説明

接着性樹脂組成物並びにこれを用いた積層体及びフレキシブル印刷配線板

【課題】 難燃性に優れた非ハロゲン系で、保存安定性に優れた一液タイプの接着剤溶液を提供できる接着性樹脂組成物、およびこれを用いた積層体、フレキシブル印刷配線板を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂;エポキシ供与モノマー及び当該モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合してなるエポキシ含有共重合体;熱可塑性樹脂;硬化剤を含む接着性樹脂組成物であって、前記エポキシ含有共重合体が、重量平均分子量5000〜10万未満で且つエポキシ当量が3500g/eq以下である共重合体を用いる。このような組成物はポリマー成分の相溶性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル銅張り積層板等のフレキシブル印刷配線板に好適に用いられる接着性樹脂組成物、特に一液タイプとして用いることができる接着性樹脂組成物、及びそれを用いたフレキシブル印刷配線板、並びに接着シート、カバーレイフィルム等の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フレキシブル印刷配線板(フレキシブルプリント配線板)は、ポリイミドフィルム等の耐熱性フィルムからなる絶縁フィルムを基材とし、この絶縁フィルムの片面もしくは両面に、銅箔等を接着剤を用いて貼り合せた構造を基本とするものである。
【0003】
フレキシブルプリント配線板に用いられる接着剤としては、従来より、耐薬品性、耐熱性、機械的強度に寄与するエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、高接着性、柔軟性付与の役割を有するアクリロニトリルブタジエンゴム等の反応性ゴムを主成分とする接着剤組成物が主流となっている。
【0004】
製造工程管理のしやすさから、フィルムタイプの接着剤が提案されている。フィルムタイプの接着剤は、離型処理したフイルム上に接着剤組成物を塗布、乾燥することにより得られ、半硬化状態(Bステージ状態)で保管される。このため、保管中に少しづつ硬化が進行して、所期の接着強度が得られにくくなることがある。
【0005】
保存安定性を高め、すぐれた剥離強度を得ることができるフレキシブル基板用のフィルムタイプの接着剤としては、例えば特開2002−275444号公報に、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及びエポキシ基含有反復単位0.5〜2.7重量%含む、重量平均分子量10万以上のエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体を含む接着剤組成物が提案されている。ここで、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の合計重量Aと、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の重量Bとの比率A/Bは0.25〜3である。
【0006】
一方、有機溶剤に溶解して接着剤ワニスとして用いることができるフレキシブル基板用接着剤組成物としては、例えば、特開2008−81678号公報に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、イソプレン等のエチレン性重合性不飽和基を少なくとも2個有する単量体、アルコール性水酸基を有する単量体、スチレン誘導体又は(メタ)アクリル酸誘導体を含む共重合体とを含有する接着性樹脂組成物が提案されている。このような共重合体は、エポキシ樹脂との相溶性が良好で、かつ一般的に硬くてもろいとされる樹脂に十分な接着強度と靭性を付与できることが開示されている。
【0007】
また、液状接着剤として使用することを意図したフレキシブルプリント配線基板等に用いるエポキシ接着剤として、特開2008−308686号公報には、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有してなるベース樹脂100重量部に、エポキシ化スチレン系熱可塑性エラストマー10〜100重量部含有させた接着剤が提案されている。
【0008】
さらに、従来、難燃性付与のためにハロゲン系難燃剤が用いられていたが、近年の非ハロゲン系の要請から、エポキシ樹脂としてリン含有エポキシ樹脂を用いるなど、リン系難燃剤、さらには樹脂としてリン含有樹脂を用いることが提案されている。例えば、特開2004−307627号公報では、フィルムタイプの接着剤を意図したフレキシブルプリント配線基板用接着性樹脂組成物として、エポキシ樹脂0〜15重量%、リン含有エポキシ樹脂10〜30重量%、エポキシ基を含む(メタ)アクリレートモノマー、アクリロニトリル及び他の共重合性モノマーを重合して得られる重量平均分子量50万〜100万のアクリル樹脂を用いた難燃性接着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−275444号公報
【特許文献2】特開2008−81678号公報
【特許文献3】特開2008−308686号公報
