説明

接着剤封入組成物及びそれで作られた電子デバイス

有機エレクトロルミネセントデバイス、タッチスクリーン、光起電デバイス及び薄膜トランジスタのような電子デバイスに用いるための接着剤封入組成物が、本明細書に開示される。接着剤封入組成物は、多官能性(メタ)アクリレートモノマー及び粘着付与剤と組み合わされた1つ以上の環状オレフィンコポリマーを含む感圧接着剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子デバイスで用いられる封入接着剤組成物が開示される。より具体的には、環状オレフィンコポリマーを含む感圧性接着剤組成物であって、有機エレクトロルミネセントデバイス、タッチスクリーン、光起電デバイス、薄膜トランジスタなどの電子デバイスで用いられる組成物が開示される。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセントデバイスは、アノードとカソードとの間に有機電荷搬送層及び有機発光層を配置することによって提供される有機層(以下、「発光ユニット」と称されることもある)を含む。有機エレクトロルミネセントデバイスは、しばしば、高輝度発光を提供することができ、直流及び低電圧によって駆動される。有機エレクトロルミネセントデバイスは、全ての構成要素が固体材料で形成されており、かつ、フレキシブルディスプレイとして用いられる可能性を有する。
【0003】
あるエレクトロルミネセントデバイスの性能は、時間が経過すれば劣化することがある。例えば、発光強度、発光効率及び発光均一性のような発光特性は時間が経過すれば減少することがある。発光特性の劣化は、有機エレクトロルミネセントデバイスの中に浸透する酸素に起因する電極の酸化、デバイスの駆動による熱の発生に起因する有機材料の酸化分解、有機エレクトロルミネセントデバイスの中に浸透する空気中の湿気に起因する電極の腐食、又は有機材料の破壊によって引き起こされることがある。更に、その構造物の界面剥離は、発光特性の劣化を引き起こすこともある。界面剥離は、例えば、酸素又は水分の影響、及びデバイスを駆動させる間の熱生成の影響に起因することがある。熱は、隣接する層の間の熱膨張係数の相違によって生じる応力の生成に起因して、界面剥離を引き起こすことがある。
【0004】
有機エレクトロルミネセントデバイスは、デバイスが湿気及び/又は酸素と接触するのを防ぐため、時々ポリマー材料で封入される。しかし、多くのポリマー材料は、それらの気密封止特性、耐湿性、防湿性などのために、不十分である。熱硬化性ポリマー材料が用いられる場合、熱はその材料を硬化するために用いられ、そのことによって、有機発光層及び/若しくは電荷搬送層の劣化が生じることがあるか、又はデバイスの発光特性が、結晶化に起因して劣化することがある。光硬化性ポリマー材料が用いられる場合、その材料を硬化するために、紫外線がしばしば用いられ、そのことによって、有機発光層及び/又は電荷搬送層の劣化が生じることがある。ポリマー材料が硬化した後、デバイスが用いられるときに生じることのある、衝撃、たわみ又は振動に起因して、亀裂が入ることがあり、そのことによって、そのデバイスの性能特性の劣化が引き起こされることもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概して、接着剤封入組成物は、感圧接着剤を含む。本明細書では、1つの態様において、電子デバイスで用いられる接着剤封入組成物であって、環状オレフィンコポリマーと、多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、粘着付与剤とを含む接着剤封入組成物が開示される。いくつかの実施形態において、接着剤封入組成物は、光重合性であるか、又は熱重合性である場合がある。いくつかの実施形態において、接着剤封入組成物は、それぞれ、基板の上に配置された接着剤層の形態で提供されることがある。
【0006】
接着剤封入組成物は、有機エレクトロルミネセントデバイス、光起電デバイス及び薄膜トランジスタのような電子デバイスで用いられることがある。
【0007】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の「発明を実施するための形態」に記載される。課題を解決するための上記手段は、いかなる場合にも特許請求される発明の主題を限定するものとして解釈されるべきではなく、発明の主題は本明細書に記載される特許請求の範囲によってのみ定義される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】例示的な接着剤封入膜の概略的断面を示す。
【図1B】例示的な接着剤封入膜の概略的断面を示す。
【図1C】例示的な接着剤封入膜の概略的断面を示す。
【図1D】例示的な接着剤封入膜の概略的断面を示す。
【図2】有機発光ダイオードの概略的断面を示す。
【図3A】例示的な光電池の概略的断面を示す。
【図3B】例示的な光電池の概略的断面を示す。
【図3C】例示的な光電池の概略的断面を示す。
【図4A】例示的な膜トランジスタの概略的断面を示す。
【図4B】例示的な膜トランジスタの概略的断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
接着剤を用いた電子デバイスの封入は、接着剤が平坦でない表面と接触することをしばしば必要とする。適切な接触が得られない場合、空気が空隙として捕捉されることがあり、そのことによって、デバイスの耐用年数が減少する。良好な湿潤性を有する液状接着剤は、封入されたデバイスに空気の閉じ込めをほとんど又は全く与えない。しかし、液状接着剤は、その液状接着剤が、剥離ライナーのような基板の上に層として、しかも、接着剤パッチが、様々な形状にかつ一時に大量にキスカットされ得るか又はダイカットされ得るような具合に、提供される、ロールプロセスの影響を受け易い訳ではない。
【0010】
本明細書に開示される接着剤封入組成物は、基板上に配置された層の形態で提供することができ、しかも、デバイスが組立てられる間に加熱されるとき、その組成物は液化して、全ての表面を一様に濡らす。加えて、接着剤封入組成物は、それが硬化される前、ロール形態の層として存在するのに十分可撓性であり、したがって、ロールプロセスで用いられ得る。このように、ロールプロセスにおいて固体接着剤を利用し、かつ、空気をほとんど又は全く閉じ込めないために液体接着剤を利用するという利便性を得ることができる。更に、接着剤封入組成物は、室温で優れた強度を有する。また、この組成物は、接着剤が刃にほとんど又は全く付着することなく、容易にキスカットされ得るか又はダイカットされ得る。本明細書に開示される接着剤封入組成物は、オートクレーブ又は真空を用いれば、約80℃未満の温度で液状になる。
【0011】
接着剤封入組成物は、水分をほとんど又は全く含まず、そのことが、電子デバイスに及ぼす湿気の悪影響を最小限に抑える。もう1つの利点は、封入された電子部品の湿気への暴露が防止され得るか又は最小限に抑えられえるような具合に、この組成物が、例えば、24時間当り20g/m未満の低透湿性を有することである。デバイス中の電極のような金属構成要素の腐食が、防止され得るか又は最小限に抑えられ得るような具合に、本接着剤封入組成物は、酸性成分をほとんど又は全く含まないように設計されてもよい。
【0012】
本接着剤封入組成物は、約380nm〜約800nmの波長を有する電磁スペクトルの可視領域で高透過率(少なくとも約80%)を有することができる。本接着剤封入組成物が可視領域でそのような高透過率を有する場合、本組成物は、光を遮ることなく、電子デバイスの発光表面又は受光表面の側面に配置され得る。
【0013】
加えて、本接着剤封入組成物は、様々な電子デバイスに用いられ得る。そのようなデバイスにおいて、衝撃又は振動に起因する、封入の欠陥の発生は、最小限に抑えられ得る。本接着剤封入組成物が用いられ得る電子デバイスの1つのタイプは、フレキシブルディスプレイにおいてである。電子デバイスの他のタイプには、有機発光ダイオード、光起電デバイス、薄膜トランジスタ及びタッチスクリーンが挙げられる。
【0014】
本接着剤封入組成物は、環状オレフィンコポリマーを含む。環状オレフィンコポリマーは、環状オレフィン及び直鎖オレフィンを基剤とする透明、非晶質のコポリマーを含む。一般に、環状オレフィンコポリマーは、例えば、J.I.Kroschwitz,ed.,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.9,John,Wiley & Sons,Inc.,U.S.A.,1987,p.634のK.J.Ivin「Metathesis Polymerization」に記述されるオレフィンメタセシス触媒の存在下、それらオレフィンの重合によって調製されることがある。チーグラー重合を用いて、環状オレフィンコポリマーを調製することもある。
【0015】
