説明

揮発性金属β−ケトイミナート錯体

【課題】揮発性金属β−ケトイミナート錯体及びそれを用いた電子デバイスの提供。
【解決手段】例えば2,4−ペンタンジオンとメチルアミンより得たβ−ケトイミンと塩化銅、ブチルリチウム、トリメチルビニルシランより銅β−ケトイミナート錯体を得ることができる。その銅β−ケトイミナート錯体は原子層堆積又は化学蒸着条件により基材上に金属又は金属含有フィルムを被着させるための前駆物質として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体業界は、例えば最新のマイクロプロセッサといったような電子デバイスにおいて銅(Cu)などのような金属含有配線を使用している。埋込み型の微細な金属線であることができる金属含有配線は、マイクロプロセッサの心臓部にある何百万ものトランジスタが通信し複雑な計算を実行することのできる3次元格子を形成する。これらの及びその他の利用分野において、銅は優れた導電体でありかくしてより大きな電流搬送能力をもつより高速の相互接続を提供することから、例えばアルミニウムといったようなその他の金属ではなく銅又はその合金が選択される可能性がある。
【0002】
電子デバイス内部の配線経路は一般的にダマシンプロセスによって作製され、これによれば誘電絶縁体内のフォトリソグラフィによりパターン化されエッチングされたトレンチ及びビアが、拡散バリア材料のコンフォーマル薄膜でコーティングされる。拡散バリア層は、金属又は銅層と集積回路のその他の部分との相互作用又は拡散によりひき起こされる有害な影響を防止するため、金属又は銅層とともに一般的に使用される。バリア材料の例としては、チタン、タンタル、タングステン、クロム、モリブデン、ジルコニウム、ルテニウム、バナジウム及び/又は白金並びにこれらの物質の炭化物、窒化物、炭窒化物、ケイ素炭化物、ケイ素窒化物及びケイ素炭窒化物、また上記物質を含む合金が挙げられるが、ただしこれらに制限されるわけではない。例えば配線が銅を含む場合といったような、特定のプロセスでは、純銅で表面凹凸を完全に埋める前に銅の薄い「シード」又は「ストライク」層で拡散バリア層をコーティングすることがある。更にその他の場合では、銅シード層の代わりに類似のコバルト又は同様の導電性薄膜「グルー」層を用い、あるいはそれに加えて銅シード層を用いることがある。このとき余剰の銅を、化学機械研磨プロセスによって除去してもよい。埋めるべき最小の表面凹凸は、幅0.2ミクロン未満で深さ1ミクロン超になることがあるので、銅シード層、銅グルー層及び/又は拡散バリア層を、完成した製品で電気的不具合の原因となりかねないボイドを少しも残さずにこれらの表面凹凸を均等に充填することができるメタライゼーション技術を用いて被着させることが好ましい。
【0003】
イオン化金属プラズマ(IMP)、物理気相成長(PVD)、化学気相成長(CVD)、原子層堆積(ALD)、プラズマ補助化学気相成長(PACVD)、プラズマ化学気相成長(PECVD)、電気メッキ及び無電解メッキといったような数多くの方法が、メタライゼーション、拡散バリア及び/又はその他の層といったような金属含有層を被着させるために使用されてきた。そのなかで、1種以上の有機金属前駆物質を用いたCVD及びALD方法は、高アスペクト比構造及び良好なビア充填特性のための優れたステップカバレッジを提供することから、最も将来性の高い方法であろう。一般的なCVDプロセスにおいては、所望の金属を含有する揮発性有機金属前駆物質の蒸気を基材表面に導き、すると化合物として又は純粋元素としての金属を含有する薄膜を基材上に被着させる化学反応が起こる。金属は一般的に揮発性前駆物質として蒸気形態で送給されることから、それは垂直及び水平の両表面にアクセスして均等に分布した薄膜を提供することができる。一般的なALDプロセスでは、基材上に前駆物質/反応物の交互の自己制限的単分子層が被着されて、これらの単分子層が一緒に反応して金属膜又は金属含有膜を形成し、この膜がその後金属に還元されるか又は被着された状態で使用されるように、揮発性有機金属前駆物質は反応物ガスと交互に反応装置内にパルス送りされる。例えば、銅の有機金属前駆物質をALDプロセスで適切な酸化剤と反応させた場合、結果として得られる酸化第一銅又は酸化第二銅の単分子層又は多分子層を半導体用途のために使用するか、又は還元して金属銅にすることができる。
【0004】
銅薄膜のためには、CVD及びその他の被着に適した同じ前駆物質の一部がALD前駆物質としても適切であり得る。特定の用途では、前駆物質は極めて揮発性であり、実質的に純粋である(すなわち、約95%又は約99%以上の銅という純度をもつ)銅フィルムを被着させ、及び/又は反応チャンバ内又は拡散バリア又はその他の下地表面上への潜在的に汚染性の種の導入を最小限におさえることが好ましいことがある。更に、これらの用途は、銅フィルムが拡散バリア層に対し優れた密着性を示すことが好ましいことがあり、これは、密着力が弱い場合、特に化学機械研磨中に銅フィルムが層間剥離する可能性があるからである。
【0005】
上述のプロセス、特にCVD又はALDプロセスにより、低電気抵抗率の銅フィルムを被着させるために、いくつかの有機金属前駆物質が開発されてきた。幅広く研究されてきた銅有機金属前駆物質の多用される群のうちの2つは、Cu(I)前駆物質とCu(II)前駆物質である。広く使用されている1つのCu(I)前駆物質は、式Cu(I)(hfac)(W)をもつ前駆物質であり、この式において「hfac」は1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナートアニオンを表わし、(W)は例えばオレフィン、アルキン又はトリアルキルホスフィンといったような中性の安定化配位子を表わす。上記の式をもつCu(I)前駆物質の特定の1つの例は、本出願の譲受人であるペンシルバニア州Allentownのエア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレイテッドによりCUPRASELECTTMの商標で販売されている1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナート−銅(I)トリメチルビニルシラン(以下Cu(hfac)(tmvs))である。これらのCu(I)前駆物質は、該前駆物質の2つの分子が加熱された基材表面上で反応して金属銅、遊離配位子(W)の2つの分子、及び揮発性副生物のCu(+2)(hfac)2をもたらす不均化反応によりフィルムを被着することができる。式(1)が不均化反応の一例を提示する。
【0006】
【化1】

【0007】
CVDでの被着では、式(1)に例示されている不均化反応は、一般的に200℃前後の温度で行われる。しかしながら、被着プロセスに応じてその他の温度も使用可能である。式(1)が例示しているように、Cu(+2)(hfac)2は反応の副生物を構成し、反応チャンバから除去することが必要になることがある。
【0008】
更にもう1つのタイプのCu(I)前駆物質は、式(X)Cu(Y)を有する前駆物質である。これらの特定のCu(I)前駆物質において、Xは有機アニオンであり、Yは中性安定化配位子、例えばトリアルキルホスフィンなどである。かかる前駆物質の一例はCpCuPEt3であり、この式のCpはシクロペンタジエニルであり、PEt3はトリエチルホスフィンである。一般的なCVD条件下で、これらの前駆物質分子のうちの2つがウエハ表面上で反応可能であり、かくして2つの安定化トリアルキルホスフィンY配位子は銅の中心から解離した状態となり、2つの(X)配位子はともに結合した状態となり、そして銅(I)の中心は金属銅へと還元される。全体的反応は以下の式(2)で示される。
【0009】
【化2】

