振動ミラー素子
【課題】駆動を検出するための検出用電極を備える振動ミラー素子を容易に製造することが可能な振動ミラー素子を提供する。
【解決手段】この振動ミラー素子100は、ミラー部1と、ミラー部1を駆動する駆動部4および5とを備え、駆動部4および5には、電圧の印加により駆動部4および5を変形させて駆動させるための駆動用電極44および54と、駆動部4および5の変形量を検出するための検出用電極45および55とがそれぞれ配置されている。
【解決手段】この振動ミラー素子100は、ミラー部1と、ミラー部1を駆動する駆動部4および5とを備え、駆動部4および5には、電圧の印加により駆動部4および5を変形させて駆動させるための駆動用電極44および54と、駆動部4および5の変形量を検出するための検出用電極45および55とがそれぞれ配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動ミラー素子に関し、特に、変形量を検出するための検出用電極を備える振動ミラー素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変形量を検出するための検出用電極を備える振動ミラー素子が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、揺動可能なミラーと、静電力により非接触状態でミラーを揺動させる駆動電極と、ミラーの端部に接続され、駆動電極によるミラーの揺動に応じて捻り変形可能なトーションバーと、角度検出センサとを備えるアクチュエータ(振動ミラー素子)が開示されている。上記特許文献1に記載されたアクチュエータでは、角度検出センサによりトーションバーの捻り変形による変形量を検出することによって、この変形量に基づいてミラーの振れ角が求められるように構成されている。また、角度検出センサは、トーションバーの表面に一体的に形成されたピエゾ抵抗と、ピエゾ抵抗に生じる電圧を検出するための一対の電圧計測パッド(検出用電極)と、ピエゾ抵抗にバイアス電流を与えるための一対のバイアス電流パッドとからなる。なお、駆動電極は、平面的に見て、ミラーの一部とオーバーラップした状態で、ミラーの下方に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−229517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のアクチュエータでは、駆動電極がミラーの一部とオーバーラップしているため、アクチュエータを製造するプロセスにおいて、角度検出センサのピエゾ抵抗などをトーションバーの表面に一体的に形成する製造プロセスが、駆動電極を形成する製造プロセスとは別途必要になるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、駆動を検出するための検出用電極を備える振動ミラー素子を容易に製造することが可能な振動ミラー素子を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による振動ミラー素子は、ミラー部と、ミラー部を駆動する駆動部とを備え、駆動部には、電圧の印加により駆動部を変形させて駆動させるための駆動用電極と、駆動部の変形量を検出するための検出用電極とが配置されている。
【0008】
この発明の一の局面による振動ミラー素子では、上記のように、駆動部に駆動用電極と検出用電極とを配置することによって、駆動用電極と検出用電極とを同じ製造プロセスにおいて形成させることができる。これにより、駆動用電極と検出用電極とを別の製造プロセスで形成する必要がないので、駆動部の駆動を検出するための検出用電極を備える振動ミラー素子を容易に製造することができる。
【0009】
上記一の局面による振動ミラー素子において、好ましくは、検出用電極は、駆動用電極の長手方向に沿って延びており、検出用電極の長手方向における長さは、駆動用電極の長手方向における長さ未満である。このように構成すれば、駆動部における検出用電極の占める割合が大きくなりすぎるのを抑制することができるので、駆動部における駆動用電極の占める割合が小さくなることに起因して駆動部の駆動力が小さくなるのを抑制することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、検出用電極の長手方向における長さは、駆動用電極の長手方向における長さの半分以上である。このように構成すれば、検出用電極を駆動部の変形量を十分に検出することが可能な大きさに形成することができるので、駆動部における変形量をさらに正確に検出することができる。なお、検出用電極の長手方向における長さを駆動用電極の長手方向における長さの半分にしても駆動部の変形量を十分に検出することができる点については、本願発明者が鋭意検討した結果、見い出した構成である。
【0011】
上記一の局面による振動ミラー素子において、好ましくは、駆動用電極と検出用電極とは、同一面上に配置されている。このように構成すれば、より容易に、駆動用電極と検出用電極とを同じ製造プロセスで同時に形成することができるので、振動ミラー素子をより容易に製造することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、駆動部は、共通圧電体と、共通圧電体の一方面上に配置された共通電極とを含み、駆動用電極は、共通圧電体の他方面上の第1領域に配置されているとともに、検出用電極は、共通圧電体の他方面上の第1領域とは異なる第2領域に配置されており、駆動部では、共通電極と駆動用電極との間に電圧を印加することにより共通圧電体が変形されるように構成されており、検出用電極は、共通圧電体の変形によって生じる共通電極との電位差を検出するように構成されている。このように構成すれば、駆動用電極と検出用電極とにおいて共通圧電体および共通電極を共用することができるので、駆動用電極と検出用電極とに個別に圧電体および電極を設ける必要がない。これにより、振動ミラー素子の構造を簡素化することができるとともに、振動ミラー素子の小型化を図ることができる。また、駆動用電極と検出用電極とにそれぞれ対応する圧電体および電極を個別に設けるための製造プロセスを必要としないので、振動ミラー素子をより容易に形成することができる。
【0013】
上記一の局面による振動ミラー素子において、好ましくは、駆動部は、駆動用電極に電圧が印加されることによって変形する駆動用圧電体と、駆動用圧電体の変形に伴って変形する検出用圧電体とを含み、検出用電極は、検出用圧電体の変形によって生じる電圧を検出するように構成されている。このように構成すれば、駆動用圧電体と検出用圧電体とを分離することができる。これにより、駆動用圧電体の全体に渡って駆動用電極を形成することができるので、駆動部において駆動力が小さくなるのをより抑制することができる。また、検出用圧電体の全体に渡って検出用電極を形成することができるので、駆動部の変形量を十分に検出することが可能な大きさに検出用電極を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による振動ミラー素子の構造を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【図3】図2に示した振動ミラー素子の900−900線に沿った拡大断面図である。
【図4】図2に示した振動ミラー素子の910−910線に沿った拡大断面図である。
【図5】図2に示した振動ミラー素子の920−920線に沿った拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による振動ミラー素子が所定の傾斜角度で傾斜した状態を示した斜視図である。
【図7】本発明の効果を確認するために行った検出感度測定に用いるカンチレバーを示した平面図である。
【図8】本発明の効果を確認するために行った検出感度測定を説明するための図である。
【図9】本発明の効果を確認するために行った検出感度測定の結果を示した表である。
【図10】本発明の効果を確認するために行った検出感度測定の結果を示したグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態による振動ミラー素子の構造を示した平面図(上面図)である。
【図12】図11に示した振動ミラー素子の930−930線に沿った拡大断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態による振動ミラー素子の構造を示した平面図(下面図)である。
【図14】図13に示した振動ミラー素子の940−940線に沿った拡大断面図である。
【図15】本発明の第1変形例による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【図16】本発明の第2変形例による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【図17】本発明の第3変形例による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【図18】本発明の第4変形例による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による振動ミラー素子100の構成について説明する。
【0017】
本発明の第1実施形態による振動ミラー素子100は、図1および図2に示すように、ミラー部1と、トーションバー2aおよび2bと、バー3aおよび3bと、駆動部4および5と、固定部6aおよび6bとを含む。また、ミラー部1と、トーションバー2aおよび2bと、バー3aおよび3bと、駆動部4の基部40(図1参照)と、駆動部5の基部50(図1参照)と、固定部6aおよび6bとは、同一のSi基板によって一体的に形成されている。また、振動ミラー素子100は、長手方向(Y方向)に大きく、短手方向(X方向)に小さい。
【0018】
ミラー部1は、略円形状に形成されており、光を反射可能なように構成されている。また、トーションバー2aおよび2bは、共に振動ミラー素子100の長手方向(Y方向)に延びるように形成されている。また、トーションバー2aのY方向の一方端部(Y2側)は、ミラー部1と接続されるとともに、Y方向の他方端部(Y1側)は、バー3aと接続されている。また、トーションバー2bのY方向の一方端部(Y1側)は、ミラー部1と接続されるとともに、Y方向の他方端部(Y2側)は、バー3bと接続されている。
【0019】
また、バー3aは、Y1側で振動ミラー素子100の短手方向(X方向)に延びるように形成されているとともに、バー3bは、Y2側でX方向に延びるように形成されている。また、バー3aのX方向の一方端部(X1側)は、基部40(駆動部4)と接続されているとともに、X方向の他方端部(X2側)は、基部50(駆動部5)と接続されている。また、バー3bのX方向の一方端部(X1側)は、基部40(駆動部4)と接続されているとともに、X方向の他方端部(X2側)は、基部50(駆動部5)と接続されている。このバー3aおよび3bは、基部40および50(駆動部4および5)の変形により、X方向に傾斜可能なように構成されているとともに、捻り変形可能なように構成されている。
【0020】
また、ミラー部1は、トーションバー2aおよび2bによってA1方向およびA2方向(図1参照)に傾斜されるとともに、捻り変形可能なトーションバー2aおよび2bに振動可能なように支持されている。また、トーションバー2aおよび2bは、ミラー部1と共に共振可能なように構成されている。これにより、ミラー部1は、共振によってバー3aおよび3bの傾斜角度以上に傾斜するように構成されている。この結果、レーザ光などをミラー部1に照射すると、ミラー部1の傾斜角度に応じて反射光の反射角度も変化するように構成されている。これにより、振動ミラー素子100を用いてレーザ光などを所定の方向に走査させることが可能である。