環状オレフィンコポリマーは、その特性に基づいて選択され得る。有用な環状オレフィンコポリマーは、低吸水率、優れた水蒸気バリア性、高透明度、低弾性係数、及び高伸び率を有する。有用な環状オレフィンコポリマーは、ノルボルネン、ノルボルナジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテンのようなオレフィンのコポリマーを含む。その分子量は、約10,000〜約100,000に及び得る。いくつかの実施形態において、環状オレフィンコポリマーは、約60℃以上のTgを有する。いくつかの実施形態において、環状オレフィンコポリマーは、約60℃〜約140℃のTgを有する。環状オレフィンコポリマーは、TOPAS(Ticona Co.)、APEL(三井化学株式会社)、ARTON(JSR)、並びにZEONOR及びZEONEX(日本ゼオン株式会社)として入手できる。
【0016】
環状オレフィンコポリマーは、接着剤封入組成物の約10〜約70重量%、約10〜約50重量%、又は約20〜約40重量%の量で用いられることがある。あまりにも少ない環状オレフィンコポリマーが用いられる場合、容認できる膜の形成は得られず、また、その量があまりにも多い場合、加熱されるとき、容認できる流動性、すなわち湿潤性は得られない。
【0017】
環状オレフィンコポリマーは、概して、接着剤封入組成物に所望される程度の流動性を付与するために用いられ得る望ましい粘弾性特性を有することができる。歪レオメータを用いて、様々な温度での弾性(貯蔵)係数G’、及び粘性(損失)係数G”を決定することができる。次いで、G’及びG”を用いて、比tan(δ)=G”/Gを決定することができる。一般に、tan(δ)値が大きければ大きいほど、それだけ材料は粘着性材料の特性を示し、また、tan(δ)値が小さければ小さいほど、それだけ材料は弾性固体の特性を示す。いくつかの実施形態において、接着剤封入組成物が約100℃の温度である場合、本組成物が、比較的小さい頻度で、少なくとも約0.8のtan(δ)値を有するような具合に、環状オレフィンコポリマーは選ばれ得る。このようにして、本組成物は、空気をほとんど又は全く閉じ込めないで、平坦でない表面の上を十分に流れることができる。
【0018】
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、飽和又は不飽和であることができ、脂肪族官能基、脂環式官能基、芳香族官能基、複素環式官能基、及び/又はエポキシ官能基を含むことができる。いくつかの実施形態において、モノマーとして、長鎖飽和アルキル(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート/エポキシモノマー、又はそれらの組み合わせを利用することができる。なぜなら、それらは、環状オレフィンコポリマーと粘着付与剤との混和性を改善し得るからである。多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、不飽和であるか又は水酸基若しくはアルコキシ基のような様々な基で飽和され得る。
【0019】
例示的な長鎖アルキル(メタ)アクリレートモノマーには、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び水素化ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられるが、それらに限定されない。例示的な脂環式(メタ)アクリレートには、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジイルメタクリレート、ペンタメチルピペリジイルメタクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル化エポキシが挙げられるが、それらに限定されない。
【0020】
いくつかの実施形態において、2、3、4、又は更には4を超える(メタ)アクリレート基を有する多官能性(メタ)アクリレートモノマーを利用することができる。多官能性(メタ)アクリレートモノマーの混合物を利用できることも、当業者には理解されるであろう。
【0021】
ポリイソブチレン樹脂について上述されるような被接着面を得るための接着剤封入組成物の接着性及び湿潤性を最適化するために、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを選択することができる。多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、接着剤封入組成物の接着性及び保持強度を増大させることができる。なぜなら、このモノマーは、硬化されて樹脂を形成するからである。
【0022】
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、接着剤封入組成物の約10〜約40重量%の量で用いられ得る。多官能性(メタ)アクリレートモノマーがあまりにも少なく添加された場合、満足できる湿潤性を得ることはできず、また、その量があまりにも多い場合、硬化後の膜はあまりにも脆弱であり、取り扱うことができない。
【0023】
一般に、粘着付与剤は、接着剤封入組成物の粘着性を増大させる化合物又は化合物の混合物であればいかなるものでもよい。望ましくは、粘着付与剤は、透湿性を増大させない。粘着付与剤は、水素化炭化水素樹脂、部分的に水素化された炭化水素樹脂、非水素化炭化水素樹脂、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0024】
粘着付与剤の例には、水素化テルペン系ス樹脂(例えば、CLEARON P,M及びK(ヤスハラケミカル)という商品名で市販されている樹脂)、水素化樹脂又は水素化エステル系樹脂(例えば、FORAL AX(Hercules Inc.)という商品名で市販されている樹脂)、FORAL 105(Hercules Inc.)、PENCEL A(荒川化学工業株式会社)、ESTERGUM H(荒川化学工業株式会社)、及びSUPER ESTER A(荒川化学工業株式会社)、不均化樹脂(disproportionate resins)又は不均化エステル系樹脂(例えば、PINECRYSTAL(荒川化学工業株式会社)という商品名で市販されている樹脂)、ペンテン、イソプレン、ピペリンのようなC5留分と、石油ナフサの熱分解によって生成される1,3−ペンタジエンとを共重合させることによって得られるC5−タイプ石油樹脂の水素化樹脂である水素化ジシクロペンタジエン系樹脂(例えば、ESCOREZ 5300及び5400シリーズ(Exxon Chemical Co.)という商品名で市販されている樹脂)、EASTOTAC H(Eastman Chemical Co.)、部分的に水素化された芳香族の変性ジシクロペンタジエン系樹脂(例えば、ESCOREZ 5600(Exxon Chemical Co.))という商品名で市販されている樹脂)、インデン、ビニルトルエンのようなC9留分と、石油ナフサの熱分解によって生成されたα−又はベータ−メチルスチレンとを共重合させることによって得られるC9−タイプ石油樹脂の水素化によって生じる樹脂(例えば、ARCON P又はARCON M(荒川化学工業株式会社)という商品名で市販されている樹脂)、上記のC5留分とC9留分との共重合石油樹脂の水素化によって生じる樹脂(例えば、IMARV(出光石油化学株式会社)という商品名で市販されている樹脂)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0025】
非水素化炭化水素樹脂には、C5、C9、C5/C9の炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂、芳香族化合物変性ポリテルペン樹脂又はロジン誘導体が挙げられる。非水素化炭化水素樹脂が用いられる場合、それは、典型的には、別の水素化粘着付与剤又は部分的に水素化された粘着付与剤と組み合わせて用いられる。非水素化炭化水素樹脂は、接着剤封入組成物の全重量に対して約30重量%未満の量で用いられることがある。
【0026】
いくつかの実施形態において、粘着付与剤は、水素化炭化水素樹脂と、部分的に、水素化された脂環式炭化水素樹脂とを含む。水素化された脂環式炭化水素樹脂の具体例には、ESCOREZ 5340(Exxon Chemical)が挙げられる。いくつかの実施形態において、水素化された脂環式炭化水素樹脂は、水素化されたジシクロペンタジエン系樹脂である。なぜなら、その樹脂は、透湿性が低く、かつ透明性があるからである。
【0027】
粘着付与剤は、少なくとも部分的に、本組成物の接着性、使用温度、製造の容易さ、等によって変化することがある軟化温度又は軟化点(環球式軟化温度)を有することがある。環球式軟化温度は、一般に約50℃〜200℃であることがある。いくつかの実施形態において、環球式軟化温度は、約80℃〜150℃である。環球式軟化温度が80℃未満である場合、粘着付与剤は、電子デバイスによる発光に基づいて生じる熱に起因して、分離及び液状化を被ることがある。このことによって、有機エレクトロルミネセントデバイスが接着剤封入組成物で直接封入されるとき、発光層のような有機層の劣化が引き起こされることがある。一方、環球式軟化温度が150℃を超える場合、添加される粘着付与剤の量は非常に低いので、関連する諸特性の十分な改善が得られない可能性がある。
