撮像装置
【課題】蛍光検出を正確に行うことすることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、受光面を備え、基板面上に形成された複数のスポットからなる少なくとも1つのスポットエリアを受光面にて撮像する撮像素子39と、受光面上に付着した付着物を取り除くための清掃部42と、を有する。
【解決手段】撮像装置は、受光面を備え、基板面上に形成された複数のスポットからなる少なくとも1つのスポットエリアを受光面にて撮像する撮像素子39と、受光面上に付着した付着物を取り除くための清掃部42と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の細胞、微生物、染色体、核酸等のサンプルを抗原抗体反応や核酸ハイブリダイゼーション反応等の生化学反応を利用して検出する生化学反応分析装置に関し、特に、検体を撮影するための撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体を分析する方法には、抗原抗体反応を利用した免疫学的な方法や、核酸ハイブリダイゼーションを利用する方法がある。
【0003】
免疫学的な分析方法では、被検出物質と特異的に結合する抗体または抗原等のタンパク質をプローブとして用いる。プローブを微粒子、ビーズ、またはガラス板等の固相表面に固定して、検体中の被検出物質との抗原抗体反応を行わせる。核酸ハイブリダイゼーションを利用する分析方法では、一本鎖の核酸をプローブとして用い、微粒子、ビーズ、ガラス板等の固相表面に固定して、検体中の被検出物質と核酸ハイブリダイゼーションを行わせる。これらの分析方法では、酵素、蛍光物質、または発光性物質等の、検知感度の高い標識物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質である標識化抗体、標識化抗原、または標識化核酸等を用いる。そして、抗原抗体化合物またはハイブリダイズされた二本鎖の核酸を検出して、被検出物質(ターゲット)の有無の検出やその定量を行う。
【0004】
これらの技術を発展させたものとして、互いに異なる塩基配列を有する多数のDNA(デオキシリボ核酸)プローブを、基板上にアレイ状に並べた、いわゆるDNAアレイが知られている。また、多種類のタンパク質をメンブレンフィルタ上に並べ、DNAアレイと同様な構成のタンパク質アレイを作製する方法もある。このように、DNAアレイやタンパク質アレイ等を用いることによって、極めて多数の項目の検査を一度に行うことが可能である。
【0005】
また、様々な検体分析における、検体による汚染の軽減、反応の効率化、装置の小型化、作業の簡便化等の目的で、内部で生化学反応を行わせる使い捨て可能な生化学反応カートリッジが提案されている。DNAアレイを含む生化学反応カートリッジ内に複数のチャンバを配設したものもある。この生化学反応カートリッジによれば、圧力差を利用して溶液を各チャンバへ移動させることにより検体中のDNAの抽出、増幅、またはハイブリダイゼーション等の反応を内部で行わせることが可能である。
【0006】
生化学反応カートリッジ内に外部から溶液を注入する方法として、外部の電動シリンジポンプや真空ポンプを利用する方法がある。また、生化学反応カートリッジ内部で溶液を移動する方法として、圧力差以外にも、重力や毛細管現象や電気泳動を利用する方法が知られている。さらに、生化学反応カートリッジの内部に配設できる小型のマイクロポンプとして、ダイアフラムポンプ、発熱素子を利用したポンプ、圧電素子を利用したポンプがそれぞれ知られている。
【0007】
生化学反応カートリッジまたはその一部に用いられるDNAチップに、情報記憶用のICを設け、このICに記憶された同定情報を利用してDNAの同定を行う構成もある。情報記憶用ICには、DNAチップの塩基配列情報や検体の情報が書き込まれる。
【0008】
また、DNAチップ上のサンプルのハイブリダイゼーション状態を検知するために、サンプルに付着した蛍光物質(蛍光標識)を読み取る方法がある。蛍光物質を読み取ってターゲットの検出を行うために、蛍光を発生させるようにDNAチップに照射する励起光を適宜に較正する。
【0009】
生化学反応を生じさせるために様々な溶液を内蔵し、検体が供給される生化学反応カートリッジは、二次感染や汚染の防止と、使い勝手の観点から、使い捨てのタイプにすることが好ましい。しかし、マイクロポンプを内蔵した生化学反応カートリッジは高価であるという問題がある。したがって、ポンプを内蔵せずに、外部のポンプの作用で溶液を移動し、検体注入後は溶液を外部に流出させずに一連の生化学反応を進められる構造の、使い捨てタイプの生化学反応カートリッジが一般に利用されている。
【0010】
個々のDNAチップは、ハイブリダイゼーションという単独の生化学反応のみを行うためのものである。これに対して、DNAチップを内蔵する生化学反応カートリッジは、各種の生化学反応を連続的に行うものであり、最後に検出工程が行われる場合がある。この検出工程では、CMOSセンサーやCCDセンサー等より構成される撮像素子を用いて、サンプルに付着した蛍光物質(蛍光標識)からの蛍光を検出する。
【0011】
撮像素子を用いた蛍光検出において、撮像素子のセンサー部(受光面)上に塵や埃が付着することがある。付着した塵や埃(以下、付着物と称す)の位置によっては、蛍光検出精度が低下する場合がある。
【0012】
特許文献1に、センサー部上の付着物を検出することが可能なデジタルカメラが記載されている。このデジタルカメラは、合焦しないように撮影レンズのフォーカス調整を行った状態で撮影を行う。こうして撮影した画像により、付着物の有無を確認することができる。
【0013】
特許文献2には、付着物を取り除く方法が開示されている。この方法によれば、センサー部上に光学素子(ローパスフィルタ)を設けることで、塵がセンサー部に直接付着することを抑制する。さらに、光学素子自体を振動させることによって、光学素子上に付着した塵を取り除く。
【特許文献1】特開2001−326848号公報
【特許文献2】特許第03727903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
センサー部(受光面)上の付着物の位置によっては、DNAチップからの蛍光の一部が付着物により遮られてしまう。この場合、DNAチップの一部の輝度値が不確かなものとなるため、サンプルによっては、蛍光検出を正確に行うことができないことがある。
【0015】
特許文献1は、デジタルカメラにおけるセンサー部上の付着物を検出する技術を開示しただけである。また、特許文献2は、振動によりセンサー部上の付着物を取り除く方法を開示してだけである。いずれの文献にも、DNAチップの蛍光検出装置への適用は開示されていない。
【0016】
本発明の目的は、上記問題を解決し、蛍光検出を正確に行うことすることのできる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の撮像装置は、受光面を備え、基板面上に形成された複数のスポットからなる少なくとも1つのスポットエリアを前記受光面にて撮像する撮像素子と、前記受光面上に付着した付着物を取り除くための清掃部と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、受光面(光学素子を含む)上の付着物を取り除くことで、付着物の影響のない検査画像を作成することができるので、蛍光検出を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である生化学反応分析装置の概略構成を示すブロック図である。図1を参照すると、生化学反応分析装置の処理装置は、反応場となるチャンバを含む生化学反応カートリッジが載置されるテーブル13を有する。電磁石14、ペルチェ素子15、16および通信部26がテーブル13上に配置され、これらは、処理装置全体を制御する制御部17に接続されている。
【0021】
電磁石14は、生化学反応カートリッジ内に電磁力を作用させるものである。ペルチェ素子15、16は、生化学反応カートリッジの温度を制御するものである。具体的には、ペルチェ素子15は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によるDNA増幅時における温度制御に用いられる。一方、ペルチェ素子16は、増幅した検体のDNAとDNAプローブとのハイブリダイゼーション時における温度制御と、ハイブリダイゼーションしなかった検体DNAの洗浄時における温度制御に用いられる。
【0022】
通信部26は、生化学反応カートリッジ内のICチップに対して電力の送信を行うとともに信号の送受信を行う。処理装置のデータは、通信部26を通じて生化学反応カートリッジ内のICチップに格納される。
【0023】
電動シリンジポンプ18、19とポンプブロック22、23が、テーブル13の両側に配置されている。ポンプブロック22は、ポンプ18によって空気を排出または吸引するための出入口となる10個のポンプノズル20を有する。ポンプブロック23は、ポンプ19によって空気を排出または吸引するための出入口となる10個のポンプノズル21を有する。
【0024】
電動シリンジポンプ18、19とポンプノズル20、21の間には、不図示の複数の電動切換バルブが配置されている。電動シリンジポンプ18、19および電動切換バルブは制御部17に接続されている。
【0025】
制御部17は、検査者が情報や指示を入力するための入力部24に接続されている。制御部17は、ポンプノズル20、21を1個ずつ独立して開閉して電動シリンジポンプ18、19に対する接続および遮断を制御する。制御部17は、全てのポンプノズル20、21を同時に開閉することもできる。また、制御部17は、電磁石14およびペルチェ素子15、16を適宜に作動させることによって、生化学反応カートリッジ内での生化学反応を実行させる。
【0026】
テーブル13およびポンプブロック22、23の外部に、検出部28が設けられている。検出部28は、生化学反応カートリッジのDNAチップのハイブリダイゼーション状態を検出する。具体的には、検出部28は、DNAチップの蛍光物質を検出する。なお、DNAチップ上には、ハイブリダイゼーション用のプローブがスポットされている。以降の説明において、このプローブをスポットと称し、スポットをアレイ配列した領域をスポットエリアと称する。スポットエリアは単独構成の場合や複数構成の場合がある。
【0027】
検出部28は、ステージ29、蛍光検出ユニット(蛍光検出装置)30および通信部31を備え、これらは制御部17に接続されている。ステージ29は、生化学反応カートリッジを保持する。ステージ29は、面発光体も保持する。蛍光検出ユニット30は、主に光学機器で構成され、蛍光体からの蛍光の強度を測定する。通信部31は、生化学反応カートリッジ内のICチップに対して電力の送信を行ったり、そのICチップとの間で信号を送受信したりする。
【0028】
カートリッジ搬送部27が制御部17に接続されている。カートリッジ搬送部27は、制御部17からの指令に従って生化学反応カートリッジをテーブル13上から検出部28へ搬送する。
【0029】
次に、蛍光検出ユニット30の構成について具体的に説明する。
【0030】
図2に、蛍光検出ユニット30の構成を示す。図2を参照すると、蛍光検出ユニット30は、励起光投影光学系、蛍光撮像部、ステージ45および検出制御部43を有する。
【0031】
面発光体44と蛍光標識を施したDNAアレイを有する生化学反応カートリッジ1とがステージ45に搭載される。ステージ45は、面発光体44が撮影位置に配置される第1の位置と、生化学反応カートリッジ1が撮影位置に配置される第2の位置との間の移動が可能である。このステージ45の移動は、検出制御部43により制御される。
【0032】
面発光体44は、波長600nm付近のフラットな光源(面発光ダイオード)である。第1の位置において、面発光体44の発光面は、撮像レンズ群の焦点が合わないような位置に配置される。面発光体44の点灯および消灯は、検出制御部43により制御される。第2の位置において、生化学反応カートリッジ1のDNAアレイは、蛍光撮像部の撮像レンズ群の焦点が合う位置に配置される。
【0033】
励起光投影光学系は、DNAチップの蛍光物質を励起するためのものである。励起光投影光学系は、波長532nmのレーザー光を発生する固体レーザー光源32と、レーザーシャッター33と、ビームエクスパンダー34と、ビームホモジナイザー35とからなる。ビームエクスパンダー34は、レーザー光のビーム径をDNAチップ12の測定領域の範囲に応じた大きさに拡大する。ビームホモジナイザー35は、ガウシアンビームであるレーザー光をフラットトップの均一な強度の光線に変換する。ビームホモジナイザー35から出射したレーザー光は、生化学反応カートリッジ1のDNAアレイに照射される。
【0034】
蛍光撮像部は、蛍光フィルタ36、可変絞り37を有する撮像レンズ群38、撮像素子39、シャッター40、撮像部41および清掃部42からなる。蛍光フィルタ36は、DNAアレイからの蛍光の波長および面発光体44からの光の波長を含む所定の波長範囲の光を透過し、それ以外の光を遮断する。DNAアレイからの蛍光は、蛍光フィルタ36を通過し、撮像レンズ群38を介して撮像素子39のセンサー部上(受光面上)に到達する。DNAアレイの蛍光像は、撮像レンズ群38により撮像素子39のセンサー部上に結像される。
【0035】
清掃部42は撮像素子39に組み込まれており、撮像素子39の上面に付いた塵や埃等の付着物を移動または取り除くための清掃処理を行う。図3に、清掃部42の概略構成を示す。
【0036】
図3に示すように、清掃部42は、撮像素子39に組み込まれる。撮像素子39は、中央部にセンサー部39aが形成された基板よりなり、センサー部39aを覆うように、赤外吸収ガラス39bが基板上に設けられている。清掃部42は、赤外吸収ガラス39と基板の間に設けられる2つの圧電素子42aと、これら圧電素子42aを駆動する圧電素子駆動部42bとからなる。圧電素子42aは、赤外吸収ガラス39の両端の部分に貼り付けられている。圧電素子駆動部42bから圧電素子42aへ電圧が印加されると、圧電素子42aはその厚さ方向に変形を生じる。この変形を繰り返すことにより、赤外吸収ガラス39bが振動する。この振動により、赤外吸収ガラス39b上の付着物が移動する。赤外吸収ガラス39bは、ローパスフィルタであってもよい。圧電素子駆動部42bは、検出制御部43により制御される。
【0037】
検出制御部43は、MPUボード43a、メモリー43bおよび画像ボード43cを有する。MPUボード43aは、励起光投影光学系、ステージ45および蛍光撮像部の各部の動作を制御したり、本体装置(図1の制御部17)との間でデータを送受信したりする。画像ボード43cは、撮像素子39の出力信号に基づく画像処理を行う。メモリー43bは、蛍光の検出や分析に必要なデータなどを格納する。
【0038】
次に、生化学反応分析装置の動作について詳細に説明する。
【0039】
生化学反応、例えばDNAのハイブリダイゼーションを生化学反応カートリッジ1内で行わせることができる。処理された生化学反応カートリッジ1は検査部28に搬送され、蛍光検出ユニット30にて蛍光検出の処理が行われる。蛍光検出処理を行うにあたって、制御部17は、ICチップから受信した情報に基づいて、セットされた生化学反応カートリッジ1の用途を確認し、使われているDNAチップのスポットエリアの数やスポットの配置を示すスポット情報を取得する。取得したスポット情報は、制御部17から検出制御部43に送信される。検出制御部43は、受信したスポット情報をメモリー43bに格納する。
【0040】
蛍光検出は、第1から第3の蛍光検出処理を含む。第1の蛍光検出処理は、蛍光褪色の影響が小さなサンプルに対して行う処理であり、この処理が通常時における基本動作とされる。第2および第3の蛍光検出処理は、蛍光褪色の影響が大きなサンプルに対して行う処理である。
【0041】
(1)第1の蛍光検出処理:
図4は、通常時の蛍光検出手順を示すフローチャートである。図5は、その蛍光検出における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【0042】
ステップS101で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS102で、検出制御部43は、マーカー検出モードでのDNAチップの撮影を行う。
【0043】
図6は、撮影されるDNAチップの模式図である。図6に示すように、DNAチップ300は、複数のスポットがマトリクス状に配置された複数のスポットエリア301を有する。スポットエリア301のそれぞれは、所定のスポットに配置された基準指標となるマーカー302と、それ以外のスポットに配置されたプローブ303とを有する。マーカー302からの蛍光は、プローブ303からの蛍光より高い輝度を有するので、この輝度の差からマーカー302とプローブ303を区別することができる。プローブ303からの蛍光の輝度に基づいて、実際のハイブリダイゼーション状態を判定する。なお、DNAチップ製造工程において、DNAチップに形成するスポットは一定の大きさに管理されている。
【0044】
