説明

推進機の制御装置

【課題】エンジン回転数の同調制御を解除するとき、大きな回転変動を防止する。
【解決手段】複数の推進機を船舶に並置し、各推進機を、隣接する2つの操作レバーに関連付けて電気的に接続し、2つの操作レバーによってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行い、各推進機のエンジン回転数を同調させる推進機の制御装置であり、各推進機のエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、各推進機のエンジン回転数を同調させる制御手段18M6,18R6とを備え、制御手段18M6,18R6は、基準となる推進機のエンジン回転数と同調対象の推進機のエンジン回転数の偏差に基づき同調対象の推進機のスロットル開度を補正してエンジン回転数を同調させる制御を行い、エンジン回転数を同調させる制御を解除するとき、スロットル開度の補正を漸減させ、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に船舶に複数の推進機を並置し、各推進機のエンジン回転数を同調させ、この同調を解除する推進機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶の船尾に3機の船外機やスターンドライブ、あるいは船内外機などの推進機を並置したものがある。従来、このような船舶の場合、シフトレバー及びスロットルレバーは各船外機にそれぞれ対応して個別に設けられていた。しかしながら、ハンドル操作に加えて計6本のシフトレバー及びスロットルレバーを操作するのは操作が煩雑となる。
【0003】
これに対し、近年、各船外機の運転状態を制御する運転制御ユニット同士を、該各船外機の運転情報を相互に送受信する通信回線により接続して制御するものがある(特許文献1参照)。また、左右隣接した2本の操作レバーで複数の推進機のシフト及びスロットルを操作可能にし、この操作レバーが同じ角度傾けられた状態において、左右の推進機のエンジンのエンジン回転数に差異が生じた場合に、例えば右推進機のエンジンのエンジン回転数を元に、このエンジン回転数と左推進機のエンジン回転数との差異を無くす方向にスロットル駆動部のモータを駆動し、左右のエンジンのエンジン回転数が自動的に同調されるものがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8-200110号公報
【特許文献2】特開2000-313398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、左右の操作レバーが同じ角度傾けられた状態において、各推進機のエンジン回転数を同調させているが、第1および第2の制御ユニットの電源がONされた時点では、第1の操船モードを使用できるように優先順位が定められており、第2の制御ユニットで第2の操船モードの時に同調され、第1の制御ユニットで第1の操船モードに復帰することで同調制御が解除されるようになっている。このエンジン回転数を同調させる制御において、例えば基準となる推進機のエンジン回転数と同調対象の推進機のエンジン回転数の偏差に基づき同調対象の推進機のスロットル開度を補正してエンジン回転数を同調させる制御を行うと、この同調制御を解除するとき、補正されたスロットル開度から操作レバー角度を基にしたスロットル開度に戻ると、補正量が大きい場合は大きな回転変動を伴う場合がある。
【0005】
この発明は、このような現状を考慮したものであって、エンジン回転数の同調制御を解除するとき、大きな回転変動を防止することが可能な推進機の制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成されている。
【0007】
請求項1に記載の発明は、複数の推進機を船舶に並置し、前記各推進機を、隣接する2つの操作レバーに関連付けて電気的に接続し、前記2つの操作レバーによってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行い、前記各推進機のエンジン回転数を同調させる推進機の制御装置であり、
基準となる推進機のエンジン回転数と同調対象の推進機のエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記基準となる推進機のエンジン回転数と前記同調対象の推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記基準となる推進機のエンジン回転数と前記同調対象の推進機のエンジン回転数の偏差に基づき前記同調対象の推進機のスロットル開度を補正してエンジン回転数を同調させる制御を行い、
前記エンジン回転数を同調させる制御を解除するとき、前記スロットル開度の補正を漸減させ、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻すことを特徴とする推進機の制御装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記スロットル開度の補正の漸減は、周期毎に実施することを特徴とする請求項1に記載の推進機の制御装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記スロットル開度の補正の漸減の周期は、前記同調対象の推進機のエンジン回転数により設定することを特徴とする請求項2に記載の推進機の制御装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、船舶の速度を検出する船速検出手段を備え、
前記スロットル開度の補正の漸減の周期は、船舶の速度により設定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の推進機の制御装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記スロットル開度の補正の漸減量は、エンジン回転状態により設定されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の推進機の制御装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記エンジン回転数を同調させる制御を解除するときの制御は、解除前の前記スロットル開度の補正が終了していることを条件とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の推進機の制御装置である。
【発明の効果】
【0013】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0014】
請求項1に記載の発明では、基準となる推進機のエンジン回転数と同調対象の推進機のエンジン回転数の偏差に基づき同調対象の推進機のスロットル開度を補正してエンジン回転数を同調させる制御を行い、エンジン回転数を同調させる制御を解除するとき、スロットル開度の補正が急に減少するとスロットル開度が大きく変化して回転変動を伴う可能性がある。このため、エンジン回転数を同調させる制御を解除するとき、スロットル開度の補正を漸減させて補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻すことで、大きな回転変動を防ぎ自然な操船フィーリングを実現することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、スロットル開度の補正の漸減は、周期毎に実施することで、簡単な制御で大きな回転変動を防ぎ自然な操船フィーリングを実現することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明では、スロットル開度の補正の漸減の周期を、同調対象の推進機のエンジン回転数により設定することで、低速時には補正も少ないため、より早く補正を少なくし、中高速時には回転変動がより操船者に伝わり易いため、より滑らかになるよう周期を設定することができ、自然な操船を実現することが可能である。
【0017】
請求項4に記載の発明では、スロットル開度の補正の漸減の周期は、船舶の速度により設定することで、低速時には補正も少ないため、より早く補正を少なくし、中高速時には回転変動がより操船者に伝わり易いため、より滑らかになるよう周期を設定することができ、自然な操船を実現することが可能である。
【0018】
請求項5に記載の発明では、スロットル開度の漸減量はエンジン回転状態により設定され、低回転時には補正量も少ないため、より漸減量を少なくし、高回転時には補正量が大きいためスロットル開度の補正の漸減量を大きく設定することができ、自然な操船を実現することが可能である。
【0019】
請求項6に記載の発明では、回転同調の基準の推進機に対し、同調対象の推進機のスロットル開度を開側に補正している場合は、エンジン回転数を同調させる制御を解除するときにはスロットル開度が閉側となるため、エンジン回転数が降下しやすい。一方、基準の推進機に対し、同調対象の推進機のスロットル開度を閉側に補正している場合は、エンジン回転数を同調させる制御を解除するときにはスロットル開度が開側となるため、エンジン回転数が回転上昇しやすい。加速する際はスロットル開度が開側へ動作するので回転変動の影響は小さい。このため、エンジン回転数を同調させる制御を解除するときの制御は、解除前のスロットル開度の補正が終了していることを条件とすることで、補正の漸減や周期を各々に設定でき、大きな回転変動を防ぎ自然な操船フィーリングを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の推進機の制御装置の実施の形態について説明するが、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0021】
図1はこの発明に係る推進機の制御装置を備えた船舶の上面概略図、図2はリモコンコントローラを示す図である。この実施例の船舶は船体に3機の推進機を搭載しているが、2機以上の複数の推進機を搭載するものであればよい。
【0022】
図示したように、船舶1は、船体2と、船体2の船尾板3にクランプブラケット4を介して取り付けられる3機の推進機5L,5M,5Rから構成される。この実施の形態では、推進機として船外機を用いているが、スターンドライブ、あるいは船内外機などでもよい。なお、説明上、図1に矢印で示す船舶前進方向に対し左側に位置する推進機を一方側の推進機5Lと呼び、右側に位置する推進機を他方側の推進機5R、中間に位置する推進機を中央側の推進機5Mと呼ぶ。例えば、2機の推進機では、左右の両側の1機を左側に位置する推進機を一方側の推進機5Lと呼び、右側に位置する推進機を他方側の推進機5Rと呼び、4機の推進機では、左右の両側の1機を左側に位置する推進機を一方側の推進機5Lと呼び、右側に位置する推進機を他方側の推進機5R、中間に位置する2機の推進機を中央側の推進機5Mと呼び、さらに5機の推進機でも同様である。
【0023】
