説明

排気ガス浄化システム

【課題】排気雰囲気がリーン〜ストイキ〜リッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関に適用され、NOx、HC及びCOの浄化性能に優れた排気ガス浄化システムを提供すること。
【解決手段】排気ガス浄化システムは、排気雰囲気がリーン〜ストイキ〜リッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関に適用され、排気雰囲気がリーンであるときに排ガス中のNOxを吸着し、ストイキ〜リッチであるときにNOxを脱離・浄化する第1排気ガス浄化触媒と、第1排気ガス浄化触媒の下流側に配設され、排気雰囲気がリッチ〜ストイキ〜リーンであるときに排ガス中のHC等を浄化する第2排気ガス浄化触媒とを備え、第2排気ガス浄化触媒が、触媒温度250〜700℃における酸素放出量に対する250〜400℃における酸素放出量の比が0.04以上である酸素吸放出能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化システムに係り、更に詳細には、排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関に適用され、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の浄化性能に優れた排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気空燃比がリーンであるときに排気中のNOxを吸収し、排気空燃比が理論空燃比又はリッチであるときに前記吸収したNOxを放出して還元処理するNOx吸収触媒と、該NOx吸収触媒の下流側に配置された三元触媒とを少なくとも備えてなる内燃機関の排気浄化装置において、前記三元触媒が有する酸素ストレージ能力よりも、前記三元触媒よりも上流側の触媒が有する酸素ストレージ能力を低く設定したことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3449174号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の内燃機関の排気浄化装置においても、NOx、HC及びCOの浄化性能は優れていたが、リッチスパイク時におけるHC及びCOの浄化性能について改善の余地があった。
また、これに対して、酸素ストレージ能力に寄与する成分(例えばセリア)の量を単に増やした場合に、排気圧力の上昇に伴うエンジン出力の低下やエンジンから排出される排気ガス量の増加を招くおそれがあった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関に適用され、NOx、HC及びCOの浄化性能に優れた排気ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねたところ、排気雰囲気がリーンであるときに排ガス中のNOxを吸着し、排気雰囲気がストイキないしリッチであるときにNOxを脱離・浄化する第1の排気ガス浄化触媒と、該第1の排気ガス浄化触媒の下流側に配設され、排気雰囲気がリッチないしストイキないしリーンであるときに排ガス中のHC及び/又はCOを浄化する第2の排気ガス浄化触媒と、を備え、該第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度250〜700℃の温度範囲における酸素放出量に対する触媒温度250〜400℃の温度範囲における酸素放出量の比が0.04以上である酸素吸放出能を有するものとすることなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の排気ガス浄化システムは、排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関に適用され、排気雰囲気がリーンであるときに排ガス中のNOxを吸着し、排気雰囲気がストイキないしリッチであるときにNOxを脱離・浄化する第1の排気ガス浄化触媒と、該第1の排気ガス浄化触媒の下流側に配設され、排気雰囲気がリッチないしストイキないしリーンであるときに排ガス中のHC及び/又はCOを浄化する第2の排気ガス浄化触媒とを備え、該第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度250〜700℃の温度範囲における酸素放出量に対する触媒温度250〜400℃の温度範囲における酸素放出量の比が0.04以上である酸素吸放出能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排気雰囲気がリーンであるときに排ガス中のNOxを吸着し、排気雰囲気がストイキないしリッチであるときにNOxを脱離・浄化する第1の排気ガス浄化触媒と、該第1の排気ガス浄化触媒の下流側に配設され、排気雰囲気がリッチないしストイキないしリーンであるときに排ガス中のHC及