説明

摩擦プレート及びその様々な製造方法

自走車両及びトラックの変速機クラッチモジュール摩擦プレート(7)及びその製造方法が提供されるが、これによれば、摩擦プレートは高分子材料から製作され、これは、これに匹敵する鋼材の摩擦プレートより安価であり、また軽量である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60,705,581号明細書(2005年8月4日出願)の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明の分野は、摩擦プレートの分野である。本発明は、より詳細には、乗用車及びトラック車両用の自動車変速機内の湿式摩擦クラッチモジュールに使用される摩擦プレートに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、自動車変速機に使用されている、すべてではないにしても殆どの摩擦プレートが、鋼材の打ち抜き加工で製作される。最近、商品としての鋼材の需要が伸びてきており、このため、コストが高騰している。様々な環境、経済、及び国家の防衛上の懸念に対処するため、自走車両における燃料効率の需要が増加している。したがって、車両構成要素の重量及びコストの削減を達成したいという要求がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した要求を明らかにするために、本発明による新規内容について記載する。好ましい実施形態においては、本発明は、摩擦プレート及びその製造方法を提供するものであり、これによれば、摩擦プレートは高分子材料から製作され、これは、これに匹敵する鋼材の摩擦プレートより安価であり、また軽量である。
【0005】
添付図面及び本発明の詳細な記述により本発明がさらに明らかになるにつれて、当業者には、本発明の他の特徴がより自明となろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1に摩擦プレート7が提供される。摩擦プレート7は、環状のコアプレート10を備える。コアプレート10は、高分子材料から製作されることが好ましい。好ましい材料は、ナイロン又は他の好適なプラスチックなどの、半結晶熱可塑性プラスチックである。コアプレート材料は、強度及び/又は熱容量を追加するために、ガラス繊維又は他の材料で強化されることがある。熱硬化性プラスチック材料が使用されることもある。
【0007】
コアプレート10は、厚さの薄い一体のリム部分14を有する。コアプレート10は、シート材料から製作されることがあれば、射出成形、圧縮成形、又は押出し成形されることもある。代表的なコアプレート10は、適用形態によって、75〜225mmの外径で、0.76〜1.20mmの範囲の厚さを有する。このサイズ範囲外のコアプレートも、このプラスチック設計において考慮され得る。
【0008】
代表的なコアプレートの内径は、一連の、半径方向内向きに面するスプライン歯16を有する(図1A)。コアプレートの適用形態によっては、内向きに面するスプライン歯の代わりに、半径方向外向きに面するスプライン歯を有することもある。スプライン歯16により、摩擦プレート7の回転部材(図示せず)とのねじれた界面が作られる。さらに、適用形態によっては、全くスプライン歯を有さないことがある。
【0009】
摩擦面材18が、リム14に結合されている。摩擦面材は、コアプレートの両側にあることがあれば、一方の側だけにあることもある。摩擦面材18は、通常、セルロース系繊維ベースの摩擦材料であるが、焼結金属、セラミックス、又は発泡樹脂などの、他の摩擦材料が使用されることもある。示されているように、摩擦面材18は、紙繊維ベースの摩擦材料である。摩擦面材は、連続したリングであることがあれば、放射状に配置された、個々の円弧区分から製作されることもある。好ましい区分の数は、3〜5である。面18の区分化により、摩擦材料のコストがかなり削減される。個々の円弧区分22は、互いに噛み合った、タブ24の端部部分と溝穴26の端部部分とを有する。別の区分化された面の設計により、独立した又は互いに噛み合っていない面区分円弧ができ、面区分間に油流路ができ得る。摩擦基本面18は、接着剤により又は本明細書に記述する他の手段により、リム14に結合され得る。
【0010】
他の実施形態においては、まず第1に、面(リング全体又は区分)が、射出成形金型の、開かれた半体内に入れられる。金型の半体が閉じられる。好ましい適用形態においては、次いで、金型の半体の表面に対して定位置に面を保持するよう、金型が加圧される。代替適用形態においては、面は、取付け具により及び又は真空により保持されることがある。次いで、比較的高温及び圧力で、コアプレート10の溶融材料が、金型の半体の間に射出される。プラスチック材料が凝固し、コアプレートの形状を形成するときに、面18の繊維108が部分的にコアプレート10の材料112によって封入され、面とコアプレートとの間に、境界層110及び機械的接合が生じる。面に対するコアプレート材料の結合を容易にするために、面は、高分子バッキングを有する場合があれば、高分子飽和で含浸される場合もある。いずれの場合にも、高分子バッキング又は飽和には、コアプレート材料の22.2℃(40F°)以内の溶融温度が必要である。