マーカー302およびプローブ303の配置は、各スポットエリア301で同じであり、その位置関係を示すスポット情報がメモリー43bに格納されている。検出制御部43は、スポットエリア301を撮像素子39で撮影して得られる撮影画像上で、マーカー302に対応するスポットを検出する。そして、検出制御部43は、その検出したスポットの配置とメモリー43bに格納されているスポット情報とから、撮影画像上におけるプローブ303に対応するスポットを特定する。
【0045】
図7は、図6に示したDNAチップを撮像素子39で撮影して得られる画像の模式図である。マーカー302からの蛍光の輝度はプローブ303からの蛍光に比べて比較的に強いので、画像上でマーカー302のスポットを容易に識別することができる。一方、プローブ303からの蛍光の輝度はハイブリダイゼーション状態により異なる。蛍光輝度の弱いプローブ303については、画像上で、そのスポットを識別することは難しい。本実施形態では、画像上におけるマーカー302のスポットの位置とメモリー43bに格納されているスポット情報とに基づいて、プローブ303に対応するスポットの全てを画像上で特定することができる。
【0046】
ここで、ステップS102のマーカー検出モードでの撮影手順を具体的に説明する。図8に、マーカー検出モードでの撮影手順を示す。
【0047】
まず、レーザー光源32の電源をONとし(ステップS1020)、可変絞り37を開放状態とし(ステップS1021)、レーザーシャッター33を開く(ステップS1022)。これにより、撮影位置に移動した生化学反応カートリッジ1のDNAチップにレーザー光が照射される。
【0048】
次に、シャッター40を開くと(ステップS1023)、DNAチップの各スポットエリアからの蛍光が撮像素子39のセンサー部に入射し、撮像素子39にて、入射光量に応じた電荷が蓄積される(ステップS1024)。マーカー検出用に設定された時間が経過した後(ステップS1025)、撮像素子39における電荷蓄積を終了し(ステップS1026)、シャッター40およびレーザーシャッター33を閉じる(ステップS1027、ステップS1028)。その後、撮像素子39に蓄積された電荷に応じた画像信号が、撮像素子39から検出制御部43に転送される(ステップS1029)。
【0049】
図8に示した手順でマーカー検出モードでの撮影が行われた後、ステップS104で、検出制御部43が、撮像素子39から転送された画像上で、マーカーを抽出する。そして、検出制御部43は、そのマーカーのスポット位置とメモリー43bに格納されているスポット情報とに基づいて、画像上の各プローブに対応するスポットの位置を割り出す。検出制御部43は、割り出した各プローブのスポットの位置を示す情報をメモリー43bに格納する。
【0050】
ステップS104で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置から退避位置に移動する。ステップS105で、検出制御部43は、面発光体44を撮影位置に移動し、面発光体44を点灯する。ステップS106で、検出制御部43は、埃撮影モードでの撮影を行う。
【0051】
ここで、ステップS106の埃撮影モードでの撮影手順を具体的に説明する。図9に、埃撮影モードでの撮影手順を示す。
【0052】
まず、可変絞り37を絞る(ステップS1060)。次に、シャッター40を開くと(ステップS1061)、面発光体44からの光が撮像素子39のセンサー部に入射し、撮像素子39にて、入射光量に応じた電荷が蓄積される(ステップS1062)。埃撮影用に設定された時間が経過した後(ステップS1063)、撮像素子39における電荷蓄積を終了し(ステップS1064)、シャッター40を閉じる(ステップS1065)。その後、撮像素子39に蓄積された電荷に応じた画像信号が、撮像素子39から検出制御部43に転送される(ステップS1066)。
【0053】
図9に示した手順で埃撮影モードでの撮影が行われた後、ステップS107で、検出制御部43が、撮像素子39から転送された画像上で、埃の位置と大きさを算出する。埃がセンサー部に付着している場合は、その埃の付着した部分の画像上における輝度が低下する。よって、画像の中で輝度の低下している部分を埃と見なすことができる。検出制御部43は、算出した埃の大きさおよび位置を含む埃情報をメモリー43bに格納する。埃の大きさをその埃全体が包含される円形に置き換え、その円の中心位置を埃の位置としてもよい。
【0054】
ステップS108で、検出制御部43は、DNAチップのスポットエリアの数が1つまたは複数のいずれであるかを判定する。この判定において、検出制御部43は、マーカー検出モードでの撮影で得られたスポットの位置情報を参照し、その位置情報からスポットエリアの数を判断する。スポットエリアが1つである場合は、ステップS109へ進み、スポットエリアが複数である場合は、ステップS130へ進む。
【0055】
ステップS109で、検出制御部43は、スポットエリアについて、埃と重なるスポットがあるか否かを調べる。この判定において、図5に示すように、埃と重なるスポットがない場合(「OK」の場合)は、そのスポットエリアの画像を蛍光検出のための最終画像データとして用いることができるので、ステップS110へ進む。埃と重なるスポットがある場合(「NG」の場合)は、スポットエリアの画像を完成することができないため、ステップS114へ進む。
【0056】
ステップS110で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、検出制御部43は、ステップS111で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS112で、マイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。
【0057】
ここで、ステップS112のマイクロアレイ撮影モードでの撮影手順を具体的に説明する。図10に、マイクロアレイ撮影モードでの撮影手順を示す。
【0058】
まず、レーザー光源32の電源をONとし(ステップS1120)、可変絞り37を開放状態とし(ステップS1121)、レーザーシャッター33を開く(ステップS1122)。これにより、撮影位置に移動した生化学反応カートリッジ1のDNAチップにレーザー光が照射される。
【0059】
次に、シャッター40を開くと(ステップS1123)、DNAチップの各スポットエリアからの蛍光が撮像素子39のセンサー部に入射し、撮像素子39にて、入射光量に応じた電荷が蓄積される(ステップS1124)。マイクロアレイ撮影用に設定された時間が経過した後(ステップS1125)、撮像素子39における電荷蓄積を終了し(ステップS1126)、シャッター40およびレーザーシャッター33を閉じる(ステップS1127、ステップS1128)。その後、撮像素子39に蓄積された電荷に応じた画像データが、撮像素子39から検出制御部43に転送される(ステップS1129)。
【0060】
ステップS113で、検出制御部43は、撮像素子39から得られた画像データを本体(制御部17)に送る。この後、本検出動作を終了する。
【0061】
また、ステップS114で、検出制御部43は、本検出動作開始から現在までに清掃部42による清掃が行われたか否かを確認する。検出制御部43は、メモリー43bにて、清掃部42の動作回数を管理しており、その動作回数に基づいて初めての清掃動作であるか否かを判定する。初めての清掃動作であると判断した場合は、ステップS115へ進む。初めての清掃動作でないと判断した場合は、ステップS118へ進む。
【0062】
ステップS115で、検出制御部43は、清掃部42の動作回数を予め設定された最大動作回数(初期値)に設定する。この最大動作回数は、図1に示した入力部24を通じて、検査者が自由に設定することができる。ステップS116で、検出制御部43は、清掃部42に清掃動作を行わせる。
【0063】
ここで、ステップS116の清掃動作手順を具体的に説明する。図11に、清掃動作手順を示す。まず、シャッター40を開く(ステップS1160)。次いで、清掃部42を動作させる(ステップS1161)。最後に、シャッター40を閉じる(ステップS1162)。
【0064】
清掃動作が行われると、ステップS117で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値を1つ減じる。その後、埃の除去がうまくいったかを調べる為に、ステップS106に戻る。
【0065】
また、ステップS118で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値が0であるいか否かを調べる。動作回数の値が0でない場合は、ステップS116に進む。動作回数の値が0である場合は、ステップS119に進む。
【0066】
ステップS119で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、ステップS120で、検出制御部43は、清掃により埃を取り除く(または移動する)ことができなかったことを本体(制御部17)に伝える。その後、本検出動作を終了する。
【0067】
また、ステップS130で、検出制御部43は、複数のスポットエリア(図6に示すスポットエリア301)のそれぞれについて、埃と重なるスポットがあるか否かを調べる。この判定において、図5に示すように、全スポットが埃と重ならないスポットエリアがある場合(「OK」の場合)は、そのスポットエリアの画像を蛍光検出のための最終画像データとして用いることができるので、ステップS131へ進む。全スポットが埃と重ならないスポットエリアがない場合(「NG」の場合)は、スポットエリアの画像を完成することができないため、ステップS136へ進む。
【0068】
ステップS131で、検出制御部43は、全スポットが埃と重ならないスポットエリアを示す情報(番号)をメモリー43bに格納する。図5に示した例では、第2のスポットエリアの情報がメモリー43bに格納される。
【0069】
ステップS132で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。次に、検出制御部43は、ステップS133で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS134で、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。そして、検出制御部43は、ステップS135で、本撮影で得られた画像データの中から有効なスポットエリア(図5に示す第2のスポットエリア)の画像データを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0070】
また、ステップS136で、検出制御部43は、図5に示すように、第1のスポットエリアを構成するスポットのうち、埃と重なるスポットについて、第2および第3のスポットエリアの対応するスポットを利用して補完することできるか否かを調べる。第2および第3のスポットエリアの対応するスポットのいずれか1つが埃と重なっていない場合(「OK」の場合)は、検出制御部43は補完可と判断し、ステップS137に進む。第2および第3のスポットエリアの対応するスポットが全て埃と重なっている場合(「NG」の場合)は、検出制御部43は補完不可と判断し、ステップS114に進む。
【0071】
ステップS137で、検出制御部43は、補完を必要とするスポットを示す情報とこれを補完するために用いるスポット(第2および第3のスポットエリアの対応するスポット)を示す情報を対とする補完情報をメモリー43bに格納する。
【0072】
ステップS138で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。次に、検出制御部43は、ステップS139で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS140で、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。そして、検出制御部43は、ステップS141で、メモリー43bに格納した補完情報を参照して、本撮影で得られた画像データの中から埃の影響を受けないスポットを集め、それらスポットを1スポットエリアデータとして本体に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0073】
以上の第1の蛍光検出処理によれば、マーカー検出モードで撮影した画像データに基づいて各スポットエリアにおける各スポットの大きさや位置を取得することができる。また、埃撮影モードで撮影した画像データから埃(付着物)の大きさや位置を取得することができる。こうして取得したスポットの大きさや位置と埃(付着物)の大きさや位置とを比較することで、埃(付着物)が蛍光検出の妨げになるか否かを調べることができる。
【0074】
また、埃(付着物)の影響を受けるスポットについては、他のエリアの対応するスポットで補完されるので、埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。これにより、蛍光検出を正確に行うことが可能となる。
【0075】
(2)第2の蛍光検出処理:
サンプルによっては、マーカー撮影によりスポットの蛍光褪色が起き、それが蛍光検出に影響を与える場合がある。この場合は、マーカー撮影を行うことができないため、スポットの個々の位置を確定することができない。第2の蛍光検出処理では、マーカー撮影なしに蛍光検出を行う。
【0076】
図12は、第2の蛍光検出処理手順を示すフローチャートである。図13は、その蛍光検出における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【0077】
ステップS201で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置から退避位置に移動する。ステップS202で、検出制御部43は、面発光体44を撮影位置に移動させ、面発光体44を点灯する。ステップS203で、検出制御部43は、図9に示した手順に従って埃撮影モードでの撮影を行う。ステップS204で、検出制御部43は、撮像素子39から転送された画像上で、埃の位置と大きさを算出する。検出制御部43は、算出した埃の大きさおよび位置を含む埃情報をメモリー43bに格納する。
【0078】
ステップS205で、検出制御部43は、検出対象のスポットエリアの数が1つまたは複数のいずれであるかを判定する。この判定において、検出制御部43は、ICチップからの受信情報から取得した、DNAチップのスポットエリアの数やスポットの配置を示すスポット情報を参照する。スポットエリアが1つである場合は、ステップS206へ進み、スポットエリアが複数である場合は、ステップS230へ進む。
【0079】
ステップS206で、検出制御部43は、スポット情報に基づいて仮想スポットエリアを想定し、その仮想スポットエリアが埃と重なるか否かを調べる。仮想スポットエリアは撮影画像上におけるDNAチップのスポットエリアに対応する。この判定において、図13に示すように、仮想スポットエリアが埃と重ならない場合(「OK」の場合)は、スポットが埃と重なる可能性がないと判断する。よって、仮想スポットエリアの画像を蛍光検出のための最終画像データとして用いることができると判断して、ステップS207へ進む。仮想スポットエリアが埃と重なる場合(「NG」の場合)は、スポットが埃と重なる可能性があると判断する。よって、スポットエリアの画像を完成することができないと判断して、ステップS211へ進む。
【0080】
ステップS207で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、検出制御部43は、ステップS208で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS209で、図10に示した手順に従ってマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。
【0081】
ステップS210で、検出制御部43は、撮像素子39から得られた画像データを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0082】
また、ステップS211で、検出制御部43は、本検出動作開始から現在までに清掃部42による清掃が行われたか否かを確認する。検出制御部43は、メモリー43bにて、清掃部42の動作回数を管理しており、その動作回数に基づいて初めての清掃動作であるか否かを判定する。初めての清掃動作であると判断した場合は、ステップS212へ進む。初めての清掃動作でないと判断した場合は、ステップS215へ進む。
【0083】
ステップS212で、検出制御部43は、清掃部42の動作回数を予め設定された最大動作回数(初期値)に設定する。ステップS213で、検出制御部43は、図11に示した手順に従って清掃部42に清掃動作を行わせる。清掃動作が行われると、ステップS214で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値を1つ減じる。その後、埃の除去がうまくいったかを調べる為に、ステップS203に戻る。
【0084】
また、ステップS215で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値が0であるいか否かを調べる。動作回数の値が0でない場合は、ステップS213に進む。動作回数の値が0である場合は、ステップS216に進む。