【特許文献4】特開2004−307627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、フレキシブル印刷配線板用接着剤組成物、特に当該樹脂組成物に用いられる高接着性、柔軟性付与成分について、種々提案されているが、近年の難燃性、耐熱性、耐薬品性、機械的強度の更なる向上への要求は、ますます厳しくなってきている。かかる要求に応えるためには、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の含有率の増大、リン含有エポキシ樹脂などの配合などが考えられるが、このような場合、組成物における成分同士の相溶性が悪くなる傾向にあり、均一な液状接着剤が得られにくい。強制混合により分散させても、塗工中に配合成分が分離したり、凝集・ゲル化が発生して塗工が不均一となるなどの理由で、所期の接着強度等の特性が得られなかったり、製品間でバラツキが大きくなるといった新たな問題を招来する。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、難燃性に優れた非ハロゲン系で、保存安定性に優れた一液タイプの接着剤溶液を提供できる接着性樹脂組成物、およびこれを用いた積層体、フレキシブル印刷配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の接着性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂;(B)エポキシ供与モノマー及び当該モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合してなるエポキシ含有共重合体;(C)熱可塑性樹脂;(D)硬化剤を含む接着性樹脂組成物であって、前記(B)エポキシ含有共重合体は、重量平均分子量5000〜10万未満で且つエポキシ当量が3500g/eq以下である。
【0013】
前記(B)エポキシ含有共重合体におけるエチレン性不飽和モノマーユニットは、スチレン、アクリロニトリル、及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
接着性樹脂組成物に含まれる樹脂成分中の前記(A)成分の含有率は40〜70質量%であり、前記(B)成分の含有率は3〜25質量%であることが好ましい。
【0015】
前記(B)エポキシ含有共重合体におけるエポキシ基供与モノマーは、(メタ)アクリルグリシジルエステルであることが好ましく、前記(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂は、リン含有エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂を含有していることが好ましい。
【0016】
本発明の接着性樹脂組成物は、さらにリン系難燃剤を含み、樹脂組成物におけるリン含有率が3.1〜4.5質量%であることが好ましい。
【0017】
上記本発明の接着性樹脂組成物は、当該接着性樹脂組成物の含有率が5〜60質量%の一液性接着剤溶液として好適に用いられる。また、基材フィルム上に、上記本発明の接着性樹脂組成物からなる接着層を有する積層体、さらにその積層体を含むフレキシブル印刷配線板も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接着性樹脂組成物は、配合されているポリマー成分の相溶性が優れているので、保存安定性に優れた一液タイプの接着剤溶液を提供でき、非ハロゲン系で難燃性を満足することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例で用いた接着剤溶液のエポキシ当量(横軸)と剥離強度(縦軸)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
〔接着性樹脂組成物〕
本発明の接着性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂;(B)エポキシ供与モノマー及び当該モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合してなる、特定の重量平均分子量及びエポキシ当量を有するエポキシ含有共重合体;(C)熱可塑性樹脂;(D)硬化剤を含む。
以下、各成分について順に説明する。
【0022】
(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂
本発明の接着性樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂を含む。
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する樹脂であればよく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
フェノキシ樹脂に分類される分子量が高いエポキシ樹脂についても同様である。フェノキシ樹脂や分子量の高いエポキシ樹脂を用いた接着剤は、カバーレイや接着シートなどにおける半硬化時の硬化度の制御が容易、ライフが長い等のメリットや、短時間の加熱で、所望の接着性及び機械的特性が得られ、CCL製造やPPC製造において高生産性である、フロー特性に優れる等のメリットがあり、好ましい。
【0024】
