説明

描画装置

【課題】脱気装置によって添加剤が減少させられた液状体が描画装置の内部に留まることで、添加剤が減少させられたことに起因する不具合が発生する可能性が高くなることを抑制することができる描画装置を提供する。
【解決手段】液状体を吐出する吐出ヘッドを備え、吐出ヘッドから液状体を被描画媒体に向けて吐出し、被描画媒体上に液状体を配置して描画する描画装置であって、液状体を貯留する貯留タンクと、貯留タンクと接続部とに接続されており、液状体が貯留タンクから接続部に送られる経路である第一供給路と、貯留タンクと接続部とに接続されており、液状体が接続部から貯留タンクに戻される経路である循環流路と、接続部と吐出ヘッドとに接続されており、液状体が接続部から吐出ヘッドに供給される経路である第二供給路と、液状体の溶存気体を脱気する脱気手段と、を備え、脱気手段は、第二供給路に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を被描画媒体に向けて吐出し、被描画媒体上に前記液状体を配置して描画する描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状体を吐出する吐出ヘッドを備え、吐出した液滴を被描画媒体の任意の位置に着弾させることによって、被描画媒体上に任意の画像などを描画する描画装置が知られている。例えばインクジェット方式の吐出ヘッドを備える描画装置は、所定の量の液状体を所定の位置に精度よく配置することができる。このような吐出ヘッドの多くは、液状体に溶存する溶存気体が増加すると、正常な吐出が困難になり、吐出量や着弾位置の精度が損なわれる可能性が高くなるという課題があった。
【0003】
特許文献1には、減圧機構を設けて、インク循環機構の外部インクタンク内のインクから溶存気体を脱気する印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開特開2009−285839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている減圧機構のような脱気装置は、溶存気体を脱気するとともに、液状体に添加された添加剤も減少させることがある。例えばUV硬化型の機能液においては、描画装置の内部で機能液が固化することを抑制するために、重合抑制剤が添加されている。特許文献1に記載されている減圧機構のような脱気装置は、循環している機能液から重合抑制剤や酸素が減少させられることで、機能液が反応し易くなり、描画装置の内部で固化し易くなるという課題があった。このように、脱気装置によって添加剤が減少させられた液状体が描画装置の内部に留まることで、不具合が発生する可能性が高くなるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる描画装置は、液状体を吐出する吐出ヘッドを備え、前記吐出ヘッドから前記液状体を被描画媒体に向けて吐出し、前記被描画媒体上に前記液状体を配置する描画装置であって、前記液状体を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクと接続部とに接続されており、前記液状体が前記貯留タンクから前記接続部に送られる経路である第一供給路と、前記貯留タンクと前記接続部とに接続されており、前記液状体が前記接続部から前記貯留タンクに送られる経路である循環流路と、前記接続部と前記吐出ヘッドとに接続されており、前記液状体が前記接続部から前記吐出ヘッドに供給される経路である第二供給路と、前記液状体の溶存気体を脱気する脱気手段と、を備え、前記脱気手段は、前記第二供給路に配設されていることを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる描画装置によれば、吐出ヘッドから吐出するために描画装置に貯留されている液状体の多くは、貯留タンクと第一供給路と接続部と循環流路とからなる循環流路を流動させることができる。吐出ヘッドに供給される直前の液状体が、第二供給路に滞留する。脱気手段が第二供給路に配設されているため、脱気手段によって脱気された液状体は、第二供給路における脱気手段と吐出ヘッドとの間の部分にのみ存在する。当該部分の液状体は、吐出ヘッドに補充され、吐出される直前の液状体である。これにより、脱気手段によって脱気された液状体が描画装置内に留まる時間を抑制することができる。すなわち、例えば重合抑制剤や酸素が減少させられることで反応し易くなった液状体が、描画装置の内部に留まる時間を抑制することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる描画装置は、前記液状体が、ラジカル重合型の紫外線硬化型のインクであることが好ましい。
【0010】
この描画装置によれば、使用される液状体が、ラジカル重合型の紫外線硬化型のインクである。ラジカル重合型インクは、ラジカル重合開始剤を含有する。ラジカル重合開始剤を使用することにより、カチオン重合の場合のような湿度による重合阻害を受けないため、印字環境の制限を少なくすることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる描画装置は、前記第一供給路及び前記循環流路内の前記液状体の前記溶存気体の溶存気体濃度が、前記吐出ヘッド内の前記溶存気体濃度より高いことが好ましい。
【0012】
