説明

携帯端末、及び携帯端末を用いた方位情報提供方法

【課題】ユーザに方位に関する情報を確実に提供することができるようにする。
【解決手段】基地局200に設けられた複数のアンテナの夫々から無線送信されてくる位置標定信号を受信し、受信した各位置標定信号の位相差に基づき自身の現在位置である端末位置を標定する機能を備えた携帯端末300に、位置標定信号の受信信号強度を取得する回路と、位置標定信号を受信するための指向性アンテナ314とを設ける。携帯端末300は、位置標定に用いた座標系と絶対方位との関係を示す情報である基地局情報を基地局200から受信し、受信信号強度に基づき指向性アンテナ314の指向方向が基地局200の方向を向くように誘導する画面を表示し、標定した端末位置と基地局情報とに基づき絶対方位を示す情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末、及び携帯端末を用いた方位情報提供方法に関し、とくに携帯端末に方位に関する情報を提供する機能を実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ユニバーサル社会の実現等を目指して自律移動システムの研究/開発が盛んに行われている。自律移動システムに関し、例えば非特許文献1には、その要素技術として、基地局に設置した複数のアンテナから歩行者が携帯する携帯端末に無線信号を送信し、各アンテナから送信されてくる無線信号の位相差によって携帯端末とアンテナとの相対的な位置関係を求め、求めた位置関係と予め知れている基地局の絶対位置とに基づき歩行者の現在位置を取得するように構成した位置標定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】武内 保憲,河野 公則,河野 実則、” 2.4GHz帯を用いた場所検知システムの開発”、平成17年度 電気・情報関連学会中国支部第56回連合大会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した位置標定システムの機能を備えた携帯端末を利用して目的地まで移動する場合、自身の現在位置に加えて方位(磁気方位又は真方位)を確認することができれば、建物等の周囲の目標物と地図との対応をとりながら移動できるので安心かつ便利である。ここで携帯端末に方位に関する情報を提供する機能を持たせる方法としては、地磁気センサを利用することが考えられる。しかし地磁気センサは鉄筋コンクリート造の建物内などの地磁気が遮蔽される状況では機能しないという問題がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、方位に関する情報を提供することが可能な携帯端末、及び携帯端末を用いた方位情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、携帯端末であって、基地局に設けられた複数のアンテナの夫々から無線送信されてくる位置標定信号を受信する位置標定信号受信部と、受信した前記各位置標定信号の位相差に基づき自身の現在位置である端末位置を標定する位置標定部と、前記位置標定信号を受信するための指向性アンテナと、前記標定に用いた座標系と絶対方位との関係を示す情報である基地局情報を前記基地局から受信し、前記端末位置と前記基地局情報とに基づき絶対方位を示す情報を出力する方位情報提供部とを備える。
【0007】
本発明によれば、位置標定の機能を備えた携帯端末に方位に関する情報を提供する機能を実現することができる。また方位に関する情報は位置標定の機能を用いて生成するので、地磁気センサが機能しないような状況においても方位に関する情報を提供することができる。
【0008】
尚、前記座標系は、例えば、前記基地局を原点とする2次元の直交座標系であり、前記基地局情報には前記直交座標系の座標軸と前記絶対方位とのなす角を示す情報が含まれている。また携帯端末は、例えば加速度センサを備えており、方位情報提供部は、例えばこの加速度センサの出力と、位置標定信号の受信信号強度とに基づき、指向性アンテナの指向方向が基地局の方向に向くように誘導する画面を生成する。
【0009】
本発明の他の一つでは、前記方位情報提供部は、前記受信信号強度に基づき前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向いているか否かを判断し、前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向いていると判断した場合は前記絶対方位を示す画面を表示し、前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向いていないと判断した場合は前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向くように誘導する画面を表示する。
