説明

搬送装置

【課題】真空容器内を移動する移動容器内部の放熱を、移動容器の移動を妨げることなく実現する。
【解決手段】真空排気可能な第2搬送室14内で被搬送物を搬送する搬送装置1であって、第2搬送室14内を移動可能に構成された移動容器20と、第2搬送室14内に固定配置され気体を供給する供給ノズル42と、を備え、移動容器20は、容器内の雰囲気と遮断された空間部20bと、空間部20bに連通する給気口が設けられ、移動容器20が所定位置へ移動した際に供給ノズル42から給気口に供給される気体の圧力に応じて、給気口から空間部20bへ気体を導入する給気ユニット22と、空間部20bに連通する排気口が設けられ、空間部20bの気圧に応じて空間部20bの気体を排気口から排出する排気ユニット23と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内で被搬送物を搬送する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空排気可能な筐体内で、半導体ウェハ等の被搬送物を搬送する装置が知られている(例えば特許文献1,2参照。)。特許文献1記載の装置では、搬送ロボットを搭載した基台が案内レールにスライド動作可能に取り付けられている。基台は、モータによって駆動するボールスクリューと螺合されることでスライド動作可能とされている。また、基台には、その内部が大気圧状態のフレキシブルアームが接続されており、搬送ロボットを駆動させるモータ等の配線がフレキシブルアーム内に収容されている。
【0003】
特許文献2記載の装置では、被搬送物を載置するステージが移動部材を介してガイド部材にスライド動作可能に取り付けられている。移動部材とガイド部材とは磁石の反発力により互いに接触しないように維持されている。そして、ステージ内部には、処理容器内部の雰囲気と遮断された空間部が形成され、当該空間部と処理容器外部との雰囲気を連通させるダクト部材が設けられている。移動機構の配線はダクト部材に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−12720号公報
【特許文献2】WO2008/066103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、真空容器内の搬送装置にあっては、被搬送物の大型化や処理室の搭載数の増加に伴い、被搬送物をより長い距離移動させることが要求されている。これに対して、電力を非接触で受電する受電部やバッテリー等を移動容器の内部に収容することで、外部からの電源供給用の配線を不要とし、電源系を独立させた自走式の移動容器を採用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記のような自走式の移動容器とした場合であっても、特許文献2に記載のように、移動容器内部の放熱のために、大気と連通されたダクト部材を移動容器へ取り付ける必要がある。当技術分野では、真空容器内を移動する移動容器内部の放熱を、移動容器の移動を妨げることなく実現することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、真空排気可能な容器内で被搬送物を搬送する搬送装置であって、前記容器内を移動可能に構成された移動容器と、前記容器内に固定配置され、気体を供給する気体供給部と、を備え、前記移動容器は、前記容器内の雰囲気と遮断された空間部と、前記空間部に連通する給気口が設けられ、前記移動容器が所定位置へ移動した際に前記気体供給部から前記給気口に供給される気体の圧力に応じて、前記給気口から前記空間部へ気体を導入する給気ユニットと、前記空間部に連通する排気口が設けられ、前記空間部の気圧に応じて前記空間部の気体を前記排気口から排出する排気ユニットと、を有する。
【0008】
上記構成の装置では、内部に空間部を有する移動容器が移動し、気体供給部の配置位置まで移動すると、移動容器に設けられた給気ユニットへ気体供給部から気体が供給され、供給された気体の圧力に応じて給気口から空間部へ気体が導入される。そして、空間部の気圧に応じて気体が排気ユニットから移動容器外へ排出される。このように、移動容器の移動経路上の所定位置においてのみ、空間部へ気体が供給されるとともに空間部の気体が排出される。このため、移動容器に排気ダクト等を固定で取り付けることなく移動容器の空間部の熱を放熱させることができる。よって、真空容器内を移動する移動容器内部の放熱を、移動容器の移動を妨げることなく実現することが可能となる。
【0009】
