説明

接着剤組成物、回路接続材料及び回路部材の接続構造

【課題】従来の回路接続用接着フィルムを構成する接着剤組成物に比べ、COF化及びファインピッチ化に対応し、LCDパネルの接続部エッジにおける導電粒子の凝集を十分に抑制する結果、隣り合う電極間の短絡を十分に防止でき、かつ、接続信頼性にも十分優れる接着剤組成物、回路接続材料及び回路部材の接続構造を提供する。
【解決手段】接着剤成分と、導電粒子と、絶縁粒子とを含有し、導電粒子の平均粒径Rcに対する絶縁粒子の平均粒径Riの比(Ri/Rc)が120〜300%である接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、回路接続材料及び回路部材の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相対向する回路を加熱、加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続用接着フィルムが知られている。そのような回路接続用接着フィルムとしては、例えば、いわゆる異方導電性接着フィルムが挙げられる。公知の異方導電性接着フィルムの中でも代表的なものは、エポキシ系接着剤又はアクリル系接着剤等の接着剤成分中に、導電粒子を分散させてなる。かかる異方導電性接着フィルムは、例えば、液晶ディスプレイ(以下、「LCD」と表記する。)を駆動させる半導体が搭載されたTCP(Tape Carrier Package)又はCOF(Chip On Flex)とLCDパネルとの電気的接続に用いられている。あるいは、異方導電性接着フィルムは、TCP又はCOFとプリント配線板との電気的接続にも広く採用されている。
【0003】
また、半導体をフェイスダウンで直接LCDパネルやプリント配線板に実装する場合、従来はワイヤボンディング法が採用されている。しかしながら最近では、このような半導体の実装には、薄型化や狭ピッチ接続に有利なフリップチップ実装が採用されている。このフリップチップ実装においても、上述の異方導電性接着フィルムが回路接続用接着フィルムとして用いられている(以上、特許文献1〜4参照)。
【0004】
ところで、近年、LCDモジュールのCOF化及びファインピッチ化が更に進んでいる。そのため、回路接続用接着フィルムを用いた際に、隣り合う電極間の短絡が、より発生しやすくなっている。その対応策としては、例えば特許文献5〜9に記載されているような絶縁粒子を接着剤成分中に分散させて、短絡を防止する手段が考えられる。これらの特許文献によると、導電粒子よりも小さな粒径を有する絶縁粒子が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−120436号公報
【特許文献2】特開昭60−191228号公報
【特許文献3】特開平1−251787号公報
【特許文献4】特開平7−90237号公報
【特許文献5】特開昭51−20941号公報
【特許文献6】特開平3−29207号公報
【特許文献7】特開平4−174980号公報
【特許文献8】特許第3048197号公報
【特許文献9】特許第3477367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、LCDパネルとCOFとの接続について、図を参照しながら詳述する。図5は、LCDパネルとCOFとが接続される様子を模式的に示す断面工程図であり、図6は、それらが接続した後の接続部分を拡大した断面模式図である。LCDパネル100は、LCDパネル基板103と、その上に設けられた液晶表示部104と回路電極102とを備えている(図5(a)参照)。LCDパネル基板103の接続部エッジには面取りが施され、それにより面取り部109が設けられている。一方、COF200は、COF用フィルム205と、その上に設けられた回路電極206とレジスト207とを具備している(図5(a)参照)。また、回路電極102上には導電粒子を含有する回路接続用接着フィルム101が備えられている。これらLCDパネル100とCOF200とは、それぞれが備えている回路電極102及び206を対向して配置され、更に積層される。次いで、回路接続用接着フィルム101を介して回路電極102及び206が接続されるように、それらの積層方向Fに加圧及び加熱され、回路接続用接着フィルムが流動及び硬化する(図5(b)参照)。回路接続用接着フィルムには導電粒子が含有されるため、その導電粒子によってLCDパネル100及びCOFが電気的に接続される。
【0007】
本発明者らは、この接続の際、LCDパネル基板103の面取り部109とレジスト207とが接するように配置されるため、回路接続用接着フィルムの硬化物111の、LCDパネル基板103と回路電極102とレジスト207とで包囲された部分に、溶融した回路接続用フィルムの流動に伴い移動してきた導電粒子108が凝集して詰まることを見出した(図6参照)。その結果、前述と同様に隣り合う電極間の短絡が発生しやすくなる。
【0008】
そこで、COF化及びファインピッチ化、並びに、LCDパネルの接続部エッジにおける導電粒子の凝集、に起因した隣り合う電極間の短絡を防止できる回路接続用接着フィルムが必要となる。さらには、そのような電極間の短絡の様子を、金属顕微鏡等を用いて十分に視認可能な回路接続用接着フィルムが開発されれば、歩留、信頼性検査等の観点から非常に有用である。
【0009】
本発明の目的は、従来の回路接続用接着フィルムを構成する接着剤組成物に比べ、COF化及びファインピッチ化に対応し、LCDパネルの接続部エッジにおける導電粒子の凝集を十分に抑制する結果、隣り合う電極間の短絡を十分に防止でき、かつ、接続信頼性にも十分優れる接着剤組成物、回路接続材料及び回路部材の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、接着剤成分と、導電粒子と、絶縁粒子とを含有し、導電粒子の平均粒径Rcに対する絶縁粒子の平均粒径Riの比(Ri/Rc)が120〜300%である接着剤組成物を提供する。
【0011】
本発明の接着剤組成物では、絶縁粒子が導電粒子間に介在する。この絶縁粒子が、導電粒子よりも小さな平均粒径を有する場合、複数の導電粒子が凝集した際に、絶縁粒子はそれら導電粒子間に存在する空隙を充填するだけである。したがって、この場合、接着剤組成物が絶縁粒子を含有していても、導電粒子の凝集を有効に阻止することはできず、隣り合う電極等の間の短絡を十分防止することはできない。ところが、本発明の接着剤組成物では、絶縁粒子の平均粒径Riが導電粒子の平均粒径Rcよりも1.2〜3倍大きくなっている。そのため、凝集した複数の導電粒子間に生じる空隙を絶縁粒子が充填するというよりも、複数の絶縁粒子によって形成される空隙に導電粒子が存在する状態になっており、導電粒子の凝集が十分有効に抑制されている。そのため、COF化及びファインピッチ化が進んでも、この接着剤組成物を用いて電極や接続端子の間を接続した際に、隣り合う電極間での短絡は十分に防止できる。
【0012】
また、従来のように、導電粒子よりも平均粒径の小さな絶縁粒子を用いる際、隣り合う電極等の短絡を防止するために、接着剤組成物中の導電粒子の含有量を少なくする手段も考えられる。しかしながら、短絡を十分に防止できる程度まで導電粒子を少なくすると、対向する電極等の間の電気的接続が不十分となってしまい、接続信頼性が低くなる。ところが、本発明の接着剤組成物では、従来と異なり、絶縁粒子の平均粒径Riが導電粒子の平均粒径Rcよりも1.2〜3倍大きくなっている。そのため、対向する電極等の間の電気的接続を十分に確保した状態であっても、隣り合う電極等の短絡を十分に防止することが可能となる。
【0013】
さらには、絶縁粒子及び導電粒子間のコントラストが明確であるため、電極間が短絡しているか否かを、容易に視認することが可能である。そして、対向する電極や接続端子間の電気的接続は導電粒子によって確保されるため、十分に優れた接続信頼性が得られる。なお、導電粒子の平均粒径Rcが絶縁粒子の平均粒径Riよりも小さいにも関わらず、十分に優れた接続信頼性が得られるのは、絶縁粒子が柔軟であり、接続時の加熱及び加圧により対向する電極等の間の導通を阻害しない程度まで変形(扁平)するためであると考えられる。ただし、要因はこれに限定されない。
【0014】