【0010】
本発明によれば、携帯端末は、指向性アンテナの指向方向が基地局の方向を向いている場合は絶対方位を示す画面を表示し、向いていない場合は指向性アンテナの指向方向が基地局の方向を向くように誘導する画面を表示するので正しい絶対方位を提供することができる。
【0011】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、携帯端末に方位に関する情報を提供することが可能な携帯端末を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自律移動支援システム1の概略的な構成を示す図である。
【図2A】サーバ装置100のハードウエア構成を示す図である。
【図2B】サーバ装置100が備える主な機能を示す図である。
【図3A】基地局200のハードウエア構成を示す図である。
【図3B】基地局200が備える主な機能を示す図である。
【図4A】携帯端末300のハードウエア構成を示す図である。
【図4B】携帯端末300が備える主な機能を示す図である。
【図4C】方位情報提供部335の詳細を示す図である。
【図5】携帯端末300を正面方向から眺めた外観を示す図である。
【図6】位置標定信号のデータフォーマットを示す図である。
【図7】基地局200と携帯端末300との位置関係を説明する図である。
【図8】アンテナ群215を構成しているアンテナ2151と携帯端末300との位置関係を説明する図である。
【図9】位置標定システム10の利用現場における、基地局200と携帯端末300の位置関係を示す図である。
【図10】位置標定処理S1000を説明するフローチャートである。
【図11】方位情報提供処理S1100を説明するフローチャートである。
【図12】表示装置316に表示されるメッセージ31611の一例である。
【図13】方位情報表示画面1311の一例を示す図である。
【図14】基地局200が位置標定に用いる直交座標軸(X軸、Y軸)の座標系と、絶対方位135(真方位又は磁方位)との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態につき図面を参照しつつ説明する。図1は本発明が適用される携帯端末300を用いて構成される自律移動支援システム1の概略的な構成である。自律移動支援システム1は、歩行者等の支援対象者(移動者)の道案内や目的地までの誘導、支援対象者への地域情報の提供、支援対象者の現在位置や移動方向等の地理的情報の第三者による監視、支援対象者の安全確保、ビルディング火災などの災害時における避難誘導支援などの様々なサービスを提供する。
【0015】
自律移動支援システム1は、データセンタ2などに設置されるサーバ装置100、自律移動支援システム1が展開される地域各所(電柱3等)に設置される複数の基地局200、及び支援対象者3によって携帯される携帯端末300を含む。
【0016】
このうち基地局200は、専用線やインターネットなどの有線又は無線による通信網50を介してサーバ装置100に通信可能に接続している。通信網50を介した通信は、例えばTCP/IP等のプロトコルに従って行われる。サーバ装置100及び基地局200の夫々には、通信網50を介して通信を行うためのネットワークアドレス(例えばIPアドレス)が付与されている。携帯端末300は、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistance)、小型のパーソナルコンピュータなどである。
【0017】
図2Aにサーバ装置100のハードウエア構成を示している。同図に示すように、サーバ装置100は、CPU111、メモリ112、ハードディスク113、キーボードやマウス等の入力装置114、液晶ディスプレイ等の表示装置115、及び通信網50に接続して基地局200と通信するための通信インタフェース116を備える。
【0018】
このうちCPU111は、メモリ112に記憶されているプログラムを実行することによりサーバ装置100が提供する様々な機能を実現する。入力装置114は、操作入力を受け付けるユーザインタフェースである。表示装置115はユーザに視覚的な情報を提供するユーザインタフェースである。表示装置115には、例えば支援対象者3の現在位置や移動方向等の情報がリアルタイムに表示される。通信インタフェース116は、サーバ装置100や他の基地局200との間で通信網50介して情報の授受を行う。