【0028】
粘着付与剤は、接着剤封入組成物の約20〜約70重量%、又は約30〜約60重量%の量で用いられ得る。粘着付与剤があまりにも少なく添加された場合、容認できる混和性は得られないことがあり、また、その量があまりにも大きい場合、硬化後の膜は、非常に脆弱であるので取り扱うことができない。
【0029】
いくつかの実施形態において、接着剤封入組成物は、その接着剤封入組成物の全重量に対して、約10〜約70重量%の環状オレフィンコポリマーと、約10〜約40重量%の多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、約20〜約70重量%の粘着付与剤と、を含む。いくつかの実施形態において、接着剤封入組成物は、その接着剤封入組成物の全重量に対して、約10〜約50重量%の環状オレフィンコポリマーと、約10〜約40重量%の多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、約30〜約60重量%の粘着付与剤とを含む。
【0030】
多官能性(メタ)アクリレートモノマーが用いられる場合、これらの重合を開始するために、接着剤封入組成物中に熱重合開始剤及び/又は光重合開始剤を用いることができる。一般に、重合開始剤の選択は、少なくとも部分的に、接着剤封入組成物中に用いられる特定成分だけでなく、硬化の所望速度にもよる。
【0031】
熱重合開始剤の例には、アゾ化合物、キニーネ剤、ニトロ化合物、ハロゲン化アシル、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール、クロロトリアジン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、フェノン、並びに、過酸化ジラウロイル、及びNOF社からPERHEXA TMHとして入手可能な1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのような有機過酸化物が挙げられる。熱重合開始剤は、しばしば、接着剤封入組成物の全重量に基づき、約0.01重量%〜約10重量%又は約0.01重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。熱重合開始剤の混合物を用いてもよい。
【0032】
光重合開始剤の例には、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾイル化合物、アントラキノン、チオキサントン、フェニルオキシド及びジフェニルホスフィンオキシドのようなホスフィンオキシド、ケトン、並びにアクリジンが挙げられる。光重合開始剤の例には、DAROCUR(Ciba Specialty Chemicals)、IRGACURE(Ciba Specialty Chemicals)、及びLUCIRIN TPOとして入手可能なエチル2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネートのようなLUCIRIN(BASF)という商品名で入手可能なものも挙げられる。光重合開始剤は、UVI(Union Carbide Corp.)、SP(Adeka Corp.)、SI(Sanshin Chemical Co.)、KI(Degussa AG)、PHOTOINITIATOR(Rodia Inc.)、CI(日本曹達株式会社)、及びESACURE(Lamberdi SpA Chemical Specitalies)という名称で入手可能なカチオン性光重合開始剤を更に含んでもよい。光重合開始剤は、しばしば、接着剤封入組成物の全重量に基づき約0.01重量%〜約10重量%又は約0.01重量%〜約5重量%の濃度で用いられる。光重合開始剤の混合物が用いられることもある。
【0033】
熱重合開始剤が用いられる場合、有機エレクトロルミネセントデバイスは、向かい合う一対の電極を提供する工程と、少なくとも1つの有機発光層を有し、それら向かい合う一対の電極の間に配置された発光ユニットを提供する工程と、発光ユニットに接して、発光ユニットの上方に、又は発光ユニットの周りに配置された、本明細書に開示される接着剤封入組成物のいずれか及び熱重合開始剤を含む接着剤封入組成物を提供する工程と、その接着剤封入組成物を加熱して、重合された接着剤封入組成物を形成する工程と、によって作られ得る。いくつかの実施形態において、接着剤封入組成物を加熱する工程は、その組成物を約110℃未満の温度まで加熱する工程を含む。
【0034】
光重合開始剤が用いられる場合、有機エレクトロルミネセントデバイスは、向かい合う一対の電極を提供する工程と、少なくとも1つの有機発光層を有し、それら向かい合う一対の電極の間に配置された発光ユニットを提供する工程と、発光ユニットに接して、発光ユニットの上方に、又は発光ユニットの周りに配置された、本明細書に開示される接着剤封入組成物のいずれか及び紫外線開始剤を含む接着剤封入組成物を提供する工程と、その接着剤封入組成物に紫外線を当てて、重合された接着剤封入組成物を形成する工程と、によって作られ得る。
【0035】
1つの実施形態において、オニウム塩は、金属イオン混入のレベルが低いので、オニウム塩を用いることができる。オニウム塩には、ヨードニウム、スルホニウム及びホスホニウムの錯体塩が包含されるが、それらに限定されない。一般に有用なオニウム塩は、一般式Yのものであってもよい。Yは、アリールジアルキルスルホニウム、アルキルジアリールスルホニウム、トリアリールスルホニウム、ジアリールヨードニウム及びテトラアリールホスホニウムカチオンであって、各々のアルキル基及びアリール基は置換されていても良い。XはPF、SbF、CFSO、(CFSO、(CFSO、(Cアニオンを含んでもよい。
【0036】
上記構成要素に加えて、接着剤封入組成物は任意の添加剤を含有してもよい。例えば、接着剤封入組成物は柔軟剤を含有することができる。柔軟剤は、例えば、加工性を向上させるために組成物の粘度を調節する(例えば、組成物を押出成形に適するようにする)ため、組成物のガラス転移温度の低下により低温での初期接着剤を高めるため、又は凝集性と接着剤との間の受容可能なバランスを提供するために有用であり得る。1つの実施形態において、柔軟剤は、低揮発性を有し、透明であり、着色及び/又は臭気がないように選択する。
【0037】
利用され得る柔軟剤の例には、石油系炭化水素(例えば、芳香族タイプ、パラフィンタイプ及びナフテンタイプ)、液状ゴム又はそれらの誘導体(例えば、液状ポリイソブチレン樹脂、液状ポリブテン及び水素化液状ポリイソプレン)、ペトロラタム、並びに石油系アスファルトが挙げられるが、それらに限定されない。柔軟剤が利用される実施形態において、1つの柔軟剤又は複数の柔軟剤の組み合わせを使用することができる。
【0038】
柔軟剤の具体例には、NAPVIS(BP Chemicals)、CALSOL 5120(ナフテン系ス油、Calumet Lubricants Co.)、KAYDOL(パラフィン系白色鉱油、Witco Co.)、TETRAX(新日本石油株式会社)、PARAPOL 1300(Exxon Chemical Co.)、及びINDOPOL H−300(BPO Amoco Co.)という商品名で市販されているものが挙げられるが、それらに限定されない。柔軟剤の他の具体例には、他のポリイソブチレン樹脂ホモポリマー、ポリブチレン(例えば、出光興産株式会社から市販されている材料)、ポリブテン(例えば、日本油脂株式会社から市販されている材料)、及び他の液状ポリブテンポリマーが包含される。柔軟剤の更に他の具体例には、ESCOREZ 2520(液状芳香族石油炭化水素樹脂、Exxon Chemical Co.)、REGALREZ 1018(液状水素化芳香族炭化水素樹脂、Hercules Inc.)、及びSYLVATAC 5N(変性ロジンエステルの液状樹脂、Arizona Chemical Co.)という商品名で市販されているものが包含される。
【0039】
1つの実施形態において、柔軟剤は飽和炭化水素化合物である。別の実施形態において、柔軟剤は、液状ポリイソブチレン樹脂又は液状ポリブテンである。ポリイソブチレン樹脂と、末端に炭素−炭素二重結合を有するポリブテンと、変性ポリイソブチレン樹脂と、を利用することができる。変性ポリイソブチレン樹脂は、水素化、マレイン化、エポキシ化、アミノ化、又は類似の方法によって変性された二重結合を有する。
【0040】
