説明

携帯型無線周波数識別(RFID)読取り機

ある特定の携帯型無線周波数識別(RFID)読取り機は、RFID装置からRFID信号を受信するための複数のアンテナ要素を含む能動型アンテナアレイを含む。アンテナ要素は、能動型アンテナアレイにより生成されるビームパターンを制御するための制御回路を含む。携帯型RFID読取り機は、和回路と差回路とをさらに含む。和回路は、複数のアンテナ要素のうちの少なくとも2つにより受信されるRFID信号を合計することにより和信号を決定するよう動作可能である。差回路は、複数のアンテナ要素のうちの少なくとも2つにより受信されるRFID信号同士の差信号を決定するよう動作可能である。携帯型RFID読取り機はまた、ビームパターンを電子的に誘導して、RFID読取り機からある特定のRFID装置への方向を特定するためのコントローラを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、携帯型無線周波数識別(RFID)読取り機およびそれを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数識別(RFID)技術は、在庫管理および商品追跡といったさまざまな追跡および識別目的に用いられてきた。あるRFIDシステムは、RFID読取り機からの信号により電力供給されるRFIDタグを用いる。電力供給されると、RFIDタグは、RFID識別データを含む信号を送信してもよい。RFID読取り機は、RFID識別データを受信し、識別データに基づいてRFIDタグまたはRFIDタグに対応付けられている対象物についての情報を特定してもよい。
【0003】
個々のRFIDタグの識別は、複数のRFIDタグがRFID読取り機の信号に応答する場合、困難となり得る。例えば、複数のRFIDタグが同一場所に位置しているとき、RFID読取り機は、探索されている特定のRFIDタグをユーザが選択できるように応答を区別することが困難なことがある。いくつかのRFID読取り機は、単に呼びかけ信号を送るよりむしろ書き換え信号を送ることによりこの懸念に対処している。すなわち、これらRFID読取り機は、RFIDタグ上のデータを書き換えるか、または、RFIDタグの機能をプログラムし直す信号を送ることにより、あるRFIDタグを別のRFIDタグから区別しやすくする。識別目的で複数当事者によりRFIDタグが用いられる予定のとき、RFIDタグを書き換えたり、プログラムし直したりすることは、問題となり得る。というのも、RFIDタグを読み取ろうとする後続の当事者は、RFIDタグ上に書き込まれている新たなデータを読取ることができない可能性があったり、新たなデータを追跡目的の情報と照合することができない可能性があったりするからである。
【発明の概要】
【0004】
携帯型無線周波数識別(RFID)読取り機およびその使用方法を開示する。ある特定の携帯型RFID読取り機は、1つ以上のRFID装置からRFID信号を受信するための複数のアンテナ要素を含む能動型アンテナアレイを含む。複数のアンテナ要素の各々は、能動型アンテナアレイにより生成されるビームパターンを制御するための制御回路を含む。携帯型RFID読取り機はまた、複数のアンテナ要素のうちの少なくとも2つにより受信されるRFID信号を合計することにより和信号を決定するよう動作可能な和回路を含む。携帯型RFID読取り機は、複数のアンテナ要素に結合されている差回路をさらに含む。差回路は、複数のアンテナ要素のうちの少なくとも2つにより受信されるRFID信号同士の差信号を決定するよう動作可能である。携帯型RFID読取り機はまた、ビームパターンを電子的に誘導して、RFID読取り機から1つ以上のRFID装置のうちのある特定のRFID装置への方向を特定するためのコントローラを含む。
【0005】
別の特定の携帯型RFID読取り機は、1つ以上のRFID装置からRFID信号を受信するための複数のアンテナ要素を含む能動型アンテナアレイを含む。受信されるRFID信号は、固有波長を有する。複数のアンテナ要素は、少なくとも第1アンテナ要素と第2アンテナ要素とを含む。第1アンテナ要素と第2アンテナ要素とは、固有波長の二分の一より短い距離だけ離間されている。携帯型RFID読取り機はまた、受信されるRFID信号に基づいて能動型アンテナアレイのビームパターンを電子的に誘導して、1つ以上のRFID装置のうちのある特定のRFID装置への方向を特定するための回路を含む。
【0006】
複数のRFID装置の中の特定のRFID装置の位置を特定する方法は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイから少なくとも1つの第1RFID呼びかけ信号を送ることを含む。アンテナアレイは、複数のアンテナ要素を含む。該方法はまた、少なくともアンテナアレイの第1アンテナ要素により、および、アンテナアレイの第2アンテナ要素により、携帯型RFID読取り機に近接した対象となるRFID装置から第1応答信号を受信することを含む。該方法は、第1アンテナ要素により受信された第1応答信号と第2アンテナ要素により受信された第1応答信号とを合計することにより和信号を決定することをさらに含む。該方法はまた、第1アンテナ要素により受信された第1応答信号と第2アンテナ要素により受信された第1応答信号との差を求めることにより差信号を決定することを含む。該方法は、和信号および差信号に基づいて携帯型RFID読取り機から対象となるRFID装置への方向を特定することをさらに含む。該方法はまた、携帯型RFID読取り機の指示器を起動することを含む。指示器は、対象となるRFID装置への方向を示す。
【0007】
説明した特徴、機能および利点は、さまざまな実施形態において独立して達成可能であり、または、以下の説明および図面を参照してさらなる詳細が開示されているさらに他の実施形態において組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、携帯型RFID読取り機を含むシステムの第1の特定の実施形態のブロック図である。
【図2】図2は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイの第1の特定の実施形態を示す図である。
【図3】図3は、携帯型RFID読取り機の第1の特定の実施形態の回路図である。
【図4】図4は、図2のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図5】図5は、図2のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図6】図6は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイの第2の特定の実施形態を示す図である。
【図7】図7は、携帯型RFID読取り機の第2の特定の実施形態の回路図である。
【図8】図8は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイの第3の特定の実施形態を示す図である。
【図9】図9は、携帯型RFID読取り機の第3の特定の実施形態の回路図である。
【図10】図10は、図8のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図11】図11は、図8のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図12】図12は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイの第4の特定の実施形態を示す図である。
【図13】図13は、携帯型RFID読取り機の第4の特定の実施形態の回路図である。
【図14】図14は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイの第5の特定の実施形態を示す図である。
【図15】図15は、図14のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図16】図16は、図14のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図17】図17は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイの第6の特定の実施形態を示す図である。
【図18】図18は、図17のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図19】図19は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイの第7の特定の実施形態を示す図である。
【図20】図20は、図19のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図21】図21は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイの第8の特定の実施形態を示す図である。
【図22】図22は、図21のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図23】図23は、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイの第9の特定の実施形態を示す図である。
【図24】図24は、図23のアンテナアレイに関連する疑似和および差アンテナパターンを示している。
【図25】図25は、携帯型RFID読取り機を用いる方法の第1の特定の実施形態のフローチャートである。
【図26】図26は、携帯型RFID読取り機を用いる方法の第2の特定の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