【0085】
ステップS216で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、ステップS217で、検出制御部43は、清掃により埃を取り除く(または移動する)ことができなかったことを本体(制御部17)に伝える。その後、本検出動作を終了する。
【0086】
また、ステップS230で、検出制御部43は、ICチップからの受信情報から取得したスポット情報に基づいて複数の仮想スポットエリアを想定し、これら仮想スポットエリアのそれぞれについて、埃と重なるか否かを調べる。この判定において、図13に示すように、埃と重ならない仮想スポットエリアがある場合(「OK」の場合)は、その仮想スポットエリアに対応する画像を蛍光検出のための最終画像データとして用いることができると判断して、ステップS231へ進む。埃と重ならない仮想スポットエリアがない場合(「NG」の場合)は、スポットエリアの画像を完成することができないため、ステップS236へ進む。
【0087】
ステップS231で、検出制御部43は、埃と重ならない仮想スポットエリアを示す情報(番号)を有効スポットエリア情報としてメモリー43bに格納する。図13に示した例では、第2の仮想スポットエリアの情報がメモリー43bに格納される。
【0088】
ステップS232で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。ステップS233で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS234で、検出制御部43は、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。ステップS235で、検出制御部43は、メモリー43bに格納した有効スポットエリア情報を参照して、本撮影で得られた画像データの中から有効なスポットエリアの画像データを抽出して、それを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0089】
また、ステップS236で、検出制御部43は、各仮想スポットエリアの間で、埃の相対的な位置関係に基づいて、埃と重なるスポットを他の仮想スポットエリアの対応するスポットで補完することができない可能性があるか否かを調べる。具体的には、図13に示すように、第1から第3の仮想スポットエリアの各エリア間で、エリアと埃の相対的な位置が一致する場合は、埃と重なるスポットを他の仮想スポットエリアの対応するスポットで補完することができない可能性がある。エリアと埃の相対的な位置が一致しない仮想スポットエリアが1つでもある場合は、埃と重なるスポットを他の仮想スポットエリアの対応するスポットで補完することができる可能性がある。スポットを補完することができる可能性がある場合は、ステップS237に進む。スポットを補完することができない可能性がある場合は、ステップS211に進む。
【0090】
ステップS237で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。ステップS238で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS239で、検出制御部43は、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。
【0091】
ステップS240で、検出制御部43は、本撮影で得られた画像データから、第1から第3のスポットエリアのそれぞれのスポットを抽出して、それらスポットとステップS204で取得した埃との位置を比較する。そして、検出制御部43は、第1のスポットエリアにおいて、埃の影響を受けているスポットがあれば、そのスポットを、第2または第3のスポットエリアの対応するスポット(埃の影響を受けていないスポット)で補完する。S241で、検出制御部43は、スポットの補完がなされたスポットエリアのデータを本体に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0092】
以下に、ステップS240でのスポットの補完処理を具体的に説明する。
【0093】
図14は、第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最小埃間隔を示す模式図である。本撮影で得られた画像データは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に沿って等間隔に配置された第1から第3のスポットエリアを含む。図面に向かって左から、第1のスポットエリア、第2のスポットエリア、第3のスポットエリアの順で配置されている。各スポットエリアは、3行3列で配置された9個のスポットよりなる。各スポットは、同じ径を有し、等間隔に配置されている。各スポットエリアにおいて、左上から右下向かって、スポットの位置を1から9の番号で表す。
【0094】
図14中、AおよびBで示した丸の領域が埃である。埃Aは、第1のスポットエリアの第1番目のスポットと第2番目のスポットの間に位置し、埃Aの外縁は、第1番目および第2番目のスポットの外縁のそれぞれに接している。埃Bは、第2のスポットエリアの第1番目のスポットの左側(第1のスポットエリア側)に位置し、埃Bの外縁は、第1番目のスポットの外縁に接している。この場合の埃A、Bの間隔(埃の中心位置の間隔)が、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与えることになる間隔を規定する場合における最小埃間隔(埃の近さの限界)である。すなわち、図14に示す状態が、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与える埃間隔の中で、一番近い状態である。
【0095】
埃間隔が最小埃間隔の場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。埃間隔が最小埃間隔より小さい場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することができると判断される。
【0096】
第2のスポットエリアの第1番目のスポットでの補完ができないと判断された場合は、第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完できるかを判断する。図14に示した例では、第3のスポットエリアの第1番目のスポットは埃の影響を受けないので、この第1番目のスポットで第1のスポットエリアの第1番目のスポットを補完することができると判断される。
【0097】
図15は、第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最大埃間隔を示す模式図である。本撮影で得られた画像データは、図14に示したものと同じ第1から第3のスポットエリアを含む。
【0098】
図15の例では、埃Aは、第1のスポットエリアの第1番目のスポットの左側(第2のスポットエリアとは反対の側)に位置し、埃Aの外縁は、第1番目のスポットの外縁に接している。埃Bは、第2のスポットエリアの第1番目のスポットの右側(第3のスポットエリア側)に位置し、埃Bの外縁は、第1番目のスポットの外縁に接している。この場合の埃A、Bの間隔が、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与えることになる間隔を規定する場合における最大埃間隔(埃の遠さの限界)である。すなわち、図15に示す状態が、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与える埃間隔の中で、一番遠い状態である。
【0099】
埃間隔が最大埃間隔の場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。埃間隔が最大埃間隔より大きい場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することができると判断される。また、埃間隔が、最小埃間隔以上、最大埃間隔以下の範囲にある場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。
【0100】
図16は、第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最小埃間隔を示す模式図である。本撮影で得られた画像データは、図14に示したものと同じ第1から第3のスポットエリアを含む。
【0101】
図16中、A、BおよびCで示した丸の領域が埃である。埃A、Bの配置は、図14に示した状態と同じである。埃Cは、第3のスポットエリアの第1番目のスポットの左側(第2のスポットエリア側)に位置し、埃Cの外縁は、第1番目のスポットの外縁に接している。
【0102】
この場合の埃A、Cの間隔(埃の中心位置の間隔)が、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与えることになる間隔を規定する場合における最小埃間隔(埃の近さの限界)である。すなわち、図16に示す状態が、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与える埃間隔の中で、一番近い状態である。
【0103】
埃間隔が最小埃間隔の場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。埃間隔が最小埃間隔より小さい場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することができると判断される。
【0104】
図17は、第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最大埃間隔を示す模式図である。本撮影で得られた画像データは、図14に示したものと同じ第1から第3のスポットエリアを含む。
【0105】
埃A、Bの配置は、図15に示した状態と同じである。埃Cは、第3のスポットエリアの第1番目のスポットと第2番目のスポットの間に位置し、埃Cの外縁は、第1番目および第2番目のスポットの外縁のそれぞれに接している。この場合の埃A、Cの間隔が、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与えることになる間隔を規定する場合における最大埃間隔(埃の遠さの限界)である。すなわち、図17に示す状態が、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与える埃間隔の中で、一番遠い状態である。
【0106】
埃間隔が最大埃間隔の場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。埃間隔が最大埃間隔より大きい場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することができると判断される。また、埃間隔が、最小埃間隔以上、最大埃間隔以下の範囲にある場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。
【0107】
なお、図14から図17に示した例においては、埃Aが第1のエリアスポットの第1番目のスポットに対して影響を与える場合の埃の位置関係を示したものであるが、埃がどのスポットに影響するかはカートリッジのセット状態で変化する可能性がある。各スポットは、同一の径を有し、等間隔に配置されているので、最小埃間隔および最大埃間隔はどのスポットに対しても成り立つ。
【0108】
第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアの対応するスポットで補完する場合の最小埃間隔dminを、スポットの大きさと埃の大きさを加味して数式で表すと、以下のようになる。
【0109】
dmin=A−S−D1−D2
ここで、Aはエリア間隔、Sはスポットの直径、D1は第1のスポットエリアに位置する埃A(第1の付着物)の半径、D2は、第2のスポットエリアに位置する埃B(第2の付着物)の半径である。検出制御部43は、埃A、Bの間隔が最小埃間隔dminより小さいときに、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する。
【0110】
また、第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアの対応するスポットで補完する場合の最大埃間隔dmaxを、スポットの大きさと埃の大きさを加味して数式で表すと、以下のようになる。
【0111】
dmax=A+S+D1+D2
検出制御部43は、埃A、Bの間隔が最大埃間隔dmaxより大きいときに、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する。
【0112】
また、第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の最小埃間隔dminを、スポットの大きさと埃の大きさを加味して数式で表すと、以下のようになる。
【0113】
dmin=A×2−S−D1−D3
ここで、D3は、第3のスポットエリアに位置する埃C(第3の付着物)の半径である。検出制御部43は、埃A、Cの間隔が最小埃間隔dminより小さいときに、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する。
【0114】
また、第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の最大埃間隔dmaxを、スポットの大きさと埃の大きさを加味して数式で表すと、以下のようになる。
【0115】
dmax=A×2+S+D1+D3
検出制御部43は、埃A、Cの間隔が最大埃間隔dmaxより大きいときに、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する。
【0116】
以上の説明では、スポットエリアの並びの方向における埃とスポットの関係に基づいて補完の可能性を判断しているが、スポットエリアの並びの方向に対して少し斜めの方向における埃とスポットの関係に基づく補完の可能性も考慮することも可能である。この場合、範囲を数式で表すと、
[スポットの直径]+[埃Aの半径]+[埃Bの半径]
である。1つのスポットに対して、埃A、Bの間隔がこの範囲以下の場合は、埃がスポットに影響を与えると判定する。この判定手法と、前述の各数式で与えられる最小埃間隔dminおよび最大埃間隔dmaxに基づく判定手法とを併用して、埃とスポットの重なりの判定を行う。
【0117】
図18に、埃とスポットの重なり具合に応じた判定結果の一例を示す。第1番目のスポットと埃Aが完全に重なる状態は、影響ありとなる。第1番目のスポットの外縁が埃Aの外縁に接する状態は、第1番目のスポットと埃Aが重なる状態と見なし、影響ありとなる。第1番目のスポットと埃Aが完全に離れている状態は、影響なしとなる。
【0118】
以上の第2の蛍光検出処理によれば、埃(付着物)の位置と各仮想スポットエリアとの相対的な位置関係に基づいて、埃(付着物)の影響を受けない有効スポットエリアを判定することができる。この有効スポットエリアに基づいて埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。これにより、蛍光検出を正確に行うことが可能となる。
【0119】
また、有効スポットエリアがない場合は、埃(付着物)の影響を受けるスポットについて、他のエリアの対応するスポットで補完することで、有効スポットエリアを取得する。この有効スポットエリアに基づいて埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。
【0120】
(3)第3の蛍光検出処理:
ここでは、マーカー撮影なしに蛍光検出を行う場合の、第2の蛍光検出処理とは別の蛍光検出処理について説明する。
【0121】
スポットエリアは必ずしも等間隔で配置されていると限らない。また、スポットの並び順がスポットエリアごとに異なる場合もある。スポットの位置やスポットの種別(または並び)等の情報はカートリッジのICチップに記憶されている。制御部17は、ICチップからの受信情報から取得した、DNAチップのスポットエリアの数やスポットの配置を示すスポット情報を検出制御部43へ転送する。検出制御部43は、スポット情報に基づいて作成した、スポットの配置を示すテンプレートを埃画像と重ね合わせることで、スポットと埃の重なりやスポットの補完の可能性を判定する。
【0122】
図19に、テンプレートおよび埃画像を含む検出エリアを模式的に示す。テンプレート101は、スポット情報に基づいて作成したものであって、第1から第3のスポットエリアを含む。スポットの大きさおよび並びはスポットエリア間で異なる。具体的には、図19中の番号1、2、3で示したスポットの並びは、スポットエリア間で異なる。検出制御部43は、埃画像を含む検出エリア100上にテンプレート101を重ね、検出エリア100上でテンプレート101の位置を横および縦の各方向に一定の距離ごとに徐々に変化させ、各位置での各スポットエリアのスポットと埃の位置関係を調べる。そして、検出制御部43は、各スポットエリアのスポットと埃の位置関係に基づいて、スポットと埃の重なりやスポットの補完の可能性を判定する。なお、ここでは、3つのスポットエリアを含むテンプレートを例に説明したが、テンプレートに設定されるスポットエリアの数は、ICチップから受信した情報によって決まる。