なお、本明細書において、導電粒子及び絶縁粒子の平均粒径は、下記のようにして導出され定義されるものである。まず、走査電子顕微鏡(SEM:本発明では日立製作所社製、商品名「S800」)により3000倍の粒子像を観察して、複数個の粒子を任意に選択する。このとき、正確を期するために30個以上の粒子を選択するが、粒子が30個に満たない場合はこれに限らない。次いで、選択した複数個の粒子それぞれについて、最大粒径と最小粒径とを測定する。そして、それら最大粒径及び最小粒径の積の平方根を算出し、これを粒子1個の粒径とする。選択した複数個の粒子全てについて、こうして粒子1個の粒径を求めた後、それらの粒径の和を、測定した粒子の個数で除して導出したものを平均粒径として定義する。
【0015】
本発明の接着剤組成物は、接着剤成分100質量部に対して、絶縁粒子を1〜20質量部含有することが好ましい。これにより、隣り合う電極間の短絡防止及び優れた接続信頼性の確保という両方の効果を、よりバランスよく奏することができる。
【0016】
本発明は、上述の接着剤組成物を含有し、回路電極を有する回路部材同士を、それぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように接着するために用いられる回路接続材料を提供する。このような回路接続材料は、本発明の接着剤組成物を含有することから、隣り合う電極間の短絡を十分に防止でき、接続信頼性にも十分優れるものとなる。
【0017】
本発明の回路接続材料はフィルム状に形成されてなるものであると好ましい。これにより、回路接続材料は取扱性に優れたものとなるため、一層便利である。
【0018】
本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材と、第1の回路基板の主面と第2の回路基板の主面との間に設けられ、第1の回路電極と第2の回路電極とを対向配置させた状態で電気的に接続する回路接続部材とを備え、回路接続部材は、上記回路接続材料の硬化物である回路部材の接続構造を提供する。これにより、本発明の回路部材の接続構造は、回路接続部材が本発明の回路接続材料の硬化物からなるため、隣り合う回路電極間の短絡を十分に防止でき、その効果の確認が十分に容易であり、かつ、接続信頼性にも十分優れるものとなる。
【0019】
本発明は、半導体素子と、半導体素子を搭載する基板と、半導体素子及び基板間に設けられ、半導体素子及び基板を電気的に接続する半導体素子接続部材とを備え、半導体素子接続部材は、上述の接着剤組成物の硬化物である半導体装置を提供する。このような半導体装置は、半導体素子接続部材が本発明の接着剤組成物の硬化物であるため、半導体素子又は基板における隣り合う電極間の短絡を十分に防止でき、その効果の確認が十分に容易であり、かつ、半導体素子及び基板間の接続信頼性にも十分優れるものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来の回路接続用接着フィルムを構成する接着剤組成物に比べ、COF化及びファインピッチ化に対応し、LCDパネルの接続部エッジにおける導電粒子の凝集を十分に抑制する結果、隣り合う電極間の短絡を十分に防止でき、かつ、接続信頼性にも十分優れる接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る回路部材の接続方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【図3】本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】実施例における回路部材の接続構造の金属顕微鏡写真である。
【図5】LCDパネルとCOFとの接続工程を模式的に示す断面工程図である。
【図6】図5における(b)の部分拡大図である。
【図7】本発明によるLCDパネルとCOFとの接続構造を示す部分断面図である。
【図8】従来技術によるLCDパネルとCOFとの接続構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロキシ基」とは「アクリロキシ基」及びそれに対応する「メタクリロキシ基」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。
【0023】
本発明の好適な実施形態に係る接着剤組成物は、接着剤成分と、導電粒子と、絶縁粒子とを含有する。
【0024】
接着剤成分は、接着性を示すものであれば特に限定されないが、例えば(a)熱硬化性樹脂と(b)その硬化剤とを含有するものであると、上述の本発明による効果を、一層有効に発揮することができる。
【0025】
(a)熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独に、あるいは、その2種以上を混合して用いられる。具体的には、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。エポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)及び加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品であることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0026】
(b)熱硬化性樹脂の硬化剤は、より長いポットライフを得る観点から、潜在性硬化剤が好ましい。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、潜在性硬化剤として、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミドが挙げられる。また、可使時間を延長する観点から、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものを用いると好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を併用してもよい。
【0027】
接着剤成分は、(c)加熱又は光によって遊離ラジカルを発生する硬化剤(以下、「遊離ラジカル発生剤」ともいう。)及び(d)ラジカル重合性化合物を含有するものであってもよい。このような接着剤成分を用いても、上述の本発明による効果を、一層有効に発揮することができる。
【0028】
(c)遊離ラジカル発生剤としては、過酸化化合物(有機過酸化物)、アゾ系化合物又は光開始剤のような、加熱及び光照射のうち少なくともいずれか一方の処理により活性ラジカルを発生する化合物が用いられる。
【0029】
有機過酸化物及びアゾ系化合物は、主として加熱により活性ラジカルを発生する。これらの化合物を遊離ラジカル発生剤として用いる場合、有機過酸化物及び/又はアゾ系化合物から1種または2種以上を、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選択する。
【0030】
有機過酸化物は、高い反応性と長いポットライフを両立する観点から、半減期10時間の温度が40℃以上、かつ、半減期1分の温度が180℃以下であることが好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上、かつ、半減期1分の温度が170℃以下であることがより好ましい。また、有機過酸化物は、回路部材の回路電極(接続端子)の腐食を防止するために、塩素イオンや有機酸の含有量が5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。
【0031】
(c)遊離ラジカル発生剤は、接着剤成分の全量に対して0.05〜10質量%配合されることが好ましく、0.1〜5質量%配合されることがより好ましい。
【0032】
有機過酸化物としては、具体的には、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド及びシリルパーオキサイドからなる群より選ばれる1種以上が好適に用いられる。これらの中では、回路部材の接続構造や半導体装置における接続端子の腐食を更に抑制するために、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド及びハイドロパーオキサイドからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。さらには、より高い反応性が得られる点で、パーオキシエステルが更に好ましい。
【0033】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン及びベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びt−ブチルクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0035】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート及びビス(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0036】