【0010】
ただし、場合によっては、このタイプの化学反応は、脱離したトリアルキルホスフィン配位子が反応チャンバを汚染し望ましくないN型シリコンドーパントとして作用することがあることから、問題を提起する可能性がある。
【0011】
前述のとおり、銅含有フィルムを被着させるために用いられる更にもう1つのタイプの前駆物質はCu(II)前駆物質である。Cu(I)前駆物質とは異なり、Cu(II)前駆物質は、概ね不純物を含まない銅フィルムを被着させるため水素又はアルコールといったような外部還元剤を使用することを必要とする。一般的なCu(II)前駆物質の一例は化学式Cu(II)(Z)2を有し、この式の(Z)は有機アニオンである。このタイプの前駆物質の例としては、Cu(II)ビス(β−ジケトナート)、Cu(II)ビス(β−ジイミン)及びCu(II)ビス(β−ケトイミン)錯体が挙げられが、これらに限定されるわけではない。式(3)は、還元剤として水素を使用する被着反応の例を提示している。
【0012】
【化3】

【0013】
Cu(II)前駆物質は一般的に固体であり、フィルムの被着に必要とされる温度は一般的には200℃を上回る。
【0014】
銅前駆物質は配線として広く用いられているものの、電子デバイスの薄膜としてはその他の金属又は合金が使用されている。かかる金属の例として、銀(Ag)、金(Au)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、オスミウム(Os)、インジウム(In)、及びそれらの合金が挙げられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
ここには、金属含有錯体、及びその製造方法と、それを例えば被着プロセスにおける前駆物質として使用する方法が記載される。1つの側面において、次の式(I)又は(II)、すなわち、
【0016】
【化4】

【0017】
で表わされる錯体が提供され、この式中、
Mは、Cu、Au、Ag、Co、Ru、Rh、Pt、In、Pd、Ni、Os、及びそれらの混合物から選択される金属であり、
1、R2、R3及びR4は各々独立に、水素原子、式Cn2n+1を有しnが1〜20の範囲内の数であるアルキル、式Cnxyを有し、(x+y)の積が(2n+1)の積と等しくnが1〜20の範囲内の数であるフルオロアルキル、式(R53Siを有し、R5が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、フルオロアルキル、アミド又はアルコキシであるアルキルシラン、6〜18個の炭素原子を含むアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換フルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換フルオロアリール、式(CH2nO(Cm2m+1)を有し、nが1〜20の範囲内の数であり、且つmが1〜20の範囲内の数であるエーテル、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ、1〜20個の炭素原子を含むアミド基、ハロゲン原子、及びニトロ基NO2であり、
Lは、一酸化炭素、2〜20個の炭素原子を含むアルキルニトリル、式(R63SiCNを有しR6が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルニトリル、1〜20個の炭素原子を含むアルキン、式(R73SiCCR8を有し、R7が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであり、R8が各々独立して、水素原子、あるいは1〜20個の炭素原子を含むアルキル又はアルコキシであるシリルアルキン、式(R93SiCCSi(R93を有し、R9が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであるビス(シリル)アルキン、1〜20個の炭素原子を含むアルケン、1〜20個の炭素原子を含むジエン、1〜20個の炭素原子を含むトリエン、式(R103SiC(R17)C(R172を有し、R10が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるシリルアルケン、式(R113SiCR17CR17Si(R113を有し、R11が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ、又は1〜20個の炭素原子を含むアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるビス(シリル)アルケン、3〜20個の炭素を含むアレン、式(R122CCC(R122を有し、R12が各々独立して、水素原子、アルキル、式(R133Si(この式中のR13は各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドである)を有するアルキルシラン、アルコキシシラン又はアミドシランであるアレン、1〜20個の炭素原子を含むアルキルイソシアニド、式(R143SiNCを有しR14が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルイソシアニド、1〜20個の炭素原子を含むアリル、式(R153SiC(R17217C(R172を有し、R15が1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基であるアリルシラン、及び式(R163SiC(R172CR17CR17Si(R163を有し、R16が1〜20個の炭素原子を含み、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基あるビス(シリル)アリル、から選択される配位子であり、
MとLの間の有機金属結合は2つの単結合及び1つの単結合から選択される。
【0018】
もう1つの側面においては、基材を上記の式(I)又は(II)を有する錯体と接触させることを含み、この接触を錯体が反応してフィルムを形成するのに充分な条件で行う、基材上に銅を含む金属フィルムを被着させるための方法が提供される。
【0019】
更なる側面においては、金属を含むフィルムを含む電子デバイスであって、フィルムが上記の式(I)又は(II)を有する錯体を用いて被着される電子デバイスが提供される。
【0020】
更にもう1つの側面においては、上記の式(I)又は(II)を有する錯体の製造方法であって、一級アミンをβ−ジケトン化合物と反応させてβ−ケトイミン中間生成物を作り、そして金属供給源と配位子(L)の存在下で塩基を使用してβ−ケトイミン中間生成物を脱プロトン化して、式(I)又は(II)を有する錯体を生成させることを含む錯体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ここには、金属含有錯体及びその製造方法と使用方法が記載される。金属錯体は、一部の態様においては、不均化反応により反応することができる。それに代わる別の態様においては、金属錯体を還元剤の存在下で反応させることができる。該金属錯体は、例えば、CVD又はALDプロセスを含めた様々な被着プロセスにより金属又は金属含有フィルムを被着させるための前駆物質として、使用することができる。これらのプロセスでは、錯体を利用して、該錯体を適切な反応物と反応させることによってCVD又はALDにより薄い金属フィルムを成長させるために使用することができる。例えば、1つの態様では、銅含有錯体とハロゲン供給源反応物との反応で薄いハロゲン化銅のフィルムを形成することができるのに対し、もう1つの態様においては、適切な酸化剤との反応で酸化銅フィルムを得ることができる。金属フィルムは、被着されたままで使用することもでき、あるいはまた適切な還元剤を用いて金属へと還元させることもできる。
【0022】
ここに記載される金属含有錯体は、次の式(I)又は(II)を有する。
【0023】
【化5】