【0123】
図20は、第3の蛍光検出処理手順を示すフローチャートである。図21は、その蛍光検出における付着物とテンプレート上のスポットエリアとの位置関係を説明するための図である。
【0124】
ステップS301からS305の処理は、図12に示したステップS201からS205の処理と同じである。ステップS305において、スポットエリアが1つの場合はステップS306に進み、スポットエリアが複数の場合はステップS330に進む。
【0125】
ステップS306で、検出制御部43は、図21に示すように、1つのスポットエリアが設定されたテンプレート101を検出エリア100上に重ね、テンプレート101が検出エリア100上のどの位置にあっても、埃がスポットと重ならないかを判定する。埃がスポットと重ならない場合は、ステップS307に進む。埃がスポットと重なる場合は、ステップS311に進む。
【0126】
ステップS307で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。次いで、検出制御部43は、ステップS308で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS309で、図10に示した手順に従ってマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。そして、ステップS210で、検出制御部43は、撮像素子39から得られた画像データを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0127】
また、ステップS311で、検出制御部43は、本検出動作開始から現在までに清掃部42による清掃が行われたか否かを確認する。検出制御部43は、メモリー43bにて、清掃部42の動作回数を管理しており、その動作回数に基づいて初めての清掃動作であるか否かを判定する。初めての清掃動作であると判断した場合は、ステップS312へ進む。初めての清掃動作でないと判断した場合は、ステップS315へ進む。
【0128】
ステップS312で、検出制御部43は、清掃部42の動作回数を予め設定された最大動作回数(初期値)に設定する。ステップS313で、検出制御部43は、図11に示した手順に従って清掃部42に清掃動作を行わせる。清掃動作が行われると、ステップS314で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値を1つ減じる。その後、埃の除去がうまくいったかを調べる為に、ステップS303に戻る。
【0129】
また、ステップS315で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値が0であるいか否かを調べる。動作回数の値が0でない場合は、ステップS313に進む。動作回数の値が0である場合は、ステップS316に進む。
【0130】
ステップS316で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、ステップS317で、検出制御部43は、清掃により埃を取り除く(または移動する)ことができなかったことを本体(制御部17)に伝える。その後、本検出動作を終了する。
【0131】
また、ステップS330で、検出制御部43は、図21に示すように、複数のスポットエリアが設定されたテンプレート101を検出エリア100上に重ねて、各スポットエリアを構成するスポットの位置と埃の位置を調べる。そして、検出制御部43は、テンプレート101が検出エリア100上のどの位置にあっても、埃がスポットと重ならないスポットエリアがあるかを調べる。埃がスポットと重ならないスポットエリアがある場合は、ステップS331に進む。埃がスポットと重ならないスポットエリアがない場合は、ステップS336に進む。
【0132】
ステップS331で、検出制御部43は、埃がスポットと重なっていないスポットエリアの情報(番号)を有効スポットエリア情報としてメモリー43bに格納する。ステップS332で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。ステップS333で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS334で、検出制御部43は、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。ステップS335で、検出制御部43は、メモリー43bに格納した有効スポットエリア情報を参照して、本撮影で得られた画像データの中から有効なスポットエリアの画像データを抽出して、それを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0133】
また、ステップS336で、検出制御部43は、複数のスポットエリアの間でのスポット補完が可能であるか否かを判定する。具体的には、検出制御部43は、図21に示すように、第1から第3のスポットエリアが設定されたテンプレート101を検出エリア100上に重ねて、各スポットエリアを構成するスポットの位置と埃の位置を調べる。そして、検出制御部43は、テンプレート101が検出エリア100上のどの位置にあっても、第1のスポットエリアと第2または第3のスポットエリアの間で、対応するスポットを補完することができるか否かを判定する。スポット補完を行うことができる場合は、ステップS337に進む。スポット補完を行うことができない場合は、ステップS311に進む。
【0134】
ステップS337で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。ステップS338で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS339で、検出制御部43は、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。
【0135】
ステップS340で、検出制御部43は、本撮影で得られた画像データから、第1から第3のスポットエリアのそれぞれのスポットを抽出して、それらスポットとステップS304で取得した埃との位置を比較する。そして、検出制御部43は、第1のスポットエリアにおいて、埃の影響を受けているスポットがあれば、そのスポットを、第2または第3のスポットエリアの対応するスポット(埃の影響を受けていないスポット)で補完する。この補完は、図12に示したステップS240における補完と同様な処理を適用することができる。S341で、検出制御部43は、スポットの補完がなされたスポットエリアのデータを本体に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0136】
以上説明した第3の蛍光検出処理によれば、埃撮影モードで撮影した画像とテンプレートとの重ねあわせにおける、各位置での埃(付着物)の位置とスポットとの位置関係に基づいて、埃(付着物)の影響を受けない有効スポットエリアを判定することができる。この有効スポットエリアに基づいて埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。これにより、蛍光検出を正確に行うことが可能となる。
【0137】
また、有効スポットエリアがない場合は、埃(付着物)の影響を受けるスポットについて、他のエリアの対応するスポットで補完することで、有効スポットエリアを取得する。この有効スポットエリアに基づいて埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。
【0138】
次に、生化学反応カートリッジ1について詳細に説明する。
【0139】
生化学反応カートリッジ1の本体(筐体)は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂から構成されている。これらの材料は、透明または半透明である。
【0140】
図22に、生化学反応カートリッジ1の構成を示す。図22を参照すると、生化学反応カートリッジ1の上部には、注射器等を用いて血液等の検体を注入するための検体入口2が設けられ、ゴムキャップにより封止されている。また、生化学反応カートリッジ1の両側面には、内部の溶液を移動させるために、ノズルを挿入して加圧または減圧を行うための複数のノズル入口3が設けられ、ゴムキャップにより封止されている。
【0141】
生化学反応カートリッジ1には、ICチップ25が設けられている。ICチップ25は、不揮発性の記憶部と、外部からの電力の受信と信号の送受信のための通信部を有している。ICチップ25の記憶部には、生化学反応カートリッジ1を識別するための識別情報(ID)が書き込まれている。さらに、この記憶部に、生化学反応カートリッジ1の種別、処理工程の手順、生化学反応の結果を分析するための分析用情報などを書き込むことができる。
【0142】
通常、生化学反応分析装置の処理装置またはそれに付属する装置は、生化学反応カートリッジ1の種別ごとの処理工程の手順の情報を記憶部に記憶している。ICチップ25に生化学反応カートリッジ1の種別が書き込まれている場合には、その種別を読み取って、それに適合する処理工程の手順を記憶部に記憶した手順から選択し、その手順に則って処理を行う。しかし、生化学反応カートリッジ1の種別が、記憶部に記憶されていない場合には、ICチップ25に書き込まれている処理工程の手順を読み込んで、その手順に則って処理を行う。処理工程の手順として書き込まれるデータの中に、生化学反応を起こすために加えられる温度条件等が含まれていてもよい。
【0143】
図23は、生化学反応カートリッジ1の平面断面図である。生化学反応カートリッジ1の一方の側面には10個のノズル入口3a〜3jが設けられ、反対側の他方の側面には10個のノズル入口3k〜3tが設けられている。ノズル入口3a〜3jは、流路4a〜4jを介してチャンバ5a〜5jに連通している。ノズル入口3k,3l,3m,3o,3r,3tは、それぞれ流路4k,4l,4m,4o,4r,4tを介してチャンバ5k,5l,5m,5o,5r,5tに連通している。流路4a〜4tは空気が流れる空気流路である。チャンバ5a〜5tは、溶液を貯蔵する場所または反応を起こす場所である。なお、ノズル入口3n,3p,3q,3sは、予備のノズルであり、いずれもチャンバに連通していない。
【0144】
検体入口2aはチャンバ7に連通している。チャンバ7は流路6a,6b,6c,6kを介してチャンバ5a,5b,5c,5kに連通しているとともに、流路10を介してチャンバ8に連通している。チャンバ8は流路6g,6oを介してチャンバ5g,5oに連通しているとともに、流路11を介してチャンバ9に連通している。チャンバ9は流路6h,6i,6j,6r,6tを介してチャンバ5h,5i,5j,5r,5tに連通している。流路10は流路6d,6e,6f,6l,6mを介してチャンバ5d,5e,5f,5l,5mに連通している。
【0145】
チャンバ9の底面には角孔が開けられている。この角孔に、DNAチップ12が、プローブ面が上になるように貼り付けられている。DNAチップ12は、1平方インチ(約645mm2)程度の大きさを持つガラス板の固相表面に、数十〜数十万種類の異なるDNAプローブ37が高密度に並べられたものである。このDNAチップ12を用いて、検体中のDNAとハイブリダイゼーション反応を行わせることによって、一度に数多くの遺伝子を検査できる。これらのDNAプローブ37はマトリックス状に規則正しく並べられており、それぞれのDNAプローブ37のアドレス(何行目、何列目として示される位置)を、情報として容易に取り出すことができる。なお、検査の対象となる遺伝子としては、感染症ウィルス、細菌、疾患関連遺伝子、各個人の遺伝子多型等がある。
【0146】
ここで、本実施形態において検体の処理を行うための、各チャンバ5a〜5tのセッティング例について説明する。チャンバ5aには、細胞壁を破壊するEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含む第1の溶血剤が、チャンバ5bには、界面活性剤等のタンパク質変性剤を含む第2の溶血剤がそれぞれ収容されている。チャンバ5cには、DNAが吸着するシリカコーティングされた磁性体粒子が収容されている。チャンバ5l、5mには、DNAの抽出の際にDNAの精製を行うために用いられる第1、第2の抽出洗浄剤がそれぞれ収容されている。
【0147】
チャンバ5dには、DNAを磁性体粒子から溶出する低濃度塩のバッファからなる溶出液が収容されている。チャンバ5gには、PCRに必要な薬剤、すなわち、プライマ、ポリメラーゼ、dNTP溶液、バッファ、蛍光剤を含むCy3−dUTP(アマシャムバイオサイエンス株式会社製の蛍光標識)等の混合液が収容されている。チャンバ5h,5jには、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光物質(蛍光標識)付きの検体DNAと蛍光物質(蛍光標識)とを洗浄するための界面活性剤を含む洗浄剤が収容されている。チャンバ5iには、DNAチップ12を含むチャンバ9内を乾燥させるためのアルコールが収容されている。
【0148】
チャンバ5eは、血液のDNA以外の塵や埃を溜めるためのチャンバである。チャンバ5fは、チャンバ5l,5mからの第1、第2の抽出洗浄剤の廃液を溜めるためのチャンバである。チャンバ5rは、第1、第2の洗浄剤の廃液を溜めるためのチャンバである。チャンバ5k,5o,5tは、溶液がノズル入口に流れ込まないようにするために設けられたブランクのチャンバである。
【0149】
生化学反応カートリッジ1に血液等の液体状の検体を注入して、処理装置にセットする。そして、生化学反応カートリッジ1の内部で、DNA等の抽出および増幅を行わせ、増幅された検体DNAと生化学反応カートリッジ1の内部にあるDNAチップ12のDNAプローブ37との間で、ハイブリダイゼーションを行わせる。一方、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光物質(蛍光標識)付きの検体DNAと蛍光物質(蛍光標識)の洗浄を行うことができる。
【0150】
以下、検体の生化学反応を生化学反応カートリッジ1内にて生じさせる方法について具体的に説明する。
【0151】
まず、検査者は、生化学反応カートリッジ1の検体入口2aを塞いでいるゴムキャップを貫通すように、検体である血液を収容した注射器の針を検体入口2aに差し込み、注射器内の血液を検体入口2aからチャンバ7に注入する。その後、検査者は生化学反応カートリッジ1をテーブル13上に置く。そして、検査者が、図示しないレバーを操作することにより、図1に示したポンプブロック22,23を図1に示した矢印の方向に移動させる。この移動により、ポンプノズル20,21が、生化学反応カートリッジ1の両側面のノズル入口3a〜3tに、ゴムキャップを貫通するように挿入される。
【0152】
検査者が、入力部24から実験開始の命令を入力すると処理が始まる。図24は、生化学反応およびその後処理の手順を説明するフローチャートである。
【0153】
まず、ステップS1で、制御部17が、ポンプノズル20,21を制御してノズル入口3a,3kのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出させ、電動シリンジポンプ19から空気を吸引する。それによって、チャンバ5a内の第1の溶血剤を、血液の入ったチャンバ7に流し込む。このように、ノズル入口3aにポンプノズル20を挿入して空気を噴出して加圧し、ノズル入口3kにポンプノズル21を挿入して空気を吸引して減圧することによって、チャンバ5a内の第1の溶血剤が血液の入ったチャンバ7内に流れ込む。この様子が、チャンバ5a,7,5kを通る断面図である図25に示されている。
【0154】
空気の供給および吸引のタイミングをずらすことで各チャンバへの加圧および減圧を制御し、これによってカートリッジ1内において溶液を円滑に流すことができる。さらに、電動シリンジポンプ19による空気の吸引を、ポンプ18からの空気の開始時からリニアに増加させるなどの細かな制御を行って、溶液をより円滑に流すことも可能である。例えば、溶血剤の粘性や流路の抵抗にもよるが、ステップS1において、電動シリンジポンプ19からの空気の吸引を、電動シリンジポンプ18からの空気の噴出を開始してから10〜200ミリ秒後に開始するように制御する。この制御によると、流れる溶液の先頭で溶液が飛び出すことがなく、溶液が円滑に流れる。これは、以下の各工程における溶液の移動についても同様である。
【0155】
また、電動シリンジポンプ18,19を用いて空気の供給を制御しつつ、ノズル入口3a,3oのみを開にして、電動シリンジポンプ18,19によって空気の噴出および吸引を交互に繰り返す。こうして、チャンバ7の溶液を流路10に流し、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行う。あるいは、電動シリンジポンプ19から空気を連続して噴出することによって、気泡を発生させながら攪拌を行う。
【0156】