パーオキシエステルとしては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート及びビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサヒドロテレフタレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0037】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン及び2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0038】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド及びクメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0039】
シリルパーオキサイドとしては、例えば、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド及びトリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
これら有機過酸化物及びアゾ系化合物は、単独でまたは複数種を混合して使用することができる。また、分解促進剤、抑制剤等を併用してもよい。更に、これらの化合物をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子化合物等で被覆してマイクロカプセル化したものは、長い可使時間が得られるため、好ましい。
【0041】
光開始剤としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン類及びその誘導体、チオキサントン類、並びに、ビスイミダゾール類が好適に用いられる。
【0042】
光開始剤を用いる場合、用いる光源の波長や所望の硬化特性等に応じて、最適な光開始剤が選択される。また、光開始剤は、必要に応じて、アミン類、イオウ化合物、リン化合物等の増感剤を任意の比率で併用してもよい。
【0043】
増感剤としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、含窒素環状構造を有するピペリジン等の環状アミン、o−トリルチオ尿素、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩、N,N’−ジメチル−p−アミノベンゾニトリル、N,N’−ジエチル−p−アミノベンゾニトリル、N,N’−ジ(β−シアノエチル)−p−アミノベンゾニトリル、N,N’−ジ(β−クロロエチル)−p−アミノベンゾニトリル、トリ−n−ブチルホスフィン等が好ましい。
【0044】
あるいは、プロピオフェノン、アセトフェノン、キサントン、4−メチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、フルオレン、トリフェニレン、ビフェニル、チオキサントン、アントラキノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレン、ナフタレン、4−フェニルアセトフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、1−ヨードナフタレン、2−ヨードナフタレン、アセナフテン、2−ナフトニトリル、1−ナフトニトリル、クリセン、ベンジル、フルオランテン、ピレン、1,2−ベンゾアントラセン、アクリジン、アントラセン、ペリレン、テトラセン、2−メトキシナフタレン等の非色素系増感剤、チオニン、メチレンブルー、ルミフラビン、リボフラビン、ルミクロム、クマリン、ソラレン、8−メトキシソラレン、6−メチルクマリン、5−メトキシソラレン、5−ヒドロキシソラレン、クマリルピロン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、プロフラビン、フルオレセイン、エオシンY、エオシンB、エリトロシン、ローズベンガル等の色素系増感剤が用いられてもよい。
【0045】
(c)遊離ラジカル発生剤として、以上のような光開始剤と、有機化酸化物、アゾ系化合物等の主として熱によりラジカルを発生する化合物とが併用されてもよい。
【0046】
(d)ラジカル重合性化合物は、活性ラジカルによって重合する官能基を有するものであり、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物が好適に用いられる。このラジカル重合性化合物は重合性モノマー及び重合性オリゴマーのいずれであってもよい。重合性オリゴマーは一般に高粘度であるため、重合性オリゴマーを用いる場合、低粘度の重合性多官能(メタ)アクリレートモノマー等の重合性モノマーを併用して粘度調整することが好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の重合性オリゴマーや、(メタ)アクリレート等の重合性モノマーが用いられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート及びトリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0049】
これらのなかでも、接着性をより向上させる観点から、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。また、これに加えて、本実施形態の接着剤成分は、耐熱性を向上させるために用いる上述の有機過酸化物により架橋された後、単独で100℃以上のTgを示すようなラジカル重合性化合物を更に配合することが特に好ましい。このようなラジカル重合性化合物としては、例えば、ジシクロペンテニル基を有するもの、トリシクロデカニル基を有するもの、及び/又はトリアジン環を有するものが挙げられる。これらのなかでは、特に、トリシクロデカニル基及び/又はトリアジン環を有するラジカル重合性化合物が好適に用いられる。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、上述の他、金属等の無機物表面での接着強度を向上させるために、(メタ)アクリレート基を有するリン酸エステル化合物が好適に用いられる。このリン酸エステル化合物としては、例えば、無水リン酸と2−ヒドロキシル(メタ)アクリレートとを常法により反応させて得られる生成物が挙げられる。
【0051】
より具体的には、上記リン酸エステル化合物として、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。式(1)中、nは1〜3の整数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。式(1)で表される化合物の具体例としては、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェートが挙げられる。このリン酸エステル化合物は、例えば、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により合成される。
【0052】
【化1】


このようなリン酸エステル化合物は、接着剤成分の全量100質量部に対して、0.1〜10質量部配合されると好ましく、0.5〜5質量部配合されるとより好ましい。
【0053】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上有するものが好ましい。分子中にマレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物としては、例えば、1−メチル−2、4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−s−ブチル−4,8−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス[1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシル]ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。あるいは、これらは、アリルフェノール、アリルフェニルエーテル又は安息香酸アリルなどのアリル化合物と併用されてもよい。