この描画装置によれば、第一供給路及び循環流路内の液状体の溶存気体の溶存気体濃度が、吐出ヘッド内の溶存気体濃度より高い。溶存気体を除去して溶存気体濃度を低下させる際には、液状体に添加された添加剤も減少させている可能性が高い。例えば、脱気によって、重合抑制剤が減少させられることで、液状体が固化し易くなる可能性がある。溶存気体濃度が高い液状体は、溶存気体濃度が低い液状体にくらべて、固化するなどの不具合が発生し難い可能性が高い。吐出ヘッドなどにくらべて液状体が滞留する時間が長い第一供給路及び循環流路内における液状体を、吐出ヘッド内の液状体より固化し難い状態に維持することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる描画装置は、前記吐出ヘッドにおける前記液状体の圧力を調整する圧力調整手段をさらに備え、前記圧力調整手段は、前記第二供給路における前記脱気手段と前記吐出ヘッドとの間に配設されていることが好ましい。
【0014】
この描画装置によれば、圧力調整手段は、脱気手段と吐出ヘッドとの間に配設されており、圧力調整手段によって圧力が調整される液状体は、脱気手段によって脱気された液状体である。これにより、圧力調整手段によって圧力が調整された液状体が脱気手段によって脱気されることで、液状体の圧力が調整された圧力からずれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図。
【図2】(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図。(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図。(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図。
【図3】ヘッドユニットの概略構成を示す平面図。
【図4】機能液供給部の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、描画装置について、図面を参照して説明する。本実施形態は、描画装置としての液滴吐出装置を例にして説明する。当該液滴吐出装置は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドを備える装置である。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0017】
<液滴吐出装置>
最初に、液滴吐出装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図である。
【0018】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、ヘッド機構部2と、ワーク機構部3と、機能液供給部4と、保守装置部5と、吐出装置制御部6と、支持脚8と、定盤9とを備えている。ヘッド機構部2は、機能液40(図4参照)を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド20を有している。ワーク機構部3は、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴の吐出対象であるワークWを載置するワーク載置台33を有している。
機能液供給部4は、機能液タンク41や、供給管61(図4参照)などを有し、当該供給管61などを介して、機能液40が機能液タンク41から液滴吐出ヘッド20に供給される。保守装置部5は、液滴吐出ヘッド20の検査又は保守を実施する各装置を備えている。吐出装置制御部6は、これら各機構部等を総括的に制御する。複数の支持脚8が床上に設置されており、複数の支持脚8の上に定盤9が設置されている。
【0019】
定盤9の上面には、ワーク機構部3が配設されている。ワーク機構部3は、定盤9の長手方向(X軸方向)に延在している。ワーク機構部3の上方には、定盤9に固定された2本の支持柱で支持されているヘッド機構部2が配設されている。ヘッド機構部2は、ワーク機構部3と直交する方向(Y軸方向)に延在している。定盤9の傍らには、ヘッド機構部2の液滴吐出ヘッド20に連通する供給管を有する機能液供給部4の機能液タンク41などが配置されている。ヘッド機構部2の一方の支持柱の近傍には、保守装置部5がワーク機構部3と並んでX軸方向に延在して配設されている。定盤9の下側に、吐出装置制御部6が収容されている。
【0020】
ヘッド機構部2は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッドユニット21と、ヘッドユニット21を支持するヘッドキャリッジ22とを有し、ヘッドキャリッジ22をY軸方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド20をY軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。ワーク機構部3は、ワーク載置台33をX軸方向に移動させることで、ワーク載置台33に載置されたワークWをX軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。
【0021】
液滴吐出ヘッド20を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、下方にあるワークWのX軸方向の移動に同調させて、機能液40を液滴として吐出させる。X軸方向に移動させるワークWと、Y軸方向に移動させる液滴吐出ヘッド20とを相対的に制御することにより、ワークW上の任意の位置に液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。
ワークWが、被描画媒体に相当する。液滴吐出ヘッド20が、吐出ヘッドに相当する。機能液40が、液状体に相当する。
【0022】