び/又はCOを浄化する第2の排気ガス浄化触媒と、を備え、該第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度250〜700℃の温度範囲における酸素放出量に対する触媒温度250〜400℃の温度範囲における酸素放出量の比が0.04以上である酸素吸放出能を有するものとすることなどとしたため、排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関に適用され、NOx、HC及びCOの浄化性能に優れた排気ガス浄化システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の排気ガス浄化システムについて説明する。なお、本明細書において、濃度や含有量などについての「%」は、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
上述の如く、本発明の排気ガス浄化システムは、排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関に適用される排気ガス浄化システムであって、排気雰囲気がリーンであるときに排ガス中のNOxを吸着し、排気雰囲気がストイキないしリッチであるときに吸着したNOxを脱離・浄化する第1の排気ガス浄化触媒と、第1の排気ガス浄化触媒の下流側に配設され、排気雰囲気がリッチないしストイキないしリーンであるときに排ガス中のHC及びCOの少なくとも一方を浄化する第2の排気ガス浄化触媒とを備え、第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度250〜700℃の温度範囲における酸素放出量に対する触媒温度250〜400℃の温度範囲における酸素放出量の比が0.04以上である酸素吸放出能を有するものである。
このような排気ガス浄化システムは、排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関、具体的には、リーンバーンエンジン、特にディーゼルエンジンに適用することが好ましく、排ガス中のNOx、HC及びCO濃度を著しく低減することができる。
【0009】
ここで、第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度250〜700℃の温度範囲における酸素放出量に対する触媒温度250〜400℃の温度範囲における酸素放出量の比が0.04以上である酸素吸放出能を有さない場合には、リーンバーンエンジンやディーゼルエンジンなどの排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃料雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関のような排ガス温度が低温である内燃機関において、必要な酸化吸放出量が確保できずに、リッチ雰囲気での排ガス中のHC、COを酸化できず、NOx、HC及びCO濃度を十分に低減することができない。
なお、かかる値は、例えば、図1の各触媒の温度と酸素放出能強度との関係を示すグラフにおいて、各温度範囲における酸素放出能強度の積分値から算出される。
また、図1中において、(1)はCe−Pr酸化物(Pr含有量:75mol%)、(2)はCe−Pr酸化物(Pr含有量:50mol%)、(3)Ce−Pr酸化物(Pr含有量:25mol%)、(4)Ce−Pr酸化物(Pr含有量:10mol%)を示す。
【0010】
また、本発明においては、第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度400℃において水素酸化能変化率が0.2以上の酸素吸放出能を有することが好ましい。
触媒温度400℃において水素酸化能変化率が0.2未満の酸素吸放出能しか有さない場合には、リーン状態で運転される内燃機関の排気ガス温度において、必要な酸素吸放出速度が確保できずに、リッチ雰囲気での排ガス中のHC、COを酸化できなくなることがあり好ましくない。
ここで、「水素酸化能変化率」とは、排気ガス浄化触媒に吸蔵させた酸素を用いて、例えばアルゴンのような不活性ガスをキャリアーガスとして該触媒に流入させた水素を酸化するとき、該触媒における触媒温度に対する水素酸化能の傾きのことであり、「触媒温度400℃において水素酸化能変化率が0.2以上」とは、例えば、図2の各触媒の温度と触媒での水素の酸化により生成する水を質量分析計で測定したときのイオン強度との関係を示すグラフにおいて、400℃におけるグラフの傾きが0.2以上であることをいう。
なお、図2中において、(1)はCe−Pr酸化物(Pr含有量:75mol%)、(2)はCe−Pr酸化物(Pr含有量:50mol%)、(3)はCe−Pr酸化物(Pr含有量:25mol%)、(4)はCe−Pr酸化物(Pr含有量:10mol%)を示す。
【0011】
