説明

撮像システム

【課題】広い範囲の仮想像面位置における任意焦点画像から高解像度任意焦点画像を生成することが可能な撮像システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る撮像システムは、撮像光学系1と、撮像光学系1の開口の異なる領域を通過した光を分離して射出するマイクロレンズアレイ2と、マイクロレンズアレイ2によって形成された像を電気信号に変換して撮影データを生成する光電変換素子3とを有する撮影手段と、所定範囲内の任意の像面位置における画像である任意焦点画像を再構成することが可能な任意焦点画像構成部8と、複数回の撮影で生成された撮影データに基づいて複数枚の任意焦点画像を構成させる撮像制御手段5と、複数枚の任意焦点画像を用いて高解像度任意焦点画像を生成する高解像度化処理部9とを備えることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システムに関し、特に像面位置の異なる任意焦点画像を高い解像度で得ることのできる撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ある像面位置で撮影された画像からユーザが指定した異なる像面位置における画像を再構成できるカメラとして、ライトフィールドカメラ(Light Field Camera)が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。このライトフィールドカメラは、ライトフィールドフォトグラフィー(ライトフィールドフォトレンダリング)という手法を用いたカメラであり、実質的に所定範囲内の任意のピント位置における画像(任意焦点画像)を1回の撮影で得られるという特徴を持つ。
【0003】
ライトフィールドフォトグラフィーでは、撮像光学系と光電変換素子の間にマイクロレンズアレイを配置することにより、撮像光学系の開口の異なる領域を通過しマイクロレンズアレイの各マイクロレンズに収束する光を、それぞれ光電変換素子の異なる画素に分離結像し、得られた撮像データからユーザが設定した像面位置での任意焦点画像を再構成することが可能である。1つのマイクロレンズに入射する光は、入射方向別(通過する撮像光学系の開口の領域別)にマイクロレンズの下流にある光電変換素子の異なる画素に分離結像される。またユーザが設定できる像面位置(以下、仮想像面位置という)の範囲は、1つのマイクロレンズに対する光電変換素子の画素数が多いほど広くなる。
【非特許文献1】レン・イング(Ren Ng)、他5名、"Light Field Photograph with a Hand-held Plenoptic Camera"、Stanford Tech Report CTSR 2005-02、p.1-11
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記のライトフィールドカメラでは(例えば、非特許文献1参照)、生成される任意焦点画像の画素数(解像度)がマイクロレンズアレイのマイクロレンズ数と同じになり、光電変換素子の画素数と比べて画素数が大幅に減少してしまうという問題点があった。
【0005】
また生成される任意焦点画像の画素数(解像度)を保つためにマイクロレンズの数を多くすると、1つのマイクロレンズに対する光電変換素子の画素数が少なくなるため、設定できる仮想像面位置の範囲が狭くなってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、広い範囲の仮想像面位置における任意焦点画像から高解像度任意焦点画像を生成することが可能な撮像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像システムは、被写界からの光が通過する撮像光学系と、撮像光学系を通過した光が入射され、撮像光学系の開口の異なる領域を通過した光を分離して射出する分離光学系と、分離光学系によって分離して射出された光が入射され、分離光学系によって形成された像を電気信号に変換して撮影データを生成する光電変換素子とを有する撮影手段と、光電変換素子によって生成された撮影データに基づいて、所定範囲内の任意の像面位置における画像である任意焦点画像を再構成することが可能な任意焦点画像構成手段と、撮影手段に複数回の撮影を行わせ、任意焦点画像構成手段に複数回の撮影で生成された撮影データに基づいて複数枚の任意焦点画像を構成させる撮像制御手段と、複数枚の任意焦点画像を用いて、任意焦点画像よりも解像度の高い高解像度任意焦点画像を生成する高解像度化処理手段と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る撮像システムでは、広い範囲の仮想像面位置における任意焦点画像を高解像度化した高解像度任意焦点画像を生成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態1に係る撮像システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。図1には、撮像システムの例として静止画像を撮影するライトフィールドカメラを示している。なお、撮像システムの構成は図1に示すものに限定されず、必要に応じて他の構成要素を追加したり、不必要な構成要素を省略することができる。
【0010】
本実施形態に係る撮像システムは、図1に示すように撮像光学系1、マイクロレンズアレイ2、光電変換素子3、駆動回路4、撮像制御部5、メモリ6、ユーザI/F(インターフェース)部7、任意焦点画像構成部8、高解像度化処理部9、画像間変化量検出部10および画像選択部11によって構成される。本実施形態では、これらの構成要素が1つの撮像装置(カメラ等)に搭載されており、撮像システムによる画像の撮影がハンドヘルド(手持ち)の状態で実施されるものとする。
【0011】
