説明

搬送システム及び搬送システム用プログラム

【課題】搬送制御負荷の軽減を図りながらも、制御が複雑になることを抑制することができるとともに設計の自由度を図ることができる搬送システム及び搬送システム用プログラムを提供する。
【解決手段】複数のコントローラC1,C2に同一の走行制御用データをそれぞれ記憶させるデータ記憶手段18と、搬送経路中の全てのステーションの位置情報を複数のコントローラC1,C2にそれぞれ記憶させるステーション位置記憶手段と、搬送車を走行させるための搬送経路を決定する2つのステーションを対とする複数の搬送経路情報を複数のコントローラC1,C2にそれぞれ割り当てて記憶させる割り当て手段14と、選択された2つのステーションの位置情報から搬送経路情報を取得し、複数のコントローラの中から取得した搬送経路情報が割り当てられたコントローラを特定するためのコントローラ特定手段15とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を受け取ってから受け渡すための複数のステーションを備え、それらステーションのうちの搬送開始位置となるステーションと搬送終了位置となるステーションとが選択された2つのステーション間の搬送経路に沿って搬送対象物を搬送するための搬送車を走行制御する複数のコントローラを備えている搬送システム及び搬送システム用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記搬送システムでは、例えば、搬送経路を2つのゾーンに区分けし、それら2つのゾーンに対応して搬送車の走行を制御する2つのゾーンコントローラを備えるとともに、これらゾーンコントローラを管理する管理コントローラを備えている。
前記各ゾーンコントローラには、各ゾーンに対応する送受信手段と、演算処理等を可能とする電子回路とが設けられ、それぞれのゾーンコントローラが対応するゾーンの搬送車に対して搬送指令の送信を行う。前記搬送指令を受け取った搬送車は、搬送指令を受理したことを搬送車が位置するゾーンに対応するゾーンコントローラに対して送信して、搬送車の走行制御を行う構成が既に提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−246418号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の構成では、2つのゾーン毎に専用のゾーンコントローラを設けることによって、1台のコントローラにて全ての搬送車の走行制御を行う構成に比べて、コントローラにかかる搬送制御負荷の軽減を図ることができるものの、次のような不都合があった。
例えば一方の第1ゾーンに位置する搬送車を他方の第2ゾーンへ移動させる場合に、管理コントローラが第1ゾーンに位置する搬送車に対して該第1ゾーンに対応するゾーンコントローラを介して搬送指令等の指令を送信してゾーン間移動を行わせることになる。
前記管理コントローラは、移動先のゾーンコントローラに搬送車が第2ゾーンへ進入することを伝達する一方、第2ゾーンへ移動する前のゾーンコントローラに搬送指令を出力するように構成されている。
このように搬送車の位置によって2台のゾーンコントローラにそれぞれ異なる信号を出力しなければならず、制御が非常に複雑になる不都合があるだけでなく、2つのゾーンの境界部分に搬送車が差し掛かっている状態において、どのゾーンコントローラにて搬送車を移動制御させることを管理コントローラにて判断させることが難しい。このことから、ゾーンの境界部分付近にステーションを置いて搬送車を停止させることが難しく、設計の自由度において不利になる不都合もあった。
【0004】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、搬送制御負荷の軽減を図りながらも、制御が複雑になることを抑制することができるとともに設計の自由度を図ることができる搬送システム及び搬送システム用プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の搬送システムは、搬送経路中に搬送開始位置又は搬送終了位置あるいはそれら両方の位置となるステーションを複数備え、該複数のステーションの中から搬送開始位置となるステーションと搬送終了位置となるステーションとが選択された2つのステーション間の搬送経路に沿って搬