機能液供給部4は、機能液タンク41や、循環タンク42や、供給管62や、循環管64や、バルブ保持枠44や、切替バルブ43などを有している。機能液タンク41や、循環タンク42は、定盤9の傍らに配置されている。バルブ保持枠44は、ヘッド機構部2のヘッドキャリッジ22に固定されている。切替バルブ43は、バルブ保持枠44に保持されることで、バルブ保持枠44を介してヘッドキャリッジ22に固定されている。ヘッドキャリッジ22に固定された切替バルブ43は、液滴吐出ヘッド20のY軸方向の移動と一緒に、Y軸方向に移動する。循環タンク42と切替バルブ43とは、供給管62及び循環管64を介して接続されており、機能液40は供給管62を介して切替バルブ43に送られる。切替バルブ43には供給管63(図4参照)が接続されており、供給管63には後述する脱気ユニット71(図4参照)が取り付けられている。当該供給管63が、圧力調整弁77(図4参照)、及び配液管66(図4参照)を介して液滴吐出ヘッド20に接続されている。切替バルブ43から、供給管63、脱気ユニット71、圧力調整弁77、及び配液管66を介して、機能液40が液滴吐出ヘッド20に供給される。
【0023】
<液滴吐出ヘッド>
次に、液滴吐出ヘッド20について、図2を参照して説明する。図2は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す図である。図2(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図であり、図2(b)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視断面図であり、図2(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルの部分の構造を示す断面図である。図2に示したY軸、及びZ軸は、液滴吐出ヘッド20が液滴吐出装置1に装着された状態において、図1に示したY軸、及びZ軸と一致している。
【0024】
図2(a)に示したように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25を備えている。ノズル基板25には、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。吐出ノズル24から機能液40を液滴として吐出し、対向する位置にある描画対象物などに着弾させることで、当該位置に機能液40を配置する。ノズル列24Aは、液滴吐出ヘッド20が液滴吐出装置1に装着された状態で、図1に示したY軸方向に延在している。ノズル列24Aにおいて吐出ノズル24は等間隔のノズルピッチで並んでおり、2列のノズル列24A間で、吐出ノズル24の位置がY軸方向に半ノズルピッチずれている。したがって、液滴吐出ヘッド20としては、Y軸方向に半ノズルピッチ間隔で機能液40の液滴を配置することができる。
液滴吐出ヘッド20におけるノズル基板25と反対側には、接続針26が一対形成されている。接続針26に形成された導入孔から、機能液40が液滴吐出ヘッド20の内部に供給される。
【0025】
図2(b)及び(c)に示すように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25に圧力室プレート51が積層されており、圧力室プレート51に振動板52が積層されている。
圧力室プレート51には、液滴吐出ヘッド20に供給される機能液40が常に充填される液たまり55が形成されている。液たまり55は、振動板52と、ノズル基板25と、圧力室プレート51の壁とに囲まれた空間である。機能液供給部4から供給される機能液40は、接続針26に形成された導入孔から、液滴吐出ヘッド20の内部に供給され、振動板52の液供給孔53を経由して液たまり55に供給される。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区切られた圧力室58が形成されている。振動板52と、ノズル基板25と、2個のヘッド隔壁57とによって囲まれた空間が圧力室58である。
【0026】
圧力室58は吐出ノズル24のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数と吐出ノズル24の数とは同じである。圧力室58には、2個のヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を経由して、液たまり55から機能液40が供給される。ヘッド隔壁57と圧力室58と吐出ノズル24と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだ吐出ノズル24がノズル列24Aを形成している。図2(b)では図示省略したが、図示した吐出ノズル24を含むノズル列24Aに対して液たまり55に関して略対称位置に、1列に並んで配設された吐出ノズル24がもう1列のノズル列24Aを形成している。当該ノズル列24Aに対応するヘッド隔壁57と圧力室58と供給口56との組が、1列に並んでいる。
【0027】
振動板52の圧力室58を構成する部分には、それぞれ圧電素子59の一端が固定されている。圧電素子59の他端は、固定板(図示省略)を介して液滴吐出ヘッド20全体を支持する基台(図示省略)に固定されている。
圧電素子59は、電極層と圧電材料とを積層した活性部を有している。圧電素子59は、電極層に駆動電圧を印加することで、活性部が長手方向(図2(b)又は(c)における振動板52の厚さ方向)に縮む。電極層に印加されていた駆動電圧が解除されることで、活性部が元の長さに戻る。
【0028】
電極層に駆動電圧が印加されて、圧電素子59の活性部が縮むことで、圧電素子59の一端が固定された振動板52が圧力室58と反対側に引張られる力を受ける。振動板52が圧力室58と反対側に引張られることで、振動板52が圧力室58の反対側に撓む。これにより、圧力室58の容積が増加することから、機能液40が液たまり55から供給口56を経て圧力室58に供給される。次に、電極層に印加されていた駆動電圧が解除されると、活性部が元の長さに戻ることで、圧電素子59が振動板52を押圧する。振動板52が押圧されることで、圧力室58側に戻る。これにより、圧力室58の容積が急激に元に戻る。すなわち増加していた容積が減少することから、圧力室58内に充填されていた機能液40に圧力が加わり、当該圧力室58に連通して形成された吐出ノズル24から機能液40が液滴となって吐出される。