【0021】
また、図2に示すように、駆動部4および5は、長さL1を有し、長手方向(Y方向)に延びるように形成されている。また、駆動部4のX1側の側面部4aは、Y方向に沿って延びるように形成されているとともに、駆動部5のX2側の側面部5aは、Y方向に沿って延びるように形成されている。
【0022】
一方、駆動部4のX2側の側面部4bは、中央部4cからY1側の端部4dおよびY2側の端部4eに向かって連続的にX1側に傾斜することによって、短手方向(X方向)の幅が小さくなるように形成されている。また、駆動部5のX1側の側面部5bは、中央部5cからY1側の端部5dおよびY2側の端部5eに向かって連続的にX2側に傾斜することによって、短手方向(X方向)の幅が小さくなるように形成されている。なお、駆動部4および5は、駆動部4の中央部4cおよび駆動部5の中央部5cにおいて、X方向に幅W1を有する。
【0023】
また、駆動部4のY1側の端部4dは、バー3aのX1側の端部と接続されているとともに、Y2側の端部4eは、バー3bのX1側の端部と接続されている。また、駆動部5のY1側の端部5dは、バー3aのX2側の端部と接続されているとともに、Y2側の端部5eは、バー3bのX2側の端部と接続されている。
【0024】
また、駆動部4の中央部4cにおけるX1側の側面部4aには、X1側に突出する固定部6aが形成されている。また、駆動部5の中央部5cにおけるX2側の側面部5aには、X1側に突出する固定部6bが形成されている。この固定部6aおよび6bは、図示しない基台に紫外線硬化接着剤などによって固定されており、駆動部4および5が凹形状または凸形状に変形することによって振動する際に、固定端として機能するように構成されている。
【0025】
また、図3〜図5に示すように、駆動部4は、基部40と、絶縁層41とを含む。さらに、駆動部4は、下部電極42と、圧電体層43と、駆動用電極44と、検出用電極45とからなる圧電素子46を含む。また、駆動部5は、基部50と、絶縁層51とを含む。さらに、駆動部5は、下部電極52と、圧電体層53と、駆動用電極54と、検出用電極55とからなる圧電素子56を含む。なお、下部電極42および52は、本発明の「共通電極」の一例であり、圧電体層43および53は、本発明の「共通圧電体」の一例である。
【0026】
具体的には、基部40の上面上(Z1側)の略全面および基部50の上面上の略全面には、それぞれ、絶縁層41および51が形成されている。この絶縁層41および51は、共にSiO2からなる。また、絶縁層41の上面上の略全面および絶縁層51の上面上の略全面には、それぞれ、下部電極42および52が形成されている。この下部電極42および52は、共にPtからなり、それぞれ、図示しない端子によって外部と電気的に接続されている。
【0027】
また、下部電極42の上面上の略全面および下部電極52の上面上の略全面には、それぞれ、圧電体層43および53が形成されている。この圧電体層43および53は、共にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなり、膜厚方向(Z方向)に分極されることによって、電圧を印加されるとY方向(図5参照)に伸縮するように構成されている。
【0028】
なお、下部電極42および圧電体層43は、共に駆動用電極44および検出用電極45によって共用されるとともに、下部電極52および圧電体層53は、共に駆動用電極54および検出用電極55によって共用されるように構成されている。
【0029】
ここで、第1実施形態では、図3〜図5に示すように、圧電体層43の上面上(Z1側)には、駆動用電極44と検出用電極45とが、離間領域47によって所定の間隔を隔てた状態で形成されている。また、圧電体層53の上面上には、駆動用電極54と検出用電極55とが、離間領域57によって所定の間隔を隔てた状態で形成されている。すなわち、駆動用電極44と検出用電極45とは、圧電体層43の上面上の異なる領域に形成されているととともに、駆動用電極54と検出用電極55とは、圧電体層53の上面上の異なる領域に形成されている。なお、駆動用電極44および54と、検出用電極45および55とは、共にPtまたはCr−Au合金からなる。
【0030】
また、図2に示すように、検出用電極45および55は、長手方向(Y方向)に延びるように形成されている。また、検出用電極45は、固定部6aに近い駆動部4のX1側の側面部4aの近傍に形成されているとともに、検出用電極55は、固定部6bに近い駆動部5のX2側の側面部5aの近傍に形成されている。これにより、固定部6a(6b)から離れた位置(駆動部4(5)のX2(X1)側の側面部4b(5b)の近傍など)に検出用電極45(55)を形成する場合と比べて、後述する配線26a(26b)の周囲に形成された離間領域47(57)の占める領域を小さくすることが可能である。したがって、その分、駆動用電極44(54)の占める領域を大きくすることができるので、駆動部4(5)において駆動力が小さくなるのを抑制することが可能である。
【0031】
また、検出用電極45および55は、平面的に見て略矩形形状を有しており、Y方向に長さL2を有するとともに、X方向に幅W2を有する。ここで、検出用電極45および55のY方向における長さL2は、駆動部4および5のY方向における長さL1の略半分である。また、検出用電極45および55のX方向における幅W2は、駆動部4の中央部4cおよび駆動部5の中央部5cにおけるX方向の幅W1の約5分の1の大きさである。なお、検出用電極45および55のX方向における幅W2と、検出用電極45および55の検出感度とは、それぞれ、実質的に比例関係にある。また、検出用電極45および55は、それぞれ、駆動部4の中央部4cおよび駆動部5の中央部5cを境にして長手方向(Y方向)に対称になるように形成されている。
【0032】
また、図3〜図5に示すように、離間領域47および57に対応する圧電体層43および53の上面上には、何も形成されていない。
【0033】
また、図2に示すように、駆動用電極44は、圧電体層43の上面上(Z1側)において、検出用電極45が形成されている領域と離間領域47が確保されている領域とを除く駆動部4の略全体に渡って形成されている。また、駆動用電極54は、圧電体層53の上面上において、検出用電極55が形成されている領域と離間領域57が確保されている領域とを除く駆動部5の略全体に渡って形成されている。すなわち、駆動用電極44および54は、それぞれ、圧電体層43および53の上面上において、形成することが可能な領域の全域にわたって形成されている。これにより、駆動部4および5(圧電体層43および53)において、駆動力を可能な限り大きくすることが可能である。なお、駆動用電極44および54は、駆動部4および5と同様に、Y方向に長さL1を有する。
【0034】
また、駆動用電極44には、固定部6a側から延びる配線16aが接続されているとともに、駆動用電極54には、固定部6b側から延びる配線16bが接続されている。この配線16aおよび16bと図示しない端子とがそれぞれ接続されることによって、駆動用電極44および54が外部と電気的に接続されるように構成されている。
【0035】
また、駆動用電極44および54には、それぞれ、下部電極42および52との間に電位差が生じるように電圧を印加することが可能なように構成されている。これにより、駆動用電極44と下部電極42との間に電圧を印加することにより、圧電体層43が変形されるとともに、駆動用電極54と下部電極52との間に電圧を印加することにより、圧電体層53が変形されるように構成されている。
【0036】
具体的には、図6に示すように、駆動部4は、駆動用電極44と下部電極42(図3および図4参照)とに電圧を印加することによって、固定部6a近傍の中央部4cを固定端とするとともに、Y1側の端部4dとY2側の端部4eとを自由端として、Z方向に凹形状および凸形状に撓み変形可能なように構成されている。同様に、駆動部5は、駆動用電極54と下部電極52(図3および図4参照)とに電圧を印加することによって、固定部6b近傍の中央部5cを固定端とするとともに、Y1側の端部5dとY2側の端部5eとを自由端として、Z方向に凹形状および凸形状に撓み変形可能なように構成されている。
【0037】
また、駆動用電極44および54と下部電極42および52とに印加される電圧の波形は、主に正弦波になるように構成されている。これにより、駆動部4および5は、変形していない状態から、凹形状に撓み変形した後に、再度変形していない状態に戻り、その後凸形状に撓み変形するという振動運動を繰り返すように構成されている。また、駆動部4の駆動用電極44と下部電極42とに印加される電圧の位相と、駆動部5の駆動用電極54と下部電極52とに印加される電圧の位相とは、反対の位相になるように構成されている。さらに、駆動部4および5において印加される電圧の周波数と、ミラー部1、トーションバー2aおよび2bならびに駆動部4および5の共振周波数とは略一致するように構成されている。これらにより、駆動部4および5からの駆動力によってミラー部1とトーションバー2aおよび2bとが共振するので、バー3aおよび3bの傾斜角度よりも大きい角度で、ミラー部1をA1方向およびA2方向(図1参照)に振動運動させることが可能である。なお、駆動部4および5の変形量は、ミラー部1の振動運動における振れ角と対応している。
【0038】
また、検出用電極45には、固定部6a側から延びる配線26aが接続されているとともに、検出用電極55には、固定部6b側から延びる配線26bが接続されている。この配線26aおよび26bと図示しない端子とがそれぞれ接続されることによって、検出用電極45および55が外部と電気的に接続されるように構成されている。なお、駆動部4における配線26aの周囲および駆動部5における配線26bの周囲にも、それぞれ、離間領域47および57が形成されている。
【0039】
また、第1実施形態では、検出用電極45では、圧電体層43の撓み変形によって生じる下部電極42との電位差が検出されるとともに、検出用電極55では、圧電体層53の撓み変形によって生じる下部電極52との電位差が検出されるように構成されている。すなわち、検出用電極45では、圧電体層43の変形量に基づく駆動部4の変形量が検出されるとともに、検出用電極55では、圧電体層53の変形量に基づく駆動部5の変形量が検出されるように構成されている。また、検出用電極45では、駆動部4の撓み変形が駆動部5の撓み変形とは独立して検出されるとともに、検出用電極55では、駆動部5の撓み変形が駆動部4の撓み変形とは独立して検出されるように構成されている。これにより、駆動部4および5の変形量に対応するミラー部1の振れ角を求めることが可能である。
【0040】
なお、駆動部4(5)において駆動力を可能な限り大きくするためには、駆動用電極44(54)は、可能な限り広い領域に形成するのが駆動力を大きくする点で好ましい。一方、検出用電極45(55)は、十分な検出感度を確保した状態で可能な限り小さい領域に形成するのが、駆動用電極44(54)の領域が小さくなり駆動力が低下するのを抑制する点で好ましい。
【0041】