航空安全は、ますます大きな関心事となってきている。高価かつ時間のかかる可能性のある航空安全の一側面は、乗客とその荷物を照合することである。航空安全のこの側面は、航空機に搭乗していたいずれの乗客の所有でもなかった当該便に搭載されたスーツケースが原因とされている1988年のスコットランド、ロッカビー近郊でのパンアメリカン航空103便爆破事件以来、とりわけ強調されている。現在、全航空会社が航空機の乗客と該航空機の搭乗手続き済み荷物を照合して、航空機のすべての荷物を確実に乗客と対応付けることを求める法律を多くの国が有する。
【0010】
乗客との対応付けがうまくいかないバッグを手作業で探索することは、空港業務において非現実的であり得る。例えば、乗客とバッグを手作業で照合するプロセスは、労働集約的である可能性があり、かつ、便の遅れを生じたり、航空会社に追加の業務コストがかかるかもしれない。無線周波数識別(RFID)技術は、各バッグを識別する情報を保存することができる。該情報は、RFID読取り機を用いて取り出すことができる。しかしながら、航空機の貨物倉内の個々のバッグを迅速に探し当てることは、あるRFID読取り機技術では困難であり得る。個々のバッグを探し当てることは、マルチパス帰還信号につながる(貨物倉のような)小さな領域内に数多くのバッグが位置している場合、特に問題となり得る。そのような環境では、ある携帯型手持ちRFID読取り機を用いてある特定のバッグへの方向を特定することは困難かもしれない。例えば、ある特定のバッグと対応付けられたある乗客が航空機に搭乗していないために、出発準備のすでに整った航空機から特定のバッグを取り出す必要が生じた際、航空会社の地上勤務員は、航空機出発の遅延を回避するために該特定のバッグを迅速に探し当てるよう期待されることがある。バッグがすでに積み込まれていた場合、該バッグは、他の乗客の他の数多くのバッグとともに飛行機の貨物倉の狭い空間内に位置しているかもしれない。バッグが積み込み待機状態である場合、該バッグは、他の数多くのバッグとともに積み重ねられているかもしれない。RFID技術が用いられる際、バッグの各々は、RFIDタグと対応付けられている可能性がある。各RFIDタグがRFID読取り機に応答することにより、ある特定のバッグを識別することが困難になることがある。
【0011】
RFID技術はまた、整備または点検のための航空機機材を探し当てることなどの他の航空機業務の促進に用いてもよい。しかしながら、ある特定のRFIDタグの位置を識別することの問題は、これらの使用にも及ぶことがある。例えば、ある航空機機材は、キャビネットの後ろで、パネルの中で、座席クッションの後ろでなど見えにくくなっているかもしれない。航空機機材の追跡にRFIDタグを用いるが、機材が見えにくいとき、携帯型RFID読取り機の使用は、それほど航空機機材を探し当てる助けとならないかもしれない。というのも、携帯型RFID読取り機は、ある特定のRFIDタグへの方向を特定できないことがあるからである。
【0012】
本開示は、能動型位相配列アンテナシステムを用いる携帯型RFID読取り機を説明する。能動型位相配列アンテナシステムおよび付随する電子機器は、携帯型RFID読取り機の角度感度を高める可能性がある。携帯型RFID読取り機の角度感度を高めることにより、開示されている携帯型RFID読み取り機は、たとえ直接視線が得られなくとも、かつ、マルチパス帰還信号により特定のRFIDタグが探し当てづらくなっていても、対象物に対応付けられている特定のRFIDタグの識別を可能とすることがある。例えば、開示されている携帯型RFID読み取り機は、位相配列アンテナ、電子走査および適応型ビーム形成を用いて、差信号の位相情報を用いる該特定のRFIDタグの位置を追跡することができる。差信号の位相は、帰還信号の到着角度がパターンヌルの一方の側から他方の側へ変化するときに180度切り替わる。位相は、和信号の位相と差信号の位相とを比較することにより容易に検出される。また、位相配列アンテナ電子走査により、マルチパス帰還信号の破棄が可能となることがあり、その結果、数多くのマルチパス帰還信号を有する環境における携帯型RFID読取り機の使用が改善される。さらに、携帯型RFID読取り機は、対象となっていないか、または、予期しない方向からの(例えば、携帯型RFID読取り機の概略指示方向からではない)RFIDタグからの応答を、RFIDタグを書き換えたり、修正したりすることなく除外することができる。よって、RFIDタグは、複数当事者が識別目的でRFIDタグを利用できるようにする業界標準のRFID技術およびデータを用いることができる。したがって、ある特定のRFIDタグ(例えば、ある特定の乗客の荷物に対応付けられたRFIDタグ)を探し当てるための航空機の貨物コンテナといった狭い区画における携帯型RFID読取り機の使用は、大幅に改善される可能性がある。さらに、能動型位相配列アンテナシステムは、比較的小型であることにより、携帯型手持ちRFID読取り機に能動型位相配列アンテナシステムを使用することが可能となる。
【0013】
図1は、携帯型無線周波数識別(RFID)読取り機102を含むシステムの第1の特定の実施形態のブロック図である。携帯型RFID読取り機102は、複数のRFID装置114〜116およびマルチパス帰還信号106が存在する環境において示されている。例えば、RFID装置114〜116は、第1RFID装置114と、第2RFID装置115と、第3RFID装置116とを含む。RFID装置114〜116の各々は、航空機の乗客と対応付けられている荷物104〜106のような追跡されている品目と対応付けられているRFIDタグとすることができる。マルチパス帰還信号160は、航空機の貨物倉の壁のような、携帯型RFID読取り機102が用いられている環境における壁162から反射される信号を含んでもよい。
【0014】
携帯型RFID読取り機102は、携帯型ハウジング110を含んでもよい。携帯型ハウジング110は、携帯型RFID読取り機102の携帯かつ手持ちの使用を可能としてもよい。携帯型ハウジング110は、コントローラ130と、電池140と、メモリ134と、和回路124と、差回路126と、携帯型RFID読取り機102の1つ以上のその他の構成要素またはこれらの組み合わせとを少なくとも部分的に取り囲んでいてもよい。ある特定の実施形態において、電池140は、携帯型RFID読取り機102用の携帯型動作電源を提供してもよい。
【0015】
携帯型RFID読取り機102はまた、能動型アンテナアレイ112を含んでもよい。能動型アンテナアレイ112は、RFID呼びかけ信号を送り、RFID装置114〜116からRFID応答信号154を受信する複数のアンテナ要素を含んでもよい。能動型アンテナアレイ112のアンテナ要素は、少なくとも第1アンテナ要素120と第2アンテナ要素121とを含んでもよい。アンテナ要素120〜121の各々は、能動型アンテナアレイ112により生成されるビームパターンを制御する制御回路122〜123を含んでもよい。制御回路122〜123は、電子ステアリング回路128により制御されてもよい。ある特定の実施形態において、アンテナ要素120〜121の各々により生成される波形は、能動型アンテナアレイ112により生成される全体パターン(例えば、第1呼びかけパターン142)を制御する制御回路122〜123を用いて、独立して制御可能である。例えば、電子ステアリング回路128は、制御回路122〜123へ制御信号を送ることができるコントローラ130を含んでもよい。制御信号は、制御回路122〜123に、アンテナ要素120〜121の少なくとも1つにより生成される波形の位相を修正させるか、アンテナ要素120〜121の少なくとも1つにより生成される波形の振幅を修正させるか、または、該波形の位相と振幅との両方を修正させることにより、能動型アンテナアレイ112からのビームパターンの適応型ビームステアリングを提供してもよい。
【0016】
携帯型RFID読取り機102はまた、和回路124を含んでもよい。和回路124は、能動型アンテナアレイ112のアンテナ要素120〜121により受信した(マルチパス応答信号160を含む)RFID応答信号154を合計することにより和信号を決定してもよい。携帯型RFID読取り機102はまた、能動型アンテナアレイ112と結合された差回路126を含んでもよい。差回路126は、1つ以上のアンテナ要素(例えば、第1アンテナ要素120)により受信したRFID応答信号154とその他の1つ以上のアンテナ要素(例えば、第2アンテナ要素121)との差信号を決定するよう動作可能であってもよい。
【0017】
コントローラ130は、各アンテナ要素120〜121の制御回路122〜123を用いて、和信号および差信号または両方に基づいて能動型アンテナアレイ112により生成されるビームパターン(例えば、第2呼びかけパターン143)を電子的に誘導してもよい。例えば、コントローラ130は、携帯型RFID読取り機102から呼びかけ信号に応答するRFID装置のうちのある特定のRFID装置への方向を決定してもよい。例示のために、携帯型RFID読取り機102は、第1呼びかけパターン142を介して第1呼びかけ信号を送信してもよい。第1呼びかけパターン142は、比較的幅が広い(すなわち、比較的大きい送信角度を有している)可能性がある。第1RFID装置114、第2RFID装置115および第3RFID装置116はすべて、応答信号154を送信することにより第1呼びかけ信号に応答してもよい。ただし、携帯型RFID読取り機102の使用者は、第1RFID装置114と対応付けられている第1の荷物104しか探していないかもしれない。よって、携帯型RFID読取り機102は、メモリ134にアクセスしてもよい。メモリ134は、本実施例では第1RFID装置114である対象となるRFID装置の識別表示を示すRFID装置識別子136を含んでもよい。コントローラ130は、和信号、差信号、または両方、および、RFID装置識別子136に基づいて対象となるRFID装置への方向を決定してもよい。和信号の位相と差信号の位相とを比較することにより、優れた角度分解が提供される。差信号の位相は、差のパターンヌルを交差するときに180度切り替わり、これにより、高い角度分解情報が提供される。