【0019】
図2Bにサーバ装置100の主な機能を示している。サーバ装置100は、携帯端末300の現在位置等の情報を各基地局200から収集する。またサーバ装置100は、支援対象者3への道案内情報の提供や目的地までの誘導、現在位置周辺についての地理情報の提供、支援対象者を監視している第三者に提供される支援対象者の現在位置や移動方向、支援対象者の安全確保に関する情報などを、基地局200に随時提供する。
【0020】
同図に示す情報提供収集部121は、基地局200への情報提供(ダウンロード)や基地局200からの情報収集(アップロード)を行う。設定情報記憶部123は、後述する位置標定機能等の基地局200が機能を提供する際に利用する情報(以下、設定情報と称する)を記憶する。尚、設定情報には例えば基地局200の緯度・経度・設置高さなどがある。
【0021】
図3Aに基地局200のハードウエア構成を示している。同図に示すように、基地局200は、CPU211、メモリ212、通信インタフェース213、及びアンテナ群215を備えている。
【0022】
このうちCPU211は、メモリ212に記憶されているプログラムを実行し、基地局200が備える各種の機能を実現する。通信インタフェース213は、サーバ装置100との間で通信網50を介して通信する。無線通信インタフェース214は、後述する位置標定のための無線信号を送信する。アンテナ群215は、複数の円偏波指向性アンテナ2151からなる。アンテナ群215の詳細については後述する。
【0023】
CPU211、メモリ212、通信インタフェース213、及びアンテナ群215は、バス220を介して互いに通信可能に接続されている。アンテナ群215には切替スイッチ2152が併設されている。切替スイッチ2152は、アンテナ群215を構成しているアンテナ2151のうちのいずれか一つを設定により又は自動的に選択して無線通信インタフェース214に接続する。
【0024】
図3Bに基地局200が備える主な機能を示している。通信部261は通信インタフェース213を制御してサーバ装置100と各種情報の送受信を行う。位置標定信号送信部263は携帯端末300の現在位置の標定に用いられる無線信号(以下、位置標定信号と称する)を送信する。設定情報記憶部264は、前述した設定情報を記憶する。
【0025】
図4Aに携帯端末300のハードウエア構成を示している。同図に示すように、携帯端末300は、CPU311、メモリ312、無線通信インタフェース313、指向性アンテナ314、タッチパネルや操作ボタン等の入力装置315、液晶ディスプレイ等の表示装置316、RTC(Real Time Clock)等を用いて構成される計時回路317、加速度センサ318、及びRSSI回路320(RSSI: Radio Signal Strength Indicator)を備える。
【0026】
CPU311は、メモリ312に記憶されているプログラムを実行することにより携帯端末300が備える各種の機能を実現する。計時回路317は、CPU311等からの要求に応じて現在時刻を生成/出力する。加速度センサ318は、当該携帯端末300に作用する加速度を検知し、検知した加速度の大きさを示す信号を出力する。RSSI回路320は、無線通信インタフェース313によって受信される位置標定信号等の電波の受信信号強度を示す信号を生成して出力する。
【0027】
図4Bに携帯端末300が備える主な機能を示している。同図において、位置標定信号受信部331は、無線通信インタフェース313により基地局200から送信される位置標定信号を受信する。情報送受信部332は、通信網50を介してサーバ装置100と通信し、ファームウエア等の携帯端末300で実行されるプログラムやデータの更新情報や支援対象者3に提示するための情報の受信(ダウンロード)、及びサーバ装置100において用いられる各種情報についての携帯端末300からサーバ装置100への送信(アップロード)を行う。
【0028】
情報表示部333は、支援対象者3に提示する情報を表示装置316に出力する。位置標定部334は、位置標定信号受信部331によって受信された位置標定信号に基づき携帯端末300の現在位置を標定する。必要な場合には、標定された携帯端末300の現在位置は、無線通信により携帯端末300から基地局200に送信され、基地局200から通信網50を介してサーバ装置100に送信される。位置標定の具体的な仕組みについては後述する。
【0029】
方位情報提供部335は、基地局200から提供される情報と位置標定の仕組みを利用して、携帯端末300の所持者に絶対方位(真方位又は磁方位)を示す情報(以下、方位情報と称する。)を知らせる機能(以下、方位情報提供機能と称する。)を実現する。
