説明

排ガス処理装置、及び排ガス処理方法

【課題】ガラス溶融炉から排出される排ガスからホウ素酸化物及び酸化硫黄を略完全に除去するとともに、排ガス処理に伴って回収したホウ素酸化物と石膏との比率を所望の範囲に制御することを可能にする排ガス処理装置、及び排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】不純物を含有する排ガスが導入される第一処理塔1と、水噴霧手段3と、第一処理液の水素イオン濃度を計測する第一pHセンサ4と、第一処理ガスが導入される第二処理塔5と、アルカリ液噴霧手段6と、第二処理液の水素イオン濃度を計測する第二pHセンサ7と、第二処理液の少なくとも一部を第一処理塔に搬送して第一処理液と混合する送液手段8と、pHに基づいて、アルカリ液噴霧手段6、及び送液手段8の動作を制御する制御手段9と、不純物の一部を硫酸塩として回収する回収手段10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス溶融炉の排ガスを浄化する排ガス処理装置、及び排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板ガラス、ガラス繊維、ディスプレイ用ガラス、電子部品用ガラス、建築用ガラス等の各種ガラス製品は、ガラス原料やカレット、マーブル等の固体ガラス素材(以下、ガラス原料等とする)をガラス溶融炉で加熱して溶融ガラスとし、これを成形機により目的のガラス製品の形状に成形することで製造される。
【0003】
ガラス溶融炉の加熱方式の一つとして、バーナー加熱方式がある。バーナー加熱方式は、都市ガス、重油等の化石燃料を燃焼させることにより、ガラス溶融炉内部を加熱する方式である。バーナー加熱方式で使用する化石燃料は比較的安価であり、加熱工程の管理も容易である。一方、化石燃料には不純物を多く含むものがある。例えば、重油は、炭化水素以外にも硫黄分(SO)等の不純物が多く含まれており、重油を燃焼することにより、これら不純物が排ガス中に放出される。また、ガラス原料等にもホウ素成分や硫黄成分が含まれているため、ガラス熔融炉内でガラス原料等を加熱し、溶融すると、ホウ素成分や硫黄成分は酸化物である硫黄酸化物やホウ素酸化物となって揮散し、排ガス中に混入する。硫黄酸化物及びホウ素酸化物が主たる不純物として含まれている排ガスは、大気汚染防止法等で定められている環境基準を満たさなければ大気中に直接放出することはできない。そこで、従来から排ガスに含まれる不純物を脱硫装置等によって除去することが行われている。ガラス溶融炉の排ガスに含まれる硫黄酸化物及びホウ素酸化物を除去するプロセスは、一般には以下のように行われる。
【0004】
ガラス溶融炉で発生した不純物を含有する排ガスは、第一処理塔及び第二処理塔を備えた排ガス処理装置によって処理される。先ず、排ガスは、第一処理塔に導入され、水が噴霧される。これにより、排ガス中の硫黄酸化物が水に吸収されて液体硫酸が生成し、第一処理塔の底部に貯留される。その結果、排ガス中の硫黄酸化物が低減される。また、水の噴霧により、排ガス中のホウ素酸化物も同時に除去される。次いで、排ガスは、第二処理塔に送られ、水酸化カルシウム(Ca(OH))水溶液又は水酸化カルシウムスラリーが噴霧される。これにより、第一処理塔では除去しきれずに排ガス中に残存していた硫黄酸化物は水酸化カルシウムと反応し、石膏(CaSO)となって第二処理塔の底部に貯留される。その結果、排ガス中から硫黄酸化物が略完全に取り除かれる。この際、排ガス中に残存するホウ素酸化物も略完全に取り除かれる。そして、第一処理塔の底部の硫酸を抜き出して水酸化カルシウム等で中和し、その中和液に含まれる石膏とホウ素酸化物との混合物(混合スラリー)を固液分離し、固形分を脱水する。得られた固体は、石膏とホウ素酸化物とを含有する混合物であるが、処理対象の排ガスの性状によって組成が変動するため、再利用には適さず、そのまま処分される。
【0005】
ガラス溶融炉の排ガスを処理すると、上述のように、化石燃料やガラス原料等に由来するホウ素酸化物と石膏との混合物が生成し、その処分が問題となる。一方、ホウ素酸化物(ホウ素成分)及び石膏(硫黄成分)は、元来はガラス原料等に必要な成分である。そこで、排ガス処理によって得られたホウ素酸化物及び石膏をガラス原料等として再利用することができれば、効率的且つ経済的なガラス製品の製造設備を構築することができ、環境にも良い。しかしながら、ガラス製品の性能を所定のスペックに収め、さらにガラス原料等を所望のパターンで溶融させるためには、ガラス原料等に含まれるホウ素酸化物と硫黄酸化物との比率が所定範囲内に収まっていることが重要である。従って、排ガスから回収したホウ素酸化物及び石膏を再利用するためには、回収固体の組成(すなわち、混合固体中のホウ素酸化物と石膏との比率)を所定の範囲内に制御することが必要となる。
これに関し、化石燃料を燃焼させて生じた排ガスを処理する技術として、例えば、特許文献1に開示される処理装置、及び特許文献2に開示される処理方法が従来公知となっている。
【0006】