各推進機5L,5M,5Rにはエンジン6が備わる。このエンジン6の吸気量を調整してエンジン6のエンジン回転数やトルクを制御するため、エンジン6の吸気系にはスロットルボディ7(または気化器)が備わる。このスロットルボディ7は電動スロットルバルブ8aを備える。スロットルバルブ8aの弁軸8bはモータ9に連結される。電動スロットルバルブ8aは、電子制御によりモータ9を駆動して開閉可能であり、電子スロットル機構20L,20M,20Rである。船体2の運転席10の前方には船舶1の舵取りのための手動操作ハンドル11が備わる。このハンドル11はハンドル軸12を介して船体2に取り付けられている。
【0024】
運転席10の側方には、各推進機5L,5M,5Rの作動を制御するためのリモコンコントローラ13が備わる。リモコンコントローラ13は、船舶前進方向に対し左側に位置する左リモコン操作レバー14Lと、右側に位置する右リモコン操作レバー14Rを備え、さらに各リモコン操作レバー14L、14Rのレバー位置を検出するためのレバーポジションセンサ15L、15Rを備える。レバーポジションセンサ15L、15Rは、例えばポテンショメータで構成される。各推進機5L,5M,5Rは、隣接する2つのリモコン操作レバー14L、14Rに関連付けて電気的に接続され、このリモコン操作レバー14L、14Rによってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行う。
【0025】
すなわち、操船者は、リモコン操作レバー14L、14Rによってリモコンコントローラ13を操作して各推進機5L,5M,5Rのシフト切替及びエンジン6のスロットルバルブ8aの開度を調整し、船舶1の航走速度や加減速等の推力制御を行う。左側のリモコン操作レバー14Lは、左側の推進機5Lのシフト切替及びスロットルバルブ8aの開度調整(推力操作)のために設けられ、右側のリモコン操作レバー14Rは、右側の推進機5Rのシフト切替及びスロットルバルブ8aの開度調整(推力操作)のために設けられる。この左側のリモコン操作レバー14Lの位置と右側のリモコン操作レバー14Rの位置との中間の位置において、中央側の推進機5Mのシフト切替及びスロットルバルブ8aの開度調整(推力操作)が行われる。
【0026】
2つのリモコン操作レバー14L、14Rは、図2に示すように、中央位置のときシフトは中立(N)になり、それより前側に倒すと前進(F)シフト、後側に倒すと後進(R)シフトに切替わる。前進(F)シフトでさらにリモコン操作レバー14L、14Rを前に倒すと、スロットルバルブ8aがF全閉からF全開まで徐々に開く。後進(R)シフトでさらにリモコン操作レバー14L、14Rを後側に倒すと、スロットルバルブ8aがR全閉からR全開まで徐々に開く。これにより、操船者は、前・後進時それぞれスロットルバルブ8aを開閉操作して推力操作ができる。
【0027】
リモコンコントローラ13は、通信ケーブル16a1を介してリモコン制御部17Lに接続され、通信ケーブル16a2を介してリモコン制御部17M,17Rに接続される。リモコン制御部17L,17M,17Rは、レバーポジションセンサ15L、15Rから出力される各リモコン操作レバー14L、14Rのレバー位置の情報を受信し、所定の演算をして3機の各推進機5L,5M,5Rのエンジン制御部18L,18M,18Rに送信する。リモコン制御部17Lとエンジン制御部18Lは、通信ケーブル16b1を介して接続され、リモコン制御部17M,17Rとエンジン制御部18M,18Rは、通信ケーブル16b2,16b3を介して接続される。推進機5L,5M,5Rにおいて、前・後進及びシフト切替はエンジン6に付帯して設けられる電動シフト機構19L,19M,19Rにより行われる。
【0028】
また、運転席10の側方には、リモコンコントローラ13の近傍において左側にメインスイッチSWLが、中央側にメインスイッチSWMが、右側にメインスイッチSWRが備えられている。それぞれのメインスイッチSWL,SWM,SWRは、各推進機5L,5M,5Rに対応しており、このメインスイッチSWL,SWM,SWRを操作することによって各推進機5L,5M,5Rに備えられるエンジン6を起動する。なお、船体2にはこの他、手動操作ハンドル11の操作位置によって、推進機のスイベル軸(不図示)廻りに推進機を回転させる操舵駆動装置(不図示)が設けられる。
【0029】
図3は推進機の制御装置のシステム図である。左側の推進機5Lに備えられるエンジン制御部18Lは、フライホイール80L、電動シフト機構19L、電子スロットル機構20L、その他の駆動部81Lを駆動する。エンジン制御部18Lは、エンジンコントロールユニット(ECU)で構成され、その他の駆動部81Lとしては、排気カム、オイルコントロールバルブなどがある。また、エンジン制御部18Lには、エンジン回転数検出センサ70L、シフトポジションセンサ71L、スロットルポジションセンサ72L、エンジン異常検出センサ73L、故障検出センサ74L、吸気圧センサ75L、船速センサ77L、その他のセンサ76Lが接続されている。その他のセンサ76Lとしては、カム軸センサ、サーモセンサなどがある。
【0030】
エンジン6の駆動によってクランク軸が回転し、エンジン回転数検出センサ70Lは、このクランク軸に設けたフライホイール80Lの回転からエンジン回転数情報を得て、エンジン制御部18Lに入力する。シフトポジションセンサ71Lは、電動シフト機構19Lの駆動から前・後進及び中立のシフト位置情報を得て、エンジン制御部18Lに入力する。スロットルポジションセンサ72Lは、電子スロットル機構20Lの駆動からスロットル開度情報を得て、エンジン制御部18Lに入力する。エンジン異常検出センサ73Lは、左側の推進機5Lのエンジン6のオーバーヒートやエンジンオイルの低下などのエンジン異常を検出する。故障検出センサ74Lは、船舶のリモコンコントローラ13または左側の推進機5Lのシフト駆動装置及びスロットル駆動装置などの故障を検出する。吸気圧センサ75Lは、エンジン6の吸気系の圧力を検出し、この吸気圧情報とエンジン回転数情報とに基づき負荷情報を得ることができる。船速センサ77Lは、水中に位置して水の抵抗に応じた電圧を得て、エンジン制御部18Lに入力する。
【0031】
右側の推進機5Rに備えられるエンジン制御部18Rは、フライホイール80R、電動シフト機構19R、電子スロットル機構20R、その他の駆動部81Rを駆動し、エンジン回転数検出センサ70R、シフトポジションセンサ71R、スロットルポジションセンサ72R、エンジン異常検出センサ73R、故障検出センサ74R、吸気圧センサ75R、船速センサ77R、その他のセンサ76Rから検出情報が入力される。また、中央側の推進機5Mに備えられるエンジン制御部18Mは、フライホイール80M、電動シフト機構19M、電子スロットル機構20M、その他の駆動部81Mを駆動し、エンジン回転数検出センサ70M、シフトポジションセンサ71M、スロットルポジションセンサ72M、エンジン異常検出センサ73M、故障検出センサ74M、吸気圧センサ75M、船速センサ77M、その他のセンサ76Mから検出情報が入力される。このエンジン制御部18R及びエンジン制御部18Mは、エンジン制御部18Lと同様にエンジンコントロールユニット(ECU)で構成され、駆動部やセンサなども同様に構成され、得られる情報の授受を行う。
【0032】
この推進機の制御装置は、2つのリモコン操作レバー14L、14Rによってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行い、各推進機のエンジン回転数を同調させるものである。この実施の形態では、左側の推進機5Lのエンジン回転数を基準にし、右側の推進機5Rと、中央側の推進機5Mのエンジン回転数を同調させる制御を行うが、これに限定されず例えば、右側の推進機5Rのエンジン回転数を基準にし、左側の推進機5Lと、中央側の推進機5Mのエンジン回転数を同調させる制御を行うようにしてもよいし、中央側の推進機5Mのエンジン回転数を基準にし、左側の推進機5Lと、右側の推進機5Rのエンジン回転数を同調させる制御を行うようにしてもよい。また、基準の推進機をいずれかにするか、同調対象の推進機をいずれにするかは、船舶に推進機の制御装置を備える際に設定する。
【0033】
以下、各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を、図4乃至図8に基づいて説明する。図4は推進機の制御装置の概略システム図、図5はリモコン制御部とエンジン制御部の構成を示す図、図6は回転同調制御判定を示す図、図7は回転同調制御判定のフローチャート、図8は回転同調制御のブロック図である。
【0034】
まず、推進機の制御装置のシステムについて、図4に基づいて説明する。基準の推進機5Lのリモコン制御部17Lには、レバーポジションセンサ15Lからレバーポジションセンサ値が電圧値として入力される。同調対象の推進機5M、5Rのリモコン制御部17M、17Rには、それぞれレバーポジションセンサ15Rからレバーポジションセンサ値が同様に電圧値として入力される。
【0035】
また、基準の推進機5Lのエンジン制御部18Lには、エンジン回転数検出センサ70Lからセンサ値がパルス数として入力され、シフトポジションセンサ71L、スロットルポジションセンサ72Lからそれぞれセンサ値が電圧値として入力される。このそれぞれのセンサ値から得られた情報は、リモコン制御部17Lに送られ、さらにリモコン制御部17M、17Rに送られる。
【0036】
同調対象の推進機5M、5Rのエンジン制御部18M、18Rには、エンジン回転数検出センサ70M,70R、シフトポジションセンサ71M,71R、スロットルポジションセンサ72M,72Rからそれぞれ同様にセンサ値が入力される。エンジン制御部18M、18Rには、それぞれセンサ値から得られる情報と、リモコン制御部17M、17Rに送られる情報とから電子スロットル機構20M,20Rを駆動する。
【0037】
次に、リモコン制御部17L, 17M、17R及びエンジン制御部18L,18M、18Rの構成を、図5に基づいて説明する。基準の推進機5Lのリモコン制御部17Lは、レバー位置検出手段17L1を備える。レバー位置検出手段17L1は、リモコン操作レバー14Lのレバーポジションセンサ値から基準となる推進機5Lのリモコン操作レバー14Lのレバー位置を検出する。この実施の形態のレバー位置は、中立位置から前進または後進側に傾けた角度である。また、操作レバーとしてジョイスティックやスライド式ボリュームなどの操作装置を用いることができる。このリモコン操作レバー14Lのレバー位置は、中立位置から前進または後進側へ傾けた角度である。
【0038】
基準の推進機5Lのエンジン制御部18Lは、エンジン回転数検出手段18L1、シフト位置検出手段18L2、スロットル開度検出手段18L3、エンジン異常検出手段18L4、故障検出手段18L5、船速検出手段18L7、負荷検出手段18L8を備える。エンジン回転数検出手段18L1は、エンジン回転数検出センサ70Lのセンサ値からエンジン回転数を得、シフト位置検出手段18L2は、シフトポジションセンサ71Lのセンサ値からシフト位置を得、スロットル開度検出手段18L3は、スロットルポジションセンサ72Lのセンサ値からスロットル開度を得る。エンジン異常検出手段18L4は、基準の推進機5Lのエンジン異常検出センサ73Lからのセンサ信号に基づき推進機5Lのエンジン6のオーバーヒートやエンジンオイルの低下などのエンジン異常を検出する。故障検出手段18L5は、故障検出センサ18L5からのセンサ信号に基づき船舶のリモコンコントローラ13または左側の推進機5Lのシフト駆動装置及びスロットル駆動装置などの故障を検出する。船速検出手段18L7は、船速センサ77Lから得られるセンサ値から船舶の速度を検出する。負荷検出手段18L8は、エンジン回転数検出センサ70Lのセンサ値からエンジン回転数と吸気圧センサ75Lからの吸気圧情報とに基づき負荷情報を得る。このエンジン制御部18Lからエンジン回転数、シフト位置、スロットル開度の情報、及びエンジン異常、故障、船速、負荷の情報が、リモコン制御部17Lへ送信される。
