説明

携帯端末、携帯端末の制御方法、及びプログラム

【課題】ユーザの加齢に伴う聴取能力の低下に対応した携帯端末、携帯端末の制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】エンドユーザによる音声出力に対する音量操作に基づいて、特定の音域の音声信号を強調するイコライザの周波数特性を補正する音量調整手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末、携帯端末の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末の普及に伴い、利用者の年齢層が拡大している。低年齢層や中年齢層は聴覚の問題は特に無いものの、高齢者にとっては聴覚の衰えが顕著に見られる。
このため、携帯端末に補聴器を取り付けることや周波数応答特性を変化させることが行われている。
【0003】
音声特性対策を施した技術の一例が特許文献1、2に記載されている。
特許文献1の移動電話用補聴器アダプタは、「移動電話に接続するための入出力端子と、移動電話と補聴器との間を所定の距離以上離隔する長さを有し、一端が入出力端子に接続されたコードと、このコードの他端に接続された増幅回路と、この増幅回路の出力を補聴器の特性や補聴者の聴力型に応じ補正する音質補正回路と、補聴器がTモードで受聴可能とするための誘導磁界を発する誘導コイルと」で構成されており、以下のように動作する。
【0004】
この移動電話用補聴器アダプタによれば、移動電話の外部入出力端子から出力された信号を、補聴器と移動電話を適切な距離だけ離すために必要な長さのコードを介し、音質補正回路および音量調整回路へ送る。音質補正回路および音量調整回路で補聴器のマイクロホンモードとTモードの差や難聴者の聴力型等を補正し、最後に誘導コイルへ信号を送る。誘導コイルで発生した誘導磁界を補聴器のTモードで受聴する。このとき、移動電話との距離が離れているためにノイズを発生することはない。一方、同様に移動電話の外部入出力端子へは、内蔵したマイクロホンで拾った信号を入力するとしている。
【0005】
特許文献2の電話装置は、「音を再生するためのスピーカと、再生される音をディジタル処理するためのディジタル信号処理手段とを有し、信号処理手段が或る周波数応答特性を有するイコライザを含んでいる電話装置において、電話装置は、電話装置の動作状態を表す、少なくとも測定した暗騒音の強さと周波数スペクトルを含む制御情報を作成するための手段と、制御情報に基づいてイコディジタル波数応答特性を変化させるための手段であって、周波数応答特性の変化には、中心周波数と帯域幅を変えないで利得を変化させる、利得と帯域幅を変えないで中心周波数を変化させる及び中心周波数と利得を変えないで帯域幅を変化させる、のうちの少なくとも1つが含まれるようにする手段と」で構成されており、以下のように動作する。
【0006】
この電話装置によれば、スピーカの構造やスピーカと耳との間での音の漏れに関わりなく音の明瞭度が改善し、移動電話の特別の要件に対して良好に応答し、暗騒音(background noise) と、ユーザがセットした電話の音量とに等化を適応させ、聴取される音の品質と話し声の明瞭度とのバランスが取れており、移動電話の補助装置に等化を適応させることができるとしている。
【特許文献1】特開平10−174194号公報
【特許文献2】特許第3609557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1、2に記載の技術では、加齢に伴う聴取能力の低下の問題は考慮されていない。
そこで、本発明の問題は、ユーザの加齢に伴う聴取能力の低下に対応した携帯端末、携帯端末の制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の携帯端末は、エンドユーザによる音声出力に対する音量操作に基づいて、特定の音域の音声信号を強調するイコライザの周波数特性を補正する音量調整手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の携帯端末の制御方法は、エンドユーザによる音声出力に対する音量操作に基づいて、特定の音域の音声信号を強調するイコライザの周波数特性を補正することを特徴とする。
【0010】
本発明のプログラムは、コンピュータに、分析手段が、スピーカへの音声信号を周波数分析する手順、イコライザが、特定の音域の音声信号を強調する手順、補正情報修正手段が、前記エンドユーザによる音量操作と前記分析手段による周波数特性情報とに基づいて前記イコライザへの周波数特性情報を補正する手順、を実行させることにより、前記補正情報修正手段からの補正情報に基づいて前記イコライザの周波数特性を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザの加齢に伴う聴取能力の低下に対応した携帯端末、携帯端末の制御方法、及びプログラムの提供を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<特徴>
本発明は、携帯電話装置における、音量調整機能であり、聞き手が、音の周波数帯に応じて、耳の感度に差があることを考慮して音量を制御する方法を提供することを特徴とする。すなわち、携帯電話装置等の携帯端末において、音声をより聞きやすくするため、音量の制御手段として、周波数帯によって音量を制御するものである。