第1実施形態では、上記のように、駆動部4および5に、それぞれ、駆動用電極44および54と検出用電極45および55とを配置することによって、駆動用電極44および54と検出用電極45および55とを同じ製造プロセスにおいて形成させることができる。これにより、駆動用電極44および54と検出用電極45および55とを別の製造プロセスで形成する必要がないので、駆動部4および5の駆動を検出するための検出用電極45および55を備える振動ミラー素子100を容易に製造することができる。また、駆動部4および5に、駆動部4および5の変形量を検出することが可能な検出用電極45および55を配置することによって、変形量が比較的大きい駆動部4自身および駆動部5自身の変形量を、駆動部4および5にそれぞれ配置された検出用電極45および55によりそれぞれ検出することができる。これにより、駆動部4および5の変形量に基づいてミラー部1の変位量(振れ角)をより正確に検出することができる。
【0042】
また、第1実施形態では、上記のように、検出用電極45および55を、長手方向(Y方向)に延びるように形成するとともに、検出用電極45および55のY方向の長さL2を、駆動用電極44および54のY方向における長さL1の略半分にすることによって、検出用電極45および55の変形量をより正確に検出するために必要な検出用電極45および55の面積を確保することができるので、駆動部4および5における変形量をさらに正確に検出することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、検出用電極45および55のY方向の長さL2を、駆動用電極44および54のY方向における長さL1の略半分にすることによって、駆動部4における検出用電極45の占める割合が大きくなりすぎるのを抑制することができるとともに、駆動部5における検出用電極55の占める割合が大きくなりすぎるのを抑制することができる。これにより、駆動部4における駆動用電極44の占める割合が小さくなるとともに、駆動部5における駆動用電極54の占める割合が小さくなることに起因して駆動部4および5の駆動力が小さくなるのを抑制することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、駆動用電極44と検出用電極45とを、圧電体層43の上面上に離間領域47によって所定の間隔を隔てた状態で形成するとともに、駆動用電極54と検出用電極55とを、圧電体層53の上面上に離間領域57によって所定の間隔を隔てた状態で形成することによって、駆動用電極44と検出用電極45との絶縁および駆動用電極54と検出用電極55との絶縁を確保した状態で、より容易に、駆動用電極44および検出用電極45と、駆動用電極54および検出用電極55とを同じ製造プロセスで同時に形成することができる。これにより、振動ミラー素子100をより容易に製造することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、駆動用電極44(54)と下部電極42(52)との間に電圧を印加することにより、圧電体層43(53)が撓み変形されるように構成するとともに、検出用電極45(55)において、圧電体層43(53)の撓み変形によって生じる下部電極42(52)との電位差を検出するように構成することによって、駆動用電極44(54)と検出用電極45(55)とにおいて圧電体層43(53)および下部電極42(52)を共用することができるので、駆動用電極44(54)と検出用電極45(55)とに個別に圧電体層および下部電極を設ける必要がない。これにより、振動ミラー素子100の構造を簡素化することができるとともに、振動ミラー素子100の小型化を図ることができる。また、駆動用電極44(54)と検出用電極45(55)とにそれぞれ対応する圧電体層および下部電極を個別に設けるための製造プロセスを必要としないので、振動ミラー素子100をより容易に形成することができる。
【0046】
次に、図7〜図10を参照して、上記した本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った検出感度測定について説明する。
【0047】
この検出感度測定では、実施例1、2および3として、検知用電極205の長手方向(Y方向)の長さL2を各々異ならせたカンチレバー型の検査部材200を用いて測定を行った。
【0048】
具体的には、図7に示すように、平面的に見て矩形形状を有する検査部材200の一方側を固定端になるように固定部材210によって固定する一方、他方側を自由端になるようにした。また、検査部材200は、図8に示すように、基部201および絶縁層(図示せず)と、絶縁層の上面上に形成された下部電極(図示せず)、圧電体層203(図7参照)、駆動用電極204(図7参照)および検出用電極205(図7参照)からなる圧電素子206とからなるように構成した。なお、検査部材200の長手方向(Y方向)の長さL1は、2mm(2000μm)にした。
【0049】
また、図7に示すように、平面的に見て矩形形状を有する駆動用電極204のY方向の長さは、検査部材200のY方向の長さL1と同じにした。また、駆動用電極204と所定の間隔を隔てて、平面的に見て矩形形状を有する検出用電極205を形成した。なお、駆動用電極204と検出用電極205との短手方向(X方向)の幅は同じ幅になるように構成した。
【0050】
ここで、実施例1の検査部材200では、検出用電極205のY方向の長さL2を2mm(2000μm)にした。すなわち、検出用電極205のY方向の長さL2を、駆動用電極204のY方向の長さ(検査部材200のY方向の長さ)L1と同じにした。また、実施例2の検査部材200では、検出用電極205のY方向の長さL2を1mm(1000μm)にした。すなわち、検出用電極205のY方向の長さL2を、駆動用電極204のY方向の長さL1の半分にした。なお、実施例2の検査部材200は、上記した第1実施形態の駆動部4および5に対応している。また、実施例3の検査部材200では、検出用電極205のY方向の長さL2を0.5mm(500μm)にした。すなわち、検出用電極205のY方向の長さL2を、駆動用電極204のY方向の長さL1の4分の1にした。
【0051】
そして、上記した実施例1、2および3における各々の検査部材200の下部電極(図示せず)と駆動用電極204との間に電位差が生じるように電圧を印加して、図8に示すように、圧電体層203(検査部材200)を鉛直方向(Z方向)に反るように変形させた。この際、圧電体層203が変形するのに伴って生じる下部電極(図示せず)と検出用電極205との電位差を検出電圧として検出した。
【0052】
また、検出電圧を検出するのと同時に、検査部材200の自由端側の変形量をレーザドップラー振動計220を用いて計測した。具体的には、検査部材200の上方に配置したレーザドップラー振動計220から、検査部材200の自由端側の上面にレーザ光を照射して、その反射光をレーザドップラー振動計220において計測することにより検査部材200の自由端側の変形量を求めた。そして、圧電体層203の自由端側の変形量当たりの検出電圧の大きさを検出感度として求めた。
【0053】
検出感度測定の結果としては、図9に示すように、実施例1においては、検査部材200の自由端側の変形量は57.7μmになるとともに、検出電圧は251mVになった。これにより、実施例1の検出感度は、4.4(=251/57.7)(mV/μm)になった。また、実施例2においては、検査部材200の自由端側の変形量は56.1μmになるとともに、検出電圧は235mVになった。これにより、実施例2の検出感度は、4.2(=235/56.1)(mV/μm)になった。また、実施例3においては、検査部材200の自由端側の変形量は57.7μmになるとともに、検出電圧は170mVになった。これにより、実施例3の検出感度は、2.9(=170/57.7)(mV/μm)になった。
【0054】
上記のような検出感度測定の結果から、図10に示すように、検出用電極205のY方向の長さL2を大きくすることによって、検出感度を大きくすることができることが判明した。
【0055】
また、実施例1および2では、検出感度が4mV/μmよりも大きい一方、実施例3では、検出感度が3mV/μmよりも小さくなった。これにより、実施例3は、検出感度が小さいことによって、検出用電極205が接続された図示しない電気回路などにおける不要な電位差に起因するノイズの影響を受けやすいと考えられる。すなわち、実施例3では、駆動部における変形量を正確に検出しづらいと考えられる。一方、実施例1および2では、検出感度が大きいことによって、ノイズの影響を受けにくいので、実施例3よりも駆動部における変形量をより正確に検出することができると考えられる。これにより、実施例1および2が、十分な検出感度を確保するという本発明の効果を得るのにより好ましいと考えられる。
【0056】
また、検出用電極205の長さL2は、検出感度と対数関数的な関係にあることが判明した。すなわち、検出用電極205のY方向の長さL2が検査部材200のY方向の長さ(駆動用電極204のY方向の長さ)L1の半分以上の実施例1および2の場合においては、検出用電極205の長さL2を大きくしても検出感度はあまり大きくならないことが判明した。このことから、本願発明者は、検出用電極205のY方向の長さL2を検査部材200のY方向の長さ(駆動用電極204のY方向の長さ)L1の半分にした場合でも、十分な検出感度を確保することが可能であることを見い出した。
【0057】
ここで、第1実施形態の振動ミラー素子100の駆動部4および5において駆動力を可能な限り大きくするためには、駆動用電極204を可能な限り広い領域に形成する必要がある。このため、検出用電極205を十分な検出感度を確保した状態で可能な限り小さい領域に形成するのが好ましい。これらにより、駆動力を大きくしつつ、十分な検出感度を確保することが可能な実施例2(検出用電極205の長さL2が駆動用電極204の長さL1の半分)は、実施例1(検出用電極205の長さL2が駆動用電極204の長さL1と同じ長さ)よりも検出用電極205が小さい領域に形成されていることによって、好ましいことが判明した。
【0058】
したがって、本発明の第1実施形態における駆動部4および5に対応する実施例2の検査部材200が、駆動力を大きくしつつ、十分な検出感度を確保するために最も効果的な構成であると考えられる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、図11および図12を参照して、本発明の第2実施形態による振動ミラー素子300の構造について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、駆動部304および305の略全面に渡って、駆動用電極344および354をそれぞれ形成するとともに、駆動用電極344および354の上面上に、検知用電極374を含む検知部370および検知用電極384を含む検知部380をそれぞれ形成した例について説明する。
【0060】
図11および図12に示すように、第2実施形態による振動ミラー素子300の駆動部304および305において、圧電体層343および353(図12参照)の上面上(Z1側)には、それぞれ、駆動用電極344および354が略全面に渡って形成されている。なお、圧電体層343および353は、本発明の「駆動用圧電体」の一例である。
【0061】
ここで、第2実施形態では、駆動用電極344および354の上面上には、それぞれ、長手方向(Y方向)に延びるように、矩形形状の検知部370および380が形成されている。この検知部370および380は、図12に示すように、それぞれ、絶縁体層371および381と、下部電極372および382と、圧電体層373および383と、検知用電極374および384とが、この順に下方(Z2側)から上方(Z1側)に向かって積層されている。すなわち、第1実施形態とは異なり、駆動用電極344と検知用電極374とでは、下部電極および圧電体層を共用しないとともに、駆動用電極354と検知用電極384とでは、下部電極および圧電体層を共用しないように構成されている。