【0024】
上記の式において、Mは、Cu、Au、Ag、Co、Ru、Rh、Pt、In、Pd、Ni、Os、及びそれらの混合物から選択される金属である。一部の態様では、Mは銅である。上記の式において、置換基R1、R2、R3及びR4は各々独立に、水素原子、式Cn2n+1を有しnが1〜20の範囲内の数であるアルキル、式Cnxyを有し、(x+y)の積が(2n+1)の積と等しくnが1〜20の範囲内の数であるフルオロアルキル、式(R53Siを有し、R5が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、フルオロアルキル、アミド又はアルコキシであるアルキルシラン、6〜18個の炭素原子を含むアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換フルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換フルオロアリール、式(CH2nO(Cm2m+1)を有し、nが1〜20の範囲内の数であり、且つmが1〜20の範囲内の数であるエーテル、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ、1〜20個の炭素原子を含むアミド基、ハロゲン原子、又はニトロ基NO2であることができる。式(I)において、配位子Lは、一酸化炭素、2〜20個の炭素原子を含むアルキルニトリル、式(R63SiCNを有しR6が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルニトリル、1〜20個の炭素原子を含むアルキン、式(R73SiCCR8を有し、R7が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであり、R8が各々独立して、水素原子、あるいは1〜20個の炭素原子を含むアルキル又はアルコキシであるシリルアルキン、式(R93SiCCSi(R93を有し、R9が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであるビス(シリル)アルキン、1〜20個の炭素原子を含むアルケン、1〜20個の炭素原子を含むジエン、1〜20個の炭素原子を含むトリエン、式(R103SiC(R17)C(R172を有し、R10が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるシリルアルケン、式(R113SiCR17CR17Si(R113を有し、R11が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ、又は1〜20個の炭素原子を含むアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるビス(シリル)アルケン、3〜20個の炭素原子を含むアレン、式(R122CCC(R122を有し、R12が各々独立して、水素原子、アルキル、式(R133Si(この式中のR13は各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドである)を有するアルキルシラン、アルコキシシラン又はアミドシランであるアレン、1〜20個の炭素原子を含むアルキルイソシアニド、式(R143SiNCを有しR14が各々独立して1〜20個の炭素を含むアルキルであるシリルイソシアニド、1〜20個の炭素原子を含むアリル、式(R153SiC(R17217C(R172を有し、R15が1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基であるアリルシラン、及び式(R163SiC(R172CR17CR17Si(R163を有し、R16が1〜20個の炭素原子を含み、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基あるビス(シリル)アリル、から選択することができる。
【0025】
ここで使用される「アルキル」という用語は、1〜20個又は1〜10個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基を包含する。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−アミル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。「アルキル」という用語は、同様に、例えばハロアルキル、アルキルアリール又はアリールアルキルといったようなその他の基に含まれたアルキル部分にも適用される。ここで使用される「アリール」という用語は、芳香族の特性をもつ6〜18員の炭素環を含む。代表的なアリール基としては、フェニル及びナフチル基が挙げられる。「アルキル置換アリール」という用語は、アルキルで置換されているアリール部分に適用される。代表的なアルキル置換アリール基としては、トリル及びキシリル基が挙げられる。「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を包含する。「フルオロアルキル」という用語は、水素原子のうちの1つ以上がフッ素ハロゲン原子で交換されているアルキル部分に適用され、部分的に又は完全にフッ素化されていてよく、そして1〜20個又は1〜10個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖又は環状フッ素化アルキル基を包含する。代表的なフルオロアルキル基としては、−CF3、−CF2CF3、−CH2CF3、−CF2CFH2、又は−CH2CF2CF3が挙げられる。一部の態様では、ここで検討される基のうちの一部を1以上のその他の元素で、例えばハロゲン原子又はその他のヘテロ原子、例としてO、N、Si又はSなどで、置換することができる。
【0026】
一部の態様では、ここに記載される金属錯体はフッ素を含有することができる。これらの態様では、置換基R1、R2、R3及びR4のいずれか1つ又は全てが、例えばフルオロアルキル、フルオロアルキル置換アリール、フルオロアリール、アルキル置換フルオロアルキル、又はフルオロアルキル置換フルオロアリール基などのように、フッ素を含有することができる。それとは別の態様では、ここに記載される金属錯体はフッ素を含有しない。
【0027】
一部の態様においては、置換基R1、R2、R3及びR4のいずれか1つ又は全てが独立して連結されて環状構造を形成することができる。一部の態様においては、R3とR4及び/又はR1とR2を独立して連結させて環状構造を形成することができる。
【0028】
一部の態様では、金属錯体は式(II)を有する。これらの態様においては、配位子Lは例えば、アルキン又はジエンであることができ、下記の式(II)に示されているとおりに2つの金属含有ケトイミン単位に配位される。これらの態様では、金属原子Mは同じ、あるいはまた異なる金属原子であることができる。後者の態様では、これは混合金属フィルムの被着を可能にすることができる。
【0029】
【化6】

【0030】
1つの態様において、式(I)又は(II)中の配位子Lは、MeCN又はMe3CCNといった(ただしこれらに限定されるわけではない)アルキルニトリルであることができる。これに代わる別の態様においては、式(I)又は(II)の配位子Lは、Me3SiCNといった(ただしこれに限定されるわけではない)シリルニトリルであることができる。更なる態様においては、式(I)又は(II)の配位子Lは、MeCCMe又はMeCCHといった(ただしこれらに限定されるわけではない)アルキンであることができる。もう1つの態様においては、式(I)又は(II)の配位子Lは、Me3CCHCH2又はMe(CH22CHCH2といった(ただしこれらに限定されるわけではない)アルケンであることができる。更にもう1つの態様においては、式(I)又は(II)の配位子Lは、式(R103SiCR17C(R172をもつシリルアルケン又は式(R113SiCR17CR17Si(R113をもつビス(シリル)アルケン、例えばMe3SiCHCH2、Me3SiCHCHSiMe3、(MeO)3SiCHCH2又は(EtO)3SiCHCH2といったもの(ただしこれらに限定されるわけではない)であることができる。更に別の態様では、式(I)又は(II)の配位子Lは、CH2CCCH2又はMe2CCCMe2といった(ただしこれらに限定されるわけではない)アレンであることができる。もう1つの態様では、式(I)又は(II)の配位子Lは、Me3CNCといった(ただしこれに限定されるわけではない)アルキルイソシアニドであることができる。更なる態様では、式(I)又は(II)の配位子Lは、式(R153SiC(R172CR17C(R172を有するアリルシラン、例えば(MeO)3SiCH2CHCH2、(i−Pr)3SiCH2CHCH2及びMe3SiCH2CHCH2といったもの(ただしこれらに限定されるわけではない)、であることができる。上記の式において、またこの明細書全体を通して、「Me」という用語はメチル基を表し、「Et」はエチル基を、そして「i−Pr」はイソプロピル基を表わす。
【0031】
上記の式(I)及び(II)において、金属原子(M)と配位子(L)の間の有機金属結合は、2つの単結合か又は1つの単結合のいずれかである。一部の態様においては、Lと金属原子のうちの少なくとも1つ、Oと金属原子、及び/又はNと金属原子、の間の結合エネルギーは、錯体の残部で見られる結合エネルギーよりも弱いものであり得る。これは、特定の場合且つ特定のプロセス条件下では、錯体がこれらの特定の結合のところでその構成成分へと容易に解離するのを可能にすることができるものと考えられる。
【0032】
1つの態様においては、ここに記載されている金属錯体は、アミンをβ−ジケトン化合物と反応させてβ−ケトイミン中間生成物を生成させることによって合成可能である。アミンは、例えば、式H2NR4を有しR4が上述の基又は原子のうちのいずれか1つであることができる一級アミンでよい。上記の式をもつ一級アミンの非限定の例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミンが挙げられる。β−ジケトンは、式R1C(O)CHR2C(O)R3を有しR1、R2及びR3が各々独立して上述の基又は原子のいずれか1つであることができる化合物でよい。上記の式を有するβ−ジケトン化合物の非限定の例としては、2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン及び3,5−ヘプタンジオンが挙げられる。
【0033】
アミンとβ−ジケトン化合物との反応は、溶媒の存在下で行うことができる。適切な溶媒としては、エーテル(例えばジエチルエーテル(Et2O)、テトラヒドロフラン(THF)、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、又はエチレングリコールジメチルエーテル)、ニトリル(例えばCH3CN)、又は芳香族化合物(例えばトルエン)が、単独で又はその混合物でもって、挙げられるが、これらに限定されるわけではない。一部の態様においては、溶媒はTHFである。反応温度は−78℃から溶媒の沸点に至る範囲内でよい。反応時間は、約0時間つまり瞬間的から約48時間まで、又は約4時間から約12時間までの範囲内でよい。一部の態様においては、中間生成物を、蒸留、クロマトグラフィ、再結晶化、及び/又は粉砕といったような標準的な手段によって精製してもよい。しかしながら、場合によっては、特に結果として得られたβ−ケトイミン中間生成物が液体である場合には、アミンとβ−ジケトン化合物との反応は溶媒の不存在下で実施してもよい。
【0034】
一部の態様において、β−ケトイミン中間生成物は、下記の式(III)、(IV)又は(V)をもつ3つの互変異性体のうちの1種以上であることができる。
【0035】
【化7】