特許文献1は、第1スプレー塔と第2スプレー塔とを直列的に配置し、SOとBとを含むガラス溶融炉の排ガスに対し、先ず、第1スプレー塔でスプレー水及びスプレー液によりBを除去し、次いで、第2スプレー塔でCaCO又はCa(OH)のスプレー液によりSOを石膏スラリーとして除去している。つまり、第1スプレー塔及び第2スプレー塔において、B及びSOをそれぞれ個別に除去している。さらに、第1スプレー塔の循環液の一部を抜き出し、中和剤を投入して溶解しているBを固形物として析出させ、第2スプレー塔からの石膏スラリーと混合、濃縮して、混合固形物として回収している(実施例を参照)。
【0007】
特許文献2では、ホウ素酸化物と石膏とを分離する方法が開示されている。具体的には、石炭燃焼排ガスをカルシウム化合物含有吸収液で処理し、その処理液のpHを5に調整することにより、石膏を析出させ、石膏とホウ素酸化物とを分離している(図1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−171731号公報
【特許文献2】特開平08―052479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に記載の技術は、排ガス中の不純物の回収を、全ての石膏とホウ素酸化物とを混合した状態で行っている。このため、ホウ素酸化物に対して石膏の量が過多となり易い。従って、回収された混合固体をガラス原料等として再利用しようとした場合、ガラス原料等を所望のパターンで溶融させることが困難であり、結果として、所望のガラス製品の性能を得ることはできない。
【0010】
一方、特許文献2に記載の技術は、ホウ素酸化物から完全に石膏を除去するものである。このため、特許文献1とは反対に、ホウ素酸化物に対して石膏の量が過少となり易い。従って、ガラス原料等を所望のパターンで溶融させることが困難であり、やはり、所望のガラス製品の性能を得ることはできない。
【0011】
このように、現状では、化石燃料を燃焼させて加熱を行うバーナー加熱方式を採用したガラス溶融炉においては、排ガスを確実に処理するとともに、その処理工程において得られた固形物を有効に再利用可能にする排ガス処理技術は未だ開発されていない。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ガラス溶融炉から排出される排ガスからホウ素酸化物及び硫黄酸化物を略完全に除去するとともに、排ガス処理に伴って回収した混合固体におけるホウ素酸化物と硫酸塩(例えば、石膏)との比率を所望の範囲に制御することを可能にする排ガス処理装置、及び排ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明に係る排ガス処理装置の特徴構成は、
ガラス溶融炉の排ガスを浄化する排ガス処理装置であって、
前記ガラス溶融炉の内部で発生した硫黄酸化物及びホウ素酸化物を不純物として含有する排ガスが導入される第一処理塔と、
前記第一処理塔の内部に水を噴霧する水噴霧手段と、
前記第一処理塔に貯留される前記不純物の一部が吸収された第一処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第一pHセンサと、
前記第一処理塔で処理された第一処理ガスが導入される第二処理塔と、
前記第二処理塔の内部にアルカリ液を噴霧するアルカリ液噴霧手段と、
前記第二処理塔に貯留される前記不純物の残部が吸収された第二処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第二pHセンサと、
前記第二処理塔で処理された第二処理ガスを外部に排出する排気手段と、
前記第二処理液の少なくとも一部を前記第一処理塔に搬送して前記第一処理液と混合する送液手段と、
前記第二pHセンサ、及び第一pHセンサで計測したpHに基づいて、前記アルカリ液噴霧手段、及び前記送液手段の動作を制御する制御手段と、
前記第二処理液及び前記第一処理液の少なくとも一方から前記不純物の一部を硫酸塩として回収する回収手段と、を備えたことにある。
【0014】
ガラス溶融炉から排出された排ガスには、硫黄酸化物やホウ素酸化物が含まれており、これら不純物を除去するために、排ガス処理装置が用いられる。ここで、本発明に係る排ガス処理装置では、排ガスを処理するための第一処理塔及び第二処理塔を備え、それぞれの塔は、水噴霧手段及びアルカリ液噴霧手段を有するとともに、いずれの塔にも処理液の水素イオン濃度(pH)を計測するためのpHセンサが備えられている。排ガス処理装置は、さらに、pHセンサで計測したpHに基づいて、水噴霧手段及びアルカリ液噴霧手段を制御する制御手段を有しており、第一処理塔及び第二処理塔の処理液のpHを適宜調整することにより、処理液へのホウ素酸化物及び硫酸塩の溶解量を制御することができる。
さらに、本発明に係る排ガス処理装置は、第二処理液の少なくとも一部を第一処理塔に搬送して第一処理液と混合する送液手段と、第一処理塔及び第二処理塔の処理液の少なくとも一方から不純物の一部を硫酸塩として回収する回収手段とを備えている。従って、第一処理液に含まれる硫酸塩の量を制御することができるため、処理液に含まれるホウ素酸化物と硫酸塩との比率を調整することができる。これにより、ガラス溶融炉の排ガスを確実に処理するとともに、当該排ガスからガラス原料等に再利用可能な硫酸塩含有ホウ素酸化物の混合物を得ることができる。
【0015】
本発明に係る排ガス処理装置において、
前記制御手段は、前記第二処理液のpHが5〜6となるように、前記アルカリ液噴霧手段の動作を制御することが好ましい。
【0016】