有機エレクトロルミネセントデバイスは接着剤封入組成物で直接封入されるので、比較的高い粘度を有する柔軟剤を利用して、柔軟剤が接着剤封入組成物から分離されるのを防止することができ、かつ、電極と発光ユニットとの間の界面の中に浸透するのを防止することができる。例えば、100℃で500〜5,000,000mm/秒の動粘度を有する柔軟剤を用いることができる。別の実施形態では、10,000〜1,000,000mm/秒の動粘度を有する柔軟剤を用いることができる。柔軟剤は、様々な分子量を有することができるが、有機エレクトロルミネセントデバイスが接着剤封入組成物で直接封入されるので、柔軟剤は、約1,000〜500,000g/モルの重量平均分子量を有することができる。更に別の実施形態では、柔軟剤が、接着剤封入組成物から分離するのを防止するために、かつ、有機発光ユニットの層のような有機材料を溶解するのを防止するために、その重量平均分子量は、約3,000〜100,000g/モルであり得る。
【0041】
用いられる柔軟剤の量は、一般に限定されないが、接着剤封入組成物の所望の接着力、耐熱性及び剛性を考慮して、柔軟剤は、典型的には、全接着剤封入組成物に基づき約50重量%以下の量で用いられることがある。他の実施形態において、接着剤封入組成物は、約5重量%〜約40重量%の柔軟剤を含有する。用いられる柔軟剤の量が50重量%を超える場合、過度の可塑化が生じる可能性があり、そのことは、耐熱性及び剛性に影響を与える可能性がある。
【0042】
接着剤封入組成物には、充填剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、安定剤、又はそれらのある組み合わせを添加することもできる。添加剤の量は、典型的には、それが多官能性(メタ)アクリレートモノマーの硬化速度に悪影響を及ぼさないように、又は、それが接着剤封入組成物の接着物性に悪影響を及ぼさないように選ばれる。
【0043】
利用され得る充填剤の例には、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びドロマイト)、ケイ酸塩(例えば、カオリン、か焼クレー、ピロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、滑石、アタパルガイト及び珪灰石)、ケイ酸(例えば、珪藻土及びシリカ)、水酸化アルミニウム、パーライト(palaite)、硫酸バリウム(例えば、沈降硫酸バリウム)、硫酸カルシウム(例えば、セッコウ)、亜硫酸カルシウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、デシカント(dessicant)(例えば、酸化カルシウム及び酸化バリウム)、並びにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0044】
充填剤は、様々な粒径を有することができる。例えば、可視範囲の高透過率を有する接着剤封入組成物を提供することが所望される場合、充填剤の平均一次粒径は、1〜100nmの範囲であることがある。別の実施形態において、充填剤は、5〜50nmの範囲の平均一次粒径を有することがある。更に、板状又は鱗片状の充填剤を用いて低透湿性を改善する場合、それらの平均一次粒径は、0.1〜5μmの範囲であり得る。更に、接着剤封入組成物における充填剤の分散性を考慮すれば、疎水性表面処理された親水性充填剤を用いることができる。任意の従来の親水性充填剤を疎水処理によって変性することが可能である。例えば、親水性充填剤の表面は、n−オクチルトリアルコキシシランのような疎水基を含有するアルキル、アリール若しくはアラルキルシランカップリング剤、ジメチルジクロロシラン及びヘキサメチルジシラザンのようなシリル化剤、ヒドロキシル基末端を有するポリジメチルシロキサン、ステアリルアルコールのような高級アルコール、又はステアリン酸のような高級脂肪酸で処理され得る。
【0045】
シリカ充填剤の例には次が挙げられるがこれらに限定されない:ジメチルジクロロシランで処理された製品、例えば、商品表記AEROSIL−R972、R974又はR976(日本アエロジル株式会社)で市販;ヘキサメチルジシラザンで処理された製品、例えば、商品表記AEROSIL−RX50、NAX50、NX90、RX200又はRX300(日本アエロジル株式会社)で市販;オクチルシランで処理された製品、例えば、商品表記AEROSIL−R805(日本アエロジル株式会社)で市販;ジメチルシリコーン油で処理された製品、例えば、商品表記AEROSIL−RY50、NY50、RY200S、R202、RY200又はRY300(日本アエロジル株式会社)で市販;及び商品表記CAB ASIL TS−720(Cabot Co.,Ltd.)で市販。
【0046】
充填剤は単独で又は組み合わせて使用してもよい。充填剤を含む実施形態において、添加される充填剤の量は、一般に、接着剤封入組成物の全量に基づき0.01〜20重量%である。
【0047】
粒子の表面変性剤としては用いられないカップリング剤を添加して、本封入組成物の接着剤を改善することができる。カップリング剤は、典型的には、有機成分と反応するか若しくは相互作用する部分と、無機成分と反応するか若しくは相互作用する部分とを有する。カップリング剤は、接着剤封入組成物に添加されるとき、基板上に配置されたポリマー及びあらゆる導電性金属(例えば、ITO)のような無機表面と反応するか若しくは相互作用することができる。このことによって、ポリマーと基板との間の接着剤を改善することができる。有用なカップリング剤の例には、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学株式会社からのKBM502)、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学株式会社からのKBM802)、及びグリシジルプロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社からのKBM403)が挙げられる。
【0048】
紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール系化合物、オキサゾール酸アミド系化合物(oxazolic acid amide-based compounds)及びベンゾフェノン系化合物が挙げられるが、それらに限定されない。紫外線吸収剤は、用いられる場合、接着剤封入組成物の全量に基づき約0.01〜3重量%の量で用いられ得る。
【0049】
使用可能な酸化防止剤の例には、ヒンダードフェノール系化合物及びリン酸エステル系化合物が挙げられるがこれらに限定されない。そのような化合物は、用いられる場合、接着剤封入組成物の全量に基づき約0.01〜2重量%の量で用いられ得る。
【0050】
用いることのできる安定剤の例には、フェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、イミダゾール系安定剤、ジチオカルバメート系安定剤、リン系安定剤、硫黄エステル系安定剤、及びフェノチアジンが挙げられるが、それらに限定されない。そのような化合物は、利用される場合、接着剤封入組成物の全量に基づき約0.001〜3重量%の量で用いられることがある。
【0051】
接着剤封入組成物は当業者に既知の様々な方法により調製することができる。例えば、接着剤封入組成物は上記化合物を完全に混合することにより調製できる。組成物を混合するためにニーダー又は押出成形機などの任意の混合器を使用することができる。結果として得られる組成物は、接着剤封入組成物として用いることができるか、又は、他の成分と組み合わされて接着剤封入組成物を形成することができる。
【0052】
接着剤封入組成物は多様な形状で使用可能である。例えば、接着剤封入組成物は、スクリーン印刷法又は類似の方法を用いることによって、デバイス又はその構成要素のいずれか、等に直接施用されることがある。接着剤封入組成物は、適切な基板に被覆されて、接着剤封入膜を形成することもできる。図1Aは、基板110と接着剤封入層120とを含む典型的な接着剤封入膜100Aの断面構造を示す。基板は、成形のために一時的に用いられることがあるか、又は基板は接着剤封入組成物を使用するまで一体化されてもよい。いずれの場合も、基板の表面を、例えばシリコーン樹脂で放出処理することが可能である。接着剤封入組成物の被覆は、当業者に知られている方法、例えば、しごき塗、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、カレンダリング、押出し加工(extrusion)、等を用いて実施され得る。
【0053】
接着剤封入膜に用いられる支持体は、例えば、一枚の紙、プラスチック及び/若しくは金属ホイルを含むバッキングを有することができる。バッキングは、上述の基板の表面に類似する剥離ライナーであって、それが離型剤(例えば、シリコーン樹脂)で処理されるような剥離ライナーであってもよい。
【0054】
接着剤封入層は、様々な厚さ、例えば、約5〜200μm、約10〜100μm、又は約25〜100μmの厚さを有することができる。接着剤膜は、当該膜を裏材から分離することにより封入剤として使用してもよい。1つの実施形態において、接着剤封入層の外面は、剥離ライナーのような手段で保護することができる。
