説明

接着剤組成物、回路接続構造体及び半導体装置

【課題】 ラジカル硬化系でプロセスマージンが広く、安定した性能を有し、かつ貯蔵安定性にも優れる接着剤組成物及びそれを用いた回路接続構造体、半導体装置を提供する。
【解決手段】 (a)熱可塑性樹脂、(b)分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、(d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物、を含む接着剤組成物。相対向する回路電極を有する基板間に前記の接着剤組成物を介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した回路接続構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、回路接続構造体及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させる目的で従来から種々の接着剤が使用されている。接着剤に対する要求は、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等多岐に渡る特性が要求されている。また、接着に使用される被着体は、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO、SiN、SiO等の多種多様な表面状態を有する基材が用いられ、各被着体にあわせた接着剤の分子設計が必要である。
従来から、前記半導体素子や液晶表示素子用の接着剤として、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。熱硬化性樹脂の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温(25℃)での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられてきた。実際の工程での硬化条件は、170〜250℃の温度で1〜3時間硬化することにより、所望の接着を得ていた。しかしながら、最近の半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチが狭小化し、硬化時の加熱によって、周辺部材に悪影響を及ぼす恐れが出てきた。さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要性があり、低温(100〜170℃)、短時間(1時間以内)、換言すれば低温速硬化での接着が要求されている。この低温速硬化を達成するためには、活性化エネルギーの低い熱潜在性触媒を使用する必要があり、室温付近での貯蔵安定性を兼備することが非常に難しいことが知られている。
最近、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体(以後、(メタ)アクリレート誘導体とよぶ)とラジカル重合開始剤である過酸化物を併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている。ラジカル硬化は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間硬化が可能である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラジカル硬化系の接着剤は、高反応性であるためにプロセスマージンが狭く、硬化温度や硬化時間のばらつきによって、接着力、接続抵抗等の特性が安定して得られない。
【0005】
本発明は、ラジカル硬化系でありながら、プロセスマージンが広く、安定した性能を有し、かつ貯蔵安定性にも優れる接着剤組成物及びそれを用いた回路接続構造体、半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、[1](a)熱可塑性樹脂、(b)分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、(d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物、を含むことを特徴とする接着剤組成物である。
また、本発明は、[2] (d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物が、一般式(A)、一般式(C)または一般式(D)のいずれかで示されるニトロソアミン化合物であることを特徴とする上記[1]に記載の接着剤組成物である。
【0007】
【化1】


(ここでR、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アミド基、または一般式(B)を表す。)
【0008】
【化2】

