子を有する。第1インテグレーターレンズ11は、光源10からの光束を複数に分割する。第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子は、光源10からの光束を第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子近傍にて集光させる。第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子は、重畳レンズ14と協働して、第1インテグレーターレンズ11のレンズ素子の像を液晶パネル18R、18G、18Bに形成する。このような構成により、光源10からの光が液晶パネル18R、18G、18Bの表示領域(図1の表示領域A0)全体を略均一な明るさで照明する。
【0026】
偏光変換素子13は、第2インテグレーターレンズ12からの光を所定の直線偏光に変換させる。重畳レンズ14は、第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子の像を、第2インテグレーターレンズ12を介して液晶パネル18R、18G、18Bの表示領域上で重畳させる。
【0027】
第1ダイクロイックミラー15は、重畳レンズ14から入射したR光を反射させ、G光及びB光を透過させる。第1ダイクロイックミラー15で反射されたR光は、反射ミラー16及びフィールドレンズ17Rを経て、光変調素子である液晶パネル18Rへ入射する。液晶パネル18Rは、R光を画像信号に応じて変調することにより、R色の画像を形成する。
【0028】
第2ダイクロイックミラー21は、第1ダイクロイックミラー15からのG光を反射させ、B光を透過させる。第2ダイクロイックミラー21で反射されたG光は、フィールドレンズ17Gを経て、光変調素子である液晶パネル18Gへ入射する。液晶パネル18Gは、G光を画像信号に応じて変調することにより、G色の画像を形成する。第2ダイクロイックミラー21を透過したB光は、リレーレンズ22、24、反射ミラー23、25、及びフィールドレンズ17Bを経て、光変調素子である液晶パネル18Bへ入射する。液晶パネル18Bは、B光を画像信号に応じて変調することにより、B色の画像を形成する。
【0029】
クロスダイクロイックプリズム19は、光合成用のプリズムであり、各液晶パネル18R、18G、18Bで変調された光を合成して画像光とし、投写光学系20へ進行させる。
【0030】
投写光学系20は、各液晶パネル18G,18R,18Bによって変調されクロスダイクロイックプリズム19で合成された画像光PLを図1のスクリーンSC上に拡大投写する。この際、投写光学系20は、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比AR2を、液晶パネル18G,18R,18Bの画像の横縦比AR0と異なるものとしたり、この横縦比AR0と等しいものとすることができる。
【0031】
回路装置80は、ビデオ信号等の外部画像信号が入力される画像処理部81と、画像処理部81の出力に基づいて光学系部分50に設けた液晶パネル18G,18R,18Bを駆動する表示駆動部82と、投写光学系20に設けた駆動機構(不図示)を動作させて投写光学系20の状態を調整するレンズ駆動部83と、これらの回路部分81,82,83等の動作を統括的に制御する主制御部88とを備える。
【0032】
画像処理部81は、入力された外部画像信号を各色の諧調等を含む画像信号に変換する。画像処理部81は、投写光学系20が画像の縦横比又は横縦比(アスペクト比)を変換して投写する第1動作状態である場合、投写光学系20による横縦比の変換を逆にした画像のアスペクト比変換を予め行ってスクリーンSC上に表示される画像が縦横に伸縮しないようにする。具体的には、投写光学系20によって例えば1.78:1から例えば2.4:1となるように横方向に画像の伸張が行われる場合、予め、横方向に0.742=1.78/2.4倍の画像の圧縮が行われ、或いは、縦方向に1.35=2.4/1.78倍の画像の伸張が行われる。一方、投写光学系20が画像の横縦比又はアスペクト比を変換しないで投写する第2動作状態である場合、画像処理部81は、上記のような画像のアスペクト比変換を行わない。なお、画像処理部81は、外部画像信号に対して歪補正や色補正等の各種画像処理を行うこともできる。
【0033】
表示駆動部82は、画像処理部81から出力された画像信号に基づいて液晶パネル18G,18R,18Bを動作させることができ、当該画像信号に対応した画像又はこれに画像処理を施したものに対応する画像を液晶パネル18G,18R,18Bに形成させることができる。
【0034】
レンズ駆動部83は、主制御部88の制御下で動作し、例えば投写光学系20を構成する絞りを含む一部の光学要素を光軸OAに沿って適宜移動させることにより、投写光学系20による図1のスクリーンSC上への画像の投写倍率を変化させることができる。また、レンズ駆動部83は、投写光学系20を構成する別の一部の光学要素を光軸OA上すなわち光路上に進退させること等により、図1のスクリーンSC上に投写される画像の横縦比AR2を変化させることができる。レンズ駆動部83は、投写光学系20全体を光軸OAに垂直な上下方向に移動させるアオリの調整により、図1のスクリーンSC上に投写される画像の縦位置を変化させることができる。
【0035】
以下、図3、図4(A)及び図4(B)等を参照して、実施形態の投写光学系20について説明する。投写光学系20は、レンズ等の複数の光学要素を組み合わせてなる本体部分20aと、本体部分20aの一部又は全体を移動させることでその結像状態を調整する第1、第2、第3及び第4駆動機構61,62,63,64とを備える。
【0036】
本体部分20aは、スクリーンSC側から順に、第1群30と、第2群40と、第3群60とからなる。第1、第2、第3及び第4駆動機構61,62,63,64のうち、第1駆動機構61は、第1群30及び第3群60を移動させ、第2及び第3駆動機構62,63は、第2群40を移動させ、第4駆動機構64は、投写光学系20全体を一体的に移動させる。