制御手段は、第二処理液のpHに基づいて、アルカリ噴霧手段からのアルカリ溶液の噴霧量を調整することができ、第二処理液のpHを5〜6に維持することができる。これにより、排ガス中から略完全に硫黄酸化物を除去するとともに、第二処理液中のホウ素酸化物の析出を確実に抑制することができ、後段階において略純粋な硫酸塩の回収を行うことができる。
【0017】
本発明に係る排ガス処理装置において、
前記制御手段は、前記第一処理液のpHが3〜4となるように、前記送液手段の動作を制御することが好ましい。
【0018】
制御手段は、第一処理液のpHに基づいて、第二処理塔の第二処理液の送液量を調整することにより、第一処理液のpHを3〜4に維持することができる。これにより、第一処理液中のホウ素酸化物の析出を確実に抑制することができることから、後段階で略純粋な硫酸塩を回収することが可能となるとともに、ガラス原料等として回収されるホウ素酸化物と硫酸塩との比率を適切に調節することができる。
【0019】
本発明に係る排ガス処理装置において、
前記第一処理液のpHを7〜8に調整する中和手段を備え、
前記回収手段は、前記第一処理液を中和する前又はその途中において、前記第一処理液から前記硫酸塩を回収することが好ましい。
【0020】
中和手段は、第一処理液のpHを7〜8に調整することにより、ホウ素酸化物を析出させることができる。この中和手段による第一処理液の中和又はその途中において、回収手段が第一処理液から硫酸塩を回収することにより、略純粋な硫酸塩が所定量抜き出され、ガラス原料等に再利用可能な硫酸塩含有ホウ素酸化物の混合固体を得ることができる。
【0021】
上記課題を解決するための本発明に係る排ガス処理方法の特徴構成は、
ガラス溶融炉の排ガスを浄化する排ガス処理方法であって、
前記ガラス溶融炉の内部で発生した硫黄酸化物及びホウ素酸化物を不純物として含有する排ガスに水を噴霧する第一処理工程と、
前記第一処理工程で生成した前記不純物の一部が吸収された第一処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第一pH計測工程と、
前記第一処理工程を終えた第一処理ガスにアルカリ液を噴霧する第二処理工程と、
前記第二処理工程で生成した前記不純物の残部が吸収された第二処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第二pH計測工程と、
前記第二処理工程を終えた第二処理ガスを外部に排出する排気工程と、
前記第二処理液の少なくとも一部を前記第一処理液に混合する混合工程と、
前記第二pH計測工程、及び前記第一pH計測工程で計測したpHに基づいて、前記第二処理工程における前記アルカリ液の噴霧量、及び前記混合工程における前記第二処理液の混合量を調整する調整工程と、
前記第二処理液及び前記第一処理液の少なくとも一方から前記不純物の一部を硫酸塩として回収する回収工程と、を包含することである。
【0022】
ガラス溶融炉から排出された排ガスには、硫黄酸化物やホウ素酸化物が含まれている。ここで、本発明に係る排ガス処理方法では、排ガスに水を噴霧する第一処理工程と、第一処理工程で処理された第一処理液のpHを計測する第一pH計測工程と、第一処理工程で処理された第一処理ガスにアルカリ液を噴霧する第二処理工程と、第二処理工程で処理された第二処理液のpHを計測する第二pH計測工程とを包含し、また、調整工程においては、第二pH計測工程及び第一pH計測工程で計測したpHに基づいて、第二処理工程におけるアルカリ液の噴霧量を調整している。これにより、第一処理液及び第二処理液のpHを適宜調整することができる。その結果、処理液へのホウ素酸化物及び硫酸塩の溶解量を制御することができる。
さらに、本発明に係る排ガス処理方法は、第二処理液の少なくとも一部を第一処理液に混合する混合工程と、第二pH計測工程及び第一pH計測工程で計測したpHに基づいて、第二処理工程におけるアルカリ液の噴霧量及び混合工程における第二処理液の混合量を調整する調整工程と、第二処理液及び前記第一処理液の少なくとも一方から前記不純物の一部を硫酸塩として回収する回収工程とを包含する。従って、第一処理液に含まれる硫酸塩の量を制御することができるため、処理液に含まれるホウ素酸化物と硫酸塩との比率を調整することができる。これにより、ガラス溶融炉の排ガスを確実に処理するとともに、当該排ガスからガラス原料等に再利用可能な硫酸塩含有ホウ素酸化物の混合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る排ガス処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の排ガス処理装置、及び排ガス処理方法に関する実施形態を図1に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0025】
<排ガス処理装置>
図1は、本発明の実施形態に係るガラス溶融炉の排ガスを浄化する排ガス処理装置100の全体構成を示す概略図である。「背景技術」の欄で述べたように、ガラス原料等には、ホウ素成分及び硫黄成分が含まれている。これらの成分は、ガラス溶融炉においてガラス原料等が溶融する際、排ガス中に酸化物として揮散する。このため、ガラス溶融炉の排気ガス中には、硫黄酸化物やホウ素酸化物が主たる不純物として含まれている。また、硫黄酸化物は化石燃料の不純物としても存在し、化石燃料を燃焼させることにより発生する。