送対象物を搬送するための搬送車を走行制御する走行制御手段を有する複数のコントローラを備えている搬送システムであって、前記複数のコントローラに同一の走行制御用データをそれぞれ記憶させるデータ記憶手段と、前記搬送経路中の全てのステーションの位置情報を前記複数のコントローラにそれぞれ記憶させるステーション位置記憶手段と、前記搬送車を走行させるための搬送経路を決定する2つのステーションを対とする複数の搬送経路情報を前記複数のコントローラにそれぞれ割り当てて記憶させる割り当て手段と、前記選択された2つのステーションの位置情報から搬送経路情報を取得し、前記複数のコントローラの中から該取得した搬送経路情報が割り当てられたコントローラを特定するためのコントローラ特定手段とを備えたことを特徴としている。
上記のように複数の搬送経路情報を複数のコントローラにそれぞれ割り当てて記憶させる、つまり各コントローラにて搬送車を走行制御する搬送経路を複数のコントローラのそれぞれに割り当てることによって、各コントローラに加わる走行制御のための負荷を分担させることができる。しかも、搬送車の搬送を、特定された1台のコントローラにて搬送開始位置から搬送終了位置まで走行制御することが可能になる。
又、複数のコントローラに同一の走行制御用データをそれぞれ記憶させていることから、一部のコントローラが故障等のトラブルによりダウンして使用できなくなった場合でも、使用不可となったコントローラに割り当てられていた搬送経路情報を残りのコントローラに記憶させるだけで、搬送車の搬送制御を直ちに再開することができる。
【0006】
前記ステーションのうちの搬送開始位置となるステーションと搬送終了位置となるステーションとが選択された情報を受け付ける搬送要求受付手段を備え、前記コントローラ特定手段が、該搬送要求受付手段にて選択された2つのステーションから搬送経路情報を取得し、取得した搬送経路情報に基づいてコントローラを特定する手段であってもよい。
【0007】
前記コントローラのうちの使用不可となったコントローラの搬送経路情報を、他の使用可能なコントローラに引き継がせて搬送車を制御するための引き継ぎ制御手段を備えていてもよい。
一部のコントローラが故障等のトラブルによりダウンして使用できなくなった場合でも、使用不可となったコントローラに割り当てられていた搬送経路情報を残りのコントローラに引き継がせるだけで、搬送車の搬送制御を直ちに再開することができ、使用面において有利な商品価値の高いものにすることができる。
【0008】
前記コントローラが2台であり、前記割り当て手段が、該一方のコントローラに前記全ての搬送経路情報のうちの少なくとも一部の搬送経路情報を記憶させ、残りの搬送経路情報を該他方のコントローラに記憶させる手段であってもよい。
【0009】
前記全コントローラと前記搬送車とが無線又は有線にてそれぞれ接続されており、前記搬送車からの出力信号を該全てのコントローラに伝達するように構成されていてもよい。
上記のように構成することによって、特定のコントローラにて搬送制御している搬送車の搬送位置を搬送制御していない他のコントローラが把握することができることから、例えば搬送制御中に搬送制御しているコントローラが故障等により使用不可となった場合でも、他の残りのコントローラにて搬送車の位置を確認して直ちに走行制御することが可能になる。
【0010】
前記全コントローラ間が通信可能に接続され、各コントローラはキープアライブ信号を他のコントローラに向けて送信してもよい。ここで、キープアライブ信号とは、コントローラが正常に動作していることを知らせるための信号のことを示す。
【0011】
前記複数のコントローラを管理するための管理サーバを備え、該管理サーバに各コントローラからキープアライブ信号を送信してもよい。
前述のように、各コントローラはキープアライブ信号を他のコントローラに向けて送信する、又は、管理サーバに各コントローラからキープアライブ信号を送信することによって、コントローラがダウンして使用不可となったこと等の不具合が発生したことを所定時間毎に確認することができ、不具合が発生したときに直ちに対応することができる。
【0012】
本発明によるプログラムは、
