説明

排気浄化装置および内燃機関

【課題】加熱手段よりも上流側の排気通路に燃料を供給するように燃料添加手段を備えた排気浄化装置において、排気通路における燃料の燃焼性能を適切に制御する。
【解決手段】本発明に係る排気浄化装置1は、グロープラグ36への供給熱量に基づいて燃料添加弁34から添加された燃料の燃焼性能に影響を与える周囲環境温度を求める周囲環境温度導出手段と、該周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度に基づいて燃料添加弁34およびグロープラグ36のうちの少なくとも一方の作動を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気を浄化するための排気浄化装置およびそれを備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、内燃機関の排気浄化装置の一例を開示する。この排気浄化装置は、排気浄化触媒よりも上流側の排気通路に、小型酸化触媒と、燃料供給弁と、これらの間に配置されたグロープラグとを備えている。燃料供給弁の噴射口は小型酸化触媒の端面を向き、グロープラグはその先端が燃料供給弁から噴射される燃料と接触する位置に配置されている。燃料供給弁およびグロープラグの各作動は制御され、それらは第1〜第3の制御状態を有し得る。第1の制御状態では、燃料供給弁から燃料が供給されつつグロープラグによる加熱が行われ、燃料供給弁からの燃料は着火する。第2の制御状態では、燃料供給弁から燃料が供給されつつグロープラグによる加熱が行われるが、燃料供給弁からの燃料は着火しない。第3の制御状態では、燃料供給弁から燃料が供給されているがグロープラグによる加熱は停止している。第1の制御状態または第3の制御状態は着火が可能な運転領域において選択され得、第2の制御状態または第3の制御状態は着火が不可能な運転領域において選択され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−059886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気通路における温度管理は筒内のそれと比べて難しく、特に上記特許文献1に示すような排気浄化装置では排気通路にグロープラグがあるので排気通路の温度管理はさらに難しい。それ故、上記特許文献1に示すような排気浄化装置において、排気通路での燃料の加熱または燃焼を適切に制御することは容易でない。しかし、排気通路に添加した燃料を加熱または燃焼させて触媒等の排気浄化部材を加熱し、それにより排気浄化能を高めるために、排気通路での燃料の燃焼性能をより適切に制御することが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、加熱手段よりも上流側の排気通路に燃料を供給するように燃料添加手段を備えた排気浄化装置において、排気通路における燃料の燃焼性能を適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、排気通路に設けられた排気浄化用部材と、該排気浄化用部材よりも上流側の排気通路に位置付けられた加熱手段と、該加熱手段よりも上流側の排気通路に燃料を供給するように設けられた燃料添加手段とを備えた排気浄化装置であって、前記加熱手段への供給熱量に基づいて、前記燃料添加手段から添加された燃料の燃焼性能に影響を与える周囲環境温度を求める周囲環境温度導出手段と、該周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度に基づいて、前記燃料添加手段および前記加熱手段のうちの少なくとも一方の作動を制御する制御手段とを備えた排気浄化装置を提供する。
【0007】
前記周囲環境温度導出手段は、前記加熱手段への供給熱量に基づいて、前記加熱手段の加熱部の温度を求める加熱部温度導出手段と、該加熱部温度導出手段により求められた前記加熱部の温度に基づいて前記周囲環境温度を求める副周囲環境温度導出手段とを備えるとよい。
【0008】
前記周囲環境温度導出手段は、周囲環境温度として、前記加熱手段よりも下流側の排気通路を区画形成する部材の温度を求めてもよい。
【0009】
また、本発明に係る排気浄化装置は、前記燃料添加手段から添加された燃料を排気通路へ導くための燃料通路をさらに備え、前記周囲環境温度導出手段は、周囲環境温度として、前記燃料通路の温度を求めてもよい。
【0010】
また、本発明に係る排気浄化装置は、前記加熱手段の加熱部近傍に設けられた燃料衝突用板部材をさらに備え、前記周囲環境温度導出手段は、周囲環境温度として、前記燃料衝突用板部材の温度を求めてもよい。