撮像光学系1は例えば複数のレンズ群から構成され、撮像光学系1を通過した被写界からの光は撮像光学系1の焦点面近傍に像を形成する。撮像光学系1の焦点面近傍には分離光学系としてのマイクロレンズアレイ2が配置されており、撮像光学系1を通過した光はマイクロレンズアレイ2に入射される。マイクロレンズアレイ2は、後に示すように撮像光学系1の開口の異なる領域を通過した光を分離して射出する。マイクロレンズアレイ2の後方には光電変換素子3が配置されており、マイクロレンズアレイ2によって分離して射出された光が入射する。光電変換素子3は、例えばCCDやCMOSを用いたものであり、マイクロレンズアレイ2を構成するマイクロレンズ20の焦点距離付近に配置されている。なお本実施形態では、撮像光学系1、マイクロレンズアレイ2、光電変換素子3が光軸Aに沿って配置されているものとする。
【0012】
マイクロレンズアレイ2を通過した光は光電変換素子3において像を形成し、光電変換素子3はこの像を電気信号に変換して例えばアナログ形式の撮影データを生成する。そして駆動回路4は、光電変換素子3が生成した撮影データを例えばデジタル形式の撮影データとして読み出す。このとき、例えば駆動回路4の内部に設けられたA/D変換器(図示せず)によってアナログ形式の撮影データをデジタル形式の撮影データに変換する。
【0013】
撮像制御部5は、ユーザI/F部7を介してユーザから入力された撮影回数(後述)に従って駆動回路4を動作させ、複数回の撮影で生成された撮影データを駆動回路4から任意焦点画像構成部8またはメモリ6へと送る一連の動作を繰り返させる。また撮像制御部5は、撮影回数に従って任意焦点画像構成部8を繰返し動作させる。任意焦点画像構成部8は、光電変換素子3またはメモリ6から撮影データを受け取り、その撮影データに基づいて所定範囲内の任意の像面位置における画像である任意焦点画像を構成する。なお任意焦点画像とは、所定範囲内の任意の像面位置における画像のことであるが、実質的にピントを所定範囲内で自由に変化させた画像と同じである。本実施形態では、任意焦点画像構成部8において1回の撮影で生成された撮影データから所定範囲内の任意の像面位置における任意焦点画像を再構成できるようになっている。
【0014】
任意焦点画像構成部8によって構成された任意焦点画像は、画像データとしてメモリ6に保存される。またメモリ6に保存された任意焦点画像は、画像間変化量検出部10および画像選択部11を介して高解像度化処理部9へ送られる。高解像度化処理部9は、画像変位量推定部9aと超解像処理部9bを備えており、任意焦点画像構成部8で構成された複数枚の任意焦点画像を用いて、任意焦点画像構成部8で構成された任意焦点画像よりも解像度の高い高解像度任意焦点画像を生成する。
【0015】
画像間変化量検出部10は、複数枚の任意焦点画像の間の相違度または類似度を、SSD(Sum of Squared Difference)、SAD(Sum of Absolute Difference)、相互相関係数等として検出する。画像選択部11は、画像間変化量検出部10で検出された相違度または類似度に基づいて、高解像度化処理部9における高解像度任意焦点画像の生成に用いる任意焦点画像を選択する。このとき、画像間変化量検出部10は例えば基準となる任意焦点画像と他の任意焦点画像の間の相違度をシーンの変化量として検出し、画像選択部11は相違度が所定の閾値以下の任意焦点画像を高解像度化処理部9へ転送する。なお、画像間変化量検出部10および画像選択部11は設けなくてもよい。例えば、構成する撮像システムの撮像対象が静止物に限られる様な場合には画像間変化量検出部10および画像選択部11は設けなくてもよい。
【0016】
図2は、マイクロレンズアレイ2と光電変換素子3の一部を示す拡大図である。ここで、任意焦点画像の構成方法について説明する。マイクロレンズアレイ2を構成するマイクロレンズ20は、それぞれ光電変換素子3の画素配列30と対応しており、1つのマイクロレンズ20を通過する光束は対応する画素配列30上に像を形成する。それぞれのマイクロレンズ20に対応する画素配列30の画素31の数は、設定される像面位置の範囲および任意焦点画像構成部8で構成される任意焦点画像の解像度に応じて決定される。なお本実施形態では、画素配列30が5行5列の配列であり、1つの画素配列30に25個の画素31があるものとする。
【0017】
図3は、撮像光学系1へ入射し1つのマイクロレンズ20を通過した光線が光電変換素子3上に像を形成する様子を光軸Aの垂直方向から見た図である。図3に示すように、マイクロレンズアレイ2の1つのマイクロレンズ20を通過した光は、後方の対応する画素配列30上に像を形成する。
【0018】
図4は、撮像光学系1の開口と画素配列30を光軸Aの方向から見た図である。なお、図4(a)は撮像光学系1の開口を光軸Aの方向から見た図であり、図4(b)は1つの画素配列30を光軸Aの方向から見た図である。図4(a)に示すように、撮像光学系1の開口を1つの画素配列30の画素31の数と同数の格子状の分割開口に分割した場合、画素配列30の1つの画素31には一つの分割開口からの入射光のみが蓄積され、図4(b)に示す各画素(a1−e5)と分割開口(A1−E1)との対応関係は光軸A方向から見て点対称となる。例えば、分割開口E5から射出した光はいずれかの画素配列30の画素e5に入射する。
【0019】
従って、図1の光電変換素子3上の全ての画素配列30から特定の画素位置(例えば、図4(b)のa1のみ)の画素データを抽出して並べると、特定の分割開口(ここでは、分割開口A1)から射出される全ての光線が光電変換素子3上に形成する像(分割開口視点画像)となる。本実施形態では、撮像システムの手振れ等の影響により撮影ごとに光電変換素子3上への入射光が僅かに変化する。従って、複数回の撮影で生成される撮影データは、それぞれ分割開口視点画像ごとのずれをデータの違いとして持っている。
【0020】
図5は、マイクロレンズアレイ2と光電変換素子3への光の入射状態を光軸Aの垂直方向から見た図である。なお図5のZは、マイクロレンズアレイと同じ分解能の仮想像面を示している。また図5では、画素配列30の画素31として、1列分(ここでは、a1、b1、c1、d1、e1)の画素をa、b、c、d、eとして示している。