【0037】
第1群30は、第1レンズ部31と、第2レンズ部32と、第3レンズ部33とを有する。第1群30全体は、後述する第2群40の光路上への進退に応じて必要となる投写光学系20による結像面の位置の微調整をするために、第1駆動機構61に駆動されて、光軸OAの方向すなわちZ方向に沿ってスライド移動可能すなわち位置調整可能となっている。この第1群30は、たとえば、第2群40の光路上への進退に伴う微調整がなされた後に、第1レンズ部31を構成する少なくとも1枚のレンズを光軸OAに沿って手動等により微動させることにより、プロジェクター2によるスクリーンSCへ向けての投写時に通常行われる本体部分20aのフォーカス状態の調整を可能にしている。つまり、第1レンズ部31は、通常のフォーカス動作を行うフォーカス光学系として機能する。また、第2レンズ部32は、固定されたレンズである。また、第3レンズ部33は、1枚以上のレンズで構成されており、第1駆動機構61に駆動されて、本体部分20aによる投写倍率を変更することができる。つまり、第3レンズ部33は、ズーム動作を行うズーム光学系として機能する。
【0038】
第2群40は、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)で異なる焦点距離を持つ調整光学要素であり、結果的に第1群30及び第3群60も含めた投写光学系20の全系としても、縦方向と横方向とで異なる焦点距離を持つことになる。すなわち、第2群40が光路上に存在することにより、本体部分20aによる縦方向と横方向の拡大倍率も異なるものとなり、液晶パネル18G(18R,18B)に表示された画像の横縦比AR0とは異なる横縦比AR2の画像をスクリーンSC上に投写することができる。第2群40は、光軸OAに対して回転非対称な面を持つ1つ以上の調整用の光学要素を含み、具体的には、図4(B)に示す縦方向(Y方向)の断面に関して、スクリーンSC側から順に、正のパワーを持つ第1の光学要素群41と、負のパワーを持つ第2の光学要素群42とで構成されている。なお、第1の光学要素群41と第2の光学要素群42とは、図4(A)に示す横方向(X方向)の断面に関して、パワーを有していない。
【0039】
このように、アナモフィック光学系である第2群40を、縦断面に関して、正の屈折力を持つ第1の光学要素群41と負の屈折力を持つ第2の光学要素群42との組合せとすることにより、第2群をアフォーカル系のように機能させることができ、簡易に変倍すなわちズーミングを行なうことができる。
【0040】
さらに、第2群40は、進退駆動機構である第1アナモフィック駆動機構62(第2駆動機構)により一体として光軸OA上すなわち光路上に進退可能となっている。これにより、投写光学系20による画像の横縦比の切替が可能となる。画像の切替について詳しくは、後述する。
【0041】
第3群60は、回転対称な光学要素回転対称レンズ群を有する。第3群60全体は、第1群30と同じく、第2群40の進退に応じて必要となる投写光学系20による結像面の位置を調整するために、第1駆動機構61に駆動されて、光軸OAの方向すなわちZ方向に沿ってスライド移動可能すなわち位置調整可能となっている。特に、第3群60は、第1群30と同期してスライド移動するものとなっている。また、第3群60を構成する回転対称な光学要素回転対称レンズには、横方向及び縦方向にパワーを持つレンズが1枚以上含まれている。第3群60は、正のパワーを有するため光変調素子から射出した光の広がりを抑えることができる。そのため、第2群40へ入射する光の角度を抑えることができ、第2群40で発生する収差を抑えることができる。結果的に、第3群60は、投写光学系20全体の収差を抑える役割があり、第3群60は補正光学要素として複数のレンズを有し、それらのレンズ中に正のパワーを有するものとし、必要であれば、非球面のものを含めるものとする。
【0042】
上述のように、第1群30及び第3群60は、光路上に配置されたままとされているが、第2群40は、第2駆動機構である第1アナモフィック駆動機構62により一体として光路上に進退する。これにより、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)を所望のタイミングで切り替えることができる。
【0043】
具体的には、図5(A)に示すように、第2群40を光路上に配置した第1動作状態とすることにより、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像を縦方向に圧縮した横縦比(例えば2.4:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。あるいは、図5(B)に示すように、第2群40を光路上から退避させた第2動作状態とすることにより、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像のままの横縦比(例えば1.78:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。第2群40によってスクリーンSC上に投写される画像を縦方向に圧縮する構成は、横寸法が固定されたスクリーンSCを使用する際に有効である。つまり、このようなスクリーンSCに対して投写光学系20による横縦比だけの変更が可能になる。
【0044】
図5(B)に示すように投写光学系20の第2群40を光路外に退避させて第2動作状態とした場合、投写光学系20内の第2群40の位置には、何も配置されない。すなわち、第2群40を退避させているとき、投写光学系20は第1群30と第3群60とが協働して回転対称な光学要素のみで構成されることになるので、液晶パネル18G(18R,18B)の表示領域A0の横縦比(アスペクト比)とスクリーンSCの表示領域A2の横縦比(アスペクト比)とは一致することになる。さらに、第2群40を退避させた際には、第2群40が光路上にある場合に比較して透過率が向上し、画像を明るくできる。
【0045】