搬送経路中に搬送開始位置又は搬送終了位置あるいはそれら両方の位置となる複数のステーションの中から搬送開始位置となるステーションと搬送終了位置となるステーションとが選択された2つのステーション間の搬送経路に沿って搬送対象物を搬送するための搬送車を走行制御する複数のコントローラを備えている搬送システムを動作させるための搬送システム用プログラムであって、前記複数のコントローラに同一の走行制御用データをそれぞれ記憶させるステップと、前記搬送経路中の全てのステーションの位置情報を前記複数のコントローラにそれぞれ記憶させるステップと、前記搬送車を走行させるための搬送経路を決定する2つのステーションを対とする複数の搬送経路情報を前記複数のコントローラにそれぞれ割り当てて記憶させるステップと、前記選択された2つのステーションの位置情報から搬送経路情報を取得し、前記複数のコントローラの中から該取得した搬送経路情報が割り当てられたコントローラを特定するためのステップとをコンピュータに実行させる搬送システム用プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
各コントローラにて搬送車を走行制御する搬送経路を複数のコントローラのそれぞれに割り当てることによって、各コントローラに加わる走行制御のための負荷を分担させることができ、しかも、搬送車の搬送を、特定された1台のコントローラにて搬送開始位置から搬送終了位置まで走行制御することができることから、搬送制御負荷の軽減を図りながらも、従来のように2台のコントローラにてゾーン間を受け渡すような複雑な制御となることを抑制することができるとともにゾーン間の境界部分がないことから、設計の自由度をも図ることができる搬送システム及び搬送システム用プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の搬送システムの一実施形態について図面を参酌しつつ説明する。本発明に係る搬送システムは、病院内でのカルテや検体あるいは薬剤等の物品搬送や、オフィスビルでの書類や物品の搬送に用いられる他、半導体製造工場等のクリーンルームや、ウエハ等の物品の加工処理等を行う無人工場内で用いられるものである。そして、病院内やオフィスビルあるいは無人工場内に配置している搬送車を移動制御して搬送対象物(カルテ、検体、書類、半導体、ウエハ等の物品)を所定位置まで搬送するために有用となる搬送システムである。
【0015】
例えば、図1に示すように、平面図で示す無人工場K内の床面には、4台の搬送車H1,H2,H3,H4が移動する搬送経路が備えられ、この搬送経路内の所定箇所に6つのステーションA,B,C,D,E,Fが備えられている。尚、各ステーションには、ステーションに位置している搬送車に搬送対象物を自動的に載置したり、到着した搬送車から搬送対象物を所定箇所に降ろすためのロボット(図示せず)が配置されている。
前記ステーションA,B,C,D,E,Fは、搬送開始位置および搬送終了位置を構成するものであり、選択された搬送開始ステーションから選択された搬送終了ステーションまでの間の搬送経路に沿って搬送車を走行させるようになっている。
【0016】
前記搬送経路は、図1において左側に楕円で環状の3つの第1経路1、第2経路2、第3経路3が所定間隔をおいて配置され、第1経路1の左端と第2経路2の左端とが直線状で縦向きの第4経路4にて繋がっている。又、第2経路2の右端と第3経路3の右端とが直線状の第5経路5にて繋がっている。
また、右側も同様に楕円で環状の3つの第6経路6、第7経路7、第8経路8が所定間隔をおいて配置され、第6経路6の右端と第7経路7の右端とが直線状で縦向きの第9経路9にて繋がっている。又、第7経路7と第8経路8とが直線状で縦向きの第10経路10にて繋がっている。
そして、左側の第2経路2の右端と右側の第7経路7の左端とが直線状で横向きの第11経路11にて繋がっている。
【0017】
前記搬送経路には、例えば金属テープ等の誘導体が配設され、その誘導体をセンサにより検出しながら搬送車が搬送経路を移動することができるようになっている。また、前記誘導体の所定間隔置きにバーコード等の位置検出部が配設されており、走行している搬送車が位置検出部を検出することによって、搬送車の走行位置が把握できるようになっている。
【0018】
前記搬送車H1〜H4は、2台のコントローラ、つまり第1コントローラC1及び第2コントローラC2のいずれかのコントローラからの指令信号に基づいて走行するようになっている。