【0029】
<ヘッドユニット>
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成について、図3を参照して説明する。図3は、ヘッドユニットの概略構成を示す平面図である。図3に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット21が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0030】
図3に示したように、ヘッドユニット21は、ユニットプレート23と、ユニットプレート23に搭載された9個の液滴吐出ヘッド20と、を有している。液滴吐出ヘッド20は、図示省略したヘッド保持部材を介してユニットプレート23に固定されている。固定された液滴吐出ヘッド20は、ヘッド本体がユニットプレート23に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズル基板25が、ユニットプレート23の面より突出した位置に位置している。図3は、ノズル基板25の側から見た図である。9個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの液滴吐出ヘッド20を有するヘッド組20Aを3群、形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、Y軸方向に延在している。
【0031】
液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド20の、一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。一つのヘッドユニット21が備える9個の液滴吐出ヘッド20のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル24は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔に並んで一直線上に着弾する。
ノズル列24Aは、例えば180個の吐出ノズル24を有しており、液滴吐出ヘッド20は、360個の吐出ノズル24を有している。9個の液滴吐出ヘッド20を有するヘッドユニット21は、3240個の吐出ノズル24を有している。一つのヘッドユニット21の吐出ノズル24から一滴ずつ吐出させて、X軸方向が同じ位置になるように着弾させると、3240個の点が半ノズルピッチのピッチ間隔で連なる直線が形成される。
【0032】
<機能液供給部>
次に、機能液供給部4の構成について、図4を参照してより詳細に説明する。図4は、機能液供給部の構成を示す模式図である。図4に示すように、機能液供給部4は、機能液タンク41と、循環タンク42と、切替バルブ43と、脱気ユニット71と、圧力調整弁77と、配管接続部材67と、を備えている。また、これらのタンクなどの間及び液滴吐出ヘッド20を連通して機能液40を機能液タンク41から液滴吐出ヘッド20へ供給する供給管61、供給管62、供給管63、循環管64、及び配液管66を備えている。機能液供給部4は、また、機能液40を機能液タンク41から液滴吐出ヘッド20へ送る圧力を機能液40に付与する、ポンプ73及びポンプ75を備えている。
【0033】
脱気ユニット71と、ポンプ73と、ポンプ75と、切替バルブ43とは、図4に破線で示したように吐出装置制御部6と電気的に接続されており、吐出装置制御部6によって制御される。上述したように、液滴吐出ヘッド20も、吐出装置制御部6と電気的に接続されており、吐出装置制御部6によって制御される。
機能液タンク41と循環タンク42とは、供給管61を介して連通している。ポンプ73が供給管61の途中に配設されている。機能液40は、ポンプ73によって、供給管61を経由して機能液タンク41から循環タンク42に送出される。機能液タンク41は、液滴吐出装置1に機能液を補充するためのタンクであり、機能液供給部4に機能液を補充する場合以外には、機能液供給部4から外しておいてもよい。
上述したように、バルブ保持枠44は、ヘッド機構部2のヘッドキャリッジ22に固定されている。切替バルブ43は、バルブ保持枠44に保持されることで、バルブ保持枠44を介してヘッドキャリッジ22に固定されている。ヘッドキャリッジ22に固定された切替バルブ43は、液滴吐出ヘッド20のY軸方向の移動と一緒に、Y軸方向に移動する。
【0034】
循環タンク42と切替バルブ43とは、供給管62を介して連通している。また、循環管64を介しても連通している。ポンプ75が供給管62の途中に配設されている。機能液40は、ポンプ75によって、供給管62を経由して循環タンク42から切替バルブ43に送出される。
切替バルブ43には、液滴吐出ヘッド20の方に機能液を送出する経路である供給管63も接続されている。切替バルブ43は、供給管62に連通する流路を、循環管64又は供給管63に切替える。切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、循環管64に接続されている状態では、切替バルブ43に供給された機能液40は、循環管64を経由して、循環タンク42に戻される。循環タンク42と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とで、循環路が形成されており、機能液40は、当該循環路を循環している。切替バルブ43によって、供給管62に連通する流路が、供給管63に接続されている状態では、切替バルブ43に供給された機能液40は液滴吐出ヘッド20に供給される。