また、難燃性の観点から、これらのエポキシ樹脂やフェノキシ樹脂に反応性リン化合物を用いてリン原子を結合させたリン含有エポキシ樹脂、リン含有フェノキシ樹脂が好ましく用いられる。リンによる難燃効果を発揮することにより、非ハロゲン系難燃剤の含有量を減らすことができ、その結果、難燃剤配合に伴う接着強度や機械強度の低下を防ぐことができる。ただし、リン含有量の増加とともに、溶剤に対する溶解性、他の樹脂との相溶性は悪くなる傾向にあるので、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂におけるリンの含有量は、リンが組み込まれるエポキシ及びフェノキシ分子の質量に対して2〜6質量%とすることが好ましい。
【0025】
リン含有エポキシ樹脂、リン含有フェノキシ樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、東都化成製のFX289、FX305、ERF001、大日本インキ化学工業株式会社製のエピクロンEXA9710などが挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は特に限定しないが、エポキシ樹脂においては高分子量になるほど、溶剤に対する溶解性、他の樹脂との相溶性は悪いくなる傾向にあり、フェノキシ樹脂については更にその傾向が強いので、これらの樹脂の重量平均分子量は、使用する種類に応じて、相溶性との関係で適宜決めることが好ましい。
【0027】
上記のようなエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂は、1種類だけ用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。また、エポキシ樹脂とフェノキシ樹脂とを混合して用いてもよい。さらに、リン含有エポキシ樹脂及び/又はリン含有フェノキシ樹脂とリンを含有しないエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂を混合して用いてもよい。
【0028】
さらに、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、オキサジン樹脂を添加してもよい。
【0029】
以上のような(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂の接着性樹脂組成物における含有率は特に限定しないが、本発明の接着剤樹脂組成物に含まれる樹脂成分量((A)成分、(B)成分、(C)成分の総和量、さらに他の熱硬化性樹脂を含む場合には、(A),(B),(C)成分の総和量に他の熱硬化性樹脂を加えた量)に対して、40〜70質量%となるように含有されることが好ましい。
【0030】
(B)エポキシ含有共重合体
本発明で用いられるエポキシ含有共重合体とは、エポキシ基供与モノマー及び当該エポキシ供与モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとが共重合してなる共重合体で、重量平均分子量5000〜10万未満で且つエポキシ当量が3500g/eq以下である共重合体である。
【0031】
本発明で用いるエポキシ含有共重合体(B)の重量平均分子量は5000〜10万未満であり、好ましくは6000〜80000、より好ましくは8000〜28000である。
重量平均分子量5000未満では、得られる接着層の機械的強度が不足する傾向にある。一方、10万以上では、相溶性が劣るため、透明な接着剤溶液が得られにくく、保存安定性が良くない。
【0032】
尚、エポキシ含有共重合体(B)に代えて、相溶性の優れるモノマーの状態で配合し、加熱によりポリマー化することも一般に行われているが、反応に時間がかかることや反応不足モノマー及び残留する反応開始剤や反応促進剤が硬化物の特性に影響を与えたり、あるいは、保管時に徐々に反応が進んでゲル化するなど、保管安定性の問題があるため好ましくない。従って、ある程度反応が進んだ重量平均分子量5000以上のエポキシ含有共重合体(B)を用いることが好ましい。
【0033】
また、エポキシ含有共重合体(B)のエポキシ当量は3500g/eq以下であり、好ましくは3000g/eq以下であり、より好ましくは、2000g/eq以下である。3500g/eqを超えると、分子量にもよるが、(A)成分、(C)成分との相溶性が低下し、結果として、有機溶媒に溶解させたときに、2層に分離したり、乳濁溶液が得られるなど、保存安定性が低い接着剤溶液が得られることになる。また、2層に分離した接着剤溶液を強制的に分散させて塗工しても、接着強度が不十分であったり、製品間のばらつきが大きくなる。
【0034】
一方、エポキシ含有共重合体(B)のエポキシ当量の下限は特に限定しないが、通常、エポキシ基供与モノマーのみのホモポリマーのエポキシ当量は200〜500g/eq程度である。エポキシ基供与モノマーのみのホモポリマーでは、重量平均分子量が5000〜10万であっても、(B)成分添加による接着強度の改善効果が不十分であることから、エポキシ含有共重合体(B)のエポキシ当量は実質的に200g/eq以上とすることが好ましい。
【0035】
エポキシ基供与モノマーとしては、共重合性の不飽和結合を有し、且つ側鎖にエポキシ基を有する化合物であればよいが、好ましくはグリシジル基含有不飽和モノマーが用いられる。具体的には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸モノグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル等のグリシジルエーテル類などが挙げられ、これらのうち、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。