ここで、前記気体供給部は、供給ノズルであり、前記給気ユニットは、先端が前記給気口となる第1管状部材を有し、前記供給ノズルの先端の軸線と前記第1管状部材の先端の軸線とが同一方向に延び、前記供給ノズル及び前記第1管状部材のうち一方の内径が他方の外径よりも大きく形成されており、前記供給ノズル及び前記第1管状部材は、前記移動容器が所定位置へ移動した際に、前記第1管状部材の内部に前記供給ノズルが挿通されるように、又は、前記供給ノズルの内部に前記第1管状部材が挿通されるように、前記容器内及び前記移動容器にそれぞれ設けられていてもよい。このように構成することで、移動容器が所定位置へ移動した場合には、供給ノズル及び菅状部材の何れか一方が、他方の先端を非接触で収容する状態となる。このため、供給ノズルから給気口に向けて適切に気体を供給することができるため、非接触状態で気体の受け渡しをすることが可能となる。
【0010】
前記給気ユニットは、前記第1管状部材の内部に設けられた第1弁座と、前記第1弁座に前記空間部側から着座する第1弁体と、前記第1弁体を前記第1弁座に着座する方向に付勢する第1付勢手段と、を有してもよい。前記気体供給部は、前記第1付勢手段により単位面積あたりに加わる付勢力よりも大きい圧力で前記給気ユニットへ気体を供給してもよい。このように構成することで、気体供給部から供給された気体の気圧で第1弁体を開くことができる。そして、気体供給部から気体が供給されると、第1弁体が第1弁座から離れて空間部へ気体が流入し、気体供給部からの気体の供給を停止すると、第1弁体が第1弁座に着座して空間部への気体の流入が停止する。このように、気体の供給と大気雰囲気の維持を簡易な構成で実現することができる。
【0011】
前記排気ユニットは、先端が前記排気口となる第2管状部材と、前記第2管状部材の内部に設けられた第2弁座と、前記第2弁座に前記空間部の外側から着座する第2弁体と、前記第2弁体を前記第2弁座に着座する方向に付勢する第2付勢手段と、を有してもよい。また、前記第2付勢手段は、前記第1付勢手段により単位面積あたりに加わる付勢力と同一の大きさの付勢力で前記第2弁体を付勢してもよい。このように構成することで、気体供給部から気体が供給されると、第1弁体が第1弁座から離れて空間部へ気体が流入するとともに、第2弁体が第2弁座から離れて空間部から気体が流出する。このように、簡易な構成で真空容器内を移動する移動容器内部の放熱を、移動容器の移動を妨げることなく実現することが可能となる。
【0012】
前記容器は、前記容器内部を排気する真空ポンプと第1排気管を介して接続されており、前記気体供給部は、前記第1排気管と前記容器との接続箇所に配置されてもよい。このように構成することで、気体供給部から給気口へ供給された気体のうち空間部へ供給されなかった気体を適切に排気することができる。このため、容器内の真空度の低下を抑制しつつ空間部の放熱をすることが可能となる。
【0013】
前記容器は、前記容器内部を排気する真空ポンプと第2排気管を介して接続されており、前記排気ユニットは、前記移動容器が所定位置へ移動した際に、前記第2排気管へ前記空間部の気体を排出してもよい。このように構成することで、空間部の気体を適切に排気することができる。このため、容器内の真空度の低下を抑制しつつ空間部の放熱をすることが可能となる。
【0014】
前記移動容器は、直線状の案内レールに沿って移動可能に構成され、前記気体供給部は、前記移動容器の移動方向の正面に配置されてもよい。このように構成することで、供給ノズル及び菅状部材の何れか一方が、他方の先端を非接触で収容する状態を簡易に実現することができる。
【0015】
前記移動容器は、リニアモータを利用して移動してもよい。このように構成することで、移動容器と案内レールとの摩擦力を低減させて移動の効率を向上させることができる。
【0016】
前記移動容器の内部には、前記移動容器に載置する駆動機構の電源もしくは前記移動容器の移動機構の電源である蓄電池、又は、前記駆動機構もしくは前記移動機構への電力を非接触で受電する受電部が配置されていてもよい。このように構成することで、電源系統を内部に収容した自走式の移動容器において、電源系統によって発生した熱を適切に放出することができる。
【0017】
前記容器は、前記被搬送物を処理室へ搬入出するために設けられたロードロック、及び前記処理室と連通されており、前記移動容器には、前記ロードロックと前記処理室との間で被搬送物を搬送する搬送ロボットが載置され、前記気体供給部は、前記搬送ロボットにより前記ロードロックに対して前記被搬送物を搬入出するために前記移動容器が停止する位置で、前記給気ユニットへ気体を供給するように配置されていてもよい。移動容器が被搬送物の搬送のために必ず停止する位置に気体供給部を備えることで、既存の搬送動作中に放熱することができる。
【0018】