本発明に係る排ガス処理装置は、ガラス溶融炉の排ガスを処理するとともに、当該排ガスから硫黄酸化物及びホウ素酸化物の混合物をガラス原料等に適した所望の状態で回収し、回収混合物をガラス原料等として再利用することを可能にする。
【0026】
図1に示される本発明に係る排ガス処理装置100は、ガラス溶融炉(図示せず)から排出される排ガスを導入し、排ガス中の硫黄酸化物及びホウ素酸化物を主として処理する第一処理塔1と、第一処理塔内に水を噴霧する水スプレー(水噴霧手段)3と、水噴霧により第一処理塔に貯留される不純物を含む第一処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第一pHセンサ4と、第一処理塔で処理された第一処理ガスが導入される第二処理塔5と、第二処理塔内にアルカリ液を噴霧するアルカリ液スプレー(アルカリ液噴霧手段)6と、アルカリ液噴霧により第二処理塔に貯留される不純物の残部を含む第二処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第二pHセンサ7と、第二処理液の少なくとも一部を第一処理塔に搬送して第一処理液と混合する送液ポンプ(送液手段)8と、第二pHセンサ及び第一pHセンサで計測したpHに基づいて、アルカリ液スプレー6、及び送液ポンプ8の動作を制御するコンピュータ(制御手段)9と、第二処理液及び第一処理液の少なくとも一方から不純物の一部を硫酸塩として回収する遠心分離機(回収手段)10とから構成される。
【0027】
先ず、本発明に係る排ガス処理装置100の排ガスに含まれる硫黄酸化物及びホウ素酸化物を主成分とする不純物の除去について説明する。ガラス溶融炉と第一処理塔1とを連絡する配管51には排ガス導入ブロア2が設けられており、ガラス溶融炉で発生した不純物を含む排ガスは、排ガス導入ブロア2を作動させて第一処理塔1に導入される。第一処理塔1には、水スプレー3が備え付けられている。水スプレー3から水が噴霧されることにより、排ガスに含まれている硫黄酸化物及びホウ素酸化物が水に溶解し、硫酸及びホウ素酸化物の混合液として第一処理塔1に貯留される。ここで、第一処理塔1に貯留される硫酸及びホウ素酸化物の混合液を抜き出して、第一処理塔1内に噴霧する水に混合するようにしてもよい。これにより、第一処理塔1に添加する水の総量を減らすことができるので、酸液処理の負担が軽減する。
【0028】
水スプレー3は、排ガスに対して水を均等に噴霧させるため、第一処理塔1の内部壁面に等間隔で複数箇所設けられることが好ましい。これにより、排ガス中の硫黄酸化物及びホウ素酸化物を噴霧した水に効率的に吸収させ、処理することができる。
【0029】
第一処理塔1は硫酸等の強酸性の液が溜められるため、内部壁面を耐食性に優れた素材によりライニングしておくことが好ましい。そのような耐食性素材として、例えば、フッ素樹脂、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)、ガラス、チタン鋼、ステンレス鋼(SUS316等)、ハステロイ(登録商標)等が挙げられる。耐食性ライニングにより、第一処理塔1の内部壁面を防護し、メンテナンスの頻度を減らすことができる。
【0030】
第一処理塔1で処理された第一処理ガスは、第二処理塔5に送られて二段目の処理が行われる。このため、第一処理塔1と第二処理塔5との間には、ガス搬送管52が設けられている。第一処理塔1には硫酸等の酸液が溜められるため、ガス搬送管52は第一処理塔1の液面よりも上方に設けられる。なお、後述する第二処理塔5にもアルカリ液や酸液が溜められるため、ガス搬送管52は第二処理塔5の液面よりも上方に設けられる。
【0031】
第二処理塔5に搬送された第一処理ガスは、当該第一処理ガス中に残留する硫黄酸化物及びホウ素酸化物を主成分とする不純物が略完全に除去される。第二処理塔5には、アルカリ液スプレー6が備え付けられている。アルカリ液スプレー6からアルカリ液が噴霧されることにより、第一処理ガスに含まれている硫黄酸化物及びホウ素酸化物がアルカリ成分と反応し、硫酸塩及びホウ素酸化物の混合液として第二処理塔5に貯留される。ここで、第二処理塔5に貯留される硫酸塩及びホウ素酸化物の混合液を抜き出して、第二処理塔5内に噴霧するアルカリ液に混合するようにしてもよい。これにより、第二処理塔5内の混合液が十分に攪拌されるので、生成した石膏が第二処理塔5の底部に滞留したり、配管に詰まることが防止される。
【0032】
アルカリ液を構成するアルカリ成分としては、水酸化カルシウム(Ca(OH))が代表的であり、この場合、水酸化カルシウム水溶液又は水酸化カルシウムスラリーとして噴霧される。その結果、排ガス中の硫黄酸化物は水酸化カルシウムと反応してCaSO(石膏)を生成し、排ガス中から除去され、硫黄酸化物濃度を環境基準値以下にすることができる。アルカリ液を構成する他のアルカリ成分として、例えば、炭酸カルシウム(CaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)等を使用することも可能である。ナトリウムを含有するアルカリ液を使用する場合、回収される硫酸塩はNaSO(芒硝)となる。
【0033】