【0055】
図1Aに示される構造物以外の接着剤封入膜は、様々な形態で提供され得る。例えば、接着剤封入組成物が電子デバイスのための封入剤として用いられる場合、接着剤封入膜は、それを電子デバイスの構成要素と組み合わせることによって用いられることがある。
【0056】
例えば、接着剤封入膜は、図1Bに示されるような基板110に向かい合う接着剤封入層120の上に配置されるガスバリア膜130を更に有することができる。ガスバリア膜130は、水、蒸気、又はそれら両方に対するバリア特性を有する膜である。いずれかの好適な材料及び構造は、ガスバリア膜130のために用いられることがある。ガスバリア層は、SiO、SiN、DLF(ダイヤモンド様膜)又はDLG(ダイヤモンド様ガラス)のような無機材料を更に含んでもよい。ガスバリア層は、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、フルオロカーボンからなる群から選択されるポリマー膜と、互い違いのポリマー層及び無機層を有する多層膜とを更に含んでもよい。互い違いのポリマー層及び無機層を含む多層膜は、一般に、可撓性の可視光透過性基板の上に配置される。これらの多層膜は、米国特許第7,018,713(B2)号(Padiyath et al.)に記載されている。
【0057】
また、接着剤封入膜は、図1C及び1Dに示されるように、捕捉剤140を更に含み得る。図1Cにおいて、基板は、捕捉剤と向かい合う接着剤層の一部として配置されているか、又はガスバリア膜130と、接着剤封入組成物120との間に配置されている。図1Dにおいて、捕捉剤は、接着剤封入組成物の一部と基板110に隣接する層との間に配置されている。捕捉剤は、吸水剤又は乾燥剤として機能する材料を含んでもよい。任意の好適な材料及び構造を捕捉層として用いることができる。捕捉層は、金属又は金属酸化物(例えば、Ca、Ba、CaO若しくはBaO)のような無機材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、その形状は、一般に、膜様又はシート様形態である。また、図1Dに示されるように、各層の領域及び形状は、接着剤封入層の少なくとも一部が基板に直接接着するような具合に、調整され得る。
【0058】
接着剤封入膜は、ガスバリア膜と捕捉剤との両方を含むことができる。このようにして、電子デバイスの封入を改善することができ、同時に、封入プロセスを単純化することができる。
【0059】
接着剤封入膜は、スクリーン印刷法、スピンコーティング法、ドクターブレード法、カレンダー法、回転ダイ、Tダイ、等を用いる押出し形成法を包含するが、それらに限定されない様々な方法によって作製され得る。
【0060】
いくつかの方法において、バッキング110の上に接着剤封入膜を形成する工程と、離型膜として働かす工程と、次いで、その接着剤膜をエレクトロルミネセントデバイスの要素に移す工程とを含む積層方法が用いられる。これらの方法は、ガスバリア膜と捕捉剤とを形成するためにも用いられ得る。
【0061】
本明細書には、有機エレクトロルミネセントデバイスも開示される。有機エレクトロルミネセントデバイスは、一対の向かい合う電極と、少なくとも1つの有機発光層を有し、それら一対の向かい合う電極の間に配置された発光ユニットと、その発光ユニットに接して、その発光ユニットの上方に、又はその発光ユニットの周りに配置された、本明細書に記述される接着剤封入組成物のいずれか1つを含む接着剤封入組成物と、を含むことができる。
【0062】
有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、電極及び発光ユニットは、積層本体と称されることがある。積層本体は、様々な構造を有することができる。例えば、積層本体は、1つの発光ユニット又は2つ以上の発光ユニットの組み合わせを有することができる。積層体の構造を以下に説明する。
【0063】
いくつかの実施形態において、積層本体は、デバイス基板の上に保持される。図2は、基板201の上に配置された積層本体205を含む典型的な有機エレクトロルミネセントデバイス200を示す。積層本体は、接着剤封入層206と任意的要素207及び208とで封入されている。積層本体205は、アノード202、発光ユニット203及びカソード204を有する。
【0064】
デバイス基板は、剛性若しくは硬質で(容易には曲げられない)あってもよく、又はそれは可撓性であってもよい。硬質基板はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス及び金属などの無機材料を含んでもよく、又は、硬質基板はポリエステル、ポリイミド及びポリカーボネートのような樹脂材料を含んでもよい。可撓性基板は、樹脂材料、例えば、フッ素含有ポリマー(例えば、三フッ化ポリエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン(VDF)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂環式ポリオレフィン、又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーを含んでもよい。
【0065】
デバイス基板の形状、構造、大きさ、等は、限定されない。デバイス基板は、しばしば板形状を有する。デバイス基板は、透明、無色、半透明又は不透明であってもよい。基板は、SiO、SiN、DLF(ダイヤモンド様膜)、又はDLG(ダイヤモンド様ガラス)のような無機材料を含有するガスバリア層で被覆することができる。ガスバリア層の膜は、互い違いのポリマーと、それの上に配置される無機層とを有する、可撓性の可視光透過性基板を更に有することができる。これらの膜は、米国特許第7,018,713(B2)号(Padiyath et al.)に記述されている。ガスバリア層は、真空蒸着、物理蒸着及びプラズマCVD(化学蒸着)のような方法を用いて形成することができる。
【0066】
任意的要素207は、彩色フィルター層を含んでもよい。任意的要素208は、可撓性材料又は硬質材料を含んでもよい。例えば、任意的要素208は、硬質材料(典型的には、ガラス又は金属)を有する封止キャップ(封止プレート等と称されることもある)を有してもよい。任意的要素207はまた、ガスバリア層を更に含んでもよい。
【0067】
積層本体205は、一対の向かい合う電極202及び204(すなわち、アノード及びカソード)と、それら電極の間に配置される発光ユニット203とを有する。発光ユニットは、有機発光層を含む様々な層構造を有することがあり、このことは以下に記述される。
【0068】
アノードは、一般に、有機発光層にホール(hole)を供給する働きをする。既知のアノード材料であればいかなるものも使用することができる。アノード材料は、一般に、4.0eV以上の仕事関数を有し、アノード材料の好適な例には、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化インジウムスズ(ITO)のような半導体金属酸化物、金、銀、クロム及びニッケルのような金属、並びにポリアニリン及びポリチオフェンのような有機導電性材料が挙げられるが、これらに限定されない。アノードは、通常、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンめっき、CVD又はプラズマCVDによって形成される膜を含む。いくつかの用途において、アノードは、エッチング等によってパターン化にさらされることがある。アノードの厚さは、広範囲にわたって変化することがあるが、一般に、約10nm〜50μmであり得る。
【0069】
アノードと関連して用いられるカソードは、一般に、電子を有機発光層中に注入する働きをする。既知のカソード材料であればいかなるものも使用することができる。カソード材料は、一般に、4.5eV以下の仕事関数を有する。カソード材料の好適な例には、Li、Na、K及びCsのようなアルカリ金属、LiF/Alのような複合材料、Mg及びCaのようなアルカリ土類金属、金、銀、インジウム及びイッテルビウムのような希土類金属、並びにMgAgのような合金が包含されるが、それらに限定されない。カソードは、通常、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンめっき、CVD又はプラズマCVDによって形成された膜を含む。いくつかの用途において、カソードはエッチング等でパターン化にさらされることがある。カソードの厚さは、広範囲にわたって変化することがあるが、一般に、約10nm〜50μmである場合がある。
【0070】