前記移動容器の移動機構の動作及び前記気体供給部からの気体の流量を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記搬送ロボットにより前記ロードロックに対して前記被搬送物を搬入出するために前記移動容器を停止させたタイミングで、前記気体供給部から前記給気ユニットへ気体を供給するように流量を制御してもよい。このように構成することで、供給ノズル及び菅状部材の何れか一方が他方の先端を非接触で収容する状態となったタイミングで、供給ノズルから気体を放出させることができる。このため、容器内の真空度の低下を一層抑制しつつ空間部の熱を放熱することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の種々の側面・種々の実施形態によれば、真空容器内を移動する移動容器内部の放熱を、移動容器の移動を妨げることなく実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る搬送装置を備える成膜装置の構成ブロック図である。
【図2】実施形態に係る搬送装置が配置された第2搬送室の概要図である。
【図3】図2中の移動容器の概略斜視図である。
【図4】図2中の移動容器のガス給気ユニットを説明する断面図である。
【図5】図2中の移動容器のガス排気ユニットを説明する断面図である。
【図6】図2中の移動容器のガスの流れを説明する概要図である。
【図7】図1中の制御部の動作を説明するフローチャートである。
【図8】図2中の移動容器の移動位置を説明する概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0022】
図1は、本実施形態に係る搬送装置1を備える成膜装置100の構成ブロック図である。本実施形態に係る搬送装置1は、例えば、有機EL素子、太陽電池等のデバイスの一例である有機EL素子を製造する際に、採用されるものである。図1に示すように、成膜装置100は、収容ボックス10、第1搬送室11、パージストレージ12、ロードロック13、第2搬送室14、処理室15及び制御部16を備えている。
【0023】
収容ボックス10は、処理前の基板及び処理後のウェハ(被搬送物)を収容する。収容ボックス10は、例えばロードポートに載置され、開閉ドア機構を介して第1搬送室11と連通されている。第1搬送室11は、大気と連通されており、その内部に搬送装置1の構成要素である搬送アームが配置されている。第1搬送室11は、パージストレージ12と連通されている。パージストレージ12は、一時的にウェハを載置させる載置台を有し、処理後のウェハを一時的に収容する。さらに、第1搬送室11は、例えば開閉可能なゲートバルブを介してロードロック13と連通されている。ロードロック13は、真空ポンプに接続されており、真空排気可能に構成されている。ロードロック13は、例えば開閉可能なゲートバルブを介して第2搬送室14と連通されている。第2搬送室14は、真空ポンプに接続されており、真空排気可能に構成されている。第2搬送室14は、内部に搬送機構を備えている。第2搬送室14は、例えば開閉可能なゲートバルブを介して処理室15と連通されている。処理室15は、真空ポンプに接続されており、真空排気可能に構成されている。処理室15には、ドライエッチング、スパッタリング又はCVD等によりウェハを処理する処理機構が配置されている。制御部16は、例えば、CPU、ROM、RAM等を備えるデバイスであって、第1搬送室11に配置された搬送アーム及び第2搬送室に配置された搬送機構の動作を制御可能に構成されている。また、制御部16は、ウェハを処理する際に必要なガスの流量やプラズマ用の電圧等を制御可能に構成されている。
【0024】
上記構成の成膜装置100では、収容ボックス10内の処理前のウェハが、第1搬送室11の搬送アームによって搬出されてロードロック13へ搬入され、ロードロック13内の処理前のウェハが、第2搬送室14の搬送機構によって搬出されて処理室15へ搬入される。そして、所定の処理工程を終了後、処理室15内の処理後のウェハが、第2搬送室14の搬送機構によって搬出されてロードロック13へ搬入され、ロードロック13内の処理後のウェハが、第1搬送室11の搬送アームによって搬出されて、パージストレージ12へ搬入される。一定期間後、第1搬送室11の搬送アームによってパージストレージ12から処理後のウェハが搬出されて、収容ボックス10内へ搬入される。
【0025】
成膜装置100は、必要に応じて、複数の収容ボックス10、複数のパージストレージ12、複数のロードロック13、複数の第2搬送室14及び複数の処理室15を備えてもよい。搬送装置1は、第2搬送室14内に配置された構成要素及び制御部16を備えて構成されている。
【0026】