(ここでRは、カルボキシル基、水酸基を表す。Kは、1〜5の整数を表す。)
【0009】
【化3】

(ここでR、Rは、炭素数1〜3のアルキレン基、Xは、メチレン基、または2価の酸素原子を表す。)
【0010】
【化4】

(ここでRは、アリール基、Lは1〜3の整数、MはL価の陽イオンまたはアンモニウム塩を表す。)
また、本発明は、[3] (c)ラジカル重合開始剤が、1分間半減期温度90〜175℃で、分子量180〜1,000のパーオキシエステルである上記[1]または上記[2]に記載の接着剤組成物である。
また、本発明は、[4] (a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、(b)分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物50〜250重量部、(c)ラジカル重合開始剤0.05〜30重量部、(d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物0.01〜10重量部を含有してなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の接着剤組成物である。
また、本発明は、[5] (a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電粒子0.5〜30重量部を含有してなる上記[4]に記載の接着剤組成物である。
また、本発明は、[6] 相対向する回路電極を有する基板間に上記[1]ないし上記[5]のいずれかに記載の接着剤組成物を介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した回路接続構造体である。
また、本発明は、[7] 半導体素子の電極と搭載用基板の回路電極の間に上記[1]ないし上記[5]のいずれかに記載の接着剤組成物を介在させ、相対向する電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した半導体装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ラジカル硬化系でありながら、プロセスマージンが広く、安定した性能を有し、かつ貯蔵安定性にも優れる接着剤組成物、回路接続構造体、半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において用いる(a)熱可塑性樹脂としては、特に制限無く公知のものを使用することができる。このような熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート樹脂類、ポリイミド樹脂類、ポリウレタン樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリビニルブチラール樹脂類などを用いることができる。これらは単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これら熱可塑性樹脂中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていても良い。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。上記樹脂の分子量は大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。分子量は特に制限を受けるものではないが、一般的な重量平均分子量としては5,000〜150,000が好ましく、10,000〜80,000が特に好ましい。この値が、5,000未満ではフィルム形成性が劣る傾向があり、また150,000を超えると他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。
【0013】
本発明において用いる(b)分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、特に制限無く公知のものを使用することができる。
【0014】
具体的には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2'-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて単独あるいは混合して用いてもよい。
【0015】
(b)分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100部に対して、50〜250重量部であり、好ましくは60〜150重量部である。添加量が60重量部未満の場合、硬化後の耐熱性低下が懸念され、また、150重量部以上の場合には、フィルムとして使用する場合にフィルム形成性が低下する恐れがある。
【0016】
本発明において用いる(c)ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等公知の化合物を用いることができる。過酸化物の具体的な化合物としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドなどから選定できる。安定性、反応性、相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ、分子量が180〜1,000のパーオキシエステル誘導体が好ましい。
具体的には、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0017】
(c)ラジカル重合開始剤の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100部に対して、ラジカル重合開始剤0.05〜30重量部であり、好ましくは0.1〜20重量部である。添加量が0.05重量部未満の場合、硬化不足が懸念され、また、30重量部以上の場合には、放置安定性が低下する恐れがある。
【0018】
本発明において用いる(d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物としては、ニトロソ基を分子中に一つ以上含有する化合物であれば、特に制限無く公知のものを使用することができる。特に下記一般式(A),(C),(D)のいずれかで示すニトロソアミン化合物が好ましい。
【0019】
【化5】

(ここでR、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アミド基、または一般式(B)を表す。)
【0020】
【化6】

(ここでRは、カルボキシル基、水酸基を表す。Kは、1〜5の整数を表す。)
【0021】
【化7】

(ここでR、Rは、炭素数1〜3のアルキレン基、Xはメチレン基、または2価の酸素原子を表す。)
【0022】
【化8】

(ここでRは、アリール基、Lは1〜3の整数、MはL価の陽イオンまたはアンモニウム塩を表す。)
具体的には、ジフェニルニトロソアミン、メチルニトロソアニリン、エチルニトロソアニリン、ジメチルニトロソアミン、ジエチルニトロソアミン、ジブチルニトロソアミン、ジヘキシルニトロソアミン、ブチルエチルニトロソアミン、t−ブチルエチルニトロソアミン、等が挙げられる。この他に、下記一般式に示す化合物(1)〜(14)や、ポリアミン、ポリエステル、ポリアクリレート等の側鎖に前記一般式(A)で示される置換基が導入されたポリマーが挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0023】
【化9】

【0024】
(d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.05〜5重量部である。添加量が0.01重量部未満の場合、添加効果が著しく低下することが懸念され、また、10重量部以上の場合には、他の成分との相溶性が低下する恐れがある。
【0025】
また、本発明の接着剤組成物には、導電粒子を含有させることができる。
本発明に用いる導電粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に前記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものでもよい。導電粒子が、プラスチックを核とし、この核に前記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものや熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。また、これらの導電粒子の表面を、さらに高分子樹脂などで被覆した微粒子は、導電性粒子の配合量を増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性が向上できることから、適宜これを単独あるいは導電粒子と混合して用いてもよい。
【0026】
この導電粒子の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。導電粒子の使用量は、特に制限は受けないが、(a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電粒子0.5〜30重量部を含有することが好ましい。接着剤組成物トータル100体積に対しては、0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。この値が、0.1体積%未満であると導電性が劣る傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。
【0027】
本発明の接着剤組成物には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤及び密着向上剤、レベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。具体的には、下記一般式で示される化合物が好ましい。
【0028】
【化10】