【0054】
また、必要に応じて、接着剤成分に、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜配合してもよい。
【0055】
本実施形態において、上述のラジカル重合性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらのラジカル重合性化合物のうち、本実施形態の接着剤成分は、接続プロセス性の向上の観点から、25℃での粘度が100000〜1000000mPa・sであるラジカル重合性化合物を含有することが好ましく、25℃での粘度が100000〜500000mPa・sであるラジカル重合性化合物を含有することがより好ましい。なお、ラジカル重合性化合物の粘度の測定は、市販のE型粘度計を用いて測定できる。
【0056】
また、本実施形態に係る接着剤成分はフィルム状に形成してから用いることも可能である。この場合、接着剤成分がフィルム形成性高分子を含有してもよい。フィルム形成性高分子としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、及び上述以外のポリエステル樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0057】
これらの中でも、水酸基等の官能基を有する樹脂は接着性が向上するので、より好ましい。また、これらの高分子をラジカル重合性の官能基で変性したものも、フィルム形成性高分子として用いることができる。これら高分子の重量平均分子量は10000以上であると好ましい。また、その重量平均分子量は接着剤成分における他の配合物との混合性を更に良好にするために、1000000未満であることが好ましい。
【0058】
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)分析により下記条件で測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算することにより求められる。
(GPC条件)
使用機器:日立L−6000型((株)日立製作所製、商品名)
検出器:L−3300RI((株)日立製作所製、商品名)
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)(日立化成工業(株)製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75ml/min
【0059】
本実施形態の接着剤組成物は、導電粒子を含有することによって、接着剤組成物に導電性を付与することができる。これにより、本実施形態の接着剤組成物は、回路電極や半導体等の電気工業や電子工業の分野において、回路接続材料等の導電性接着剤として用いることが可能となる。
【0060】
導電粒子は、電気的接続を得ることができる導電性を有するものであれば特に制限されない。この導電粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu及びはんだ等の金属粒子、又はカーボン粒子等が挙げられる。また、導電粒子は、核となる粒子を1層又は2層以上の層で被覆し、その最外層が導電性を有するものであってもよい。この場合、より優れたポットライフを得る観点から、最外層が、Ni、Cuなどの遷移金属よりも、Au、Ag及び/又は白金族金属などの貴金属を主成分とすることが好ましく、これらの貴金属の1種以上からなることがより好ましい。これらの貴金属の中では、Auが最も好ましい。
【0061】
導電粒子は、核としての遷移金属を主成分とする粒子又は核を被覆した遷移金属を主成分とする層の表面を、更に貴金属を主成分とする層で被覆してなるものであってもよい。また、導電粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を主成分とする絶縁粒子を核とし、この核の表面に上記金属又はカーボンを主成分とする層で被覆したものであってもよい。
【0062】
導電粒子が、絶縁粒子である核を導電層で被覆してなるものである場合、絶縁粒子がプラスチックを主成分とするものであり、最外層が貴金属を主成分とするものであると好ましい。これにより、接着剤組成物を回路接続材料等の電気的接続材料として用いた場合、導電粒子が加熱及び加圧に対して良好に変形することができる。しかも、回路等の接続時に、導電粒子の電極や接続端子との接触面積が増加する。そのため、電気的接続材料の接続信頼性を更に向上させることができる、同様の観点から、導電粒子が、上記加熱により溶融する金属を主成分として含む粒子であると好ましい。
【0063】
導電粒子が、絶縁粒子である核を導電層で被覆してなるものである場合、一層良好な導電性を得るために、導電層の厚みは100Å(10nm)以上であると好ましい。また、接着剤成分がラジカル重合系であって、かつ、導電粒子が、核としての遷移金属を主成分とする粒子の表面、又は核を被覆した遷移金属を主成分とする層の表面を、更に貴金属を主成分とする層で被覆してなるものである場合、最外層となる上記貴金属を主成分とする層の厚みは300Å(30nm)以上であると好ましい。この厚みが300Åを下回ると、最外層が破断しやすくなる。その結果、露出した遷移金属が接着剤成分と接触し、遷移金属による酸化還元作用により遊離ラジカルが発生しやすくなるため、ポットライフが容易に低下する傾向にある。
【0064】
この導電粒子の平均粒径Rcは、回路間を接続する場合、回路の電極高さよりも低くすると隣接する電極間の短絡が減少する等の観点から、1〜20μmであることが好ましく、1.5〜15μmであることがより好ましく、2〜10μmであることが更に好ましい。さらに、導電粒子は、その10%圧縮弾性率(K値)が100〜1000kgf/mmのものから適宜選択して使用されてもよい。
【0065】
また、導電粒子の配合割合は、特に制限は受けないが、接着剤成分100体積部に対して、0.1〜30体積部であることが好ましく、0.1〜10体積部であることがより好ましい。この値が、0.1体積部未満であると良好な導電性が得られ難くなる傾向にあり、30体積部を超えると回路等の短絡が起こりやすくなる傾向がある。なお、導電粒子の配合割合(体積基準)は、23℃における接着剤組成物を硬化させる前の各成分の体積に基づいて決定される。各成分の体積は、比重を利用して質量から体積に換算する方法や、その成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたメスシリンダー等の容器にその成分を投入し、増加した体積から算出する方法によって求めることができる。
【0066】
絶縁粒子は、複数の導電粒子と接触した場合に、それらの導電粒子間の電気的導通を阻止できるものであれば特に制限されない。この絶縁粒子としては、絶縁性の樹脂を主成分として含有する粒子が好ましい。絶縁性の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ジビニルベンゼン樹脂、スチレン−イソブチレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、フェノキシ樹脂、固形エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂が挙げられる。これらの中では、柔軟性により優れる観点から、シリコーン樹脂が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0067】
絶縁粒子は、上述の絶縁性の樹脂を主成分とする絶縁性材料からなる粒子であってもよく、絶縁性又は導電性の核となる粒子を、1層又は2層以上の絶縁層又は導電層で被覆し、その最外層が絶縁性を有するものであってもよい。
【0068】
導電粒子の平均粒径Rcに対する絶縁粒子の平均粒径Riの比(Ri/Rc)は、120〜300%、すなわち、1.20〜3.00倍の大きさである。このRi/Rcが120%以上となることで、それよりも小さくなる場合と比較して、導電粒子の凝集を十分有効かつ確実に防止できる。この傾向は、特に絶縁粒子の配合割合が少なくなるほど顕著になる。この点について、更に図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0069】
図7は、本発明による、すなわちRi/Rcが120〜300%である場合の、LCDパネルとCOFとの接続構造における導電粒子及び絶縁粒子の凝集状態を模式的に示した部分断面図である。また、図8は、導電粒子の平均粒径Rcよりも絶縁粒子の平均粒径Riが小さい場合の、LCDパネルとCOFとの接続構造における導電粒子及び絶縁粒子の凝集状態を模式的に示した部分断面図である。