【0039】
同調対象の推進機5M、5Rのリモコン制御部17M、17Rは、レバー位置検出手段17M1,17R1を備える。レバー位置検出手段17R1は、同調対象の推進機5Rのリモコン操作レバー14Rのレバー位置を検出する。レバー位置検出手段17M1は、同調対象の推進機5Rのリモコン操作レバー14Rと、基準の推進機5Lのリモコン操作レバー14Lのレバー位置の中間位置を検出する。この実施の形態のレバー位置は、中立位置から前進または後進側に傾けた角度である。また、操作レバーとしてジョイスティックやスライド式ボリュームなどの操作装置を用いることができる。このリモコン制御部17M,17R には、リモコン制御部17Lから基準の推進機5Lのエンジン回転数、シフト位置、スロットル開度の情報、及びエンジン異常、故障、船速、負荷の情報が入力される。
【0040】
同調対象の推進機5M,5Rのエンジン制御部18M,18Rは、エンジン回転数検出手段18M1,18R1、シフト位置検出手段18M2,18R2 、スロットル開度検出手段18M3,18R 3、エンジン異常検出手段18M4,18R4、故障検出手段18M5,18R5、船速検出手段18M7,18R7、負荷検出手段18M8,18R8を備える。エンジン回転数検出手段18M1,18R1は、エンジン回転数検出センサ70M,70Rのセンサ値からエンジン回転数を得、シフト位置検出手段18M2,18R2 は、シフトポジションセンサ71M,71Rのセンサ値からシフト位置を得、スロットル開度検出手段18M3,18R 3は、スロットルポジションセンサ72M,72Rのセンサ値からスロットル開度を得る。エンジン異常検出手段18M4,18R4は、同調対象の推進機5M、5Rのエンジン異常検出センサ73M、73Rからのセンサ信号に基づき推進機5M,5Rのエンジン6のオーバーヒートやエンジンオイルの低下などのエンジン異常を検出する。故障検出手段18M5,18R5は、故障検出センサ74M,74Rからのセンサ信号に基づき船舶のリモコンコントローラ13または推進機5M、5Rのシフト駆動装置及びスロットル駆動装置などの故障を検出する。船速検出手段18M7,18R7は、船速センサ77M,77Rから得られるセンサ値から船舶の速度を検出する。負荷検出手段18M8,18R8は、エンジン回転数検出センサ70M,70Rのセンサ値からエンジン回転数と吸気圧センサ75M,75Rからの吸気圧情報とに基づき負荷情報を得る。このエンジン制御部18M,18Rには、制御手段18M6,18R6と制御手段18M9,18R9が備えられる。この制御手段18M6,18R6と制御手段18M9,18R9には、基準の推進機5Lのレバー位置、シフト位置、スロットル開度、エンジン回転数などの情報が入力され、また同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数、シフト位置、スロットル開度などの情報が入力される。
【0041】
この制御手段18M6,18R6の構成を、図6に基づいて説明する。この制御手段18M6,18R6は、同様に構成され、以下の判定を行って各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う。
【0042】
接続状態判定部18M61,18R61は、基準の推進機5Lのレバー位置、シフト位置、スロットル開度、エンジン回転数などの情報に基づき基準の推進機5Lが接続状態か判定する。
【0043】
同調対象機判定部18M62,18R62は、レバー位置、シフト位置、スロットル開度、エンジン回転数などの情報に基づき自機の推進機5Mまたは推進機5Rが同調対象機か判定する。
【0044】
故障状態判定部18M63,18R63は、船舶または各推進機の故障を検出する故障検出手段からの故障信号に基づきエンジンを停止するなどの保護制御を行っているため、この保護制御の有無を、エンジン回転数を同調させる制御の判定条件とし、保護制御を行わないときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う。推進機に備えられるシステムのセンサ、アクチュエータなどが故障した時には回転同調制御が不可能になるだけでなく、場合によっては意図しない挙動を示す可能性がある。このため、複数の推進機のシステムの保護制御を回転同調制御の判定条件とすることで、安全で安定した回転同調制御を実現することができる。
【0045】
警告状態判定部18M64,18R64は、各推進機のエンジン異常を検出するエンジン異常検出手段からの異常信号に基づきエンジン異常の検出に基づきエンジン回転数を下げるなどの警告制御を行っており、この警告制御の有無を判定条件とし、警告制御を行うときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行わない。このように、警告制御の有無を判定条件とし、警告制御を行うときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行わないことで、オーバーヒートや油圧低下などの警告にはエンジン保護のため減速させ、この警告制御の有無を回転同調制御の判定条件として警告時のエンジン保護を行うことができる。
【0046】
判定成立状態判定部18M65,18R65は、判定条件が継続した時間を、エンジン回転数を同調させる制御の実行条件とし、判定条件が所定時間継続したとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う。推進機の使用環境では、例えば波や潮流等様々な要件により負荷状態が変わり、判定条件が一瞬だけ成立することがあるため、判定条件が継続した時間を、エンジン回転数を同調させる制御の実行条件とし、判定条件が所定時間継続したとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行うことで安定した回転同調制御を実現することができる。
【0047】
実行条件は、操作レバーのレバー位置により設定され、レバー位置が規定位置以上のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う。複数の推進機の操船において低速度では回頭や旋回等で操作レバーを頻繁に操作することが考えられ、またクルージング領域では操船者は早く正確にエンジン回転数を合わせたいという場合が多い。従って、レバー位置、すなわちレバー角度が小さい低回転の場合(例えばレバー角度が10度〜20度、エンジン回転数が3000rpm以下の場合)は、判定条件である規定継続時間を長く設定し、レバー角度が大きいクルージング領域の場合(例えばレバー角度が20度以上、エンジン回転数が3000rpm〜5000rpmの場合)は、規定継続時間を短く設定する。このように、実行条件が操作レバーのレバー位置により設定され、レバー位置が規定位置以上のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行うことで、操船者の操船意図に適合するように回転同調制御を実現することができる。
【0048】
エンジン回転数同調判定部18M46,18R46は、各推進機のエンジン回転数を同調させる判定は、以下のように行う。
【0049】
ステップe1において、基準の推進機5Lのエンジン回転数が上限回転数と下限回転数の範囲内か判定し、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が上限回転数と下限回転数の範囲内か判定する。例えば、エンジン回転数の上限回転数を6000回転とし、下限回転数を500回転とする。このように、いずれかの推進機のエンジン回転数の上限回転数を判定条件とし、上限回転数以下のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。
【0050】
また、いずれかの推進機のエンジン回転数の下限回転数を判定条件とし、下限回転数以上のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。
【0051】
また、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数からエンジン運転状態がエンジン回転数を同調させる制御が可能状態か判定し、可能状態のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。
【0052】
また、基準の推進機5Lのエンジン回転数と同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数とからエンジン回転数の偏差を算出し、このエンジン回転数の偏差が同調可能エンジン回転数の偏差範囲内か判定し、偏差範囲内であるとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。
【0053】
複数の推進機のエンジン回転数のばらつきや配置位置による負荷のばらつき等により各々のエンジン回転数の上限回転数が変わり、基準となる上限回転数が複数の推進機の中で最も低い場合、これに合わせて同調させると総出力が抑えられることになる。このため、いずれかの推進機のエンジン回転数の上限回転数を同調させる制御の判定条件とし、上限回転数以下のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行い、回転同調制御に上限回転数を定めることで複数の推進機全体での出力を向上させることができる。この推進機のエンジン回転数の上限回転数は、例えば6000回転とすることができる。
【0054】
また、スロットル開度が小さいときのエンジン制御は従来よりスロットルによる補正と点火時期によってアイドル回転数にする制御が行われる。このため、いずれかの推進機のエンジン回転数の下限回転数を判定条件とし、下限回転数以上のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行い、アイドル回転数の制御と回転同調制御が同時に行われないように、回転同調制御の下限回転数を定めて運転速度に見合った制御を選択し、安定したエンジン回転を実現することができる。この推進機のエンジン回転数の下限回転数は、例えば500回転とすることができる。
【0055】
ステップe2において、基準となる推進機の操作レバーのシフト位置に基づきシフト入力状態の判定を行い、また同調対象の推進機の操作レバーのシフト位置に基づきシフト入力状態の判定を行う。入力状態のときシフト位置の一致の判定を行い、エンジン回転数を同調させる制御の判定条件とし、シフト位置が一致しているとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。複数の推進機においてシフト位置が一致していない場合では負荷状況が異なり、回転同調は困難かつクルージングを円滑に行ないたい目的に適合していない。このため、シフト位置の一致を判定条件とし、シフト位置が一致しているとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行うことで、複数の推進機のエンジン回転数を合わせたい操船者の意志に応じた回転同調制御を行うことができる。