【0011】
前記制御手段は、前記周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度が所定値未満のとき、前記燃料添加手段からの燃料添加量を基準燃料量よりも増やすように前記燃料添加手段の作動を制御してもよい。
【0012】
前記制御手段は、前記周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度が所定値未満のとき、前記加熱手段の加熱部の温度をそれまでの温度よりも高めるように前記加熱手段の作動を制御してもよい。
【0013】
前記制御手段は、前記周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度が所定値以上のとき、前記燃料添加手段からの燃料添加量を基準燃料量よりも減らすように前記燃料添加手段の作動を制御してもよい。
【0014】
前記制御手段は、前記周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度が所定値以上のとき、前記燃料添加手段からの燃料添加間隔を基準添加間隔よりも長くするように前記燃料添加手段の作動を制御してもよい。
【0015】
本発明は、上記したような排気浄化装置を備えた、内燃機関にも存する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置が適用された内燃機関を示す概略構成図である。
【図2】図1の排気浄化装置における、グロープラグよりも下流側の排気管の温度と、当該排気管への燃料付着量との関係を概念的に表すグラフである。
【図3】図1の排気浄化装置における、グロープラグよりも下流側の排気管の温度と、当該排気管の周囲での燃料の燃焼性能との関係を概念的に表すグラフである。
【図4】図1の排気浄化装置におけるグロープラグ周囲の伝熱および輻射を概念的に表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る排気浄化装置1が適用された内燃機関(以下、エンジン)10の概略図である。エンジン10は、自動車用の圧縮着火式内燃機関すなわちディーゼルエンジンであり、図1では、エンジン本体10´から延出した、その排気系の一部が誇張して表されている(吸気系およびエンジン内部機構等は省略されている)。
【0019】
エンジン10の排気管12によって区画形成された排気通路14には、上流側から順に、第1触媒コンバータ16と、第2触媒コンバータ18とが直列的に設けられている。そして、第1触媒コンバータ16内には、第1排気浄化用部材(以下、第1浄化部材)20と第2排気浄化用部材(以下、第2浄化部材)22とが直列的に収容されている。また、第2触媒コンバータ18内には、第3排気浄化用部材(以下、第3浄化部材)24が収容されている。なお、第1浄化部材20、第2浄化部材22および第3浄化部材24は排気浄化装置1に含まれる。
【0020】
ここでは、第1浄化部材20は酸化触媒を含む。第1浄化部材20は、例えば白金Ptのような貴金属触媒を担持したモノリス触媒として形成されている。
【0021】
また、第2浄化部材22は排気中の粒子状物質(PM)を捕集するためのパティキュレートフィルタである。第2浄化部材22であるパティキュレートフィルタは貴金属触媒を担持していない。しかしながらパティキュレートフィルタ上に白金Ptのような貴金属触媒等を担持させることもできる。
【0022】
また、第3浄化部材24はNOx浄化用の触媒、ここではNOx吸蔵触媒を含む。第3浄化部材24では、その基体上に例えばアルミナからなる触媒担体が担持されている。触媒担体の表面上には白金Ptなどの貴金属触媒が分散して担持されていて、さらに触媒担体の表面上にはNOx吸収剤の層が形成されている。NOx吸収剤は排気の空燃比がリーンのときにはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低下すると吸蔵したNOxを放出するNOxの吸放出作用を行う。このような第3浄化部材24は、排気の空燃比がリーンのときにはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低下すると例えば排気の空燃比がリッチになったときに吸蔵したNOxを放出してNOxを還元させる。なお、第3浄化部材24は、アンモニアとNOxとの化学反応(還元反応)を促進させるNOx浄化用の触媒を備えることが可能である。この場合には、アンモニア供給用に例えば尿素水添加装置が第1コンバータ16と第2コンバータ18との間に設けられ得る。
【0023】