【0070】
図7では、LCDパネルに設けられた回路電極102間のピッチ、並びに、回路電極102の端部とCOFにおけるレジスト207との間に接着剤組成物の硬化物115が充填されている。接着剤組成物の硬化物111中には導電粒子7及び絶縁粒子8が含有されている。特に、回路電極102の端部とレジスト207との間にはそれらの粒子が多数凝集している。多数の粒子が凝集した部分は、より多くの粒子を所定体積の空間内に収容するために、より粒径の大きな粒子が互いに隣接し、その粒径の大きな複数の粒子間の空隙により粒径の小さな粒子が充填される傾向にある。すなわち、図7に示すように、絶縁粒子8の粒径が導電粒子7の粒径よりも大きくなると、絶縁粒子8が互いに隣接し、その絶縁粒子8の間の空隙に、導電粒子7が充填した状態になると考えられる。本発明において隣り合う回路電極102間の短絡を十分抑制することができるのは、このように導電粒子7同士が互いに隣接することを防止しているためと推測される。
【0071】
一方、図8に示すように、絶縁粒子308の粒径が導電粒子307の粒径よりも小さくなると、導電粒子307が互いに隣接し、その導電粒子307間の空隙に、絶縁粒子308が充填した状態になると考えられる。そのため、導電粒子307による隣り合う回路電極102間の短絡を、絶縁粒子308によって十分に防止することは困難になると推測される。
【0072】
また、上記Ri/Rcが300%以下となることで、それよりも大きくなる場合と比較して、導電粒子による対向する電極や接続端子間の接続が十分となる。これらにより、本実施形態の接着剤組成物を用いて、対向する電極や接続端子間を接続した際に、隣り合う電極や接続端子間のピッチが短くなっても、それらの間での短絡は十分に防止できる。さらには、絶縁粒子及び導電粒子間のコントラストが明確であるため、電極や接続端子間が短絡しているか否か、容易に視認することが可能である。そして、対向する電極や接続端子間の電気的接続は導電粒子によって確保されるため、十分に優れた接続信頼性が得られる。同様の観点から、絶縁粒子の平均粒径Riは、導電粒子の平均粒径Rcに対して130〜200%であると好ましい。さらには、絶縁粒子の平均粒径Riは、例えば、1.2〜20μmであってもよい。
【0073】
また、上述のRi/Rcが120%を下回る場合、絶縁粒子の配合量が多くなると接着剤組成物の流動性が低くなるため、回路接続性が低下する。
【0074】
絶縁粒子は、10%圧縮弾性率(K値)が、導電粒子のK値以下であることが好ましい。これにより、絶縁粒子の柔軟性が向上し、導電粒子による対向する電極や接続端子間の導通が絶縁粒子により阻害されることを一層有効に防止することができる。例えば、絶縁粒子は、10%圧縮弾性率(K値)が1〜1000kgf/mmのものであってもよい。ただし、導電粒子による導通の確保は、導電粒子の材料、絶縁粒子の材料、本圧着時の加熱加圧の条件等を調整することによっても可能であるため、絶縁粒子のK値は上記範囲に限定されない。
【0075】
絶縁粒子の配合割合は、特に制限は受けないが、短絡の防止及び電気的接続性をバランスよく両立する観点から、接着剤成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。この値が0.1質量部未満であると、導電粒子による隣り合う電極や接続端子間の短絡が発生しやすくなる傾向にあり、20質量部を超えると、対向する回路や接続端子間の接続性が低下する傾向がある。
【0076】
また、本発明による上述の効果を一層有効に発揮する観点から、導電粒子100体積部に対する絶縁粒子の配合割合は、50〜300体積部が好ましく、100〜200体積部であるとより好ましい。
【0077】
本実施形態の接着剤組成物は、上述のもの以外に、使用目的に応じて別の材料を添加することができる。例えば、この接着剤組成物に、カップリング剤及び密着性向上剤、レベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。これにより、更に良好な密着性や取扱い性を付与することができるようになる。また、本実施形態の接着剤組成物は、ゴムを含有してもよい。これにより、応力の緩和及び接着性の向上が可能となる。さらには、この接着剤組成物には、硬化速度の制御や貯蔵安定性を付与するために、安定化剤を添加することできる。更に本実施形態に係る接着剤組成物には、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を配合してもよい。
【0078】
本実施形態の接着剤組成物は、常温(25℃)で液状である場合にはペースト状で使用することができる。常温で固体の場合には、加熱してペースト化する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物と反応せず、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満である場合、室温(25℃)で放置すると溶剤が揮発してしまうため、開放系での使用が制限される。また、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後の信頼性に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0079】
本実施形態の接着剤組成物は、上述のとおりフィルム状に形成してから用いることも可能である。このフィルム状接着剤は、接着剤組成物に必要により溶剤等を加えた混合液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性基材上に塗布し、又は不織布等の基材に上記混合液を含浸させて剥離性基材上に載置し、加熱によって溶剤等を除去することによって得ることができる。このように接着剤組成物をフィルム状とすると、取扱性に優れ一層便利である。
【0080】
フィルム状接着剤を回路接続材料として用いる場合、その回路接続材料は、対向する1対の回路部材同士間に挟まれた状態で加熱及び加圧されたときに、まず溶融流動して対峙する回路電極同士を電気的に接続する。その後、硬化して接着強度を発現する。したがって、回路接続材料の流動性は重要である。具体的には、流動性の指標(B)/(A)の値が、1.3〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.5であることがより好ましい。流動性の指標(B)/(A)の値は、フィルム状の回路接続材料(厚み35μm、5mm×5mm)を、2枚のガラス板(厚み0.7mm、15mm×15mm)の間に挟んだ状態で、170℃、2MPa、10秒の加熱及び加圧を行ったときに、回路接続材料の初期の面積(A)と加熱及び加圧後の面積(B)とを用いて表される。(B)/(A)の値が1.3未満では流動性が不足して良好な接続が得られなくなる傾向にあり、3.0を超えると、気泡が発生して信頼性が低下する傾向にある。
【0081】
フィルム状接着剤は通常1層のみであるが、本実施形態のフィルム状接着剤は、これに代えて、組成の異なる複数の層を有するフィルムに成形された状態で用いてもよい。例えば、フィルム状接着剤を、遊離ラジカル発生剤を含有する層と、導電粒子を含有する層とを別々に有する多層のフィルムとすることが好ましい。あるいは、フィルム状接着剤を、熱硬化性樹脂を含有する層と、硬化剤を含有する層とを別々に有する多層のフィルムとすることが好ましい。これらにより、更なるファインピッチ化等によっても隣り合う電極等の間の短絡を防止でき、しかも、より長い可使時間が得られる。これらの場合、絶縁粒子は各層に含有されていてもよく、いずれか一層にのみ含有されていてもよい。ただし、導電粒子による短絡を更に効果的に防止する観点から、導電粒子を含有する層に絶縁粒子が含まれていることが好ましい。
【0082】
本実施形態の接着剤組成物は、加熱及び加圧を併用して被着体を接着させることができる。加熱温度は、特に制限は受けないが、100〜250℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。例えば、温度140〜200℃、圧力1〜3MPaの条件下で、2〜5秒間加熱及び加圧を行うことで接着剤組成物と被着体を接着させることも可能である。
【0083】