アノードとカソードとの間に配置される発光ユニットは、様々な層構造を有してもよい。例えば、発光ユニットは、有機発光層のみを含む単層構造を有することがあるか、又は、有機発光層/電子輸送層、ホール輸送層/有機発光層、ホール輸送層/有機発光層、ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層、有機発光層/電子輸送層/電子注入層、及び電子注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層のような多層構造を有してもよい。これらの層の各々は、以下に記述される。
【0071】
有機発光層は、少なくとも1つの発光材料を含むことができ、また、所望により、ホール輸送材料、電子輸送材料、等を含有してもよい。発光材料は、特に限定されず、有機エレクトロルミネセントデバイスの製造に通常用いられる発光材料であればいかなる材料を利用してもよい。発光材料には、金属錯体、低分子量の蛍光着色材料、蛍光ポリマー化合物、又は燐光材料を挙げることができる。金属錯体の好適な例には、トリス(8−キノリノレート)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(8−キノリノレート)ベリリウム錯体(BeBq2)、ビス(8−キノリノレート)亜鉛錯体(Znq2)、及びフェナントロリン系ユーロピウム錯体(Eu(TTA)3(フェン)が挙げられるが、これらに限定されない。低分子量蛍光性着色材料の好適な例には、ペリレン、キナクリドン、クマリン及び2−チオフェンカルボン酸(DCJTB)が挙げられるが、これらに限定されない。蛍光ポリマー化合物の好適な例には、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、9−クロロメチルアントラセン(MEH−PPV)及びポリフルオレン(PF)が挙げられるが、それらに限定されない。燐光材料の好適な例には、白金オクタエチルポルフィリン及びシクロメタル化イリジウム化合物が挙げられる。
【0072】
有機発光層は、いずれかの好適な方法を用いて、上述の発光材料のような発光材料から形成されることがある。例えば、有機発光層は、真空蒸着又は物理蒸着のような膜形成法を用いて形成することができる。有機発光層の厚さは、特に限定されないが、一般に、約5nm〜100nmである。
【0073】
有機発光ユニットはホール輸送材料を含んでもよい。ホール輸送材料は、一般に、アノードからホールを噴射し、ホールを輸送し、又はカソードから噴射される電子をブロックする働きをする。ホール輸送材料の好適な例には、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン(TPD)、N,N,N’,N’−テトラキス(m−トリル)−1,3−フェニレンジアミン(PDA)、1,1−ビス[4−[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン(TPAC)、及び4,4’,4”−トリス[N,N’,N”−トリフェニル−N,N’,N”−トリ(m−トリル)アミノ]−フェニレン(m−MTDATA)が挙げられるが、それらに限定されない。ホール輸送層及びホール注入層は、真空蒸着及び物理蒸着のような膜形成法を用いることによって形成され得る。これらの層の厚さは、特に限定されないが、一般に、約5nm〜100nmであり得る。
【0074】
有機発光ユニットは、電子輸送材料を含むことができる。電子輸送材料は、電子を輸送するか、又はアノードから送られるホールをブロックする働きをする。電子輸送材料の好適な例には、2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、及び3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)AlQが挙げられるが、それらに限定されない。電子輸送層及び電子注入層は、それぞれ、真空蒸着及び物理蒸着のような膜形成法を用いて形成され得る。これらの層の厚さは、特に限定されないが、一般に、約5nm〜100nmである。
【0075】
本明細書に開示される有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、上述の積層本体は、接着剤封入組成物又は接着剤封入膜で封入され得る。いずれにしても、それらは、デバイス基板の上に配置される積層本体の露出面を完全に覆う層の形態で用いられ得る。
【0076】
有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、接着剤封入組成物又は接着剤封入膜は、それ自体接着特性を有する。例えば、その膜を積層する工程は、追加的接着剤層を必要としない。すなわち、接着剤を更に積層する工程が省略され、製造プロセスの簡易化及び信頼性を改善することができる。更に、従来の技術と異なり、デバイスの中に封入空間は、残っていない。なぜなら、積層本体が、接着剤封入組成物で覆われるからである。封入空間がないと透湿が減少し、それによって、デバイス特性の劣化が防止され、コンパクトで薄いデバイスが保持される。封入空間が望まれる場合、デバイスを取り囲む接着剤のガスケットを用いられ得る。
【0077】
更に、接着剤封入組成物又は封入膜は、スペクトルの可視領域(380〜800nm)で透明であり得る。封入膜は、典型的には、80%以上又は90%以上の平均透過率を有するので、封入膜は、有機エレクトロルミネセントデバイスの発光効率を実質的に低下させない。このことは、前面発光型OLED(有機発光ダイオード)にとってとりわけ有用であることがある。
【0078】
積層本体の外側に、不動態膜を配置して、積層本体の上部及び底部を保護することができる。不動態膜は、例えば、真空蒸着及びスパッタリングのような膜形成法を用いることによって、SiO、SiN、DLG又はDLFのような無機材料で形成することができる。不動態膜の厚さは、特に限定されないが、一般に、約5nm〜100nmである。
【0079】
積層本体の外側には、水分及び/又は酸素を吸収することのできる材料又はその層を更に配置することができる。かかる層は、所望の効果が提供される限り、いかなる位置に配置されてもよい。かかる材料又は層は、場合によって、乾燥剤、水分吸収剤、乾燥層等と呼ばれるが、本明細書では「捕捉剤」又は「捕捉層」と呼ぶ。捕捉剤の例には、金属酸化物(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化バリウム)、硫酸塩(例えば、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム及び硫酸ニッケル)、有機金属化合物(例えば、アルミニウムオキサイドオクチレート)、並びに米国特許第2006/0063015号(McCormick et al.)からのBが挙げられるが、それらに限定されない。日本特許出願第2005−057523号に記述されているポリシロキサンもまた、用いることができる。捕捉層は、捕捉剤の種類に基づき、当業者に知られているいずれかの方法によって形成することができる。例えば、捕捉層は、その中に、感圧性接着剤、スピンコーティング、捕捉剤溶液、又は真空気相堆積又はスパッタリングのような膜形成法によって、捕捉剤を分散した膜を取り付けることにより形成され得る。捕捉層の厚さは、限定されないが、一般に、約5nm〜500μmであり得る。
【0080】
有機エレクトロルミネセントデバイスは、上述の構成要素に加えて、当業者に知られている様々な構成要素を追加的に含むことができる。
【0081】
フルカラーデバイスが望まれる場合、白色発光部分を用いる有機エレクトロルミネセントデバイスは、カラーフィルターと組み合わせて用いられることがある。かかる組み合わせは、3色発光法では必要でない。また、カラー変換方法(CCM)を用いる有機エレクトロルミネセントデバイスの場合、色純度を補正するためのカラーフィルターが、組み合わせて用いられることがある。
【0082】
代替方法によると、有機エレクトロルミネセントデバイスは、最外層として保護膜を有することができる。この保護膜は、水蒸気バリア特性又は酸素バリア特性を有する保護膜を含むことができ、時々、「ガスバリア膜」又は「ガスバリア膜層」と称される。ガスバリア膜層は、水蒸気バリア特性を有する様々な材料で形成されることがある。好適な材料には、フッ素含有ポリマー(例えば、ポリエチレンナフタレート、三フッ化ポリエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE))、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、及びエチレン−ビニルアルコールコポリマーを含むポリマー層が挙げられるが、それらに限定されない。そのようなポリマー層の積層本体、又は膜形成方法(例えば、スパッタリング)を用いることによって、そのようなポリマー層を無機薄膜(例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、DLG若しくはDLF)で被覆することによって得られる層を用いることができる。ガスバリア層膜は、可撓性可視光透過性基板であって、それの上に配置される互い違いのポリマーと無機層とを有する基板を更に有することができる。これらの膜は、米国特許第7,018,713(B2)号(Padiyath et.al)に記述されている。ガスバリア膜層の厚さは、広範囲にわたって変化し得るが、一般に、約10nm〜500μmである場合がある。