さて、エンジン10に設けられた排気浄化装置1はさらに温度制御装置30を備えている。温度制御装置30は上記した排気浄化用部材20、22、24の温度を制御するべく設けられている。温度制御装置30は、加熱用ガスを生成して下流側の第1〜第3浄化部材20、22、24、特に第2浄化部材22および第3浄化部材24に供給し、それら排気浄化用部材の暖機または加熱およびその活性状態を維持促進するためのものである。
【0024】
特に、ここでは、温度制御装置30は、それら3つの排気浄化用部材のうちの第3浄化部材24を第3浄化部材24の所定活性温度域の温度まで加熱してそれがその所定活性温度域内の温度を有し続けるように作動する。また、温度制御装置30は、第2浄化部材22に捕集されたPMを除去するべく、所定時期に、所定時間、作動する。例えば、内燃機関10の累積作動時間が所定時間を越えるたびに、温度制御装置30は作動する。なお、温度制御装置30は、第2浄化部材22の前後の差圧が所定圧以上になったときに、働くこともできる。この場合、第2浄化部材22前後の差圧を検出するための圧力センサつまり差圧センサが備えられるとよい。
【0025】
温度制御装置30は、それぞれ上述の排気浄化用部材よりも上流側に設けられた酸化促進部材32と、燃料添加弁34と、グロープラグ36とを有する。グロープラグ36は、燃料添加弁34の下流側に位置付けられている。酸化促進部材32と燃料添加弁34とは、酸化促進部材32に向かって燃料添加弁34から燃料が噴射可能に配設されている。また、燃料添加弁34とグロープラグ36とは、グロープラグ36の加熱部である先端部36aに向かって燃料添加弁34から燃料が噴射可能に配設されている。つまり、燃料添加弁34は、グロープラグ36よりも上流側の排気通路に燃料を供給するように設けられている。
【0026】
酸化促進部材32は、酸化機能を有する触媒を含み、具体的には酸化触媒を含んで構成されていて、白金Ptのような貴金属触媒を担持したモノリス触媒として形成されている触媒部材32aを含む。酸化促進部材32のそのような触媒部材32aは筒状部材32bを含む支持部材(一部不図示)によって排気通路14に固定支持されている。ただし、酸化促進部材32は、排気通路14における排気の流れを阻害しないように定められた大きさおよび形状を有する。酸化促進部材32は、図1では明瞭に表されていないが、第1浄化部材20よりも小型であり、小型酸化触媒と称される場合もある。
【0027】
燃料添加弁34は燃料添加手段として備えられている。燃料添加弁34は排気通路に直接的にその噴射口が位置するように備えられることができるが、ここでは排気通路14から突出するように設けられた燃料添加用延出管37aにより区画形成された燃料通路37に設けられている。燃料通路37は、燃料添加弁34から添加された燃料を排気通路14へ導くための通路であり、特にグロープラグ36の先端部36aおよび酸化促進部材32の触媒部材32aに向けて燃料添加弁34から添加された燃料を導くように設計されている。そして、燃料添加弁34は、エンジン本体10´の燃料噴射弁を備えた燃料供給装置に含まれる燃料タンク38からポンプ40によって圧送された燃料を排気通路に添加供給するように設けられている。したがって、ここでは、燃料添加弁34、燃料タンク38およびポンプ40は燃料添加装置42に含まれる。ただし、燃料添加装置42には、燃料添加弁34およびポンプ40の作動を制御するための制御手段として機能する後述される制御装置の一部も含まれる。燃料添加弁34の燃料噴射圧は可変とすることもできるが、本実施形態では一定とされる。ポンプ40は燃料添加弁34の噴射圧が一定となるように作動する。なお、燃料添加装置42は、余剰の燃料を燃料タンク38に戻す機構を備える。ただし、燃料添加弁34への燃料供給系統は、燃料噴射弁への燃料供給系統とは別に独立して構成可能である。
【0028】
また、グロープラグ36は加熱手段として備えられている。グロープラグ36が通電されることで、そのグロープラグ36の加熱部である先端部36aは発熱して排気および上記燃料添加弁34から添加された燃料を加熱することができる。加熱手段であるグロープラグ36は加熱装置44に含まれる。加熱装置44には、グロープラグ36の作動つまり発熱を制御する発熱制御手段として機能する後述される制御装置の一部も含まれる。ただし、図示しないが、グロープラグ36には、これに給電するための直流電源および昇圧回路が接続されている。なお、グロープラグ36に代えて加熱手段としてセラミックヒータが用いられてもよい。
【0029】