前記搬送車H1〜H4には、図示していないが、コントローラC1,C2からの指令を受け取るための受信機とコントローラC1,C2への位置情報を送信するための送信機とを備えている。
【0019】
図1及び図2に示すように、前記2台のコントローラC1,C2を管理するための管理サーバ12を備えている。この管理サーバ12は、搬送開始位置となるステーションと搬送終了位置となるステーションとが選択された情報を受け付けるための搬送要求受付手段13と、図3に示すように2つのステーションを対とする複数(図3では30個)の搬送経路情報を2台のコントローラC1,C2にそれぞれ割り当てて記憶させる割り当て手段14と、前記選択された2つのステーションの位置情報から搬送経路情報を取得し、取得した搬送経路情報に基づいて割り当てられたコントローラを特定するためのコントローラ特定手段15とを備えている。ここでは、第1コントローラC1及び第2コントローラC2に、同数である15個の搬送経路情報がそれぞれ割り当てられている。具体的には、開始位置であるステーションのうち3つのステーションA,B,Cを第1コントローラC1に割り当て、残りの3つのステーションD,E,Fを第2コントローラC2に割り当てている。
【0020】
前記搬送要求受付手段13は、入力手段Iにより搬送開始位置となるステーションと搬送終了位置となるステーションの2つのステーションが選択され、その選択された情報が出力されて受け付けるべく、管理サーバ12に設けられている。その受け付けられた情報により例えば2つのステーションである搬送開始位置のステーションAと搬送終了位置のステーションBとが選択されることにより、管理サーバ12のハードディスク(HD)又はフロッピーディスク(FD)等の記憶部に記憶している割り振りリストの表16(図3に示す)の中から該当するコントローラを探し出し、管理サーバ12は、第1コントローラC1であることを特定する。コントローラが特定された後は、特定された第1コントローラC1に対して管理サーバ12から選択された前記2つのステーションA,B情報を出力するようになっている。前記入力手段Iは、マウス、キーボード、ペンタブレット、データを読み込ませたスキャナーなどからなり、それらからの出力信号が管理サーバ12へ出力される。前記入力手段Iに代えて、図2に示すように、パソコン(パーソナルコンピュータ、図示せず)と管理サーバ12とをLANケーブルや専用回線あるいはインターネット網などの通信手段Tを介して接続し、前記情報を管理サーバ12へ通信手段Tを介して出力するようにしてもよい。尚、通信手段Tからの情報伝達は、有線であっても無線であってもよい。
【0021】
前記管理サーバ12は、故障等のトラブル等によりダウンして使用不能となったコントローラの搬送経路情報を、他の使用可能なコントローラに引き継がせて搬送車を制御するための引継ぎ制御手段17を備えている。例えば、第1コントローラC1が使用不能となった場合には、図3で示す第1コントローラC1の15個の搬送経路情報を第2コントローラC2に引き継がせることによって、第2コントローラC2にて全ての搬送経路における搬送車の走行制御が行えるようにしている。
【0022】
前記2台のコントローラC1,C2のハードディスク(HD)又はフロッピーディスク(FD)等の記憶部のそれぞれに、図2に示すように、同一の走行制御用データをそれぞれ記憶させるデータ記憶手段18と、搬送経路中の全てのステーションの位置情報を記憶させるステーション位置記憶手段19とを備えている。従って、前記のように使用不能となったコントローラの搬送経路情報を、他の使用可能なコントローラに引き継がせるだけで、引き継いだコントローラにて全ての搬送経路における搬送車の走行制御を行うことができるようになっている。前記各コントローラC1又はC2に備えさせたCPUやHD(FD)などの情報処理部の各構成は、一つの装置として構成されていてもよいし、複数の装置から構成されていてもよい。尚、前記HD(FD)は、外付けタイプのものであってもよい。
【0023】
前記走行制御用データは、選択された2つのステーション間を走行するのに必要な走行条件を設定した必要個数のステーション間走行条件データからなり、搬送開始位置となるステーションから搬送終了位置となるステーションまでの搬送経路をステーション間走行条件データに基づいて搬送車を走行制御するようになっている。尚、ステーション間走行条件データは、例えば走行開始してから最高速度までの加速度制御を行うためのデータや、最高速度から一定時間走行した後、搬送終了位置のステーションに停止させるべく、減速してブレーキをかける停止位置制御を行うためのデータ等をステーション間の距離から予め設定されたデータであり、それら複数のステーション間の距離から設定された走行制御用データは、管理サーバ12又は第1コントローラC1及び第2コントローラC2に予め記憶されている。