【0013】
<構成>
図1は、本発明に係る携帯端末の一実施の形態を示すブロック図である。
本実施の形態では、携帯端末として携帯電話装置の場合で説明する。
本発明の構成は、図1を参照すると、携帯電話装置内において、分析手段としての周波数分析部10と、モニタ(サンプリング)機能11と、補正情報修正手段としての補正情報修正部13と、保存手段としての保存部14と、制御手段としての制御部15とで構成される音量調整手段16と、CODEC(coder and decoder:符号器/復号器)2と、イコライザ3と、DAC(digital-to-analog converter:ディジタル−アナログ変換器)4、AMP(amplifier:増幅器)5と、スピーカ6と、Key(キー)7とで構成される。
制御部15は、予め記録された電話番号を参照することにより通話の相手を特定する相手特定手段15aと、通話の相手毎に補正情報を呼び出してイコライザ3の周波数特性を補正するように学習する学習手段15bとを有していても良い。尚、相手特定手段15a、及び学習手段15bは、いずれもソフトウェアで構成される。
【0014】
図1において、音源1は、携帯電話装置内の音声(図示しないマイクロフォンからの音声)などのディジタル音源データである。
CODEC2は、圧縮されて音声データをPCM(pulse code modulation:パルス符号変調)に変換する手段である。
イコライザ3は、特定の音域の音声信号を強調する手段である。
DAC4は、PCMによってディジタル化されたディジタル信号をアナログ信号に変換する手段である。
AMP5は、アナログ信号を、スピーカSP6を駆動するまでの増幅する手段である。
スピーカSP6は、電気信号を弾性波に変更する手段である。
Key7は、音量操作(高/低)に使う手段であり、操作ボタンである。
【0015】
音量操作UP/DWN8は、音量操作の信号データである。
周波数特性情報9は、現在スピーカSP6から出力されている音の周波数特性データである。
周波数分析部10は、現在スピーカSP6から出力されている音の周波数特性を分析する手段である。
モニタ(サンプリング)11は、現在スピーカSP6から出力されているデジタルデータをサンプリングする手段である。
補正情報12は、イコライザ3で強調する周波数帯を指示するデータである。
補正情報修正部13は、周波数情報9の結果を元に、補正情報12を修正する手段である。
保存部14は、イコライザ3に与える補正情報12を記憶する手段であり、例えば、HDD(hard disk drive)、フラッシュメモリが挙げられる。
制御部15は、音量調整手段16内の各手段を有効に制御する手段であり、例えば、マイクロコンピュータが挙げられる。
【0016】
図2(a)〜(d)は、図1に示した携帯端末の特性図の一例である。すなわち、図2(a)は、図1に示した携帯端末の周波数分析部10の結果であり、出力される周波数特性情報9の一例である。図2(b)は、図1に示した携帯端末の補正情報12の初期値の一例である。図2(c)は、一般的に加齢により、高音域が聞き取りにくくなる例である。図2(d)は、図1に示した携帯端末の周波数特性情報の一例である図2(a)と、図1の補正情報12の一例である図2(b)の補正を修正した、図1に示した携帯端末の補正情報修正13の結果の一例である。
【0017】
<動作>
図1を参照して本携帯端末の動作について説明する。
携帯電話装置内において、音源1のデジタルデータをCODEC2で変換されたPCMデータは、イコライザ3で周波数に応じて強調され、DAC4によって、アナログ信号に変換され、AMP5で増幅された後、スピーカSP6から音として出力される。これと並行して、音量調整手段16を構成する制御部15は、イコライザ3の出力をモニタ11でサンプリングし、その結果を周波数分析部10で、周波数特性情報9に常に収集させる。このとき、エンドユーザからKey7を用いて音量操作され、音量のUP/DWN8の情報を受けた際、補正情報修正部13によって、周波数特性9の情報を元に、補正情報12の情報を修正し、この補正情報を更新し、これをイコライザ3に与えて特定の周波数帯の音域を強調する。
【0018】
<プログラム及び記憶媒体>
以上で説明した本発明の携帯端末は、コンピュータで処理を実行させるプログラムによって実現されている。コンピュータとしては、例えばパーソナルコンピュータやワークステーションなどの汎用的なものが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
図3は、本発明に係る携帯端末のプログラムの一実施の形態を示すフローチャートである。
図4は、本発明に係る携帯端末のプログラムの他の実施の形態を示すフローチャートである。
【0019】
すなわち、図3に示すフローチャートのように、コンピュータに、
(1)分析手段が、スピーカへの音声信号を周波数分析する手順(図3:ステップS1)、
(2)イコライザが、特定の音域の音声信号を強調する手順(図3:ステップS2)、
(3)補正情報修正手段が、エンドユーザによる音量操作と分析手段による周波数特性情報とに基づいてイコライザへの周波数特性情報を補正する手順(図3:ステップS3)、
を実行させることにより、
補正情報修正手段からの補正情報に基づいてイコライザの周波数特性を制御するプログラムが挙げられる。