燃料添加弁34から噴射された燃料はグロープラグ36の先端部36a周囲を通過して酸化促進部材32およびその周囲に至ることができる。グロープラグ36への通電により先端部36aが発熱しているときには、燃料はグロープラグ36から熱を受けて、場合によっては燃焼し、酸化促進部材32およびその周囲に到達する。そして、酸化促進部材32でその燃料の酸化、例えば燃焼が促される。特に、酸化促進部材32はここでは酸化触媒を含むので、酸化促進部材32の温度がその所定活性温度域内にあるとき、酸化促進部材32で燃料の酸化はより好適に促進される。なお、酸化促進部材32での燃料の酸化によって酸化促進部材32自体の温度が上昇し、これにより酸化促進部材32は昇温される。こうして加熱用ガスが生成されて上記排気浄化用部材20、22、24に流れる。このような加熱用ガスは燃料の酸化により高温を有することができる。
【0030】
また、このような加熱用ガスは改質燃料を含むことがある。酸化促進部材32の温度が高くなると、酸化促進部材32で未燃燃料中の炭素数の多い炭化水素が分解して、炭素数が少なく反応性の高い炭化水素が生成され、これによって燃料が反応性の高い燃料に改質される。換言すれば、酸化促進部材32は、一方では急速に発熱する急速発熱器を構成し、他方では、改質された燃料を排出する改質燃料排出器を構成する。
【0031】
このような燃料添加弁34およびグロープラグ36の作動は、エンジン運転状態、排気の流量、排気中の酸素濃度等に応じて、それらの作動を制御するための制御手段としての機能を有する制御装置50により制御される。それらの作動状態には大きく分けて次の2つの状態がある。燃料添加弁34から燃料添加を行いながら、グロープラグ36による加熱を行ってその燃料の燃焼または改質を促す第1作動状態がある。また、燃料添加弁34から燃料添加を行うが、グロープラグ36による加熱を停止している第2作動状態がある。なお、グロープラグ36の先端部36aがある程度発熱するまで、燃料添加を行わない状態(第3作動状態)もある。
【0032】
このような構成を備えるエンジン10は、制御装置50に、各種値を検出する(推定することを含む)ための信号を電気的に出力する各種センサ類を備えている。ここで、その内のいくつかを具体的に述べる。エンジン回転速度を検出するためのエンジン回転速度センサ52が備えられている。また、エンジン負荷を検出するためのエンジン負荷センサ54が備えられている。なお、エンジン負荷センサ54として、スロットル開度センサ、アクセル開度センサ、エアフローメーター、吸気圧センサ等が使用可能である。さらに、排気通路14における排気の流量つまり流速を検出するための流量センサ56が設けられている。流量センサ56として、吸気通路に設けられたエアフローメーターが使用可能である。また、図示しないが、排気中の酸素濃度を検出するための酸素濃度センサや、排気中のNOx量を検出するためのNOxセンサ等が設けられている。そして、排気通路14の排気の温度を検出するための第1温度センサ58が設けられている。グロープラグ36近傍の排気管12aの温度を検出するための第2温度センサ60が設けられている。さらに、第3浄化部材24の温度を検出するための第3温度センサ62が設けられている。
【0033】
制御装置50は、CPU、記憶装置(例えばROM、RAM)、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むマイクロコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、上記各種センサ類が電気的に接続されている。これら各種センサ類からの出力信号または検出信号に基づき、予め設定されたプログラム等にしたがって円滑なエンジン10の運転ないし作動がなされるように、制御装置50は出力インタフェースから電気的に作動信号または駆動信号を出力する。こうして、燃料噴射弁の作動、燃料添加弁34の作動、グロープラグ36の作動(グロープラグ36への通電)、ポンプ40の作動などが制御される。
【0034】
制御装置50は内燃機関10全般の制御機能のみならず、上記したように、温度制御装置30における制御手段(制御装置)の機能を有する。つまり、燃料添加手段である燃料添加弁34の作動を制御する燃料添加制御手段、加熱手段であるグロープラグ36の作動を制御する発熱制御手段または加熱制御手段、ポンプ40の作動を制御するポンプ制御手段の各々として、制御装置50の一部は機能することができる。また、排気通路14における燃料の燃焼性能に影響を与える周囲環境の温度(以下、周囲環境温度)を求める、特にここでは推定する周囲環境温度導出手段の機能を制御装置50は有する。制御装置50は、周囲環境温度を求める周囲環境温度導出手段に含まれる、加熱部温度導出手段および副周囲環境温度導出手段のそれぞれの機能を有する。