アルカリ液スプレー6は、第一処理ガスに対してアルカリ液を均等に噴霧させるため、第二処理塔5の内部壁面に等間隔で複数箇所設けられることが好ましい。これにより、第一処理ガス中の硫黄酸化物及びホウ素酸化物を噴霧したアルカリ液に効率的に吸収させ、処理することができる。第二処理塔5は酸性の液が溜められ、且つアルカリ液の噴霧に晒されるため、内部壁面を耐食性に優れた素材によりライニングしておくことが好ましい。そのような耐食性素材は、前述した第一処理塔1で使用可能な耐食性素材と同等である。耐食性ライニングにより、第二処理塔5の内部壁面を防護し、メンテナンスの頻度を減らすことができる。
【0034】
第二処理塔5には、最終処理された浄化ガス(第二処理ガス)を外部に排出する排気管(排気手段)54が接続されている。排気管54は、第二処理塔5から図示しない外部排気口に連絡している。また、第二処理塔5で生成した第二処理液は、その少なくとも一部が第一処理塔1に搬送され、第一処理塔1の第一処理液と混合される。このため、第一処理塔1と第二処理塔5との間には、液搬送管55及び送液ポンプ8が設けられている。第二処理液の搬送量は、液搬送管55に設けられたバルブ56の開度や、送液ポンプ8の動作量で調整することができる。
【0035】
次に、ガラス原料等として用いることができるガラス溶融炉の排ガスに含まれるホウ素酸化物及び硫黄酸化物の回収について説明する。ここでは、説明の便宜上、アルカリ液として水酸化カルシウム水溶液を用いるものとする。
【0036】
前述のように、従来技術では、ガラス溶融炉の排ガスに含まれる硫黄酸化物及びホウ素酸化物をガラス原料等に再利用するという技術思想はなく、排ガス処理によって生成した石膏及びホウ素酸化物は混合された状態で回収することが一般的であった。本発明に係る排ガス処理装置100は、第一処理塔1で生成する第一処理液、及び第二処理塔5で生成する第二処理液のpHを制御することにより、他の用途で再利用可能な略純粋な石膏、並びに、ガラス原料等として再利用可能な所望量の石膏を含有する石膏含有ホウ素酸化物を回収することができる。各液のpH制御は、コンピュータ9を用いて実行される。コンピュータ9は、第一pHセンサ4及び第二pHセンサ7で計測されたpHに基づいて、アルカリ液スプレー6及び送液ポンプ8の動作を制御する。コンピュータ9は、水酸化カルシウム水溶液の投入量及び第二処理液の第一処理塔1への送液量を調整することにより、第一処理液のpHが強酸性となることを防ぎ、第一処理塔1の腐食を防止するとともに、ホウ素酸化物が第一処理液中及び第二処理液中で析出することを防止している。
【0037】
コンピュータ9は、第二pHセンサ7のpH計測値に基づいて、第二処理液のpHが5〜6となるように、アルカリ液スプレー6の噴霧量を制御することが好ましい。これにより、後述する第二処理液中に存在するホウ素酸化物の析出を防止できるため、略純粋な石膏を回収することが可能となる。さらに、コンピュータ9は、第一pHセンサ4の値に基づいて、第一処理液のpHが3〜4となるように、送液ポンプ8の動作量を制御することが好ましい。これにより、後述する第二処理液中に存在するホウ素酸化物の析出を防止できるため、略純粋な石膏を回収することが可能となる。なお、本実施形態では制御手段としてコンピュータ9を使用しているが、コンピュータ9による制御の代わりに、同様の操作を手動で行っても構わない。
【0038】
本実施形態の排ガス処理装置100は、第二処理液及び第一処理液の少なくとも一方から不純物の一部を石膏として回収する回収手段としての遠心分離機10を備えている。図1において、遠心分離機10は第一処理塔1及び第二処理塔5の双方に記載されているが、少なくともいずれか一方に設けられていればよい。すなわち、遠心分離機10により、第一処理塔1及び/又は第二処理塔5から石膏を回収することができる。
【0039】
第二処理塔5において、第一処理ガスへの水酸化カルシウム水溶液の噴霧により生成した石膏スラリーは、少なくともその一部が遠心分離機10に導入され、固体である略純粋な石膏が回収される(固体回収1)。なお、第二処理塔5に貯留される硫酸塩及びホウ素酸化物の混合液を抜き出し、第二処理塔5内に噴霧するアルカリ液と混合する場合は、抜き出した硫酸塩及びホウ素酸化物の混合液を適宜配分し、混合液の一部をアルカリ液スプレー6に導入するとともに、混合液の残部に対して固体回収1の処理を実行する。固体回収1の後に残ったホウ素を含有する液体は、第二処理塔5に戻される。
【0040】
第一処理塔1において、第二処理塔5から適量搬送された石膏スラリーは、少なくともその一部が遠心分離機10に導入され、固体である略純粋な石膏が回収される(固体回収2)。なお、第一処理塔1に貯留される硫酸及びホウ素酸化物の混合液を抜き出し、第一処理塔1内に噴霧する水と混合する場合は、抜き出した硫酸及びホウ素酸化物の混合液を適宜配分し、混合液の一部を水スプレー3に導入するとともに、混合液の残部に対して固体回収2の処理を実行する。固体回収2の後に残ったホウ素を含有する液体は、後述の中和タンク21に導入されるが、再度第一処理塔1に戻すことも可能である。
【0041】