以上のような、第2群40の進退による第1動作状態と第2動作状態との切替えがなされる場合、一般的には進退に伴って、投写光学系20の全系としての結像状態が変化することになる。本実施形態では、このような観点を考慮して、第1駆動機構61により第1群30及び第3群60の位置を微調整することで、第2群40の進退の動作があっても投写光学系20による結像面を同一位置に保つことを可能にしている。
【0046】
ここで、図3に示すように、第1、第2、第3及び第4駆動機構61,62,63,64のうち、第1群30及び第3群60用の第1駆動機構61は、主要部分である位置調整駆動機構61aと、ズームフォーカス駆動機構61bとを有する。位置調整駆動機構61aは、第1群30全体及び第3群60全体を光軸OAの方向に沿ってスライド移動させるための機構である。具体的には、位置調整駆動機構61aは、第2駆動機構である第1アナモフィック駆動機構62による第2群40の進退動作に伴って、規定の量だけ第1群30及び第3群60を光軸OAに沿って移動させる。つまり、位置調整駆動機構61aは、第2群40の進退動作に対する第1群30及び第3群60の連動を行うための連動駆動機構である。これにより、第2群40の有無によって結像状態が変化しても、結像面を同一位置に保つことを可能にしている。ズームフォーカス駆動機構61bは、ズーミング及びフォーカシングを行うために第1群30のレンズ群31等の一部を移動させる機構である。
【0047】
以下、図3に示す第1駆動機構61による第2群40の進退に伴う第1群30及び第3群60の光軸方向に関する位置調整の一例について説明する。まず、ユーザーが第1動作状態から第2動作状態への切替えを行う、又は逆の切替えを行うために、第1アナモフィック駆動機構62による第2群40の進退動作がなされると、第1駆動機構61のうち位置調整駆動機構61aは、第1アナモフィック駆動機構62の動作に応じて第1群30及び第3群60を移動させる。つまり、位置調整駆動機構61aにより、第1群30及び第3群60の配置が、第2群40を光路上に配置する第1動作状態であるか第2群40を光路上から退避させた第2動作状態であるかに応じて変更される。なお、このような位置調整駆動機構61aの動作は、例えばカムを用いたメカ的機構やモータ等を用いた電気的機構等によって実現できる。
【0048】
ここで、位置調整駆動機構61aによる第1群30及び第3群60の光軸方向の移動量について説明する。ここでは、一例として、第1群30と第3群60とは、同じ方向に同じ移動量DAだけ動くものとする。つまり、第1群30から第3群60までの距離は不変となっている。この移動量DAは、例えば光学的なシミュレーションや測定等により適切な数値を算出することができ、第1群30、第3群60等の各光学要素の配置関係等を考慮して結像面の位置が適切に調整されるように固定的に定められる。位置調整駆動機構61aは、第1動作状態から第2動作状態へ切り替わるのに合わせて、この移動量DAの分だけ第1群30及び第3群60を光軸OAに沿って−Z側へ移動させる。また、逆に、位置調整駆動機構61aは、第2動作状態から第1動作状態へ切り替わるのに合わせて、この移動量の分だけ第1群30及び第3群60を光軸OAに沿って+Z側へ移動させる。この結果として、第2群40の有無によって結像状態が変化しても投写光学系20の結像面の位置を一定に保つことができる。なお、本実施形態では、位置調整駆動機構61aによって結像面の位置調整がなされるので、例えば第1群30及び第3群60を位置調整駆動機構61aにより移動させた後に、フォーカス動作させれば、フォーカスの微調整だけで容易により正確なピント合わせができる。位置調整駆動機構61aによる調整のみでピントが合っている場合には、このフォーカス動作は不要となる。
【0049】
図6(A)及び6(B)は、第1動作状態と第2動作状態とにおいて、被投写面であるスクリーンSCへの投写状態をそれぞれ示す図である。本実施形態では、上述のように、第1群30及び第3群60を光軸OAに沿って移動可能とすることで、図6(A)に示す第1動作状態の場合に画像光がスクリーンSC上で結像するのみならず、図6(B)に示す第2動作状態の場合においてもスクリーンSC上で結像するようになっている。より具体的には、図6(A)に示す第1動作状態では、第1及び第3群30、60は、それらの後端面である第1基準面S1,S2を基準位置としてそれぞれ配置されていたものが、図6(B)に示す第2動作状態では、第1基準面S1,S2から移動量DAの分だけずれた第2基準面S1a,S2aにそれぞれ移動している。この移動により、第1及び第2動作状態のいずれにおいても、投写光学系20の結像面の位置は、固定位置であるスクリーンSCの位置に適応したものとなっている。これに対して、図6(C)に示す比較例のように、第1群30や第3群60が固定されたままであると、仮に第1動作状態の場合には図6(A)のようにスクリーンSC上で結像していても、第2群40を退避させた第2動作状態となった場合には、光路長が変化することになるので、スクリーンSC上で結像しなくなり、画像が劣化する可能性がある。特に、第2群40の進退に伴う変化が大きい場合、第1群30のフォーカス機能のみでは、結像のズレを修正しきれない場合がある。これに対して、本実施形態では、第2群40の進退に伴って第1群30及び第3群60を適切な量だけ光軸OAに沿って移動させることで、結像面の位置がずれるという事態を回避することができる。なお、第1群30及び第3群60の具体的な移動量については、上記のように、第1群30、第3群60等の構成次第ではあるが、通常の構成では、多くても1mm〜数mm程度であると考えられる。また、第1群30と第3群60とを同じ量だけ同じ方向に移動させる場合、位置調整駆動機構61a(図3参照)は、第1群30と第3群60との双方を含む1つの鏡筒(不図示)を動かすだけで所期の動作を達成できるので、比較的簡易な構造にできる。
【0050】