機能液40に循環路を循環させることにより、機能液40に含まれる顔料などが沈降することを抑制することができる。
機能液40を液滴吐出ヘッド20に供給することを必要としていない場合は、流路を循環管64側に切り替えて、機能液40を循環させることができる。機能液40を液滴吐出ヘッド20に供給することを必要としている場合は、液滴吐出ヘッド20から機能液40を吐出している場合や、液滴吐出ヘッド20から機能液40が吸引されている場合などである。その他の場合には、機能液40を循環させることができる。例えば、休止期間や、立ち上げ時にも、機能液40を循環させてもよい。
さらに、機能液40を循環させることができる場合の中で、機能液40における顔料などの沈降状態によって、必要な場合に機能液40を循環させてもよい。機能液40における顔料などの沈降状態は、液滴吐出ヘッド20から機能液40を吐出している時間や、液滴吐出ヘッド20から機能液40が吸引されてからの時間経過などから判定することができる。
【0035】
切替バルブ43と圧力調整弁77とは、供給管63を介して連通している。脱気ユニット71が、図示省略した固定治具によってヘッドキャリッジ22に固定されており、供給管63の途中に配設されている。脱気ユニット71によって、供給管63を通過する機能液40に混入した気泡や溶解した気体を抜くことができる。
圧力調整弁77は調整弁支持枠77aに固定されて支持されており、調整弁支持枠77aはユニットプレート23に固定されており、圧力調整弁77は、調整弁支持枠77aを介して、ユニットプレート23に固定されている。圧力調整弁77は、例えば大気圧を利用して、流入した機能液40の液圧を一定の液圧に調整して出力する。圧力調整弁77によって、液滴吐出ヘッド20に供給される機能液40の液圧が一定の液圧に調整される。
圧力調整弁77と液滴吐出ヘッド20とは、配液管66を介して連通している。配液管66の液滴吐出ヘッド20側は、2本に分岐しており、分岐した先端には、それぞれ配管接続部材67が固定されている。配管接続部材67が液滴吐出ヘッド20の接続針26と嵌合して、接続針26に形成された導入孔を介して、液滴吐出ヘッド20の内部と配液管66の流路とが連通されている。
【0036】
機能液40は、機能液タンク41から供給管61を介して循環タンク42へ至り、循環タンク42から供給管62を介して切替バルブ43に至る。機能液40は、循環タンク42と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とで形成された循環路を循環しながら、機能液供給部4の内部に保持されている。
液滴吐出ヘッド20から機能液40が吐出されると、供給管63及び配液管66を介して、切替バルブ43から液滴吐出ヘッド20に、機能液40が供給される。機能液40は、供給管63の途中に配置された脱気ユニット71によって溶存気体が脱気され、圧力調整弁77によって適切な圧力に調整されて、液滴吐出ヘッド20に供給される。
循環タンク42が、貯留タンクに相当する。供給管62が、第一供給路に相当する。切替バルブ43が、接続部に相当する。循環管64が、循環流路に相当する。供給管63及び配液管66が、第二供給路に相当する。脱気ユニット71が、脱気手段に相当する。圧力調整弁77が、圧力調整手段に相当する。
【0037】
<インク>
機能液40は、例えば、紫外線硬化型インクである。本実施形態におけるインク(以下、「インク組成物」ともいう。)の組成は、特に限定されない。インクが紫外線硬化型インクである場合、重合性化合物及び光重合開始剤を少なくとも含む。さらに、上記インクがクリアインク以外の有色インクである場合には、色材も含む。以下、インク組成物に含まれるか又は含まれ得る各成分を説明する。
【0038】
(重合性化合物)
重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線の照射時に重合し、固化する化合物であれば、特に制限はない。例えば、単官能基、2官能基、及び3官能基以上の多官能基を有する種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。
【0039】
ここで、本明細書における「モノマー」とは、重量平均分子量が100〜3,000の分子を意味する。本明細書における「オリゴマー」とは、重量平均分子量が500〜20,000の分子を意味する。
【0040】
上記モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。
他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0041】
また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖オリゴマーや多分岐オリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
上記で列挙したものの中でも(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。重合性化合物として(メタ)アクリレートを使用した場合、インクの硬化性、及び硬化膜の被着体への密着性を良好にすることができる。
なお、本明細書における「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルを意味する。
【0043】
上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0044】
上記(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