ここで、石膏とホウ素酸化物との混合物をガラス原料等として用いる場合、両者の混合比を所定の比率とする必要がある。従って、石膏とホウ素酸化物とを所定比率で含有する混合固形物を得るために、第一処理液及び/又は第二処理液から一定量の石膏スラリーを予め抜き出した後、残りの液を水酸化カルシウム等により中和してホウ素酸化物を析出させ、混合スラリーを生成する。この混合スラリーを遠心分離することにより、ガラス原料等として適切な石膏含有ホウ素酸化物が得られる。先に抜き出した石膏スラリーは、酸性条件下で回収されるため、遠心分離により略純粋な石膏を得ることができる。
【0042】
第二処理液から一定量の石膏を回収する場合、第二処理塔5からX(kg)の第二処理液(石膏スラリー)が遠心分離機10に導入され、石膏として回収される(固体回収1)。一方、第二処理塔5からY(kg)の第二処理液が第一処理塔1に送液され、第一処理液中のpHを一定に維持する。第一処理塔1の第一処理液は中和タンク21に抜き出され、中和剤22によりpHを7〜8に調整され、ホウ素酸化物を析出させる。中和剤としては、前述のアルカリ液と同じものを使用することが好ましい。中和タンク21及び中和剤22により、中和手段20が構成される。中和手段20により第一処理液のpHが7〜8に調整されると、液中にホウ素酸化物が析出し、石膏とホウ素酸化物との混合スラリーが形成される。混合スラリーは遠心分離機23に導入され、石膏とホウ素酸化物とを含有する混合固体が回収される。この混合固体は、ホウ素酸化物と石膏との比率が適切に調整されているため、ガラス原料等として再利用することができる。
【0043】
第一処理液から一定量の石膏を回収する場合、第二処理液は、第一処理液中のpHを一定に維持するために第一処理塔1に送液される。第一処理液から石膏スラリーの一部が抜き出され、遠心分離機10により石膏が回収された後(固体回収2)、第一処理液は第一処理塔1から中和タンク21に抜き出され、次いで、中和剤22が添加される。これにより、液のpHが7〜8に調整され、ホウ素酸化物が析出し、石膏とホウ素酸化物との混合スラリーが形成される。混合スラリーは、遠心分離機23に導入され、混合固体が回収される。この混合固体は、ホウ素酸化物と石膏との比率が適切に調整されているため、ガラス原料等として再利用することができる。
【0044】
石膏の回収は、第一処理液及び第二処理液のいずれか一方から行ってもよいし、第一処理液及び第二処理液の両方から行っても構わない。また、中和タンク21での第一処理液のpH調整の途中において発生した石膏を、中和タンク21から回収しても構わない。ガラス溶融炉からの排ガスの性状は、ガラス溶融炉の操業条件やガラス原料等の組成によって変化し得るため、排ガスの状態に合わせて、石膏の回収位置及び回収タイミングを工夫することにより、石膏をより効率的且つ確実に回収することが可能となる。また、本実施形態では石膏の回収に遠心分離機10、23を使用しているが、シックナー等の沈降的手法や、フィルタープレス等の濾過的手法を採用することも可能である。
【0045】
<排ガス処理方法>
次に、上記実施形態に係る排ガス処理装置を使用して行う本発明の排ガス処理方法について、図面に基づき詳述する。ガラス溶融炉の排ガスは、硫黄酸化物及びホウ素酸化物を主たる不純物として含有している。第一処理塔1において、排ガスに水を噴霧する第一処理工程を実行し、これにより、一部の硫黄酸化物及び大部分のホウ素酸化物が除去される。ここで、硫黄酸化物及びホウ素酸化物は、硫酸とホウ素酸化物の混合液として除去され、第一処理塔1の底部に第一処理液として溜められる。第一処理液は、第一pH計測工程において、第一pHセンサ4によりpH値が計測される。なお、第一処理工程では、硫黄酸化物及びホウ素酸化物は完全には除去されず、一部は第一処理ガス中に残留している。そこで、第一処理ガスは、第二処理塔5に送られる。
【0046】
第二処理塔5において、第一処理ガスにアルカリ液を噴霧する第二処理工程を実行し、これにより、第一処理ガス中の硫黄酸化物及びホウ素酸化物が略完全に除去される。アルカリ液としては、先の「排ガス処理装置」において説明した水酸化カルシウム(Ca(OH))水溶液等が用いられる。水酸化カルシウムを使用した場合、排ガス中の硫黄酸化物及びホウ素酸化物は、石膏又は石膏含有ホウ素酸化物として回収され、不純物濃度は環境基準値以下にまで低減される。第二処理工程を終えた第二処理ガス(浄化ガス)は、排気工程により外部に排出される。除去された硫黄酸化物及びホウ素酸化物は、第二処理塔5の底部に第二処理液として一旦溜められる。第二処理液は、第二pH計測工程において、第二pHセンサ7によりpH値が計測される。
【0047】
第二処理塔でのアルカリ液の噴霧量は、調整工程において、第二pH計測工程で計測された第二処理液のpHに基づき、適切に調整される。ここで、アルカリ液の噴霧量は、第二処理液のpHが5〜6となるように調整されることが好ましい。これにより、後工程における純粋な固体石膏の回収が可能となる。
【0048】
第二処理液の少なくとも一部が、混合工程において、第一処理液に混合される。第二処理液の混合量(送液量)は、調整工程において、第一pH計測工程で計測された第一処理液のpHに基づき、適切に調整される。ここで、第二処理液の混合量は、第一処理液のpHが3〜4となるように調整されることが好ましい。これにより、第一処理塔の内壁の酸化及び腐食が低減し、設備寿命を長く維持することができる。
【0049】