以下では、第2搬送室(真空容器)14及び搬送装置1の詳細を説明する。図2は、第2搬送室14の概略斜視図である。ここでは、成膜装置100が、ロードロック13を一つ、第2搬送室14を一つ、処理室15を複数備える場合を一例として説明する。図2に示すように、第2搬送室14は、略長方形状の筐体内部に形成されている。第2搬送室14は、ゲートバルブ13aを介してロードロック13に接続されている。また、第2搬送室14は、ゲートバルブ15a,15b,15c,15dを介して処理室15A,15B,15C,15Dにそれぞれ接続されている。ロードロック13及び処理室15A〜15Dは、第2搬送室14の長手方向に沿って順に並べて配置されている。なお、ロードロック13及び処理室15A〜15Dと第2搬送室14を挟んで対向する位置に、ロードロック及び処理室がそれぞれ設けられてもよい。また、4つの処理室が接続されているが処理室の個数は何個でもよく、また、配置順や配置位置も適宜変更してもよい。
【0027】
第2搬送室14には、ウェハWを搬送するロボットアーム(搬送ロボット)30が配置されている。ロボットアーム30は、例えば図中に示すように、2つのウェハを同時に搬送可能なアームであってもよいし、1つのウェハを搬送する多関節形状のアームであってもよい。ロボットアーム30は、移動容器20上に配置されており、移動容器20とともに第2搬送室14の長手方向にスライド移動可能に構成されている。第2搬送室14には、図示しない真空ポンプに接続された排気管40が設けられている。これにより、第2搬送室14は真空排気可能に構成されている。排気管40は、ロードロック13に対してウェハWを搬入出する際に移動容器20が停止する位置近傍であって、移動容器20の移動方向の正面に位置するように、第2搬送室14を画成する筐体の側壁に設けられている。以下では、ロードロック13に対してウェハWを搬入出する際に移動容器20が停止する位置を給排気位置として説明する。
【0028】
ここで、移動容器20の詳細を説明する。図3は、移動容器20の概略斜視図である。移動容器20は、中空の略直方体状であって、第2搬送室14の雰囲気と遮断された空間部が内部に形成されている。空間部の気圧は、大気圧である。空間部には、移動容器20に載置されたロボットアーム30の電源となる蓄電池21が配置され、電力を外部から取り入れることなくロボットアーム30を動作可能に構成されている。なお、空間部にロボットアーム30の電力を非接触で受電する受電部が配置され、非接触給電可能な構成とされていてもよい。このように、移動容器20は、電源系統が外部から独立に構成されている。
【0029】
移動容器20は、第2搬送室14の長手方向に沿って配置された直線状の案内レール41上にスライド移動可能に取り付けられている。移動容器20は、例えばリニアモータを利用してスライド移動する。移動容器20及び案内レール41は、リニアモータの可動子と固定子とがそれぞれ設けられている。案内レール41には、図示しないリニアモータの駆動機構が接続されている。リニアモータの駆動機構は、制御部16に接続されている。これにより、制御部16の信号によってリニアモータが駆動し、移動容器20が図中の矢印に沿ってスライド移動する。
【0030】
移動容器20の側壁には、給気ユニット22及び排気ユニット23が取り付けられている。給気ユニット22は、移動容器20が給排気位置へ移動した際に、空間部へ気体を導入し、移動容器20が給排気位置以外に位置する場合には、空間部の大気圧を維持する。排気ユニット23は、移動容器20が給排気位置へ移動した際に、空間部内部から気体を排出し、移動容器20が給排気位置以外に位置する場合には、空間部の大気圧を維持する。
【0031】
排気管40は、給気ユニット22及び排気ユニット23にそれぞれ対応する第1排気管40a及び第2排気管40bを備えている。給気ユニット22に対応する第1排気管40aには、供給ノズル(気体供給部)42が固定配置されている。供給ノズル42は、図示しない供給弁及び気体供給源に接続されている。供給弁は制御部16に接続され、所定のタイミングで開閉動作可能に構成されている。気体供給源から供給される気体は、例えばNである。供給ノズル42は、移動容器20が給排気位置へ移動した際に、給気ユニット22へ非接触で気体を送り込む。
【0032】
ここで、給気ユニット22の詳細を説明する。図4は、移動容器20の給気ユニット22を説明する概要断面図である。給気ユニット22は、先端が給気口となる管状の本体部(第1管状部材)22aを有している。移動容器20が給排気位置へ移動した場合に、本体部22aに対応する位置には第1排気管40a及び供給ノズル42が固定配置されている。第1排気管40a及び供給ノズル42は、移動容器20の移動方向の正面に位置するように設けられている。本体部22aの先端の軸線と第1排気管40aの先端の軸線は同一方向に延びている。また、本体部22aの先端側の内径は、第1排気管40aの先端側の外径よりも小さく形成されている。これにより、本体部22aは、第1排気管40aの先端側の内部に収容可能に構成されている。供給ノズル42は、第1排気管40aと第2搬送室14との接続箇所に配置されている。本体部22aの先端の軸線と供給ノズル42の先端の軸線は同一方向に延びている。また、本体部22aの先端側の内径は、供給ノズル42の先端側の外径よりも大きく形成されている。これにより、本体部22aは、その内部に供給ノズル42の先端を収容可能に構成されている。