本実施形態の接着剤組成物は、互いに異なる異種の被着体、例えば、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品や、プリント基板等のような回路部材同士を接続する回路接続材料として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤に代表される上述及び後に詳述するような回路接続材料の他、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィルム材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0084】
図1は、本発明に係る回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示す接続構造1は相互に対向する第1の回路部材20及び第2の回路部材30を備えており、第1の回路部材20と第2の回路部材30との間には、これらを接続する回路接続部材10が設けられている。
【0085】
第1の回路部材20は、第1の回路基板21と、第1の回路基板21の主面21a上に形成された第1の回路電極22とを有する。第2の回路部材30は、第2の回路基板31と、第2の回路基板31の主面31a上に形成された第2の回路電極32とを有する。第1の回路基板21の主面21a上、及び第2の回路基板31の主面31a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0086】
第1及び第2の回路基板21、31としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機物、TCP、FPC、COFに代表されるポリイミド基材、ポリカーボネート、ポリエステルスルホン等の有機物、これらの無機物や有機物を複合化した材料からなる基板が挙げられる。
【0087】
第1及び第2の回路部材20、30の具体例としては、液晶ディスプレイに用いられている、ITO等で回路電極が形成されたガラス基板又はプラスチック基板や、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられる。これらは必要に応じて組み合わせて使用される。
【0088】
回路接続部材10は、導電粒子及び絶縁粒子を含有する上記接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物から形成されている。回路接続部材10は、絶縁層11と、絶縁層11内に分散している導電粒子7及び絶縁粒子8から構成される。回路接続部材10中の導電粒子7は、対向する第1の回路電極22と第2の回路電極32との間のみならず、主面21aと主面31aとの間にも配置されている。また、絶縁粒子8は、主面21aと主面31aとの間に配置されている。なお、回路接続部材10の40℃での貯蔵弾性率は100〜3000MPaであることが好ましく、500〜2000MPaであることがより好ましい。
【0089】
接続構造1においては、導電粒子7が第1及び第2の回路電極22、32の双方に直接接触している。これにより、第1及び第2の回路電極22、32が、導電粒子7を介して電気的に接続されている。このため、第1の回路電極22及び第2の回路電極32間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、第1及び第2の回路電極22、32の間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。なお、第1の回路電極22と第2の回路電極32とが直接接触して電気的に接続される部分も存在し得る。
【0090】
また、絶縁粒子8は、隣り合う第1の回路電極22間、及び隣り合う第2の回路電極32間に存在し、導電粒子7の凝集を有効に抑制している。これにより、導電粒子7によるそれらの隣り合う回路電極間の短絡が十分に防止される。これは、絶縁粒子8の平均粒径Riが導電粒子7の平均粒径Rcよりも1.2〜3倍大きいことによる。つまり、絶縁粒子8と導電粒子7とがこのような相関を示すと、主面21a、31a間では、凝集した導電粒子7が形成する空隙に絶縁粒子8が存在するのではなく、むしろ、凝集した絶縁粒子8が形成する空隙に導電粒子7が存在している。これにより、導電粒子7の凝集が十分に阻止される。その結果、回路接続部材10は、いわゆる異方導電性膜として有効に機能し、その接続信頼性は十分に高いものとなる。
【0091】
また、接続構造1が、LCDパネル基板とCOFとの接続構造である場合、LCDパネル基板の面取り部分(図示せず)とCOFのソルダーレジスト部(図示せず)との間での導電粒子7の凝集を十分防止することができる。そのような観点からも、導電粒子7による隣り合う回路電極間の短絡が十分に防止される。
【0092】
さらには、この接続構造1は、導電粒子7と絶縁粒子8とのコントラストが明確であるため、隣り合う回路電極22間、32間で短絡しているか否か、十分容易に視認することが可能である。
【0093】
図2は、本発明に係る回路部材の接続方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【0094】
本実施形態では、まず、上述の第1の回路部材20と、フィルム状の回路接続材料40とを用意する。回路接続材料40は、導電粒子7及び絶縁粒子8を含有する上記接着剤組成物からなる。
【0095】
回路接続材料40の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。回路接続材料40の厚さが5μm未満では、第1及び第2の回路電極22、32間に回路接続材料40が充填不足となる傾向がある。他方、回路接続材料40の厚さが50μmを超えると、第1及び第2の回路電極22、32間の導通の確保が困難となる傾向がある。
【0096】
次に、回路接続材料40を第1の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。そして、回路接続材料40を、図2(a)の矢印A及びB方向に加圧し、回路接続材料40を第1の回路部材20に仮接続する(図2(b)参照)。
【0097】
このときの圧力は回路部材に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1〜30MPaとすることが好ましい。また、加熱しながら加圧してもよく、加熱温度は回路接続材料40が実質的に硬化しない温度とする。加熱温度は一般的には50〜190℃にするのが好ましい。これらの加熱及び加圧は0.5〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0098】
また、仮接続してから後述する本接続までの間における回路接続材料40の劣化をより有効に防止するために、第1の回路電極22は、その表面が金、銀、錫及び白金族金属からなる群より選ばれる1種以上の金属で構成されていることが好ましい。
【0099】
次いで、図2(c)に示すように、第2の回路部材30を、第2の回路電極32を第1の回路部材20の側に向けるようにして回路接続材料40上に載せる。なお、回路接続材料40が支持体(図示せず)上に設けられている場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材30をフィルム状回路接続材料40上に載せる。そして、回路接続材料40を加熱しながら、図2(c)の矢印A及びB方向に全体を加圧する。このときの加熱温度は、例えば、遊離ラジカル発生剤がラジカルを発生可能な温度とする。これにより、遊離ラジカル発生剤においてラジカルが発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。
【0100】
加熱温度は、例えば、90〜200℃とし、接続時間は例えば1秒〜10分とする。これらの条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
【0101】
回路接続材料40の加熱により、第1の回路電極22と第2の回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態で回路接続材料40が硬化して、第1の回路部材20と第2の回路部材30とが回路接続部材10を介して強固に接続(本接続)される。
【0102】
回路接続材料40の硬化により回路接続部材10が形成されて、図1に示すような回路部材の接続構造1が得られる。なお、接続の条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択される。
【0103】
