説明

振動制御装置

【課題】 制振手段の出力を低減することができ、小型の制振手段で実現できる効率的な振動制御装置を提供する。
【解決手段】 設置部Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部30と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御する制振手段21を有する振動制御部20とを備えた振動制御装置において、カウンタバランス部30は、荷重支持部材11に対して相対移動する第2移動手段32と、設置部Fに支点を枢支され、一端側を第2移動手段32に連結されたねじりバネ35と、ねじりバネ35の他端側と設置部Fとの間に介在されると共に、ねじりバネ35の他端側と当接位置を調整する調整手段34又は制振手段21と、を有することを特徴とする振動制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート等の搭乗部、特に移動体等に設置されるシート等の搭乗部に加わる振動を抑制、又は低減する振動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動加速度に応じて シート下の直動型電動アクチュエータを動作制御してシートに加わる振動を抑制するシート用振動制御装置がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−180202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図12(a)に示すように、シートSの支持をアクチュエータ121のみでする場合、停止状態を含め常にアクチュエータ121の出力が必要となる。また、図12(b)に示すように、シートSの支持をアクチュエータ121とトーションスプリング122でする場合、停止状態ではアクチュエータ121の出力を0とすることができるが、シートSの振動を制御する場合、トーションスプリング122のバネ力が反力となってしまい、振動制御分の出力の他にバネの反力分の出力がアクチュエータ121に必要となり、大きな出力が要求されていた。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するものであって、制振手段の出力を低減することができ、小型の制振手段で実現できる効率的な振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明は、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する制振手段を有する振動制御部とを備えた振動制御装置において、前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1移動手段を有し、前記カウンタバランス部は、前記荷重支持部に対して相対移動する第2移動手段と、前記設置部に支点を枢支され、一端側を前記第2移動手段に連結されたねじりバネと、前記ねじりバネの他端側と前記設置部との間に介在されると共に、前記ねじりバネの他端側と当接位置を調整する調整手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
また、前記調整手段は、スライド式アクチュエータであることを特徴とする。
【0007】
また、前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段又は前記制振手段を作動する制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する制振手段を有する振動制御部とを備えた振動制御装置において、前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1移動手段を有し、前記カウンタバランス部は、前記荷重支持部に対して相対移動する第2移動手段と、前記設置部に支点を枢支され、一端側を前記第2移動手段に連結されたねじりバネと、前記ねじりバネの他端側と前記設置部との間に介在されると共に、前記ねじりバネの他端側と当接位置を調整する調整手段と、を有するので自重をキャンセルすることができ、制振手段の出力を低減し小型の制振手段で実現できると共に、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がないので、小さなスペースに設置することができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、前記調整手段は、スライド式アクチュエータであるので、荷重に対する強度を強くすることができる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段又は前記制振手段を作動する制御手段を備えたので、荷重の変化に対して適切に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態における振動制御装置1を示す。図中、1は振動制御装置、10は荷重支持部、11は荷重支持部材、12は第1移動手段の一例としての第1スライダ、13は第1案内手段の一例としての第1スライダレール、20は振動制御部、21は制振手段の一例としての制振用アクチュエータ、22は検知手段の一例としての荷重センサ、23は検知手段の一例としての加速度センサ、30はカウンタバランス部、31は第2案内手段の一例としての第2スライダレール、32は第2移動手段の一例としての第2スライダ、33は第2移動手段支持部の一例としての第2スライダ支持部、34は調整手段の一例としてのプリロード調整用アクチュエータ、35はねじりバネ、Fは設置部、Sはシートである。