【0062】
また、絶縁体層371および381は、共にポリイミドからなる。また、絶縁体層371は、駆動用電極344と下部電極372とを絶縁するために配置されているとともに、絶縁体層381は、駆動用電極354と下部電極382とを絶縁するために配置されている。また、下部電極372および382は、共にPtからなり、それぞれ、図示しない端子によって外部と電気的に接続されている。また、圧電体層373および383は共にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる。また、検出用電極374および384は共にPtまたはCr−Au合金からなる。なお、圧電体層373および383は、本発明の「検知用圧電体」の一例である。
【0063】
また、駆動用電極344および354に電圧が印加されることにより圧電体層343および353(駆動部304および305)が撓み変形した際に、検知部370および380は、それぞれ、駆動部304および305の撓み変形に伴って変形するように構成されている。これにより、検出用電極374では、圧電体層373の撓み変形によって生じた下部電極372との電位差が検出されるとともに、検出用電極384では、圧電体層383の撓み変形によって生じた下部電極382との電位差が検出されるように構成されている。
【0064】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0065】
第2実施形態では、上記のように、駆動用電極344(354)により電圧が印加されることにより圧電体層343(353)が撓み変形した際に、検出用電極374(384)において、圧電体層373(383)の撓み変形によって生じた下部電極372(382)との電位差を検出するように構成することによって、圧電体層343(353)と圧電体層373(383)とを分離することができる。これにより、圧電体層343(353)の全体に渡って駆動用電極344(354)を形成することができるので、駆動部304(305)において駆動力が小さくなるのをより抑制することができる。また、圧電体層373(383)の全体に渡って検出用電極374(384)を形成することができるので、駆動部304(305)の変形量を十分に検出することが可能な大きさに検出用電極374(384)を形成することができる。
【0066】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
(第3実施形態)
次に、図13および図14を参照して、本発明の第3実施形態による振動ミラー素子400の構造について説明する。この第3実施形態では、上記第2実施形態と異なり、駆動部404の基部40の下面上に検知用電極474を含む検知部470を形成するとともに、駆動部405の基部50の下面上に検知用電極484を含む検知部480を形成した例について説明する。
【0068】
図13および図14に示すように、基部40および50の下面上(Z2側)には、それぞれ、長手方向(Y方向)に延びるように矩形形状の検知部470および480が形成されている。この検知部470および480では、図14に示すように、それぞれ、絶縁体層471および481と、下部電極472および482と、圧電体層473および483と、検知用電極474および484とが、この順に上方(Z1側)から下方(Z2側)に向かって積層されている。また、絶縁体層471および481は、共にSiO2からなる。なお、圧電体層473および483は、本発明の「検知用圧電体」の一例である。
【0069】
なお、第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第2実施形態と同様である。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記第1実施形態では、駆動部4(5)を、中央部4c(5c)から端部4d(5d)および4e(5e)に向かって連続的に幅が小さくした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図15に示す第1変形例の振動ミラー素子500のように、平面的にみて、駆動部504および505が矩形形状を有するように構成してもよい。
【0072】
また、上記第1実施形態および第1変形例では、検出用電極45(545)を、固定部6aに近い駆動部4(504)の一方端部側(X1側)の側面部4a(504a)の近傍に形成するとともに、検出用電極55(555)を、固定部6bに近い駆動部5(505)の他方端部側(X2側)の側面部5a(505a)の近傍に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図16に示す第2変形例の振動ミラー素子600のように、検出用電極645および655を、それぞれ、駆動部604および605の短手方向(X方向)の略中央に長手方向(Y方向)に延びるように形成してもよい。また、図17に示す第3変形例の振動ミラー素子700のように、検出用電極745を、固定部6aから遠い駆動部704のX2側の側面部504bの近傍にY方向に延びるように形成するとともに、検出用電極755を、固定部6bから遠い駆動部705のX1側の側面部505bの近傍にY方向に延びるように形成してもよい。
【0073】
また、上記第1実施形態では、検出用電極45および55を、それぞれ、駆動部4の中央部4cおよび駆動部5の中央部5cを境にして長手方向(Y方向)に対称になるように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図18に示す第4変形例の振動ミラー素子800のように、駆動部804に検出用電極845を設ける一方、駆動部805に検出用電極を設けないように構成してもよい。さらに、検出用電極845を駆動部804のY方向の一方側(Y1側)にのみ設けて、他方側(Y2側)には検出用電極845を設けないように構成してもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態では、検出用電極45および55の長手方向(Y方向)の長さL2を、駆動用電極44および54のY方向における長さL1の略半分にした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検出用電極の長手方向の長さは、駆動用電極の長手方向の長さの半分未満であってもよいし、駆動用電極の長手方向の長さの略半分よりも大きくてもよい。なお、検出用電極の長手方向の長さは、駆動用電極の長手方向の長さの半分以上、駆動用電極の長手方向の長さ未満であるのが、十分な検出感度を確保するために好ましい。
【0075】
また、上記第1〜第3実施形態では、ミラー部1の短手方向(X方向)の両側にそれぞれ駆動部4(304、404)および5(305、405)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ミラー部のX方向の一方側にのみ駆動部を設けてもよい。
【0076】
また、上記第1実施形態では、圧電体層43(53)の下面上に配置された下部電極42(52)を駆動部4(5)の略全面に形成するとともに、圧電体層43(53)の上面上に配置された電極を、駆動用電極44(54)と検出用電極45(55)とに分割した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、圧電体層の上面上に配置された電極を駆動部の略全面に形成するとともに、圧電体層の下面上に配置された電極を、駆動用電極と検出用電極とに分割してもよい。
【0077】
また、上記第1〜第3実施形態では、振動ミラー素子100(300、400)のミラー部1をA1およびA2方向のみ(1次元的)に傾斜させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、振動ミラー素子の外側に、A1およびA2方向と異なる方向にミラー部を傾斜および振動させることが可能な駆動部を別途設けてもよい。これにより2次元的にミラー部を傾斜および振動させることが可能である。
【0078】
また、上記第1〜第3実施形態では、圧電体層43、53、343、353、373、383、473および483が、共にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、圧電体層は、PZT以外の鉛、チタンおよびジルコニウムを主成分とした酸化物からなる圧電材料や、他の圧電材料により形成されていてもよい。たとえば、圧電体層として、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛((Pb、La)(Zr、Ti)O3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)などの圧電材料を用いてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 ミラー部
4、5、304、305、404、405、504、505、604、605、704、705、804、805 駆動部
42、52 下部電極(共通電極)
43、53 圧電体層(共通圧電体)
44、54、344、354 駆動用電極
45、55、374、384、474、484、545、555、645、655、745、755、845 検出用電極
100、300、400、500、600、700、800 振動ミラー素子
343、353 圧電体層(駆動用圧電体)
373、383、473、483 圧電体層(検知用圧電体)
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動ミラー素子に関し、特に、変形量を検出するための検出用電極を備える振動ミラー素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変形量を検出するための検出用電極を備える振動ミラー素子が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、揺動可能なミラーと、静電力により非接触状態でミラーを揺動させる駆動電極と、ミラーの端部に接続され、駆動電極によるミラーの揺動に応じて捻り変形可能なトーションバーと、角度検出センサとを備えるアクチュエータ(振動ミラー素子)が開示されている。上記特許文献1に記載されたアクチュエータでは、角度検出センサによりトーションバーの捻り変形による変形量を検出することによって、この変形量に基づいてミラーの振れ角が求められるように構成されている。また、角度検出センサは、トーションバーの表面に一体的に形成されたピエゾ抵抗と、ピエゾ抵抗に生じる電圧を検出するための一対の電圧計測パッド(検出用電極)と、ピエゾ抵抗にバイアス電流を与えるための一対のバイアス電流パッドとからなる。なお、駆動電極は、平面的に見て、ミラーの一部とオーバーラップした状態で、ミラーの下方に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−229517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のアクチュエータでは、駆動電極がミラーの一部とオーバーラップしているため、アクチュエータを製造するプロセスにおいて、角度検出センサのピエゾ抵抗などをトーションバーの表面に一体的に形成する製造プロセスが、駆動電極を形成する製造プロセスとは別途必要になるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、駆動を検出するための検出用電極を備える振動ミラー素子を容易に製造することが可能な振動ミラー素子を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による振動ミラー素子は、ミラー部と、ミラー部を駆動する駆動部とを備え、駆動部には、電圧の印加により駆動部を変形させて駆動させるための駆動用電極と、駆動部の変形量を検出するための検出用電極とが配置されている。