本実施形態によれば、得られる接続構造1において、導電粒子7を対向する第1及び第2の回路電極22、32の双方に接触させることが可能となり、第1及び第2の回路電極22、32間の接続抵抗を十分に低減することができる。そして、回路接続部材10が絶縁粒子8をも含有する上記接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物により構成されていることから、隣り合う回路電極22間、及び回路電極2間の短絡を十分有効に防止することができる。
【0104】
図3は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。図3に示すように、本実施形態の半導体装置2は、半導体素子50と、半導体の支持部材となる基板60及び基板60上に設けられた回路パターン61を有する半導体素子搭載用基板65を備えている。半導体素子50及び半導体素子搭載用基板65の間には、これらを電気的に接続する半導体素子接続部材80が設けられている。また、半導体素子接続部材80は基板60の主面60a上に積層され、半導体素子50は更にその半導体素子接続部材80上に積層されている。
【0105】
基板60は回路パターン61を備えており、回路パターン61は、基板60の主面60a上で半導体接続部材80を介して又は直接に半導体素子50と電気的に接続されている。そして、これらが封止材70により封止され、半導体装置2が形成される。
【0106】
半導体素子50の材料としては特に制限されないが、シリコン、ゲルマニウムの4族の半導体素子、GaAs、InP、GaP、InGaAs、InGaAsP、AlGaAs、InAs、GaInP、AlInP、AlGaInP、GaNAs、GaNP、GaInNAs、GaInNP、GaSb、InSb、GaN、AlN、InGaN、InNAsPなどのIII−V族化合物半導体素子、HgTe、HgCdTe、CdMnTe、CdS、CdSe、MgSe、MgS、ZnSe、ZeTeなどのII−VI族化合物半導体素子、そして、CuInSe(ClS)などの種々のものを用いることができる。
【0107】
半導体素子接続部材80は、絶縁層11と、絶縁層11内に分散している導電粒子7及び絶縁粒子8とを含有している。なお、半導体素子接続部材80の40℃での弾性率は100〜3000MPaであることが好ましく、500〜2000MPaであることがより好ましい。
【0108】
導電粒子7は、半導体素子50と回路パターン61との間のみならず、半導体素子50と主面60aとの間にも配置されている。また、絶縁粒子8は、半導体素子50と主面60aとの間に配置されている。
【0109】
本実施形態の半導体装置2においては、半導体素子50と回路パターン61とが、導電粒子7を介して電気的に接続されている。このため、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、半導体素子50及び回路パターン61間の電流の流れを円滑にすることができ、半導体の有する機能を十分に発揮することができる。また、この導電粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性をより良好に示すことも可能である。なお、半導体素子50と回路パターン61とが直接接触して電気的に接続される部分も存在し得る。
【0110】
半導体素子接続部材80は、導電粒子及び絶縁粒子を含む上記接着剤組成物の硬化物により構成されている。このことから、絶縁粒子8が導電粒子7の凝集を有効に抑制しているため、隣り合う回路パターン61間や、半導体素子50の隣り合う接続端子(図示せず)間の導電粒子7による短絡は十分に防止される。
【0111】
さらには、この半導体装置2は、導電粒子7と絶縁粒子8とのコントラストが明確であるため、隣り合う回路パターン61間、及び半導体素子50における接続端子間で短絡しているか否か、十分容易に視認することが可能である。
【0112】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0113】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0114】
(実施例1)
[接着剤組成物の調製]
ラジカル重合性化合物として、ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製、商品名「UA−5500T」)10質量部、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成社製、商品名「M−215」)25質量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製、商品名「DCP−A」)10質量部及びモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アッシドフォスフェート(共栄社化学社製、商品名「P−2M」)1質量部、遊離ラジカル発生剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサンの50質量%炭化水素希釈溶液(日本油脂社製、商品名「パーヘキサ25O」)4質量部を準備した。また、ポリエステルウレタン樹脂(東洋紡績社製、商品名「UR8200」)をトルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比)の混合溶剤に溶解して得られた固形分40質量%のポリエステルウレタン樹脂溶液80質量部を準備した。上述のラジカル重合性化合物及び遊離ラジカル発生剤を、上記ポリエステルウレタン樹脂溶液に混合した後、均一に攪拌して接着剤成分を得た。
【0115】
次に、核となるポリスチレンからなる粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設けた平均粒径4μmの導電粒子を準備した。この導電粒子の10%圧縮弾性率(K値)を測定したところ、410kgf/mmであった。また、ポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる平均粒径6μmの絶縁粒子を準備した。この絶縁粒子の10%圧縮弾性率(K値)を測定したところ、320kgf/mmであった。上述の導電粒子を、上記接着剤成分100体積部に対して3体積部となるよう、その接着剤成分に配合して分散した。更に、そこに、接着剤成分100質量部に対して10質量部となるよう、上記絶縁粒子を配合して分散した。こうして、接着剤組成物を得た。
【0116】
得られた接着剤組成物を、厚み75μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布した。次に、塗布した接着剤組成物を70℃で10分間、熱風により加熱して、厚み20μmのフィルム状接着剤からなる接着層と上記PETフィルムとを積層してなる接着シート(幅15cm、長さ60m)を得た。得られた接着シートを1.5mm幅に裁断し、内径40mm、外径48mmのプラスチック製リールの側面(厚み1.5mm)に接着層側をリールに向けて50m巻きつけた。
【0117】
[回路部材の接続構造の作製]
上述のようにして得られた接着シート(幅1.5mm、長さ3cm)を、接続部が面取りされたITOコートガラス基板(15Ω□)上に、基板と接着層が接触するように載置して積層体を得た。得られた積層体に対して、それらの積層方向に、加熱温度70℃、加圧圧力1MPaの条件で2秒間加熱及び加圧を施して、接着層を基板に貼り付けた。その後、PETフィルムを接着層から剥離した。
【0118】
次いで、回路電極としての錫めっき銅回路(ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み8μm)600本がポリイミドフィルム上に形成されてなり、ライン間及びラインの一部を覆うように形成されたソルダーレジストを備えるフレキシブル回路板(FPC)を準備した。次に、接着層上に、基板の面取り部分とFPCのソルダーレジストが重なるように、FPCを載置した。続いて、それらに対して、加熱温度24℃、加圧圧力0.5MPaの条件で、1秒間積層方向に加熱及び加圧を施し、仮接続を行った。
【0119】
次に、仮接続後の基板、接着層及びFPCからなる積層体を本圧着装置に設置した。次いで、ヒートツールを用いて、加熱温度180℃、加圧圧力3MPaの条件で、5秒間、積層体をその積層方向に加熱及び加圧して、幅1.5mmにわたって本接続を行った。この際、150μm厚みのポリテトラフロロエチレン製のクッション材をFPCの接着層とは反対側に配置して、このクッション材と共に上記積層体を加圧した。これにより、基板における接続部の面取り部分とFPCのソルダーレジストとの間に存在する接着層をクッション材が外側から押さえ込むようにした。こうして、回路部材の接続構造を得た。