加熱部温度導出手段は、グロープラグ36への供給熱量を求める供給熱量導出手段を含み、ここでは供給熱量導出手段はグロープラグ36への通電電力および通電時間に基づいてグロープラグ36への供給熱量を求めることができる。そして、加熱部温度導出手段は、グロープラグ36への供給熱量に基づいてグロープラグ36の加熱部である先端部36aの温度を求めることができる。また、副周囲環境温度導出手段は、加熱部温度導出手段により求められた温度に基づいて周囲環境温度を求めることができる。そして、制御装置50は、制御手段として、周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度に基づいて、燃料添加弁34およびグロープラグ36の各作動を制御する。
【0035】
エンジン10では、吸入空気量、エンジン回転速度など、すなわちエンジン負荷およびエンジン回転速度で表されるエンジン運転状態に基づいて、所望の出力を得るように、燃料噴射量(燃料量)、燃料噴射時期が設定される。そして、それら燃料噴射量、燃料噴射時期に基づいて、燃料噴射弁からの燃料の噴射が行われる。
【0036】
そして、温度制御装置30では、例えば、エンジン始動時、排気浄化用部材の温度が所定温度以上に早期に上がるように、特にここでは第3浄化部材24の温度が第3浄化部材24の所定活性温度域内に早期に達するように、燃料添加弁34およびグロープラグ36が作動させられる。つまり、グロープラグ36に通電され、その先端部36aに向けて燃料添加弁34から燃料が噴射される。この燃料を含むまたはこの燃料に起因して生じたガスは酸化促進部材32やその周囲を通過して排気浄化用部材に至る。このようなエンジン始動時の排気浄化用部材へのガスの供給は、エンジン始動開始時から行われ、第3浄化部材24の温度がその所定活性温度域内の所定温度以上になるまで実行される。なお、ここでは第3浄化部材の所定活性温度域内の所定温度は、その所定活性温度域の下限温度であり、例えば200℃に設定されている。ただし、このようなエンジン始動時の排気浄化用部材への加熱用ガスの供給は、排気浄化用部材の温度が早期に高まったとしても、エンジン暖機が完了するまで継続されるとよい。この場合、エンジン暖機完了はエンジン10の冷却水温に基づいて判断される。例えば、排気浄化用部材の温度が早期に高まって、その後、エンジン10の冷却水温が所定温度(例えば70℃)以上になってエンジン暖機完了と制御装置50が判定したとき、制御装置50は、燃料添加弁34の作動とグロープラグ36の作動とを共に停止する。
【0037】
さらに、第3浄化部材24の温度が上記した所定活性温度域内に達した後、第3浄化部材24の温度をその所定活性温度域内に保つように、温度制御装置30が機能する。具体的には、第3浄化部材24の温度がその所定活性温度域内の下限温度域(例えば200℃以上250℃以下の温度域)にあるとき、燃料添加弁34から燃料が添加されると共にグロープラグ36に通電される(グロープラグが作動される)。
【0038】
ただし、ここでは、グロープラグ36への通電は、排気の流量および排気中の酸素濃度に応じて調節されるので、上記した場合においても行われないときがある。つまり、第3浄化部材24の温度を上記した所定活性温度域内に上げてそこに維持するために、燃料添加弁34およびグロープラグ36は選択的に上記第1作動状態または上記第2作動状態にされる。
【0039】
ところで、上記した燃料添加弁34からの燃料の添加量、添加間隔およびグロープラグ36への供給電力はそれぞれに対応する所定値(基準値)を基準にしてその都度設定され、設定された値(以下、制御目標値)にしたがって燃料添加弁34およびグロープラグ36の作動が制御される。制御装置50は、その時々の周囲環境温度に基づいてその基準値を修正して(補正して)、制御目標値を定める。本実施形態では、制御装置50は、周囲環境温度として、グロープラグ36よりも下流側の排気通路を区画形成する部材である排気管(以下、下流側排気管)12aの温度(以下、下流側排気管温度)を推定して求める。ただし、下流側排気管12aは、好ましくは、グロープラグ36よりも下流側かつ第1浄化部材20よりも上流側の排気管である。そして、下流側排気管温度に基づいて予め実験により設定されたデータを検索することで補正値が求められ、上記基準値に対して該補正値が適用される。
【0040】
ここで、下流側排気管温度の燃料への影響を図2および図3に基づいて説明する。図2は、下流側排気管温度と、下流側排気管12aへの燃料付着量との関係を概念的に表すグラフである。下流側排気管温度が高くなるにしたがって、燃料付着量は少なくなる傾向を示す。また、図3は、下流側排気管温度と、下流側排気管周囲での燃料の燃焼性能ここでは燃料の気化に要する時間の逆数との関係を概念的に表すグラフである。下流側排気管温度が高くなるにしたがって、燃料の燃焼性能は高まる傾向を示す。