【0021】
図5に示す光束Lは、それぞれ図1の撮像光学系1の分割開口A1から射出され仮想像面Z上の各画素を通過してマイクロレンズアレイ2上でマイクロレンズ幅Dmと同等若しくはそれ以下の拡がりを持つ。マイクロレンズ20を通過した光束は、いずれかの画素配列30の画素aに結像する。同様に分割開口B1、C1、D1、E1から射出された光束は、それぞれいずれかの画素配列30の画素b、c、d、eに結像している。
【0022】
任意焦点画像構成部8は、撮像光学系1のすべての分割開口(本実施形態では25個)から射出され、ユーザが設定した仮想像面上の各画素を通過する光量を求めることにより、仮想像面における画像を再構成することができる。
【0023】
図6は、仮想像面上のある画素を通過する光束が撮像光学系1のどの分割開口から射出され、どのマイクロレンズへ入射するかを光軸の垂直方向から見た場合の図である。ここで、仮想像面Z上の画素位置を座標(x、y)、撮像光学系1の分割開口の位置を座標(u、v)、マイクロレンズアレイ2上のマイクロレンズ20の位置を座標(x´、y´)、撮像光学系1の開口からマイクロレンズアレイ2までの距離をF、撮像光学系1の開口から仮想像面Zまでの距離をαFとする。なお図6では、鉛直方向を表すx、u、x´方向についてのみ示している。図6に示すように、座標(u、v)と座標(x、y)を通過した光束は、マイクロレンズアレイ2の(u+(x−u)/α、v+(y−u)/α)の位置に達し、(x´、y´)=(u+(x−u)/α、v+(y−u)/α)となる。
【0024】
このため、光電変換素子3の画素31の画素値をL(x´、y´、u、v)とすると、仮想像面Zの各画素の画素値E(x、y)は以下の式(1)で求められる。
【0025】
【数1】

【0026】
式(1)において、αはユーザによって与えられるため、(x、y)、(u、v)を与えれば光束の入射するマイクロレンズ20の位置(x´、y´)が分かる。そして、そのマイクロレンズ20に対応する画素配列30から(u、v)の位置の画素31(例えば、分割開口が図4(a)のA1であれば図4(b)のa1)の画素値L(x´、y´、u、v)を抽出する。これをすべての分割開口について行い、抽出された画素値を合計(積分)することにより仮想像面Zの各画素の画素値E(x、y)が求められる。なお図1における積分は、u、vを撮像光学系1の分割開口の代表座標として単純加算により行うことができる。
【0027】
図7は、撮像光学系1の1つの分割開口から射出され、仮想像面Z上の1つの画素を通過した光束L1が2つのマイクロレンズ20にまたがって入射する場合を光軸Aの垂直方向から見た図である。この場合、光束L1はマイクロレンズML1、ML2に対応する2つの画素配列30の画素1a、2aに分散して結像する。従って光束L1による画素値L1(x´、y´、u、v)は、画素1a、2aの画素値L1a、L2aの補間によって求められる。本実施形態では、画素値L1(x´、y´、u、v)をマイクロレンズML1、ML2上での光束L1の像の長さd1、d2を用いて、以下の式(2)で表される線形補間で求めるものとする。なお、像の長さd1、d2はカメラの撮影パラメータ、仮想像面の位置等から実験的に求められる。
【0028】
【数2】

【0029】
図8は、本実施形態に係る撮像システムにおいて任意焦点画像を精度良く再構成できる仮想像面Zの設定範囲を示した図である。撮像光学系1のある分割開口から射出され、仮想像面Z上のある画素を通る光束Lがマイクロレンズアレイ上でマイクロレンズ幅Dmと同等若しくはそれ以下の拡がりを持つ場合は、式(1)を用いて精度良く仮想像面Z上の画素値を求めることができる。マイクロレンズ20の前側と後側でそれぞれ焦点を結び、マイクロレンズ上で直径Dmの拡がりを持つ光束L1、L2が同じ幅の広がりとなる共役面をZ1、Z2とすると、Z1からZ2までが精度良く任意焦点画像を再構成できる仮想像面Zの設定範囲となる。1つのマイクロレンズ20に対応する画素配列30がn行n列の画素31から構成されている場合、マイクロレンズアレイ2の前後それぞれの仮想像面設定可能範囲φ1を式(3)に示す。式(3)のF0は、撮像光学系のF値を示している。なお本実施形態では、n=5である。
【0030】
図9は、さらに任意焦点画像を精度良く再構成できる仮想像面Zの設定範囲を示した図である。図9では、仮想像面Z上で完全に結像する光線のみに注目しており、仮想像面設定可能範囲を式(4)に示されるφ2に縮小している。
【0031】
【数3】

【0032】
【数4】

【0033】
ユーザは、上記の仮想像面設定可能範囲から任意の仮想像面Zの位置を指定できる。また仮想像面Zの位置を、任意焦点画像構成部8がカメラパラメータ等を用いて自動で設定するようにしてもよい。
【0034】
図10は、複数枚の任意焦点画像が構成されるまでの処理を示すフローチャートである。ここで、撮像制御部5による制御で複数回の撮影が行われ、複数枚の任意焦点画像が構成されるまでの流れについて説明する。
【0035】
まず、ユーザI/F部7を介してユーザから撮影回数Nが入力される(S101)。このとき、撮影回数Nの他に撮影時のカメラパラメータ等を入力するようにしてもよい。次に、撮像制御部5は駆動回路4を介して撮像光学系1、マイクロレンズアレイ2、光電変換素子3等からなる撮影手段に1回撮影を行わせ、光電変換素子3から出力された撮影データをメモリ6に保存する(S102)。そして、S101で入力された撮影回数N分の撮影が完了したか判定し(S103)、撮影が完了していなければS102における1回撮影、撮影データの保存を繰り返す。このとき、例えば2秒間連続的に撮影を行うようにし、60回分の撮影データ(撮像システムが30fpsの場合)を保存するようにする。
【0036】