【0036】
上記の式中、可変置換基R1、R2、R3及びR4は各々独立に、ここに記載されている原子又は基のうちのいずれかであることができる。
【0037】
一部の態様においては、β−ジケトン化合物は、アミンとの反応に先立って活性化される必要があるかもしれない。これらの態様では、β−ジケトン化合物は、例えばシリル化又はハロゲン化プロセスにより活性化させることができる。
【0038】
1つの特定の態様においては、ここに記載された式(I)を有しMがCuである金属錯体を、1種以上の塩基を用いたアミンとβ−ジケトンとの反応由来のβ−ケトイミン中間生成物を脱プロトン化し(すなわち酸性プロトンを除去し)、次に安定化配位子(L)の存在下でCu(I)にキレート化させることによって調製することが可能である。この反応の非限定の例を、下記の式(4)でもって例示する。
【0039】
【化8】

【0040】
式(4)では、式(V)の化合物であるβ−ケトイミン中間生成物を、n−ブチルリチウムである塩基、塩化銅である銅(I)供給源、及びここに記載された配位子(L)のうちのいずれか1つである安定化配位子(L)の存在下で反応させて、上述のとおりのCu(I)錯体と塩化リチウムを生成させる。上記の反応で使用することができるその他の塩基には、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムビス(トリメチルシリルアミド)、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムt−ブトキシドなどが含まれるが、塩基はこれらに限定されるわけではない。上記の反応において使用することができる銅(I)のその他の供給源には、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、トリフルオロ酢酸銅(I)、トリフルオロメチルスルホン酸銅(I)ベンキセン(benxene)付加物、銅(I)アルコキシド、銅(I)アミド、酢酸銅(I)、銅(I)フェノキシド、銅(I)アセトアミド、及び銅(I)アルコキシドが含まれるが、銅(I)供給源はこれらに限定されるわけではない。その他の金属又は混合金属錯体が調製される態様においては、金属供給源は所望の金属Mを含有する1種以上の金属塩である。金属又はCu(I)錯体の予想収量は、理論収量の約5%〜約95%の範囲内であることができる。一部の態様においては、最終生成物又は金属錯体は、蒸留、昇華、クロマトグラフィ、再結晶化及び/又は粉砕といったような標準的手段により精製可能である。
【0041】
Mが銅である一部の態様においては、最初にその類縁の銅(II)ビス(ケトイミン)錯体を合成し、次にそれらを安定化配位子Lの存在下で金属銅と反応させることによって調製することができる。
【0042】
Mが銅である別の態様においては、β−ケトイミン中間生成物を銅メシチレンといった銅(I)アリールと直接反応させて、式(I)をもつCu(I)錯体を生成することができる。更なる態様においては、Cu(I)錯体をその構成部分、すなわちβ−ケトイミン中間生成物、安定化配位子(L)、及びCu(I)原子から、適切な電気化学プロセスでもって調製することができる。
【0043】
前述のとおり、ここに記載されている金属錯体は、基材上に金属フィルム、金属含有フィルム、又はその合金フィルムを被着するための前駆物質として使用可能である。適切な基材の例としては、ガリウム砒素(GaAs)、窒化ホウ素(BN)、シリコン、及びケイ素を含む組成物、例えば結晶性ケイ素、ポリシリコン、アモルファスシリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化ケイ素(SiO2)、炭化ケイ素(SiC)、酸炭化ケイ素(SiOC)、窒化ケイ素(SiN)、炭窒化ケイ素(SiCN)、有機ケイ酸塩ガラス(OSG)、有機フッ化ケイ酸塩ガラス(OFSG)、フッ化ケイ酸塩ガラス(FSG)など、といった半導体材料、及びその他の適切な基材又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。基材は更に、例えば反射防止コーティング、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔質の有機及び無機材料、銅やアルミニウムといった金属、又は拡散バリア層などのような、フィルムが適用される種々の層を含むことができる。金属錯体は、ここに記載されているか又は当該技術分野において既知の技術のいずれかを使用して被着させることができる。被着技術の例としては、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、プラズマ補助化学蒸着(PACVD)、及びプラズマ強化化学蒸着(PECVD)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0044】
一部の態様では、金属錯体をCVD又はALD技術を用いて基材上に被着させる。金属錯体の被着は、400℃以下、又は200℃以下、又は100℃以下の温度で実施可能である。一般的なCVD被着プロセスにおいては、金属錯体は真空チャンバといったような反応チャンバに導入される。一部の態様においては、金属錯体のほかに、その他の化学反応物を、金属錯体の導入の前、間、及び/又は後に導入することができる。例えば熱、プラズマ又はその他の供給源といったエネルギー源が、金属錯体及び任意の化学反応物にエネルギーを与え、かくして基材の少なくとも一部分の上にフィルムを形成する。
【0045】
前述のとおり、一部の態様においては、反応チャンバへの金属錯体の導入の前、間、及び/又は後に化学反応物を導入することができる。化学反応物の選択は、結果として得られる所望のフィルムの組成によって左右され得る。例えば、1つの態様では、ハロゲン含有化学反応物との反応で金属ハロゲン化物のフィルムを形成することができ、それに対しもう1つの態様では、酸化剤化学反応物との反応から金属酸化物フィルムが得られる。代表的な化学反応物としては、酸化剤(すなわちO2、NO、NO2、O3、CO、CO2など)、水、ハロゲン化物、ハロゲン含有シランや、アルキルクロロシラン、アルキルブロモシラン、又はアルキルヨードシランや、四塩化シラン、四臭化シラン又は四ヨウ化シランといったハロゲン化ケイ素錯体や、アルキルクロロスタナン、アルキルブロモスタナン又はアルキルヨードスタナンといったハロゲン化スズ錯体や、アルキルクロロゲルマン、アルキルブロモゲルマン又はアルキルヨードゲルマンといったゲルマン錯体や、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素又は三ヨウ化ホウ素といった三ハロゲン化ホウ素錯体や、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム又はヨウ化アルミニウムといったハロゲン化アルミニウム錯体や、ハロゲン化アルキルアルミニウムや、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム又は三ヨウ化ガリウムといったハロゲン化ガリウム錯体や、あるいはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上述の錯体の誘導体もやはり使用可能であるということも想定される。化学反応物は、反応チャンバへガスとして直接送給してもよく、気化した液体、昇華した固体として送給してもよく、及び/又は不活性キャリヤガスにより反応チャンバへ移送してもよい。不活性キャリヤガスの例としては、窒素、水素、アルゴン、キセノンなどが挙げられる。
【0046】
一部の態様においては、下記の式5で示されるCu(I)錯体について表されたもののような不均化反応により、下記に示すようにMがCuであるような金属フィルムを基材表面上に形成することができる。
【0047】
【化9】