【0056】
ステップe3において、基準の推進機5Lの操作レバーのレバー位置が上限位置と下限位置の範囲内か判定し、同調対象の推進機5M,5Rの操作レバーのレバー位置が上限位置と下限位置の範囲内か判定する。いずれかの推進機の操作レバーのレバー位置の上限位置を判定条件とし、上限位置以下のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。
【0057】
また、いずれかの推進機の操作レバーのレバー位置の下限位置を同調させる制御の判定条件とし、下限位置以上のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。
【0058】
また、基準となる推進機の操作レバーのレバー位置と同調対象の推進機の操作レバーのレバー位置の偏差を演算し、エンジン回転数を同調させる制御の判定条件とし、このレバー位置の偏差が規定値以下のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。例えば、レバー位置の偏差値を5度とする。このように、レバー位置の偏差を、エンジン回転数を同調させる制御の判定条件とし、複数の推進機の操作レバーを同じ位置に合わせたことを判断し、偏差が規定値以下のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行うことで、複数の推進機のエンジン回転数を合わせたい操船者の意志に応じた回転同調制御を行うことができる。
【0059】
ステップe4において、基準となる推進機のスロットル開度が上限と下限の範囲内か判定し、同調対象の推進機のスロットル開度が上限と下限の範囲内か判定し、エンジン回転数を同調させる制御の判定条件とし、各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。
【0060】
また、基準となる推進機のスロットル開度と同調対象の推進機の同調対象スロットル開度の偏差を演算し、エンジン回転数を同調させる制御の判定条件とし、偏差が規定値以下のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。例えば、スロットル開度の偏差を、5度とする。このように、スロットル開度の偏差を、エンジン回転数を同調させる制御の判定条件とし、推進機の出力を決める空気量調整のスロットル開度に基づき判断し、偏差が規定値以下のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行うことで、複数の推進機のエンジン回転数を同調させた安定した回転同調制御を行うことができる。
【0061】
ステップe5において、同調対象の推進機のスロットルポジションセンサ値から得られるスロットル開度が上限と下限の範囲内か判定し、同調対象の推進機のスロットル開度を、エンジン回転数を同調させる制御の判定条件とし、各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。
【0062】
次に、図7の回転同調制御判定のフローチャートについて説明する。
【0063】
ステップa1において、同調対象の推進機5M,5Rの制御手段18M4、18R4は、基準の推進機5Lのレバー位置、シフト位置、スロットル開度、エンジン回転数などの情報に基づき基準の推進機5Lが接続状態か判定し、2機以上の多機掛けの場合か判定する。
【0064】
ステップa2において、推進機が2機以上の多機掛けの場合は、自機が同調対象の推進機5Mか推進機5Rの判定を行う。
【0065】
ステップa3において、同調対象の推進機5Mか推進機5Rの場合は、基準の推進機5Lのシフト位置が前進か判定する。
【0066】
ステップa4において、基準の推進機5Lのシフト位置が前進である場合は、自機の同調対象の推進機5Mまたは推進機5Rのシフト位置が前進か判定する。
【0067】
ステップa5において、自機の同調対象の推進機5Mまたは推進機5Rのシフト位置が前進の場合は、基準の推進機5Lのレバー位置が下限規定値と上限規定値の範囲内か判定する。
【0068】
ステップa6において、基準の推進機5Lのレバー位置が下限規定値と上限規定値の範囲内の場合は、同調対象の推進機5M,5Rのレバー位置が下限規定値と上限規定値の範囲内か判定する。
【0069】
ステップa7において、同調対象の推進機5M,5Rのレバー位置が下限規定値と上限規定値の範囲内の場合は、基準の推進機5Lのレバー位置と同調対象の推進機5M,5Rのレバー位置の偏差が規定値以下か判定する。
【0070】
ステップa8において、レバー位置の偏差が規定値以下の場合は、基準の推進機5Lのスロットル開度が下限規定値と上限規定値の範囲内か判定する。
【0071】
ステップa9において、基準の推進機5Lのスロットル開度が下限規定値と上限規定値の範囲内の場合は、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度が下限規定値と上限規定値の範囲内か判定する。
【0072】
ステップa10において、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度が下限規定値と上限規定値の範囲内の場合は、スロットル開度の偏差が規定値以下か判定する。
【0073】
ステップa11において、スロットル開度の偏差が規定値以下の場合は、基準の推進機5Lのエンジン回転数が下限回転数と上限回転数の範囲内か判定する。
【0074】
ステップa12において、基準の推進機5Lのエンジン回転数が下限回転数と上限回転数の範囲内の場合は、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が下限回転数と上限回転数の範囲内か判定する。
【0075】
ステップa13において、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が下限回転数と上限回転数の範囲内の場合は、エンジン回転数の偏差が規定値以下か判定する。
【0076】
ステップa14において、エンジン回転数の偏差が規定値以下の場合は、各推進機の警告制御の有無を判定条件とし、警告制御を行うときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行わない。
【0077】
ステップa15において、船舶または各推進機の故障を検出する故障検出手段からの故障信号に基づき保護制御を行い、この保護制御の有無を判定条件とし、保護制御を行わないときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う。
【0078】
ステップa16において、判定条件が継続した時間を、エンジン回転数を同調させる制御の実行条件とし、判定条件が規定時間継続したとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う。
【0079】
ステップa17において、判定条件が規定時間継続したとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う。
【0080】
この各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を、図8乃至図12に基づいて説明する。図8の回転同調制御のブロック図、図9は回転同調制御のフローチャート、図10は基準の推進機の負荷が軽い状態を示す図、図11は負荷状態により補正周期と補正係数が変化する状態を説明する図、図12はスロットル開度補正制限を説明する図である。
【0081】
以下、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン制御の目標位置を設定する例について、図8に基づいて説明する。同調対象の推進機5M,5Rのエンジン制御部18M,18Rに備えられる制御手段18M6,18R6は、平均化処理手段18M70,18R70、エンジン回転数偏差値演算手段18M71,18R71を有する。平均化処理手段18M70,18R70は、基準の推進機5Lのエンジン回転数と同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数とをそれぞれ平均化処理する。この平均化処理手段18M70,18R70は、1周期前の基準の推進機5Lのエンジン回転数(n−1)×K+現在の基準の推進機5Lのエンジン回転数(n) ×(1-K)として平均化処理する。この平均化処理では、細かな回転変動を少なくするため、例えばK=0.5として前回値(1周期前)と現在値を半々の重み付けをする。また、1周期前の同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数(n-1)×K+現在の同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数(n) ×(1-K) として平均化処理する。この平均化処理では、基準の推進機5Lのエンジン回転数へ早く追従させるため、例えばK=0.02として現在値に重み付けをする。
【0082】
エンジン回転数偏差値演算手段18M71,18R71は、平均化処理した基準の推進機5Lのエンジン回転数と同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数の偏差を演算し、例えば基準の推進機5Rや同調対象の推進機5M,5Rの負荷変化などによってエンジン回転数が変動した場合でも滑らかなエンジン回転数を同調させる制御を行うことができるようにしている。
【0083】
また、制御手段18M6,18R6は、スロットル開度演算手段18M72,18R72、スロットル開度補正量算出手段18M73,18R73、スロットル開度補正係数算出手段18M74,18R74、補正量制限手段18M75,18R75、さらに同調対象負荷検出手段18M77,18R77を有する。
【0084】
スロットル開度演算手段18M72,18R72は、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度の要求値に基づきスロットル開度を演算する。スロットル開度補正量算出手段18M73,18R73は、基準の推進機5Lのエンジン回転数と同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数の偏差からスロットル開度補正量を算出する。スロットル開度補正係数算出手段18M74,18R74は、同調対象負荷検出手段18M77,18R77からの同調対象の推進機の負荷と平均化処理したエンジン回転数に基づき、図11に示すように、負荷状態に合わせた補正係数マップ値から補正係数を算出する。演算部18M80,18R80において、スロットル開度補正量を補正係数に基づき補正し、補正量制限手段18M75,18R75でスロットル開度の補正が、下限値と上限値の範囲内のとき、演算部18M81,18R81において、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度の要求値をスロットル開度補正量に基づき補正し、同調対象補正量を含むスロットル開度を得る。