【0018】
対象となるRFID装置への方向を決定した後、コントローラ130は、対象となるRFID装置、すなわち、第1RFID装置114へ向かって概ね導かれる第2呼びかけパターン143のような適応型ビームパターンを生成してもよい。例えば、第1呼びかけパターン142は、幅広で、かつ、ひとまとまりで概ねRFID装置114〜116へ向かう方向144を有していてもよい。例示のために、第1呼びかけパターン142は、携帯型RFID読取り機102の指示方向に概ね沿って導かれてもよい。応答信号154を受信した後、携帯型RFID読取り機102は、適応型ビーム形成を実施して、第1RFID装置114へ概ね向かう方向145を有する第2呼びかけパターン143を生成してもよい。応答信号は、第2呼びかけパターン143にも応答して受信されてもよい。しかしながら、第2呼びかけパターン143は、第1呼びかけパターン142より狭い可能性があり、かつ、対象となるRFID装置へ向かって概ね導かれる可能性があるので、第2呼びかけパターン143に応答して受信される応答信号はより少ないかもしれない。携帯型RFID読取り機102は、対象となるRFID装置への方向を反復して特定することを繰り返し、より狭く、かつ、より正確に導かれる呼びかけパターンを適応して形成して、対象となるRFID装置への方向をさらに改良してもよい。ある特定の実施形態において、呼びかけパターンの反復生成および対象となるRFID装置への方向の特定は、対象となるRFID装置への方向を要求している使用者からの入力に応答して自動的に携帯型RFID読取り機102により行われてもよい。
【0019】
携帯型RFID読取り機102はまた、方向指示器138を含んでもよい。方向指示器138は、対象となるRFID装置への方向を示すことができる。例えば、方向指示器138は、携帯型RFID読取り機102から対象となるRFID装置への方向を示す携帯型RFID読取り機102の使用者により検出可能な視覚的または可聴の指示を含んでいてもよい。例示のために、方向指示器138は、携帯型RFID読取り機102の使用者にRFID装置114への概略方向を伝える矢印、表示画面、ランプまたは別の指示を含んでいてもよい。方向指示器138は、方位角、仰角方向、または、それらの組み合わせを示していてもよい。また、携帯型RFID読取り機102が適応型呼びかけパターンを反復して生成し、対象となるRFID装置への方向を特定すると、方向指示器138は、より正確な情報が特定されるに伴い、対象となるRFID装置への方向を修正してもよい。
【0020】
携帯型RFID読取り機102はまた、入力装置132を含んでいてもよい。入力装置132は、特定の対象となるRFID装置を識別するために使用者からの入力を受信してもよい。例えば、該入力は、メモリ134に保存されているRFID装置識別子136に保存されている情報を含んでもよい。入力装置132はまた、RFID装置114〜116の呼びかけを始めるための(例えば、第1呼びかけパターン142を送らせるための)トリガまたはその他の装置を含んでもよい。第2呼びかけパターン143および後続の呼びかけパターンは、応答信号154に応答して特定される方向情報をさらに改良するために自動的に送られてもよい。
【0021】
能動型アンテナアレイ112は、携帯型RFID読取り機102が携帯に十分なほど小型であり続け、かつ、対象となるRFID装置への方向を効果的に識別可能である限りにおいて、あらゆる数のアンテナ要素およびあらゆる配置のアンテナ要素を含むことができる。例示のために、能動型アンテナアレイ112のアンテナ要素120〜121は、固有波長156の二分の一より短い距離だけ離間していてもよい。該固有波長は、RFID装置114〜116から予測される応答信号154の波長156であってもよい。別の実施例において、固有波長156は、呼びかけパターン142〜143を介して能動型アンテナアレイ112により送信される信号の波長であってもよい。ある特定の実施形態において、能動型アンテナアレイは、図1に示した2つより多くのアンテナ要素120〜121を含む。図2〜図24を参照しつつ、アンテナ要素のさまざまな構成および性能をさらに説明する。
【0022】
ある特定の実施形態において、能動型アンテナアレイ112は、第1縁部と第1縁部の反対側の第2縁部とを有する。アンテナ要素120〜121(および存在する可能性のあるあらゆるその他のアンテナ要素)は、第1縁部と第2縁部との間に位置する。したがって、第1縁部と第2縁部とは、能動型アンテナアレイ112の境界を画定する。ある特定の実施形態において、第1縁部と第2縁部との間の縁部間距離は、固有波長156の二分の一より短い。別の特定の実施形態において、アンテナ要素120〜121間の距離は、中心から中心までで測定され、この場合、アンテナ要素の中心は、アンテナ要素の実効中心または重心を指してもよい。アンテナ要素120〜121は、固有波長156の二分の一より短い距離(すなわち、縁部間距離または中心間距離)だけ離間されていてもよい。とりわけ、最も外側の2つのアンテナ要素間の距離は、固有波長の二分の一より短くてもよく、この場合、最も外側のアンテナ要素は、能動型アンテナアレイ112の他のアンテナ要素がその間に位置するアンテナ要素を指す。例えば、アンテナ要素120〜121間の距離は、固有波長156の二分の一から四分の一までの間であってもよい。ある特定の実施形態において、アンテナ要素120〜121間の距離は、固有波長156の四分の一より短い。例えば、アンテナ要素120〜121間の距離は、固有波長156の四分の一から八分の一までの間であってもよい。ある特定の実施形態において、アンテナ要素120〜121間の距離は、固有波長156の八分の一より短い。例えば、アンテナ要素120〜121間の距離は、固有波長156の八分の一から十六分の一までの間であってもよい。ある特定の実施形態において、アンテナ要素120〜121の中心間距離は、固有波長156のおよそ十六分の一である。
【0023】
動作中、携帯型RFID読取り機102の使用者は、入力装置132を用いて、対象となるRFID装置、例えば、第1RFID装置114のRFID装置識別子136を入力してもよい。使用者は、概ねRFID装置114〜116の方向へ携帯型RFID読取り機102を向け、入力装置132を用いて、呼びかけ信号を送るべきであることを示してもよい。
【0024】
RFID読取り機102は、概ね携帯型RFID読取り機102の指示方向144へ第1呼びかけパターン142を送信してもよい。第1呼びかけパターン142に応答して、RFID装置114〜116は、応答信号154を送ってもよい。応答信号154は、概ね携帯型RFID読取り機102へ向かう方向158を含む数多くの方向、および、(例えば、壁162からの反射またはその他の帰還信号に起因する)マルチパス帰還信号160を生成する可能性のある1つ以上のその他の方向に伝搬する比較的幅広の、概ね導かれた信号であってもよい。
【0025】
応答信号154およびマルチパス帰還信号160は、アンテナ要素120〜121により受信されてもよい。和回路124は、和信号を決定することができ、差回路126は、差信号を決定することができる。和信号および差信号は、コントローラ130へ提供されてもよい。コントローラ130は、和信号および差信号を用いて、対象となるRFID装置(例えば、第1RFID装置114)への概略方向を特定してもよい。コントローラ130は、アンテナ要素120〜121の制御回路122〜123へ1つ以上の信号を送って、第2呼びかけパターン143を適応して形成してもよく、該第2呼びかけパターン143は、方向145に沿って対象となるRFID装置へ概ね導かれる。第2呼びかけパターン143は、対象となるRFID装置をより細かくねらうためにより狭いビーム幅を有していてもよい。また、コントローラ130は、方向指示器138に情報を提供して、対象となるRFID装置への方向を示す使用者への出力を生成してもよい。さらに、コントローラ130は、制御回路122〜123を用いて能動型アンテナアレイ112の角度識別力(discrimination)をより細かく調整して、対象となるRFID装置への方向145以外の方向から受信した帰還信号の処理を削減してもよい。
【0026】
携帯型RFID読取り機102は、追加の呼びかけパターンを反復して生成することにより、対象となるRFID装置への方向をより細かく特定し、受信した帰還信号の角度識別力を向上させ、かつ、使用者を対象となるRFID装置へ向けるために方向指示器に追加のまたはより良い情報を提供することができる。
【0027】
コントローラ130は、対象となるRFID装置への方向の特定を促進するために、対象となるRFID装置からではない能動型アンテナアレイ112で受信した帰還信号を除外してもよい。例えば、第1RFID装置114が対象となるRFID装置であるとき、第2RFID装置115および第3RFID装置116から受信する帰還信号は、破棄してもよい。また、マルチパス帰還信号160を破棄してもよい。例えば、コントローラ130は、予想外の角度(例えば、携帯型RFID読取り機102の指示方向144とは大幅に異なる角度)から受信した帰還信号を除外してもよい。
【0028】
適応型ビーム形成は、ある信号到着方向に対する感度を低下させることにより、マルチパス環境における携帯型RFID読取り機102の角度選択性または識別力を動的に調節するために用いることができる。例えば、携帯型RFID読取り機102は、信号処理手法を用いて、あらゆる特定の方向から受信される不要な信号を無効にしてもよい。したがって、携帯型RFID読取り機102は、対象となるRFID装置の方向から受信する帰還信号に集中することができるかもしれない。ある方向における角度識別力が増すことは、(第2RFID装置115および第3RFID装置116といった)数多くの他のRFID装置の存在下で対象となるRFID装置を探索する際にも有用であり得る。
【0029】