【0008】
この発明の一の局面による振動ミラー素子では、上記のように、駆動部に駆動用電極と検出用電極とを配置することによって、駆動用電極と検出用電極とを同じ製造プロセスにおいて形成させることができる。これにより、駆動用電極と検出用電極とを別の製造プロセスで形成する必要がないので、駆動部の駆動を検出するための検出用電極を備える振動ミラー素子を容易に製造することができる。
【0009】
上記一の局面による振動ミラー素子において、好ましくは、検出用電極は、駆動用電極の長手方向に沿って延びており、検出用電極の長手方向における長さは、駆動用電極の長手方向における長さ未満である。このように構成すれば、駆動部における検出用電極の占める割合が大きくなりすぎるのを抑制することができるので、駆動部における駆動用電極の占める割合が小さくなることに起因して駆動部の駆動力が小さくなるのを抑制することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、検出用電極の長手方向における長さは、駆動用電極の長手方向における長さの半分以上である。このように構成すれば、検出用電極を駆動部の変形量を十分に検出することが可能な大きさに形成することができるので、駆動部における変形量をさらに正確に検出することができる。なお、検出用電極の長手方向における長さを駆動用電極の長手方向における長さの半分にしても駆動部の変形量を十分に検出することができる点については、本願発明者が鋭意検討した結果、見い出した構成である。
【0011】
上記一の局面による振動ミラー素子において、好ましくは、駆動用電極と検出用電極とは、同一面上に配置されている。このように構成すれば、より容易に、駆動用電極と検出用電極とを同じ製造プロセスで同時に形成することができるので、振動ミラー素子をより容易に製造することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、駆動部は、共通圧電体と、共通圧電体の一方面上に配置された共通電極とを含み、駆動用電極は、共通圧電体の他方面上の第1領域に配置されているとともに、検出用電極は、共通圧電体の他方面上の第1領域とは異なる第2領域に配置されており、駆動部では、共通電極と駆動用電極との間に電圧を印加することにより共通圧電体が変形されるように構成されており、検出用電極は、共通圧電体の変形によって生じる共通電極との電位差を検出するように構成されている。このように構成すれば、駆動用電極と検出用電極とにおいて共通圧電体および共通電極を共用することができるので、駆動用電極と検出用電極とに個別に圧電体および電極を設ける必要がない。これにより、振動ミラー素子の構造を簡素化することができるとともに、振動ミラー素子の小型化を図ることができる。また、駆動用電極と検出用電極とにそれぞれ対応する圧電体および電極を個別に設けるための製造プロセスを必要としないので、振動ミラー素子をより容易に形成することができる。
【0013】
上記一の局面による振動ミラー素子において、好ましくは、駆動部は、駆動用電極に電圧が印加されることによって変形する駆動用圧電体と、駆動用圧電体の変形に伴って変形する検出用圧電体とを含み、検出用電極は、検出用圧電体の変形によって生じる電圧を検出するように構成されている。このように構成すれば、駆動用圧電体と検出用圧電体とを分離することができる。これにより、駆動用圧電体の全体に渡って駆動用電極を形成することができるので、駆動部において駆動力が小さくなるのをより抑制することができる。また、検出用圧電体の全体に渡って検出用電極を形成することができるので、駆動部の変形量を十分に検出することが可能な大きさに検出用電極を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による振動ミラー素子の構造を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【図3】図2に示した振動ミラー素子の900−900線に沿った拡大断面図である。
【図4】図2に示した振動ミラー素子の910−910線に沿った拡大断面図である。
【図5】図2に示した振動ミラー素子の920−920線に沿った拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による振動ミラー素子が所定の傾斜角度で傾斜した状態を示した斜視図である。
【図7】本発明の効果を確認するために行った検出感度測定に用いるカンチレバーを示した平面図である。
【図8】本発明の効果を確認するために行った検出感度測定を説明するための図である。
【図9】本発明の効果を確認するために行った検出感度測定の結果を示した表である。
【図10】本発明の効果を確認するために行った検出感度測定の結果を示したグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態による振動ミラー素子の構造を示した平面図(上面図)である。
【図12】図11に示した振動ミラー素子の930−930線に沿った拡大断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態による振動ミラー素子の構造を示した平面図(下面図)である。
【図14】図13に示した振動ミラー素子の940−940線に沿った拡大断面図である。
【図15】本発明の第1変形例による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【図16】本発明の第2変形例による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【図17】本発明の第3変形例による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【図18】本発明の第4変形例による振動ミラー素子の構造を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による振動ミラー素子100の構成について説明する。
【0017】
本発明の第1実施形態による振動ミラー素子100は、図1および図2に示すように、ミラー部1と、トーションバー2aおよび2bと、バー3aおよび3bと、駆動部4および5と、固定部6aおよび6bとを含む。また、ミラー部1と、トーションバー2aおよび2bと、バー3aおよび3bと、駆動部4の基部40(図1参照)と、駆動部5の基部50(図1参照)と、固定部6aおよび6bとは、同一のSi基板によって一体的に形成されている。また、振動ミラー素子100は、長手方向(Y方向)に大きく、短手方向(X方向)に小さい。
【0018】
ミラー部1は、略円形状に形成されており、光を反射可能なように構成されている。また、トーションバー2aおよび2bは、共に振動ミラー素子100の長手方向(Y方向)に延びるように形成されている。また、トーションバー2aのY方向の一方端部(Y2側)は、ミラー部1と接続されるとともに、Y方向の他方端部(Y1側)は、バー3aと接続されている。また、トーションバー2bのY方向の一方端部(Y1側)は、ミラー部1と接続されるとともに、Y方向の他方端部(Y2側)は、バー3bと接続されている。
【0019】
また、バー3aは、Y1側で振動ミラー素子100の短手方向(X方向)に延びるように形成されているとともに、バー3bは、Y2側でX方向に延びるように形成されている。また、バー3aのX方向の一方端部(X1側)は、基部40(駆動部4)と接続されているとともに、X方向の他方端部(X2側)は、基部50(駆動部5)と接続されている。また、バー3bのX方向の一方端部(X1側)は、基部40(駆動部4)と接続されているとともに、X方向の他方端部(X2側)は、基部50(駆動部5)と接続されている。このバー3aおよび3bは、基部40および50(駆動部4および5)の変形により、X方向に傾斜可能なように構成されているとともに、捻り変形可能なように構成されている。
【0020】
また、ミラー部1は、トーションバー2aおよび2bによってA1方向およびA2方向(図1参照)に傾斜されるとともに、捻り変形可能なトーションバー2aおよび2bに振動可能なように支持されている。また、トーションバー2aおよび2bは、ミラー部1と共に共振可能なように構成されている。これにより、ミラー部1は、共振によってバー3aおよび3bの傾斜角度以上に傾斜するように構成されている。この結果、レーザ光などをミラー部1に照射すると、ミラー部1の傾斜角度に応じて反射光の反射角度も変化するように構成されている。これにより、振動ミラー素子100を用いてレーザ光などを所定の方向に走査させることが可能である。
【0021】
また、図2に示すように、駆動部4および5は、長さL1を有し、長手方向(Y方向)に延びるように形成されている。また、駆動部4のX1側の側面部4aは、Y方向に沿って延びるように形成されているとともに、駆動部5のX2側の側面部5aは、Y方向に沿って延びるように形成されている。
【0022】
一方、駆動部4のX2側の側面部4bは、中央部4cからY1側の端部4dおよびY2側の端部4eに向かって連続的にX1側に傾斜することによって、短手方向(X方向)の幅が小さくなるように形成されている。また、駆動部5のX1側の側面部5bは、中央部5cからY1側の端部5dおよびY2側の端部5eに向かって連続的にX2側に傾斜することによって、短手方向(X方向)の幅が小さくなるように形成されている。なお、駆動部4および5は、駆動部4の中央部4cおよび駆動部5の中央部5cにおいて、X方向に幅W1を有する。
【0023】
また、駆動部4のY1側の端部4dは、バー3aのX1側の端部と接続されているとともに、Y2側の端部4eは、バー3bのX1側の端部と接続されている。また、駆動部5のY1側の端部5dは、バー3aのX2側の端部と接続されているとともに、Y2側の端部5eは、バー3bのX2側の端部と接続されている。
【0024】
また、駆動部4の中央部4cにおけるX1側の側面部4aには、X1側に突出する固定部6aが形成されている。また、駆動部5の中央部5cにおけるX2側の側面部5aには、X1側に突出する固定部6bが形成されている。この固定部6aおよび6bは、図示しない基台に紫外線硬化接着剤などによって固定されており、駆動部4および5が凹形状または凸形状に変形することによって振動する際に、固定端として機能するように構成されている。
【0025】
また、図3〜図5に示すように、駆動部4は、基部40と、絶縁層41とを含む。さらに、駆動部4は、下部電極42と、圧電体層43と、駆動用電極44と、検出用電極45とからなる圧電素子46を含む。また、駆動部5は、基部50と、絶縁層51とを含む。さらに、駆動部5は、下部電極52と、圧電体層53と、駆動用電極54と、検出用電極55とからなる圧電素子56を含む。なお、下部電極42および52は、本発明の「共通電極」の一例であり、圧電体層43および53は、本発明の「共通圧電体」の一例である。