【0024】
又、前記2台のコントローラC1,C2の中央処理装置(CPU)のそれぞれに、前記データ記憶手段18とステーション位置記憶手段19の記憶情報に基づいて搬送車を走行制御するための走行制御手段Sを備えるとともに、正常に動作していることを知らせるキープアライブ信号を管理サーバ12に送信するためのキープアライブ信号出力手段20を備えている。
このようにキープアライブ信号を管理サーバ12に送信することによって、コントローラがダウンして使用不可となった場合には、そのトラブルを直ちに把握してトラブル対応処理を行えるようになっている。
【0025】
例えば第1コントローラC1を用いて搬送車を走行制御することを図4のフローチャートに基づいて説明する。
前記のように入力手段I又は通信手段Tからの情報により、例えば2つのステーションである搬送開始位置のステーションAと搬送終了位置のステーションEとが選択された信号が管理サーバ12に入力されると、搬送要求があったと判断し(ステップS1)、管理サーバ12の記憶部に記憶している割り振りリスト16(図3に示す)の中から該当するコントローラを探し出し、第1コントローラC1であることを特定する(ステップS2)。コントローラが特定された後は、特定された第1コントローラC1に選択された2つのステーションA,E情報を出力するとともに搬送開始位置となるステーションAから近い空の搬送車を検索する(ステップS3)。
次に、検索された搬送車H1に第1コントローラC1から搬送指令を出力し(ステップS4)、図1に実線で示している搬送車H1を破線で示す搬送開始位置となるステーションAまで移動させる走行制御信号を第1コントローラC1の走行制御手段Sから搬送車H1に出力する(ステップS5)。尚、ステーションAまで移動させる走行制御は、前記走行制御用データとは別のステーション用の走行制御用データを管理サーバ12又は第1コントローラC1及び第2コントローラC2に予め記憶されており、このステーション用の走行制御用データにて搬送車H1を走行制御する。
【0026】
搬送開始位置となるステーションAに位置するまでは、搬送車H1から出力される位置情報に基づきながら搬送車H1の位置を確認し、搬送車H1を前記走行制御手段Sにより走行制御する。搬送開始位置となるステーションAに搬送車H1が位置したことが確認されると(ステップS6)、搬送対象物を積み込んだ後、搬送終了位置となるステーションEに向けて搬送車H1の移動を開始する。このとき、前記データ記憶手段18に記憶しているステーション間走行条件データが走行制御手段Sに入力され、搬送車H1を移動制御するための信号を第1コントローラC1の走行制御手段Sから搬送車H1へ出力することになる(ステップS7)。この場合も、搬送車H1から出力される位置情報に基づきながら搬送車H1の位置を常に確認し、搬送終了位置となるステーションEに搬送車H1が位置したこと(図1に破線で示すEの位置に位置したこと)が判断されると(ステップS8)、搬送車H1の走行制御を終了する。
【0027】
そして、図5に、コントローラC1,C2の状況把握を行うサブルーチンを示しており、常にコントローラC1,C2の監視を行うようにしている。
つまり、前記搬送車H1を走行制御している最中に、第1コントローラC1及び第2コントローラC2のそれぞれから、キープアライブ(KA)信号が管理サーバ12に出力されているか否かを判別し(ステップS9,S10)、例えば第1コントローラからのキープアライブ(KA)信号が出力されていないと、第1コントローラC1が使用不可になったと管理サーバ12が判断し、管理サーバ12は、第2コントローラC2に第1コントローラC1の15個の搬送経路情報を引き継がせて記憶させる(ステップS11)。この後、第2コントローラC2の走行制御手段Sにより搬送車H1の走行制御を続行させることができる。尚、第1コントローラC1が使用不可となったことを第3者に報知するための報知手段、例えばランプやブザー等を管理サーバ12にて作動させるようにしてもよい。