このようにして、第1の溶血剤の流動および撹拌の工程(ステップS1)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第1の溶血剤の流動および撹拌の工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報はICチップ25の記憶部に記憶される。
【0157】
次に、ステップS2において、ノズル入口3b,3kのみを開にして、ステップS1と同様の原理でチャンバ5b内の第2の溶血剤をチャンバ7に流し込む。そして、ステップS1と同様の攪拌を行う。
【0158】
このようにして第2の溶血剤の流動および撹拌の工程(ステップS2)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第2の溶血剤の流動および撹拌の工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報はICチップ25の記憶部に記憶される。
【0159】
さらに、ステップS3において、ノズル入口3c,3kのみを開にして、ステップS1,S2と同様の原理でチャンバ5c内の磁性体粒子をチャンバ7に流し込む。そして、ステップS1と同様の攪拌を行う。このステップS3によって、ステップS1,S2にて細胞が溶解して得られたDNAが磁性体粒子に付着する。
【0160】
このようにして磁性体粒子の流動および撹拌の工程(ステップS3)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、磁性体粒子の流動および撹拌の工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報はICチップ25の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0161】
そして、ステップS4で電磁石14をオンにし、ノズル入口3e,3kのみを開にし、電動シリンジポンプ19から空気を噴出し、電動シリンジポンプ18から空気を吸引して、チャンバ7内の溶液をチャンバ5eに移動させる。この移動の際に、磁性体粒子およびDNAを、流路10の電磁石14の上方位置で捕捉する。なお、電動シリンジポンプ18,19による空気の吸引および噴出を交互に繰り返して、溶液をチャンバ7と5eの間を2回往復させることにより、DNAの捕捉効率を向上させている。さらに往復回数を増やせば、捕捉効率を一層高めることができる。ただし、処理時間が余分に掛かることになる。
【0162】
このように、ステップS1〜S4にて、幅1〜2mm程度で高さ0.2〜1mm程度の小さい流路10上で、流動状態のDNAを、磁性体粒子を利用して極めて効率良く捕捉する。なお、仮に、捕捉ターゲット物質がDNAではなく、RNAまたはタンパク質の場合にも同様に効率の良い捕捉が行える。
【0163】
上述のようにして磁性体粒子およびDNAの捕捉工程(ステップS4)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、磁性体粒子およびDNAの捕捉工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0164】
次に、ステップS5において電磁石14をオフにし、ノズル入口3f,3lのみを開とする。そして、電動シリンジポンプ19から空気を噴出し、電動シリンジポンプ18から空気を吸引して、チャンバ5l内の第1の抽出洗浄液をチャンバ5fに移動させる。この際に、ステップS4で捕捉された磁性体粒子およびDNAが、抽出洗浄液と共に移動して洗浄が行われる。さらに、電磁石14をオンにして、ステップS4と同様の原理で磁性体粒子およびDNAと抽出洗浄液とをチャンバ5l内とチャンバ5fの間を2回往復させる。それによって、洗浄された磁性体粒子およびDNAを流路10の電磁石14の上方位置に回収し、第1の抽出洗浄液をチャンバ5lに戻す。
【0165】
このように、第1の抽出洗浄液により洗浄した後に磁性体粒子およびDNAを捕捉する工程(ステップS5)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第1の抽出洗浄液により洗浄した後に磁性体粒子およびDNAを捕捉する工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0166】
ステップS6において、ノズル入口3f,3mのみを開いてステップS5と同様の工程を行う。すなわち、チャンバ5m内の第2の抽出洗浄液と、磁性体粒子およびDNAとを移動させて、磁性体粒子およびDNAをさらに洗浄してから電磁石14の上方位置に回収し、第2の抽出洗浄液をチャンバ5mに戻す。
【0167】
このように、第2の抽出洗浄液により洗浄した後に磁性体粒子およびDNAを捕捉する工程(ステップS6)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第2の抽出洗浄液により洗浄した後に磁性体粒子およびDNAを捕捉する工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0168】
続いて、ステップS7において電磁石14をオンにしたまま、ノズル入口3d,3oのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引する。それによって、チャンバ5d内の溶出液をチャンバ8に移動させる。この溶出液の作用によって、磁性体粒子とDNAが分離し、DNAのみが溶出液とともにチャンバ8に移動し、磁性体粒子は流路10内に残る。
【0169】
このようにして、溶出液を流して磁性体粒子とDNAを分離させる工程(ステップS7)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、溶出液を流して磁性体粒子とDNAを分離させる工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0170】
このステップS7において、DNAの抽出および精製が行われる。実施形態では、抽出洗浄液を収容するチャンバ5l,5mと、洗浄後の廃液を溜めるためのチャンバ5fが用意されているので、カートリッジ1内でDNAの抽出および精製を行うことが可能である。
【0171】
次に、ステップS8において、ノズル入口3g,3oのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引する。それによって、チャンバ5g内のPCR用薬剤(例えば、プライマ、ポリメラーゼ、dNTP溶液、バッファ、蛍光標識等の混合液)をチャンバ8に流し込む。さらに、ノズル入口3g,3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18,19による空気の噴出および吸引を交互に繰り返し、チャンバ8の溶液を流路11に流して、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行う。そして、ペルチェ素子15を制御して、チャンバ8内の溶液を96℃の温度に10分保持した後に、96℃・10秒、55℃・10秒、72℃・1分のサイクルを30回繰り返してPCRを行い、溶出されたDNAを増幅する。
【0172】
このようにして、溶出されたDNAの増幅工程(ステップS8)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、溶出されたDNAの増幅工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0173】
ステップS9でノズル入口3g,3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引して、チャンバ8内の溶液をチャンバ9に移動させる。さらに、ペルチェ素子16を制御して、チャンバ9内の溶液を45℃で2時間保持し、ハイブリダイゼーションを行わせる。この時、電動シリンジポンプ18,19による空気の噴出および吸引を交互に繰り返して、チャンバ9内の溶液を流路6tに移動し、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行いながら、ハイブリダイゼーションを進める。
【0174】
このようにして、ハイブリダイゼーション工程(ステップS9)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、ハイブリダイゼーション工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。この例では、チャンバ9がハイブリダイゼーションの反応場になっている。
【0175】
次に、ステップS10において、同じく45℃に保持したまま、今度はノズル入口3h、3rのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引する。それによって、チャンバ9内の溶液をチャンバ5rに移動させるとともに、チャンバ5h内の第1の洗浄液を、チャンバ9を通してチャンバ5rに流し込む。このように、ノズル入口3hにポンプノズル20を挿入し空気を噴出して加圧し、ノズル入口3rにポンプノズル21を挿入し空気を吸引して減圧することによって、チャンバ5h内の第1の洗浄液が、チャンバ9を通してチャンバ5r内に流れ込む。この様子が、チャンバ5h,9,5rを通る断面図である図26に示されている。電動シリンジポンプ18,19の吸引および噴出を交互に繰り返して、この溶液をチャンバ5h,9,5rの間を2回往復させ、最後にチャンバ5hに戻す。このようにして、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光標識付きの検体DNAと蛍光標識とが洗浄される。
【0176】
このようにして、第1の洗浄液による洗浄工程(ステップS10)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第1の洗浄工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0177】
さらに、ステップS11において、同じく45℃に保持したまま、ノズル入口3j、3rのみを開いて、ステップS10と同様の工程を行う。すなわち、チャンバ5j内の第2の洗浄液をチャンバ9を通してチャンバ5rに流し込んでDNAの洗浄をさらに行い、最後に溶液をチャンバ5jに戻す。
【0178】
このようにして、第2の洗浄液による洗浄工程(ステップS11)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第2の洗浄液による洗浄工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0179】
本実施形態では、第1、第2の洗浄液を収容するチャンバ5h,5jと、洗浄後の廃液を溜めるためのチャンバ5rが用意されているので、前記の通り生化学反応カートリッジ1内でDNAチップ12の洗浄を行うことが可能である。
【0180】
ステップS12で、ノズル入口3i,3rのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引して、チャンバ5i内のアルコールを、チャンバ9を通してチャンバ5rに移動させる。その後に、ノズル入口3i,3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引してチャンバ9内を乾燥させる。
【0181】
このようにして、アルコールの流動および乾燥の工程(ステップS12)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、アルコールの流動および乾燥の工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0182】
以上述べたステップS1〜S12によって、検体の生化学反応(例えばDNAのハイブリダイゼーション)を生化学反応カートリッジ1内で行わせることができる。
【0183】
なお、本実施形態では、ノズル入口3a〜3tがカートリッジ1の2つの面、つまり両側部に集中して設けられている。そのため、電動シリンジポンプ18,19、電動切換バルブ、ポンプノズルを内蔵したポンプブロック22,23等の形状や配置を単純化することができる。さらに、必要なチャンバや流路を確保しながら、ポンプブロック22,23により生化学反応カートリッジ1を同時に挟み込むという単純な動作だけで、ポンプノズル20,21を挿入することができる。それによって、ポンプブロック22,23の構成も簡単にすることができる。また、ノズル入口3a〜3tを全て同じ高さに直線的に並ぶように配置することによって、ノズル入口3a〜3tに接続される流路4a〜4tの高さは全て同じになり、流路4a〜4tの作製が容易になる。
【0184】
また、図1に示す生化学反応分析装置の処理装置において、n個の生化学反応カートリッジ1を同時に使用できるようにポンプブロック22,23をn倍に長くした構成にすることができる。その場合、n個の生化学反応カートリッジ1を直列に並べて、n個の生化学反応カートリッジ1のそれぞれに対して必要な工程を同時に行うことができる。したがって、構成は極めて簡単でありながら、多数の生化学反応カートリッジにおいて同時に生化学反応を行わせることが可能である。
【0185】
以上説明した処理工程(ステップS1〜S12)の後に、ステップS13において、検査者が図示しないレバーを操作して、ポンプブロック22,23を生化学反応カートリッジ1から離れる方向に移動させる。それによって、ポンプノズル20,21が生化学反応カートリッジ1のノズル入口3a〜3tから外れる。そして、ステップS14において、カートリッジ搬送部27を用いて、生化学反応カートリッジ1をテーブル13から検出部28に搬送する。ステップS15において、DNAチップ12に捕捉された、ハイブリダイゼーションされたDNAを蛍光検出ユニット30によって検出する。検出結果は、通信部31からICチップ25の通信部に向けて送信され、ICチップ25の記憶部に記憶される。こうして、ステップS1〜S12の各工程の(時間経過を含む)推移および各種条件と、その各工程を経たDNAチップ12の検出結果とが、生化学反応カートリッジ1のICチップ25に記憶される。この蛍光検出工程(ステップS15)の詳細については前述の通りである。
【0186】
最後に、ステップS16において、制御部17が、蛍光検出したパターンを分析する。なお、生化学反応カートリッジ1が、予め処理装置に記憶されていない種別である場合には、検出パターンの分析にあたって、ICチップ25に書き込まれている分析用情報を読み込み、その分析用情報に基づいて分析を行う。
【0187】
ここで、本実施形態における蛍光検出と分析の原理について説明する。例えば、生化学反応カートリッジ1およびDNAチップ12が感染症検出用のものである場合には、DNAプローブ37の設定の仕方によって、いくつかの感染症を一度に検出できる。DNAプローブ37が5×5のマトリックス状に配置されたDNAチップ12を例にとって考えると、感染症A〜Eがそれぞれ単独で検出されたときのパターンが図27(a)〜(e)に示す5通りとなるように設定できる。なお、図27(a)〜(e)において、黒丸は、ターゲットがDNAプローブ37とハイブリダイゼーションして捕捉されており、ターゲットに付着した蛍光物質(蛍光標識)が蛍光を発している状態を示す。白丸は、ターゲットがDNAプローブ37とハイブリダイゼーションせず捕捉されずに、蛍光標識が存在しない状態を示す。
【0188】
図27(a)〜(e)に示す例では、同一列に含まれるDNAプローブ37は全て、同じ感染症に感染したときに存在するDNAとハイブリダイゼーションするように設定されている。そして、列毎に異なる感染症のDNAに対応するように設定されている。従って、図27(a)のパターンの検出結果が得られた場合には、感染症Aへの感染が認められる。同様に、図27(b)〜(e)のパターンの検出結果が得られた場合には、それぞれ感染症B〜Eへの感染が認められる。このような検出パターンに基づく感染判断方法は、制御部17に予め記憶されている分析用情報に含まれている。
【0189】
このように、蛍光物質が付着したDNAプローブ37の配列パターンに基づいて、目的とする検体分析を精度良く行うためには、ステップS15において、蛍光検出を精度良く行うことが重要である。
【0190】
(第2の実施形態)
図28は、本発明の第2の実施形態である生化学反応分析装置に用いられる清掃部の概略構成を示す模式図である。本実施形態の生化学反応分析装置は、清掃部が異なる以外は、第1の実施形態の生化学反応分析装置と同様のものである。
【0191】
図28を参照すると、清掃部は、送風口201を備えた送風機200よりなる。送風機200は、送風口201から送り出された圧縮空気が撮像素子39のセンサー部にあたるように、検出ユニットに組み込まれている。第1の実施形態で説明した動作の流れ(図4、図12および図20参照)の中で、清掃処理にこの送風機200を用いる。送風口201から噴出された圧縮空気が撮像素子39のセンサー部にあることで、付着物を吹き飛ばすことができる。
【0192】
(第3の実施形態)
図29は、本発明の第3の実施形態である生化学反応分析装置に用いられる清掃部の概略構成を示す模式図である。本実施形態の生化学反応分析装置は、清掃部が異なる以外は、第1の実施形態の生化学反応分析装置と同様のものである。