例えば、第1呼びかけパターン142について、RFエネルギーは、比較的幅広のビームパターンにおける空間前面全体にわたって能動型アンテナアレイ112により分散可能である。第2呼びかけパターン143といった後続のパターンの方向は、応答信号154、160の到着角度と、位相と、信号強度と、あるいはRFID装置識別子136のような対象となるRFID装置を識別する情報とに基づいて計算可能である。各アンテナ要素120〜121からの受信帰還信号154、160は、特有の位相により偏移され、所定の重み因子により調節されるか、またはその両方の組み合わせにより、対象となるRFID装置の方向における角度識別力を向上させてもよい。
【0030】
能動型アンテナアレイ112により、メインローブと、あるいは1つ以上のヌルと、サイドローブとを含む制御可能なビームパターンを作ってもよい。ローブの位置および利得は、制御回路122〜123を用いて制御することができる。対象となるRFID装置への方向が十分確実にまたは正確に(例えば、所定のまたは調節可能な閾値に基づいて)特定されるまで、後続の呼びかけパターンに対して毎度異なるパターンを用いることができる。
【0031】
図2は、図1の携帯型RFID読取り機102といった携帯型RFID読取り機のアンテナアレイ200の第1の特定の実施形態を示している。能動型アンテナアレイ200は、第1アンテナ要素201と第2アンテナ要素202とを含む。能動型アンテナアレイ200は、アンテナ要素201とアンテナ要素202との中心から中心まで測定した間隔がおよそ4インチである。したがって、能動型アンテナアレイ200は、携帯型RFID読取り機において使用可能となるのに十分なほど小型である。あるRFID用途に対して、信号は、約915MHzの中心周波数で送られてもよい。自由空間における光速をおよそ2.9979×10^10cm/secとすると、これら信号の固有波長は、約12.9インチである。したがって、図2に示されているアンテナ要素201および202の中心間間隔は、二分の一波長(すなわち、約0.31波長)より短い。アンテナ要素201および202により受信される帰還信号に基づいて和信号および差信号を決定することにより、図4および図5を参照しつつさらに説明するように、アンテナアレイ200は、複数のRFID装置およびマルチパス帰還路信号の存在下でも、対象となるRFID装置への方向の特定に十分な方向識別力を有することができる。
【0032】
図3は、携帯型RFID読取り機300の第1の特定の実施形態の回路図である。携帯型RFID読取り機300は、第1アンテナ要素301と第2アンテナ要素302とを有する能動型アンテナアレイを含む。例えば、能動型アンテナアレイは、図2の能動型アンテナアレイ200であってもよい。別の実施例において、能動型アンテナアレイは、図2の能動型アンテナアレイ200とは異なるアンテナ要素301〜302の間隔を有していてもよい。例示のために、能動型アンテナアレイは、図17、図19、図21および図23の能動型アンテナアレイのうちの1つとしてもよい。
【0033】
携帯型RFID読取り機300はまた、和差回路240を含む。和差回路240は、マイクロコントローラ242に和信号および差信号を提供してもよい。マイクロコントローラ242は、アンテナ要素301〜302の各々の適応型ビーム形成制御回路に複雑な重量信号を送ってもよい。例えば、マイクロコントローラ242は、アンテナ要素301〜302の移相器211〜212に位相信号を提供してもよい。別の実施例において、マイクロコントローラ242は、アンテナ要素301〜302の低雑音増幅器221〜222に大きさ信号を提供してもよい。位相信号および大きさ信号は、アンテナ要素301〜302により用いられて、放射器231〜232を介して、アンテナアレイにより生成された適応型ビーム形を生成してもよい。位相信号および大きさ信号はまたさらに、または、代わりに、アンテナ要素301〜302により用いられて、能動型アンテナアレイの方向識別力を調整してもよい。マイクロコントローラ242は、表示部244を介して方向表示を提供してもよい。方向表示は、携帯型RFID読取り機300の操作者に、対象となるRFID装置への方向を示してもよい。携帯型RFID読取り機300はまた、図1の携帯型RFID読取り機102に示した構成部品のような追加の構成部品を含んでもよい。
【0034】
図4および図5は、二要素アンテナアレイに関連する疑似和および差信号を示している。とりわけ、図4は、図2の二要素能動型アンテナアレイ200についての和ビームパターン401および差ビームパターン402を示している。シータ=0度における差パターン402の鋭いヌルは、優れた感度を示している。例えば、RFID読取り機用途に対する少なくとも+/−10度の角度選択が期待される。上記鋭いヌルはまた、不要反射を拒否し、RFID読取り機によるより少ない帰還信号ビームの処理を可能とするので、マルチパスの軽減をもたらす。
【0035】
図5は、図2の二要素アンテナアレイ200を用いて形成した適応型ビームに対する和ビームパターン501および差ビームパターン502を示している。二要素アンテナアレイ200により形成した適応型ビームは、約30度の走査により空間内において電子的に走査可能である。
【0036】
図6は、図1の携帯型RFID読取り機102といった携帯型RFID読取り機の能動型アンテナアレイ600の第2の特定の実施形態を示している。能動型アンテナアレイ600は、第1アンテナ要素601と第2アンテナ要素602と第3アンテナ要素603とを含む。能動型アンテナアレイ600は、アンテナ要素601とアンテナ要素602との中心から中心まで測定した第1軸に沿った間隔がおよそ2インチであり、アンテナ要素602とアンテナ要素603との中心から中心まで測定した第2軸に沿った間隔がおよそ2インチである。ある特定の実施形態において、第1軸は、第2軸と垂直である。能動型アンテナアレイ600全体がカバーしているのは、16平方インチ未満なので、携帯型RFID読取り機において使用可能となるのに十分なほど小型である。また、アンテナ要素601〜603は、非直線構成(具体的には、三角形の構成)で配置されている。アンテナ要素601〜603の非直線構成により、ここで方位角および仰角と呼ばれる2本の軸に沿った方向の特定が可能となる。アンテナ要素601〜603により受信される帰還信号に基づいて和信号および差信号を決定することにより、アンテナアレイ600は、複数のRFID装置およびマルチパス帰還路信号の存在下でも、対象となるRFID装置への方位角および仰角方向の特定に十分な方向識別力を有することができる。
【0037】
図7は、携帯型RFID読取り機700の第2の特定の実施形態の回路図である。携帯型RFID読取り機700は、第1アンテナ要素701と第2アンテナ要素702と第3アンテナ要素703とを含む3つのアンテナ要素を有する能動型アンテナアレイを含む。例えば、能動型アンテナアレイは、図6の能動型アンテナアレイ600であってもよい。別の実施例において、能動型アンテナアレイは、図6の能動型アンテナアレイ600とは異なるアンテナ要素601〜603の間隔または構成を有していてもよい。例えば、アンテナ要素701〜703は、直線的に配置されるか、図6の能動型アンテナアレイ600とは異なる非直線構成で配置されてもよい。別の実施例において、アンテナ要素701〜703の間隔、大きさまたはその両方は、図6のアンテナ要素601〜603の間隔、大きさまたはその両方と異なっていてもよい。
【0038】
携帯型RFID読取り機700は、和差回路640および641を含む。第1和差回路641は、第1アンテナ要素701および第2アンテナ要素702といった2つのアンテナ要素に基づいて、和信号、差信号またはその両方を決定してもよい。第1和差回路641により決定された和信号、差信号またはその両方は、第2和差回路640に提供されてもよい。第2和差回路640は、第1和差回路641および残りのアンテナ要素、この場合は、第3アンテナ要素703から受信した和信号および差信号に基づいて和信号および差信号をマイクロコントローラ642に提供してもよい。
【0039】
マイクロコントローラ642は、アンテナ要素701〜703の各々の適応型ビーム形成制御回路に信号を送ってもよい。例えば、マイクロコントローラ642は、アンテナ要素701〜703の移相器611〜613に位相信号を提供してもよい。別の実施例において、マイクロコントローラ642は、アンテナ要素701〜703の低雑音増幅器621〜623に重量信号を提供してもよい。位相信号および重量信号は、アンテナ要素701〜703により用いられて、放射器631〜633を介して、能動型アンテナアレイにより放射された適応型ビーム形を生成してもよい。位相信号および重量信号はまたさらに、または、代わりに、アンテナ要素701〜703により用いられて、能動型アンテナアレイの角度識別力を調整してもよい。マイクロコントローラ642はまた、表示部644を介して方向表示を提供してもよい。方向表示は、携帯型RFID読取り機700の操作者に、対象となるRFID装置への方向を示してもよい。アンテナ要素701〜703が非直線構成で配置されているとき、方向表示は、対象となるRFID装置に対する2本の軸、例えば、方位角方向および仰角方向に沿った方向情報を含んでいてもよい。携帯型RFID読取り機700はまた、図1の携帯型RFID読取り機102に示した構成部品のような追加の構成部品を含んでもよい。
【0040】