更に、本発明においては、第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度250℃から酸素を放出する酸素吸放出能を有することが好ましい。
触媒温度250℃から酸素を放出する酸素吸放出能を有さない場合、換言すれば、触媒温度250℃超から酸素を放出する酸素吸放出能を有する場合には、リーンバーンエンジンやディーゼルエンジンなどの排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃料雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関のような排ガス温度が低温である内燃機関において、NOx、HC及びCO濃度を十分に低減することができないことがある。
【0012】
また、本発明においては、第2の排気ガス浄化触媒が、セリウムを含む酸化物を含有することが望ましく、特にセリウムとセリウム以外の遷移金属元素とを含む酸化物を含有することが望ましい。
セリウムを含む酸化物、特にセリウムとセリウム以外の遷移金属元素とを含む酸化物を含有する排気ガス浄化触媒は、酸素吸放出能に優れており、セリウムのみに比べて、耐熱性に優れたものとなる。
ここで、上記遷移金属元素としては、プラセオジム(Pr)やテルビウム(Tb)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)などを挙げることができる。
図3は、各触媒の温度と酸素放出能強度との関係を示すグラフである。図3中において、(1)はCe−Pr酸化物(Pr含有量:30mol%)、(2)はCe−Tb酸化物(Tb含有量:30mol%)、(3)はCe−Zr酸化物(Zr含有量:30mol%)を示す。
【0013】
更に、上記セリウムとセリウム以外の遷移金属元素とを含む酸化物において、セリウム以外の遷移金属元素の含有量が25mol%以上であることが好ましい。より具体的には、25〜90mol%であることが好ましく、30〜80mol%であることがより好ましく、50〜75mol%であることが更に好ましい。
セリウム以外の遷移金属元素の含有量が25mol%未満であると、セリウムとの複合割合が少なくなり、酸素吸放出能が高温側へ移動してしまうことがある。一方、90mol%を超える場合には、触媒の耐熱性が低下してしまうことがある。
【0014】
また、本発明においては、上記セリウム以外の遷移金属元素のイオン半径が、セリウムのイオン半径とほぼ同じ大きさであることが望ましい。
セリウム以外にこのような遷移金属元素を含む酸化物は、構造的に酸素欠損を有することがあり望ましい。また、このような遷移金属元素としては、例えばプラセオジム(Pr)やテルビウム(Tb)、ジルコニウム(Zr)などを挙げることができる。
更に、本発明においては、上記セリウム以外の遷移金属元素は、原子価が3価の希土類元素であることが望ましい。また、このような遷移金属元素としては、例えばプラセオジム(Pr)やテルビウム(Tb)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、イットリウム(Y)などを挙げることができる。
そして、上記セリウム以外の遷移金属元素としては、このような観点からプラセオジムが特に望ましい。
【0015】
また、本発明においては、第2の排気ガス浄化触媒の比表面積が、60m/g以上であることが好ましく、具体的には、60〜200m/gであることが好ましい。60m/g未満であると、触媒と排ガスとの接触確率が減少してしまうことがあるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0016】
更に、本発明においては、第2の排気ガス浄化触媒が、貴金属を含有することが触媒から放出した酸素により排ガス中のHC、COを酸化する酸化速度を向上する観点から望ましい。
このような貴金属としては、白金(Pt)やパラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)などを挙げることができる。
【0017】
更に、本発明においては、第2の排気ガス浄化触媒が、ウォールフロー型ハニカム担体に担持されて成るものであることが望ましい。
第2の排気ガス浄化触媒は、ペレット状のものをそのまま用いることもできるが、排ガス中のHCやCOとの接触率を向上させるため、ストレートフロー型ハニカム担体に担持して用いることもでき、接触率向上の観点からウォールフロー型ハニカム担体に担持して用いることが望ましい。
【0018】
また、本発明においては、第2の排気ガス浄化触媒が、排ガス中のPMを捕集し、酸化ないし燃焼して浄化するものであることが望ましい。
このような第2の排気ガス浄化触媒は、例えば上述したようにウォールフロー型ハニカム担体に担持することにより可能となる。
【0019】
更に、本発明においては、第1の排気ガス浄化触媒が、排気温度が200℃以下であるときに排気ガス中のHCを吸着することが望ましい。
このように、第1の排気ガス浄化触媒が、HC吸着機能を有することによって、HC浄化性能をより向上させることができる。