【0193】
図29を参照すると、清掃部は、静電気吸着用のワイパー54よりなり、検出ユニットに組み込まれている。ワイパー54は、ワイパー部54の一端を支持する支持部と、この支持部を一方向に往復移動させるためのガイド部とを有する。ガイド部の一端にワイパー待機エリア54bが設けられている。支持部がガイド部に沿って移動することで、ワイパー部54は、撮像素子39のセンサー部(受光面)上を平行移動する。
【0194】
図30は、ワイパー54の制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置は、静電気吸着用ワイパー制御部51、埃位置記憶部52、ワイパー駆動部53、静電気発生部55および静電気保持部材移動部56を有する。
【0195】
静電気吸着用ワイパー制御部51は、静電気吸着用のワイパー54の動作全体を制御する。検出制御部43が得ている埃の位置情報が、検出制御部43から静電気吸着用ワイパー制御部51に転送される。静電気吸着用ワイパー制御部51は、検出制御部43から供給された埃の位置情報を埃位置記憶部52に格納する。ワイパー駆動部53は、支持部をガイド部に沿って移動させる。静電気発生部55は、静電気を発生する。静電気発生部55で発生した静電気は静電気保持部材に保持される。
【0196】
静電気吸着用ワイパー制御部51からの指示により、静電気保持部材移動部56が、ワイパー待機エリア54bにおいて、静電気を保持した状態の静電気保持部材をワイパー部54aに詰め込む。静電気保持部材が詰め込まれたワイパー部54aは、先端から付け根までが静電気を保持した状態となる。ワイパー54がワイパー駆動部53によって駆動されることで、ワイパー部54aが撮像素子39の受光面上を平行移動する。この移動工程において、ワイパー部54aが、静電気により受光面上の埃を吸着する。
【0197】
静電気吸着用ワイパー制御部51は、埃位置記憶部52に記憶されている埃位置情報に基づいて清掃領域を決定する。そして、静電気吸着用ワイパー制御部51は、清掃領域をワイパー部54aで清掃するようにワイパー54における清掃動作を制御する。清掃終了後、ワイパー54は、ワイパー待機エリア54bに戻る。そして、静電気吸着用ワイパー制御部51は、静電気保持部材移動部56を動作させ、静電気保持部材を静電気発生部55に戻す。その際に、静電吸着した埃は静電気保持部材から取り除かれる。
【0198】
このように、静電気吸着用ワイパー制御部51は、検出制御部43からの埃の位置情報に基づいて、撮像素子39のセンサー部(受光面)上における付着物の領域を特定し、その領域に対して、ワイパーによる清掃処理を重点的に行う、といった制御を行う。この制御により、付着物をより確実に取り除くことが可能になり、付着物除去に要する時間も短くなる、といった効果が得られる。第1の実施形態で説明した動作の流れ(図4、図12および図20参照)の中で、清掃処理にこのワイパー54による付着物除去を用いる。
【0199】
以上説明した本発明によれば、受光面(赤外吸収ガラスやローパスフィルタなどの光学素子を含む)上の付着物を取り除くことで、付着物の影響のない検査画像を作成することができるので、蛍光検出を正確に行うことができる。
【0200】
また、撮像素子の受光面上に付着物がある場合、付着物が蛍光検出に影響を与えるか否かは、付着物とスポットとの位置関係によって決まる。すなわち、撮像素子の受光面上に付着物があっても、付着物が蛍光検出(スポットの撮影)に影響を与えない場合は、清掃動作を行う必要はない。検査画像のための本撮影を行う前に毎回、清掃動作を行うことは、蛍光検出処理時間の短縮という観点からすると、あまり好ましくない。本発明によれば、付着物が蛍光検出(スポットの撮影)に影響を与える場合にのみ、清掃動作を行うので、蛍光検出処理時間の短縮化を図ることが可能である。
【0201】
以上説明した各実施形態は、本発明の一例であり、その構成および動作は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】本発明の第1の実施形態である生化学反応分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す生化学反応分析装置の蛍光検出ユニットを示すブロック図である。
【図3】図2に示す蛍光検出ユニットの清掃部を示す模式図である。
【図4】図2に示す蛍光検出ユニットにて行われる第1の蛍光検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す第1の蛍光検出処理における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【図6】DNAチップの構成を示す模式図である。
【図7】マーカー検出時に得られる画像を示す模式図である。
【図8】図2に示す蛍光検出ユニットにおけるマーカー検出動作を示すフローチャートである。
【図9】図2に示す蛍光検出ユニットにおける埃撮影動作を示すフローチャートである。
【図10】図2に示す蛍光検出ユニットにおけるマイクロアレイ撮影動作を示すフローチャートである。
【図11】図2に示す蛍光検出ユニットにおける埃清掃動作を示すフローチャートである。
【図12】図2に示す蛍光検出ユニットにて行われる第2の蛍光検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】図12に示す第2の蛍光検出処理における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【図14】第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最小埃間隔を示す模式図である。
【図15】第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最大埃間隔を示す模式図である。
【図16】第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最小埃間隔を示す模式図である。
【図17】第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最大埃間隔を示す模式図である。
【図18】埃とスポットの重なり具合に応じた判定結果を説明するための図である。
【図19】テンプレートおよび埃画像を含む検出エリアを示す模式図である。
【図20】図2に示す蛍光検出ユニットにて行われる第3の蛍光検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図21】図20に示す第3の蛍光検出処理における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【図22】図1に示す生化学反応分析装置の生化学反応カートリッジの斜視図である。
【図23】図22に示す生化学反応カートリッジの平面断面図である。
【図24】図1に示す生化学反応分析装置における処理工程を示すフローチャートである。
【図25】図22に示す生化学反応カートリッジのチャンバの一部の縦断面図である。
【図26】図22に示す生化学反応カートリッジの他のチャンバの縦断面図である。
【図27】DNAチップの蛍光物質検出パターンの例を示す模式図である。
【図28】本発明の第2の実施形態である生化学反応分析装置の蛍光検出ユニットの清掃部の構成を示す模式図である。
【図29】本発明の第3の実施形態である生化学反応分析装置の蛍光検出ユニットの清掃部の構成を示す模式図である。
【図30】図29に示す清掃部の制御装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0203】
1 生化学反応カートリッジ
32 レーザー光源
33 レーザーシャッター
34 ビームエクスパンダー
35 ビームホモジナイザー
36 蛍光フィルタ
37 可変絞り
38 撮像レンズ群
39 撮像素子
40 シャッター
41 撮像部
42 清掃部
43 検出制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の細胞、微生物、染色体、核酸等のサンプルを抗原抗体反応や核酸ハイブリダイゼーション反応等の生化学反応を利用して検出する生化学反応分析装置に関し、特に、検体を撮影するための撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体を分析する方法には、抗原抗体反応を利用した免疫学的な方法や、核酸ハイブリダイゼーションを利用する方法がある。
【0003】
免疫学的な分析方法では、被検出物質と特異的に結合する抗体または抗原等のタンパク質をプローブとして用いる。プローブを微粒子、ビーズ、またはガラス板等の固相表面に固定して、検体中の被検出物質との抗原抗体反応を行わせる。核酸ハイブリダイゼーションを利用する分析方法では、一本鎖の核酸をプローブとして用い、微粒子、ビーズ、ガラス板等の固相表面に固定して、検体中の被検出物質と核酸ハイブリダイゼーションを行わせる。これらの分析方法では、酵素、蛍光物質、または発光性物質等の、検知感度の高い標識物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質である標識化抗体、標識化抗原、または標識化核酸等を用いる。そして、抗原抗体化合物またはハイブリダイズされた二本鎖の核酸を検出して、被検出物質(ターゲット)の有無の検出やその定量を行う。
【0004】
これらの技術を発展させたものとして、互いに異なる塩基配列を有する多数のDNA(デオキシリボ核酸)プローブを、基板上にアレイ状に並べた、いわゆるDNAアレイが知られている。また、多種類のタンパク質をメンブレンフィルタ上に並べ、DNAアレイと同様な構成のタンパク質アレイを作製する方法もある。このように、DNAアレイやタンパク質アレイ等を用いることによって、極めて多数の項目の検査を一度に行うことが可能である。
【0005】
また、様々な検体分析における、検体による汚染の軽減、反応の効率化、装置の小型化、作業の簡便化等の目的で、内部で生化学反応を行わせる使い捨て可能な生化学反応カートリッジが提案されている。DNAアレイを含む生化学反応カートリッジ内に複数のチャンバを配設したものもある。この生化学反応カートリッジによれば、圧力差を利用して溶液を各チャンバへ移動させることにより検体中のDNAの抽出、増幅、またはハイブリダイゼーション等の反応を内部で行わせることが可能である。
【0006】
生化学反応カートリッジ内に外部から溶液を注入する方法として、外部の電動シリンジポンプや真空ポンプを利用する方法がある。また、生化学反応カートリッジ内部で溶液を移動する方法として、圧力差以外にも、重力や毛細管現象や電気泳動を利用する方法が知られている。さらに、生化学反応カートリッジの内部に配設できる小型のマイクロポンプとして、ダイアフラムポンプ、発熱素子を利用したポンプ、圧電素子を利用したポンプがそれぞれ知られている。
【0007】
生化学反応カートリッジまたはその一部に用いられるDNAチップに、情報記憶用のICを設け、このICに記憶された同定情報を利用してDNAの同定を行う構成もある。情報記憶用ICには、DNAチップの塩基配列情報や検体の情報が書き込まれる。
【0008】
また、DNAチップ上のサンプルのハイブリダイゼーション状態を検知するために、サンプルに付着した蛍光物質(蛍光標識)を読み取る方法がある。蛍光物質を読み取ってターゲットの検出を行うために、蛍光を発生させるようにDNAチップに照射する励起光を適宜に較正する。
【0009】
生化学反応を生じさせるために様々な溶液を内蔵し、検体が供給される生化学反応カートリッジは、二次感染や汚染の防止と、使い勝手の観点から、使い捨てのタイプにすることが好ましい。しかし、マイクロポンプを内蔵した生化学反応カートリッジは高価であるという問題がある。したがって、ポンプを内蔵せずに、外部のポンプの作用で溶液を移動し、検体注入後は溶液を外部に流出させずに一連の生化学反応を進められる構造の、使い捨てタイプの生化学反応カートリッジが一般に利用されている。
【0010】
個々のDNAチップは、ハイブリダイゼーションという単独の生化学反応のみを行うためのものである。これに対して、DNAチップを内蔵する生化学反応カートリッジは、各種の生化学反応を連続的に行うものであり、最後に検出工程が行われる場合がある。この検出工程では、CMOSセンサーやCCDセンサー等より構成される撮像素子を用いて、サンプルに付着した蛍光物質(蛍光標識)からの蛍光を検出する。
【0011】
撮像素子を用いた蛍光検出において、撮像素子のセンサー部(受光面)上に塵や埃が付着することがある。付着した塵や埃(以下、付着物と称す)の位置によっては、蛍光検出精度が低下する場合がある。
【0012】
特許文献1に、センサー部上の付着物を検出することが可能なデジタルカメラが記載されている。このデジタルカメラは、合焦しないように撮影レンズのフォーカス調整を行った状態で撮影を行う。こうして撮影した画像により、付着物の有無を確認することができる。
【0013】
特許文献2には、付着物を取り除く方法が開示されている。この方法によれば、センサー部上に光学素子(ローパスフィルタ)を設けることで、塵がセンサー部に直接付着することを抑制する。さらに、光学素子自体を振動させることによって、光学素子上に付着した塵を取り除く。
【特許文献1】特開2001−326848号公報
【特許文献2】特許第03727903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
センサー部(受光面)上の付着物の位置によっては、DNAチップからの蛍光の一部が付着物により遮られてしまう。この場合、DNAチップの一部の輝度値が不確かなものとなるため、サンプルによっては、蛍光検出を正確に行うことができないことがある。
【0015】
特許文献1は、デジタルカメラにおけるセンサー部上の付着物を検出する技術を開示しただけである。また、特許文献2は、振動によりセンサー部上の付着物を取り除く方法を開示してだけである。いずれの文献にも、DNAチップの蛍光検出装置への適用は開示されていない。
【0016】
本発明の目的は、上記問題を解決し、蛍光検出を正確に行うことすることのできる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の撮像装置は、受光面を備え、基板面上に形成された複数のスポットからなる少なくとも1つのスポットエリアを前記受光面にて撮像する撮像素子と、前記受光面上に付着した付着物を取り除くための清掃部と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、受光面(光学素子を含む)上の付着物を取り除くことで、付着物の影響のない検査画像を作成することができるので、蛍光検出を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である生化学反応分析装置の概略構成を示すブロック図である。図1を参照すると、生化学反応分析装置の処理装置は、反応場となるチャンバを含む生化学反応カートリッジが載置されるテーブル13を有する。電磁石14、ペルチェ素子15、16および通信部26がテーブル13上に配置され、これらは、処理装置全体を制御する制御部17に接続されている。
【0021】
電磁石14は、生化学反応カートリッジ内に電磁力を作用させるものである。ペルチェ素子15、16は、生化学反応カートリッジの温度を制御するものである。具体的には、ペルチェ素子15は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によるDNA増幅時における温度制御に用いられる。一方、ペルチェ素子16は、増幅した検体のDNAとDNAプローブとのハイブリダイゼーション時における温度制御と、ハイブリダイゼーションしなかった検体DNAの洗浄時における温度制御に用いられる。
【0022】
通信部26は、生化学反応カートリッジ内のICチップに対して電力の送信を行うとともに信号の送受信を行う。処理装置のデータは、通信部26を通じて生化学反応カートリッジ内のICチップに格納される。
【0023】
電動シリンジポンプ18、19とポンプブロック22、23が、テーブル13の両側に配置されている。ポンプブロック22は、ポンプ18によって空気を排出または吸引するための出入口となる10個のポンプノズル20を有する。ポンプブロック23は、ポンプ19によって空気を排出または吸引するための出入口となる10個のポンプノズル21を有する。
【0024】
電動シリンジポンプ18、19とポンプノズル20、21の間には、不図示の複数の電動切換バルブが配置されている。電動シリンジポンプ18、19および電動切換バルブは制御部17に接続されている。
【0025】
制御部17は、検査者が情報や指示を入力するための入力部24に接続されている。制御部17は、ポンプノズル20、21を1個ずつ独立して開閉して電動シリンジポンプ18、19に対する接続および遮断を制御する。制御部17は、全てのポンプノズル20、21を同時に開閉することもできる。また、制御部17は、電磁石14およびペルチェ素子15、16を適宜に作動させることによって、生化学反応カートリッジ内での生化学反応を実行させる。
【0026】