【0033】
給気ユニット22は、移動容器20が給排気位置へ移動した際に、供給ノズル42から給気口に供給される気体の圧力に応じて、空間部20bへ気体を導入するように構成されている。例えば、給気ユニット22は、本体部22aの内部にリリーフバルブを備えている。すなわち、給気ユニット22は、第1弁座22b、第1弁体22c及びバネ部材(第1付勢手段)22dを備えている。第1弁座22bは、本体部22aの内部に設けられている。例えば、第1弁座22bは、本体部22a内部に配置され、本体部22aの内側へ向けて突出された突起部である。第1弁体22cは、略円柱体形状であり、第1弁座22bに空間部20b側から着座する。バネ部材22dは、本体部22a内部に配置され、内側へ向けて突出された突起部22eによって支持され、第1弁体22cを第1弁座22bに着座する方向に付勢する。
【0034】
バネ部材22dは、単位面積あたりに加える付勢力が大気圧よりも大きくなるように設定される。すなわち、付勢力として1[kg/cm]+αが設定される。αとしては、例えば0.1[kg/cm]が用いられる。供給ノズル42は、バネ部材22dにより単位面積あたりに加わる付勢力よりも大きい圧力で給気ユニット22へ気体を供給する。
【0035】
上記構成において、移動容器20が給排気位置へ移動すると、給気ユニット22の本体部22aが第1排気管40aに挿入されるとともに、供給ノズル42の先端が給気ユニット22の本体部22aに挿入される。この状態で供給ノズル42からNガスが供給される。Nガスは、空間部20bの内部へ向けて第1弁体22cを押圧する。このため、第1弁体22cは、第1弁座22bから離れる方向へ移動する。これにより、Nガスが空間部20bへ導入される。なお、空間部20bへ供給されずに漏れたNガスは、第1排気管40aから排気される。本体部22aと第1排気管40aとの隙間、本体部22aと供給ノズル42との隙間を小さくすることで、漏れたNガスを第2搬送室14へ拡散させることなく排気することができる。一方、移動容器20が給排気位置以外へ移動すると、第1弁体22cが第1弁座22bに着座して、空間部20bと第2搬送室14との雰囲気とが遮断される。
【0036】
次に、排気ユニット23の詳細を説明する。図5は、移動容器20の排気ユニット23を説明する概要断面図である。排気ユニット23は、先端が排気口となる管状の本体部(第2管状部材)23aを有している。移動容器20が給排気位置へ移動した場合に、本体部22aに対応する位置には第2排気管40bが固定配置されている。第2排気管40bは、移動容器20の移動方向の正面に位置するように設けられている。本体部23aの先端の軸線と第2排気管40bの先端の軸線は同一方向に延びている。また、本体部23aの先端側の内径は、第2排気管40bの先端側の外径よりも小さく形成されている。これにより、本体部23aは、第2排気管40bの先端側の内部に収容可能に構成されている。
【0037】
排気ユニット23は、空間部20bの内部の圧力に応じて、空間部20bから気体を排出するように構成されている。例えば、排気ユニット23は、本体部23aの内部にリリーフバルブを備えている。すなわち、排気ユニット23は、第2弁座23b、第2弁体23c及びバネ部材(第2付勢手段)23dを備えている。第2弁座23bは、本体部23aの内部に設けられている。例えば、第2弁座23bは、本体部22aの内側へ向けて突出された突出部である。第2弁体23cは、略円柱体形状であり、第2弁座23bに空間部20bの外側から着座する。バネ部材23dは、本体部23a内部に配置され、内側へ向けて突出された突起部23eによって支持され、第2弁体23cを第2弁座23bに着座する方向に付勢する。
【0038】
バネ部材23dは、給気ユニット22のバネ部材22dにより単位面積あたりに加わる付勢力と同一の大きさの付勢力で第2弁体23cを付勢する。すなわち、付勢力として1[kg/cm]+αが設定される。αとしては、例えば0.1[kg/cm]が用いられる。
【0039】
上記構成において、移動容器20が給排気位置へ移動し、給気ユニット22からNガスが空間部20bへ導入されると、空間部20bの気圧が上昇し、空間部20bの外側へ向けて第2弁体23cを押圧する。このため、第2弁体23cは、第2弁座23bから離れる方向へ移動する。これにより、空間部20bに配置された機器類による熱により温められたNガスが排出され、第2排気管40bにより排気される。よって、空間部20bの温度が低下する。なお、本体部23aと第2排気管40bとの隙間を小さくすることで、Nガスを第2搬送室14へ拡散させることなく排気することができる。一方、移動容器20が給排気位置以外へ移動すると、第2弁体23cが第2弁座23bに着座して、空間部20bと第2搬送室14との雰囲気とが遮断される。
【0040】