図8は、図1の携帯型RFID読取り機102といった携帯型RFID読取り機のアンテナアレイ800の第3の特定の実施形態を示している。アンテナアレイ800は、第1アンテナ要素801と第2アンテナ要素802と第3アンテナ要素803と第4アンテナ要素804とを含む。アンテナアレイ800は、アンテナ要素801とアンテナ要素804と(最も外側のアンテナ要素同士)の中心から中心まで測定した間隔がおよそ4インチである。図2を参照しつつ説明したように、あるRFID技術により用いられる固有波長は、約12.9インチである。したがって、最も外側のアンテナ要素801および804の中心間間隔は、二分の一波長(すなわち、約0.31波長)より短く、(第1アンテナ要素801および第2アンテナ要素802といった)隣接するアンテナ要素の中心間間隔は、約四分の一波長より短い。よって、アンテナアレイ800は、携帯型RFID読取り機において使用可能となるのに十分なほど小型である。アンテナ要素801〜804により受信される帰還信号に基づいて和信号および差信号を決定することにより、アンテナアレイ800は、複数のRFID装置およびマルチパス帰還路信号の存在下でも、対象となるRFID装置への方向の特定に十分な方向識別力を有することができる。さらに、図2の能動型アンテナアレイ200と比較してアンテナアレイ800に存在する追加のアンテナ要素は、アンテナ要素201〜202と比較してアンテナ要素801〜804がより小型であるにも関わらず、方向識別力の向上をもたらす可能性がある。
【0041】
ある特定の実施形態において、図8のように、2つより多くのアンテナ要素を用いてアンテナアレイを形成する際、アンテナ要素は、サブアレイにまとめることができる。例えば、第1アンテナ要素801および第2アンテナ要素802を第1サブアレイ(「第1サブ」)としてもよく、第3アンテナ要素803および第4アンテナ要素804を第2サブアレイ(「第2サブ」)としてもよい。別の実施例において、第1アンテナ要素801および第3アンテナ要素803を第1サブアレイとしてもよく、第2アンテナ要素802および第4アンテナ要素804を第2サブアレイとしてもよい。さらに別の実施例において、第1アンテナ要素801および第4アンテナ要素804を第1サブアレイとしてもよく、第2アンテナ要素802および第3アンテナ要素803を第2サブアレイとしてもよい。サブアレイのその他の構成もまた可能である。例えば、第1サブアレイは、第1、第2および第3アンテナ要素801〜803のような3つのアンテナ要素を含んでいてもよく、第2サブアレイは、1つのアンテナ要素のみ、例えば、第4アンテナ要素804を含んでいてもよい。したがって、図8およびその後の図に示したサブアレイの集まりは、説明のためのものであり、限定するものではない。
【0042】
図9は、携帯型RFID読取り機900の第3の特定の実施形態の回路図である。携帯型RFID読取り機900は、第1アンテナ要素901と第2アンテナ要素902と第3アンテナ要素903と第4アンテナ要素904とを含む4つのアンテナ要素を有する能動型アンテナアレイを含む。例えば、能動型アンテナアレイは、図8の能動型アンテナアレイ800であってもよい。別の実施例において、能動型アンテナアレイは、図8の能動型アンテナアレイ800とは異なるアンテナ要素901〜904の間隔または構成を有していてもよい。例えば、アンテナ要素901〜904は、直線的に配置されるか、非直線構成で配置されてもよい。別の実施例において、アンテナ要素901〜904の間隔、大きさまたはその両方は、アンテナ要素801〜804の間隔、大きさまたはその両方と異なっていてもよい。
【0043】
ある特定の実施形態において、アンテナ要素901〜904は、サブアレイに構成されている。携帯型RFID読取り機900は、第1和差回路841および第2和差回路843を含む。第1和差回路841および第2和差回路843は、各対応するサブアレイのアンテナ要素により受信される信号に基づいて、和信号、差信号またはその両方を決定してもよい。例えば、第1和差回路841は、第1アンテナ要素901および第2アンテナ要素902により受信される信号に基づいて、和信号および差信号を決定して、第1サブアレイ信号を形成してもよい。第2和差回路843は、第3アンテナ要素903および第4アンテナ要素904により受信した信号に基づいて、和信号および差信号を決定して、第2サブアレイ信号を形成してもよい。第1サブアレイ信号および第2サブアレイ信号は、和差回路840において受信されてもよい。和差回路840は、マイクロコントローラ842に提供される和信号および差信号を生成してもよい。
【0044】
マイクロコントローラ842は、アンテナ要素901〜904の各々の適応型ビーム形成制御回路に信号を送ってもよい。例えば、マイクロコントローラ842は、アンテナ要素901〜904の移相器811〜814に位相信号を提供してもよい。別の実施例において、マイクロコントローラ842は、アンテナ要素901〜904の低雑音増幅器821〜824に重量信号を提供してもよい。位相信号、重量信号またはその両方は、アンテナ要素901〜904により用いられて、放射器831〜834を介して、アンテナアレイにより放射された適応型ビームパターンを生成してもよい。またさらに、または、代わりに、位相信号、重量信号またはその両方は、アンテナ要素901〜904により用いられて、アンテナアレイの角度識別力を調整してもよい。
【0045】
マイクロコントローラ842はまた、表示部844を介して方向表示を提供してもよい。方向表示は、携帯型RFID読取り機900の操作者に、対象となるRFID装置への方向を示してもよい。アンテナ要素901〜904が非直線構成で配置されているとき、方向表示は、対象となるRFID装置に対する2本の軸、例えば、方位角方向および仰角方向に沿った方向情報を含んでいてもよい。携帯型RFID読取り機900はまた、図1の携帯型RFID読取り機102に示した構成部品のような追加の構成部品を含んでもよい。
【0046】
図10および図11は、四要素アンテナアレイに関連する疑似和および差信号を示している。図10は、図8において示されているようにアンテナ要素がサブアレイに構成されている状態の図8の四要素能動型アンテナアレイ800についての和ビームパターン1001および差ビームパターン1002を示している。すなわち、第1アンテナ要素801および第2アンテナ要素802は、第1サブアレイを形成し、第3アンテナ要素803および第4アンテナ要素804は、第2サブアレイを形成する。図10の和ビームパターン1001および差ビームパターン1002を生成するために、各対応するサブアレイのアンテナ要素を合計して、サブアレイ信号を形成する。和ビームパターン1001および差ビームパターン1002は、サブアレイ信号に基づいて決定される。シータ=0度における差パターン1002の鋭いヌルは、図4の差パターン402と比較して向上した感度を示している。RFID読取り機用途に対する+/−10度よりも大きい角度選択が期待される。上記鋭いヌルはまた、不要反射を拒否することができ、より少ない帰還信号ビームを携帯型RFID読取り機により処理してもよいので、マルチパス軽減の向上を示す。
【0047】
図11は、アンテナ要素がサブアレイに構成されていない状態の図8の四要素能動型アンテナアレイ800に対する和ビームパターン1101および差ビームパターン1102を示している。すなわち、第1、第2、第3および第4アンテナ要素801〜804を合計して、和信号を決定する。第1および第2アンテナ要素801〜802の合計を、第3および第4アンテナ要素803〜804の合計から減算して、差信号を決定する。シータ=0度における差パターン1102の鋭いヌルは、図4の差パターン402と比較して向上した感度を示している。RFID読取り機用途に対する+/−10度よりも大きい角度選択が期待される。上記鋭いヌルはまた、マルチパス軽減の向上を示す。
【0048】
図12は、図1の携帯型RFID読取り機102といった携帯型RFID読取り機のアンテナアレイ1200の第4の特定の実施形態を示している。能動型アンテナアレイ1200は、非直線(例えば、正方形または長方形)構成で配置されている第1アンテナ要素1201と第2アンテナ要素1202と第3アンテナ要素1203と第4アンテナ要素1204とを含む。能動型アンテナアレイ1200は、第1アンテナ要素1201と第3アンテナ要素1203との中心から中心まで測定した第1軸に沿った間隔がおよそ2インチであり、第1アンテナ要素1201と第2アンテナ要素1202との中心から中心まで測定した第2軸に沿った間隔がおよそ2インチである。第1軸と第2軸とは、互いに垂直であってもよい。図2を参照しつつ説明したように、あるRFID技術により用いられる固有波長は、約12.9インチである。したがって、アンテナ要素1201〜1204の中心間間隔は、両軸に沿って約六分の一波長(すなわち、約0.15波長)である。また、縁部寸法が約4インチ×4インチより短い状態で、能動型アンテナアレイ1200は、携帯型RFID読取り機において使用可能となるのに十分なほど小型である。アンテナ要素1201〜1204により受信される帰還信号に基づいて和信号および差信号を決定することにより、アンテナアレイ1200は、複数のRFID装置およびマルチパス帰還路信号の存在下でも、対象となるRFID装置への方向の特定に十分な方向識別力を有することができる。さらに、図2の能動型アンテナアレイ200と比較して能動型アンテナアレイ1200に存在する追加のアンテナ要素は、方向識別力の向上をもたらす可能性がある。さらに、アンテナ要素1201〜1204は、非直線構成で配置されているので、アンテナアレイは、2本の軸、例えば、方位角軸および仰角軸において方向識別力を提供できる。
【0049】