【0085】
スロットル目標値演算部32には、同調対象補正量を含むスロットル開度のデータが入力され、データに対応した推進機5M,5Rのスロットルリクエスト値を演算し、目標スロットル位置信号を出力する。スロットル制御部42は、スロットルアクチュエータの電子スロットル(即ち、モータ9)からフィードバックされるフィードバック信号に基づく現在スロットル開度情報と、スロットル目標値演算部32からの目標スロットル開度情報とを比較し、目標スロットル開度になるように目標スロットル開度信号を出力する。これにより、目標スロットル開度になるように駆動電流を出力してスロットルアクチュエータの電子スロットル(即ち、モータ9)を駆動し、所定のエンジン回転数にする。
【0086】
次に、図9の回転同調制御のフローチャートに基づいて回転同調制御を説明する。
【0087】
ステップb1において、図1乃至図7において説明した回転同調判定が成立するか判断する。
【0088】
ステップb2において、回転同調判定が成立する場合には、基準の推進機5Lと同調対象の推進機5M、5Rのエンジン回転数を周期毎に読み出す。
【0089】
ステップb3において、基準の推進機5Lと同調対象の推進機5M、5Rのエンジン回転数をそれぞれ平均化処理する。
【0090】
ステップb4において、それぞれ平均化処理したエンジン回転数の偏差を演算し、この偏差からスロットル開度の補正量を算出して読み出す。
【0091】
ステップb5において、同調対象の推進機5M、5Rの平均化処理した同調対象の推進機5M、5Rのエンジン回転数から補正の周期を算出する。
【0092】
ステップb6において、同調対象の推進機5M、5Rのエンジン回転数が規定値以下か判断する。
【0093】
ステップb7において、同調対象の推進機5M、5Rのエンジン回転数が規定値以下の場合は、図11に示すように、短時間の補正周期1を決定する。
【0094】
ステップb8において、同調対象の推進機5M、5Rのエンジン回転数が規定値以上の場合は、長時間の補正周期2を決定する。このように補正周期2は、補正周期1より短い時間周期である。
【0095】
ステップb9において、同調対象の推進機5M、5Rのエンジン回転数を読み出す。
【0096】
ステップb10において、同調対象の推進機5M、5Rの吸気圧センサ75M,75Rから得られるセンサ値から算出して吸気圧情報に得る。
【0097】
ステップb11において、同調対象負荷検出手段18M77,18R77が同調対象エンジン回転数と吸気圧から負荷情報を得て、この負荷情報に基づきスロットル開度補正係数を算出する。
【0098】
ステップb12において、図11に示すように、補正周期1または補正周期2において、スロットル開度補正量と、負荷状態に合わせた補正係数マップ値のスロットル開度補正係数に基づきスロットル開度補正量を演算する。
【0099】
ステップb13において、ステップb12において得た同調対象の推進機5M、5Rのスロットル開度補正量の上下限の制限を行う。
【0100】
ステップb14において、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度の要求値をスロットル開度補正量に基づき補正し、同調対象補正量を含むスロットル開度を得る。
【0101】
このように、エンジン回転数の偏差に基づき同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度を補正して求め、基準の推進機5Rのエンジン回転数に同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数を同調させる。この各推進機5R,5M,5Rのエンジン回転数を同調させる制御を行い、エンジン回転数の偏差の大きさによってスロットル開度を変化させることで、迅速かつ確実に同調したいエンジン回転数に自然に収束させてエンジン回転数を合わせることができる。
【0102】
図10に示すように、同調対象の推進機5M,5Rの負荷が軽い状態においても、リモコン操作レバー14Lと14Rが同じ操作を行う場合、シフト駆動装置、スロットル駆動装置を駆動することで同調対象の推進機のエンジン回転数は基準の推進機のエンジン回転数と自然に収束させてエンジン回転数を合わせることができる。
【0103】
ところで、図11に示すように、例えば波や潮流、船体、プロペラの種類などによって負荷が変化することがあるため、同調対象の推進機5M,5Rの負荷に基づき、負荷状態に合わせた補正周期を設定し、かつ負荷状態に合わせた補正係数マップ値を設定し、この補正周期と補正係数マップ値に基づき同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度を補正して求め、各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う。このように、例えば波や潮流、船体、プロペラの種類などによって負荷が変化してもスロットル開度を補正し、基準の推進機5Lのエンジン回転数に同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数を同調させることで、迅速かつ確実に同調したいエンジン回転数に自然に収束させてエンジン回転数を合わせることができる。
【0104】
また、スロットル開度の補正の周期、例えば周期1と周期2を同調対象の推進機のエンジン回転数と吸気圧から得られる負荷に基づき決定し、例えばエンジン回転数が小さいときは短い周期1で、エンジン回転数が大きいときは長い周期2で各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う。このように、スロットル開度の補正の周期を変えることによって、例えば中速回転域から高速回転域の負荷変化によりエンジン回転数の回転変動の周期が変わることがあってもこれに追従しより安定したエンジン回転数を同調させる制御を行うことができる。
【0105】
また、図12に示すように、スロットル開度の補正が、下限値と上限値の範囲内のとき基準の推進機5Rに同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数を同調させる制御を行うことで、例えばエンジン回転数が波やプロペラの空気の巻き込みなどによる一過性の負荷変動によりエンジン回転数が上昇したり下降することがあっても補正過少や過多になることがなく、より安定したエンジン回転数を同調させる制御を行うことができる。
【0106】
次に、制御手段18M9,18R9の構成を、図13に基づいて説明する。制御手段18M9,18R9は、同様に構成され、以下の解除判定を行って各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行う。
【0107】
故障状態解除判定部18M93,18R93は、船舶または各推進機の故障を検出する故障検出手段からの故障信号に基づきエンジンを停止するなどの保護制御を行っているため、この保護制御の有無を、エンジン回転数を同調させる制御を解除する解除判定条件とし、保護制御を行うときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行う。推進機に備えられるシステムのセンサ、アクチュエータなどが故障した時には回転同調制御が不可能になるだけでなく、場合によっては意図しない挙動を示す可能性がある。このため、複数の推進機のシステムの保護制御を回転同調制御の解除判定条件とし、保護制御を行うときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行うことで、安定した同調制御を実現することができる。
【0108】
警告状態解除判定部18M94,18R94は、各推進機のエンジン異常を検出するエンジン異常検出手段からの異常信号に基づきエンジン異常を検出してエンジン回転数を下げるなどの警告制御を行っており、この警告制御の有無を解除判定条件とし、警告制御を行うときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行う。このように、警告制御の有無を解除判定条件とし、警告制御を行うときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を解除し、オーバーヒートや油圧低下などの警告にはエンジン保護のため減速させ、この警告制御を行うときは各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行わないことで、警告時のエンジン保護をすることができる。
【0109】
解除判定成立状態判定部18M95,18R95は、解除判定条件が継続した時間を解除実行条件とし、解除判定条件が所定時間継続したとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行う。推進機の使用環境では、例えば波や潮流等様々な要件により負荷状態が変わり、解除判定条件が一瞬だけ成立することがあるため、解除判定条件が継続した時間を、エンジン回転数を同調させる制御を解除する解除実行条件とし、解除判定条件が所定時間継続したとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行うことで安定した回転同調制御を実現することができる。
【0110】
エンジン回転数同調解除判定部18M96,18R96は、各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を解除する解除判定は、以下のように行う。
【0111】
ステップf1において、基準の推進機5Lのエンジン回転数が上限回転数と下限回転数の範囲外か判定し、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が上限回転数と下限回転数の範囲外か判定する。例えば、エンジン回転数は、それぞれ上限回転数を6000回転とし、下限回転数を500回転とする。このように、いずれかの推進機のエンジン回転数が上限回転数と下限回転数の範囲外のとき、各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行い安定したエンジン運転を実現する。
【0112】
同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数からエンジン運転状態がエンジン回転数を同調させる制御が不可能状態か判定し、不可能状態のとき、例えばエンジン保護などの理由から各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を可能とする。
【0113】
また、エンジン回転数の偏差を算出し、このエンジン回転数の偏差が規定範囲外か判定し、規定範囲外であるとき、例えばエンジン保護などの理由から各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を可能とする。