【0012】
振動制御装置1は、荷重支持部10により床等の設置部Fに設置され、振動制御部20で振動制御装置1上のシートS等の荷重の振動をアクティブに制御すると共に、カウンタバランス部30で荷重に対する力の釣り合いを設定し、自重をキャンセルするものである。
【0013】
荷重支持部10は、シートSを支持する荷重支持部材11、荷重支持部材11に設けた第1スライダ12及び設置部Fに設置された第1スライダレール13等を有する。荷重支持部材11は、シートSの下方に設置され、第1スライダレール13により上下方向に案内される第1スライダ12を有し、振動制御部20及びカウンタバランス部30に載置されている。第1スライダ12は、荷重支持部材11に設けられ、第1スライダレール13により上下方向に案内され、設置部Fに対して相対移動する。第1スライダレール13は、設置部Fに設置され、第1スライダ12及び荷重支持部材11を上下方向に案内する。
【0014】
振動制御部20は、ボイスコイルモータ等の制振用アクチュエータ21、ロードセル等の荷重センサ22、加速度センサ23等を有する。制振用アクチュエータ21は、下部を設置部Fに設置、上部を荷重支持部材11に当接され、荷重センサ22や加速度センサ23等の状態を検知するセンサからの信号により、上下動可能に制御される。荷重センサ22は、シートSと荷重支持部材11の間に備えられ、その検出値により主にプリロード調整用アクチュエータを制御するものである。加速度センサ23は、荷重支持部10上の加速度を検知するもので、その検出値により主に制振用アクチュエータを制御するものである。なお、本実施形態では、加速度センサ23を適用したが、速度センサや変位センサ等の荷重支持部10上の状態を検知するものを適用してもよい。
【0015】
カウンタバランス部30は、第2スライダレール31、第2スライダ32、第2スライダ支持部33、プリロード調整用アクチュエータ34、ねじりバネ35等を有する。第2スライダレール31は、荷重支持部材11に設置され、第2スライダ32を移動可能に案内する。第2スライダ32は、第2スライダ支持部33の一端に連結されると共に、第2スライダレール31に案内され、荷重支持部10に対して相対移動するものである。
【0016】
第2スライダ支持部33は、一端側を第2スライダ32に、他端側をねじりバネ35に連結する。プリロード調整用アクチュエータ34は、設置部Fとねじりバネ35の間に設置され、ねじりバネ35他端側35aを支持し、荷重センサ22や加速度センサ23等からの荷重信号により、ねじりバネ35の取付角度を変更するものである。本実施形態では、他端側35aに沿って移動可能なスライド式アクチュエータを使用する。ねじりバネ35は、コイル状の中心を回動可能に設置部Fに支持され、一端側35aを第2スライダ支持部33を介して第2スライダ32に連結し、他端側35bはプリロード調整用アクチュエータ34に支持されている。
【0017】
なお、それぞれの部材の配置は、相互に干渉せず、正常に機能すれば、様々なものを考慮できる。
【0018】
図2は、このような構造の振動制御装置1のブロック図を示す。加速度センサ23及び荷重センサ22からの入力信号を制御手段としてのECU40に入力し、制振用アクチュエータ21及びプリロード調整用アクチュエータ34を制御することで、荷重にあわせてアクティブに振動を制御する。
【0019】
次に、プリロード調整制御について説明する。図3は、プリロード調整制御のフローチャートを示す。まず、ステップ1で、振動のない停止時における荷重を荷重センサ22により検出する(ST1)。次に、ステップ2で、検出した荷重値の一定時間分をECU40に読み込む(ST2)。続いて、ステップ3で、一定時間分の荷重値から例えば平均値を計算して基準荷重値を算出する(ST3)。次に、ステップ4で、算出した基準荷重値にあわせてプリロード調整用アクチュエータ34を作動制御する(ST4)。
【0020】
図4は、プリロード調整制御前後の振動制御装置1の状態を示すもので、図4(a)はプリロード調整制御前、図4(b)はプリロード調整制御後の状態を示すものである。また、図5は、プリロード調整用アクチュエータ34及びねじりバネ35部分の拡大図である。図4(a)に示すプリロード調整制御前の状態から、図4(b)に示すように、例えば乗員PがシートSに座り、初期荷重に乗員Pの荷重が足されると、カウンタバランス部30の第2移動手段支持部33が反時計方向に回転し、ねじりバネ35に負荷がかかり、ねじりバネ35の一端側35aの角度θが変更する。そこで、プリロード調整用アクチュエータ34を作動させ、図5に示すように、ねじりバネ35の他端側35bの角度φを変更することにより、荷重とねじりバネ35による負荷とを釣り合わせる。