上記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
これらの中でも、硬化時の塗膜(塗布層)の伸び性が高く、且つ低粘度であるため、インクジェット記録時の射出安定性が得られやすいという観点から、重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。さらに塗布層の硬さが増すという観点から、単官能(メタ)アクリレートと2官能(メタ)アクリレートとを併用することがより好ましい。
【0047】
上記で列挙した(メタ)アクリレートの中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,6−ヘキサンジオールアクリレートからなる群より選択される一種以上が好ましく、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのうち少なくとも一方がより好ましい。この場合、粘度、硬化性、及び皮膚刺激性のバランスに優れるため、吐出の際に粘度の影響を受けやすいインクジェット用インクに有効であり、かつ皮膚刺激性も少なくなる。
また、光重合性化合物は、(メタ)アクリレートモノマーに加えて従来公知の(メタ)アクリレートオリゴマーをさらに含んでもよい。
【0048】
上記の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
(光重合開始剤)
重合開始剤は、紫外線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば特に制限されない。ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤を使用することができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤を使用することにより、カチオン重合の場合のような湿度による重合阻害を受けないため、印字環境を選ばないという有利な効果が得られる。また、ラジカル重合開始剤は、酸素阻害があり、インク中の溶存酸素により反応性が変化する。
なお、カチオン重合開始剤として、特に限定されないが、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメ−ジング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ、技術情報協会、「光硬化技術」、2001年に紹介されている光酸発生剤)。本実施形態に好適な化合物例として、まず、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨ−ドニウム、スルホニウム等の芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4−,PF6−,AsF6−,SbF6−,CF3SO3−塩を挙げることができる。対アニオンとしてボレート化合物を持つものが、酸発生能力が高いため、好ましい。また、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、及び鉄アレン錯体も好適に挙げられる。カチオン重合開始剤の市販品として、例えばUV1−6992(トリフェニルスルフォニウム塩、ダウケミカル社(The Dow Chemical Company)製)等が挙げられる。
【0050】
上記のラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0051】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0052】
ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、チバ・ジャパン社(Ciba Japan K.K.)製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0053】
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(色材)
本実施形態におけるインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。上記色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方である。これらの中でも、撹拌しながら超音波脱気を行うことを特徴とするインクジェット記録方法及びこれに使用するインクジェット記録装置を適用する効果が非常に大きいため、液体の一例であるインク(インクジェット記録用インク)は顔料を含有する液体組成物であることが好ましく、金属酸化物を含有する液体組成物であることがより好ましく、顔料系のホワイトインクであることがさらに好ましい。
【0055】
(1.顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0056】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。これらの中でも、上述したように、顔料系インクがホワイトインクの場合、白色度を良好に維持する観点から、酸化チタンを使用することが好ましい。
【0057】
また、有機顔料として、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0058】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水に不溶であればいずれも使用できる。
【0059】