【0083】
本明細書に開示される有機エレクトロルミネセントデバイスは、様々な分野において、照明又は表示手段として利用することができる。用途の例には、蛍光ランプの代わりに使用される照明デバイス;コンピュータ装置、テレビ受信機、DVD(デジタルビデオディスク)、オーディオ機器、測定機械設備、携帯電話、PDA(携帯情報端末)、パネル等の表示装置;バックライト;及びプリンタ等の光源アレーが挙げられる。
【0084】
接着剤封入組成物は、基板上に配置された金属成分と金属酸化物成分とを封入するためにも用いられ得る。例えば、接着剤封入組成物は、酸化インジウムスズ(ITO)のような実質的に透明な導電性金属が、ガラスのような基板の上に、又はセルローストリアセテートのようなポリマー膜の上に堆積されているタッチスクリーンを得るために用いられ得る。接着剤封入組成物は、金属及び/若しくは基板に対して腐食を引き起こす酸性成分が少ないか又は酸性成分を含有していない可能性がある。
【0085】
また、本明細書に開示されるのは、光電池又は光電池アレー(相互に連結された一連の光電池)と、光電池に接触して、光電池の上方に、又は光電池の周りに配置された、有機エレクトロルミネセントデバイスと一緒に用いられる上述の組成物のいずれかを含む接着剤封入組成物とを備えた光電池モジュールである。
【0086】
一般に、光電池は、光を電気に変換するために用いられる半導体デバイスであり、太陽電池と称され得る。光電池は、光に暴露されると、その両端子を横切って電圧を生じ、結果的に電子の流れを引き起こす。その電子の流れの大きさは、その電池の表面に形成される光起電接合(photovoltaic junction)に衝突する光の強度に比例する。典型的には、一連の太陽電池モジュールは、相互に連結されて、単一の電気製造ユニットとして機能する太陽電池を形成し、ここでは、1つの装置に電力を供給するためか又は貯蔵用蓄電池を補充するために、電池とモジュールは、好適な電圧を発生するように相互に連結される。
【0087】
光電池で用いられる半導体材料には、結晶性若しくは多結晶性シリコン、又は薄膜シリコン(例えば、非晶質シリコン、半晶質シリコン)、ガリウムヒ素、ジセレン化銅インジウム、有機半導体、CIGS、等が挙げられる。2つのタイプの光電池、ウェーハ及び薄膜、が存在する。ウェーハは、単結晶若しくは多結晶のインゴット又は鋳物から機械的に切り取ることによって作製された、半導体材料の薄板である。薄膜ベースの光電池は、スパッタリング又は化学蒸着法、等を用いて、典型的には基板又はスーパー基板(supersubstrate)の上に堆積された、半導体材料の連続層である。
【0088】
ウェーハ及び薄膜の光電池は、しばしば、モジュールが1つ以上の支持体を必要とするような具合に、十分脆弱である。支持体は、剛体であることもあり(例えば、ガラス板の剛体材料)、又は、それは、可撓性材料(例えば、金属膜及び/又は、ポリイミド若しくはポリエチレンテレフタレートのような好適なポリマー材料のシート)であり得る。支持体は、最上層又はスーパーストレート(superstrate)、すなわち、光電池と光源との間に配置され得、それは、光源から来る光に対して透明である。代替的に、又はそのことに加えて、支持体は、光電池の後に配置される最下層であり得る。
【0089】
接着剤封入組成物は、光電池に接して、光電池の上方に、又は光電池の周りに配置され得る。接着剤封入組成物を用いて、光電池を環境から保護することができ、及び/又は、その組成物を用いて、電池を1つ若しくは複数の支持体に接着することができる。接着剤封入組成物は、同一組成又は異なる組成のいずれかを有し得るいくつかの封入層の1つとして施され得る。更に、接着剤封入組成物は、電池の上に直接施され、次いで硬化されてもよく、又は、接着剤封入膜が用いられてもよく、そのとき、接着剤封入層は、光電池及び基板に積層され、次いで、その層は硬化される。
【0090】
図3Aは、光電池303を封入する接着剤封入層302及び304を含む例示的な光電池300Aの断面構造を示す。前面基板301及び裏面基板305も示されている。図3Bは、例示的な光電池300Bの断面構造を示し、ここで、光電池303は、化学蒸着のような好適な方法によって前面基板301の上に堆積され、その後、例えば、取外し可能な基板と一緒に接着剤封入膜を用いて、接着剤封入層304が施される(すなわち、その接着剤は、305に予備施用される)。図3Bは、別の例示的な光電池300Cの断面構造を示し、ここで、光電池303は、化学蒸着のような好適な方法によって、裏面基板305の上に堆積され、その後、例えば、取外し可能な基板と一緒に接着剤封入膜を用いて、接着剤封入層302が施される。必要に応じて、前面基板を利用することができる。
【0091】
更に、本明細書に開示されるのは、半導体層と、その半導体層に接して、その半導体層の上方に、又はその半導体層の周りに配置された、本明細書に記述される接着剤封入組成物のいずれか1つを含む接着剤封入組成物とを含む薄膜トランジスタである。薄膜トランジスタは、基板の上に半導体材料の薄膜だけでなく、絶縁層及び金属コンタクト(metallic contacts)をも堆積することによって作製された独特の電界効果トランジスタである。薄膜トランジスタを用いて、発光デバイスを駆動することができる。
【0092】
有用な半導体材料には、光電池を得るために上述されたものだけでなく、有機半導体も挙げられる。有機半導体は、芳香族系と、又は小分子(例えば、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレンジイミド、テトラシアノキノジメタン)、及びポリマー(例えば、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリフルオレン、ポリジアセチレン、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、等が挙げられるポリチオフェン)を含む共役電子系とを含む。無機材料の堆積は、化学蒸着法又は物理蒸着を用いて実施され得る。有機材料の堆積は、小分子の真空蒸着によるか、又はポリマー若しくは小分子の溶液流延(solution-casting)によって実施することができる。
【0093】
薄膜トランジスタは、一般に、ゲート電極と、そのゲート電極上のゲート誘電体と、ソース電極と、そのゲート誘電体に隣接するドレイン電極と、そのゲート誘電体に隣接し、かつ、そのソース電極及びそれらドレイン電極に隣接する半導体層とを含む。例えば、S.M.Sze,Physics of Semiconductor Devices、2nd,John Wiley and Sons、page 492,New York(1981)を参照されたい。これらの構成要素は、様々な構成で組み立てることができる。
【0094】
図4Aは、米国特許第7,279,777(B2)号(Bai et al.)に開示される例示的な薄膜トランジスタ400Aの断面構造を示し、これは、基板401と、その基板上に配置されているゲート電極402と、そのゲート電極上に配置されている誘電体材料403と、そのゲート電極上に配置されている所望による表面修飾膜404と、その表面修飾膜に隣接する半導体層405と、その半導体層に近接するソース電極406及びドレイン電極407とを有する。
【0095】
図4Bは、米国特許第7,352,038(B2)号(Kelley et al.)に開示される別の典型的な薄膜トランジスタ400Bの断面構造を示し、これは基板413上に配置されているゲート電極407を含む。ゲート誘電体408が、そのゲート電極上に配置されている。実質的にフッ素化されていないポリマー層409が、そのゲート誘電体と有機半導体層410との間に挿入されている。ソース電極411及びドレイン電極412が、半導体層の上に提供されている。
【0096】
本発明は、以下の実施例によって更に記述されるが、それら実施例は、本発明を決して限定しないように意図されている。
【実施例】
【0097】
試験方法
水蒸気の透過速度
各々の試料は、実施例1のために記述されるようなシリコーン処理をしたPET(ポリエチレンテレフタレート)の上に本組成物を被覆し、次いで、硬化させることによって、作製された。各々の接着剤層の透湿性は、JIS Z0208に記述されるカップ法(cup method)によって測定された。オーブン条件は、相対湿度90%で、60℃にて24時間であった。測定は、各々の試料に対して2回行い、平均値を表3に示す。
【0098】
可視光線の透過率