本実施形態に係る排ガス処理方法では、第二処理液及び第一処理液の少なくとも一方から不純物の一部として固体石膏を回収する回収工程を実行する。第二処理液から一定量の固体石膏を回収する場合、石膏スラリーは遠心分離機10に導入され、固体分が回収される(固体回収1)。固体分は乾燥工程に送られて水分を完全に除去される。本実施形態では、遠心分離機10に導入する前の石膏スラリーのpHを5〜6に調整しているため、回収工程ではホウ素酸化物を含まない略純粋な高品質の固体石膏が得られる。
【0050】
固体石膏を回収するための回収工程に送られる石膏スラリー量X(kg)と、第一処理塔1に送られる石膏スラリー量Y(kg)との比率、すなわち石膏の回収質量比(X/Y)は、0.6(=1/1.7)〜1.2(=2/1.7)に調整することが好ましい。この範囲内で石膏を回収することにより、第一処理塔1に貯留される第一処理液のpHを所望の範囲(pH3〜4)に調整することができる。
【0051】
一方、第二処理液からは石膏を除去せずに、第二処理液を第一処理液に混合した後、第一処理液から一定量の石膏を回収しても構わない。つまり、第一処理液中のホウ素酸化物と石膏との比率を調整するために、後述する第一処理液のpHを中和する前又はその途中において、第一処理液に含まれる固体分を高純度の固体石膏として、上述の方法で回収しても構わない(固体回収2)。なお、遠心分離機10から排出された液体は、後述の中和工程によりpH調整が行われるが、再度第一処理塔1に戻すことも可能である。
【0052】
第二処理液と第一処理液との混合液は、第一処理塔1から排出され、中和工程において、pHを7〜8に調整される。pH調整を行うことにより、混合液からホウ素酸化物が所定量の石膏とともに析出する。石膏及びホウ素酸化物を含む混合スラリーは、遠心分離機23に導入され、混合固体(石膏含有ホウ素酸化物)が回収される。その後、混合固体は乾燥工程で水分が完全に除去され、ガラス原料等として再利用される。石膏含有ホウ素酸化物に含まれる石膏の割合(ホウ素酸化物/固体石膏)は、質量比で1.5〜2.0であることが好ましい。このような石膏含有ホウ素酸化物をガラス原料等として再利用すれば、所定の性能を備えたガラス製品を製造することが可能となる。
【実施例】
【0053】
本発明の排ガス処理装置による排ガス処理に関する実施例を以下に説明する。なお、各実施例及び比較例における石膏及びホウ素酸化物の分析は、蛍光X線分析による定量測定にて行った。
【0054】
<実施例1>
ガラス溶融炉からの排ガスは、第一処理塔の導入口での温度が300℃であり、毎時25000Nmで第一処理塔に導入された。第一処理塔に水が噴霧され、第二処理塔に水酸化カルシウム水溶液が噴霧され、さらに、第二処理塔で生成した第二処理液が、毎時1.7mで第一処理塔に送液された。これにより、第一処理塔に貯留される第一処理液のpHは3.9(31日間の平均値)に維持され、第二処理塔に貯留される第二処理液のpHは5.5(31日間の平均値)に維持された。
次いで、第二処理塔の第二処理液を毎時2.0m(31日間の平均値)で抜き取り、抜き取った溶液を遠心分離機により固液分離し、固体を回収、乾燥させ、石膏及びホウ素酸化物の分析に供した。さらに、第一処理塔の第一処理液を毎時3.0m(31日間の平均値)で抜き取り、抜き取った液を水酸化カルシウム水溶液によりpH7.7(31日間の平均値)に調整して石膏及びホウ素酸化物を析出させた。石膏とホウ素酸化物との混合スラリーを遠心分離機に導入して固液分離し、固体を回収、乾燥させ、石膏及びホウ素酸化物の分析に供した。
【0055】
<実施例2>
ガラス溶融炉からの排ガスは、第一処理塔の導入口での温度が300℃であり、毎時25000Nmで第一処理塔に導入された。第一処理塔に水が噴霧され、第二処理塔に水酸化カルシウム水溶液が噴霧され、さらに、第二処理塔で生成した第二処理液が、毎時1.7m(31日間の平均値)で第一処理塔に送液された。これにより、第一処理塔に貯留される第一処理液のpHは3.9(31日間の平均値)に維持され、第二処理塔に貯留される第二処理液のpHは5.2(31日間の平均値)に維持された。
次いで、第一処理塔の第一処理液を毎時2.5m(31日間の平均値)で抜き取り、抜き取った液を遠心分離機に導入して固液分離し、固体を回収、乾燥させ、石膏及びホウ素酸化物の分析に供した。分離後の液は、水酸化カルシウム水溶液によりpH7.7(31日間の平均値)に調整して石膏及びホウ素酸化物を析出させた。石膏とホウ素酸化物との混合スラリーを遠心分離機に導入して固液分離し、固体を回収、乾燥させ、石膏及びホウ素酸化物の分析に供した。
【0056】
<比較例1>
ガラス溶融炉からの排ガスは、第一処理塔の導入口での温度が300℃であり、毎時25000Nmで第一処理塔に導入された。第一処理塔及び第二処理塔に水酸化カルシウム水溶液が噴霧された。これにより、第一処理塔に貯留される第一処理液のpHは4.7(31日間の平均値)となり、第二処理塔に貯留される第二処理液のpHは3.5(31日間の平均値)となった。
第一処理塔の底部の第一処理液を毎時3.0m(31日間の平均値)で抜き取り、抜き取った溶液を水酸化カルシウム水溶液によりpH7.7(31日間の平均値)に調整して石膏及びホウ素酸化物を析出させた。石膏とホウ素酸化物との混合スラリーを遠心分離に導入して固液分離し、固体を回収、乾燥させ、石膏及びホウ素酸化物の分析に供した。