テーブル13およびポンプブロック22、23の外部に、検出部28が設けられている。検出部28は、生化学反応カートリッジのDNAチップのハイブリダイゼーション状態を検出する。具体的には、検出部28は、DNAチップの蛍光物質を検出する。なお、DNAチップ上には、ハイブリダイゼーション用のプローブがスポットされている。以降の説明において、このプローブをスポットと称し、スポットをアレイ配列した領域をスポットエリアと称する。スポットエリアは単独構成の場合や複数構成の場合がある。
【0027】
検出部28は、ステージ29、蛍光検出ユニット(蛍光検出装置)30および通信部31を備え、これらは制御部17に接続されている。ステージ29は、生化学反応カートリッジを保持する。ステージ29は、面発光体も保持する。蛍光検出ユニット30は、主に光学機器で構成され、蛍光体からの蛍光の強度を測定する。通信部31は、生化学反応カートリッジ内のICチップに対して電力の送信を行ったり、そのICチップとの間で信号を送受信したりする。
【0028】
カートリッジ搬送部27が制御部17に接続されている。カートリッジ搬送部27は、制御部17からの指令に従って生化学反応カートリッジをテーブル13上から検出部28へ搬送する。
【0029】
次に、蛍光検出ユニット30の構成について具体的に説明する。
【0030】
図2に、蛍光検出ユニット30の構成を示す。図2を参照すると、蛍光検出ユニット30は、励起光投影光学系、蛍光撮像部、ステージ45および検出制御部43を有する。
【0031】
面発光体44と蛍光標識を施したDNAアレイを有する生化学反応カートリッジ1とがステージ45に搭載される。ステージ45は、面発光体44が撮影位置に配置される第1の位置と、生化学反応カートリッジ1が撮影位置に配置される第2の位置との間の移動が可能である。このステージ45の移動は、検出制御部43により制御される。
【0032】
面発光体44は、波長600nm付近のフラットな光源(面発光ダイオード)である。第1の位置において、面発光体44の発光面は、撮像レンズ群の焦点が合わないような位置に配置される。面発光体44の点灯および消灯は、検出制御部43により制御される。第2の位置において、生化学反応カートリッジ1のDNAアレイは、蛍光撮像部の撮像レンズ群の焦点が合う位置に配置される。
【0033】
励起光投影光学系は、DNAチップの蛍光物質を励起するためのものである。励起光投影光学系は、波長532nmのレーザー光を発生する固体レーザー光源32と、レーザーシャッター33と、ビームエクスパンダー34と、ビームホモジナイザー35とからなる。ビームエクスパンダー34は、レーザー光のビーム径をDNAチップ12の測定領域の範囲に応じた大きさに拡大する。ビームホモジナイザー35は、ガウシアンビームであるレーザー光をフラットトップの均一な強度の光線に変換する。ビームホモジナイザー35から出射したレーザー光は、生化学反応カートリッジ1のDNAアレイに照射される。
【0034】
蛍光撮像部は、蛍光フィルタ36、可変絞り37を有する撮像レンズ群38、撮像素子39、シャッター40、撮像部41および清掃部42からなる。蛍光フィルタ36は、DNAアレイからの蛍光の波長および面発光体44からの光の波長を含む所定の波長範囲の光を透過し、それ以外の光を遮断する。DNAアレイからの蛍光は、蛍光フィルタ36を通過し、撮像レンズ群38を介して撮像素子39のセンサー部上(受光面上)に到達する。DNAアレイの蛍光像は、撮像レンズ群38により撮像素子39のセンサー部上に結像される。
【0035】
清掃部42は撮像素子39に組み込まれており、撮像素子39の上面に付いた塵や埃等の付着物を移動または取り除くための清掃処理を行う。図3に、清掃部42の概略構成を示す。
【0036】
図3に示すように、清掃部42は、撮像素子39に組み込まれる。撮像素子39は、中央部にセンサー部39aが形成された基板よりなり、センサー部39aを覆うように、赤外吸収ガラス39bが基板上に設けられている。清掃部42は、赤外吸収ガラス39と基板の間に設けられる2つの圧電素子42aと、これら圧電素子42aを駆動する圧電素子駆動部42bとからなる。圧電素子42aは、赤外吸収ガラス39の両端の部分に貼り付けられている。圧電素子駆動部42bから圧電素子42aへ電圧が印加されると、圧電素子42aはその厚さ方向に変形を生じる。この変形を繰り返すことにより、赤外吸収ガラス39bが振動する。この振動により、赤外吸収ガラス39b上の付着物が移動する。赤外吸収ガラス39bは、ローパスフィルタであってもよい。圧電素子駆動部42bは、検出制御部43により制御される。
【0037】
検出制御部43は、MPUボード43a、メモリー43bおよび画像ボード43cを有する。MPUボード43aは、励起光投影光学系、ステージ45および蛍光撮像部の各部の動作を制御したり、本体装置(図1の制御部17)との間でデータを送受信したりする。画像ボード43cは、撮像素子39の出力信号に基づく画像処理を行う。メモリー43bは、蛍光の検出や分析に必要なデータなどを格納する。
【0038】
次に、生化学反応分析装置の動作について詳細に説明する。
【0039】
生化学反応、例えばDNAのハイブリダイゼーションを生化学反応カートリッジ1内で行わせることができる。処理された生化学反応カートリッジ1は検査部28に搬送され、蛍光検出ユニット30にて蛍光検出の処理が行われる。蛍光検出処理を行うにあたって、制御部17は、ICチップから受信した情報に基づいて、セットされた生化学反応カートリッジ1の用途を確認し、使われているDNAチップのスポットエリアの数やスポットの配置を示すスポット情報を取得する。取得したスポット情報は、制御部17から検出制御部43に送信される。検出制御部43は、受信したスポット情報をメモリー43bに格納する。
【0040】
蛍光検出は、第1から第3の蛍光検出処理を含む。第1の蛍光検出処理は、蛍光褪色の影響が小さなサンプルに対して行う処理であり、この処理が通常時における基本動作とされる。第2および第3の蛍光検出処理は、蛍光褪色の影響が大きなサンプルに対して行う処理である。
【0041】
(1)第1の蛍光検出処理:
図4は、通常時の蛍光検出手順を示すフローチャートである。図5は、その蛍光検出における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【0042】
ステップS101で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS102で、検出制御部43は、マーカー検出モードでのDNAチップの撮影を行う。
【0043】
図6は、撮影されるDNAチップの模式図である。図6に示すように、DNAチップ300は、複数のスポットがマトリクス状に配置された複数のスポットエリア301を有する。スポットエリア301のそれぞれは、所定のスポットに配置された基準指標となるマーカー302と、それ以外のスポットに配置されたプローブ303とを有する。マーカー302からの蛍光は、プローブ303からの蛍光より高い輝度を有するので、この輝度の差からマーカー302とプローブ303を区別することができる。プローブ303からの蛍光の輝度に基づいて、実際のハイブリダイゼーション状態を判定する。なお、DNAチップ製造工程において、DNAチップに形成するスポットは一定の大きさに管理されている。
【0044】
マーカー302およびプローブ303の配置は、各スポットエリア301で同じであり、その位置関係を示すスポット情報がメモリー43bに格納されている。検出制御部43は、スポットエリア301を撮像素子39で撮影して得られる撮影画像上で、マーカー302に対応するスポットを検出する。そして、検出制御部43は、その検出したスポットの配置とメモリー43bに格納されているスポット情報とから、撮影画像上におけるプローブ303に対応するスポットを特定する。
【0045】
図7は、図6に示したDNAチップを撮像素子39で撮影して得られる画像の模式図である。マーカー302からの蛍光の輝度はプローブ303からの蛍光に比べて比較的に強いので、画像上でマーカー302のスポットを容易に識別することができる。一方、プローブ303からの蛍光の輝度はハイブリダイゼーション状態により異なる。蛍光輝度の弱いプローブ303については、画像上で、そのスポットを識別することは難しい。本実施形態では、画像上におけるマーカー302のスポットの位置とメモリー43bに格納されているスポット情報とに基づいて、プローブ303に対応するスポットの全てを画像上で特定することができる。
【0046】
ここで、ステップS102のマーカー検出モードでの撮影手順を具体的に説明する。図8に、マーカー検出モードでの撮影手順を示す。
【0047】
まず、レーザー光源32の電源をONとし(ステップS1020)、可変絞り37を開放状態とし(ステップS1021)、レーザーシャッター33を開く(ステップS1022)。これにより、撮影位置に移動した生化学反応カートリッジ1のDNAチップにレーザー光が照射される。
【0048】
次に、シャッター40を開くと(ステップS1023)、DNAチップの各スポットエリアからの蛍光が撮像素子39のセンサー部に入射し、撮像素子39にて、入射光量に応じた電荷が蓄積される(ステップS1024)。マーカー検出用に設定された時間が経過した後(ステップS1025)、撮像素子39における電荷蓄積を終了し(ステップS1026)、シャッター40およびレーザーシャッター33を閉じる(ステップS1027、ステップS1028)。その後、撮像素子39に蓄積された電荷に応じた画像信号が、撮像素子39から検出制御部43に転送される(ステップS1029)。
【0049】
図8に示した手順でマーカー検出モードでの撮影が行われた後、ステップS104で、検出制御部43が、撮像素子39から転送された画像上で、マーカーを抽出する。そして、検出制御部43は、そのマーカーのスポット位置とメモリー43bに格納されているスポット情報とに基づいて、画像上の各プローブに対応するスポットの位置を割り出す。検出制御部43は、割り出した各プローブのスポットの位置を示す情報をメモリー43bに格納する。
【0050】
ステップS104で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置から退避位置に移動する。ステップS105で、検出制御部43は、面発光体44を撮影位置に移動し、面発光体44を点灯する。ステップS106で、検出制御部43は、埃撮影モードでの撮影を行う。
【0051】
ここで、ステップS106の埃撮影モードでの撮影手順を具体的に説明する。図9に、埃撮影モードでの撮影手順を示す。
【0052】
まず、可変絞り37を絞る(ステップS1060)。次に、シャッター40を開くと(ステップS1061)、面発光体44からの光が撮像素子39のセンサー部に入射し、撮像素子39にて、入射光量に応じた電荷が蓄積される(ステップS1062)。埃撮影用に設定された時間が経過した後(ステップS1063)、撮像素子39における電荷蓄積を終了し(ステップS1064)、シャッター40を閉じる(ステップS1065)。その後、撮像素子39に蓄積された電荷に応じた画像信号が、撮像素子39から検出制御部43に転送される(ステップS1066)。
【0053】
図9に示した手順で埃撮影モードでの撮影が行われた後、ステップS107で、検出制御部43が、撮像素子39から転送された画像上で、埃の位置と大きさを算出する。埃がセンサー部に付着している場合は、その埃の付着した部分の画像上における輝度が低下する。よって、画像の中で輝度の低下している部分を埃と見なすことができる。検出制御部43は、算出した埃の大きさおよび位置を含む埃情報をメモリー43bに格納する。埃の大きさをその埃全体が包含される円形に置き換え、その円の中心位置を埃の位置としてもよい。
【0054】
ステップS108で、検出制御部43は、DNAチップのスポットエリアの数が1つまたは複数のいずれであるかを判定する。この判定において、検出制御部43は、マーカー検出モードでの撮影で得られたスポットの位置情報を参照し、その位置情報からスポットエリアの数を判断する。スポットエリアが1つである場合は、ステップS109へ進み、スポットエリアが複数である場合は、ステップS130へ進む。
【0055】
ステップS109で、検出制御部43は、スポットエリアについて、埃と重なるスポットがあるか否かを調べる。この判定において、図5に示すように、埃と重なるスポットがない場合(「OK」の場合)は、そのスポットエリアの画像を蛍光検出のための最終画像データとして用いることができるので、ステップS110へ進む。埃と重なるスポットがある場合(「NG」の場合)は、スポットエリアの画像を完成することができないため、ステップS114へ進む。
【0056】
ステップS110で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、検出制御部43は、ステップS111で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS112で、マイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。
【0057】
ここで、ステップS112のマイクロアレイ撮影モードでの撮影手順を具体的に説明する。図10に、マイクロアレイ撮影モードでの撮影手順を示す。
【0058】
まず、レーザー光源32の電源をONとし(ステップS1120)、可変絞り37を開放状態とし(ステップS1121)、レーザーシャッター33を開く(ステップS1122)。これにより、撮影位置に移動した生化学反応カートリッジ1のDNAチップにレーザー光が照射される。
【0059】
次に、シャッター40を開くと(ステップS1123)、DNAチップの各スポットエリアからの蛍光が撮像素子39のセンサー部に入射し、撮像素子39にて、入射光量に応じた電荷が蓄積される(ステップS1124)。マイクロアレイ撮影用に設定された時間が経過した後(ステップS1125)、撮像素子39における電荷蓄積を終了し(ステップS1126)、シャッター40およびレーザーシャッター33を閉じる(ステップS1127、ステップS1128)。その後、撮像素子39に蓄積された電荷に応じた画像データが、撮像素子39から検出制御部43に転送される(ステップS1129)。
【0060】
ステップS113で、検出制御部43は、撮像素子39から得られた画像データを本体(制御部17)に送る。この後、本検出動作を終了する。
【0061】
また、ステップS114で、検出制御部43は、本検出動作開始から現在までに清掃部42による清掃が行われたか否かを確認する。検出制御部43は、メモリー43bにて、清掃部42の動作回数を管理しており、その動作回数に基づいて初めての清掃動作であるか否かを判定する。初めての清掃動作であると判断した場合は、ステップS115へ進む。初めての清掃動作でないと判断した場合は、ステップS118へ進む。
【0062】
ステップS115で、検出制御部43は、清掃部42の動作回数を予め設定された最大動作回数(初期値)に設定する。この最大動作回数は、図1に示した入力部24を通じて、検査者が自由に設定することができる。ステップS116で、検出制御部43は、清掃部42に清掃動作を行わせる。
【0063】
ここで、ステップS116の清掃動作手順を具体的に説明する。図11に、清掃動作手順を示す。まず、シャッター40を開く(ステップS1160)。次いで、清掃部42を動作させる(ステップS1161)。最後に、シャッター40を閉じる(ステップS1162)。
【0064】
清掃動作が行われると、ステップS117で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値を1つ減じる。その後、埃の除去がうまくいったかを調べる為に、ステップS106に戻る。
【0065】
また、ステップS118で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値が0であるいか否かを調べる。動作回数の値が0でない場合は、ステップS116に進む。動作回数の値が0である場合は、ステップS119に進む。
【0066】
ステップS119で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、ステップS120で、検出制御部43は、清掃により埃を取り除く(または移動する)ことができなかったことを本体(制御部17)に伝える。その後、本検出動作を終了する。
【0067】
また、ステップS130で、検出制御部43は、複数のスポットエリア(図6に示すスポットエリア301)のそれぞれについて、埃と重なるスポットがあるか否かを調べる。この判定において、図5に示すように、全スポットが埃と重ならないスポットエリアがある場合(「OK」の場合)は、そのスポットエリアの画像を蛍光検出のための最終画像データとして用いることができるので、ステップS131へ進む。全スポットが埃と重ならないスポットエリアがない場合(「NG」の場合)は、スポットエリアの画像を完成することができないため、ステップS136へ進む。
【0068】
ステップS131で、検出制御部43は、全スポットが埃と重ならないスポットエリアを示す情報(番号)をメモリー43bに格納する。図5に示した例では、第2のスポットエリアの情報がメモリー43bに格納される。
【0069】