各々の試料は、実施例1のために記述されるようなシリコーン処理をしたPETの上に本組成物を被覆し、次いで、硬化させることによって、作製された。日立製の分光光度計U−4100を用いて、400nm〜800nmの範囲の透過率を測定した。結果を表3に示す。
【0099】
動的粘弾性
ARESレオメータ(Rheometric Scientific Inc.製)を用い、−10℃〜150℃の範囲で、周波数1.0Hzの剪断モードにて動的粘弾性を測定した。粘着性の指数のために、25℃のG’値を作った。25℃のG’が0.1MPa未満であるとき、試料は非常に粘着性であり、キスカット刃ナイフに張り付いた。流動性の指数のために、80℃及び100℃での損失正接tan(δ)の値(損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’)を測定した。80℃又は100℃でのtan(δ)の値が0.5より大きいとき、試料は十分な流動性を有する。結果を表3に示す。
【0100】
材料
市販の材料を表1に示し、購入したものをそのまま用いた。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例1
次のものをシクロヘキサンに溶解して、45重量%溶液を提供した:30gのCOP 1、50gのHCR1、20gのモノマー1、0.5gの開始剤1、及び0.5gのカップリング剤1。この溶液は、シリコーン処理されたPET膜(Teijin−DuPont Co.,Ltd.、A31 38μm)の上にナイフコーターを用いて被覆された。次いで、それは、80℃で30分間乾燥され、次いで、シリコーン処理されたPET膜(Teijin−DuPont Co.,Ltd.、A71 38μm)に積層された。その積層品は、紫外線で1分間照射され(Fusion Co.,Ltd.によって作製されたF300S(Hバルブ)、100mJ×20回)、次いで、90℃のオーブンを60分間用いて硬化させた。結果として得られた接着剤層の厚さは、100μmであった。
【0103】
実施例2〜9
実施例2〜9は、表2に示される成分を用いたことを除き、実施例1のために記述されているように調製した。
【0104】
実施例10〜11
実施例10〜11は、表2に示される成分を用いたことを除き、実施例1のために記述されているように調製した。膜は、紫外線硬化に代えて、100℃のオーブンで15分間、熱硬化した。
【0105】
参考
参考例は、COP1に代えてポリイソブチレン樹脂(OPPANOL B15、BASF Co.,Ltd.、Mv=85,000、MW=75,000)を用いたことを除き、実施例1のために記述されているように調製した。
【0106】
比較例4(C4)
参考例は、COP1に代えてポリイソブチレン樹脂(ポリイソブチレン樹脂(OPPANOL B30、BASF Co.,Ltd.、Mv=200,000、MW=200,000)を用いたことを除き、実施例1のために記述されているように調製した。
【0107】
比較例3(C3)
参考例は、HCR1を用いなかったことを除き、実施例1のために記述されているように調製した。
【0108】
比較例1〜2(C1〜C2)
C1は、80重量%のHCR1及び20%のモノマー1を用いて、実施例1のために記述されているように調製した。C1は、30重量%のHCR1、20重量%のCOP1、及び50%のモノマー1を用いて、実施例1のために記述されるように調製した。それら試料は硬化されなかった。
【0109】
比較例5(C5)
次のものをメチルエチルケトンに溶解して、30重量%溶液を提供した:35gのエポキシ樹脂1、35gのエポキシ樹脂2、30gのエポキシ樹脂3、5gの触媒、及び1gのカップリング剤3。膜は、紫外線硬化に代えて、100℃のオーブンで180分間、熱硬化した。
【0110】
【表2】

【0111】
1)実施例10〜11が1gの開始剤2を含有したことを除き、各々の試料は、0.5gの開始剤1を更に含有した。
【0112】
2)0.5gのカップリング剤1を更に含有した。
【0113】
3)0.5gのカップリング剤2を更に含有した。
【0114】
4)モノマー1に代えてモノマー2を用いた。
【0115】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスに用いられる接着剤封入組成物であって、
環状オレフィンコポリマーと、
多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
粘着付与剤と、を含む、接着剤封入組成物。
【請求項2】
前記環状オレフィンコポリマーが、約60〜約140℃のTgを有する、請求項1に記載の接着剤封入組成物。
【請求項3】
前記多官能性(メタ)アクリレートモノマーが、脂肪族ジ(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の接着剤封入組成物。
【請求項4】
前記粘着付与剤が水素化されている、請求項1に記載の接着剤封入組成物。
【請求項5】
前記接着剤封入組成物の全重量に対して
約10〜約70重量%の前記環状オレフィンコポリマーと、
約10〜約40重量%の前記多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
約20〜約70重量%の前記粘着付与剤と、
を含む、請求項1に記載の接着剤封入組成物。
【請求項6】
前記接着剤封入組成物が、光重合性であり、光重合開始剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤封入組成物。
【請求項7】
前記接着剤封入組成物が、熱重合性であり、熱重合開始剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤封入組成物。
【請求項8】
粒子を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着剤封入組成物。
【請求項9】
基板の上に配置された接着剤層を含む接着剤封入膜であって、前記接着剤層が請求項1〜8の接着剤封入組成物のいずれか1つを含む、接着剤封入膜。
【請求項10】
基板の上に配置された接着剤層と、前記基板とは反対側の前記接着剤層の上に配置されたガスバリア膜と、を含む接着剤封入膜であって、前記接着剤層が、請求項1〜8の接着剤封入組成物のいずれか1つを含む、接着剤封入膜。
【請求項11】
基板の上に配置された接着剤層と、前記基板とは反対側の前記接着剤層の上か又は前記接着剤層と前記基板との間かのいずれかに配置された捕捉性膜と、を含む接着剤封入膜であって、前記接着剤層が、請求項1〜8の接着剤封入組成物のいずれか1つを含む、接着剤封入膜。
【請求項12】
有機エレクトロルミネセントデバイスであって、
一対の向かい合う電極と、
少なくとも1つの有機発光層を有し、前記一対の向かい合う電極の間に配置された発光ユニットと、
前記発光ユニットに接して、前記発光ユニットの上方に、又は前記発光ユニットの周りに配置された、請求項1〜8の接着剤封入組成物のいずれか1つを含む接着剤封入組成物と、を含む、有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが可撓性である、請求項12に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項14】
タッチスクリーンであって、
ガラス又はポリマーの基板と、
前記基板の上に配置されている金属と、
前記金属に接して、前記金属の上方に、又は前記金属の周りに配置された、請求項1〜8の接着剤封入組成物のいずれか1つを含む接着剤封入組成物と、を含む、タッチスクリーン。
【請求項15】
光起電デバイスであって、
光電池、又は複数の光電池のアレーと、
前記光電池、若しくは前記複数の光電池のアレーの前記複数の光電池のいずれか1つに接して、前記光電池、若しくは前記の複数の光電池のアレーの前記複数の光電池のいずれか1つの上方に、又は前記光電池、若しくは前記の複数の光電池のアレーの前記複数の光電池のいずれか1つの周りに配置された、請求項1〜8の接着剤封入組成物のいずれか1つを含む接着剤封入組成物と、を含む、光起電デバイス。
【請求項16】
薄膜トランジスタであって、
半導体層と、
前記半導体層に接して、前記半導体層の上方に、又は前記半導体層の周りに配置された、請求項1〜8の接着剤封入組成物のいずれか1つを含む接着剤封入組成物と、を含む、薄膜トランジスタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2011−526052(P2011−526052A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512492(P2011−512492)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/041510
【国際公開番号】WO2009/148716
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】