【0041】
そこで、ここでは、下流側排気管温度が予め設定された所定値未満のとき、図2および図3のデータ等に基づいて設定された第1データを下流側排気管温度で検索することで、燃料の燃焼性能を高めるための補正値が求められる。具体的には、燃料添加弁34からの燃料添加量が基準燃料量よりも増えるように補正値が定められる。また、同様にして、このとき、グロープラグ36の先端部36aの温度をそれまでの温度よりも高めるようにグロープラグ36への通電電力を高めるための補正値が定められる。
【0042】
他方、下流側排気管温度が所定値以上のとき、図2および図3のデータ等に基づいて設定された第2データを下流側排気管温度で検索することで、燃料の燃焼性能の過度の高まり等を抑制するように補正値が求められる。具体的には、燃料添加弁34からの燃料添加量が基準燃料量よりも減るように補正値が定められる。また、同様にして、このとき、燃料添加弁34からの燃料添加間隔が基準添加間隔よりも長くなるように、別の補正値が定められる。
【0043】
なお、このような補正値を設定するための上記第1データおよび第2データ等は、スモークの発生を抑制するように定められている。
【0044】
ここで、周囲環境温度の導出に関して説明する。周囲環境温度を求めるために、まずグロープラグ36の加熱部である先端部36aの温度が求められる。グロープラグ36の先端部36aの温度Tgは次の(1)式から(4)式の関係を用いて求められる。
【0045】
【数1】

【0046】
Q1は排気通路画成部材である下流側排気管12a等へ熱伝導によりグロープラグ36から逃げる熱量であり、Q2は排気通路14のガスへの熱伝達によりグロープラグ36から逃げる熱量であり、Q3は下流側排気管12a等へ輻射によりグロープラグ36から逃げる熱量である。そのような熱の移動は、図4に、伝熱に関する矢印a1、a2および輻射に関する矢印b1、b2、b3で模式的に表されている。また、C1、C2、C3の各々は、定数として予め設定されている熱容量であり、それら伝熱および輻射の影響を受ける部位等の熱容量である。また、λ、α、βの各々は定数として予め実験により設定されている。また、Cgはグロープラグ36の先端部36aの熱容量であり、Qgはグロープラグ36への供給熱量である。グロープラグ36への供給熱量は、グロープラグ36への通電電力および通電時間に基づいて制御装置50により求められる。そして、Tpipeはグロープラグ36近傍の排気管12aの温度であり、第2温度センサ60からの出力信号に基づいて求められる。また、Tairはグロープラグ36よりも上流側の排気通路のガスつまり排気の温度であり、第1温度センサ58からの出力信号に基づいて求められる。なお、TpipeおよびTairの両方または少なくとも一方は、エンジン運転状態に基づいて、つまりエンジン回転速度およびエンジン負荷に基づいて予め実験によって定められたデータを検索することで求められてもよい。
【0047】
そして、グロープラグ36の先端部36aの温度が求められたとき、上記(2)式から上記(4)式に加えて、次の(5)式の関係を用いることで、周囲環境温度としての下流側排気管温度Tupipeが求められる。ここで、Qburnは燃料の燃焼により下流側排気管12aに伝わる熱量であり、Tg、Tair、Tpipeを用いて都度設定される。また、Qvaporは添加燃料の気化により下流側排気管12aから奪われる熱量であり、Tair、Tpipeを用いて都度設定される。
【0048】
【数2】

【0049】
このように周囲環境温度に基づいて燃料添加弁34およびグロープラグ36の作動を制御することで、排気通路における燃料の燃焼性能を適切に制御することができる。したがって、排気浄化用部材の温度をより適切に調整することができる。
【0050】
なお、グロープラグ36周辺の温度が過度に高くなった場合、燃料が排気管12に弾かれ、液滴のまま燃焼状態に移行する現象が生じ得る。このような現象はスモークの発生を促す傾向にある。そこで、第2温度センサ60からの出力信号に基づいて求められる温度が第2所定値以上であるとき、特に、下流側排気管12a内での空燃比がリーンになるように燃料添加弁34からの添加燃料量の抑制および/または添加間隔を伸ばすことが行われ得る。なお、第2温度センサ60からの出力信号に基づいて求められる温度に代えて、上記した下流側排気管温度が用いられてもよい。
【0051】
以上、本発明を一実施形態に基づいて説明したが、以下に述べるように、種々の変更が可能である。
【0052】