ある特定の実施形態において、アンテナ要素1201〜1204は、サブアレイにまとめることができる。例えば、第1アンテナ要素1201および第2アンテナ要素1202を第1サブアレイとしてもよく、第3アンテナ要素1203および第4アンテナ要素1204を第2サブアレイとしてもよい。別の実施例において、第1アンテナ要素1201および第3アンテナ要素1203を第1サブアレイとしてもよく、第2アンテナ要素1202および第4アンテナ要素1204を第2サブアレイとしてもよい。さらに別の実施例において、第1アンテナ要素1201および第4アンテナ要素1204を第1サブアレイとしてもよく、第2アンテナ要素1202および第3アンテナ要素1203を第2サブアレイとしてもよい。その他のサブアレイ構成もまた可能である。例えば、3つのアンテナ要素が第1サブアレイを形成してもよく、1つのアンテナ要素が第2サブアレイを形成してもよい。同様に、1つ以上のアンテナ要素が、1つより多くのサブアレイに含まれていてもよい。例えば、第1サブアレイは、第1アンテナ要素1201、第2アンテナ要素1202および第3アンテナ要素1203を含んでいてもよく、第2サブアレイは、第2アンテナ要素1202、第3アンテナ要素1203および第4アンテナ要素1204を含んでいてもよい。さらに、2つより多くのサブアレイを用いてもよい。例えば、第1サブアレイは、第1アンテナ要素1201、第3アンテナ要素1203および第4アンテナ要素1204を含んでいてもよく、第2サブアレイは、第2アンテナ要素1202、第3アンテナ要素1203および第4アンテナ要素1204を含んでいてもよく、第3サブアレイは、第1アンテナ要素1201、第2アンテナ要素1202および第4アンテナ要素1204を含んでいてもよく、第4サブアレイは、第1アンテナ要素1201、第2アンテナ要素1202および第3アンテナ要素1203を含んでいてもよい。同様に、アンテナ要素1201〜1204のいくつかまたはすべてが1つより多くのサブアレイに用いられている状態で、さまざまな群の2つのアンテナ要素をサブアレイにまとめてもよい。
【0050】
図13は、携帯型RFID読取り機1300の第4の特定の実施形態の回路図である。携帯型RFID読取り機1300は、第1アンテナ要素1301と第2アンテナ要素1302と第3アンテナ要素1303と第4アンテナ要素1304とを含む4つのアンテナ要素を有する能動型アンテナアレイを含む。例えば、能動型アンテナアレイは、図12の能動型アンテナアレイ1200であってもよい。別の実施例において、能動型アンテナアレイは、図12の能動型アンテナアレイ1200とは異なるアンテナ要素1301〜1304の間隔、大きさまたは構成を有していてもよい。例えば、アンテナ要素1301〜1304は、直線的に配置されるか、異なる非直線構成で配置されてもよい。
【0051】
ある特定の実施形態において、アンテナ要素1301〜1304は、サブアレイに構成されている。携帯型RFID読取り機1300は、第1和差回路1241および第2和差回路1243を含む。第1和差回路1241および第2和差回路1243は、各対応するサブアレイのアンテナ要素により受信される応答信号に基づいて、和信号、差信号またはその両方を決定してもよい。例えば、第1和差回路1241は、第1アンテナ要素1301および第4アンテナ要素1304により受信される応答信号に基づいて、和信号および差信号を決定して、第1サブアレイ信号を形成してもよい。第2和差回路1243は、第2アンテナ要素1302および第3アンテナ要素1303により受信した応答信号に基づいて、和信号および差信号を決定して、第2サブアレイ信号を形成してもよい。第1サブアレイ信号および第2サブアレイ信号は、和差回路1240において受信されてもよい。和差回路1240は、マイクロコントローラ1242に提供される和信号および差信号を生成してもよい。
【0052】
マイクロコントローラ1242は、アンテナ要素1301〜1304の各々の適応型ビーム形成制御回路に信号を送ってもよい。例えば、マイクロコントローラ1242は、アンテナ要素1301〜1304の移相器1211〜1214に位相信号を提供してもよい。別の実施例において、マイクロコントローラ1242は、アンテナ要素1301〜1304の低雑音増幅器1221〜1224に重量信号を提供してもよい。位相信号、重量信号またはその両方は、アンテナ要素1301〜1304により用いられて、放射器1231〜1234を介して、アンテナアレイにより放射された適応型ビームパターンを生成してもよい。またさらに、または、代わりに、位相信号、重量信号またはその両方は、アンテナ要素1301〜1304により用いられて、アンテナアレイの角度識別力を調整してもよい。
【0053】
マイクロコントローラ1242はまた、表示部1244を介して方向表示を提供してもよい。方向表示は、携帯型RFID読取り機1300の操作者に、対象となるRFID装置への方向を示してもよい。アンテナ要素1301〜1304が非直線構成で配置されているとき、方向表示は、対象となるRFID装置に対する2本の軸、例えば、方位角方向および仰角方向に沿った方向情報を含んでいてもよい。携帯型RFID読取り機1300はまた、図1の携帯型RFID読取り機102に示した構成部品のような追加の構成部品を含んでもよい。
【0054】
図14は、図1の携帯型RFID読取り機102といった携帯型RFID読取り機のアンテナアレイ1400の第5の特定の実施形態を示している。アンテナアレイ1400は、非直線(例えば、長方形または蝶ネクタイ)構成で配置されている第1アンテナ要素1401と第2アンテナ要素1402と第3アンテナ要素1403と第4アンテナ要素1404と第5アンテナ要素1405とを含む。アンテナアレイ1400は、第1アンテナ要素1401と第2アンテナ要素1402との中心から中心まで測定した第1軸に沿った間隔がおよそ0.6波長であり、第1アンテナ要素1401と第4アンテナ要素1404との中心から中心まで測定した第2軸に沿った間隔がおよそ0.35波長である。図2を参照しつつ説明したように、あるRFID技術により用いられる固有波長は、約12.9インチである。したがって、第1軸に沿った中心間間隔は、約7.75インチであり、第2軸に沿った間隔は、約1インチである。よって、能動型アンテナアレイ1400は、携帯型RFID読取り機において使用可能となるのに十分なほど小型である。
【0055】
アンテナ要素1401〜1405により受信される帰還信号に基づいて和信号および差信号を決定することにより、アンテナアレイ1400は、複数のRFID装置およびマルチパス帰還路信号の存在下でも、対象となるRFID装置への方向の特定に十分な方向識別力を有することができる。さらに、図2の能動型アンテナアレイ200と比較して能動型アンテナアレイ1400に存在する追加のアンテナ要素は、方向識別力の向上をもたらす可能性がある。さらに、アンテナ要素1401〜1405は、非直線構成で配置されているので、アンテナアレイは、2本の軸において、例えば、方位角軸に沿ってかつ仰角軸に沿って方向識別力を提供できる。
【0056】
また、上で説明したように、アンテナ要素1401〜1405を用いて、サブアレイを形成してもよい。例えば、2つ、3つまたは4つのアンテナ要素1401〜1405の群をサブアレイとなるように配置してもよい。いくつかまたはすべてのアンテナ要素1401〜1405が、1つより多くのサブアレイに含まれていてもよい。
【0057】
図15および図16は、図14のアンテナアレイ1400に関連する疑似和および差信号を示している。とりわけ、図15は、図14の蝶ネクタイ形能動型アンテナアレイ1400についての和ビームパターン1501および差ビームパターン1502を示している。シータ=0度における差パターン1502の鋭いヌルは、優れた感度を示している。例えば、RFID読取り機用途に対する少なくとも+/−10度の角度選択が期待される。上記鋭いヌルはまた、不要反射が拒否され、より少ない帰還信号ビームを携帯型RFID読取り機により処理してもよいので、マルチパスの軽減を示す。
【0058】
図16は、図14の蝶ネクタイ能動型アンテナアレイ1400を用いて形成した適応型ビームに対する和ビームパターン1601および差ビームパターン1602を示している。蝶ネクタイ能動型アンテナアレイ1400により形成した適応型ビームは、中心から30度より大きい走査角度で空間内において電子的に走査可能である。
【0059】
図17、図19、図21および図23は、さまざまな間隔を有する二要素アンテナアレイの実施形態を示している。図18、図20、図22および図24は、それぞれ、図17、図19、図21および図23の二要素アンテナアレイに関連する疑似和および差信号を示している。
【0060】
図17は、アンテナ要素1701とアンテナ要素1702との中心間間隔が約0.5波長である携帯型RFID読取り機のアンテナアレイ1700の第6の特定の実施形態を示している。図18は、図17のアンテナアレイ1700に関連する疑似和および差信号を示しており、かつ、アンテナ要素1701とアンテナ要素1702との二分の一波長の間隔において、アンテナアレイ1700が良好な感度および角度選択を有することを示している。
【0061】
図19は、アンテナ要素1901とアンテナ要素1902との中心間間隔が約0.25波長である携帯型RFID読取り機のアンテナアレイ1900の第7の特定の実施形態を示している。図20は、図19のアンテナアレイ1900に関連する疑似和および差信号を示しており、かつ、アンテナ要素1901とアンテナ要素1902との四分の一波長の間隔において、アンテナアレイ1900が依然として良好な感度および角度選択を有することを示している。
【0062】
図21は、アンテナ要素2101とアンテナ要素2102との中心間間隔が約0.125波長である携帯型RFID読取り機のアンテナアレイ2100の第8の特定の実施形態を示している。図22は、図21のアンテナアレイ2100に関連する疑似和および差信号を示しており、かつ、アンテナ要素2101とアンテナ要素2102との八分の一波長の間隔において、アンテナアレイ2100が依然として良好な感度および角度選択を有することを示している。
【0063】
図23は、アンテナ要素2301とアンテナ要素2302との中心間間隔が約0.0625波長である携帯型RFID読取り機のアンテナアレイ2300の第9の特定の実施形態を示している。図24は、図23のアンテナアレイ2300に関連する疑似和および差信号を示しており、かつ、アンテナ要素2301とアンテナ要素2302との十六分の一波長の間隔において、アンテナアレイ2300が有用な感度および角度選択を有することを示している。ただし、図17〜図24は二アンテナ要素アレイを扱っているが、感度および角度選択は、より多くのアンテナ要素の追加によりさらに向上させてもよい。例えば、隣接するアンテナ要素間の中心間間隔が十六分の一波長である四アンテナ要素アレイは、アンテナアレイの全体寸法を非常に小さく維持しつつ、図23の二要素アンテナアレイ2300に対して向上した性能を有しているはずである。例えば、固有波長が約12.9インチであるとき、十六分の一波長の中心間間隔は、1インチより短い。したがって、十六分の一波長の中心間間隔を有する正方形構成の四要素アンテナアレイは、約1平方インチの面積をカバー可能である。