【0036】
エポキシ基供与モノマーと共重合されるエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、o,m,p−メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン等の核置換スチレンやα−メチルスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレンなどのスチレン誘導体などのスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルベンゾエート等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等のα,β不飽和カルボン酸又はその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;アクリロニトリル等のニトリル類などが挙げられる。これらのモノマーは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
これらのうち、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、およびニトリル類からなる群より選ばれるモノマーが好ましく用いられる。
特に、アクリロニトリルモノマーを共重合したエポキシ含有共重合体は、他のエチレン性不飽和モノマーを含有させたエポキシ含有共重合体よりも、接着強度が向上するので好適である。但し、共重合系においてアクリロニトリルモノマーの量が多くなると、未反応のアクリロニトリルモノマーが残存しやすくなり、エポキシ含有共重合体中に含有されて悪影響を及ぼす場合があるので、エポキシ含有共重合体におけるアクリロニトリルモノマーユニットの含有率は1〜20質量%とすることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。
【0038】
また、スチレン系モノマーユニットについても、高い剥離強度が得られやすい。スチレンモノマーユニットの含有率が高いほど、接着性が向上する傾向にあるので、エポキシ含有共重合体(B)におけるスチレンモノマーユニットの含有率は、エポキシ当量が上記範囲内を充足する要件として、残りをスチレンモノマーユニットとしてもよい。
【0039】
一方、極性基を有する共重合性モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーや水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマーなどの反応性官能基を有するモノマーを用いた場合、保管時に徐々に他の樹脂(特にエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂)と硬化反応が起こり、接着剤溶液のポットライフ、接着剤溶液の均質性を損ねる場合があるので、これらの極性基を有するエチレン性不飽和モノマーの含有量は少ない方が好ましい。
また、ブタジエン等のいわゆるゴム成分となるジエン系モノマーは、耐候性、耐熱性低下の原因となるので、含有させないことが好ましい。
【0040】
本発明で用いられるエポキシ含有共重合体は、上記モノマーを共重合してなるもので、エポキシ基供与モノマーとエチレン性不飽和モノマーとのランダム共重合体であってもよいし、エポキシ基供与モノマーが重合してなるセグメントと、エチレン性不飽和モノマーが重合してなるセグメントが結合してなるブロックコポリマー、グラフトコポリマーであってもよい。
2種以上のエチレン性不飽和モノマーが共重合される場合には、それぞれのモノマーがエポキシ基供与モノマーとランダムに重合していていもよいし、各モノマーのブロックがエポキシ基供与モノマーブロックと適宜組み合わされたトリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマーであってもよいし、各ブロックに複数のモノマーがランダムに共重合したものであってもよい。
【0041】
なお、エポキシ基以外の官能基を有するモノマーを共重合後にエポキシ基に置換することにより同様のエポキシ基含有ポリマーを得ても構わない。しかし、エポキシ当量が3500g/eq以下であり、好ましくは3000g/eq以下であり、より好ましくは2000g/eq以下というエポキシ基が高濃度に組み込まれたポリマーを合成するには、エポキシ基供与モノマーを重合する方が容易であるので、望ましい。
【0042】
以上のような構成を有するエポキシ含有共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、日本油化株式会社のマープルーフGシリーズなどが挙げられる。
【0043】
以上のような構成を有するエポキシ含有共重合体(B)は、接着強度、柔軟性付与の役割を有し、しかも、(A)成分であるエポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂、(C)成分である熱可塑性樹脂の双方に対して相溶性に優れているので、均一な液状接着剤を提供することができる。さらに、エポキシ含有共重合体(B)中のエポキシ基の反応により生じる水酸基等が(A)成分と架橋構造を形成することができるので、すぐれた機械特性を付与することができる。