【0048】
もう1つの態様においては、例えばフィルムを還元して所望の金属にするため、還元剤の存在下で基材の表面上にここに記載される金属のうちのいずれか1つを含むフィルムを被着させることができる。式(I)又は(II)を有する金属錯体を、還元剤とともにCVD又はALD反応装置内に導入することが可能である。還元剤は一般的に気体形態で導入される。適切な還元剤の例としては、アルコール、水素ガス、水素プラズマ、遠隔水素プラズマ、シラン(すなわち、ジエチルシラン、エチルシラン、ジメチルシラン、フェニルシラン、シラン、ジシラン、アミノシラン)、ボラン(すなわち、ボラン、ジボラン)、アラン、ゲルマン、ヒドラジン、アンモニア、又はそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0049】
一部の態様においては、ALD被着プロセスにより式(I)又は(II)を有する錯体から金属フィルムを被着させる。一般的なALDプロセスの際には、基材を収容した処理チャンバ内へ、1種以上の気体の又は気化した前駆物質を1の処理サイクル中に交番パルスでもって導入する。好ましくは、各プロセスサイクルで、吸着により、好ましくは化学吸着により、材料のわずかにほぼ1つだけの単分子層を形成する。層を成長させるのに用いられるプロセスサイクルの数は、所望の厚みに依存するが、一般には1000サイクルを超えることができる。半導体デバイスの場合は、プロセスサイクルはデュアルダマシン構造内のバリア又はシード層がその所望の機能を果たすのに充分な厚みになるまで反復される。
【0050】
ALDでの処理の間、基材は、化学吸着を促進する温度範囲、すなわち、吸着された種と下地基材との完全な結合を維持するのに充分低いが、前駆物質の凝縮を回避しそして各プロセスサイクルにおける所望の表面反応に充分な活性化エネルギーを提供するのに充分高い温度範囲に保たれる。プロセスチャンバ温度は0℃〜400℃、又は0℃〜300℃、又は0℃〜275℃の範囲でよい。ALDで処理中のプロセスチャンバ内の圧力は、0.1〜1000Torr、0.1〜15Torr、又は0.1〜10Torrの範囲内でよい。ただし、いずれかの特定のALDプロセスのための温度及び圧力は、関係する1以上の前駆物質に応じていろいろになり得る。
【0051】
ここに記載される上述のフィルム形成方法のいずれか、そしてまた当該技術分野において既知のその他のフィルム形成方法を、単独にあるいは組合せて使用可能である。例えば、1つの態様においては、酸化銅フィルムとそれに続いて金属銅フィルムを順次被着させ、次に多重層を還元して純銅フィルムを提供することによって、混合組成の銅含有フィルムを形成することができる。
【0052】
一部の態様では、ここに記載している金属錯体を、アミン(例えばトリエチルアミン)、エーテル(例えばTHF)、芳香族(例えばトルエン)、又はここに開示しているその他の任意の溶媒といったような適切な溶媒に溶解させて、溶液を作ることが可能である。結果として得られた溶液は、ALD又はCVD反応チャンバへの蒸気の送給のため直接液体注入(DLI)システムでフラッシュ蒸発させることができる。その他の態様では、ここに記載される錯体を、DLIシステムへの導入に先立ちオレフィン又はアルキンといったような安定化液体に溶解させることができる。
【実施例】
【0053】
以下の例においては、日立社のS−750走査型電子顕微鏡によりEDX分析を行った。これらの例のG.C.M.S.スペクトルは、Hewlett Packard 5890シリーズ11G.C.、及びHP−5MSを備えた5972シリーズの質量選択検出器で行った。各例のためのNMR分析は、500MHz(1H)で動作するBruker AMX 500分光計で行った。化学シフトは、C66に基づいて、1Hで7.16ppm、そして13Cで128.39ppmに設定した。X線分析は、APEX CCD検出器とKryoflexの低温保持装置を装備したBruker D8プラットフォーム回折計で行なった。
【0054】
〔例1〕
この例は、R1、R3及びR4がメチル基でありR2が水素であるβ−ケトイミン中間生成物の合成を説明する。
溶剤テトラヒドロフラン(THF)中で約1モル濃度の混合物となるよう、等モル量の2,4−ペンタンジオンとメチルアミンを混合し、一晩撹拌して溶液を用意した。この溶液を過剰の無水硫酸ナトリウム上で一晩放置した。翌日、溶液を硫酸ナトリウムからデカンテーションし、3Aモレキュラーシーブ上で乾燥させた。次の日に、残りのTHFを真空下で溶液からストリッピングし、結果として得られた固体を50℃で昇華させた。最終生成物の白色結晶質固体を集め、窒素下で保管した。G.C.M.S.による純度は98%より高いことがわかった。
【0055】
〔例2〕
この例は、Cu(I)(MeC(O)CHC(NMe)Me)(トリメチルビニルシラン)錯体の合成を説明する。
乾燥ヘキサン約100ミリリットル(ml)中に、例1において説明した方法に従って調製したβ−ケトイミン中間生成物2.26グラム(0.022モル)を溶解させることにより、窒素雰囲気下で第1の溶液を調製し、これを次いで0℃まで冷却した。溶液が0℃に達した後、8mlの2.5M濃度のn−ブチルリチウム(0.02モル)を10分間にわたり第1の溶液に徐々に添加した。第1の溶液を60分間0℃で撹拌し、次に室温まで温め、その時点で更に2時間撹拌した。別の容器中で、2.2g(0.22モル)のトリメチルビニルシランを含有する20mlの乾燥ヘキサンと塩化銅2.0g(0.02モル)を含む第2の混合物を調製し、これを窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。次に、第1の溶液を30分にわたり第2の混合物に一滴ずつ添加し、その後混合物を一晩撹拌した。
【0056】
翌日、混合物を窒素雰囲気下でろ過し、ヘキサン溶剤を真空下でストリッピングにより除去して、固体の粗生成物を得た。この固体粗生成物を30℃の温度、20mTorrの圧力、8℃のコールドフィンガーで昇華させて、収率47%、融点範囲36〜37℃の黄色い結晶質固体として、所望の銅錯体2.62gを得た。この銅錯体生成物についてのNMRの結果は次のとおり、すなわち、1H NMR(500MHz,C66): δ=0.24(s,9H)、δ=1.57(s,3H)、δ=2.09(s,3H)、δ=2.85(s,3H)、δ=3.6(d,1H)、δ=3.76(d,1H)、δ=3.96(dd,1H)、13C NMR(500MHz,C66): δ=0.2(s,1C)、δ=21.5(s,1C)、δ=27.9(s,1C)、δ=42.7(s,1C)、δ=77.5(s,1C)、δ=86.3(s,1C)、δ=97.7(s,1C)、δ=170.1(s,1C)、δ=180.7(s,1C)、であった。生成物、すなわちCu(I)(MeC(O)CHC(NMe)Me)(トリメチルビニルシラン)錯体の構造は図1に提示されており、室温での昇華により成長させた単結晶のX線回折により得られた。
【0057】
〔例3〕
この例は、Cu(I)(MeC(O)CHC(NMe)Me)(トリメチルビニルシラン)を用いたCVD蒸着を説明する。
TiNの200オングストロームの厚みの拡散層でコーティングされた3cm×1cmのシリコンウエハを、米国特許第5098516号明細書の図1に描かれたもののような小型CVD反応装置のチャンバ内に入れた。このウエハを35mTorrの真空下で165℃の温度まで加熱した。反応装置に、Cu(I)(MeC(O)CHC(NMe)Me)(トリメチルビニルシラン)前駆物質の100mgの試料からの蒸気を導入し、加熱した基材表面と接触させた。前駆物質蒸気を合計50分間流し、その間に銅色のフィルムが窒化チタンの表面に成長するのを観察した。その後、前駆物質の流れを止め、熱及び真空を遮断した。上にフィルムが被着した基材を、それが室温まで冷えたところで取り出した。フィルムのEDX分析から、図2に示されているようにフィルムが検出可能な炭素を含まない銅で構成されていることが示された。
【0058】
〔例4〕
この例は、不均化反応とCu(II)(MeC(O)CHC(NMe)Me)2副生物の揮発性を実証する。
この例は、被着反応が不均化反応により進行することを実証する。例2に従って調製された昇華させたCu(I)(MeC(O)CHC(NMe)Me)(トリメチルビニルシラン)錯体の2.0M THF溶液約2.0マイクロリットルを、ガスクロマトグラフィ/質量分析計に注入した。この装置では、注入した試料をまず最初に約150〜200℃の加熱ステージ上でフラッシュ蒸発させ、その結果得られた蒸気を毛管ガスクロマトグラフィカラムに供給して、そこでその構成成分へと分離し、次いでそれらを質量分析計により同定する。この毛管ガスクロマトグラフィカラムに供給された蒸気は、トリメチルビニルシランとCu(II)(MeC(O)CHC(NMe)Me)2であることがわかり、加熱されたステージ上で不均化反応が起こったことが示された。
【0059】
このCVD不均化反応のCu(II)(MeC(O)CHC(NMe)Me)2副生物の揮発性を明らかにするために、Cu(I)(MeC(O)CHC(NMe)Me)(トリメチルビニルシラン)錯体の不均化反応によって調製された副生物の試料を、微量天秤内に載せ、定常的に流動する乾燥窒素流中で100℃に加熱した。図3に示されている、試料の定常的で且つ一様な重量損失は、この種の揮発性を示している。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ここに記載されている銅を含む錯体の1つ、すなわちCu(I)(MeC(O)CHC(NMe)Me)(トリメチルビニルシラン)の代表的構造を提示する図である。
【図2】Cu(I)(MeC(O)CHC(NMe)Me)(トリメチルビニルシラン)を用いたCVD蒸着により被着されたフィルムのEDX分析の結果を提示する図である。
【図3】周囲圧力で乾燥窒素の流動流の下で100℃に加熱された不均化反応のCu(II)(MeC(O)CHC(NMe)Me)2副生物の経時的重量損失を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)又は(II)で表わされる錯体。
【化1】