【0064】
図25は、携帯型RFID読取り機を用いる方法の第1の特定の実施形態のフローチャートである。該方法は、2502において、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイから少なくとも1つの第1RFID呼びかけ信号を送る携帯型RFID読取り機を用いることを含む。この文脈における呼びかけ信号は、RFID装置からの情報を要求し、かつ、RFID装置を書き換えたりプログラムし直したりしない信号を含んでもよい。携帯型RFID読取り機におけるアンテナアレイは、複数のアンテナ要素を含む。例えば、携帯型RFID読取り機は、図1に示した携帯型RFID読取り機102を含んでもよい。アンテナアレイは、携帯型RFID読取り機が携帯型手持ち走査に十分なほど小型である限りにおいて、あらゆる数または構成のアンテナアレイ要素を含んでいてもよい。例えば、アンテナアレイは、図2、図6、図8、図12、図14、図17、図19、図21または図23を参照しつつ説明したようなアンテナ要素と、図3、図7、図9または図13を参照しつつ説明したような回路とを含んでもよい。
【0065】
2504において、携帯型RFID読取り機に近接したRFID装置から第1応答信号を受信してもよい。第1応答信号は、少なくともアンテナアレイの第1アンテナ要素により、かつ、アンテナアレイの第2アンテナ要素により受信されてもよい。該方法はまた、2506において、第1アンテナ要素により受信された第1応答信号と第2アンテナ要素により受信された第1応答信号とを合計することにより和信号を決定することを含む。該方法はさらに、2508において、第1アンテナ要素により受信された第1応答信号と第2アンテナ要素により受信された第1応答信号との差を求めることにより差信号を決定することを含む。該方法はまた、2510において、和信号および差信号に基づいて携帯型RFID読取り機からRFID装置への方向を特定することを含む。該方法はまた、2512において、携帯型RFID読取り機の指示器を起動することを含んでもよい。指示器は、RFID装置への方向を示してもよい。
【0066】
図26は、携帯型RFID読取り機を用いる方法の第2の特定の実施形態のフローチャートである。該方法は、2602において、携帯型RFID読取り機のアンテナアレイから少なくとも1つの第1RFID呼びかけ信号を送ることを含む。携帯型RFID読取り機は、図1〜図24を参照しつつ説明したようなRFID読取り機を含んでもよい。携帯型RFID読取り機は、複数のアンテナ要素を含む能動型アンテナアレイを含んでもよい。第1RFID呼びかけ信号は、図1を参照しつつ説明した第1呼びかけパターン142のようなある特定の位相および振幅を各々が有する能動型アンテナアレイのアンテナ要素からの信号を介して送ってもよい。
【0067】
該方法はまた、2604において、対象となるRFID装置とRFID読取り機に近接して位置する1つ以上の他のRFID装置とからの複数の応答信号を受信することを含む。応答信号は、能動型アンテナアレイの少なくとも第1アンテナ要素と第2アンテナ要素とにより受信されてもよい。該方法はまた、2606において、第1アンテナ要素により受信された第1応答信号と第2アンテナ要素により受信された第1応答信号とを合計することにより和信号を決定することを含む。その他のアンテナ要素により受信された信号に基づいて追加の和信号を決定してもよい。例えば、2つより多くのアンテナ要素が存在するとき、2つ以上のアンテナ要素をまとめて、和信号および差信号を決定するための個々の要素として扱われるサブアレイとすることにより、対象となるRFID装置への方向を特定してもよい。該方法はまた、2608において、第1アンテナ要素により受信された第1応答信号と第2アンテナ要素により受信された第1応答信号との差を求めることにより差信号を決定することを含んでもよい。和信号と同様に、差信号は、2つより多くのアンテナ要素が存在するとき、能動型アンテナアレイのサブアレイに基づいて決定してもよい。
【0068】
該方法はまた、2610において、対象となるRFID装置を識別するデータを含む携帯型RFID読取り機のメモリにアクセスすることを含んでもよい。該方法はまた、2612において、携帯型RFID読取り機により受信した複数の応答信号をフィルターにかけることにより、第1RFID装置から受信した第1応答信号を識別することを含んでもよい。例えば、対象となるRFID装置以外のRFID装置から受信した応答信号は、フィルタリングにより破棄してもよい。該方法はまた、2614において、和信号および差信号に基づいて携帯型RFID読取り機から対象となるRFID装置への方向を特定してもよい。
【0069】
該方法はまた、2616において、携帯型RFID読取り機からの第2RFID呼びかけ信号を概ね対象となるRFID装置へ向けて電子的に誘導することを含んでもよい。例えば、第2RFID呼びかけ信号は、携帯型RFID読取り機の能動型アンテナアレイから第2ビームパターンを介して送られてもよい。第2ビームパターンは、適応型ビーム形成を用いて電子的に誘導されてもよい。例えば、第2ビームパターンは、図1の第2呼びかけパターン143を含んでもよい。例示のために、第2ビームパターンを形成するために1つ以上のアンテナ要素から送られる信号は、第1RFID呼びかけパターンの信号の位相および振幅に対して修正された位相、修正された振幅またはその両方を有していてもよい。またさらに、または、代わりに、該方法は、修正された位相、修正された振幅またはその両方を用いて能動型アンテナアレイの角度識別力を調整することを含んでもよい。
【0070】
該方法はまた、2618において、能動型アンテナアレイにより対象となるRFID装置と、あるいは1つ以上の他のRFID装置とからの第2応答信号を受信することを含んでもよい。例えば、第2応答信号は、アンテナアレイの少なくとも第1アンテナ要素および第2アンテナ要素により受信されてもよい。該方法はまた、2620において、第2和信号および第2差信号を決定することを含んでもよい。例えば、第2和信号は、第1アンテナ要素により受信された第2応答信号と第2アンテナ要素により受信された第2応答信号とを合計することにより決定してもよい。第2差信号は、第1アンテナ要素により受信された第2応答信号と第2アンテナ要素により受信された第2応答信号との差を求めることにより決定してもよい。前に説明したように、2つより多くのアンテナ要素が存在するとき、和信号および差信号を決定するためにアンテナ要素をまとめてサブアレイとしてもよい。
【0071】
該方法はまた、2622において、第2和信号および第2差信号に基づいて携帯型RFID読取り機から対象となるRFID装置への改良した方向を特定することを含む。ある特定の実施形態において、該方法は、2616へ戻って、携帯型RFID読取り機から概ね対象となるRFID装置へ向かって後続のRFID呼びかけ信号を反復して電子的に誘導することにより、携帯型RFID読取り機から対象となるRFID装置へのより改良した方向を続いて特定する。
【0072】
該方法はさらに、2624において、携帯型RFID読取り機の指示器を起動することを含んでもよい。指示器は、対象となるRFID装置への方向を示してもよい。例えば、指示器は、携帯型RFID読取り機から対象となるRFID装置への方位角、仰角またはその両方を示してもよい。
【0073】
ここで説明した実施形態の例示は、さまざまな実施形態の構造の一般的理解を提供することを意図している。該例示は、ここで説明した構造または方法を利用する装置およびシステムの要素および特徴のすべてを完全に説明することを意図してはいない。本開示に目を通すと、数多くの他の実施形態が当業者にとって明らかであろう。他の実施形態を利用し、かつ、本開示から導き出してもよく、その結果、本開示の範囲から逸脱することなく構造的かつ論理的な置換および変更を行ってもよい。例えば、方法工程は、図に示されているものとは異なる順序で行ってもよく、または、1つ以上の方法工程を省略してもよい。よって、開示および図は、制限的というよりむしろ例示的に考慮されるべきである。また、例示を簡潔かつ明確にするために、図示されているある要素は、必ずしも一定の縮尺にしたがってはいない。例えば、要素のうちのいくつかの寸法は、他の要素に対して誇張されていることがある。
【0074】
そのうえ、ここで特定の実施形態を例示および説明してきたが、示した該特定の実施形態の代わりに、同じまたは同様の結果を達成するよう設計されたいかなる後続の配置構成を用いてもよいことは理解されたい。本開示は、さまざまな実施形態のあらゆるすべての後続の適合例または変形例を包含することを意図している。上記実施形態およびここで特定して説明はされていないその他の実施形態の組み合わせは、上記説明に目を通すと当業者にとって明らかとなるだろう。
【0075】
開示の要約は、請求項の範囲または意味を解釈または限定するよう用いられることはないということを理解したうえで提出される。これに加えて、前述の詳細な説明において、開示を簡素化するためにさまざまな特徴をひとまとめにしたり、単一の実施形態において説明していることがある。本開示は、請求されている実施形態が各請求項にはっきりと記載されているより多くの特徴を要件とするという意図を反映しているとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、請求されている主題は、開示されているあらゆる実施形態の特徴のすべてより少ない特徴に関していてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のRFID装置(114、115、116)からRFID信号(154)を受信するための複数のアンテナ要素(120、121)を含む能動型アンテナアレイ(112)であって、複数のアンテナ要素(120、121)が、能動型アンテナアレイ(112)により生成されるビームパターンを制御するための制御回路(122、123)を含む能動型アンテナアレイ(112)と、