【0114】
複数の推進機を設置した船舶では、複数の推進機のエンジンのばらつきや配置位置によって負荷のばらつき等があり、各々のエンジンの最高回転数が変わってくるが、基準の推進機の最高回転数が最も高い場合、同調対象の推進機は補正しきれない可能性がある。このため、いずれかの推進機のエンジン回転数の上限回転数を解除判定条件とし、上限回転数以上のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行うことで安定した同調制御を実現することができる。この解除判定条件の上限回転数は、同調制御の判定条件の上限回転数より大きな値である。
【0115】
また、スロットル開度が小さいときのエンジン制御は従来よりスロットル開度による補正と点火時期の補正によってアイドル回転数にする制御が行われる。このため、いずれかの推進機のエンジン回転数の下限回転数を同調制御の解除判定条件とし、下限回転数以下のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を解除し、アイドル回転数の制御と回転同調制御が同時に行われないように、安定したエンジン回転を実現することができる。この解除判定条件の下限回転数は、同調制御の判定条件の下限回転数より小さな値である。
【0116】
ステップf2において、基準となる推進機の操作レバーのシフト位置に基づきシフト入力状態の判定を行い、また同調対象の推進機の操作レバーのシフト位置に基づきシフト入力状態の判定を行う。入力状態のときシフト位置の不一致の判定を行い、エンジン回転数を同調させる制御の解除判定条件とし、シフト位置が不一致であるとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を解除することを可能とする。複数の推進機においてシフト位置が一致していない場合では負荷状況が異なり、回転同調は困難かつクルージングを円滑に行ないたい目的に適合していない。このため、シフト位置の不一致を、エンジン回転数を同調させる制御の解除判定条件とし、シフト位置が不一致のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を解除することで、複数の推進機のエンジン回転数を合わせたい操船者の意志に応じた制御を行うことができる。
【0117】
ステップf3において、基準となる推進機の操作レバーのレバー位置と同調対象の推進機の操作レバーのレバー位置を演算し、このそれぞれのレバー位置が上限角度と下限角度の規定範囲外か判定し、それぞれのレバー位置が規定範囲外のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を可能とする。また、レバー位置の偏差を演算し、この偏差が規定範囲外のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を可能とする。例えば、このエンジン回転数を同調させる制御の解除を行うレバー位置の偏差は、エンジン回転数を同調させる制御のレバー位置の偏差より大きな値とする。このように、レバー位置の偏差を、エンジン回転数を同調させる制御の解除判定条件とし、複数の推進機の操作レバーを異なる角度位置に合わせたことをレバー位置の偏差によって判断することで、回転同調を解除したい操船者の操船意志に応じた回転同調制御を行うことができる。
【0118】
また、複数の推進機の操船において低速度では回頭や旋回等で操作レバーを頻繁に操作することが考えられ、この場合は回転同調制御に入り易いと操船者の操船意図を妨げる可能性があり、またクルージング領域では操船者は早く回転を正確に合わせたいという場合が多い。このため、解除実行条件は、操作レバーのレバー角度により設定されることで、操船者の操船意図に適合するように回転同調制御を実現することができる。
【0119】
ステップf4において、基準となる推進機のスロットル開度と同調対象の推進機のスロットル開度を演算し、それぞれスロットル開度が上限と下限の規定範囲外か判定し、それぞれ規定範囲外のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行う。
【0120】
また、基準となる推進機のスロットル開度と同調対象の推進機のスロットル開度の偏差を演算し、エンジン回転数を同調させる制御を解除する解除判定条件とし、偏差値が規定範囲外のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行う。例えば、スロットル開度の偏差値を5度とし、この規定範囲外のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を解除することで、複数の推進機のエンジン回転数を同調させた安定した回転同調制御を行うことができる。すなわち、操船者の回転同調意思を検知する手段が操作レバー角度であるのに対し、推進機の出力を決める空気量調整はスロットル開度であり、スロットル開度の偏差を、エンジン回転数を同調させる制御の解除判定条件とし、偏差値が規定範囲外のとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行う。このように、同調制御解除の解除判定条件として基準の推進機と同調対象の推進機のスロットル開度の偏差が規定値以上であることを解除条件とすることで安定した同調制御を実現することができる。
【0121】
ステップf5において、同調対象の推進機のスロットルポジションセンサ値から得られるスロットル開度が上限と下限の規定範囲外か判定し、同調対象の推進機のスロットル開度をエンジン回転数を同調させる制御を解除する解除判定条件とし、各推進機のエンジン回転数を同調させる制御を可能とする。
【0122】
次に、図14の回転同調制御解除判定のフローチャートについて説明する。
【0123】
ステップc1において、同調対象の推進機5M,5Rの制御手段18M9、18R9は、基準の推進機5Lのレバー位置、シフト位置、スロットル開度、エンジン回転数などの情報に基づき基準の推進機5Lが接続状態か判定し、2機以上の多機掛けの場合か判定する。
【0124】
ステップc2において、推進機が2機以上の多機掛けの場合は、自機が同調対象の推進機5Mか推進機5Rの判定を行う。
【0125】
ステップc3において、同調対象の推進機5Mか推進機5Rの場合は、基準の推進機5Lのシフト位置が前進か判定する。
【0126】
ステップc4において、基準の推進機5Lのシフト位置が前進である場合は、自機の同調対象の推進機5Mまたは推進機5Rのシフト位置が前進か判定する。
【0127】
ステップc5において、自機の同調対象の推進機5Mまたは推進機5Rのシフト位置が前進の場合は、基準の推進機5Lのレバー位置が下限規定値と上限規定値の規定範囲内か判定する。
【0128】
ステップc6において、基準の推進機5Lのレバー位置が下限規定値と上限規定値の範囲内の場合は、同調対象の推進機5M,5Rのレバー位置が下限規定値と上限規定値の規定範囲内か判定する。
【0129】
ステップc7において、同調対象の推進機5M,5Rのレバー位置が下限規定値と上限規定値の範囲内の場合は、レバー位置の偏差が規定値以下か判定する。
【0130】
ステップc8において、レバー位置の偏差が規定値以下の場合は、基準の推進機5Lのスロットル開度が下限規定値と上限規定値の範囲内か判定する。
【0131】
ステップc9において、基準の推進機5Lのスロットル開度が下限規定値と上限規定値の範囲内の場合は、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度が下限規定値と上限規定値の規定範囲内か判定する。
【0132】
ステップc10において、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度が下限規定値と上限規定値の範囲内の場合は、スロットル開度の偏差が規定値以下か判定する。
【0133】
ステップc11において、スロットル開度の偏差が規定値以下の場合は、基準の推進機5Lのエンジン回転数が下限回転数と上限回転数の規定範囲内か判定する。
【0134】
ステップc12において、基準の推進機5Lのエンジン回転数が下限回転数と上限回転数の範囲内の場合は、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が下限回転数と上限回転数の規定範囲内か判定する。
【0135】
ステップc13において、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が下限回転数と上限回転数の規定範囲内の場合は、エンジン回転数の偏差値が規定値以下か判定する。
【0136】
ステップc14において、エンジン回転数の偏差が規定値以下の場合は、各推進機の警告制御の有無を、エンジン回転数を同調させる制御を解除する解除判定条件とする。
【0137】
ステップc15において、船舶または各推進機の故障を検出する故障検出手段からの故障信号に基づき保護制御を行い、この保護制御の有無を、エンジン回転数を同調させる制御を解除する解除判定条件とする。
【0138】
ステップc16において、ステップc1からステップc15において、Yesと判断された場合はスタートに戻り繰り返すが、いずれかのステップにおいてNoと判断された場合には、Noと判断された時間が規定時間経過したかの判断を行う。この解除判定条件が継続した時間、例えば2〜3秒程度の時間を、エンジン回転数を同調させる制御を解除する解除実行条件とする。
【0139】
ステップc17において、解除判定条件が規定時間継続したとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行う。このように、操船者の操船意思によると、例えばクルージング中には早く回転を同調させたいため、判定条件は同調制御を開始したいが、安定したクルージングのために解除しにくくしたい。このため、基準の推進機のエンジン回転数に、同調対象の推進機のエンジン回転数を同調させる制御の判定条件を有し、この制御の判定条件と解除条件を別に設けることで、操船者の操船意思に適合した同調制御を実現することができる。
【0140】
このように、解除判定条件が規定時間継続したとき各推進機のエンジン回転数を同調させる制御の解除を行うが、このエンジン回転数を同調させる制御は、図15乃至図20に示すように行う。図15は回転同調制御解除のブロック図、図16は回転同調制御解除のフローチャート、図17は回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減しない状態を示す図、図18は回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図、図19はエンジン回転数が高いときの回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図、図20はエンジン回転数が低いときの回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図である。
【0141】