以上、図6に示すように、給気ユニット22により空間部20bへNガスが導入されることで、Nガスが空間部20bを旋回し空間部20bに配置された機器から熱を奪い、排気ユニット23により温められたNガスが排出される。これにより、空間部20bの温度調整(放熱)を実現することができる。
【0041】
次に、搬送装置1における給排気動作について説明する。図7は、本実施形態に係る搬送装置1の動作を説明するフローチャートである。図7に示す処理は、制御部16により実行される。例えば、成膜装置100の電源がONされたタイミングから所定の間隔で繰り返し実行される。なお、説明理解の容易性を考慮して、図8を用いて処理を説明する。図8は、図2に示す装置の概略上面図であり、移動容器20の移動位置を説明する概要図である。図8に示すように、移動容器20は、第2搬送室14内を位置L1〜位置L2まで移動可能に構成されている。なお、位置L1が給排気位置となる。また、図7の開始前には、供給ノズル42に接続された供給弁が閉とされているものとする。
【0042】
図7に示すように、制御部16は、移動容器20の停止位置判定から開始する(S10)。例えば、制御部16は、メモリに備わるウェハWの処理スケジュールを参照し、ウェハWの受け渡しタイミングを取得して、ロードロック13に対してウェハWを搬入出するタイミングか否かを判定する。ロードロック13に対してウェハWを搬入出するタイミングであれば、移動容器20が図8に示す給排気位置L1に位置していると判定することができる。S10の処理において、制御部16が、移動容器20が給排気位置L1に位置していないと判定した場合には、ガスを供給する必要がないので図7に示す制御処理を終了する。一方、制御部16が、移動容器20が給排気位置L1に位置していると判定した場合には、ガス供給処理へ移行する(S12)。
【0043】
S12の処理では、制御部16が、供給ノズル42に接続された供給弁を開とする。これにより、移動容器20の空間部20bに対してNガスの給排気が行われる。S12の処理が終了すると、移動判定処理へ移行する(S14)。
【0044】
S14の処理では、制御部16が、移動容器20が給排気位置L1から移動したか否かを判定する。S14の処理において、制御部16が、移動容器20が給排気位置L1から移動していないと判定した場合には、再度S12の処理へ移行する。これにより、移動容器20が給排気位置L1から移動するまで、Nガスの給排気が続行される。一方、S14の処理において、制御部16が、移動容器20が給排気位置L1から移動したと判定した場合には、ガス供給停止処理へ移行する(S16)。
【0045】
S16の処理では、制御部16が、供給ノズル42に接続された供給弁を閉とする。これにより、供給ノズル42からのガス供給が停止される。S16の処理が終了すると、図7に示す制御処理を終了する。
【0046】
以上で図7に示す制御処理を終了する。図7に示す制御処理を実行することで、制御部16は、ロボットアーム30によりロードロック13に対してウェハWを搬入出するために移動容器20を停止させたタイミングで、供給ノズル42から給気ユニット22へNガスを供給するように、Nガスの流量を制御することができる。このため、第2搬送室14の真空度を低下させることなく、移動容器20の放熱を行うことが可能となる。
【0047】
以上、本実施形態に係る搬送装置1によれば、内部に空間部20bを有する移動容器20が移動し、供給ノズル42の配置位置まで移動すると、供給ノズル42から供給されたNガスが、移動容器20に設けられた給気ユニット22へ供給され、供給されたNガスの圧力に応じて、給気口からNガスが空間部20bへ導入される。そして、空間部20bの気圧に応じてNガスが排気ユニット23から移動容器20の外へ排出される。このように、移動容器20の移動経路上の給排気位置L1においてのみ、空間部20bへNガスが供給されるとともに空間部20bからNガスが排出される。このため、移動容器20に排気ダクト等を固定で取り付けることなく、移動容器20の空間部20bからNガスを排気させることができる。よって、第2搬送室14内を移動する移動容器20の熱の放熱を、移動容器20の移動を妨げることなく実現することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態に係る搬送装置1によれば、移動容器20が給排気位置L1へ移動した場合には、給気ユニット22の本体部22aが供給ノズル42を非接触で収容する状態となる。このため、供給ノズル42から給気口に向けて適切にNガスを供給することができる。このように、供給ノズル42と供給ユニット22とが接触することなく、Nガスを移動容器20の空間部20bへ供給することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態に係る搬送装置1によれば、供給ノズル42から供給されたNガスの気圧で第1弁体22cを開くことができる。