【0044】
本発明の接着性樹脂組成物におけるエポキシ含有共重合体(B)の含有率は特に限定しないが、本発明の接着剤樹脂組成物に含まれる樹脂成分量((A)成分、(B)成分、(C)成分の総和量、さらに他の熱硬化性樹脂を含む場合には、(A),(B),(C)成分の総和量に他の熱硬化性樹脂を加えた量)に対して、3〜25質量%となるように含有されることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%である。3質量%未満では、エポキシ含有共重合体配合による接着性向上効果が得られない。一方、25質量%を超えると、(A)成分、(C)成分との相溶性が低下し、ひいては接着剤として保存安定性、接着強度の低下原因となるからである。
【0045】
(C)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂(C)としては、特に限定せず、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドスルホン等)、ポリスルホン樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等)、ポリエーテルイミド樹脂(ポリ−N−ホルミルエチレンイミン樹脂等)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂等)、ケトン樹脂(脂肪族ポリケトン樹脂、アセトンホルムアルデヒド樹脂、アセトンフルフラール樹脂、環状ケトン樹脂等)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0046】
これらの熱可塑性樹脂のうち、エポキシ及び/又はフェノキシ樹脂(A)、及びエポキシ含有共重合体(B)との相溶性及び接着性を考慮すると、ポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
【0047】
リンを分子中に組み込んだ熱可塑性樹脂は、難燃性に優れるため、難燃剤の配合量を減らすことができ、難燃剤配合に伴う接着強度の低下を防ぐことができるので好ましい。市販のリン含有熱可塑性樹脂としては、例えば、東洋紡社製のバイロン237、337、537、637、UR3570などが挙げられる。
【0048】
ポリアミド樹脂はジカルボン酸、ジアミン、アミノカルボン酸、ラクタム等の反応により合成することができ、1種類のジカルボン酸とジアミンとの反応に限らず、複数のジカルボン酸と複数のジアミンを用いて合成してもよい。
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,5−、2,5−、2,6−および2,7−体)酸、ビフェニルジカルボン酸(2,2′−、3,3′−および4,4′−体)、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸(2,5−および2,6−体)、フェニレンジアセティック酸(o−、m−およびp−体)、フェニレンジプロピオン酸(o−、m−およびp−体)、フェニルマロン酸、フェニルグルタル酸およびジフェニルコハク酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマール酸およびイタコン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、1,4−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシル−4,4′−ジカルボン酸およびダイマー酸等があげられる。
また、上記ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、p−ジ−アミノメチルシクロヘキサン、ビス(p−アミンシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)シクロヘキサン、ピペラジン、イソホロンジアミン等があげられる。
上記アミノカルボン酸としては、例えば、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、4−アミノメチル安息香酸、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、7−アミノエナント酸、9−アミノノナン酸等があげられる。
上記ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等があげられる。
これらのうち特にダイマー酸を構成成分に含むポリアミドは、常法のダイマー酸とジアミンの重縮合により得られるが、この際にダイマー酸以外のアジピン酸、アゼライン酸またはセバシン酸などのジカルボン酸を共重合成分として含有してもよい。
【0049】
以上のような熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が70℃以下のものが好ましく用いられる。ガラス転移温度が高すぎると、取り扱い性が低下するからである。また、ガラス転移温度が高すぎると、接着性が低下する傾向にある。
【0050】
(D)硬化剤