この実施の形態の制御手段18M9,18R9は、図13に示す構成の他に、図15に示すように、スロットル加減速判定部18M100,18R100、符号判定部18M101,18R101を有する。スロットル加減速判定部18M100,18R100は、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル位置情報に基づきスロットルが開き方向に作動するが、閉じ方向に作動するかで加速か減速かの判定を行う。符号判定部18M101,18R101は、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度補正量に基づき、加速でスロットル開度補正量を増加するとき正の符号判定を行い、減速でスロットル開度補正量を減少するとき負の符号判定を行う。
【0142】
故障状態解除判定部18M93,18R93、警告状態解除判定部18M94,18R94、解除判定成立状態判定部18M95,18R95、エンジン回転数同調解除判定部18M96,18R96のいずれかがエンジン回転数を同調させる制御を解除する解除判定を行い、また故障状態判定部18M63,18R63が故障状態でない判定、警告状態判定部18M64,18R64が警告状態でない判定を行うと、漸減処理部18M200,18R200は、スロットル加減速判定部18M100,18R100の減速の判定と、符号判定部18M101,18R101のスロットル開度補正量の減少の判定に基づき、スロットル開度の補正を漸減させ、スロットル開度補正量が0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻す。
【0143】
この実施の形態では、基準となる推進機5Lのエンジン回転数と同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数の偏差に基づき同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度を補正してエンジン回転数を同調させる制御を行い、エンジン回転数を同調させる制御を解除しているが、この解除を行うときスロットル開度の補正が急に減少するとスロットル開度が大きく変化して回転変動を伴う可能性がある。このため、漸減処理部18M200,18R200の制御によってエンジン回転数を同調させる制御を解除するとき、スロットル開度の補正を漸減させて補正されたスロットル開度から操作レバー角度に基づくスロットル開度に戻すことで、大きな回転変動を防ぎ自然な操船フィーリングを実現することができる。
【0144】
この漸減処理部18M200,18R200の制御を、図16の回転同調制御解除のフローチャートに基づいて説明する。
【0145】
ステップd1において、故障状態解除判定部18M93,18R93、警告状態解除判定部18M94,18R94、解除判定成立状態判定部18M95,18R95、エンジン回転数同調解除判定部18M96,18R96のいずれかがエンジン回転数を同調させる制御を解除する解除判定を行うと、回転同調制御解除フラグを「1」にする。
【0146】
ステップd2において、基準となる推進機5Lが警告状態か、若しくは故障状態かの判断を行う。
【0147】
ステップd3において、基準となる推進機5Lが警告状態、若しくは故障状態の場合は、同調制御を解除し、スロットル開度補正量を0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻す。
【0148】
ステップd4において、基準となる推進機5Lが警告状態、若しくは故障状態でない場合、同調対象の推進機5M,5Rが警告状態か、若しくは故障状態かの判断を行い、基準となる推進機5Lが警告状態、若しくは故障状態の場合は、ステップd3に移行する。
【0149】
ステップd5において、ステップd4で同調対象の推進機5M,5Rが警告状態、若しくは故障状態でないと判断された場合、同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量が0以下であるかを判断する。
【0150】
ステップd6において、ステップd5で同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量が0以下の場合は、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度が現在の値TPS(n)から1周期前の値TPS(n−1)を減算した値が規定値より大きいかを判断し、大きい場合はステップd3に移行し、小さい場合はステップd8に移行する。
【0151】
ステップd7において、ステップd5で同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量が0以下でない場合は、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度が1周期前の値TPS(n−1)から現在の値TPS(n)を減算した値が規定値より小さいかを判断し、小さい場合はステップd3に移行し、大きい場合はステップd8に移行する。
【0152】
ステップd8において、スロットル開度補正量が0以上かどうか判断し、0以上の場合はステップd9に移行し、0以上でない場合はステップd14に移行する。
【0153】
ステップd9において、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が規定値以上かどうかの判断を行い、エンジン回転数が規定値以上の場合はステップd10に移行し、規定値以上でない場合はステップd12に移行する。
【0154】
ステップd10において、エンジン回転数が規定値以上の場合は、周期設定1を行う。
【0155】
ステップd11において、周期設定1の場合、スロットル開度の補正(n)は、解除時Thの補正量(n-1)から漸減値1を減算する。
【0156】
ステップd12において、エンジン回転数が規定値以上でない場合は、周期設定2を行う。
【0157】
ステップd13において、周期設定2の場合、スロットル開度の補正(n)は、解除時Thの補正量(n-1)から漸減値2を減算する。
【0158】
ステップd14において、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が規定値以上かどうかの判断を行い、エンジン回転数が規定値以上の場合はステップd15に移行し、規定値以上でない場合はステップd17に移行する。
【0159】
ステップd15において、エンジン回転数が規定値以上の場合は、周期設定3を行う。
【0160】
ステップd16において、周期設定3の場合、スロットル開度の補正(n)は、解除時Thの補正量(n-1)に漸減値1を加算する。
【0161】
ステップd17において、エンジン回転数が規定値以上でない場合は、周期設定4を行う。
【0162】
ステップd18において、周期設定4の場合、スロットル開度の補正(n)は、解除時Thの補正量(n-1)に漸減値2を加算する。
【0163】
この図16の回転同調制御解除のフローチャートにおいて、ステップd5乃至d7においては、図17に示すように、スロットル開度の補正の漸減を行っていない。すなわち、a点で示す同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量が0以下の場合で、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度が現在の値TPS(n)から1周期前の値TPS(n−1)を減算した値が規定値より大きい場合は、スロットル開度補正量をb点で示す所定時間後に0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻す。
【0164】
また、a点で示す同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量が0以下でない場合で、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度が1周期前の値TPS(n−1)から現在の値TPS(n)を減算した値が規定値より小さい場合は、スロットル開度補正量をb点で示す所定時間後に0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻す。
【0165】
このように、加速しているときには、a点で示す同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量をb点で示す所定時間後に0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻すことで、D1で示す範囲で若干エンジン回転数が上がるが、加速しているので、操船者は回転変動に気づくことがなく、特に加速時に早く通常のスロットル開度に戻すことができる。
【0166】
また、図16の回転同調制御解除のフローチャートにおいて、ステップd8乃至d18においては、図18乃至図20に示すように、スロットル開度の補正の漸減を行う。すなわち、図18において、a点で示す同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量が0以上の場合で、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が規定値以上の場合は、周期設定1を行い、スロットル開度の補正(n)は、解除時Thの補正量(n-1)から漸減値1を減算し、スロットル開度補正量をb点で示す所定時間後に0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻す。
【0167】
また、a点で示す同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量が0以上の場合で、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が規定値以上でない場合は、周期設定2を行い、スロットル開度の補正(n)は、解除時Thの補正量(n-1)から漸減値2を減算し、スロットル開度補正量をb点で示す所定時間後に0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻す。
【0168】
また、a点で示す同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量が0以上でない場合で、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が規定値以上の場合は、周期設定3を行い、スロットル開度の補正(n)は、解除時Thの補正量(n-1)に漸減値1を加算し、スロットル開度補正量をb点で示す所定時間後に0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻す。
【0169】
また、a点で示す同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量が0以上でない場合で、同調対象の推進機5M,5Rのエンジン回転数が規定値以上でない場合は、周期設定4を行い、スロットル開度の補正(n)は、解除時Thの補正量(n-1)に漸減値2を加算し、スロットル開度補正量をb点で示す所定時間後に0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻す。