【0021】
図6は、荷重によるモーメントとねじりバネによるモーメントの関係を示すグラフである。横軸は水平面に対する第2スライダ支持部33及びねじりバネ35の一端側35aの角度θ、縦軸はモーメントの大きさを示す。また、M1はシートS上に何もない初期状態での荷重による第1モーメント、M1'はシートS上に人等が載置された状態での荷重による第1'モーメント、M2は初期状態でのねじりバネ35の第2モーメント、M2'はシートS上に人等が載置された状態でのねじりバネ35の第2'モーメントである。
【0022】
図6に示すように、初期状態で、第1モーメントM1と第2モーメントM2は、ほぼ釣り合いを保持しており、荷重が変化した場合でもねじりバネ35の他端側35bの水平面に対する角度φを調整することで、第1'モーメントM1'と第2'モーメントM2'の釣り合いを保持することができる。
【0023】
このように、プリロード調整用アクチュエータ34を作動させることにより、荷重がキャンセルされ、その状態から振動制御をすることができるようになる。
【0024】
次に、本実施形態の振動制御について説明する。図7は、振動制御のフローチャートを示す。まず、ステップ11で、振動時の荷重を荷重センサ22により検出する(ST11)。次に、ステップ12で、検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値と同じか比較する(ST12)。同じ場合、制振用アクチュエータ21を作動せず、振動制御を終了する。同じでない場合、ステップ13で、検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きいか判断する(ST13)。検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きい場合、ステップ14で、制振用アクチュエータ21を縮ませる(ST14)。検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より小さい場合、ステップ15で、制振用アクチュエータ21を伸ばす(ST15)。
【0025】
図8は、振動制御の状態を示すもので、図8(a)は制振用アクチュエータ21を収縮した状態、図8(b)は制振用アクチュエータ21を伸張した状態を示すものである。
【0026】
図8(a)はステップ14に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より大きい場合であり、シートS上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を収縮すると、第2スライダ32が前方に移動すると共に、カウンタバランス部30の第2スライダ支持部33が反時計方向に回転する。この時、ねじりバネ35の一端側35aと他端側35bの角度が変化し小さくなるが、あらかじめプリロード調整を実行しているので、ねじりバネ35の反力は小さいものとなり、制振用アクチュエータ21の出力も小さく抑えることができる。
【0027】
図8(b)はステップ15に対応する検出した荷重値がプリロード調整制御で求めた基準荷重値より小さい場合であり、シートS上の振動を0にするため制振用アクチュエータ21を伸張すると、第2スライダ32が後方に移動すると共に、カウンタバランス部30の第2スライダ支持部33が時計方向に回転する。この時、ねじりバネ35の一端側35aと他端側35bの角度が変化し大きくなるが、あらかじめプリロード調整を実行しているので、ねじりバネ35の反力は小さいものとなり、アクチュエータの推力も小さく抑えることができる。
【0028】
図9は、本実施形態の振動制御装置1を用いた場合と、図12に示す従来技術の場合とをシミュレーションで比較した結果を示す。シミュレーションは、振幅25mm周期750mmの波状路を速度70km/hで走行する条件で、荷重の振動を0にするために必要な制振用アクチュエータを求めた。
【0029】
図9(a)は、図12(a)に示すように、シートの支持をアクチュエータのみでする場合、図9(b)は、図12(b)に示すように、シートの支持をアクチュエータとねじりバネでする場合、図9(c)は、本実施形態の場合である。
【0030】
このように、荷重とねじりバネ35による負荷は、ほぼ釣り合い状態を保持することができるので、制振用アクチュエータ21の出力を小さくすることができる。
【0031】
図10は、第2実施形態を示すもので、第1実施形態で用いたスライダ式のプリロード調整用アクチュエータ34に代えて、カム式のプリロード調整用アクチュエータ34を適用したものである。
【0032】