また、図3に示すように、実施形態の投写光学系20では、第4駆動機構である全系駆動機構64によって本体部分20a全体を光軸OAに垂直な方向に移動させてシフト量(光軸のズレ量)を調整することにより、スクリーンSC上に投写される画像の光軸OAからのズレ量を増減させることができる。つまり、本体部分20aの光軸OAを液晶パネル18Gの中心軸AXに平行な状態を保ちつつ、本体部分20aの光軸OAを液晶パネル18Gの中心軸AXに対して適当なシフト量SFだけ移動させることで、光軸OAから例えば上方向(+Y方向)に外れた位置に画像を投写することができ、シフト量SFの調整によって画像の投写位置を縦方向に上下移動させることができる。なお、本体部分20aの光軸OAの液晶パネル18Gの中心軸AXを基準するズレ量であるシフト量SFは、必ずしも可変とする必要はなく、例えばゼロでない値で固定することもできる。また、全系駆動機構64により本体部分20a全体を光軸OAに沿った方向に適宜移動させることもできる。
【0051】
また、上記のような第1駆動機構61の位置調整駆動機構61aと第2駆動機構62とによる連動の場合以外にも、各駆動機構61,62,63,64は、レンズ駆動部83からの駆動信号によって単独で動作するだけでなく、複合的にも動作する。例えば、第1駆動機構61の動作に合わせて第4駆動機構である全系駆動機構64を動作させることで、ズーミング時に画像がシフトする現象等を抑制することもできる。
【0052】
以下、図3等に示す投写光学系20のその他の光学的特性について説明する。この投写光学系20の場合、液晶パネル18G(18R,18B)に比較的近い位置で第2群40が光線上に進退可能であるため、各像高の光線は比較的像高に近い経路に沿って第2群40を通過し、光線のコントロールがしやすくなる。このため第2群40の光路上への進退動作による収差の発生を抑えることができる。一般的に回転非対称な光学要素の製造は難しく、精度を出すためには第2群40の小型化が必須条件である。その点で、第2群40が液晶パネル18G(18R,18B)に近いほど光線の広がりが少なく調整光学要素としての第2群40を構成する第1の光学要素群41と第2の光学要素群42とを小型にできるので、これらの光学要素群41,42に対して高精度なレンズ加工が期待でき、投写光学系20の性能向上につながるとともに、コストダウンも可能である。さらに、投写光学系20は、液晶パネル18G(18R,18B)に最も近い第3群60を有することで、比較的簡単な光学系によって効率的で無理のない収差の補正を可能としている。このような第3群60の存在によって、さらに著しい性能向上を図ることができる。具体的には、この第3群60により、第2群40に入射するマージナル光を略平行にできる。つまり、第2群40内での光束の広がりをより確実に抑えることができ、第2群40の径が大きくなるのを防ぐことができる。また、アナモフィック型の第2群40を略アフォーカル系にすることにより、第2群40の構成レンズの位置精度の要求を低くしつつ精度を確保することができる。
【0053】
また、投写光学系20において、本体部分20aの光軸OAを液晶パネル18Gの中心軸AXに平行な状態を保ちつつ適当なシフト量SFだけ移動させた状態とできるので、アオリを利用した投写が可能になり、視聴者と画像光PLとが干渉するのを防ぐのが容易になり、設置性が向上する。投写光学系20の本体部分20aが液晶パネル18Gに対して上記のようにシフトした状態の場合、第1駆動機構61により第3レンズ部33を動作させて投写倍率を変更するズーミングを行うと、画像光PLのシフト量の絶対量が増加する。よって、ズーミングによるシフト量の増加を第4駆動機構である全系駆動機構64の動作によって補正することで、プロジェクター2の操作性・設置性を向上させことができる。この際、主制御部88の制御下で、第1駆動機構61と第4駆動機構である全系駆動機構64とを連動させて動作を自動化することにより、より操作性が向上する。
【0054】
上記実施形態の投写光学系20の場合、調整光学要素である第2群40を構成する光学要素群41,42の片面又は両面がシリンドリカルレンズ面である。シリンドリカルレンズは、加工が容易で高精度が期待でき、コストダウンが可能である。また、平面断面側の偏芯感度が低く、組立性が向上し、結果的に、高性能化が期待できる。つまり、第2群40をシリンドリカルレンズで構成することで、投写光学系20の精度を確保しつつコストダウンが可能になる。
【0055】
第2群40を構成する光学要素群41,42の片面又は両面は、シリンドリカルレンズ面に限らず、他のアナモフィックレンズ(例えばトーリック又はトロイダルレンズ)とすることができる。
【0056】
以上において、第2群40を構成するシリンドリカル型又はアナモフィックレンズ型の光学要素群41,42の片面又は両面は、横のX断面又は縦のY断面に関して非球面式、具体的には、以下の多項式hで表される形状を持つものとできる。
ここで、yは光軸OAからの像の高さ(像高)、cは基準とする球面の曲率、kは円錐定数、A2、A4、A6、A8、A10、・・・のそれぞれは所定の補正項とする。
【0057】
さらに、第2群40を構成する光学要素群41,42の片面又は両面は、自由曲面とすることができる。アナモフィックレンズを用いることにより、Y方向及びX方向の両断面で曲率をコントロールできるので、非点収差の低減が可能で、高性能化が可能になる。また、非球面とすることにより、各種収差の低減が可能で、高性能化が可能になる。さらに、自由曲面とすることにより、スクリーンSC上又は液晶パネル18G(18R,18B)上のイメージサークル面において、液晶パネル18G(18R,18B)の縦横方向以外の中間の斜め方向の結像状態の最適化も容易になり、高性能化が可能になる。
【0058】
第2群40については、2枚の光学要素群41,42に限らず3枚以上の光学要素群で構成することができる。この際、第2群40によって色収差が発生しないことが望ましい。このため、以下の関係
Σ(φi×νi)≒0
ここで、
φi:第2群40を構成する各レンズの屈折力
νi:第2群40を構成する各レンズのアッベ数
が成り立つことが望ましい。
【0059】
また、例えば、図3等に示す第1群30において、固定されたレンズとしている第2レンズ部32は、省略した構成とすることも可能である。
【0060】