【0028】
前記第1コントローラC1が使用不可となった場合に、前記管理サーバ12が、第2コントローラC2に第1コントローラC1の15個の搬送経路情報を自動的に引き継がせて記憶させる構成としているが、人為操作により第2コントローラC2に第1コントローラC1の15個の搬送経路情報を引き継がせて記憶させる構成であってもよい。また、第1コントローラC1が使用不可となったことをキープアライブ信号によって判断するようにしているが、目視により搬送車が動かなくなったことを見つけた場合に、いずれかのコントローラが使用不可となっていることを判断するようにしてもよい。尚、前記使用不可となった第1コントローラC1からキープアライブ信号が出力されて、使用可能となったことが管理サーバ12が判断した場合には、管理サーバ12が第2コントローラC2に引き継がせた15個の搬送経路情報を再度第1コントローラC1に自動的に受け渡して2台のコントローラC1,C2にて搬送車の走行制御を行うようにしてもよい。
【0029】
本発明は、前記搬送システムを動作させるためのプログラムであってもよい。具体的には、
前記複数のコントローラに同一の走行制御用データをそれぞれ記憶させるステップと、前記搬送経路中の全てのステーションの位置情報を前記複数のコントローラにそれぞれ記憶させるステップと、前記搬送車を走行させるための搬送経路を決定する2つのステーションを対とする複数の搬送経路情報を前記複数のコントローラにそれぞれ割り当てて記憶させるステップと、前記選択された2つのステーションの位置情報から搬送経路情報を取得し、前記複数のコントローラの中から該取得した搬送経路情報が割り当てられたコントローラを特定するためのステップとをコンピュータに実行させる搬送システム用プログラムを提供することができる。
【0030】
また、前記ステーションの位置や数並びに2つのステーションを選択することによって決定される搬送経路の数は、自由に変更することができる。
【0031】
さらに、前記2台のコントローラC1,C2を管理する管理サーバ12を設けた場合を示したが、管理サーバ12を省略して管理サーバにて行っていた機能を各コントローラにて行うようにしてもよい。この場合、全コントローラ間が通信可能に接続され、各コントローラはキープアライブ信号を他のコントローラに向けて送信するように構成してもよい。また、2台のコントローラC1,C2にて搬送車の走行制御を行うようにしていたが、3台以上のコントローラにて搬送車の走行制御を行うようにしてもよい。
【0032】
また、前記コントローラC1,C2と搬送車とを無線にてそれぞれ接続しているが、ケーブル等の有線にて接続してもよい。
【0033】
また、前記割り当て手段14が、全ての搬送経路情報のうちの半数を第1コントローラC1に記憶させ、残りの半数の搬送経路情報を第2コントローラC2に記憶させる手段であったが、一方のコントローラに半数よりも少ない一部の搬送経路情報を記憶させ、残りの搬送経路情報を他方のコントローラに記憶させてもよく、記憶させる搬送経路情報の数はどのように設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】搬送システムの構成を示す概略図である。
【図2】管理サーバとコントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】2台のコントローラの搬送経路のリストを示す図である。
【図4】搬送システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】コントローラC1,C2の状況把握を行うサブルーチンである。
【符号の説明】
【0035】
1〜11…経路、12…管理サーバ、13…搬送要求受付手段、14…割り当て手段、15…コントローラ特定手段、16…表、17…引継ぎ記憶手段、18…データ記憶手段、19…ステーション位置記憶手段、20…キープアライブ信号出力手段、A,B,C,D,E,F…ステーション、C1,C2…コントローラ、H1〜H4…搬送車、I…入力手段、K…無人工場、T…通信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路中に搬送開始位置又は搬送終了位置あるいはそれら両方の位置となるステーションを複数備え、該複数のステーションの中から搬送開始位置となるステーションと搬送終了位置となるステーションとが選択された2つのステーション間の搬送経路に沿って搬送対象物を搬送するための搬送車を走行制御する走行制御手段を有する複数のコントローラを備えている搬送システムであって、