【0026】
具体的には、基部40の上面上(Z1側)の略全面および基部50の上面上の略全面には、それぞれ、絶縁層41および51が形成されている。この絶縁層41および51は、共にSiO2からなる。また、絶縁層41の上面上の略全面および絶縁層51の上面上の略全面には、それぞれ、下部電極42および52が形成されている。この下部電極42および52は、共にPtからなり、それぞれ、図示しない端子によって外部と電気的に接続されている。
【0027】
また、下部電極42の上面上の略全面および下部電極52の上面上の略全面には、それぞれ、圧電体層43および53が形成されている。この圧電体層43および53は、共にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなり、膜厚方向(Z方向)に分極されることによって、電圧を印加されるとY方向(図5参照)に伸縮するように構成されている。
【0028】
なお、下部電極42および圧電体層43は、共に駆動用電極44および検出用電極45によって共用されるとともに、下部電極52および圧電体層53は、共に駆動用電極54および検出用電極55によって共用されるように構成されている。
【0029】
ここで、第1実施形態では、図3〜図5に示すように、圧電体層43の上面上(Z1側)には、駆動用電極44と検出用電極45とが、離間領域47によって所定の間隔を隔てた状態で形成されている。また、圧電体層53の上面上には、駆動用電極54と検出用電極55とが、離間領域57によって所定の間隔を隔てた状態で形成されている。すなわち、駆動用電極44と検出用電極45とは、圧電体層43の上面上の異なる領域に形成されているととともに、駆動用電極54と検出用電極55とは、圧電体層53の上面上の異なる領域に形成されている。なお、駆動用電極44および54と、検出用電極45および55とは、共にPtまたはCr−Au合金からなる。
【0030】
また、図2に示すように、検出用電極45および55は、長手方向(Y方向)に延びるように形成されている。また、検出用電極45は、固定部6aに近い駆動部4のX1側の側面部4aの近傍に形成されているとともに、検出用電極55は、固定部6bに近い駆動部5のX2側の側面部5aの近傍に形成されている。これにより、固定部6a(6b)から離れた位置(駆動部4(5)のX2(X1)側の側面部4b(5b)の近傍など)に検出用電極45(55)を形成する場合と比べて、後述する配線26a(26b)の周囲に形成された離間領域47(57)の占める領域を小さくすることが可能である。したがって、その分、駆動用電極44(54)の占める領域を大きくすることができるので、駆動部4(5)において駆動力が小さくなるのを抑制することが可能である。
【0031】
また、検出用電極45および55は、平面的に見て略矩形形状を有しており、Y方向に長さL2を有するとともに、X方向に幅W2を有する。ここで、検出用電極45および55のY方向における長さL2は、駆動部4および5のY方向における長さL1の略半分である。また、検出用電極45および55のX方向における幅W2は、駆動部4の中央部4cおよび駆動部5の中央部5cにおけるX方向の幅W1の約5分の1の大きさである。なお、検出用電極45および55のX方向における幅W2と、検出用電極45および55の検出感度とは、それぞれ、実質的に比例関係にある。また、検出用電極45および55は、それぞれ、駆動部4の中央部4cおよび駆動部5の中央部5cを境にして長手方向(Y方向)に対称になるように形成されている。
【0032】
また、図3〜図5に示すように、離間領域47および57に対応する圧電体層43および53の上面上には、何も形成されていない。
【0033】
また、図2に示すように、駆動用電極44は、圧電体層43の上面上(Z1側)において、検出用電極45が形成されている領域と離間領域47が確保されている領域とを除く駆動部4の略全体に渡って形成されている。また、駆動用電極54は、圧電体層53の上面上において、検出用電極55が形成されている領域と離間領域57が確保されている領域とを除く駆動部5の略全体に渡って形成されている。すなわち、駆動用電極44および54は、それぞれ、圧電体層43および53の上面上において、形成することが可能な領域の全域にわたって形成されている。これにより、駆動部4および5(圧電体層43および53)において、駆動力を可能な限り大きくすることが可能である。なお、駆動用電極44および54は、駆動部4および5と同様に、Y方向に長さL1を有する。
【0034】
また、駆動用電極44には、固定部6a側から延びる配線16aが接続されているとともに、駆動用電極54には、固定部6b側から延びる配線16bが接続されている。この配線16aおよび16bと図示しない端子とがそれぞれ接続されることによって、駆動用電極44および54が外部と電気的に接続されるように構成されている。
【0035】
また、駆動用電極44および54には、それぞれ、下部電極42および52との間に電位差が生じるように電圧を印加することが可能なように構成されている。これにより、駆動用電極44と下部電極42との間に電圧を印加することにより、圧電体層43が変形されるとともに、駆動用電極54と下部電極52との間に電圧を印加することにより、圧電体層53が変形されるように構成されている。
【0036】
具体的には、図6に示すように、駆動部4は、駆動用電極44と下部電極42(図3および図4参照)とに電圧を印加することによって、固定部6a近傍の中央部4cを固定端とするとともに、Y1側の端部4dとY2側の端部4eとを自由端として、Z方向に凹形状および凸形状に撓み変形可能なように構成されている。同様に、駆動部5は、駆動用電極54と下部電極52(図3および図4参照)とに電圧を印加することによって、固定部6b近傍の中央部5cを固定端とするとともに、Y1側の端部5dとY2側の端部5eとを自由端として、Z方向に凹形状および凸形状に撓み変形可能なように構成されている。
【0037】
また、駆動用電極44および54と下部電極42および52とに印加される電圧の波形は、主に正弦波になるように構成されている。これにより、駆動部4および5は、変形していない状態から、凹形状に撓み変形した後に、再度変形していない状態に戻り、その後凸形状に撓み変形するという振動運動を繰り返すように構成されている。また、駆動部4の駆動用電極44と下部電極42とに印加される電圧の位相と、駆動部5の駆動用電極54と下部電極52とに印加される電圧の位相とは、反対の位相になるように構成されている。さらに、駆動部4および5において印加される電圧の周波数と、ミラー部1、トーションバー2aおよび2bならびに駆動部4および5の共振周波数とは略一致するように構成されている。これらにより、駆動部4および5からの駆動力によってミラー部1とトーションバー2aおよび2bとが共振するので、バー3aおよび3bの傾斜角度よりも大きい角度で、ミラー部1をA1方向およびA2方向(図1参照)に振動運動させることが可能である。なお、駆動部4および5の変形量は、ミラー部1の振動運動における振れ角と対応している。
【0038】
また、検出用電極45には、固定部6a側から延びる配線26aが接続されているとともに、検出用電極55には、固定部6b側から延びる配線26bが接続されている。この配線26aおよび26bと図示しない端子とがそれぞれ接続されることによって、検出用電極45および55が外部と電気的に接続されるように構成されている。なお、駆動部4における配線26aの周囲および駆動部5における配線26bの周囲にも、それぞれ、離間領域47および57が形成されている。
【0039】
また、第1実施形態では、検出用電極45では、圧電体層43の撓み変形によって生じる下部電極42との電位差が検出されるとともに、検出用電極55では、圧電体層53の撓み変形によって生じる下部電極52との電位差が検出されるように構成されている。すなわち、検出用電極45では、圧電体層43の変形量に基づく駆動部4の変形量が検出されるとともに、検出用電極55では、圧電体層53の変形量に基づく駆動部5の変形量が検出されるように構成されている。また、検出用電極45では、駆動部4の撓み変形が駆動部5の撓み変形とは独立して検出されるとともに、検出用電極55では、駆動部5の撓み変形が駆動部4の撓み変形とは独立して検出されるように構成されている。これにより、駆動部4および5の変形量に対応するミラー部1の振れ角を求めることが可能である。
【0040】
なお、駆動部4(5)において駆動力を可能な限り大きくするためには、駆動用電極44(54)は、可能な限り広い領域に形成するのが駆動力を大きくする点で好ましい。一方、検出用電極45(55)は、十分な検出感度を確保した状態で可能な限り小さい領域に形成するのが、駆動用電極44(54)の領域が小さくなり駆動力が低下するのを抑制する点で好ましい。
【0041】
第1実施形態では、上記のように、駆動部4および5に、それぞれ、駆動用電極44および54と検出用電極45および55とを配置することによって、駆動用電極44および54と検出用電極45および55とを同じ製造プロセスにおいて形成させることができる。これにより、駆動用電極44および54と検出用電極45および55とを別の製造プロセスで形成する必要がないので、駆動部4および5の駆動を検出するための検出用電極45および55を備える振動ミラー素子100を容易に製造することができる。また、駆動部4および5に、駆動部4および5の変形量を検出することが可能な検出用電極45および55を配置することによって、変形量が比較的大きい駆動部4自身および駆動部5自身の変形量を、駆動部4および5にそれぞれ配置された検出用電極45および55によりそれぞれ検出することができる。これにより、駆動部4および5の変形量に基づいてミラー部1の変位量(振れ角)をより正確に検出することができる。
【0042】
また、第1実施形態では、上記のように、検出用電極45および55を、長手方向(Y方向)に延びるように形成するとともに、検出用電極45および55のY方向の長さL2を、駆動用電極44および54のY方向における長さL1の略半分にすることによって、検出用電極45および55の変形量をより正確に検出するために必要な検出用電極45および55の面積を確保することができるので、駆動部4および5における変形量をさらに正確に検出することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、検出用電極45および55のY方向の長さL2を、駆動用電極44および54のY方向における長さL1の略半分にすることによって、駆動部4における検出用電極45の占める割合が大きくなりすぎるのを抑制することができるとともに、駆動部5における検出用電極55の占める割合が大きくなりすぎるのを抑制することができる。これにより、駆動部4における駆動用電極44の占める割合が小さくなるとともに、駆動部5における駆動用電極54の占める割合が小さくなることに起因して駆動部4および5の駆動力が小さくなるのを抑制することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、駆動用電極44と検出用電極45とを、圧電体層43の上面上に離間領域47によって所定の間隔を隔てた状態で形成するとともに、駆動用電極54と検出用電極55とを、圧電体層53の上面上に離間領域57によって所定の間隔を隔てた状態で形成することによって、駆動用電極44と検出用電極45との絶縁および駆動用電極54と検出用電極55との絶縁を確保した状態で、より容易に、駆動用電極44および検出用電極45と、駆動用電極54および検出用電極55とを同じ製造プロセスで同時に形成することができる。これにより、振動ミラー素子100をより容易に製造することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、駆動用電極44(54)と下部電極42(52)との間に電圧を印加することにより、圧電体層43(53)が撓み変形されるように構成するとともに、検出用電極45(55)において、圧電体層43(53)の撓み変形によって生じる下部電極42(52)との電位差を検出するように構成することによって、駆動用電極44(54)と検出用電極45(55)とにおいて圧電体層43(53)および下部電極42(52)を共用することができるので、駆動用電極44(54)と検出用電極45(55)とに個別に圧電体層および下部電極を設ける必要がない。これにより、振動ミラー素子100の構造を簡素化することができるとともに、振動ミラー素子100の小型化を図ることができる。また、駆動用電極44(54)と検出用電極45(55)とにそれぞれ対応する圧電体層および下部電極を個別に設けるための製造プロセスを必要としないので、振動ミラー素子100をより容易に形成することができる。