【0020】
さらに、上記構成(ステップS1〜S3:図3、図4ではステップS11〜S13)に加え、コンピュータに、
(4) 相手特定手段が、予め記録された電話番号を参照することにより通話の相手を特定する手順(ステップS14)、
(5)学習手段が、相手毎に補正情報を呼び出してイコライザの周波数特性を補正するように学習する手順(ステップSS15)、
を実行させてもよい。
【0021】
これにより、プログラムが実行可能なコンピュータ環境さえあれば、どこにおいても本発明の装置を実現することができる。
このようなプログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0022】
ここで、記憶媒体としては、例えば、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(CD Recordable)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、FeRAM(強誘電体メモリ)等の半導体メモリやHDDが挙げられる。
【0023】
なお、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【0024】
ここで、上述した特許文献1と本願との相違点について述べる。
特許文献1に記載の発明は、アナログ的に音量を増幅するものであり、本願の技術とはまったく別の技術である。
特許文献2に記載の発明は、通話時の音の周波数帯に注目し音を分析すること、イコライザを使って、周波数帯に応じて増幅量を変更することなどが類似しているものの、話者が話をしていないときを検出して背景のノイズを分析し、ノイズの周波数帯の音量を下げるなど、ノイズの除去を主テーマとしており、本願の技術とは異なる。
従って、特許文献1,2に記載の発明と本願発明とは異なる技術を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る携帯端末の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】(a)〜(d)は、図1に示した携帯端末の特性図の一例である。
【図3】本発明に係る携帯端末のプログラムの一実施の形態を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る携帯端末のプログラムの他の実施の形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
10 周波数分析部
11 モニタ機能
12 CODEC
13 補正情報修正部
14 保存部
15 制御部
16 音量調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドユーザによる音声出力に対する音量操作に基づいて、特定の音域の音声信号を強調するイコライザの周波数特性を補正する音量調整手段を備えたことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記音量調整手段は、
スピーカへの音声信号を周波数分析する分析手段と、
前記イコライザと、
前記エンドユーザによる音量操作と前記分析手段による周波数特性情報とに基づいて前記イコライザへの周波数特性情報を補正する補正情報修正手段と、
前記補正情報修正手段からの補正情報に基づいて前記イコライザの周波数特性を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の携帯端末。
【請求項3】
前記補正情報を保存する保存手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の携帯端末。
【請求項4】
予め記録された電話番号を参照することにより通話の相手を特定する相手特定手段と、
前記相手毎に補正情報を呼び出して前記イコライザの周波数特性を補正するように学習する学習手段と、
を備えたことを特徴とする請求項3記載の携帯端末。
【請求項5】
前記スピーカへの音声信号をモニタするモニタ手段を備えたことを特徴とする請求項3または4記載の携帯端末。
【請求項6】
エンドユーザによる音声出力に対する音量操作に基づいて、特定の音域の音声信号を強調するイコライザの周波数特性を補正することを特徴とする携帯端末の制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
分析手段が、スピーカへの音声信号を周波数分析する手順、
イコライザが、特定の音域の音声信号を強調する手順、
補正情報修正手段が、前記エンドユーザによる音量操作と前記分析手段による周波数特性情報とに基づいて前記イコライザへの周波数特性情報を補正する手順、
を実行させることにより、
前記補正情報修正手段からの補正情報に基づいて前記イコライザの周波数特性を制御することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−81523(P2010−81523A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250345(P2008−250345)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】