(2.染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料及び塩基性染料が使用可能である。上記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0060】
また、上記のインク組成物は、色材を含まないクリアインクにも適用可能である。つまり、顔料を含まないクリアインクにおいても、超音波脱気を行う超音波脱気工程を有するシステムにより、優れた印字安定性を達成できる。これに加えて攪拌機構も備えることによりこの脱気工程をさらに有効に活用できるが、この場合、この脱気工程は粘度の高いインクにおいて一層顕著にその有効性を得ることができる。
【0061】
また、上記顔料は、後述する分散剤又は界面活性剤中に分散させて用いることができる。
【0062】
(その他の成分)
本実施形態におけるインク組成物は、上記に挙げた成分以外の成分を含んでもよい。当該成分として、特に限定されないが、例えば分散剤が挙げられる。
【0063】
上記の分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーシリーズ、アビシア(株)製のソルスパーズシリーズ、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ、楠本化成(株)製のディスパロンシリーズ等が挙げられる。上記高分子分散剤として、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、並びにエポキシ樹脂等のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。
【0064】
上記の界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)製)を挙げることができる。
【0065】
さらに、インク組成物は、重合促進剤、スリップ剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤を含んでもよい。
【0066】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)循環タンク42と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とで、循環路が形成されており、機能液40は、当該循環路を循環している。これにより、機能液40が静止した状態で貯留される場合にくらべて、機能液40が静止した状態で維持されることによって固化しやすくなることを抑制することができる。
【0067】
(2)機能液供給部4は、脱気ユニット71を備えている。脱気ユニット71によって、液滴吐出ヘッド20に供給する機能液40を脱気して、溶存気体濃度を減少させることができる。
【0068】
(3)脱気ユニット71は、機能液40が液滴吐出ヘッド20に供給される供給路において、循環タンク42と、供給管62と、切替バルブ43と、循環管64とで構成される循環路の下流に配設されている。機能液40は脱気ユニット71を通過する際に脱気される。このため、脱気ユニット71の上流で循環路を循環している機能液40は、脱気ユニット71の下流に位置する液滴吐出ヘッド20内の機能液40より溶存気体濃度が高い。循環路を循環している機能液40は循環している状態で、機能液供給部4の内部に保持されており、循環路の下流に移動した機能液40にくらべて、機能液供給部4の内部に存在する時間が長くなる可能性が高い。機能液40は、脱気されることで、例えば重合抑制剤が減少させられて固化し易くなる。脱気ユニット71を循環路の下流に配設することで、機能液供給部4の内部に長くとどまる可能性が高い機能液40が固化し易くなることを抑制することができる。
【0069】
(4)機能液供給部4は、圧力調整弁77を備えている。圧力調整弁77によって、液滴吐出ヘッド20に供給する機能液40の液圧を一定の液圧に調整することができる。
【0070】
(5)脱気ユニット71は、機能液40が液滴吐出ヘッド20に供給される供給路において、圧力調整弁77の上流に配設されている。これによって、圧力調整弁77によって調整された機能液40の液圧が、脱気ユニット71によって影響を受けることを実質的になくすることができる。
【0071】
(6)脱気ユニット71は、ヘッドキャリッジ22に固定されている。したがって、脱気ユニット71は、液滴吐出ヘッド20の近くに配設されている。これにより、脱気ユニット71によって脱気されて液滴吐出ヘッド20との間に滞留している機能液40の量を、脱気ユニット71と液滴吐出ヘッド20との間が長い構成にくらべて、少なくすることができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0073】
(変形例1)前記実施形態においては、機能液供給部4は、圧力調整弁77を備えていたが、吐出ヘッドに供給する液状体の液圧を一定の液圧に調整する装置が圧力調整弁77のような装置であることは必須ではない。例えば、液状体の供給経路の途中に液溜りを設け、当該液溜りに供給された液状体の液位と、吐出ヘッドにおける液状体の液位との水頭差を一定に維持することによって、吐出ヘッドに供給する液状体の液圧を一定の液圧に調整する装置であってもよい。
【0074】
(変形例2)前記実施形態においては、図4に図示した例では、1個の液滴吐出ヘッド20に対して1個の脱気ユニット71が設けられていた。しかし、1個の脱気手段が脱気した液状体が供給される吐出ヘッドが1個であることは必須ではない。1個の脱気手段が脱気した液状体が複数の吐出ヘッドに供給される構成であってもよい。
【0075】
(変形例3)前記実施形態においては、接続部に相当する切替バルブ43がヘッドキャリッジ22に固定されており、ヘッドキャリッジ22(液滴吐出ヘッド20)と一緒に移動する構成であったが、接続部が吐出ヘッドと一緒に移動することは必須ではない。移動する吐出ヘッドに対して、接続部は固定されている構成であってもよい。