実施例1、実施例2、及び比較例1の分析結果を以下の表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果を検証すると、第一処理塔から回収されたホウ素酸化物と石膏との比率(B/CaSO)は、実施例1及び実施例2の結果から、1.0以上であり、ガラス原料等として最適な石膏含有ホウ素酸化物を回収することができた。しかしながら、本発明の条件を満たさない比較例1では、第一処理塔から回収されたホウ素酸化物と石膏との比率は、1.0未満であり、ホウ素酸化物に対して石膏の比率が多く、ガラス原料等として用いるには、不向きな混合物であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る排ガス処理装置、及び排ガス処理方法は、ガラス溶融炉の排ガスからホウ素酸化物及び硫黄酸化物を完全に除去するとともに、当該排ガスからガラス原料等として再利用可能なホウ素酸化物及び硫黄酸化物を含有する混合固体を有効に回収することができることから、特に、重油等の不純物を多く含む化石燃料を用いたバーナー加熱方式のガラス溶融炉において、利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 第一処理塔
3 水スプレー(水噴霧手段)
4 第一pHセンサ
5 第二処理塔
6 アルカリ液スプレー(アルカリ液噴霧手段)
7 第二pHセンサ
8 送液ポンプ(送液手段)
9 コンピュータ(制御手段)
10 遠心分離機(回収手段)
20 中和手段
23 遠心分離機
54 排気管(排気手段)
100 排ガス処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス溶融炉の排ガスを浄化する排ガス処理装置であって、
前記ガラス溶融炉の内部で発生した硫黄酸化物及びホウ素酸化物を不純物として含有する排ガスが導入される第一処理塔と、
前記第一処理塔の内部に水を噴霧する水噴霧手段と、
前記第一処理塔に貯留される前記不純物の一部が吸収された第一処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第一pHセンサと、
前記第一処理塔で処理された第一処理ガスが導入される第二処理塔と、
前記第二処理塔の内部にアルカリ液を噴霧するアルカリ液噴霧手段と、
前記第二処理塔に貯留される前記不純物の残部が吸収された第二処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第二pHセンサと、
前記第二処理塔で処理された第二処理ガスを外部に排出する排気手段と、
前記第二処理液の少なくとも一部を前記第一処理塔に搬送して前記第一処理液と混合する送液手段と、
前記第二pHセンサ、及び第一pHセンサで計測したpHに基づいて、前記アルカリ液噴霧手段、及び前記送液手段の動作を制御する制御手段と、
前記第二処理液及び前記第一処理液の少なくとも一方から前記不純物の一部を硫酸塩として回収する回収手段と、
を備えた排ガス処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第二処理液のpHが5〜6となるように、前記アルカリ液噴霧手段の動作を制御する請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第一処理液のpHが3〜4となるように、前記送液手段の動作を制御する請求項1又は2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記第一処理液のpHを7〜8に調整する中和手段を備え、
前記回収手段は、前記第一処理液を中和する前又はその途中において、前記第一処理液から前記硫酸塩を回収する請求項3に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
ガラス溶融炉の排ガスを浄化する排ガス処理方法であって、
前記ガラス溶融炉の内部で発生した硫黄酸化物及びホウ素酸化物を不純物として含有する排ガスに水を噴霧する第一処理工程と、
前記第一処理工程で生成した前記不純物の一部が吸収された第一処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第一pH計測工程と、
前記第一処理工程を終えた第一処理ガスにアルカリ液を噴霧する第二処理工程と、
前記第二処理工程で生成した前記不純物の残部が吸収された第二処理液の水素イオン濃度(pH)を計測する第二pH計測工程と、
前記第二処理工程を終えた第二処理ガスを外部に排出する排気工程と、
前記第二処理液の少なくとも一部を前記第一処理液に混合する混合工程と、
前記第二pH計測工程、及び前記第一pH計測工程で計測したpHに基づいて、前記第二処理工程における前記アルカリ液の噴霧量、及び前記混合工程における前記第二処理液の混合量を調整する調整工程と、
前記第二処理液及び前記第一処理液の少なくとも一方から前記不純物の一部を硫酸塩として回収する回収工程と、
を包含する排ガス処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−245467(P2012−245467A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119077(P2011−119077)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】