【0030】
図4Cに、図4Bに示した方位情報提供部335の詳細を示している。同図に示すように、方位情報提供部335は、端末向き調整部3351、基地局情報取得部3352、位置標定情報取得部3353、及び方位情報生成部3354の各機能を有する。
【0031】
端末向き調整部3351は、方位情報提供部335が方位情報を取得する際に必要となる、ユーザが携帯端末300の指向性アンテナ314の向き合わせをするための機能を提供する。
【0032】
基地局情報取得部3352は、方位情報提供部335が方位情報を生成する際に必要となる情報(以下、基地局情報と称する。)を基地局200から受信する。
【0033】
位置標定情報取得部3353は、位置標定部334によって標定された携帯端末300の位置を示す情報(以下、端末位置情報と称する。)を取得する。端末位置情報は、基地局200に設定された直交座標系(X軸、Y軸)における携帯端末300の現在位置を示す情報(ΔX,ΔY)を含む。
【0034】
方位情報生成部3354は、基地局情報取得部3352によって取得される基地局情報と、位置標定情報取得部3353によって取得される端末位置情報とに基づき、方位情報を表示する画面(以下、方位情報表示画面と称する。)を生成する。方位情報表示画面は、例えば方位磁石(磁気コンパス)をイメージしたグラフィカルな画面で構成される。
【0035】
図5に携帯端末300を正面方向から眺めた外観を示している。同図に示すように、携帯端末300は、入力装置315として操作キー3151を、表示装置316として液晶ディスプレイを備える。携帯端末300には矢印3141で示す方向に指向方向を有する(矢印3141で示す方向に最大利得を有する)、指向性アンテナ314が内蔵されている。
【0036】
<位置標定機能>
本実施形態の自律移動支援システム1における、携帯端末300の位置標定に関する仕組みは、基地局200と当該基地局200の周辺に存在している携帯端末300とを含んで構成される位置標定システム10が備える機能を用いて実現される。
【0037】
前述した基地局200の無線通信インタフェース214は、アンテナ群215を構成している複数のアンテナ2151を周期的に切り換えながら、スペクトル拡散された無線信号を送信する。一方、携帯端末300の位置標定信号受信部331は、アンテナ314によって基地局200の各アンテナ2151から送信される信号を受信する。尚、隣接基地局間での電波の干渉を防ぐべく、各基地局200は、基地局200間で同期信号を共有することにより、隣接する基地局200から同時期に位置標定信号が送信されないように送信タイミングの制御を行っている。
【0038】
図6に基地局200から送信される位置標定信号のデータフォーマットを示している。同図に示すように、位置標定信号は、上述した同期信号611、場所コード612(UCODE)、アンテナ情報613、及び測定信号614を含んで構成されている。尚、同期信号611は、32bitのプリアンブル信号と16bitの同期信号の合計48bitのデータで構成されている。
【0039】
このうち場所コード612(UCODE)は、基地局200の設置場所を特定する情報である。場所コード612は、統一基準に従って位置毎に割り当てられる128bitのコードからなる。
【0040】
アンテナ情報613は、アンテナ2151の高さやアンテナ2151の識別子、アンテナ2151の指向方向を示す16bitのデータ等で構成されている。
【0041】
測定信号614は、携帯端末300の存在する方向と携帯端末300までの相対距離を検出するための信号を含み、基点となる4つのアンテナ2151を順次切り替えながら送信される2048チップの拡散符号を含む。
【0042】
図7は携帯端末300を所持するユーザが、基地局200が設置された電柱の傍に居る状況を示している。同図に示すように、携帯端末300は、地上高1(m)の位置に存在し、基地局200は地上高H(m)の位置に設けられている。基地局200の直下から携帯端末300までの地表面に沿う距離はL(m)である。
【0043】
図8に基地局200のアンテナ群215を構成している各アンテナ2151と携帯端末300との相対的な位置関係を示している。基地局200のアンテナ群215を構成している各アンテナ2151は、夫々の指向方向が斜め下方向に向くように設置されている。同図示すアンテナ群215は、3cmの間隔(この間隔は位置標定信号として2.4GHz帯の電波を用いた場合における1/4波長に相当)をあけて略正方形状に隣接配置された4つの円偏波指向性アンテナを含む。