接続部が固定されている場合、接続部と貯留タンクとを近接させて配置することが可能となるため、第一供給路及び循環流路を短くすることができる。
【0076】
(変形例4)前記実施形態においては、液滴吐出装置1は、ヘッドユニット21を1個備えていた。しかし、描画装置が備えるヘッドユニットが1個であることは必須ではない。描画装置が備えるヘッドユニットは、いくつであってもよい。描画装置が複数のヘッドユニットを備える場合、ヘッドユニットごとに、吐出させる液状体の種類を異ならせてもよい。
【0077】
(変形例5)前記実施形態においては、ヘッドユニット21は、液滴吐出ヘッド20を9個備えていたが、ヘッドユニットが備える吐出ヘッドが9個であることは必須ではない。ヘッドユニットが備える吐出ヘッドは、いくつであってもよい。
【0078】
(変形例6)前記実施形態においては、液滴吐出ヘッド20は、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aを2列備えていたが、吐出ヘッドが備えるノズル列は何列であってもよい。液滴吐出ヘッドが複数のノズル列を備える場合、ノズル列ごとに、吐出させる液状体の種類を異ならせてもよい。ノズル列ごとに吐出させる液状体の種類を異ならせる場合、液状体の種類ごとに脱気手段を設けることが必要である。
【0079】
(変形例7)前記実施形態においては、X軸走査機構によってワーク載置台33をX軸方向に移動させることでワークWをX軸方向に移動し、Y軸走査機構によって、液滴吐出ヘッド20(ヘッドユニット21)をY軸方向に移動することで、ワークWと液滴吐出ヘッド20とを平面方向において相対移動させていた。被描画媒体と吐出ヘッドとを相対移動させるために被描画媒体と吐出ヘッドとの両方を移動させることは必須ではない。被描画媒体と吐出ヘッドのいずれか一方を平面方向に移動させることで、被描画媒体と吐出ヘッドとを相対移動させる構成であってもよい。
【0080】
(変形例8)前記実施形態においては、液滴吐出装置1に吐出させる機能液の種類については特に記載しなかったが、色が異なるなど種類の異なる機能液を吐出してもよい。色が異なる複数種類の機能液を吐出させることでカラー描画も可能である。機能液の種類は、液滴吐出ヘッドごとに異ならせてもよいし、ヘッド組20Aごとに異ならせてもよい。吐出ノズルごとに機能液を個別に供給できる液滴吐出ヘッドを用いて、吐出ノズルごとに異なる機能液を吐出してもよい。
種類の異なる機能液を使用する場合、循環路を、機能液の供給路のすべてに、設けてもよいし、循環路を設けることが特に有効な機能液の供給路にのみ設けてもよい。循環路を設けることが特に有効な機能液としては、白インク、メタリックインクなど、含有している顔料が大きいものなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0081】
1…液滴吐出装置、2…ヘッド機構部、3…ワーク機構部、4…機能液供給部、6…吐出装置制御部、20…液滴吐出ヘッド、20A…ヘッド組、21…ヘッドユニット、22…ヘッドキャリッジ、23…ユニットプレート、24…吐出ノズル、24A…ノズル列、25…ノズル基板、26…接続針、33…ワーク載置台、40…機能液、41…機能液タンク、42…循環タンク、43…切替バルブ、44…バルブ保持枠、53…液供給孔、58…圧力室、59…圧電素子、61,62,63…供給管、64…循環管、66…配液管、67…配管接続部材、71…脱気ユニット、73,75…ポンプ、77…圧力調整弁、77a…調整弁支持枠。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体を吐出する吐出ヘッドを備え、前記吐出ヘッドから前記液状体を被描画媒体に向けて吐出し、前記被描画媒体上に前記液状体を配置する描画装置であって、
前記液状体を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクと接続部とに接続されており、前記液状体が前記貯留タンクから前記接続部に送られる経路である第一供給路と、
前記貯留タンクと前記接続部とに接続されており、前記液状体が前記接続部から前記貯留タンクに送られる経路である循環流路と、
前記接続部と前記吐出ヘッドとに接続されており、前記液状体が前記接続部から前記吐出ヘッドに供給される経路である第二供給路と、
前記液状体の溶存気体を脱気する脱気手段と、を備え、
前記脱気手段は、前記第二供給路に配設されていることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記液状体は、ラジカル重合型の紫外線硬化型のインクであることを特徴とする、請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記第一供給路及び前記循環流路内の前記液状体の前記溶存気体の溶存気体濃度が、前記吐出ヘッド内の前記溶存気体濃度より高いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記吐出ヘッドにおける前記液状体の圧力を調整する圧力調整手段をさらに備え、
前記圧力調整手段は、前記第二供給路における前記脱気手段と前記吐出ヘッドとの間に配設されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−152661(P2012−152661A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11686(P2011−11686)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】