前記複数のコントローラに同一の走行制御用データをそれぞれ記憶させるデータ記憶手段と、前記搬送経路中の全てのステーションの位置情報を前記複数のコントローラにそれぞれ記憶させるステーション位置記憶手段と、前記搬送車を走行させるための搬送経路を決定する2つのステーションを対とする複数の搬送経路情報を前記複数のコントローラにそれぞれ割り当てて記憶させる割り当て手段と、前記選択された2つのステーションの位置情報から搬送経路情報を取得し、前記複数のコントローラの中から該取得した搬送経路情報が割り当てられたコントローラを特定するためのコントローラ特定手段とを備えたことを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記ステーションのうちの搬送開始位置となるステーションと搬送終了位置となるステーションとが選択された情報を受け付ける搬送要求受付手段を備え、前記コントローラ特定手段が、該搬送要求受付手段にて選択された2つのステーションから搬送経路情報を取得し、取得した搬送経路情報に基づいてコントローラを特定する手段である請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記コントローラのうちの使用不可となったコントローラの搬送経路情報を、他の使用可能なコントローラに引き継がせて搬送車を制御するための引き継ぎ制御手段を備えている請求項1又は2記載の搬送システム。
【請求項4】
前記コントローラが2台であり、前記割り当て手段が、該一方のコントローラに前記全ての搬送経路情報のうちの少なくとも一部の搬送経路情報を記憶させ、残りの搬送経路情報を該他方のコントローラに記憶させる手段である請求項1〜3のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項5】
前記全コントローラと前記搬送車とが無線又は有線にてそれぞれ接続されており、前記搬送車からの出力信号を該全てのコントローラに伝達するように構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項6】
前記全コントローラ間が通信可能に接続され、各コントローラはキープアライブ信号を他のコントローラに向けて送信することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項7】
前記複数のコントローラを管理するための管理サーバを備え、該管理サーバに各コントローラからキープアライブ信号を送信することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項8】
搬送経路中に搬送開始位置又は搬送終了位置あるいはそれら両方の位置となる複数のステーションの中から搬送開始位置となるステーションと搬送終了位置となるステーションとが選択された2つのステーション間の搬送経路に沿って搬送対象物を搬送するための搬送車を走行制御する複数のコントローラを備えている搬送システムを動作させるための搬送システム用プログラムであって、
前記複数のコントローラに同一の走行制御用データをそれぞれ記憶させるステップと、
前記搬送経路中の全てのステーションの位置情報を前記複数のコントローラにそれぞれ記憶させるステップと、
前記搬送車を走行させるための搬送経路を決定する2つのステーションを対とする複数の搬送経路情報を前記複数のコントローラにそれぞれ割り当てて記憶させるステップと、
前記選択された2つのステーションの位置情報から搬送経路情報を取得し、前記複数のコントローラの中から該取得した搬送経路情報が割り当てられたコントローラを特定するためのステップと
をコンピュータに実行させる搬送システム用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−33256(P2010−33256A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193705(P2008−193705)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】