また、図3等では、第1レンズ部31がフォーカス機能を有し、第3レンズ部33がズーム機能を有するものとしているが、第1レンズ部31と第3レンズ部33とが協働してフォーカス機能とズーム機能とを担うものとすることもできる。
【0061】
また、第2群40を構成する第1の光学要素群41と第2の光学要素群42とを第3駆動機構である第2アナモフィック駆動機構63により個別に又は一体的に光軸OA方向に移動させることもできる。これらの間隔を調整することにより、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比(アスペクト比)又は縦横比を連続的に増減させることができる。
【実施例1】
【0062】
図7及び図8は、第1実施形態の投写光学系20の一実施例を示す図であり、第2群40が挿入された第1動作状態を示しており、図7は、投写光学系20の横断面を示し、図8は、縦断面を示している。
【0063】
投写光学系20は、レンズL1〜L19と絞り70とからなり、このうちレンズL1〜L13によって第1群30が構成され、レンズL14〜L17によって第2群40が構成され、レンズL18,L19によって第3群60が構成されている。第1群30を構成するレンズL1〜L13のうち、レンズL1〜L4は、第1レンズ部31を構成し、レンズL5〜L7は、第2レンズ部32を構成し、レンズL8〜L13は、第3レンズ部33を構成している。これらのうち、レンズL8,L9は、第1部分レンズ群33aを構成し、レンズL10〜L13は、第2部分レンズ群33bを構成している。なお、絞り70は、第3レンズ部33を構成するレンズL9とレンズL10との間に配置されている。つまり、第1部分レンズ群33aと第2部分レンズ群33bとの間に配置されている。第2群40のうち、接合レンズL14,L15は、縦のY方向に関して正のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。また、接合レンズL16,L17は、縦のY方向に関して負のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。第3群60に含まれるレンズL18,L19は、メニスカスレンズであり、全体として正のパワーを持っている。なお、レンズL18,L19のうち少なくとも一方は、非球面レンズである。つまり、第3群60は非球面レンズ群を含んでいる。非球面式について具体的には、上述した多項式hで表される形状が同様に適用される。
【0064】
図9(A)〜9(C)は、ズーミングの動作を説明するものであり、図9(A)は、図8の状態を示し、拡大率の大きな「ワイド端」の場合を示している。また、図9(B)は、「中間」の状態の場合を示し、図9(C)は、拡大率の小さな「テレ端」の場合を示している。図示のように、例えば第3レンズ部33を構成する各レンズ群が部分レンズ群33a,33b単位で光軸OAの方向に沿って個別に動き、また、絞り70が動くことによって、ズーミングの動作がなされる。
【0065】
以下の表1に、実施例1の第1動作状態におけるレンズデータ等を示す。この表1の最上欄である第1欄において、「面番号」は、像面側から順に各レンズの面に付した番号である。また、「Ry」、「Rx」は、Y及びX曲率半径をそれぞれ示し、「D」は、次の面との間のレンズ厚み或いは空気空間を表している。さらに、「Nd」は、レンズ材料のd線における屈折率を示し、「νd」は、レンズ材料のd線におけるアッベ数を示す。
【表1】
表1の第2欄は、ズーミング動作時の一群のレンズL1〜L7の位置と、次の一群のレンズL8,L9すなわち第1部分レンズ群33aの位置と、絞り70及び一群のレンズL10〜L13すなわち第2部分レンズ群33bの位置とを示している。なお、表1の第3欄は、ズーミング動作時の投写光学系20のX方向及びY方向の焦点距離を示している。また、表1の第4欄は、ズーミング動作時の投写光学系20のX方向及びY方向の明るさ(F値)を示している。
【0066】
また、実施例1のレンズL18は、非球面で形成されている。これらの非球面形状の光軸OA方向の面頂点からの変位量hは、上述した非球面式又は多項式で表される。実施例1の場合、レンズL18に対応する各面番号の面での上記非球面式における各係数k、A2、A4、A6、A8、A10・・・の値については、表1の第5欄(最下欄)に示す通りである。
【0067】
図10は、投写光学系20の本体部分20aから第2群40を光路外に退避させたものであり、横縦比を変換しない第2動作状態となっている。本実施形態の場合、矢印AW1で示すように、投写光学系20の全体が−Z方向すなわちクロスダイクロイックプリズム19寄りにスライド移動することで、第1動作状態に比べて、第3群60からクロスダイクロイックプリズム19までの距離SDが縮まった状態となる。なお、以下の表2に、実施例1の第2動作状態におけるレンズデータ等を示す。表2の各記号については表1と同様であるが、Y及びX曲率半径については、対称性があるので1つの記号「R」によって示している。表1の面番号34での「D」の値とこれに対応する表2の面番号28での「D」の値とが異なっている。これが、距離SDが縮まったことに相当する。
【表2】
【0068】
以上のように本実施形態の投写光学系20によれば、第2群40が液晶パネル18G(18R,18B)の縦方向と横方向とで異なるパワーを持つので、全系の投写光学系20としても、縦横方向に異なる焦点距離を持ち縦横方向の拡大倍率も異なるものとなり、液晶パネル18G(18R,18B)の画像の横縦比とスクリーンSC上に投写される画像の横縦比とを異なるものにできる。つまり、本投写光学系20により、幅と高さとの比であるアスペクト比の変換が可能になる。この際、第1駆動機構61によって、第1群30及び第3群60が、第2群40の進退動作に連動して位置を変更することで、結像位置を調整できるので、第1動作状態及び第2動作状態のいずれにおいても、結像面を同一の位置に保つことで、スクリーンSCの配置に対して適したものにできる。