(式中、
Mは、Cu、Au、Ag、Co、Ru、Rh、Pt、In、Pd、Ni、Os、及びそれらの混合物から選択される金属であり、
1、R2、R3及びR4は各々独立に、水素原子、式Cn2n+1を有しnが1〜20の範囲内の数であるアルキル、式Cnxyを有し、(x+y)の積が(2n+1)の積と等しくnが1〜20の範囲内の数であるフルオロアルキル、式(R53Siを有し、R5が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、フルオロアルキル、アミド又はアルコキシであるアルキルシラン、6〜18個の炭素原子を含むアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換フルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換フルオロアリール、式(CH2nO(Cm2m+1)を有し、nが1〜20の範囲内の数であり、且つmが1〜20の範囲内の数であるエーテル、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ、1〜20個の炭素原子を含むアミド基、ハロゲン原子、及びニトロ基NO2であり、
Lは、一酸化炭素、2〜20個の炭素原子を含むアルキルニトリル、式(R63SiCNを有しR6が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルニトリル、1〜20個の炭素原子を含むアルキン、式(R73SiCCR8を有し、R7が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであり、R8が各々独立して、水素原子、あるいは1〜20個の炭素原子を含むアルキル又はアルコキシであるシリルアルキン、式(R93SiCCSi(R93を有し、R9が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであるビス(シリル)アルキン、1〜20個の炭素原子を含むアルケン、1〜20個の炭素原子を含むジエン、1〜20個の炭素原子を含むトリエン、式(R103SiC(R17)C(R172を有し、R10が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるシリルアルケン、式(R113SiCR17CR17Si(R113を有し、R11が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ、又は1〜20個の炭素原子を含むアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるビス(シリル)アルケン、3〜20個の炭素を含むアレン、式(R122CCC(R122を有し、R12が各々独立して、水素原子、アルキル、式(R133Si(この式中のR13は各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドである)を有するアルキルシラン、アルコキシシラン又はアミドシランであるアレン、1〜20個の炭素原子を含むアルキルイソシアニド、式(R143SiNCを有しR14が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルイソシアニド、1〜20個の炭素原子を含むアリル、式(R153SiC(R17217C(R172を有し、R15が1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基であるアリルシラン、及び式(R163SiC(R172CR17CR17Si(R163を有し、R16が1〜20個の炭素原子を含み、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基あるビス(シリル)アリル、から選択される配位子であり、
MとLの間の有機金属結合は2つの単結合及び1つの単結合から選択される)
【請求項2】
MがCuである、請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
置換基R1とR2、R2とR3、及びR3とR4のうちの少なくとも1つが連結して環状構造を形成する、請求項1に記載の錯体。
【請求項4】
置換基R3とR4が連結して環状構造を形成する、請求項3に記載の錯体。
【請求項5】
置換基R1とR2が連結して環状構造を形成する、請求項3に記載の錯体。
【請求項6】
式(I)を有する、請求項1に記載の錯体。
【請求項7】
式(II)を有する、請求項1に記載の錯体。
【請求項8】
2つのM原子が同じである、請求項7に記載の錯体。
【請求項9】
2つのM原子が異なるものである、請求項7に記載の錯体。
【請求項10】
基材上に金属を含むフィルムを被着させる方法であって、基材を下記の式(I)又は(II)を有する金属錯体と接触させることを含み、当該接触を当該錯体が反応しフィルムを形成するのに充分な条件で行う、フィルムの被着方法。
【化2】