【0011】
別の実施形態においては、摩擦面材18が溶接される。摩擦面材18は、振動溶接、スピン溶接、又は超音波溶接、又はかしめ又は他の好適な技術によって溶接され得る。摩擦面材18は、溶接によりその取り付けを助けるよう、高分子バッキングを有し得る。別の実施形態においては、摩擦面材18は、溶接作業を容易にするよう、高分子材料で含浸され得る。高分子飽和及びバッキングの両方には、上述したような溶融温度が必要である。
【0012】
別の実施形態においては、面18は、熱板接合によりリム14に結合される。このプロセスは、いくつかの方法で達成され得る。まず第1に、このプロセスでは、加熱された板を利用して面を通して熱を伝え、コアプレートの局部的な表面溶融を達成させて、圧力をかけると、コアプレートのプラスチックが冷却するときに、面とコアプレートとの間の接合が可能となる。熱は、コアプレートの両側にある面に印加される場合があれば、熱は、1つの面にのみに印加されて、両面をコアプレートのリムに接続させる場合もある。第2に、接合プロセスで、局部的な表面溶融を達成するよう予め加熱されたプラスチックのコアプレートが使用されることがあり、次いで、接合プレス機へと移され、ここで、面がコアプレートに位置決めされ、圧力がかかると接合が達成される。さらに、上記の接合プロセスのすべてにおいて接合を容易にする及び/又は改良するよう、接合材料が面又はコアプレートのいずれかに追加されることがある。
【0013】
図4Aについて述べると、2つの別個のプレート34を備えた、クラッチパックモジュール27の部分図が設けられている。分離プレート34が摩擦プレート面に係合すると、分離プレート34は、第1の距離36だけ分離される。スプライン歯16の厚さは、リム14の厚さより大きいが、スプライン歯16により大きい強度を提供するよう、完成された摩擦プレートの最終設計厚さ36に等しい。図4Bについて述べると、摩擦プレート47を備えたクラッチモジュール40が、第1の距離36未満の厚さを有するスプライン歯46を有する。図4Cについて述べると、クラッチモジュール50が、第1の距離36より大きい幅のスプライン歯56を有する摩擦プレート57を備える。
【0014】
図5について述べると、摩擦プレート67が提供されており、摩擦面材71は、複数の放射状に延在する油溝74を有する。油溝74は、コアプレートと結合する前に、面71上に形成され得る。別の実施形態においては、油溝74は、摩擦面材71がこの下にあるコアプレートに結合された後に切り込まれ得る。切り込まれた油溝74はまた、コアプレート内に延在し得る。
【0015】
別の実施形態においては、油溝74は、射出成形操作において、面71内にかつ任意にコアプレート内に形成され得る。材料内のスプリングバックを補償するために、金型キャビティがリブと共に機械加工されて、やや大き目の油溝が作られる。別の実施形態においては、油溝74は、面がコアプレート10に超音波溶接される場合には、面71及びこの下にあるコアプレート内に超音波形成され得る。
【0016】
別の実施形態においては、油溝は、1方向に平行に、2方向に平行に(十字に交差して)、標準的でない線形又は非線形パターンなどの、代替形状に形成され得る。油溝は、面を完全に貫通して延在してもよく、これにより、貫通油通路ができる場合があれば、一端が閉じた溝を作るよう、外径の手前で終端する場合もある。
【0017】
別の実施形態においては、油溝は、プラスチックの射出成形プロセス(本文献において上述したようなインサート充填)を使用することによって形成されることがあるのに対して、個々の結合されていない円弧区分が、区分の間の画定された隙間を有して金型内に位置決めされ、鋳造プロセスでコアプレートが形成され、摩擦材料とコアプレートとの間に、必要な接合が達成される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態を開示してきたが、これは、単なる例示として記述しただけであり、様々な修正形態は、頭記の特許請求の範囲内に包含される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく作られ得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1−1A】本発明の摩擦プレートの好ましい実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示されている摩擦プレートに利用されるコアプレートを示す側面図である。
【図3】図2に示されているコアプレートを示す拡大図、及び図1に示されている摩擦円板を示す部分断面図である。
【図4A−C】本発明の摩擦プレートの様々な実施形態を利用する摩擦パックモジュールの一部分を示す部分側面図である。
【図5】本発明の摩擦プレートの好ましい代替実施形態を示す、図1と同様の図である。
【図6】コアプレートとバッキングとの間の界面を示す拡大部分断面図である。
【図1】

【図1A】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の高分子コアプレートと、
前記コアプレートに結合された摩擦面材と、
を有する、乗用車及びトラック車両の変速機に使用するための湿式摩擦クラッチモジュール用摩擦プレート。
【請求項2】