(ここでR、R、Rは独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、アリール基、Rは水素、メチル基、Nは1〜10の整数を示す。)
【0029】
特に、上記の一般式において、Rが炭素数1〜5のアルキル基またはアリール基、R及びRが炭素数1〜3のアルコキシ基、Nが2〜4である化合物が、高接着性及び電気的信頼性の観点からより好ましい。
これらの化合物は単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0030】
本発明の接着剤組成物は、橋架け率の向上を目的として、前記(b)分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物の他に、アリル基、マレイミド基、ビニル基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を適宜添加してもよい。具体的には、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカプロラクタム、4,4'−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N-ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリルアミド等が挙げられる。
【0031】
本発明の接着剤組成物は、流動性向上を目的に、単官能(メタ)アクリレートを併用しても良い。具体的には、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。
【0032】
本発明の接着剤組成物は、応力緩和及び接着性向上を目的に、ゴム成分を併用しても良い。具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトンが挙げられる。
上記ゴム成分としては、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム成分が好ましく、さらに流動性向上の観点から、液状ゴムがより好ましい。具体的には、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられ、極性基であるアクリロニトリル含有量が10〜60重量%が好ましい。
これらの化合物は単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0033】
本発明の接着剤組成物には、貯蔵安定性付与を目的に、t−ブチルピロカテコール、t−ブチルフェノール、p-メトキシフェノール等に代表される重合禁止剤などの添加剤を適宜添加してもよい。
【0034】
本発明の接着剤組成物は、常温(25℃)で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満の場合、室温で放置すると揮発する恐れがあり、開放系での使用が制限される。また、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後の信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0035】
本発明の接着剤組成物はフィルム状にして用いることもできる。接着剤組成物に必要により溶剤等を加えるなどした溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に前記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去してフィルムとして使用することができる。フィルムの形状で使用すると取扱性等の点から一層便利である。
【0036】
本発明の接着剤組成物は加熱及び加圧を併用して接着させることができる。加熱温度は、特に制限は受けないが、50〜190℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間、好ましくは1秒〜10秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0037】
本発明の接着剤組成物を使用して相対向する回路電極を有する基板間に接着剤組成物を介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続して回路接続構造体とすることができる。回路電極を有する基板は、基板と電極から構成され、基板としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はないが、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラスまたはプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップなどが有り、必要に応じて組み合わせて使用される。
回路電極を有する基板の回路電極を対向配置し、対向配置した回路電極間に本発明の接着剤組成物(フィルム形状が好ましい)を介在させ、加熱加圧することで対向配置した接続端子同士を電気的に接続して回路接続構造体とする。加熱加圧することにより、対向配置した回路電極同士は、直接接触により又は接着剤組成物中の導電粒子を介して電気的に接続することができる。半導体素子の電極と搭載用基板の回路電極の間に本発明の接着剤組成物を介在させ、相対向する電極(半導体素子の電極と搭載用基板の回路電極)を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続することで半導体装置を得ることができる。
【0038】
本発明の接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0039】
以下に、本発明の接着剤組成物及び導電粒子を使用して作製した異方導電フィルムと電極の接続の一例について説明する。異方導電フィルムを、基板上の相対峙する電極間に存在させ、加熱加圧することにより両電極の接触と基板間の接着を得、電極との接続を行える。電極を形成する基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
(a)熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂(PKHC、ユニオンカーバイド社製商品名、平均分子量45,000)40gを、メチルエチルケトン60gに溶解して、固形分40重量%の溶液とした。(b)ラジカル重合性化合物として、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(M−215、東亞合成株式会社製商品名)、ウレタンアクリレート(AT−600、共栄社化学株式会社製商品名)及び2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(ライトエステルP-2M、共栄社化学株式会社製商品名)、(c)ラジカル重合開始剤としてt-ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、1分間半減期温度132.6℃、日本油脂株式会社製商品名)、(d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物であるニトロソアミン化合物として、ニトロソフェニルヒドロキシアミン アルミニウム塩(NPAL、ALBEMARLE製商品名)を用いて固形重量比で表1に示すように配合し、さらに導電粒子を1.5体積%配合分散させ、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分間の熱風乾燥により接着剤層の厚みが15μmのフィルム状接着剤を得た。導電粒子は、ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設けた平均粒径4μm、比重2.5の導電性粒子を作製して用いた。
【0042】
【表1】