硬化剤は、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂の硬化剤として用いられるものであればよく、ポリアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール系硬化剤、芳香族ジアミン系硬化剤、カルボン酸系硬化剤、フェノール樹脂等が用いられる。
ポリアミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、テトラエチレンテトラミン等の脂肪族アミン系硬化剤;イソホロンジアミン等の脂環式アミン系硬化剤;ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン等の芳香族アミン系硬化剤;ジシアンジアミド等が挙げられる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、ピロメリト酸無水物、トリメリト酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
硬化剤の配合量は、A成分のエポキシ樹脂のエポキシ当量に応じて適宜決められる。
【0051】
(E)その他
本発明の樹脂組成物は、上記熱硬化性樹脂、熱可塑性性樹脂、硬化剤の他、さらに、非ハロゲン系難燃剤、好ましくはリン系難燃剤を含有してもよい。
【0052】
本発明で用いることができる非ハロゲン系難燃剤としては、リン酸エステル、リン酸エステルアミド、ホスファゼン、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシドなどのリン系化合物が挙げられる。これらのうち、ホスファゼンが、リン濃度及び溶剤との溶解性の観点から好ましく用いられる。ホスファゼンとは、リンと窒素を構成元素とする二重結合をもつ化合物群の慣用名で、分子中にホスファゼン構造をもつ化合物であれば特に限定しない。環状構造のシクロホスファゼン、それを開環重合して得られる鎖状ポリマー、オリゴマーであってもよい。
【0053】
非ハロゲン系難燃剤を含有させる場合、含有率が増大するにしたがって接着性が低下するので、最大でも樹脂分100質量部あたり30質量部以下とすることが好ましい。
【0054】
なお、非ハロゲン系難燃剤として、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物(無機フィラー)は接着性の低下の原因となるので、含有させないことが好ましい。
【0055】
〔接着性樹脂組成物及び接着剤溶液の調製〕
本発明の接着性組成物は、以上のような(A)〜(D)の成分、さらに必要に応じて、非ハロゲン系難燃剤、その他の添加剤を配合して調製される。
樹脂組成物中のリン含有率が3.1〜4.5質量%となるように調製することが好ましい。
【0056】
また、硬化促進剤、シランカップリング剤、レべリング剤、消泡剤などを適宜配合してもよいが、リン含有エポキシ樹脂を使用し、ベンゾオキサジン化合物を含有させている場合には、硬化促進剤を添加すると接着剤としてのポットライフが短くなり、接着性の低下がみられる傾向にあるので、配合しない方がよい。また、無機充填剤の添加は、接着性、マイグレーション特性を低下させる傾向にあるので、配合しない方がよい。
【0057】
本発明の接着性樹脂組成物は、通常、有機溶剤に溶解し、接着剤溶液として用いられる。有機溶剤としては、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジオキソラン、ヘキサン、トリエチルアミン、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、セロソルブ、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、キシレン、N−メチルピロリドンなどを用いることができる。
【0058】
接着剤溶液における固形分濃度は、塗工方式にもよるが、5〜60質量%が好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。
以上のような構成を有する本発明の接着性樹脂組成物は、樹脂成分である(A)成分、(B)成分,(C)成分が互いに相溶性に優れているので、10質量%以上の高濃度であっても、各樹脂成分が分離・凝集することなく均一に混ざりあった、高接着性の一液性接着剤を提供できる。
【0059】
〔用途〕
以上のような構成を有する本発明の接着性樹脂組成物は、非ハロゲン系で、UL−94規格のV−0クラス、VTM−0クラスの難燃性を充足し、優れた接着性を発揮できる溶液タイプの接着剤溶液を提供できるので、接着シート、カバーレイなどの積層体やフレキシブル印刷配線板などに塗工して用いる接着剤として有用である。
【0060】
特に、本発明の接着性樹脂組成物は、長期間放置しても分離しない透明な溶液タイプの接着剤で、保存性に優れるので、所期の接着強度を安定的に発揮でき、生産現場で好適に用いることができる。
【0061】
ここで、フレキシブル印刷配線板は、絶縁フィルムと金属箔とが、上記本発明の接着性樹脂組成物の硬化物により複数層に貼着されたものである。すなわち絶縁フィルム上に本発明の接着性樹脂組成物を塗布、乾燥(半硬化状態)し、さらに金属箔を積層した後、加熱硬化することにより作製したもの(所謂、三層基板);絶縁フィルム上に本発明の接着性樹脂組成物を塗布、乾燥(半硬化状態)し、接着層の露出面をセパレータと呼ばれる絶縁フィルムで覆ったもの(所謂、カバーレイ);セパレータ上もしくは基材フィルム上に本発明の接着性樹脂組成物を塗布、乾燥(半硬化状態)し、露出面をセパレータで覆ったもの(所謂、接着シート)等を積層し、加熱硬化することにより、フレキシブル印刷配線板を形成することができる。なお、セパレータは積層時に除去される。