また、図11は、第3実施形態を示すもので、第1実施形態で用いたスライダ式のプリロード調整用アクチュエータ34に代えて、伸縮式のプリロード調整用アクチュエータ34を適用したものである。
【0033】
このように、本実施形態の振動制御装置1は、設置部Fに設置された荷重支持部10と、荷重支持部10と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部30と、荷重支持部10の設置部Fに対する振動を制御する制振用アクチュエータ21を有する振動制御部20とを備えた振動制御装置1において、荷重支持部10は、設置部Fに対して相対移動する第1スライダ13を有し、カウンタバランス部30は、荷重支持部10に対して相対移動する第2スライダ32と、設置部Fに支点を枢支され、一端側35aを第2スライダに連結されたねじりバネ35と、ねじりバネ35の他端側35bと設置部Fとの間に介在されると共に、ねじりバネ35の他端側35bとの当接位置を調整する調整手段34と、を有するので、ねじりバネ35の自重をキャンセルすることができ、アクチュエータの出力を低減し小型のアクチュエータで実現できると共に、カウンタウエイト等の重量物を適用する必要がないので、小さなスペースに設置することができる。
【0034】
また、調整手段34は、スライド式アクチュエータであるので、荷重に対する強度を強くすることができる。
【0035】
また、荷重支持部10上の状態を検知する加重センサ22又は加速度センサ23等を備え、荷重センサ22又は加速度センサ23等で検知した状態に応じてプリロード調整用アクチュエータ34又は制振用アクチュエータ21を作動するECU40を備えたので、荷重の変化に対して適切に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図2】振動制御装置のシステム構成を示したブロック図である。
【図3】プリロード調整制御のフローチャートを示す図である。
【図4】プリロード調整制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図5】プリロード調整用アクチュエータ及びねじりバネ部分の拡大図である。
【図6】荷重によるモーメントとねじりバネによるモーメントの関係を示すグラフである。
【図7】振動制御のフローチャートを示す図である。
【図8】振動制御時の振動制御装置の状態を示す図である。
【図9】本実施形態の振動制御装置と従来の技術とを比較したシミュレーションを示す図である。
【図10】本実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図11】本実施形態の振動制御装置を示す図である。
【図12】従来の技術を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1…振動制御装置、10…荷重支持部、11…荷重支持部材、12…第1移動手段(第1スライダ)、13…第1案内手段(第1スライダレール)、20…振動制御部、21…制振用アクチュエータ(制振手段)、22…荷重センサ(検知手段)、23…加速度センサ(検知手段)、30…カウンタバランス部、31…第2案内手段(第2スライダレール)、32…第2移動手段(第2スライダ)、33…第2移動手段支持部、34…プリロード調整用アクチュエータ(調整手段)、35…ねじりバネ(付勢手段)、40…ECU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置部に設置された荷重支持部と、前記荷重支持部と連結され荷重と釣り合う負荷を与えるカウンタバランス部と、前記荷重支持部の前記設置部に対する振動を制御する制振手段を有する振動制御部とを備えた振動制御装置において、
前記荷重支持部は、前記設置部に対して相対移動する第1移動手段を有し、
前記カウンタバランス部は、前記荷重支持部に対して相対移動する第2移動手段と、前記設置部に支点を枢支され、一端側を前記第2移動手段に連結されたねじりバネと、前記ねじりバネの他端側と前記設置部との間に介在されると共に、前記ねじりバネの他端側と当接位置を調整する調整手段と、を有することを特徴とする振動制御装置。
【請求項2】
前記調整手段は、スライド式アクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載の振動制御装置。
【請求項3】
前記荷重支持部上の状態を検知する検知手段を備え、前記検知手段で検知した状態に応じて前記調整手段又は前記制振手段を作動する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の振動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−223810(P2008−223810A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59534(P2007−59534)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】