そして、供給ノズル42からNガスが供給されると、第1弁体22cが第1弁座22bから離れて空間部20bへNガスが流入し、供給ノズル42からNガスの供給を停止すると、第1弁体22cが第1弁座22bに着座して空間部20bへのNガスの流入が停止する。このように、Nガスの供給と大気雰囲気の維持を簡易な構成で実現することができる。すなわち、圧縮空気等のボンベを用いることなく大気雰囲気を維持することが可能となるため、簡易な構成とすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る搬送装置1によれば、供給ノズル42からNガスが供給されると、第1弁体22cが第1弁座22bから離れて空間部20bへNガスが流入するとともに、第2弁体23cが第2弁座23bから離れて空間部20bからNガスが流出する。このように、リリーフバルブを用いた簡易な構成で、第2搬送室14内を移動する移動容器20内部の熱の放熱を、移動容器20の移動を妨げることなく実現することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係る搬送装置1によれば、供給ノズル42から給気口へ供給されたNガスのうち空間部20bへ供給されなかったNガスを適切に排気することができる。このため、第2搬送室14内の真空度の低下を抑制しつつ空間部20bの放熱をすることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係る搬送装置1によれば、電源系統を内部に収容した自走式の移動容器20において、電源系統によって発生した熱を適切に放出することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る搬送装置1によれば、移動容器20がウェハWの搬送のために必ず停止する位置に供給ノズル42を備えることで、既存の搬送動作中に放熱することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る搬送装置1によれば、給排気のタイミングで供給ノズル42からNガスを放出させることができる。このため、第2搬送室14内の真空度の低下を一層抑制しつつ空間部20bの放熱をすることが可能となる。
【0055】
なお、上述した実施形態は搬送装置1の一例を示すものであり、実施形態に係る搬送装置1を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、第2搬送室14を真空排気するための排気管40に供給ノズル42を設ける場合を説明したが、排気管40とは別の排気管を第2搬送室14にさらに設けて、当該排気管に供給ノズル42を設ける構成としてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、給気ユニット22の本体部22aが供給ノズル42を収容する例を説明したが、供給ノズル42が給気ユニット22の本体部22aを収容する場合であってもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、空間部20bには、ロボットアーム30の駆動機構及び電源が配置されている例を説明したが、これに限られるものではなく、例えば、移動容器20のリニアモータの可動子が配置されてもよいし、移動容器20の移動機構の電源となる蓄電池を配置してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…搬送装置、14…第2搬送室、15,15A〜15D…処理室、16…制御部、20…移動容器、20b…空間部、21…蓄電池、22…給気ユニット、22a…本体部(第1管状部材)、22b…第1弁座、22c…第1弁体、22d…バネ部材(第1付勢手段)、23…排気ユニット、23a…本体部(第2管状部材)、23b…第2弁座、23c…第2弁体、23d…バネ部材(第2付勢手段)、30…ロボットアーム(搬送ロボット)、40…排気管、40a…第1排気管、40b…第2排気管、41…案内レール、42…供給ノズル(気体供給部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能な容器内で被搬送物を搬送する搬送装置であって、
前記容器内を移動可能に構成された移動容器と、
前記容器内に固定配置され、気体を供給する気体供給部と、
を備え、
前記移動容器は、
前記容器内の雰囲気と遮断された空間部と、
前記空間部に連通する給気口が設けられ、前記移動容器が所定位置へ移動した際に前記気体供給部から前記給気口に供給される気体の圧力に応じて、前記給気口から前記空間部へ気体を導入する給気ユニットと、
前記空間部に連通する排気口が設けられ、前記空間部の気圧に応じて前記空間部の気体を前記排気口から排出する排気ユニットと、
を有する搬送装置。
【請求項2】