【0020】
更にまた、本発明においては、第1の排気ガス浄化触媒の上流側に三元触媒を更に備えることが望ましい。
このように、第1の排気ガス浄化触媒の上流側に三元触媒を更に備えることにより、排気雰囲気がストイキ近傍であるときのNOx、HC及びCOの浄化性能を向上させることができる。
【0021】
図4は、本発明の排気ガス浄化システムの一実施形態を示す構成説明図である。同図に示すように、排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関の一例であるディーゼルエンジンの排気系に、その上流側から、三元触媒と、第1の排気ガス浄化触媒の一例であるNOx吸着浄化触媒と、第2の排気ガス浄化触媒の一例であるOSC触媒と、パティキュレートフィルターの一例であるディーゼルパティキュレートフィルターと、を備える。
排気雰囲気がリーンであるときは、主にNOx吸着浄化触媒において排ガス中のNOxが吸着される。また、排気雰囲気がリッチであるときは、主にNOx吸着浄化触媒において吸着されていたNOxと排ガス中のHC及びCOとが浄化され、更にOSC触媒において主にNOx吸着浄化触媒において浄化しきれなかったHC及びCOが浄化される。更に、ディーゼルパティキュレートフィルターにおいて、ディーゼルエンジンから排出されるPMが捕集され、温度400℃以上において酸化ないし燃焼されて浄化される。
なお、排気雰囲気がストイキ近傍であるときは、主に三元触媒において排ガス中のNOx、HC及びCOが浄化される。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
<第1の排気ガス浄化触媒の作製>
第1の排気ガス浄化触媒として、NOx吸着浄化触媒を以下の要領で作製した。
まず、3mol%のCeを含むアルミナ粉末(Al97mol%)に、ジニトロジアミン白金水溶液を含浸させ、150℃で2時間乾燥した後、400℃で1時間、次いで600℃で1時間焼成し、Pt担持アルミナ粉末(粉末A)を得た。この粉末のPt濃度は、0.9%であった。
一方、1mol%のLaと、32mol%のZrを含有するセリウム酸化物粉末(Ce67mol%)に、ジニトロジアミン白金水溶液を含浸させ、150℃で2時間乾燥した後、400℃で1時間、次いで600℃で1時間焼成し、Pt担持セリウム酸化物粉末(粉末B)を得た。この粉末のPt濃度は、2.3%であった。
次に、上記アルミナ粉末(粉末A)2884g、Pt担持セリウム酸化物粉末(粉末B)253g、3mol%のCeを含むアルミナ粉末(Al97mol%)302g、硝酸酸性アルミナゾル160g(ベーマイトアルミナ10%に10%硝酸を添加することにより得られたゾルであり、Al換算で16g)、及び純水2000gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕してスラリーを得た。このスラリーを、コーディエライト製モノリス担体(2.6L)にコーティングし、空気流にてセル内の余剰なスラリーを除去して、30℃の空気を流速5m/sで流通させて30分間乾燥し、次いで、150℃の空気流通下で15分間乾燥させた後、400℃で1時間焼成し、触媒Aを作製した。
更に、3mol%のZrを含むアルミナ粉末(Al97mol%)に、硝酸ロジウム水溶液を含浸させ、150℃で24時間乾燥した後、400℃で1時間、次いで600℃で1時間焼成し、Rh担持アルミナ粉末(粉末C)を得た。この粉末のRh濃度は、1.5%であった。
一方、3mol%のCeを含むアルミナ粉末(Al97mol%)に、ジニトロジアミン白金水溶液を含浸させ、150℃で2時間乾燥した後、400℃で1時間、次いで600℃で1時間焼成し、Pt担持アルミナ粉末(粉末D)を得た。この粉末のPt濃度は、1.8%であった。
そして、Rh担持アルミナ粉末(粉末C)1132g、Pt担持アルミナ粉末(粉末D)1922g、Pt担持セリウム酸化物粉末(粉末B)338g、3mol%のCeを含むアルミナ粉末(Al97mol%)85g、硝酸酸性アルミナゾル120g(ベーマイトアルミナ10%に10%硝酸を添加することにより得られたゾルであり、Al換算で12g)、炭酸バリウム114g(BaOとして76g)、及び純水2000gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕してスラリーを得た。
しかる後、このスラリーを、上記コート触媒Aにコーティングし、空気流にてセル内の余剰なスラリーを除去して、30℃の空気を流速5m/sで流通させて30分間乾燥し、次いで、150℃の空気流通下で15分間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、本例に用いるNOx吸着浄化触媒を作製した。
【0024】
<第2の排気ガス浄化触媒の作製>
第2の排気ガス浄化触媒として、OSC触媒を以下の要領で作製した。