N回の撮影が完了した場合は、例えばユーザI/F部7を介してユーザが仮想像面位置を設定する(S104)。ユーザが任意焦点画像構成の都度に仮想像面位置を設定してもよく、また、予め設定した複数の仮想像面位置に対して任意焦点画像構成を行わせてもよい。予め設定する仮想象面位置としては例えば仮想像面設定可能範囲内に等間隔に配置したものなどが考えられる。そして、任意焦点画像構成部8はメモリ6に保存されたN回分の撮影データのうち1回分の撮影データを読み込む(S105)。それから任意焦点画像構成部8は、S105で読み込んだ撮影データとS104で設定された仮想像面位置を用いて一枚の任意焦点画像を構成する(S106)。次に、メモリ6に保存されているN回分の撮影データの読み込みが完了したかどうかを判定し(S107)、完了していなければメモリ6から別の撮影データを読み込む。N回分の撮影データの読み込みが完了した場合には、ユーザがユーザI/F部7等を介して異なる仮想像面位置で任意焦点画像の再構成を行うかどうかを選択し(S108)、任意焦点画像の再構成を行う場合には上記のS104からS108までの処理を繰り返す。任意焦点画像の再構成を行わない場合には処理を終了する。なお本実施形態では、撮影されたN回分のすべての撮影データについて任意焦点画像を構成するようにしているが、一部の撮影データについてのみ任意焦点画像を構成するようにしてもよい。
【0037】
このようにして、撮影枚数に応じた任意焦点画像が仮想像面位置ごとに生成できる。ある一つの仮想像面位置において撮影データごとに任意焦点画像を比較すると、分割開口視点画像ごとのずれが合成され、任意焦点画像全体のずれとなっている。
【0038】
図10に示す処理によって構成された複数枚の任意焦点画像は画像データとして一旦メモリ6に保存され、その後高解像度化処理部9において高解像度任意焦点画像の生成に利用される。なお、上記のように複数枚の任意焦点画像は、メモリ6から画像間変化量検出部10および画像選択部11を介して高解像度化処理部9へ転送される。画像間変化量検出部10は、シーンの変化量として任意焦点画像の間の相違度または類似度を検出し、画像選択部11はシーンの変化量が所定の閾値以下である任意焦点画像を高解像度化処理部9へ転送する。
【0039】
ここで、高解像度化処理部9で行われる任意焦点画像の高解像度化処理について説明する。なお本実施形態では、高解像度化処理において同じ仮想像面位置で構成された複数枚の任意焦点画像を用いるものとするが、例えば若干仮想像面位置の異なる複数枚の任意焦点画像を用いて高解像度任意焦点画像を生成してもよい。高解像度化処理部9では、画像変位量推定部9aにおいて任意焦点画像間の画像変位量(画素位置対応)を推定した後、この画素変位量と任意焦点画像の画像データを用いて超解像処理部9bにおいて高解像度任意焦点画像を生成する。
【0040】
なお高解像度化処理手段9では、図10の処理で構成された複数枚の任意焦点画像から1枚の基準画像を選択し、その基準画像に対して高解像度化処理を行う。このとき、基準画像の全体に対して高解像度化処理を行ってもよいが、例えばユーザが高解像度化処理を行いたい部分領域を選択するようにして、その部分領域についてのみ高解像度化処理を行うようにしてもよい。この場合、画像変位量を推定できるように画像変位量推定部9aに対して基準画像の部分領域の画像データを転送し、それ以外の任意焦点画像については基準画像の部分領域よりも大きい領域の画像データを転送するようにする。例えば、選択された基準画像の部分領域を1ブロックとして、その他の任意焦点画像については部分領域とその周辺を含む9ブロック分の画像データを転送するようにする。
【0041】
図11は、画像変位量推定部9aで行われる画像変位量推定処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、図11に示すアルゴリズムの流れに添って画像変位量推定部9aで行われる画像変位量推定処理の説明を行う。まず、画像変位量推定の基準となる任意焦点画像を基準画像として1枚読み込む(S201)。本実施形態では、撮像システムのシャッターボタン(図示せず)が全押しされた直後の1回目の撮影で生成された撮影データから構成された任意焦点画像を基準画像とするが、基準画像をその他の任意焦点画像としてもよい。次に、基準画像を複数の画像変位パラメータで変形させ、画像列を生成する(S202)。このとき、例えば基準画像を所定の範囲で並進、回転させて画像列を生成する。それから、基準画像との間の画像変位量推定を行う参照画像として、図10の処理で構成された任意焦点画像のうち1枚の画像を読み込む(S203)。そして、領域ベースマッチング手法等のピクセルマッチング手法を用いて基準画像と参照画像との間で大まかな画素位置の対応付けを行う(S204)。これにより、基準画像と参照画像との間の画像変位量がピクセル(画素)レベルで求められる。
【0042】
次に、S202で基準画像を変形することにより生成された画像列と参照画像との間の類似度値を算出する(S205)。この類似度は、SSD(Sum of Squared Difference)やSAD(Sum of Absolute Difference)等の画像列と参照画像との差分として求めることができる。そしてS202において画像列を生成した際の画像変位パラメータと、S205で算出した類似度値との関係を用いて、離散的な類似度マップを作成する(S206)。それから、S206で作成した離散的な類似度マップを補完して連続的な類似度曲線を求め、この連続的な類似度曲線において類似度値の極値を探索する(S207)。離散的な類似度マップを補完して連続的な類似度曲線を求める方法としては、例えばパラボラフィッティングやスプライン補間法がある。この連続的な類似度曲線において類似度値が極値になるときの画像変位パラメータが、基準画像と参照画像との間の画像変位量として推定される。
【0043】
その後、超解像処理部9bにおける高解像度任意焦点画像の生成に用いられるすべての任意焦点画像について画像変位量推定が行われたかどうかを判定し(S208)、すべての任意焦点画像について画像変位量推定が行われていない場合には、図10の処理で構成された任意焦点画像のうち他の任意焦点画像を次の参照画像として(S209)、S203からS208までの処理を繰り返す。S208において、超解像処理部9bで用いられるすべての画像について画像変位量推定が行われたと判定された場合には処理を終了する。