【0062】
ここで、半硬化状態とは、接着性を有する状態で、本発明の接着性樹脂組成物を、例えば100〜180℃で2分間加熱することにより形成される。加熱硬化状態とは、半硬化状態の接着層を、例えば140〜180℃で10分〜数時間加熱、さらに必要に応じて加圧することにより形成され、エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂が硬化剤と加熱反応して硬化した状態をいう。好適な加熱時間は、その接着剤の構成成分、用途(例えば基板、カバーレイ、あるいはボンディングフィルムなど)によって異なる。
【0063】
本発明の三層基板は、絶縁フィルムの少なくとも片面に、金属箔が貼着されていればよく、絶縁性フィルム、接着層、金属箔層とからなる3層構造(所謂、三層片面基板)の他、金属箔、接着層、電機絶縁性フィルム、接着層、金属箔層からなる5層構造(所謂、三層両面基板)であってもよい。
【0064】
絶縁フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどが挙げられる。
金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられるが、銅箔が好適に用いられる。
【0065】
カバーレイフィルムとは、フレキシブル銅張り積層板の銅箔を加工して配線パターンを形成した後に、その配線を保護するために、その配線パターン形成面を被覆する材料として用いられる積層体で、絶縁フィルム上に本発明の接着性樹脂組成物からなる半硬化状態の接着層が積層されたものである。通常、接着層上には、離型性を有するセパレータが貼付されている。
【0066】
接着シートとは、セパレータと、場合によっては、基材フィルムと本発明の接着性樹脂組成物からなる半硬化状態の接着層を積層したものであり、基板の積層や、補強板の貼付に使われる。上記基材フィルムとしては、用途に応じて、ポリイミドフィルム等の耐熱性、絶縁性フィルムや、ガラス繊維強化樹脂シート、不織布などを基材としたプリプレグシートであってもよい。
【実施例】
【0067】
本発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0068】
〔接着性樹脂組成物の測定評価方法〕
(1)相溶性
調製した接着剤溶液を目視で観察し、透明溶液(但し、磨りガラス程度の不透明度は含む)が得られていた場合には「○」、白濁し1週間放置後には分離が認められた場合には「△」、強制的に攪拌混合しても2時間以内に分離層が発生する場合には「×」とした。
【0069】
(2)剥離強度
厚み25μmのポリイミドフィルム表面に、調製した接着剤溶液を、乾燥後20μmの厚みとなるように塗布し、150℃で2分間乾燥させて、半硬化状態の接着層を形成した。この半硬化状態の接着層上に、厚み18μmの圧延銅箔を積層した後、熱プレスにて3MPaの圧力下、160℃で40分間加熱を行い、フレキシブル印刷配線板を作成した。作製したフレキシブル印刷配線板について、JIS C 6481に準拠し、23℃において、銅箔側から引張り、ポリイミドフィルムから剥がすときの剥離強度(N/cm)を測定した。
【0070】
(3)難燃性
(2)で作製したポリイミドフィルムと半硬化状態の接着層との積層物を、銅箔を積層せず、圧力をかけずに160℃で40分加熱したものを用いて、UL−94に準拠して難燃性の評価試験を行った。そして、上記規格に合格(V−0クラス)のものを「OK」、不合格のものを「NG」とした。
【0071】
〔接着性樹脂組成物No.1〜15の調製及び評価〕
A成分としてリン含有エポキシ/フェノキシ樹脂180質量部、(C)成分としてポリアミド樹脂100質量部、及び(B)成分として表1に示すような特性を有するエポキシ含有共重合体20質量部を配合し、さらに難燃剤であるホスファゼン及び硬化剤を添加して、溶媒(メチルエチルケトン及びジメチルホルムアミド)に攪拌溶解し、固形分濃度30質量%の接着剤溶液No.1〜15を調製した。
【0072】
リン含有エポキシ/フェノキシ樹脂としては、東都化成のリン含有エポキシFX289とリン含有フェノキシERF001の1:1混合物を使用し、ホスファゼンとしては、大塚化学製のSPB100を用い、接着性樹脂組成物の固形分に対するリン含有率が3.5質量%となるように配合量を決定した。硬化剤としては、三菱化学社製のトリメリット酸を使用し、エポキシ当量から計算される適当量を配合した。
【0073】
エポキシ含有共重合体としては、エポキシ基供与モノマーがメタクリル酸グリシジルで、共重合されるエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、メチルメタクリレート(MMA)、又はアクリロニトリル(AN)、エチルアクリレート(EAA)、又はブチロアクリレート(BAA)を用いた。
【0074】