【0044】
ここでアンテナ群215の高さ位置における水平方向とアンテナ群215に対する携帯端末300の方向とのなす角をαとすれば、
α=arcTan(D(m)/L(m))=arcSin(ΔL(cm)/3(cm))
となる。尚、上式におけるΔL(cm)はアンテナ群215を構成しているアンテナ2151のうちの特定の2基と携帯端末300との間の伝搬路長差である。
【0045】
アンテナ群215を構成している特定の2基のアンテナ2151から送信される位置標定信号の位相差をΔθとすれば、上記ΔLは、
ΔL(cm)=Δθ/2π/λ(cm)
となる。位置標定信号として、例えば2.4GHz帯の電波を用いる場合は波長λ≒12(cm)であるので
α=arcSin(2Δθ/π)
となる。ここで測定可能範囲(−π/2<Δθ<π/2)ではα=Δθ(ラジアン)であるので、上式から基地局200が存在する方向を特定することができる。
【0046】
次に上記結果を利用して携帯端末300の位置を標定する仕組みについて説明する。
図9に位置標定システム10の利用現場における、基地局200と携帯端末300の位置関係を示している。同図に示すように、基地局200のアンテナ群215の地上高をH(m)、携帯端末300の地上高をh(m)、基地局200の直下の地表面の位置を原点として直交座標軸(X軸、Y軸)を設定した場合における、基地局200から携帯端末300の方向とX軸とがなす角をΔΦ(x)、基地局200から携帯端末300の方向とY軸とがなす角をΔΦ(y)とすれば、原点に対する携帯端末300の位置は次式から求めることができる。
Δd(x)=(H−h)×Tan(ΔΦ(x))
Δd(y)=(H−h)×Tan(ΔΦ(y))
また原点の位置を(X1,Y1)とすれば、携帯端末300の現在位置(Xx,Yy)は、
Xx=X1+Δd(x)
Yy=Y1+Δd(y)
から求めることができる。
【0047】
尚、以上に説明した位置標定の原理は、例えば特開2004−184078号公報、特開2005−351877号公報、特開2005−351878号公報、特開2006−23261号公報、及び特開2008−256559号公報等に開示されている。
【0048】
次に携帯端末300の位置標定部334によって行われる、携帯端末300の現在位置の標定処理(以下、位置標定処理S1000と称する。)の具体例について説明する。尚、現在位置の標定処理は、例えばサーバ装置100に携帯端末300の現在位置を報告するタイミング、携帯端末300のユーザが入力装置315に対して所定の操作を行った場合などに随時実行される。
【0049】
図10は位置標定処理S1000を説明するフローチャートである。同図に示すように、位置標定に際しては、まず位置標定部334が、位置標定信号受信部331によって受信される位置標定信号を取得する(S1011)。次に位置標定部334は、前述した仕組により位置標定信号を用いて携帯端末300の現在位置を標定して端末位置情報を生成する(S1012)。そして位置標定部334は、生成した端末位置情報を、これを利用する方位情報提供部335などの携帯端末300が備える他の機能に引き渡す(S1013)。
【0050】
<方位情報提供機能>
次に携帯端末300の方位情報提供部335によって実現される方位情報提供機能について説明する。
【0051】
図11は方位情報提供部335によって行われる処理(以下、方位情報提供処理S1100と称する。)を説明するフローチャートである。尚、方位情報提供処理S1100は、例えば、携帯端末300の表示装置316に表示される機能選択画面(メニュー画面)から方位情報提供機能を選択するなど、携帯端末300のユーザが入力装置315に対して方位情報提供機能を起動させるための所定の操作を行ったことを契機として開始される。
【0052】
同図に示すように、まず方位情報提供部335は、携帯端末300が備える指向性アンテナ314の指向方向を最寄りの基地局200の方向に向けるように誘導するメッセージを表示装置316に表示する(S1111)。
【0053】
図12にこの際に表示装置316に表示されるメッセージ31611の一例を示している。尚、携帯端末300が音声出力機能を備える場合は、上記メッセージに代えて、もしくは上記メッセージとともに、指向性アンテナ314の指向方向が基地局200の方向に向くようにユーザを誘導する音声ガイダンスを出力するようにしてもよい。
【0054】
方位情報提供部335は、表示装置316にメッセージ31611を表示した後、RSSI回路320によって取得される、基地局200からの位置標定信号の信号強度を示すイメージ(以下、インジケータ31612と称する。)、及び基地局200が存在する方向を示すイメージ(以下、方向指示アイコン31613と称する。)を、表示装置316に表示する(S1112)。