【0043】
〔接着強度、接続抵抗の測定〕 上記製法によって得たフィルム状接着剤を用いて、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて165℃、3MPa、10秒間の加熱加圧を行って幅2mmにわたり接続し、回路接続構造体(接続体)を作製した。この接続体の隣接回路間の抵抗値を、接着直後と、80℃、95%RHの高温高湿槽中に120時間保持した後にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗150点の平均(x+3σ、平均値;x、σ;標準偏差)で示した。
【0044】
また、この回路接続構造体(接続体)の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は株式会社東洋ボールドウィン製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。
【0045】
(実施例2)
実施例1のニトロソアミン化合物として用いたNPALの代わりに、N,N−ジフェニルニトロソアミン(DPNA、ワコー社製商品名)を0.01重量部用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を作製し、評価を行った。
【0046】
(比較例1)
実施例1においてニトロソアミン化合物NPALを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を作製し、評価を行った。
【0047】
(比較例2)
実施例1のラジカル重合開始剤として用いたパーヘキシルOの代わりに、1分間半減期温度が88.3℃のパーオキシジカーボネート誘導体であるジイソプロピルパーオキシジカーボネート(パーロイルIPP、日本油脂株式会社製商品名)を3重量部用い、ニトロソアミン化合物を用いないこと以外は、実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を作製し、評価を行った。
【0048】
以上のようにして行った回路接続構造体(接続体)の接着強度、接続抵抗を測定した結果を表2に示した。
【0049】
【表2】

【0050】
実施例1、2で得られた接着剤組成物は、加熱温度160℃において、接着直後及び80℃、95%RHの高温高湿槽中に120時間保持した後で、接続抵抗が低く、接着強度が高い良好な特性を示し、広域の加熱温度に対して良好な特性を示した。これらに対して、本発明におけるニトロソアミン化合物を使用しない場合(比較例1、2)では、使用する実施例に比べて接続直後の場合でも接続抵抗の上昇や接着強度の低下がみられ、さらに、80℃、95%RHの高温高湿槽中に120時間保持した後では接続抵抗の上昇や接着強度の低下が顕著となった。また、広域の加熱温度に対して接続抵抗の値が大きく変化する。
【0051】
(実施例3)
実施例1で得られたフィルム状接着剤を、真空包装を施して、40℃で3日間放置した後、実施例1と同様にFPCとITOとを160℃、3MPa、10秒間で加熱圧着を行った。このようにして得た回路接続構造体(接続体)の接着強度、接続抵抗を測定したところ、接着強度は880N/m、接続抵抗は2.3Ωを示し、放置安定性(保存安定性)に優れた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性樹脂、(b)分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、(d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物、を含むことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
(d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物が、一般式(A)、一般式(C)または一般式(D)のいずれかで示されるニトロソアミン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【化1】


(ここでR、Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アミド基、または一般式(B)を表す。)
【化2】

(ここでRは、カルボキシル基、水酸基を表す。Kは、1〜5の整数を表す。)
【化3】

(ここでR、Rは、炭素数1〜3のアルキレン基、Xは、メチレン基、または2価の酸素原子を表す。)
【化4】

(ここでRは、アリール基、Lは1〜3の整数、MはL価の陽イオンまたはアンモニウム塩を表す。)
【請求項3】
(c)ラジカル重合開始剤が、1分間半減期温度90〜175℃で、分子量180〜1,000のパーオキシエステルである請求項1または請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
(a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、(b)分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物50〜250重量部、(c)ラジカル重合開始剤0.05〜30重量部、(d)分子内に1つ以上のニトロソ基を有する化合物0.01〜10重量部を含有してなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
(a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、導電粒子0.5〜30重量部を含有してなる請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
相対向する回路電極を有する基板間に請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の接着剤組成物を介在させ、相対向する回路電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した回路接続構造体。
【請求項7】
半導体素子の電極と搭載用基板の回路電極の間に請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の接着剤組成物を介在させ、相対向する電極を有する基板を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続した半導体装置。

【公開番号】特開2006−45459(P2006−45459A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232191(P2004−232191)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】