まず、セリウム酸化物粉末に、ジニトロジアミン白金水溶液を含浸させ、150℃で2時間乾燥した後、400℃で1時間、次いで600℃で1時間焼成し、Pt担持セリウム酸化物粉末(粉末E)を得た。この粉末Pt濃度は、0.9%であった。
次いで、Pt担持セリウム酸化物粉末(粉末E)2862g、γ−Al粉末382g、硝酸酸性アルミナゾル356g(ベーマイトアルミナ10%に10%硝酸を添加することにより得られたゾルであり、Al換算で35.6g)、及び純水2000gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕してスラリーを得た。このスラリーをコーディエライト製モノリス担体(2.6L)にコーティングし、空気流にてセル内の余剰なスラリーを除去して、30℃の空気を流速5m/sで流通させて30分間乾燥し、次いで、150℃の空気流通下で15分間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、触媒Bを得た。
しかる後、触媒Bに硝酸ロジウム水溶液を含浸させ、30℃の空気を流速5m/sで流通させて30分間乾燥し、次いで、150℃の空気流通下で15分間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、本例に用いるOSC触媒を作製した。OSC触媒のRh含有量は触媒1Lあたり、0.175gであった。
【0025】
<三元触媒>
本例に用いた三元触媒は、Pd及びRh担持触媒であり、触媒ハニカム容量は、0.94L、Pt及びRhの担持量は3.5g、PtとRhの担持重量比率はPt:Rh=11:1であった。
【0026】
<パティキュレートフィルター>
本例に用いたパティキュレートフィルターは、Ptを担持したものであり、触媒ハニカム容量は、2.5L、Ptの担持量は2.5gであった。
【0027】
<排気ガス浄化システムの構築>
上記作製した第1の排気ガス浄化触媒、第2の排気ガス浄化触媒、三元触媒及びパティキュレートフィルターを図4に示すように、ディーゼルエンジンの排気系に配置して、本例の排気ガス浄化システムを構築した。
【0028】
(実施例2)
第2の排気ガス浄化触媒として、以下の要領で作製したOSC触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の排気ガス浄化システムを構築した。
まず、プラセオジム70mol%を含むセリウム酸化物粉末2862g、γ−Al粉末382g、硝酸酸性アルミナゾル356g(ベーマイトアルミナ10%に10%硝酸を添加することにより得られたゾルであり、Al換算で35.6g)、及び純水2000gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕してスラリーを得た。このスラリーを、コーディエライト製モノリス担体(2.6L)にコーティングし、空気流にてセル内の余剰なスラリーを除去して、30℃の空気を5m/sで流通させて30分間乾燥し、次いで、150℃の空気流通下で15分間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、本例に用いるOSC触媒を作製した。
【0029】
(実施例3)
第2の排気ガス浄化触媒として、以下の要領で作製したOSC触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の排気ガス浄化システムを構築した。
まず、プラセオジム70mol%を含むセリウム酸化物粉末に、ジニトロジアミン白金水溶液を含浸させ、150℃で2時間乾燥した後、400℃で1時間、次いで、600℃で1時間焼成し、Pt担持セリウム酸化物粉末(粉末F)を得た。この粉末のPt濃度は、0.9%であった。
次いで、Pt担持セリウム酸化物粉末(粉末F)1431g、プラセオジム70mol%を含むセリウム酸化物粉末1431g、γ−アルミナ粉末382g、硝酸酸性アルミナゾル356g(ベーマイトアルミナ10%に10%硝酸を添加することにより得られたゾルであり、Al換算で35.6g)、及び純水2000gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕してスラリーを得た。このスラリーを、コーディエライト製モノリス担体(2.6L)にコーティングし、空気流にてセル内の余剰なスラリーを除去して、30℃の空気を流速5m/sで流通させて30分間乾燥し、次いで、150℃の空気流通下で15分間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して触媒Cを得た。
しかる後、触媒Cに硝酸ロジウム水溶液を含浸させ、30℃の空気を流速5m/sで流通させて30分間乾燥し、次いで、150℃の空気流通下で15分間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、本例に用いるOSC触媒を作製した。OSC触媒のRh含有量は、触媒1Lあたり、0.175gであった。
【0030】
(比較例1)