上記実施形態では、燃料の周囲環境温度として下流側排気管温度Tupipeを求めて、該温度が所定値未満のとき添加燃料の燃焼性を高めるように、また該温度が所定値以上のとき添加燃料の燃焼を抑制するように燃料添加弁34およびグロープラグ36の作動を制御した。しかし、周囲環境温度として、他の温度を用いることができる。
【0053】
例えば、上記燃料通路37の温度を周囲環境温度として用いることができる。燃料通路37の温度Tturoは、燃料添加用延出管37aの温度に実質的に対応し、上記(2)式から上記(4)式に加えて、次の(6)式の関係を用いることで、求められ得る。ここで、Qoutは排気管12から外部に放出される熱量であり、予め実験により定められたデータを各種温度Tair、Tpipe等に基づいて検索することで求められる。
【0054】
【数3】

【0055】
また、グロープラグ36と酸化促進部材32との間、特にグロープラグ36の先端部36a近傍に、燃料添加弁34から添加された燃料の霧化を促す部材として衝突板を設けることができる。この衝突板は、燃料が衝突するための板部材(燃料衝突用板部材)である。この衝突板は、グロープラグ36の輻射熱を受け得る位置であってかつ燃料添加弁34から添加された燃料が直接衝突し得る位置に設けられるとよい。このような衝突板の温度は、下流側排気管温度Tupipeと同様に、上記(1)式から上記(5)式に実質的にあらわされた関係に基づいて求められ得る。この衝突板の温度は周囲環境温度として用いられることができる。
【0056】
そして、これら温度のうちの1つのみを用いるのではなく、複数の温度を一緒に用いることができる。これにより、燃料の燃焼性能に影響を与える周囲環境をより正確に把握することができるので、より適切な加熱用ガスの供給制御が可能になる。
【0057】
また、上記実施形態では、周囲環境温度に基づいて、燃料添加弁34およびグロープラグ36の両方の作動を制御したが、これらのうちの一方のみの作動が制御されてもよい。つまり、本発明は、下流側排気管温度Tupipe、燃料通路37の温度および衝突板の温度のうちの少なくとも1つを周囲環境温度として求めて、燃料添加弁34およびグロープラグ36のうちの少なくとも一方の作動を制御することを包含する。
【0058】
また、上記実施形態では、周囲環境温度が所定値未満のとき、燃料の燃焼性を高めるべく燃料添加弁34およびグロープラグ36の作動を制御したが、例えばガス量を変化させてもよい。この場合、周囲環境温度に基づいて補正値を求め、該補正値を用いて吸気スロットル弁の開度を通常時よりも閉じ側に制御する。これにより、排気通路14のガスの熱容量を低下させることができ、燃料の燃焼性能を高めることができる。
【0059】
以上、上記実施形態では、本発明はディーゼルエンジンに適用されたが、これに限定されず、本発明は、ポート噴射型式のガソリンエンジン、筒内噴射形式のガソリンエンジン等の各種の内燃機関に適用可能である。また、用いられる燃料は、軽油やガソリンに限らず、アルコール燃料、LPG(液化天然ガス)等でもよい。また、本発明が適用される内燃機関の気筒数、気筒配列形式などは如何なるものであってもよい。
【0060】
また、排気通路に設けられる排気浄化用部材の数、種類、構成および配列順序は、上記実施形態に限定されない。排気浄化用部材の数は1つでも、2つでも、4つでもよい。例えば、上記第3浄化部材よりも下流側に、酸化触媒を含む排気浄化用部材がさらに備えられてもよい。排気浄化用部材として、公知の種々の触媒、フィルタ等が用いられ得る。また、上記酸化促進部材32は、上記した構成を有する酸化触媒を含まなくてもよく、別の酸化機能を有する触媒を含むことができる。また、酸化促進部材32は備えられなくてもよい。
【0061】
また、排気浄化用部材の温度および酸化促進部材の温度の各々は温度センサを用いて検出される以外に例えばエンジンの運転状態に基づいて推定されることも可能である。さらに、排気の流量や流速は吸入空気量に基づいて推定される以外に例えば排気通路に設けた流速センサを用いて検出されたり、エンジンの運転状態に基づいて推定されたりすることも可能である。さらに、排気の温度は温度センサを用いて検出される以外に例えばエンジン運転状態に基づいて推定されることも可能である。
【0062】
なお、上記実施形態およびその変形例等では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明はこれらに限定されない。本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明には、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。なお、本発明は、内燃機関以外の種々の技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 排気浄化装置