【0055】
尚、方位情報提供部335は、例えば加速度センサ318によって検出される加速度と、RSSI回路320から取得される信号強度の変化とに基づいて、方向指示アイコン31613の表示制御を行う。
【0056】
例えば方位情報提供部335は、携帯端末300の向きが変化(回転)することに起因して位置標定信号の信号強度が低下すると、加速度センサ318の加速度から検出される携帯端末300の回転方向とは逆の方向に携帯端末300を回転させるように方向指示アイコン31613の表示を制御する。
【0057】
また例えば方位情報提供部335は、携帯端末300の向きが変化(回転)することに起因して位置標定信号の信号強度が上がると、加速度センサ318の加速度から検出される携帯端末300の移動方向にさらに携帯端末300を回転させるように方向指示アイコン31613の表示を制御する。
【0058】
ユーザは、方向指示アイコン31613の指示を見ながら、インジケータ31612の信号強度が最大になるように携帯端末300の向きを調整する。このようにユーザは、方向指示アイコン31613の指示によって、携帯端末300の指向性アンテナ314の指向方向を最寄りの基地局200の方向に確実かつ容易に向けることができる。
【0059】
ユーザが携帯端末300の向きを調整している間、方位情報提供部335は、位置標定信号の信号強度が最大になっているか否かをリアルタイムに判断する(S1113)。方位情報提供部335が位置標的信号の信号強度が最大になっていないと判断した場合には(S1113:NO)、S1112に戻る。一方、方位情報提供部335が位置標的信号の信号強度が最大になっていると判断すると(S1113:YES)、S1114の処理に進む。
【0060】
尚、位置標定信号の信号強度が最大になっているか否かの判断は、例えば所定期間内の信号強度の変化(履歴)をメモリ312に記憶しておき、信号強度の増加が減少に転じたタイミングにて信号強度が最大(極大)になったと判断する。
【0061】
S1114では、方位情報提供部335は基地局200から基地局情報を取得する。基地局情報には、前述した位置標定に用いる水平面内(地表面に平行な面内)の直交座標軸(X軸、Y軸)の座標系と、絶対方位(真方位又は磁方位)との関係、具体的には、直交座標軸におけるX軸(又はY軸)と絶対方位(例えばN極方位)とのなす角を示す情報が含まれている。
【0062】
尚、基地局情報は必ずしもこのタイミングで受信しなくてもよく、例えば図6にて破線で示しているように、基地局200から送信される位置標定信号とともに基地局200から基地局情報615を受信するようにしてもよい。
【0063】
続いて方位情報提供部335は、位置標定部334から前述した端末位置情報を取得する(S1115)。
【0064】
そして方位情報提供部335は、S1114にて取得した基地局情報とS1115にて取得した端末位置情報とに基づき方位情報表示画面を生成する(S1116)。
【0065】
図13に方位情報表示画面1311の一例を示す。ここで方位情報表示画面1311が示す方位は、指向性アンテナ314の指向方向が基地局200の方向を正しく向いている限り絶対方位135と一致しており、携帯端末300のユーザは、指向性アンテナ314の指向方向が基地局200の方向を正しく向いている状態で方位情報表示画面1311を参照することで、携帯端末300(現在位置)から見た正しい絶対方位135(真方位又は磁方位)を知ることができる。
【0066】
尚、方位情報提供部335は、携帯端末300の指向性アンテナ314の指向方向が基地局200の方向を正しく向いているか否かをリアルタイムに監視し(S1117)、指向性アンテナ314の指向方向が基地局200の方向から所定角度以上ずれると(S1117:NO)方位情報表示画面1311を画面から消去して(S1118)、再びS1111の処理に戻ってユーザに携帯端末300の向きの調節を促す(S1111)。
【0067】
また方位情報提供部335は、入力装置315に対してユーザが方位情報提供機能の停止操作を行ったか否かをリアルタイムに監視しており(S1119)、停止操作が行われたことを検知した場合は(S1119:YES)、方位情報提供機能を停止する。方位情報提供機能の停止後は、前述した機能選択画面(メニュー画面)の表示状態などに戻る。
【0068】
<方位情報表示画面の生成方法>
次に図11のS1116において、方位情報提供部335が、基地局情報と端末位置情報とに基づき方位情報表示画面1311を生成する方法について詳細に説明する。