前記コアプレートが、熱可塑性プラスチック及び熱硬化性プラスチックを含む材料の群から製作される請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項3】
前記コアプレートが、半結晶プラスチックから製作される請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項4】
前記摩擦面材が区分化された請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項5】
前記摩擦面材が前記コアプレートに溶接された請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項6】
前記摩擦面材が前記コアプレートにかしめられた請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項7】
前記摩擦面材が前記コアプレートに接合された請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項8】
前記摩擦面材が前記コアプレートに接着結合された請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項9】
前記摩擦面材が前記コアプレートにインサート成形された請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項10】
前記摩擦面材が高分子バッキングを有する請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項11】
前記摩擦面材が高分子飽和で含浸された請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項12】
前記面に隣接した前記コアプレートが型押面を有する請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項13】
前記摩擦面材が、セルロース系繊維、焼結金属、セラミック、又は発泡樹脂の材料からなる群からのものである請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項14】
前記摩擦面材が、そこに形成された油溝を有する請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項15】
前記コアプレートが、そこに形成された油溝を有する請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項16】
前記コアプレートが、前記摩擦プレートの残りの部分より大きい厚さの、放射状のスプライン歯を有する請求項1に記載の摩擦プレート。
【請求項17】
摩擦プレートの製造方法であって、
金型キャビティを準備することと、
前記金型キャビティ内に摩擦面材を置くことと、
高分子コアプレート材料で前記金型キャビティを射出することと、
前記コアプレートの形状を形成することと、これにより、前記摩擦面材をコアプレートと結合することと、
を含む方法。
【請求項18】
前記金型キャビティ内の前記面に油溝を形成するよう、前記金型キャビティ内にうねを形成することをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金型キャビティ内の前記コアプレートに油溝を形成するよう、前記金型キャビティ内にうねを形成することをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
摩擦プレートの製造方法であって、
高分子材料からコアプレートを形成することと、
熱及び圧力を使用して、前記コアプレートに摩擦面材を熱的に結合することと、
を含む方法。
【請求項21】
プラスチックコアプレートの表面において必要な溶融温度を達成するよう、摩擦面材を通して熱を伝える加熱された板を使用することにより、かつ接合及び最終摩擦プレート厚を達成するよう、圧力を印加することにより、前記摩擦面材を前記コアプレートに接合する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
必要な溶融温度を達成するよう、プラスチックコアプレート表面を予め加熱することにより、かつ接合及び最終摩擦プレート厚を達成するよう、前記面を適用すること及び圧力を印加することにより、前記摩擦面材を前記コアプレートに接合する請求項20に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−503416(P2009−503416A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525283(P2008−525283)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/030977
【国際公開番号】WO2007/019537
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー・インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】