第2の排気ガス浄化触媒の代わりに、以下の要領で作製した触媒を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の排気ガス浄化システムを構築した。
まず、空気流中、900℃で4時間焼成したγ−アルミナ粉末に、ジニトロジアミン白金水溶液を含浸させ、150℃で2時間乾燥した後、400℃で1時間、次いで600℃で1時間焼成し、Pt担持アルミナ粉末(粉末G)を得た。この粉末のPt濃度は、0.9%であった。
次いで、Pt担持アルミナ粉末(粉末G)2862g、γ−アルミナ粉末382g、硝酸酸性アルミナゾル356g(ベーマイトアルミナ10%に10%硝酸を添加することにより得られたゾルであり、Al換算で35.6g)、及び純水2000gを磁性ボールミルに投入し、混合粉砕してスラリーを得た。このスラリーを、コーディエライト製モノリス担体(2.6L)にコーティングし、空気流にてセル内の余剰なスラリーを除去して、30℃の空気を流速5m/sで流通させて30分間乾燥し、次いで、150℃の空気流通下で15分間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して触媒Dを得た。
しかる後、触媒Dに硝酸ロジウム水溶液を含浸させ、30℃の空気を流速5m/sで流通させて30分間乾燥し、次いで、150℃の空気流通下で15分間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、本例に用いる触媒を作製した。触媒のRh含有量は、触媒1Lあたり、0.175gであった。
【0031】
ここで、上記各例の第2の排気ガス浄化触媒の仕様を表1に示す。表1において、「酸素吸放出能A」とは、触媒温度250〜700℃の温度範囲における酸素放出量に対する触媒温度250〜400℃の温度範囲における酸素放出量の比が0.04以上である酸素吸放出能のことであり、付記された値は、その比を示す。また、「酸素吸放出能B」とは、触媒温度400℃において水素酸化能変化率が0.2以上の酸素吸放出能のことであり、付記された値は400℃における水素酸化能変化率を示す。更に、「酸素吸放出能C」とは、触媒温度250℃から酸素を放出する酸素吸放出能のことであり、付記された温度は酸素放出下限温度を示す。
【0032】
【表1】

【0033】
上記各例の第2の排気ガス浄化触媒について、下記条件において、リーン条件、リッチ条件を交互に運転して、特性を評価した。
具体的には、リッチ運転時における各例の触媒前後のHC濃度を同時に測定し、その濃度差から各例の第2の排気ガス浄化触媒におけるHC転化率を求めた。得られた結果を図5に示す。
図5より、酸素放出能を持つ触媒ほど、リッチ運転時のHCを浄化し、その放出速度が速い触媒ほど、HC転化率は向上し、更に酸素放出量の多い触媒ほどHC転化率が向上することが分かる。
【0034】
(評価条件)
・エンジン ;3.0L 直噴ディーゼルターボ(リッチ運転対応改造済)
・燃料 :JIS2号軽油
・リーン運転条件:λ=1.5にて30秒運転
・リッチ運転条件:λ=0.8にて2秒運転
・触媒空間速度 :SV=60,000h−1
【0035】
また、上記第1の排気ガス浄化触媒について、下記条件において、特性を評価した。
具体的には、各温度におけるNOx転化率を求めた。得られた結果を図6に示す。
【0036】
(評価条件)
・エンジン ;3.0L 直噴ディーゼルターボ(リッチ運転対応改造済)
・燃料 :JIS2号軽油
・リーン運転条件:λ=1.5にて30秒運転
・リッチ運転条件:λ=0.8にて2秒運転
・触媒空間速度 :SV=60,000h−1
【0037】
[性能評価]
(排気性能評価)
上記各例の排気ガス浄化システムを車両に装着して、下記条件において、排気性能を評価した。得られた結果を図7に示す。
【0038】
(評価条件)
・エンジン ;3.0L 直噴ディーゼルターボ(リッチ運転対応改造済)
・燃料 :JIS2号軽油
・車両重量 :1750kg
・運転モード :FTP75モード
【0039】
図7より、本発明の範囲に属する実施例1〜3の排気ガス浄化システムは、本発明外の比較例1の排気ガス浄化システムより、OSC触媒のもつ酸素放出能の追加によって、HCの排出量が低減していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】各触媒の温度と酸素放出能強度との関係を示すグラフである。
【図2】各触媒の温度と質量分析計における水のイオン強度との関係を示すグラフである。
【図3】各触媒の温度と酸素放出能強度との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の排気ガス浄化システムの一実施形態を示す構成説明図である。
【図5】各例の第2の排気ガス浄化触媒におけるHC転化率を示すグラフである。
【図6】第1の排気ガス浄化触媒におけるNOx転化率を示すグラフである。