【0069】
図14に基地局200が位置標定に用いる直交座標軸(X軸、Y軸)の座標系と、絶対方位135(真方位又は磁方位)との関係を示している。同図において、基地局200は原点(0,0)に存在し、携帯端末300は基地局200が位置標定に用いる直交座標系における第4象限(ΔX,ΔY)に存在する。
【0070】
同図の場合、基地局200が位置標定に用いる直交座標軸に対して反時計回りに45°ずれた方向が絶対方位135のN極方向である。つまりこの例では、絶対方位135のN極が位置標定における直交座標軸(X軸、Y軸)のX軸に対して反時計周りに45°の方向にあり、その旨を示す情報が基地局情報として基地局200から携帯端末300に送られる。
【0071】
同図の場合、位置標定部334の位置標定機能によって携帯端末300の位置が例えば(ΔX、ΔY)であると標定されると方位情報提供部335はこの(ΔX、ΔY)を端末位置情報として取得する。
【0072】
同図の場合、携帯端末300は、自身の長手方向(指向性アンテナ314の指向方向)が絶対方位135で255°(=基地局情報から取得される反時計周り45°+端末位置情報(ΔX、ΔY)から求まる30°+180°)の方位を向いていると判断し、指向性アンテナ314の方向が絶対方位135の225°を示すように描いた方位情報表示画面1311を生成してこれを表示装置316に表示する。
【0073】
携帯端末300は、以上のようにして基地局情報と端末位置情報とに基づき絶対方位135を正しく示すように描いた方位情報表示画面1311をリアルタイムに更新して最新の方位情報表示画面1311を表示装置316に表示する。
【0074】
以上に説明したように、本実施形態の携帯端末300は、位置標定の機能を用いて方位に関する情報を提供することができる。また方位に関する情報は位置標定の機能を用いて生成するので、地磁気センサが機能しないような状況においても方位に関する情報を提供することができる。
【0075】
また携帯端末300は、指向性アンテナ314の指向方向が基地局200の方向を向いている場合は絶対方位135を示す画面を表示し、向いていない場合は指向性アンテナ314の指向方向が基地局200の方向を向くように誘導する画面を表示するので、ユーザに正しい絶対方位135を知らせることができる。
【0076】
ところで、以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0077】
例えば、携帯端末300の位置標定は、上記実施形態で説明したように基地局200から送信される位置標定信号を携帯端末300側で受信することにより携帯端末300側で行うようにする方法の他、携帯端末300側にアンテナ群を設けて携帯端末300側から基地局200に向けて位置標定信号を送信し、この位置標定信号を基地局200側で受信して基地局200側で位置標定を行うようにすることもできる。
【符号の説明】
【0078】
10 位置標定システム
135 絶対方位
200 基地局
263 位置標定信号送信部
300 携帯端末
316 表示装置
1311 方位情報表示画面
31613 方向指示アイコン
331 位置標定信号受信部
334 位置標定部
335 方位情報提供部
3351 端末向き調整部
3352 基地局情報取得部
3353 位置標定情報取得部
3354 方位情報生成部
S1000 位置標定処理
S1100 方位情報提供処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局に設けられた複数のアンテナの夫々から無線送信されてくる位置標定信号を受信する位置標定信号受信部と、
受信した前記各位置標定信号の位相差に基づき自身の現在位置である端末位置を標定する位置標定部と、
前記位置標定信号を受信するための指向性アンテナと、
前記標定に用いた座標系と絶対方位との関係を示す情報である基地局情報を前記基地局から受信し、前記端末位置と前記基地局情報とに基づき絶対方位を示す情報を出力する方位情報提供部と
を備えることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末であって、
前記標定に用いる座標系は、前記基地局を原点とする水平面内における2次元の直交座標系であり、前記基地局情報に、前記直交座標系の座標軸と前記絶対方位とのなす角を示す情報が含まれている
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
請求項1に記載の携帯端末であって、
前記位置標定信号の受信信号強度を取得する回路を備え、