【0046】
次に、図7〜図10を参照して、上記した本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った検出感度測定について説明する。
【0047】
この検出感度測定では、実施例1、2および3として、検知用電極205の長手方向(Y方向)の長さL2を各々異ならせたカンチレバー型の検査部材200を用いて測定を行った。
【0048】
具体的には、図7に示すように、平面的に見て矩形形状を有する検査部材200の一方側を固定端になるように固定部材210によって固定する一方、他方側を自由端になるようにした。また、検査部材200は、図8に示すように、基部201および絶縁層(図示せず)と、絶縁層の上面上に形成された下部電極(図示せず)、圧電体層203(図7参照)、駆動用電極204(図7参照)および検出用電極205(図7参照)からなる圧電素子206とからなるように構成した。なお、検査部材200の長手方向(Y方向)の長さL1は、2mm(2000μm)にした。
【0049】
また、図7に示すように、平面的に見て矩形形状を有する駆動用電極204のY方向の長さは、検査部材200のY方向の長さL1と同じにした。また、駆動用電極204と所定の間隔を隔てて、平面的に見て矩形形状を有する検出用電極205を形成した。なお、駆動用電極204と検出用電極205との短手方向(X方向)の幅は同じ幅になるように構成した。
【0050】
ここで、実施例1の検査部材200では、検出用電極205のY方向の長さL2を2mm(2000μm)にした。すなわち、検出用電極205のY方向の長さL2を、駆動用電極204のY方向の長さ(検査部材200のY方向の長さ)L1と同じにした。また、実施例2の検査部材200では、検出用電極205のY方向の長さL2を1mm(1000μm)にした。すなわち、検出用電極205のY方向の長さL2を、駆動用電極204のY方向の長さL1の半分にした。なお、実施例2の検査部材200は、上記した第1実施形態の駆動部4および5に対応している。また、実施例3の検査部材200では、検出用電極205のY方向の長さL2を0.5mm(500μm)にした。すなわち、検出用電極205のY方向の長さL2を、駆動用電極204のY方向の長さL1の4分の1にした。
【0051】
そして、上記した実施例1、2および3における各々の検査部材200の下部電極(図示せず)と駆動用電極204との間に電位差が生じるように電圧を印加して、図8に示すように、圧電体層203(検査部材200)を鉛直方向(Z方向)に反るように変形させた。この際、圧電体層203が変形するのに伴って生じる下部電極(図示せず)と検出用電極205との電位差を検出電圧として検出した。
【0052】
また、検出電圧を検出するのと同時に、検査部材200の自由端側の変形量をレーザドップラー振動計220を用いて計測した。具体的には、検査部材200の上方に配置したレーザドップラー振動計220から、検査部材200の自由端側の上面にレーザ光を照射して、その反射光をレーザドップラー振動計220において計測することにより検査部材200の自由端側の変形量を求めた。そして、圧電体層203の自由端側の変形量当たりの検出電圧の大きさを検出感度として求めた。
【0053】
検出感度測定の結果としては、図9に示すように、実施例1においては、検査部材200の自由端側の変形量は57.7μmになるとともに、検出電圧は251mVになった。これにより、実施例1の検出感度は、4.4(=251/57.7)(mV/μm)になった。また、実施例2においては、検査部材200の自由端側の変形量は56.1μmになるとともに、検出電圧は235mVになった。これにより、実施例2の検出感度は、4.2(=235/56.1)(mV/μm)になった。また、実施例3においては、検査部材200の自由端側の変形量は57.7μmになるとともに、検出電圧は170mVになった。これにより、実施例3の検出感度は、2.9(=170/57.7)(mV/μm)になった。
【0054】
上記のような検出感度測定の結果から、図10に示すように、検出用電極205のY方向の長さL2を大きくすることによって、検出感度を大きくすることができることが判明した。
【0055】
また、実施例1および2では、検出感度が4mV/μmよりも大きい一方、実施例3では、検出感度が3mV/μmよりも小さくなった。これにより、実施例3は、検出感度が小さいことによって、検出用電極205が接続された図示しない電気回路などにおける不要な電位差に起因するノイズの影響を受けやすいと考えられる。すなわち、実施例3では、駆動部における変形量を正確に検出しづらいと考えられる。一方、実施例1および2では、検出感度が大きいことによって、ノイズの影響を受けにくいので、実施例3よりも駆動部における変形量をより正確に検出することができると考えられる。これにより、実施例1および2が、十分な検出感度を確保するという本発明の効果を得るのにより好ましいと考えられる。
【0056】
また、検出用電極205の長さL2は、検出感度と対数関数的な関係にあることが判明した。すなわち、検出用電極205のY方向の長さL2が検査部材200のY方向の長さ(駆動用電極204のY方向の長さ)L1の半分以上の実施例1および2の場合においては、検出用電極205の長さL2を大きくしても検出感度はあまり大きくならないことが判明した。このことから、本願発明者は、検出用電極205のY方向の長さL2を検査部材200のY方向の長さ(駆動用電極204のY方向の長さ)L1の半分にした場合でも、十分な検出感度を確保することが可能であることを見い出した。
【0057】
ここで、第1実施形態の振動ミラー素子100の駆動部4および5において駆動力を可能な限り大きくするためには、駆動用電極204を可能な限り広い領域に形成する必要がある。このため、検出用電極205を十分な検出感度を確保した状態で可能な限り小さい領域に形成するのが好ましい。これらにより、駆動力を大きくしつつ、十分な検出感度を確保することが可能な実施例2(検出用電極205の長さL2が駆動用電極204の長さL1の半分)は、実施例1(検出用電極205の長さL2が駆動用電極204の長さL1と同じ長さ)よりも検出用電極205が小さい領域に形成されていることによって、好ましいことが判明した。
【0058】
したがって、本発明の第1実施形態における駆動部4および5に対応する実施例2の検査部材200が、駆動力を大きくしつつ、十分な検出感度を確保するために最も効果的な構成であると考えられる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、図11および図12を参照して、本発明の第2実施形態による振動ミラー素子300の構造について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、駆動部304および305の略全面に渡って、駆動用電極344および354をそれぞれ形成するとともに、駆動用電極344および354の上面上に、検知用電極374を含む検知部370および検知用電極384を含む検知部380をそれぞれ形成した例について説明する。
【0060】
図11および図12に示すように、第2実施形態による振動ミラー素子300の駆動部304および305において、圧電体層343および353(図12参照)の上面上(Z1側)には、それぞれ、駆動用電極344および354が略全面に渡って形成されている。なお、圧電体層343および353は、本発明の「駆動用圧電体」の一例である。
【0061】
ここで、第2実施形態では、駆動用電極344および354の上面上には、それぞれ、長手方向(Y方向)に延びるように、矩形形状の検知部370および380が形成されている。この検知部370および380は、図12に示すように、それぞれ、絶縁体層371および381と、下部電極372および382と、圧電体層373および383と、検知用電極374および384とが、この順に下方(Z2側)から上方(Z1側)に向かって積層されている。すなわち、第1実施形態とは異なり、駆動用電極344と検知用電極374とでは、下部電極および圧電体層を共用しないとともに、駆動用電極354と検知用電極384とでは、下部電極および圧電体層を共用しないように構成されている。
【0062】
また、絶縁体層371および381は、共にポリイミドからなる。また、絶縁体層371は、駆動用電極344と下部電極372とを絶縁するために配置されているとともに、絶縁体層381は、駆動用電極354と下部電極382とを絶縁するために配置されている。また、下部電極372および382は、共にPtからなり、それぞれ、図示しない端子によって外部と電気的に接続されている。また、圧電体層373および383は共にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる。また、検出用電極374および384は共にPtまたはCr−Au合金からなる。なお、圧電体層373および383は、本発明の「検知用圧電体」の一例である。
【0063】
また、駆動用電極344および354に電圧が印加されることにより圧電体層343および353(駆動部304および305)が撓み変形した際に、検知部370および380は、それぞれ、駆動部304および305の撓み変形に伴って変形するように構成されている。これにより、検出用電極374では、圧電体層373の撓み変形によって生じた下部電極372との電位差が検出されるとともに、検出用電極384では、圧電体層383の撓み変形によって生じた下部電極382との電位差が検出されるように構成されている。
【0064】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0065】
第2実施形態では、上記のように、駆動用電極344(354)により電圧が印加されることにより圧電体層343(353)が撓み変形した際に、検出用電極374(384)において、圧電体層373(383)の撓み変形によって生じた下部電極372(382)との電位差を検出するように構成することによって、圧電体層343(353)と圧電体層373(383)とを分離することができる。これにより、圧電体層343(353)の全体に渡って駆動用電極344(354)を形成することができるので、駆動部304(305)において駆動力が小さくなるのをより抑制することができる。また、圧電体層373(383)の全体に渡って検出用電極374(384)を形成することができるので、駆動部304(305)の変形量を十分に検出することが可能な大きさに検出用電極374(384)を形成することができる。