【0044】
図12は、図11の処理において画像変位量推定部9aが求めた類似度曲線の例を示す図である。図12において、縦軸は類似度値を、横軸は図11のS202において画像列を生成した際の画像変位パラメータを示している。図12の例では、画像列と参照画像との間の類似度がSSDで算出されており、類似度曲線が離散的な類似度マップをパラボラフィッティングで補完することにより求められているため、類似度値が小さいほど類似度が高くなる。このように、離散的な類似度マップを補完して連続的な類似度曲線を求め、その極値(図12の例では極小値)を探索することにより、基準画像と参照画像との間の画像変位量をサブピクセルレベルで求めることができる。
【0045】
このように、画像変位量推定部9aで推定された画像変位量と、画像変位量を求めた任意焦点画像の画像データを超解像処理部9bへ転送し、基準画像に対して高解像度化処理を行う。
【0046】
図13は、超解像処理部9bで行われる高解像度化処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、図13に示すアルゴリズムの流れに添って超解像処理を用いた高解像度化処理の説明を行う。まず、基準画像の画像データと画像変位量推定部9aが画像変位量を推定した複数枚の任意焦点画像の画像データを読み込む(S301)。次に、基準画像を高解像度化処理のターゲット画像として、このターゲット画像に対しバイリニア補間やバイキュービック補間等の補完処理を行って初期画像z0を作成する(S302)。なおこの補間処理は、場合により省略することができる。
【0047】
それから、画像変位量推定部9aが推定した画像変位量を用いて、ターゲット画像と画像変位量が推定された任意焦点画像との間の画素対応関係を明らかにし、ターゲット画像の拡大座標を基準とする座標空間において重ねあわせ処理を行って、レジストレーション画像yを生成する(S303)。なおここでyは、レジストレーション画像の画像データを表すベクトルである。このレジストレーション画像yを生成する方法の詳細については、「田中・奥富、再構成型超解像処理の高速化アルゴリズム、Computer Vision and Image Media(CVIM) Vol.2004、No.113、pp.97-104 (2004-11)」に開示されている。S303における重ねあわせ処理は、図11の処理において画像変位量が推定された複数枚の任意焦点画像の各ピクセル値と、ターゲット画像の拡大座標との間で画素位置の対応付けを行い、各ピクセル値をターゲット画像の拡大座標の最も近い格子点上においていくことで行われる。このとき、同一の格子点上に複数のピクセル値をおく場合があるが、その場合にはそれらのピクセル値に対して平均化処理を実施する。
【0048】
次に、光学伝達関数(OTF、Optical Transfer Function)、CCDアパーチャ(CCD開口)等の撮像特性を考慮した点広がり関数(PSF、Point Spread Function)を求める(S304)。このPSFは、以下の式(5)における行列Aに反映され、例えば簡易的にGauss関数を用いることができる。それから、S303で生成されたレジストレーション画像yとS304で求められたPSFを用いて、以下の式(5)で表される評価関数f(z)の最小化を行い(S305)、f(z)が最小化されたかどうかを判定する(S306)。
【0049】
【数1】

【0050】
式(5)において、yはS603で生成されたレジストレーション画像の画像データを表す列ベクトル、zはターゲット画像を高解像度化した高解像度任意焦点画像の画像データを表す列ベクトル、AはPSF等を含めた撮像システムの特性をあらわす画像変換行列である。また、g(z)は画像の滑らかさや画像の色の相関等を考慮した正則化項であり、λは重み係数である。式(5)で表される評価関数f(z)の最小化には、例えば最急降下法を用いることができる。最急降下法を用いる場合には、f(z)をzの各要素で偏微分した値を計算して、それらの値を要素とするベクトルを生成する。そして以下の式(6)に示すように、偏微分した値を要素とするベクトルをzに付加することにより、高解像度任意焦点画像zを更新させていき(S307)、f(z)が最小となるzを求める。
【0051】
【数2】

【0052】
式(6)において、znはn回目の更新を行った高解像度任意焦点画像の画像データを表す列ベクトルであり、αは更新量の歩み幅である。なお、最初のS305の処理では、高解像度任意焦点画像zとしてS302で求められた初期画像z0を用いることができる。S306においてf(z)が最小化されたと判定された場合には処理を終了し、そのときのznを最終的な高解像度任意焦点画像としてメモリ6等に記録する。このようにして、図10の処理で構成された任意焦点画像よりも解像の高い高解像度任意焦点画像を得ることができる。
【0053】
図14は、超解像処理部9bの構成例を示すブロック図である。ここで、超解像処理部9bで行われる超解像処理を用いた高解像度化処理についてさらに説明する。図14に示す超解像処理部9bは、補間拡大部201、画像蓄積部202、PSFデータ保持部203、畳込み積分部204、レジストレーション画像生成部205、画像比較部206、畳込み積分部207、正則化項演算部208、更新画像生成部209、収束判定部210から構成される。
【0054】
はじめに、基準画像を高解像化処理のターゲット画像として補間拡大部201に与え、ターゲット画像の補間拡大を行う(図13のS302に対応)。ここで用いられる補間拡大の方法としては、例えばバイリニア補間やバイキュービック補間などが挙げられる。補間拡大部201において補間拡大されたターゲット画像は、例えば初期画像z0として画像蓄積部202に送られ、ここに蓄積される。次に、補間拡大されたターゲット画像は畳込み積分部204に与えられ、PSFデータ保持部203により与えられるPSFデータ(式(5)の画像変換行列Aに相当)との間で畳込み積分が行われる。