【0069】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る投写光学系等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の投写光学系等の変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0070】
図11は、本実施形態に係るプロジェクターのうち投写光学系の構造を説明する図であり、第1実施形態の図3に対応するものである。本実施形態の投写光学系120の場合、図示のように、第1駆動機構161を構成する位置調整駆動機構161aが、第3群60にのみ接続しており、第2群40の進退に伴って、第3群60のみが連動して光軸OAに沿ってスライド移動し、第1群30は、第2群40に連動せず、実質的に固定されたものとなっている。なお、第1群30は、第2群40の進退との関係では固定的な状態であるが、ズーミングやフォーカシングについては、ズームフォーカス駆動機構161bによってなされる。つまり、第1群30を構成する個々のレンズ等は、ズームやフォーカスに際して光軸OAに沿って移動可能となっている。
【0071】
本実施形態の場合、第2群40の光路上への進退動作に対する第1群30の連動を行うための連動駆動機構である位置調整駆動機構161aによって、第3群60のみを移動させて、投写光学系120としての結像面の調整が可能となっている。この場合、第3群60の位置調整に伴い、第1群30と第3群60との相対的な位置が変動することになる。これに対して、例えば第3群60の移動量DAは、第1実施形態の場合と同様、例えば光学的なシミュレーションや測定等により適切な数値を算出することができる。これにより、投写光学系120の結像面の位置を一定に保つことができる。位置調整駆動機構161aは、第1動作状態から第2動作状態へ切り替わるのに合わせて、この移動量DAの分だけ第3群60を光軸OAに沿って−Z側に移動させ、逆に、位置調整駆動機構161aは、第2動作状態から第1動作状態へ切り替わるのに合わせて、この移動量の分だけ第3群60を光軸OAに沿って+Z側へ移動させる。
【実施例2】
【0072】
図12及び図13は、第1実施形態の投写光学系20の一実施例を示す図であり、第2群40が挿入された第1動作状態を示しており、図12は、投写光学系20の横断面を示し、図13は、縦断面を示している。
【0073】
投写光学系20は、レンズL1〜L19と絞り70とからなり、このうちレンズL1〜L13によって第1群30が構成され、レンズL14〜L17によって第2群40が構成され、レンズL18,L19によって第3群60が構成されている。第1群30を構成するレンズL1〜L13のうち、レンズL1〜L4は、第1レンズ部31を構成し、レンズL5〜L7は、第2レンズ部32を構成し、レンズL8〜L13は、第3レンズ部33を構成している。なお、絞り70は、第3レンズ部33を構成するレンズL9とレンズL10との間に配置されている。第2群40のうち、接合レンズL14,L15は、縦のY方向に関して正のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。また、接合レンズL16,L17は、縦のY方向に関して負のパワーを有するレンズとなっており、横のX方向に関してパワーを有しないシリンドリカルレンズとなっている。第3群60に含まれるレンズL18,L19は、メニスカスレンズであり、全体として正のパワーを持っている。なお、レンズL18,L19のうち少なくとも一方は、非球面レンズである。つまり、第3群60は非球面レンズ群を含んでいる。非球面式について具体的には、上述した多項式hで表される形状が同様に適用される。
【0074】
図14(A)〜14(C)は、ズーミングの動作を説明するものであり、図14(A)は、図13の状態を示し、拡大率の大きな「ワイド端」の場合を示している。また、図14(B)は、「中間」の状態の場合を示し、図14(C)は、拡大率の小さな「テレ端」の場合を示している。図示のように、例えば第3レンズ部33を構成する各レンズ群が部分レンズ群33a,33b単位で光軸OAの方向に沿って個別に動き、また、絞り70が動くことによって、ズーミングの動作がなされる。
【0075】
以下の表3に、実施例2の第1動作状態におけるレンズデータ等を示す。この表3の各欄においての記載は、表1の場合と同様である。
【表3】
【0076】
図15は、投写光学系20の本体部分20aから第2群40を光路外に退避させたものであり、横縦比を変換しない第2動作状態となっている。本実施形態の場合、矢印AW2で示すように、第3群60が−Z方向すなわちクロスダイクロイックプリズム19寄りにスライド移動することで、第1動作状態に比べて、第2群40が退避した後の第1群30から第3群60までの距離SD1がさらに延びる一方、第3群60からクロスダイクロイックプリズム19までの距離SD2が縮まった状態となる。なお、以下の表4に、実施例1の第2動作状態におけるレンズデータ等を示す。表4の各記号については表3と同様であるが、Y及びX曲率半径については、対称性があるので1つの記号「R」によって示している。表3の面番号34での「D」の値とこれに対応する表4の面番号28での「D」の値とが異なっている。これが、距離SD2が縮まっていることを示すものである。なお、距離SD1の変化については、表3と表4とのうち可変である面番号34での「D」の値の変化に含まれている。
【表4】
【0077】
本実施形態においても、第3群60が、第2群40の光路上への進退に伴って、第2群40を構成するレンズの構成に応じで予め定められた量だけ光軸OAに沿ってスライド移動することで、結像位置を調整できるので、第1動作状態及び第2動作状態のいずれにおいても、結像面を同一の位置に保つことで、スクリーンSCの配置に対して適したものにできる。
【0078】