【0170】
このように、加速しているときには、a点で示す同調制御を解除するとき、スロットル開度補正量をb点で示す所定時間後に0で終了するようにして、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻すが、加速しているのにスロットル開度補正量が、正から0となりエンジン回転数が低下するのを回避するために、D2で示す範囲でスロットル開度の補正を漸減cする。
【0171】
このスロットル開度の補正は、周期毎に実施し、周期はエンジン回転数により設定し、応答遅れのテーリング量は漸減により設定する。すなわち、エンジン回転数が高い場合は、図19に示すように、周期は遅く、テーリング値は大きくする。また、エンジン回転数が低い場合は、図20に示すように、周期は早く、テーリング値は小さくする。
【0172】
このように、スロットル開度の補正の漸減は、周期毎に実施することで、簡単な制御で大きな回転変動を防ぎ自然な操船フィーリングを実現することができる。また、スロットル開度の補正の漸減の周期を、同調対象の推進機のエンジン回転数により設定することで、低速時には補正も少ないため、より早く補正を少なくし、中高速時には回転変動がより操船者に伝わり易いため、より滑らかになるよう周期を設定することができ、自然な操船を実現することが可能である。
【0173】
また、スロットル開度の補正の漸減の周期は、図21及び図22に示すように、船速検出手段18M7,18R7から得られる船舶の速度により設定することができ、漸減の周期を船舶の速度により設定することで、図22に示す低速時には補正も少ないため、より早く補正を少なくし、図21に示す中高速時には回転変動がより操船者に伝わり易いため、より滑らかになるよう周期を設定することができ、自然な操船を実現することが可能である。
【0174】
また、スロットル開度の補正の漸減量は、図23及び図24に示すように、負荷検出手段18M8,18R8から得られる負荷などによるエンジン回転状態により設定することができ、図24に示す低負荷の回転時には補正量も少ないため、より漸減量を少なくし、図23に示す高負荷の回転時には補正量が大きいためスロットル開度の補正の漸減量を大きく設定することができ、自然な操船を実現することが可能である。
【0175】
また、エンジン回転数を同調させる制御を解除するときの制御は、解除前のスロットル開度の補正が終了していることを条件とする。回転同調の基準の推進機5Lに対し、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度を開側に補正している場合は、エンジン回転数を同調させる制御を解除するときにはスロットル開度が閉側となるため、エンジン回転数が降下しやすい。一方、基準の推進機5Lに対し、同調対象の推進機5M,5Rのスロットル開度を閉側に補正している場合は、エンジン回転数を同調させる制御を解除するときにはスロットル開度が開側となるため、エンジン回転数が回転上昇しやすい。加速する際はスロットル開度が開側へ動作するので回転変動の影響は小さい。このため、エンジン回転数を同調させる制御を解除するときの制御は、解除前のスロットル開度の補正が終了していることを条件とすることで、補正の漸減や周期を各々に設定でき、大きな回転変動を防ぎ自然な操船フィーリングを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
この発明は、特に船舶に複数の推進機を並置し、各推進機のエンジン回転数を同調させ、この同調を解除する推進機の制御装置に適用でき、エンジン回転数の同調制御を解除するとき、大きな回転変動を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】推進機の制御装置を備えた船舶の上面概略図である。
【図2】リモコンコントローラを示す図である。
【図3】推進機の制御装置のシステム図である。
【図4】推進機の制御装置の概略システム図である。
【図5】リモコン制御部とエンジン制御部の構成を示す図である。
【図6】回転同調制御判定を示す図である。
【図7】回転同調制御判定のフローチャートである。
【図8】回転同調制御のブロック図である。
【図9】回転同調制御のフローチャートである。
【図10】基準の推進機の負荷が軽い状態を示す図である。
【図11】負荷状態により補正周期と補正係数が変化する状態を説明する図である。
【図12】スロットル開度補正制限を説明する図である。
【図13】回転同調制御解除のブロック図である。
【図14】回転同調制御解除判定のフローチャートである。
【図15】回転同調制御解除のブロック図である。
【図16】回転同調制御解除のフローチャートである。
【図17】回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減しない状態を示す図である。
【図18】回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図である。
【図19】エンジン回転数が高いときの回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図である。
【図20】エンジン回転数が低いときの回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図である。
【図21】船速が速いときの回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図である。
【図22】船速が遅いときの回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図である。
【図23】負荷が大きいときの回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図である。
【図24】負荷が小さいときの回転同調制御解除時のスロットル開度の補正を漸減する状態を示す図である。
【符号の説明】
【0178】
1 船舶
2 船体
3 船尾板
4 クランプブラケット
5L,5M,5R 推進機
6 エンジン
7 スロットルボディ
8a スロットルバルブ
8b 弁軸
9 モータ
10 運転席
13 リモコンコントローラ
14L,14R リモコン操作レバー
15L,15R レバーポジションセンサ
17L,17M,17R リモコン制御部
17L1 基準レバー角度検出手段
17R1、17M1 同調対象レバー角度検出手段
18L,18M,18R エンジン制御部
18L1 基準エンジン回転数検出手段
18L2 基準シフト位置検出手段
18L3 基準スロットル開度検出手段
18L4 エンジン異常検出手段
18L5 故障検出手段
18M1、18R1 同調対象エンジン回転数検出手段
18M2,18R2 同調対象シフト位置検出手段
18M2,18R2 同調対象スロットル開度検出手段
18M4,18R 4 エンジン異常検出手段
18M5,18R5 故障検出手段
18M7,18R7 船速検出手段
18M8,18R8 負荷検出手段
18M6,18R6 制御手段
18M61,18R61 接続状態判定部
18M62,18R62 同調対象機判定部
18M63,18R63 故障状態判定部
18M64,18R64 警告状態判定部
18M65,18R65 判定成立状態判定部
18M46、18R46 エンジン回転数同調判定部
18M70,18R70 平均化処理手段
18M71,18R71 エンジン回転数偏差値演算手段
18M72,18R72 スロットル開度演算手段
18M73,18R73 スロットル開度補正量算出手段
18M74,18R74 スロットル開度補正係数算出手段
18M75,18R75 補正量制限手段
18M77,18R77 同調対象負荷検出手段
18M80,18R80 演算部
18M81,18R81 演算部
19L,19M,19L 電動シフト機構
20L,20M,20L 電子スロットル機構
32 スロットル目標値演算部
42 スロットル制御部
70L,70M,70R エンジン回転数検出センサ
71L,71M,71R シフトポジションセンサ
72L,72M,72R スロットルポジションセンサ
73L,73M,73R エンジン異常検出センサ
74L,74M,74R 故障検出センサ
75L,75M,75R その他のセンサ
80L,80M,80R フライホイール
81L,81M,81R その他の駆動部
18M100,18R400 スロットル加減速判定部
18M101,18R101 符号判定部
18M200,18R200 漸減処理部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の推進機を船舶に並置し、前記各推進機を、隣接する2つの操作レバーに関連付けて電気的に接続し、前記2つの操作レバーによってシフト駆動装置及びスロットル駆動装置の操作を行い、前記各推進機のエンジン回転数を同調させる推進機の制御装置であり、
基準となる推進機のエンジン回転数と同調対象の推進機のエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記基準となる推進機のエンジン回転数と前記同調対象の推進機のエンジン回転数を同調させる制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記基準となる推進機のエンジン回転数と同調対象の推進機のエンジン回転数の偏差に基づき前記同調対象の推進機のスロットル開度を補正してエンジン回転数を同調させる制御を行い、
前記エンジン回転数を同調させる制御を解除するとき、前記スロットル開度の補正を漸減させ、補正されたスロットル開度から操作レバー位置に基づくスロットル開度に戻すことを特徴とする推進機の制御装置。
【請求項2】
前記スロットル開度の補正の漸減は、周期毎に実施することを特徴とする請求項1に記載の推進機の制御装置。
【請求項3】
前記スロットル開度の補正の漸減の周期は、同調対象の推進機のエンジン回転数により設定することを特徴とする請求項2に記載の推進機の制御装置。
【請求項4】
船舶の速度を検出する船速検出手段を備え、
前記スロットル開度の補正の漸減の周期は、船舶の速度により設定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の推進機の制御装置。
【請求項5】
前記スロットル開度の補正の漸減量は、エンジン回転状態により設定されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の推進機の制御装置。
【請求項6】
前記エンジン回転数を同調させる制御を解除するときの制御は、解除前の前記スロットル開度の補正が終了していることを条件とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の推進機の制御装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−169702(P2008−169702A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1119(P2007−1119)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】