【0055】
また、ターゲット画像および画像変位量推定部9aが画像変位量を推定した複数枚の参照画像は、レジストレーション画像生成部205に与えられ、画像変位量推定部20aで求められた画像変位量を元にターゲット画像の拡大座標を基準とする座標空間で重ねあわせ処理を行うことにより、レジストレーション画像yが生成される(図13のS303に対応)。レジストレーション画像生成部205における重ねあわせ処理は、例えば画像変位量推定部9aが画像変位量を推定した複数枚の任意焦点画像の各ピクセル値と、ターゲット画像の拡大座標との間で画素位置の対応付けを行い、各ピクセル値をターゲット画像の拡大座標の最も近い格子点上においていくことで行われる。このとき、同一の格子点上に複数のピクセル値をおく場合があるが、その場合にはそれらのピクセル値に対して平均化処理を実施する。
【0056】
畳込み積分部204において畳込み積分された画像データ(ベクトル)は画像比較部206に送られ、レジストレーション画像生成部205において生成されたレジストレーション画像yとの間で、同一のピクセル位置におけるピクセル値の差分を算出することにより、差分画像データ(式(5)の(y−Az)に相当)が生成される。画像比較部206において生成された差分画像データは畳込み積分部207に与えられ、PSFデータ保持部203により与えられるPSFデータとの間で畳込み積分が行われる。畳込み積分部207は、例えば式(5)における画像変換行列Aの転置行列と差分画像データを表す列ベクトルとを畳込み積分することにより、式(5)の‖y−Az‖2をzの各要素で偏微分したベクトルを生成する。
【0057】
また、画像蓄積部202に蓄積された画像は正則化項演算部208に与えられ、式(5)における正則化項g(z)が求められると共に、正則化項g(z)をzの各要素で偏微分したベクトルが求められる。正則化項演算部208は、例えば、画像蓄積部202に蓄積された画像データに対して、RGBからYCrbの色変換処理を行い、そのYCrb成分(輝度成分と色差成分)に対して周波数高域通過フィルタ(ラプラシアンフィルタ)を畳込み積分したベクトルを求める。そして、このベクトルの二乗ノルム(長さの二乗)を正則化項g(z)として、g(z)をzの各要素で偏微分したベクトルを生成する。Cr、Cb成分(色差成分)にラプラシアンフィルタを掛けると偽色の成分が抽出されるため、正則化項g(z)を最小化することにより偽色の成分を除去することができる。このため、式(5)に正則化項g(z)を含めることで「一般に画像の色差成分は滑らかな変化である」という画像の先験情報を用いることとなり、色差を抑制した高解像度画像を安定して求めることが可能となる。
【0058】
畳込み積分部207で生成された画像データ(ベクトル)、画像蓄積部202に蓄積された画像データ(ベクトル)、正則化項演算部208で生成された画像データ(ベクトル)は、更新画像生成部209に与えられる。更新画像生成部209では、これらの画像データ(ベクトル)が式(5)、式(6)に示すλ、α等の重み係数を乗じて加算され、更新された高解像度任意焦点画像が生成される(式(6)に対応)。
【0059】
それから、更新画像生成部209において更新された高解像度任意焦点画像は、収束判定部210へ与えられ、収束判定が行われる。この収束判定では、収束にかかった繰り返し演算回数が一定回数よりも多くなった場合に高解像度任意焦点画像の更新作業が収束したと判断しても良いし、また、過去に更新された高解像度任意焦点画像を記録しておき、現在の高解像度任意焦点画像との差分を取って、その更新量が一定の値よりも少ないと判断された場合に高解像度任意焦点画像の更新作業が収束したと判断しても良い。
【0060】
収束判定部210において更新作業が収束したと判断された場合には、更新された高解像度任意焦点画像は最終的な高解像度任意焦点画像として外部へ出力される。更新作業が収束していないと判断された場合には、更新された高解像度任意焦点画像は画像蓄積部202へ与えられ、次回の更新作業に利用される。この高解像度任意焦点画像は、次回の更新作業のために畳込み積分部204、正則化項演算部208へ与えられる。以上の処理を繰り返し、更新画像生成部209で高解像度任意焦点画像を更新していくことで、良好な高解像度任意焦点画像を得ることができる。なおレジストレーション画像yを生成する代わりに、各参照画像に重み係数をかける方法で超解像処理部9bにおける高解像度化処理を行うこともできる。
【0061】
本実施形態では、撮像光学系1、マイクロレンズアレイ2、光電変換素子3等を有する撮影手段で複数回の撮影を行って複数枚の任意焦点画像を構成し、これらの微小な位置ずれがある任意焦点画像間の画像変位量を推定して高解像度任意焦点画像を生成するため、広い範囲の仮想像面位置における任意焦点画像を高解像度化した高解像度任意焦点画像を生成することが可能となる。
【0062】
(実施形態2)
図15は、本発明の実施形態2に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。なお、本実施形態に係る撮像システムの構成および処理は、以下に示す点を除いて実施形態1に係る撮像システムと同様であり、異なる部分についてのみ説明する。
【0063】
本実施形態に係る撮像システムは、実施形態1に係る撮像システムの構成要素に加えて撮像部移動機構15と撮像部移動量記録部16を備えている。また本実施形態に係る撮像システムでは、高解像度化処理部9に画像変位量推定部9aがなく、超解像処理部9bのみで構成されている。
【0064】
撮像部移動機構15は、撮像光学系1、マイクロレンズアレイ2および光電変換素子3のうち少なくとも1つを光軸Aに垂直な面内で移動させる。この撮像部移動機構15として、例えば既存の手振れ補正機構等で利用されている駆動機構を利用することができる。なお本実施形態では、マイクロレンズアレイ2と光電変換素子3の位置関係が変わらないように、マイクロレンズアレイ2と光電変換素子3を同じ移動量および同じ移動方向で移動させるものとする。