特に、第3群60とズーム光学系である第1群30との間に着脱可能な第2群40があり、第3群60を第1群30と別鏡筒で作ることは、比較的容易である。そのため、例えば第3群60に、第1群30とは別個に独自の駆動機構として位置調整駆動機構161aを付けることが可能となる。また、第3群60は、主として収差補正等を担うものであり、ズーミングやフォーカシング等の動作に寄与しないものである。従って、第3群60を結像位置の調整のためにスライド移動させても、これに伴う投写光学系120全体への光学的な影響が極力抑えられる。また、位置調整駆動機構161aは、ズーミングやフォーカシングのための機構を要しないため、比較的簡易な構造で所期の動作を達成できる。
【0079】
〔その他〕
図16(A)及び16(B)は、図4(A)及び4(B)に示す第1実施形態に示す投写光学系20又は第2実施形態に示す投写光学系120の変形例を説明する図である。投写光学系220の第2群140は、縦方向(Y方向)と横方向(X方向)で異なる焦点距離を持っており、結果的に第1群30も含めた投写光学系220の全系としても、縦方向と横方向とで異なる焦点距離を持つことになる。この場合、第2群140は、横方向(X方向)の断面に関して、スクリーンSC側から順に、負のパワーを持つ第1の光学要素群141と、正のパワーを持つ第2の光学要素群142とで構成されている。図16(B)に示すように、この第2群140を光路上から退避させた場合、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像のままの横縦比(例えば1.78:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。また、図16(A)に示すように、第2群40を光路上に配置して、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像を横方向に伸張した横縦比(例えば2.4:1)でスクリーンSC上に画像を投写することができる。さらに、第2群140を構成する第1の光学要素群141と第2の光学要素群142とを図3の第2アナモフィック駆動機構63(第3駆動機構)により光軸OA方向に移動させてこれらの間隔を調整することにより、スクリーンSC上に投写される画像の横縦比又はアスペクト比を連続的に増減させることもできる。なお、第2群40によってスクリーンSC上に投写される画像を横方向に伸張する構成は、縦寸法が固定されたスクリーンSCを使用する際に有効である。つまり、このようなスクリーンSCに対して投写光学系20による投写距離等を変えずに横縦比だけの変更が可能になる。
【0080】
図17(A)及び17(B)は、図4(A)及び4(B)に示す第1実施形態に示す投写光学系20又は第1実施形態に示す投写光学系120の別の変形例を説明する図である。投写光学系320の第2群240は、縦方向(Y方向)の断面に関して、スクリーンSC側から順に、負のパワーを持つ第1の光学要素群241と、正のパワーを持つ第2の光学要素群242とで構成されている。この場合、液晶パネル18G(18R,18B)に形成される画像を横方向に縮小した横縦比でスクリーンSC上に映像を投写することができる。
【0081】
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0082】
まず、第1実施形態では、第1群30及び第3群60の双方が移動するものであるのに対して、第2実施形態では、第3群60のみが移動するものとなっているが、どちらのタイプを採用するかは、全体の光学設計に対する利便性によって適宜選択することができる。例えば、第3群60の移動のみでは結像面の調節が十分に行えない場合には、第1実施形態の投写光学系20のようにさらに第1群30も動かす構成とすることができる。逆に、例えば第1群30全体を光軸方向にあまり動かすことができない設計となっている場合には、第2実施形態の投写光学系120のように第1群30を動かさない構成とすることができる。
【0083】
また、第1実施形態において、第1群30と第3群60とは、同じ方向に同じ量だけ動くものとしているが、移動量は、第1群30と第3群60とで異なるものとすることも可能である。
【0084】
また、第3群60や第1群30の移動量は、第2群40の配置状態のみならず、例えば投写距離に応じて定めるものとすることも可能である。
【0085】
また、第2群40を回転非対称型の光学要素群41,42のみで構成する必要はなく、第2群40中に非対称型の光学要素群を追加することもできる。
【0086】
液晶パネル18G,18R,18Bは、透過型に限らず、反射型とすることができる。ここで、「透過型」とは、液晶パネルが変調光を透過させるタイプであることを意味しており、「反射型」とは、液晶パネルが変調光を反射するタイプであることを意味している。
【0087】
以上のプロジェクター2では、複数の液晶パネル18G,18R,18Bで形成された各色の画像を合成しているが、単一の光変調素子であるカラー又はモノクロの液晶パネルで形成された画像を投写光学系20で拡大投写することもできる。この場合、クロスダイクロイックプリズム19が不要となるので、投写光学系20の光学設計上の自由度が高まる。
【0088】
プロジェクターとしては、投写面を観察する方向から画像投写を行う前面投写型のプロジェクターと、投写面を観察する方向とは反対側から画像投写を行う背面投写型のプロジェクターとがあるが、図2等に示すプロジェクターの構成は、いずれにも適用可能である。
【0089】
液晶パネル18G,18R,18Bに代えて、マイクロミラーを画素とするデジタル・マイクロミラー・デバイス等を、光変調素子として用いることもできる。
【0090】
また、上記実施形態において、各群30,40,60等を構成するレンズの前後又は間に1つ以上の実質的にパワーを持たないレンズを追加することができる。
【符号の説明】
【0091】