【0066】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0067】
(第3実施形態)
次に、図13および図14を参照して、本発明の第3実施形態による振動ミラー素子400の構造について説明する。この第3実施形態では、上記第2実施形態と異なり、駆動部404の基部40の下面上に検知用電極474を含む検知部470を形成するとともに、駆動部405の基部50の下面上に検知用電極484を含む検知部480を形成した例について説明する。
【0068】
図13および図14に示すように、基部40および50の下面上(Z2側)には、それぞれ、長手方向(Y方向)に延びるように矩形形状の検知部470および480が形成されている。この検知部470および480では、図14に示すように、それぞれ、絶縁体層471および481と、下部電極472および482と、圧電体層473および483と、検知用電極474および484とが、この順に上方(Z1側)から下方(Z2側)に向かって積層されている。また、絶縁体層471および481は、共にSiO2からなる。なお、圧電体層473および483は、本発明の「検知用圧電体」の一例である。
【0069】
なお、第3実施形態のその他の構成および効果は、上記第2実施形態と同様である。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
たとえば、上記第1実施形態では、駆動部4(5)を、中央部4c(5c)から端部4d(5d)および4e(5e)に向かって連続的に幅が小さくした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図15に示す第1変形例の振動ミラー素子500のように、平面的にみて、駆動部504および505が矩形形状を有するように構成してもよい。
【0072】
また、上記第1実施形態および第1変形例では、検出用電極45(545)を、固定部6aに近い駆動部4(504)の一方端部側(X1側)の側面部4a(504a)の近傍に形成するとともに、検出用電極55(555)を、固定部6bに近い駆動部5(505)の他方端部側(X2側)の側面部5a(505a)の近傍に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図16に示す第2変形例の振動ミラー素子600のように、検出用電極645および655を、それぞれ、駆動部604および605の短手方向(X方向)の略中央に長手方向(Y方向)に延びるように形成してもよい。また、図17に示す第3変形例の振動ミラー素子700のように、検出用電極745を、固定部6aから遠い駆動部704のX2側の側面部504bの近傍にY方向に延びるように形成するとともに、検出用電極755を、固定部6bから遠い駆動部705のX1側の側面部505bの近傍にY方向に延びるように形成してもよい。
【0073】
また、上記第1実施形態では、検出用電極45および55を、それぞれ、駆動部4の中央部4cおよび駆動部5の中央部5cを境にして長手方向(Y方向)に対称になるように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図18に示す第4変形例の振動ミラー素子800のように、駆動部804に検出用電極845を設ける一方、駆動部805に検出用電極を設けないように構成してもよい。さらに、検出用電極845を駆動部804のY方向の一方側(Y1側)にのみ設けて、他方側(Y2側)には検出用電極845を設けないように構成してもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態では、検出用電極45および55の長手方向(Y方向)の長さL2を、駆動用電極44および54のY方向における長さL1の略半分にした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検出用電極の長手方向の長さは、駆動用電極の長手方向の長さの半分未満であってもよいし、駆動用電極の長手方向の長さの略半分よりも大きくてもよい。なお、検出用電極の長手方向の長さは、駆動用電極の長手方向の長さの半分以上、駆動用電極の長手方向の長さ未満であるのが、十分な検出感度を確保するために好ましい。
【0075】
また、上記第1〜第3実施形態では、ミラー部1の短手方向(X方向)の両側にそれぞれ駆動部4(304、404)および5(305、405)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ミラー部のX方向の一方側にのみ駆動部を設けてもよい。
【0076】
また、上記第1実施形態では、圧電体層43(53)の下面上に配置された下部電極42(52)を駆動部4(5)の略全面に形成するとともに、圧電体層43(53)の上面上に配置された電極を、駆動用電極44(54)と検出用電極45(55)とに分割した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、圧電体層の上面上に配置された電極を駆動部の略全面に形成するとともに、圧電体層の下面上に配置された電極を、駆動用電極と検出用電極とに分割してもよい。
【0077】
また、上記第1〜第3実施形態では、振動ミラー素子100(300、400)のミラー部1をA1およびA2方向のみ(1次元的)に傾斜させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、振動ミラー素子の外側に、A1およびA2方向と異なる方向にミラー部を傾斜および振動させることが可能な駆動部を別途設けてもよい。これにより2次元的にミラー部を傾斜および振動させることが可能である。
【0078】
また、上記第1〜第3実施形態では、圧電体層43、53、343、353、373、383、473および483が、共にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、圧電体層は、PZT以外の鉛、チタンおよびジルコニウムを主成分とした酸化物からなる圧電材料や、他の圧電材料により形成されていてもよい。たとえば、圧電体層として、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛((Pb、La)(Zr、Ti)O3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)などの圧電材料を用いてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 ミラー部
4、5、304、305、404、405、504、505、604、605、704、705、804、805 駆動部
42、52 下部電極(共通電極)
43、53 圧電体層(共通圧電体)
44、54、344、354 駆動用電極
45、55、374、384、474、484、545、555、645、655、745、755、845 検出用電極
100、300、400、500、600、700、800 振動ミラー素子
343、353 圧電体層(駆動用圧電体)
373、383、473、483 圧電体層(検知用圧電体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー部と、
前記ミラー部を駆動する駆動部とを備え、
前記駆動部には、電圧の印加により前記駆動部を変形させて駆動させるための駆動用電極と、前記駆動部の変形量を検出するための検出用電極とが配置されている、振動ミラー素子。
【請求項2】
前記検出用電極は、前記駆動用電極の長手方向に沿って延びており、
前記検出用電極の長手方向における長さは、前記駆動用電極の長手方向における長さ未満である、請求項1に記載の振動ミラー素子。
【請求項3】
前記検出用電極の長手方向における長さは、前記駆動用電極の長手方向における長さの半分以上である、請求項2に記載の振動ミラー素子。
【請求項4】
前記駆動用電極と前記検出用電極とは、同一面上に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動ミラー素子。
【請求項5】
前記駆動部は、共通圧電体と、前記共通圧電体の一方面上に配置された共通電極とを含み、
前記駆動用電極は、前記共通圧電体の他方面上の第1領域に配置されているとともに、前記検出用電極は、前記共通圧電体の他方面上の前記第1領域とは異なる第2領域に配置されており、
前記駆動部では、前記共通電極と前記駆動用電極との間に電圧を印加することにより前記共通圧電体が変形されるように構成されており、
前記検出用電極は、前記共通圧電体の変形によって生じる前記共通電極との電位差を検出するように構成されている、請求項4に記載の振動ミラー素子。
【請求項6】
前記駆動部は、前記駆動用電極に電圧が印加されることによって変形する駆動用圧電体と、前記駆動用圧電体の変形に伴って変形する検出用圧電体とを含み、
前記検出用電極は、前記検出用圧電体の変形によって生じる電圧を検出するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動ミラー素子。
【請求項1】
ミラー部と、
前記ミラー部を駆動する駆動部とを備え、
前記駆動部には、電圧の印加により前記駆動部を変形させて駆動させるための駆動用電極と、前記駆動部の変形量を検出するための検出用電極とが配置されている、振動ミラー素子。
【請求項2】
前記検出用電極は、前記駆動用電極の長手方向に沿って延びており、
前記検出用電極の長手方向における長さは、前記駆動用電極の長手方向における長さ未満である、請求項1に記載の振動ミラー素子。
【請求項3】
前記検出用電極の長手方向における長さは、前記駆動用電極の長手方向における長さの半分以上である、請求項2に記載の振動ミラー素子。
【請求項4】
前記駆動用電極と前記検出用電極とは、同一面上に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動ミラー素子。
【請求項5】
前記駆動部は、共通圧電体と、前記共通圧電体の一方面上に配置された共通電極とを含み、
前記駆動用電極は、前記共通圧電体の他方面上の第1領域に配置されているとともに、前記検出用電極は、前記共通圧電体の他方面上の前記第1領域とは異なる第2領域に配置されており、
前記駆動部では、前記共通電極と前記駆動用電極との間に電圧を印加することにより前記共通圧電体が変形されるように構成されており、
前記検出用電極は、前記共通圧電体の変形によって生じる前記共通電極との電位差を検出するように構成されている、請求項4に記載の振動ミラー素子。
【請求項6】
前記駆動部は、前記駆動用電極に電圧が印加されることによって変形する駆動用圧電体と、前記駆動用圧電体の変形に伴って変形する検出用圧電体とを含み、
前記検出用電極は、前記検出用圧電体の変形によって生じる電圧を検出するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動ミラー素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−58367(P2012−58367A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199681(P2010−199681)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
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