【0065】
また撮像部移動量記録部16は、撮影が行われるごとに、撮像光学系1、マイクロレンズアレイ2および光電変換素子3のうち撮像部移動機構15によって移動されるものの移動量および移動方向を記録する。この撮像部移動量記録部16として、例えば手振れ補正機構のジャイロセンサ等を利用することができる。
【0066】
撮像部移動量記録部16は、撮影ごとの移動量および移動方向を高解像度化処理部9へ転送する。本実施形態では、撮像部移動量記録部16が上記の移動量を任意焦点画像構成部8で構成された任意焦点画像のスケールに縮小して高解像度化処理部9へ送るようになっている。任意焦点画像のスケールは任意焦点画像の分解能、即ちマイクロレンズ20の数で決まる。例えば本実施形態では、任意焦点画像の分解能は光電変換素子3の画素数の1/25であり、実際の移動量の1/5が任意焦点画像間のずれ量として送られる。一般的に1つのマイクロレンズ20に対応する画素配列30がn行n列である場合には、実際の移動量の1/nが任意焦点画像間のずれ量となる。
【0067】
画像間変化量検出部10は、実施形態1と同様にシーンの変化量として任意焦点画像の間の相違度または類似度を検出し、画像選択部11はシーンの変化量が所定の閾値以下である任意焦点画像を高解像度化処理部9へ転送する。本実施形態では、実施形態1の場合よりもシーンの変化量がさらに少ない任意焦点画像のみを高解像度化処理部9へ送るようになっている。これは、高解像度化処理部9に画像変位量推定部9aがないためである。
【0068】
図16は、画像間変化量検出部10および画像選択部11で行われる処理を示すフローチャートである。なお実施形態1においても、画像間変化量検出部10および画像選択部11は、図16に示す処理とほぼ同様の処理を行っている。
【0069】
まず、任意焦点画像構成部8で構成された任意焦点画像を1枚読み込む(S401)。次に、任意焦点画像の読み込みが1回目かどうかを判定し(S402)、1回目である場合にはその任意焦点画像を基準画像として(S408)、次の任意焦点画像を読み込む(S401)。基準画像以外の2枚目以降の任意焦点画像については、基準画像とその任意焦点画像との差分値(上記の相違度等)を計算し(S403)、差分値が閾値以下かどうかを判定する(S404)。任意焦点画像と基準画像の差分値が閾値以下である場合には、その任意焦点画像を超解像処理部9bへ転送する転送用画像として登録する(S405)。それから、すべての任意焦点画像について読み込みが完了したかどうかを判定し(S406)、読み込みが完了していない場合にはS401からS406までの処理を繰り返す。すべての任意焦点画像の読み込みが完了した場合には、S405で転送用画像として登録された任意焦点画像と基準画像を超解像処理部9bへ転送する。
【0070】
その後、超解像処理部9bは転送された基準画像および任意焦点画像と、撮像部移動量記録部16から転送された移動量および移動方向を用いて高解像度任意焦点画像を生成する。本実施形態において超解像処理部9bは、実施形態1における画像変位量の代わりに上記の移動量および移動方向を用いて高解像度化任意焦点画像を生成する。
【0071】
本実施形態では、撮像部移動機構15で撮像光学系1、マイクロレンズアレイ2および光電変換素子3のうち少なくとも1つを移動させ、撮像部移動記録部16でその移動量および移動方向を記録し、記録された移動量および移動方向を用いて高解像度化任意焦点画像を生成するため、画像変位量を推定することなく短時間で高解像度化任意焦点画像を生成することが可能となる。その他の効果については、実施形態1に係る撮像システムと同様である。
【0072】
(実施形態3)
図17は、本発明の実施形態3に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。なお、本実施形態に係る撮像システムの構成および処理は、以下に示す点を除いて実施形態1に係る撮像システムと同様であり、異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
本実施形態に係る撮像システムは、実施形態1に係る撮像システムの構成要素に加えて撮像部移動機構15を備えている。撮像部移動機構15は、実施形態2と同様に撮像光学系1、マイクロレンズアレイ2および光電変換素子3のうち少なくとも1つを光軸Aに垂直な面内で移動させる。
【0074】
しかし本実施形態では、高解像度化処理部9に画像変位量推定部9aが設けられており、画像変位量推定部9aは実施形態1と同様に基準画像とその他の任意焦点画像との間の画像変位量を推定する。なお本実施形態では、実施形態1と同様の処理により高解像度化任意焦点画像を生成する。
【0075】
本実施形態では、撮像部移動機構15が撮像光学系1、マイクロレンズアレイ2および光電変換素子3のうち少なくとも1つを移動させるため、適当な位置ずれを自発的に発生させることが可能となる。その他の効果については、実施形態1に係る撮像システムと同様である。
【0076】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態ではすべての構成要素が1つの撮像装置に搭載されている例を示しているが、例えば任意焦点画像構成部8や高解像度化処理部9における処理をパーソナルコンピュータ等の画像処理装置で行うようにしてもよい。また上記の実施形態では、高解像度化処理部9において超解像処理による高解像度化処理を行っているが、超解像処理以外の高解像度化処理を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態1に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。
【図2】マイクロレンズアレイ2と光電変換素子3の一部を示す拡大図である。
【図3】撮像光学系へ入射し1つのマイクロレンズを通過した光線が光電変換素子上に像を形成する様子を光軸の垂直方向から見た図である。