複数のアンテナ要素(120、121)のうちの少なくとも2つにより受信されるRFID信号(154)を合計することにより和信号を決定するよう動作可能な和回路(124)と、
複数のアンテナ要素(120、121)のうちの少なくとも2つにより受信されるRFID信号(154)同士の差信号を決定するよう動作可能な差回路(126)と、
制御回路(122、123)を用いて和信号および差信号に基づいてビームパターンを電子的に誘導して、RFID読取り機(102)から1つ以上のRFID装置(114、115、116)のうちのある特定のRFID装置(114、115、116)への方向を特定するためのコントローラ(130)と
を含む、携帯型無線周波数識別(RFID)読取り機(102)。
【請求項2】
受信されるRFID信号が、固有波長を有し、複数のアンテナ要素が、固有波長(156)の二分の一より短い中心間距離だけ離間されている、請求項1に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項3】
中心間距離が、固有波長(156)の八分の一より短い、請求項2に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項4】
ある特定のRFID装置(114、115、116)への方向を示すための方向指示器(138)をさらに含む、請求項1に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項5】
携帯型ハウジング(110)をさらに含み、和回路(124)と、差回路(126)と、コントローラ(130)と、電池(140)とが、携帯型ハウジング(110)内に少なくとも部分的に収容されている、請求項1に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項6】
コントローラ(130)が、差信号の位相に少なくとも部分的に基づいてRFID読取り機(102)からある特定のRFID装置(114、115、116)への方向を特定する、請求項1に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項7】
複数のアンテナ要素(120、121)が、直線構成で配置されている、請求項1に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項8】
複数のアンテナ要素(120、121)が、非直線構成で配置されている、請求項1に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項9】
複数のアンテナ要素(120、121)のうちの少なくとも2つのアンテナ要素(120、121)により放射される波形の位相および振幅の少なくとも一方が、独立して制御可能である請求項1に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項10】
対象となるRFID装置(114、115、116)を示す少なくとも1つのRFID装置識別子(136)を受信するための入力装置(132)と、少なくとも1つのRFID装置識別子(136)を保存するためのメモリ(134)とをさらに含み、ある特定のRFID装置のRFID装置識別子(136)がメモリに保存されているとき、コントローラ(130)が、ある特定のRFID装置への方向を特定する、請求項1に記載の携帯型RFID読取り機。
【請求項11】
1つ以上のRFID装置(114、115、116)からRFID信号(154)を受信するための複数のアンテナ要素(120、121)を含み、受信されるRFID信号(154)が固有波長(156)を有する能動型アンテナアレイ(112)であって、複数のアンテナ要素(120、121)が、少なくとも第1アンテナ要素(120)と第2アンテナ要素(121)とを含み、第1アンテナ要素(120)と第2アンテナ要素(121)とが、固有波長(156)の二分の一より短い距離だけ離間されている能動型アンテナアレイ(112)と、
受信されるRFID信号(154)に基づいて能動型アンテナアレイ(112)のビームパターンを電子的に誘導して、1つ以上のRFID装置のうちのある特定のRFID装置への方向を特定するための回路(128)と
を含む、携帯型無線周波数識別(RFID)読取り機(102)。
【請求項12】
能動型アンテナアレイ(112)が、第1アンテナ要素(120)と第2アンテナ要素(121)との間に少なくとも1つの第3アンテナ要素を含む、請求項11に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項13】
第1アンテナ要素(120)と第2アンテナ要素(121)とに結合されており、第1アンテナ要素(120)と第2アンテナ要素(121)とにより受信されるRFID信号(154)を合計することにより和信号を決定する和回路(124)をさらに含む、請求項11に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項14】
第1アンテナ要素(120)と第2アンテナ要素(121)とに結合されており、第1アンテナ要素(120)と第2アンテナ要素(121)とにより受信されるRFID信号(154)同士の差信号を決定する差回路(126)をさらに含む、請求項11に記載の携帯型RFID読取り機(102)。
【請求項15】
複数のRFID装置の中の対象となるRFID装置の位置を特定する方法であって、
携帯型RFID読取り機のアンテナアレイから少なくとも1つの第1RFID呼びかけ信号を送ること(2502)であって、アンテナアレイが複数のアンテナ要素を含む、送ることと、
少なくともアンテナアレイの第1アンテナ要素により、および、アンテナアレイの第2アンテナ要素により、携帯型RFID読取り機に近接した対象となるRFID装置から第1応答信号を受信すること(2504)と、
第1アンテナ要素により受信された第1応答信号と第2アンテナ要素により受信された第1応答信号とを合計することにより和信号を決定すること(2506)と、
第1アンテナ要素により受信された第1応答信号と第2アンテナ要素により受信された第1応答信号との差を求めることにより差信号を決定すること(2508)と、
和信号および差信号に基づいてRFID読取り機から対象となるRFID装置への方向を特定すること(2510)と、
携帯型RFID読取り機の指示器を起動すること(2512)であって、指示器が対象となるRFID装置への方向を示す、起動することと
を含む方法。
【請求項16】
携帯型RFID読取り機から概ね対象となるRFID装置へ向かって第2RFID呼びかけ信号を電子的に誘導すること(2616)をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アンテナアレイが、複数のアンテナ要素のうちの少なくとも1つのアンテナ要素から位相および振幅を有する第1波形を送信することにより第1RFID呼びかけ信号を送り(2502)、かつ、第2RFID呼びかけ信号を電子的に誘導することが、少なくとも1つのアンテナ要素から第2波形を送ることを含み、第2波形が第1波形に対して修正された位相および修正された振幅のうちの少なくとも一方を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくともアンテナアレイの第1アンテナ要素とアンテナアレイの第2アンテナ要素とにより対象となるRFID装置から第2応答信号を受信すること(2618)と、
第1アンテナ要素により受信された第2応答信号と第2アンテナ要素により受信された第2応答信号とを合計することにより第2和信号を決定すること(2620)と、
第1アンテナ要素により受信された第2応答信号と第2アンテナ要素により受信された第2応答信号との差を求めることにより第2差信号を決定すること(2620)と、
第2和信号および第2差信号に基づいてRFID読取り機から対象となるRFID装置への改良した方向を特定すること(2622)と
をさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第1RFID呼びかけ信号に応答して、対象となるRFID装置を含む携帯型RFID読取り機に近接した複数のRFID装置からの第1応答信号を含む複数の応答信号を受信すること(2604)と、
複数の応答信号をフィルターにかけることにより、第1応答信号を識別すること(2612)と
をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項20】
対象となるRFID装置を識別するデータを含むメモリにアクセスすること(2610)をさらに含み、複数の応答信号がデータに基づいてフィルターにかけられる、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2013−517689(P2013−517689A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548996(P2012−548996)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/020759
【国際公開番号】WO2011/088009
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】