【0120】
[接続抵抗の測定]
作製した直後の回路部材の接続構造について、FPCの隣り合う回路電極間の抵抗(初期接続抵抗)をマルチメータ(アドバンテスト社製、商品名「TR6845」)で測定した。抵抗値の測定は隣り合う回路電極間40点で行い、得られた抵抗値の相加平均値を求めた。その結果、接続構造の初期接続抵抗値は1.5Ωとなり、良好な接続特性を示した。
【0121】
[接着力の測定]
作製した直後の回路部材の接続構造について、FPCの90°剥離試験を、剥離速度50mm/分で行い、その時の最大荷重を測定して接着力とした。その結果、接着力は約1000N/mと、良好な接着特性を示した。
【0122】
[短絡有無の評価]
上述の回路部材の接続構造の作製において、PETフィルムを接着層から剥離した。その後、回路電極としての錫めっき銅回路(ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み8μm)100本がポリイミドフィルム上に形成されてなり、ライン間及びラインの一部を覆うように形成されたソルダーレジストを備えるフレキシブル回路板(FPC)を準備した。次に、接着層上に、基板の面取り部分とFPCのソルダーレジストが重なるように、FPCを載置した。続いて、それらに対して、加熱温度24℃、加圧圧力0.5MPaの条件で、1秒間積層方向に加熱及び加圧を施し、仮接続を行った。
【0123】
次に、仮接続後の基板、接着層及びFPCからなる積層体を本圧着装置に設置した。次いで、ヒートツールを用いて、加熱温度180℃、加圧圧力3MPaの条件で、5秒間、積層体をその積層方向に加熱及び加圧して、幅1.5mmにわたって本接続を行った。この際、150μm厚みのポリテトラフロロエチレン製のクッション材をFPCの接着層とは反対側に配置して、このクッション材と共に上記積層体を加圧した。これにより、基板における接続部の面取り部分とFPCのソルダーレジストとの間に存在する接着層をクッション材が外側から押さえ込むようにした。こうして、短絡有無の評価用回路部材の接続構造を得た。
【0124】
作製した直後の回路部材の接続構造について、金属顕微鏡で観察することにより、短絡有無の評価を行った。その結果、短絡がないことが確認された。
【0125】
また、金属顕微鏡により観察した回路部材の接続構造を図4に示す。この図4より、短絡がない状態であることが明らかである。
【0126】
(実施例2〜10)
導電粒子の平均粒径、導電粒子の配合量、絶縁粒子の平均粒径、及び/又は絶縁粒子の配合量を表1、2に示すように代えた以外は実施例1と同様にして、回路部材の接続構造を作製した。得られた回路部材の接続構造に対して、実施例1と同様にして、接続抵抗及び接着力の測定並びに短絡有無の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
(実施例11)
ウレタンアクリレートの配合量を10質量部に代えて35質量部とし、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートの配合量を25質量部に変えて0質量部、すなわち配合しなかった以外は実施例10と同様にして、回路部材の接続構造を作製した。得られた回路部材の接続構造に対して、実施例1と同様にして、接続抵抗及び接着力の測定並びに短絡有無の評価を行った。結果を表2に示す。
【0130】
(実施例12)
ポリエステルウレタン樹脂に代えてフェノキシ樹脂(分子量45000)を用いた以外は実施例10と同様にして、回路部材の接続構造を作製した。得られた回路部材の接続構造に対して、実施例1と同様にして、接続抵抗及び接着力の測定並びに短絡有無の評価を行った。結果を表2に示す。
【0131】
(実施例13)
絶縁粒子をポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなるものに代えてシリコーン樹脂からなるものにした以外は実施例1と同様にして、回路部材の接続構造を作製した。なお、絶縁粒子の10%圧縮弾性率(K値)を測定したところ、30kgf/mmであった。得られた回路部材の接続構造に対して、実施例1と同様にして、接続抵抗及び接着力の測定並びに短絡有無の評価を行った。結果を表2に示す。
【0132】
(比較例1)
絶縁粒子を用いない以外は実施例1と同様にして、回路部材の接続構造を作製した。得られた回路部材の接続構造に対して、実施例1と同様にして、接続抵抗及び接着力の測定並びに短絡有無の評価を行った。結果を表3に示す。
【0133】
【表3】

【0134】
(比較例2〜7)
導電粒子の平均粒径、導電粒子の配合量、絶縁粒子の平均粒径、及び/又は絶縁粒子の配合量を表3に示すように代えた以外は実施例1と同様にして、回路部材の接続構造を作製した。得られた回路部材の接続構造に対して、実施例1と同様にして、接続抵抗及び接着力の測定並びに短絡有無の評価を行った。結果を表3に示す。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明によれば、従来の回路接続用接着フィルムを構成する接着剤組成物に比べ、COF化及びファインピッチ化に対応し、LCDパネルの接続部エッジにおける導電粒子の凝集を十分に抑制する結果、隣り合う電極間の短絡を十分に防止でき、かつ、接続信頼性にも十分優れる接着剤組成物を提供することができる。
【符号の説明】
【0136】
1…回路部材の接続構造、2…半導体装置、5…接着剤組成物、7、108、307…導電粒子、8、308…絶縁粒子、10…回路接続部材、11…絶縁層、20…第1の回路部材、21…第1の回路基板、21a…第1の回路基板主面、22…第1の回路電極、30…第2の回路部材、31…第2の回路基板、31a…第2の回路基板主面、32…第2の回路電極、40…回路接続材料、50…半導体素子、60…基板、60a…基板主面、61…回路パターン、65…半導体素子搭載用基板、70…封止材、80…半導体素子接続部材、100…LCDパネル、101…回路接続用接着フィルム、102、206…回路電極、103…LCDパネル基板、104…液晶表示部、109…面取り部、111…回路接続用接着フィルムの硬化物、115…接着剤組成物の硬化物、200…COF、205…COF用フィルム、207…レジスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤成分と、導電粒子と、絶縁粒子と、を含有し、
前記導電粒子の平均粒径Rcに対する前記絶縁粒子の平均粒径Riの比(Ri/Rc)が120〜300%である接着剤組成物。
【請求項2】
前記接着剤成分100質量部に対して、前記絶縁粒子を1〜20質量部含有する、請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接着剤組成物を含有し、回路電極を有する回路部材同士を、それぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように接着するために用いられる回路接続材料。
【請求項4】
フィルム状に形成されてなる、請求項3記載の回路接続材料。
【請求項5】
第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、
第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材と、
前記第1の回路基板の主面と前記第2の回路基板の主面との間に設けられ、前記第1の回路電極と前記第2の回路電極とを対向配置させた状態で電気的に接続する回路接続部材と、
を備え、
前記回路接続部材は、請求項3又は4に記載の回路接続材料の硬化物である、回路部材の接続構造。
【請求項6】
半導体素子と、
前記半導体素子を搭載する基板と、
前記半導体素子及び前記基板間に設けられ、前記半導体素子及び前記基板を電気的に接続する半導体素子接続部材と、
を備え、
前記半導体素子接続部材は、請求項1又は2に記載の接着剤組成物の硬化物である、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−179004(P2011−179004A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82153(P2011−82153)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【分割の表示】特願2007−551898(P2007−551898)の分割
【原出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】