10 内燃機関
14 排気通路
20 第1排気浄化用部材(第1浄化部材)
22 第2排気浄化用部材(第2浄化部材)
24 第3排気浄化用部材(第3浄化部材)
30 温度制御装置
32 酸化促進部材
34 燃料添加弁
36 グロープラグ
42 燃料添加装置
44 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に設けられた排気浄化用部材と、該排気浄化用部材よりも上流側の排気通路に位置付けられた加熱手段と、該加熱手段よりも上流側の排気通路に燃料を供給するように設けられた燃料添加手段とを備えた排気浄化装置であって、
前記加熱手段への供給熱量に基づいて、前記燃料添加手段から添加された燃料の燃焼性能に影響を与える周囲環境温度を求める周囲環境温度導出手段と、
該周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度に基づいて、前記燃料添加手段および前記加熱手段のうちの少なくとも一方の作動を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記周囲環境温度導出手段は、
前記加熱手段への供給熱量に基づいて、前記加熱手段の加熱部の温度を求める加熱部温度導出手段と、
該加熱部温度導出手段により求められた前記加熱部の温度に基づいて前記周囲環境温度を求める副周囲環境温度導出手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記周囲環境温度導出手段は、周囲環境温度として、前記加熱手段よりも下流側の排気通路を区画形成する部材の温度を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記燃料添加手段から添加された燃料を排気通路へ導くための燃料通路をさらに備え、
前記周囲環境温度導出手段は、周囲環境温度として、前記燃料通路の温度を求めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記加熱手段の加熱部近傍に設けられた燃料衝突用板部材をさらに備え、
前記周囲環境温度導出手段は、周囲環境温度として、前記燃料衝突用板部材の温度を求めることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度が所定値未満のとき、前記燃料添加手段からの燃料添加量を基準燃料量よりも増やすように前記燃料添加手段の作動を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の排気浄化装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度が所定値未満のとき、前記加熱手段の加熱部の温度をそれまでの温度よりも高めるように前記加熱手段の作動を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の排気浄化装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度が所定値以上のとき、前記燃料添加手段からの燃料添加量を基準燃料量よりも減らすように前記燃料添加手段の作動を制御することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の排気浄化装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記周囲環境温度導出手段により求められた周囲環境温度が所定値以上のとき、前記燃料添加手段からの燃料添加間隔を基準添加間隔よりも長くするように前記燃料添加手段の作動を制御することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の排気浄化装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の排気浄化装置を備えたことを特徴とする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−82707(P2012−82707A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227455(P2010−227455)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】