【図4】撮像光学系の開口と画素配列を光軸の方向から見た図である。
【図5】マイクロレンズアレイと光電変換素子への光の入射状態を光軸の垂直方向から見た図である。
【図6】仮想像面上のある画素を通過する光束が撮像光学系のどの分割開口から射出され、どのマイクロレンズへ入射するかを光軸の垂直方向から見た場合の図である。
【図7】撮像光学系の1つの分割開口から射出され、仮想像面上の1つの画素を通過した光束が2つのマイクロレンズにまたがって入射する場合を光軸の垂直方向から見た図である。
【図8】実施形態1に係る撮像システムにおいて任意焦点画像を精度良く再構成できる仮想像面の設定範囲を示した図である。
【図9】さらに任意焦点画像を精度良く再構成できる仮想像面の設定範囲を示した図である。
【図10】複数枚の任意焦点画像が構成されるまでの処理を示すフローチャートである。
【図11】画像変位量推定部で行われる画像変位量推定処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図12】図11の処理において画像変位量推定部が求めた類似度曲線の例を示す図である。
【図13】超解像処理部で行われる高解像度化処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図14】超解像処理部の構成例を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施形態2に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。
【図16】画像間変化量検出部および画像選択部で行われる処理を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施形態3に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
1 撮像光学系
2 マイクロレンズアレイ
3 光電変換素子
4 駆動回路
5 撮像制御部
6 メモリ
7 ユーザI/F部
8 任意焦点画像構成部
9 高解像度化処理部
9a 画像変位量推定部
9b 超解像処理部
10 画像間変化量検出部
11 画像選択部
15 撮像部移動機構
16 撮像部移動量記録部
20 マイクロレンズ
30 画素配列
31 画素
201 補間拡大部
202 画像蓄積部
203 PSFデータ保持部
204 畳込み積分部
205 レジストレーション画像生成部
206 画像比較部
207 畳込み積分部
208 正則化項演算部
209 更新画像生成部
210 収束判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写界からの光が通過する撮像光学系と、前記撮像光学系を通過した光が入射され、前記撮像光学系の開口の異なる領域を通過した光を分離して射出する分離光学系と、前記分離光学系によって分離して射出された光が入射され、前記分離光学系によって形成された像を電気信号に変換して撮影データを生成する光電変換素子と、を有する撮影手段と、
前記光電変換素子によって生成された撮影データに基づいて、所定範囲内の任意の像面位置における画像である任意焦点画像を再構成することが可能な任意焦点画像構成手段と、
前記撮影手段に複数回の撮影を行わせ、前記任意焦点画像構成手段に前記複数回の撮影で生成された撮影データに基づいて複数枚の任意焦点画像を構成させる撮像制御手段と、
前記複数枚の任意焦点画像を用いて、前記任意焦点画像よりも解像度の高い高解像度任意焦点画像を生成する高解像度化処理手段と、
を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記複数枚の任意焦点画像の間の画像変位量を推定する画像変位量推定手段を備え、前記高解像度化処理手段は、前記画像変位量推定手段によって推定された前記画像変位量を用いて前記高解像度任意焦点画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記撮像光学系、前記分離光学系および前記光電変換素子のうち少なくとも1つを前記撮影手段の光軸に対して垂直な面内で移動させる撮像部移動手段を備え、
前記撮像制御手段は、前記撮影手段が撮影を行うごとに、前記撮像光学系、前記分離光学系および前記光電変換素子のうち少なくとも1つを前記撮像部移動手段によって移動させることを特徴とする請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記撮影手段が撮影を行うごとに、前記撮像光学系、前記分離光学系および前記光電変換素子のうち前記撮像部移動手段によって移動されるものの移動量および移動方向を記録する撮像部移動量記録手段を備え、
前記高解像度化処理手段は、前記撮像部移動量記録手段に記録された前記移動量および前記移動方向を用いて前記高解像度任意焦点画像を生成することを特徴とする請求項3に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記撮像部移動手段は、前記分離光学系および前記光電変換素子を同じ移動量および同じ移動方向で移動させることを特徴とする請求項4に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記複数枚の任意焦点画像の間の相違度または類似度を検出する画像間変化量検出手段と、前記画像間変化量検出手段の検出した相違度または類似度に基づいて前記高解像度任意焦点画像の生成に用いる前記任意焦点画像を選択する画像選択手段と、を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−294741(P2008−294741A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138011(P2007−138011)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】