前記気体供給部は、供給ノズルであり、
前記給気ユニットは、先端が前記給気口となる第1管状部材を有し、
前記供給ノズルの先端の軸線と前記第1管状部材の先端の軸線とが同一方向に延び、前記供給ノズル及び前記第1管状部材のうち一方の内径が他方の外径よりも大きく形成されており、
前記供給ノズル及び前記第1管状部材は、前記移動容器が所定位置へ移動した際に、前記第1管状部材の内部に前記供給ノズルが挿通されるように、又は、前記供給ノズルの内部に前記第1管状部材が挿通されるように、前記容器内及び前記移動容器にそれぞれ設けられている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記給気ユニットは、
前記第1管状部材の内部に設けられた第1弁座と、
前記第1弁座に前記空間部側から着座する第1弁体と、
前記第1弁体を前記第1弁座に着座する方向に付勢する第1付勢手段と、
を有する請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記気体供給部は、前記第1付勢手段により単位面積あたりに加わる付勢力よりも大きい圧力で前記給気ユニットへ気体を供給する請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記排気ユニットは、
先端が前記排気口となる第2管状部材と、
前記第2管状部材の内部に設けられた第2弁座と、
前記第2弁座に前記空間部の外側から着座する第2弁体と、
前記第2弁体を前記第2弁座に着座する方向に付勢する第2付勢手段と、
を有する請求項3又は4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第2付勢手段は、前記第1付勢手段により単位面積あたりに加わる付勢力と同一の大きさの付勢力で前記第2弁体を付勢する請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記容器は、前記容器内部を排気する真空ポンプと第1排気管を介して接続されており、
前記気体供給部は、前記第1排気管と前記容器との接続箇所に配置される請求項2〜6の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記容器は、前記容器内部を排気する真空ポンプと第2排気管を介して接続されており、
前記排気ユニットは、前記移動容器が所定位置へ移動した際に、前記第2排気管へ前記空間部の気体を排出する請求項1〜7の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記移動容器は、直線状の案内レールに沿って移動可能に構成され、
前記気体供給部は、前記移動容器の移動方向の正面に配置される請求項1〜8の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記移動容器は、リニアモータを利用して移動する請求項1〜9の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記移動容器の内部には、前記移動容器に載置する駆動機構の電源もしくは前記移動容器の移動機構の電源である蓄電池、又は、前記駆動機構もしくは前記移動機構への電力を非接触で受電する受電部が配置されている請求項1〜10の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記容器は、前記被搬送物を処理室へ搬入出するために設けられたロードロック、及び前記処理室と連通されており、
前記移動容器には、前記ロードロックと前記処理室との間で被搬送物を搬送する搬送ロボットが載置され、
前記気体供給部は、前記搬送ロボットにより前記ロードロックに対して前記被搬送物を搬入出するために前記移動容器が停止する位置で、前記給気ユニットへ気体を供給するように配置されている請求項1〜11の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記移動容器の移動機構の動作及び前記気体供給部からの気体の流量を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記搬送ロボットにより前記ロードロックに対して前記被搬送物を搬入出するために前記移動容器を停止させたタイミングで、前記気体供給部から前記給気ユニットへ気体を供給するように流量を制御する請求項12に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−77773(P2013−77773A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218032(P2011−218032)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】