前記受信信号強度に基づき前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向くように誘導する情報を出力する
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯端末であって、
加速度センサを備え、前記方位情報提供部は、前記加速度センサの出力と、前記位置標定信号の受信信号強度とに基づき、前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向くように誘導する画面を生成する
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項5】
請求項3に記載の携帯端末であって、
前記方位情報提供部は、前記受信信号強度に基づき前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向いているか否かを判断し、前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向いていると判断した場合は前記絶対方位を示す画面を表示し、前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向いていないと判断した場合は前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向くように誘導する画面を表示する
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項6】
基地局に設けられた複数のアンテナの夫々から無線送信されてくる位置標定信号を受信する位置標定信号受信部と、
受信した前記各位置標定信号の位相差に基づき自身の現在位置である端末位置を標定する位置標定部と、
前記位置標定信号を受信するための指向性アンテナと
を備える携帯端末を用いた方位情報提供方法であって、
前記携帯端末は、前記標定に用いた座標系と絶対方位との関係を示す情報である基地局情報を前記基地局から受信し、前記端末位置と前記基地局情報とに基づき絶対方位を示す情報を出力する
ことを特徴とする携帯端末を用いた方位情報提供方法。
【請求項7】
請求項6に記載の携帯端末を用いた方位情報提供方法であって、
前記標定に用いる座標系は、前記基地局を原点とする水平面内における2次元の直交座標系であり、前記基地局情報に、前記直交座標系の座標軸と前記絶対方位とのなす角を示す情報が含まれている
ことを特徴とする携帯端末を用いた方位情報提供方法。
【請求項8】
請求項6に記載の携帯端末を用いた方位情報提供方法であって、
前記携帯端末は、前記位置標定信号の受信信号強度を取得する回路を備え、
前記携帯端末は、前記受信信号強度に基づき前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向くように誘導する情報を出力する
ことを特徴とする携帯端末を用いた方位情報提供方法。
【請求項9】
請求項8に記載の携帯端末を用いた方位情報提供方法であって、
前記携帯端末は加速度センサを備え、
前記携帯端末は、前記加速度センサの出力と、前記位置標定信号の受信信号強度とに基づき、前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向に向くように誘導する画面を生成する
ことを特徴とする携帯端末を用いた方位情報提供方法。
【請求項10】
請求項8に記載の携帯端末を用いた方位情報提供方法であって、
前記携帯端末は、前記受信信号強度に基づき前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向いているか否かを判断し、前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向いていると判断した場合は前記絶対方位を示す画面を表示し、前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向いていないと判断した場合は前記指向性アンテナの指向方向が前記基地局の方向を向くように誘導する画面を表示する
ことを特徴とする携帯端末を用いた方位情報提供方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−242165(P2011−242165A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112439(P2010−112439)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】