(式中、
Mは、Cu、Au、Ag、Co、Ru、Rh、Pt、In、Pd、Ni、Os、及びそれらの混合物から選択される金属であり、
1、R2、R3及びR4は各々独立に、水素原子、式Cn2n+1を有しnが1〜20の範囲内の数であるアルキル、式Cnxyを有し、(x+y)の積が(2n+1)の積と等しくnが1〜20の範囲内の数であるフルオロアルキル、式(R53Siを有し、R5が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、フルオロアルキル、アミド又はアルコキシであるアルキルシラン、6〜18個の炭素原子を含むアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換フルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換フルオロアリール、式(CH2nO(Cm2m+1)を有し、nが1〜20の範囲内の数であり、且つmが1〜20の範囲内の数であるエーテル、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ、1〜20個の炭素原子を含むアミド基、ハロゲン原子、及びニトロ基NO2であり、
Lは、一酸化炭素、2〜20個の炭素原子を含むアルキルニトリル、式(R63SiCNを有しR6が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルニトリル、1〜20個の炭素原子を含むアルキン、式(R73SiCCR8を有し、R7が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであり、R8が各々独立して、水素原子、あるいは1〜20個の炭素原子を含むアルキル又はアルコキシであるシリルアルキン、式(R93SiCCSi(R93を有し、R9が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであるビス(シリル)アルキン、1〜20個の炭素原子を含むアルケン、1〜20個の炭素原子を含むジエン、1〜20個の炭素原子を含むトリエン、式(R103SiC(R17)C(R172を有し、R10が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるシリルアルケン、式(R113SiCR17CR17Si(R113を有し、R11が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ、又は1〜20個の炭素原子を含むアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるビス(シリル)アルケン、3〜20個の炭素を含むアレン、式(R122CCC(R122を有し、R12が各々独立して、水素原子、アルキル、式(R133Si(この式中のR13は各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドである)を有するアルキルシラン、アルコキシシラン又はアミドシランであるアレン、1〜20個の炭素原子を含むアルキルイソシアニド、式(R143SiNCを有しR14が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルイソシアニド、1〜20個の炭素原子を含むアリル、式(R153SiC(R17217C(R172を有し、R15が1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基であるアリルシラン、及び式(R163SiC(R172CR17CR17Si(R163を有し、R16が1〜20個の炭素原子を含み、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基あるビス(シリル)アリル、から選択される配位子であり、
MとLの間の有機金属結合は2つの単結合及び1つの単結合から選択される)
【請求項11】
金属を含むフィルムを含む電子デバイスであって、当該フイルムが下記の式(I)又は(II)を有する少なくとも1種の金属錯体を含む前駆物質混合物から被着されている電子デバイス。
【化3】

(式中、
Mは、Cu、Au、Ag、Co、Ru、Rh、Pt、In、Pd、Ni、Os、及びそれらの混合物から選択される金属であり、
1、R2、R3及びR4は各々独立に、水素原子、式Cn2n+1を有しnが1〜20の範囲内の数であるアルキル、式Cnxyを有し、(x+y)の積が(2n+1)の積と等しくnが1〜20の範囲内の数であるフルオロアルキル、式(R53Siを有し、R5が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、フルオロアルキル、アミド又はアルコキシであるアルキルシラン、6〜18個の炭素原子を含むアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換フルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換フルオロアリール、式(CH2nO(Cm2m+1)を有し、nが1〜20の範囲内の数であり、且つmが1〜20の範囲内の数であるエーテル、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ、1〜20個の炭素原子を含むアミド基、ハロゲン原子、及びニトロ基NO2であり、
Lは、一酸化炭素、2〜20個の炭素原子を含むアルキルニトリル、式(R63SiCNを有しR6が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルニトリル、1〜20個の炭素原子を含むアルキン、式(R73SiCCR8を有し、R7が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであり、R8が各々独立して、水素原子、あるいは1〜20個の炭素原子を含むアルキル又はアルコキシであるシリルアルキン、式(R93SiCCSi(R93を有し、R9が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであるビス(シリル)アルキン、1〜20個の炭素原子を含むアルケン、1〜20個の炭素原子を含むジエン、1〜20個の炭素原子を含むトリエン、式(R103SiC(R17)C(R172を有し、R10が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるシリルアルケン、式(R113SiCR17CR17Si(R113を有し、R11が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ、又は1〜20個の炭素原子を含むアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるビス(シリル)アルケン、3〜20個の炭素を含むアレン、式(R122CCC(R122を有し、R12が各々独立して、水素原子、アルキル、式(R133Si(この式中のR13は各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドである)を有するアルキルシラン、アルコキシシラン又はアミドシランであるアレン、1〜20個の炭素原子を含むアルキルイソシアニド、式(R143SiNCを有しR14が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルイソシアニド、1〜20個の炭素原子を含むアリル、式(R153SiC(R17217C(R172を有し、R15が1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基であるアリルシラン、及び式(R163SiC(R172CR17CR17Si(R163を有し、R16が1〜20個の炭素原子を含み、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基あるビス(シリル)アリル、から選択される配位子であり、
MとLの間の有機金属結合は2つの単結合及び1つの単結合から選択される)
【請求項12】
式(I)又は(II)、すなわち、
【化4】