【図7】各例の排気ガス浄化システムにおける排気性能を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
10 NOx吸着浄化触媒
20 OSC触媒
30 三元触媒
40 ディーゼルパティキュレートフィルター
50 ディーゼルエンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気雰囲気がリーンないしストイキないしリッチに変動し、燃焼雰囲気がリーン状態で運転される内燃機関に適用される排気ガス浄化システムであって、
排気雰囲気がリーンであるときに排ガス中のNOxを吸着し、排気雰囲気がストイキないしリッチであるときにNOxを脱離・浄化する第1の排気ガス浄化触媒と、
上記第1の排気ガス浄化触媒の下流側に配設され、排気雰囲気がリッチないしストイキないしリーンであるときに排ガス中のHC及び/又はCOを浄化する第2の排気ガス浄化触媒と、を備え、
上記第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度250〜700℃の温度範囲における酸素放出量に対する触媒温度250〜400℃の温度範囲における酸素放出量の比が0.04以上である酸素吸放出能を有する、ことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項2】
上記第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度400℃において水素酸化能変化率が0.2以上の酸素吸放出能を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
上記第2の排気ガス浄化触媒が、触媒温度250℃から酸素を放出する酸素吸放出能を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
上記第2の排気ガス浄化触媒が、セリウムを含む酸化物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
上記第2の排気ガス浄化触媒が、セリウムとセリウム以外の遷移金属元素とを含む酸化物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項6】
上記セリウムとセリウム以外の遷移金属元素とを含む酸化物において、セリウム以外の遷移金属元素の含有量が25mol%以上であることを特徴とする請求項5に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項7】
上記セリウム以外の遷移金属元素のイオン半径が、セリウムのイオン半径とほぼ同じ大きさであることを特徴とする請求項5又は6に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項8】
上記セリウム以外の遷移金属元素は、原子価が3価の希土類元素であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項9】
上記セリウム以外の遷移金属元素がプラセオジムであることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項10】
上記第2の排気ガス浄化触媒の比表面積が、60m/g以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項11】
上記第2の排気ガス浄化触媒が、貴金属を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項12】
上記第2の排気ガス浄化触媒が、貴金属を含有しないことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項13】
上記第2の排気ガス浄化触媒が、ウォールフロー型ハニカム担体に担持されて成るものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項14】
上記第2の排気ガス浄化触媒が、排ガス中のPMを捕集し、酸化ないし燃焼して浄化する、ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項15】
上記第1の排気ガス浄化触媒が、排気温度が200℃以下であるときに排ガス中のHCを吸着する、ことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項16】
上記第1の排気ガス浄化触媒の上流側に配設される三元触媒を更に備えることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−223708(P2008−223708A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66357(P2007−66357)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】