2…プロジェクター、 10…光源、 15,21…ダイクロイックミラー、 17B,17G,17R…フィールドレンズ、 18B,18G,18R…液晶パネル、 19…クロスダイクロイックプリズム、 20…投写光学系、 20a…本体部分、 30…第1群、 31…第1レンズ部(フォーカス光学系)、 32…第2レンズ部、 33…第3レンズ部(ズーム光学系)、 40…第2群(アナモフィック光学系)、 41,42,141,142…光学要素群(第1の光学要素群、第2の光学要素群)、 60…第3群(非球面レンズ群)、 50…光学系部分、 61…第1駆動機構、 61a,161a…位置調整駆動機構(連動駆動機構)、 61b,161b…ズームフォーカス駆動機構、 62…第1アナモフィック駆動機構(第2駆動機構)、 63…第2アナモフィック駆動機構(第3駆動機構)、 64…全系駆動機構(第4駆動機構)、 70…絞り、 80…回路装置、 81…画像処理部、 83…レンズ駆動部、 88…主制御部、 A0…表示領域、 A2…表示領域、 AR0…横縦比、 AR2…横縦比、 AX…中心軸、 L1-L19…レンズ、 OA…光軸、 PL…画像光、 SC…スクリーン(被投写面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を被投写面上に拡大投写する際に、光変調素子の画像の横縦比と、前記被投写面に投写される画像の横縦比とを異なるものとする投写光学系であって、
前記被投写面側から順に、ズーム動作をするズーム光学系を含む第1群と、前記光変調素子の縦方向と横方向とで異なるパワーを持つとともに光路上に進退可能なアナモフィック光学系を含む第2群と、正のパワーを持つ第3群とから実質的になり、
前記第3群は、前記第2群の進退動作に連動して光軸方向に動く、
投写光学系。
【請求項2】
前記第1群は、前記第3群とともに、前記第2群の進退動作に連動して光軸方向に動く、請求項1に記載の投写光学系。
【請求項3】
前記第1群は、前記第2群の進退動作に連動して光軸方向に沿って前記第3群と同じ向きに同じ量だけ動く、請求項2に記載の投写光学系。
【請求項4】
前記第2群の進退動作に伴う前記第1群および前記第3群のうち少なくとも前記第3群の連動を行うための連動駆動機構をさらに有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項5】
前記第1群は、前記第2群の進退動作に対して実質的に固定され、前記第3群のみが前記第2群の進退動作に連動して光軸方向に沿って所定の移動量だけ移動する、請求項1に記載の投写光学系。
【請求項6】
前記第3群は、非球面レンズ群を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項7】
前記第1群は、フォーカス動作をするフォーカス光学系を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項8】
前記第2群は、前記光変調素子の縦方向の断面において、前記被投写面側から順に、正のパワーをもつ第1の光学要素群と、負のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項9】
前記第2群は、前記光変調素子の横方向の断面において、前記被投写面側から順に、負のパワーをもつ第1の光学要素群と、正のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の投写光学系と、
前記光変調素子とを備える、
プロジェクター。
【請求項1】
画像を被投写面上に拡大投写する際に、光変調素子の画像の横縦比と、前記被投写面に投写される画像の横縦比とを異なるものとする投写光学系であって、
前記被投写面側から順に、ズーム動作をするズーム光学系を含む第1群と、前記光変調素子の縦方向と横方向とで異なるパワーを持つとともに光路上に進退可能なアナモフィック光学系を含む第2群と、正のパワーを持つ第3群とから実質的になり、
前記第3群は、前記第2群の進退動作に連動して光軸方向に動く、
投写光学系。
【請求項2】
前記第1群は、前記第3群とともに、前記第2群の進退動作に連動して光軸方向に動く、請求項1に記載の投写光学系。
【請求項3】
前記第1群は、前記第2群の進退動作に連動して光軸方向に沿って前記第3群と同じ向きに同じ量だけ動く、請求項2に記載の投写光学系。
【請求項4】
前記第2群の進退動作に伴う前記第1群および前記第3群のうち少なくとも前記第3群の連動を行うための連動駆動機構をさらに有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項5】
前記第1群は、前記第2群の進退動作に対して実質的に固定され、前記第3群のみが前記第2群の進退動作に連動して光軸方向に沿って所定の移動量だけ移動する、請求項1に記載の投写光学系。
【請求項6】
前記第3群は、非球面レンズ群を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項7】
前記第1群は、フォーカス動作をするフォーカス光学系を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項8】
前記第2群は、前記光変調素子の縦方向の断面において、前記被投写面側から順に、正のパワーをもつ第1の光学要素群と、負のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項9】
前記第2群は、前記光変調素子の横方向の断面において、前記被投写面側から順に、負のパワーをもつ第1の光学要素群と、正のパワーをもつ第2の光学要素群とで構成されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の投写光学系。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の投写光学系と、
前記光変調素子とを備える、
プロジェクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−57852(P2013−57852A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196891(P2011−196891)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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