なお、No.2は、他のエチレン性不飽和モノマーが共重合されていないメタクリル酸グリシジルの単独重合体を用いている。また、No.7は、No.3とNo.8で用いたエポキシ含有共重合体の1:1混合物を使用し、No.9、No.10は、それぞれNo.8、No.11で用いたエポキシ含有共重合体を5:3、3:5の比率で混合した混合物を使用した場合である。
【0075】
調製した接着剤溶液No.1〜15について、上記評価方法に基づいて、相溶性、剥離強度及び難燃性を測定した。測定結果を樹脂配合組成と併せて、表1及び表2に示す。また、参考例として、(B)成分を配合しない接着性樹脂組成物で調製した接着剤溶液についても、同様に相溶性、剥離強度、難燃性を測定し、結果を表2に示す。
なお、No.13−15については、接着剤溶液が2層に分離してしまったため、剥離強度、難燃性について測定しなかった。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
表1及び表2からわかるように、重量平均分子量が10万以上になると相溶性が悪くなり(No.11,12)、20万以上では、もはや2層に分離してしまった(No.13−15)。
【0079】
エポキシ含有共重合体を含有し、接着剤溶液として剥離強度を測定できたものについて(No.1,3〜12)は、相溶性が劣っていた接着剤溶液No.11,12も含めて、いずれもエポキシ含有共重合体を含んでいない参考例よりも高い接着強度を示した。
また、エポキシ含有共重合体のホモポリマーであるNo.2についても、参考例より、高い接着強度を示した。
【0080】
図1は、No.1〜12の接着剤溶液について、エポキシ当量(横軸)と剥離強度(縦軸)の関係を示すグラフである。図1中、「×」印はエポキシ基供与モノマーの単独重合体を示し、「●」印はエチレン性不飽和共重合モノマーとしてアクリロニトリルを用いた場合を示している。
図1において、破線で示すように、エポキシ基供与モノマーの単独重合体の場合を除いて、エポキシ当量が800g/eq程度までは、エポキシ当量が大きくなるにしたがって剥離強度も増大するが、エポキシ当量が800g/eq程度で飽和し、3000g/eqから徐々に低下する傾向にあることがわかる。また、エチレン性不飽和モノマーとしてアクリロニトリルを用いた場合(図1中の「●」)には、他のエチレン性不飽和モノマーを用いた、エポキシ当量が同程度(図1中の破線)のエポキシ含有共重合体と比べて、接着強度が高いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の接着性樹脂組成物は、保存安定性に優れた一液性タイプの接着剤溶液を提供できる。従って、生産ラインにて、製品間の接着性ばらつきが問題となったり、使用開始の度に、攪拌したり、装置洗浄などを行わなければならないといったポットライフ、保存性の問題もなく、生産ラインなどでの連続的、間欠的使用に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂;(B)エポキシ供与モノマー及び当該モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとを共重合してなるエポキシ含有共重合体;(C)熱可塑性樹脂;(D)硬化剤を含む接着性樹脂組成物であって、
前記(B)エポキシ含有共重合体が、重量平均分子量5000〜10万未満で且つエポキシ当量が3500g/eq以下である共重合体を用いる接着性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)エポキシ含有共重合体におけるエチレン性不飽和モノマーユニットは、スチレン、アクリロニトリル、及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
接着性樹脂組成物に含まれる樹脂成分中の前記(A)成分の含有率は40〜70質量%であり、前記(B)成分の含有率は3〜25質量%である請求項1又は2に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)エポキシ含有共重合体におけるエポキシ基供与モノマーは、(メタ)アクリルグリシジルエステルである請求項1〜3のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂は、リン含有エポキシ樹脂及び/又はフェノキシ樹脂を含有している請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項6】
さらにリン系難燃剤を含み、樹脂組成物におけるリン含有率が3.1〜4.5質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物の含有率が5〜60質量%の一液性接着剤溶液。
【請求項8】
基材フィルム上に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物からなる接着層を有する積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を含むフレキシブル印刷配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−260925(P2010−260925A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111508(P2009−111508)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】