(式中、
Mは、Cu、Au、Ag、Co、Ru、Rh、Pt、In、Pd、Ni、Os、及びそれらの混合物から選択される金属であり、
1、R2、R3及びR4は各々独立に、水素原子、式Cn2n+1を有しnが1〜20の範囲内の数であるアルキル、式Cnxyを有し、(x+y)の積が(2n+1)の積と等しくnが1〜20の範囲内の数であるフルオロアルキル、式(R53Siを有し、R5が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、フルオロアルキル、アミド又はアルコキシであるアルキルシラン、6〜18個の炭素原子を含むアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換フルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換フルオロアリール、式(CH2nO(Cm2m+1)を有し、nが1〜20の範囲内の数であり、且つmが1〜20の範囲内の数であるエーテル、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ、1〜20個の炭素原子を含むアミド基、ハロゲン原子、及びニトロ基NO2であり、
Lは、一酸化炭素、2〜20個の炭素原子を含むアルキルニトリル、式(R63SiCNを有しR6が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルニトリル、1〜20個の炭素原子を含むアルキン、式(R73SiCCR8を有し、R7が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであり、R8が各々独立して、水素原子、あるいは1〜20個の炭素原子を含むアルキル又はアルコキシであるシリルアルキン、式(R93SiCCSi(R93を有し、R9が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであるビス(シリル)アルキン、1〜20個の炭素原子を含むアルケン、1〜20個の炭素原子を含むジエン、1〜20個の炭素原子を含むトリエン、式(R103SiC(R17)C(R172を有し、R10が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるシリルアルケン、式(R113SiCR17CR17Si(R113を有し、R11が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ、又は1〜20個の炭素原子を含むアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるビス(シリル)アルケン、3〜20個の炭素を含むアレン、式(R122CCC(R122を有し、R12が各々独立して、水素原子、アルキル、式(R133Si(この式中のR13は各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドである)を有するアルキルシラン、アルコキシシラン又はアミドシランであるアレン、1〜20個の炭素原子を含むアルキルイソシアニド、式(R143SiNCを有しR14が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルイソシアニド、1〜20個の炭素原子を含むアリル、式(R153SiC(R17217C(R172を有し、R15が1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基であるアリルシラン、及び式(R163SiC(R172CR17CR17Si(R163を有し、R16が1〜20個の炭素原子を含み、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基あるビス(シリル)アリル、から選択される配位子であり、
MとLの間の有機金属結合は2つの単結合及び1つの単結合から選択される)
を有する金属錯体を製造する方法であって、
一級アミンをβ−ジケトン化合物と反応させてβ−ケトイミン中間生成物を作ること、及び
金属供給源及び配位子(L)の存在下で塩基を用いて当該β−ケトイミン中間生成物を脱プロトン化して、式(I)又は(II)を有する銅錯体を生成させること、
を含む金属錯体製造方法。
【請求項13】
Cu(I)(MeC(O)CHC(NMe)Me)(トリメチルビニルシラン)。
【請求項14】
次の式で表される錯体。
【化5】

(式中、
1、R2、R3及びR4は各々独立に、水素原子、式Cn2n+1を有しnが1〜20の範囲内の数であるアルキル、式Cnxyを有し、(x+y)の積が(2n+1)の積と等しくnが1〜20の範囲内の数であるフルオロアルキル、式(R53Siを有し、R5が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、フルオロアルキル、アミド又はアルコキシであるアルキルシラン、6〜18個の炭素原子を含むアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換フルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換フルオロアリール、式(CH2nO(Cm2m+1)を有し、nが1〜20の範囲内の数であり、且つmが1〜20の範囲内の数であるエーテル、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ、1〜20個の炭素原子を含むアミド基、ハロゲン原子、及びニトロ基NO2であり、
Lは、一酸化炭素、2〜20個の炭素原子を含むアルキルニトリル、式(R63SiCNを有しR6が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルニトリル、1〜20個の炭素原子を含むアルキン、式(R73SiCCR8を有し、R7が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであり、R8が各々独立して、水素原子、あるいは1〜20個の炭素原子を含むアルキル又はアルコキシであるシリルアルキン、式(R93SiCCSi(R93を有し、R9が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであるビス(シリル)アルキン、1〜20個の炭素原子を含むアルケン、1〜20個の炭素原子を含むジエン、1〜20個の炭素原子を含むトリエン、式(R103SiC(R17)C(R172を有し、R10が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるシリルアルケン、式(R113SiCR17CR17Si(R113を有し、R11が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ、又は1〜20個の炭素原子を含むアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるビス(シリル)アルケン、3〜20個の炭素を含むアレン、式(R122CCC(R122を有し、R12が各々独立して、水素原子、アルキル、式(R133Si(この式中のR13は各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドである)を有するアルキルシラン、アルコキシシラン又はアミドシランであるアレン、1〜20個の炭素原子を含むアルキルイソシアニド、式(R143SiNCを有しR14が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルイソシアニド、1〜20個の炭素原子を含むアリル、式(R153SiC(R17217C(R172を有し、R15が1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基であるアリルシラン、及び式(R163SiC(R172CR17CR17Si(R163を有し、R16が1〜20個の炭素原子を含み、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基あるビス(シリル)アリル、から選択される配位子であり、
MとLの間の有機金属結合は2つの単結合及び1つの単結合から選択される)
【請求項15】
次の式で表される錯体。
【化6】

(式中、
1、R2、R3及びR4は各々独立に、水素原子、式Cn2n+1を有しnが1〜20の範囲内の数であるアルキル、式Cnxyを有し、(x+y)の積が(2n+1)の積と等しくnが1〜20の範囲内の数であるフルオロアルキル、式(R53Siを有し、R5が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、フルオロアルキル、アミド又はアルコキシであるアルキルシラン、6〜18個の炭素原子を含むアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換アリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むアルキル置換フルオロアリール、6〜18個の炭素原子を含むフルオロアルキル置換フルオロアリール、式(CH2nO(Cm2m+1)を有し、nが1〜20の範囲内の数であり、且つmが1〜20の範囲内の数であるエーテル、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ、1〜20個の炭素原子を含むアミド基、ハロゲン原子、及びニトロ基NO2であり、
Lは、一酸化炭素、2〜20個の炭素原子を含むアルキルニトリル、式(R63SiCNを有しR6が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルニトリル、1〜20個の炭素原子を含むアルキン、式(R73SiCCR8を有し、R7が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであり、R8が各々独立して、水素原子、あるいは1〜20個の炭素原子を含むアルキル又はアルコキシであるシリルアルキン、式(R93SiCCSi(R93を有し、R9が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アミド又はアルコキシであるビス(シリル)アルキン、1〜20個の炭素原子を含むアルケン、1〜20個の炭素原子を含むジエン、1〜20個の炭素原子を含むトリエン、式(R103SiC(R17)C(R172を有し、R10が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるシリルアルケン、式(R113SiCR17CR17Si(R113を有し、R11が各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ、又は1〜20個の炭素原子を含むアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子を含むアルキル基であるビス(シリル)アルケン、3〜20個の炭素を含むアレン、式(R122CCC(R122を有し、R12が各々独立して、水素原子、アルキル、式(R133Si(この式中のR13は各々独立して、1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドである)を有するアルキルシラン、アルコキシシラン又はアミドシランであるアレン、1〜20個の炭素原子を含むアルキルイソシアニド、式(R143SiNCを有しR14が各々独立して1〜20個の炭素原子を含むアルキルであるシリルイソシアニド、1〜20個の炭素原子を含むアリル、式(R153SiC(R17217C(R172を有し、R15が1〜20個の炭素原子を含むアルキル、アルコキシ又はアミドであり、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基であるアリルシラン、及び式(R163SiC(R172CR17CR17Si(R163を有し、R16が1〜20個の炭素原子を含み、R17が独立して、水素原子、又は1〜20個の炭素原子をもつアルキル基あるビス(シリル)アリル、から選択される配位子であり、
MとLの間の有機金属結合は2つの単結合及び1つの単結合から選択される)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−241137(P2006−241137A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−149(P2006−149)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】