ステップS132で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。次に、検出制御部43は、ステップS133で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS134で、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。そして、検出制御部43は、ステップS135で、本撮影で得られた画像データの中から有効なスポットエリア(図5に示す第2のスポットエリア)の画像データを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0070】
また、ステップS136で、検出制御部43は、図5に示すように、第1のスポットエリアを構成するスポットのうち、埃と重なるスポットについて、第2および第3のスポットエリアの対応するスポットを利用して補完することできるか否かを調べる。第2および第3のスポットエリアの対応するスポットのいずれか1つが埃と重なっていない場合(「OK」の場合)は、検出制御部43は補完可と判断し、ステップS137に進む。第2および第3のスポットエリアの対応するスポットが全て埃と重なっている場合(「NG」の場合)は、検出制御部43は補完不可と判断し、ステップS114に進む。
【0071】
ステップS137で、検出制御部43は、補完を必要とするスポットを示す情報とこれを補完するために用いるスポット(第2および第3のスポットエリアの対応するスポット)を示す情報を対とする補完情報をメモリー43bに格納する。
【0072】
ステップS138で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。次に、検出制御部43は、ステップS139で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS140で、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。そして、検出制御部43は、ステップS141で、メモリー43bに格納した補完情報を参照して、本撮影で得られた画像データの中から埃の影響を受けないスポットを集め、それらスポットを1スポットエリアデータとして本体に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0073】
以上の第1の蛍光検出処理によれば、マーカー検出モードで撮影した画像データに基づいて各スポットエリアにおける各スポットの大きさや位置を取得することができる。また、埃撮影モードで撮影した画像データから埃(付着物)の大きさや位置を取得することができる。こうして取得したスポットの大きさや位置と埃(付着物)の大きさや位置とを比較することで、埃(付着物)が蛍光検出の妨げになるか否かを調べることができる。
【0074】
また、埃(付着物)の影響を受けるスポットについては、他のエリアの対応するスポットで補完されるので、埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。これにより、蛍光検出を正確に行うことが可能となる。
【0075】
(2)第2の蛍光検出処理:
サンプルによっては、マーカー撮影によりスポットの蛍光褪色が起き、それが蛍光検出に影響を与える場合がある。この場合は、マーカー撮影を行うことができないため、スポットの個々の位置を確定することができない。第2の蛍光検出処理では、マーカー撮影なしに蛍光検出を行う。
【0076】
図12は、第2の蛍光検出処理手順を示すフローチャートである。図13は、その蛍光検出における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【0077】
ステップS201で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置から退避位置に移動する。ステップS202で、検出制御部43は、面発光体44を撮影位置に移動させ、面発光体44を点灯する。ステップS203で、検出制御部43は、図9に示した手順に従って埃撮影モードでの撮影を行う。ステップS204で、検出制御部43は、撮像素子39から転送された画像上で、埃の位置と大きさを算出する。検出制御部43は、算出した埃の大きさおよび位置を含む埃情報をメモリー43bに格納する。
【0078】
ステップS205で、検出制御部43は、検出対象のスポットエリアの数が1つまたは複数のいずれであるかを判定する。この判定において、検出制御部43は、ICチップからの受信情報から取得した、DNAチップのスポットエリアの数やスポットの配置を示すスポット情報を参照する。スポットエリアが1つである場合は、ステップS206へ進み、スポットエリアが複数である場合は、ステップS230へ進む。
【0079】
ステップS206で、検出制御部43は、スポット情報に基づいて仮想スポットエリアを想定し、その仮想スポットエリアが埃と重なるか否かを調べる。仮想スポットエリアは撮影画像上におけるDNAチップのスポットエリアに対応する。この判定において、図13に示すように、仮想スポットエリアが埃と重ならない場合(「OK」の場合)は、スポットが埃と重なる可能性がないと判断する。よって、仮想スポットエリアの画像を蛍光検出のための最終画像データとして用いることができると判断して、ステップS207へ進む。仮想スポットエリアが埃と重なる場合(「NG」の場合)は、スポットが埃と重なる可能性があると判断する。よって、スポットエリアの画像を完成することができないと判断して、ステップS211へ進む。
【0080】
ステップS207で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、検出制御部43は、ステップS208で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS209で、図10に示した手順に従ってマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。
【0081】
ステップS210で、検出制御部43は、撮像素子39から得られた画像データを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0082】
また、ステップS211で、検出制御部43は、本検出動作開始から現在までに清掃部42による清掃が行われたか否かを確認する。検出制御部43は、メモリー43bにて、清掃部42の動作回数を管理しており、その動作回数に基づいて初めての清掃動作であるか否かを判定する。初めての清掃動作であると判断した場合は、ステップS212へ進む。初めての清掃動作でないと判断した場合は、ステップS215へ進む。
【0083】
ステップS212で、検出制御部43は、清掃部42の動作回数を予め設定された最大動作回数(初期値)に設定する。ステップS213で、検出制御部43は、図11に示した手順に従って清掃部42に清掃動作を行わせる。清掃動作が行われると、ステップS214で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値を1つ減じる。その後、埃の除去がうまくいったかを調べる為に、ステップS203に戻る。
【0084】
また、ステップS215で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値が0であるいか否かを調べる。動作回数の値が0でない場合は、ステップS213に進む。動作回数の値が0である場合は、ステップS216に進む。
【0085】
ステップS216で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、ステップS217で、検出制御部43は、清掃により埃を取り除く(または移動する)ことができなかったことを本体(制御部17)に伝える。その後、本検出動作を終了する。
【0086】
また、ステップS230で、検出制御部43は、ICチップからの受信情報から取得したスポット情報に基づいて複数の仮想スポットエリアを想定し、これら仮想スポットエリアのそれぞれについて、埃と重なるか否かを調べる。この判定において、図13に示すように、埃と重ならない仮想スポットエリアがある場合(「OK」の場合)は、その仮想スポットエリアに対応する画像を蛍光検出のための最終画像データとして用いることができると判断して、ステップS231へ進む。埃と重ならない仮想スポットエリアがない場合(「NG」の場合)は、スポットエリアの画像を完成することができないため、ステップS236へ進む。
【0087】
ステップS231で、検出制御部43は、埃と重ならない仮想スポットエリアを示す情報(番号)を有効スポットエリア情報としてメモリー43bに格納する。図13に示した例では、第2の仮想スポットエリアの情報がメモリー43bに格納される。
【0088】
ステップS232で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。ステップS233で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS234で、検出制御部43は、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。ステップS235で、検出制御部43は、メモリー43bに格納した有効スポットエリア情報を参照して、本撮影で得られた画像データの中から有効なスポットエリアの画像データを抽出して、それを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0089】
また、ステップS236で、検出制御部43は、各仮想スポットエリアの間で、埃の相対的な位置関係に基づいて、埃と重なるスポットを他の仮想スポットエリアの対応するスポットで補完することができない可能性があるか否かを調べる。具体的には、図13に示すように、第1から第3の仮想スポットエリアの各エリア間で、エリアと埃の相対的な位置が一致する場合は、埃と重なるスポットを他の仮想スポットエリアの対応するスポットで補完することができない可能性がある。エリアと埃の相対的な位置が一致しない仮想スポットエリアが1つでもある場合は、埃と重なるスポットを他の仮想スポットエリアの対応するスポットで補完することができる可能性がある。スポットを補完することができる可能性がある場合は、ステップS237に進む。スポットを補完することができない可能性がある場合は、ステップS211に進む。
【0090】
ステップS237で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。ステップS238で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS239で、検出制御部43は、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。
【0091】
ステップS240で、検出制御部43は、本撮影で得られた画像データから、第1から第3のスポットエリアのそれぞれのスポットを抽出して、それらスポットとステップS204で取得した埃との位置を比較する。そして、検出制御部43は、第1のスポットエリアにおいて、埃の影響を受けているスポットがあれば、そのスポットを、第2または第3のスポットエリアの対応するスポット(埃の影響を受けていないスポット)で補完する。S241で、検出制御部43は、スポットの補完がなされたスポットエリアのデータを本体に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0092】
以下に、ステップS240でのスポットの補完処理を具体的に説明する。
【0093】
図14は、第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最小埃間隔を示す模式図である。本撮影で得られた画像データは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に沿って等間隔に配置された第1から第3のスポットエリアを含む。図面に向かって左から、第1のスポットエリア、第2のスポットエリア、第3のスポットエリアの順で配置されている。各スポットエリアは、3行3列で配置された9個のスポットよりなる。各スポットは、同じ径を有し、等間隔に配置されている。各スポットエリアにおいて、左上から右下向かって、スポットの位置を1から9の番号で表す。
【0094】
図14中、AおよびBで示した丸の領域が埃である。埃Aは、第1のスポットエリアの第1番目のスポットと第2番目のスポットの間に位置し、埃Aの外縁は、第1番目および第2番目のスポットの外縁のそれぞれに接している。埃Bは、第2のスポットエリアの第1番目のスポットの左側(第1のスポットエリア側)に位置し、埃Bの外縁は、第1番目のスポットの外縁に接している。この場合の埃A、Bの間隔(埃の中心位置の間隔)が、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与えることになる間隔を規定する場合における最小埃間隔(埃の近さの限界)である。すなわち、図14に示す状態が、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与える埃間隔の中で、一番近い状態である。
【0095】
埃間隔が最小埃間隔の場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。埃間隔が最小埃間隔より小さい場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することができると判断される。
【0096】
第2のスポットエリアの第1番目のスポットでの補完ができないと判断された場合は、第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完できるかを判断する。図14に示した例では、第3のスポットエリアの第1番目のスポットは埃の影響を受けないので、この第1番目のスポットで第1のスポットエリアの第1番目のスポットを補完することができると判断される。
【0097】
図15は、第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最大埃間隔を示す模式図である。本撮影で得られた画像データは、図14に示したものと同じ第1から第3のスポットエリアを含む。
【0098】
図15の例では、埃Aは、第1のスポットエリアの第1番目のスポットの左側(第2のスポットエリアとは反対の側)に位置し、埃Aの外縁は、第1番目のスポットの外縁に接している。埃Bは、第2のスポットエリアの第1番目のスポットの右側(第3のスポットエリア側)に位置し、埃Bの外縁は、第1番目のスポットの外縁に接している。この場合の埃A、Bの間隔が、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与えることになる間隔を規定する場合における最大埃間隔(埃の遠さの限界)である。すなわち、図15に示す状態が、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与える埃間隔の中で、一番遠い状態である。
【0099】
埃間隔が最大埃間隔の場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。埃間隔が最大埃間隔より大きい場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することができると判断される。また、埃間隔が、最小埃間隔以上、最大埃間隔以下の範囲にある場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第2のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。
【0100】
図16は、第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最小埃間隔を示す模式図である。本撮影で得られた画像データは、図14に示したものと同じ第1から第3のスポットエリアを含む。
【0101】
図16中、A、BおよびCで示した丸の領域が埃である。埃A、Bの配置は、図14に示した状態と同じである。埃Cは、第3のスポットエリアの第1番目のスポットの左側(第2のスポットエリア側)に位置し、埃Cの外縁は、第1番目のスポットの外縁に接している。
【0102】
この場合の埃A、Cの間隔(埃の中心位置の間隔)が、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与えることになる間隔を規定する場合における最小埃間隔(埃の近さの限界)である。すなわち、図16に示す状態が、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与える埃間隔の中で、一番近い状態である。
【0103】
埃間隔が最小埃間隔の場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。埃間隔が最小埃間隔より小さい場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することができると判断される。
【0104】
図17は、第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最大埃間隔を示す模式図である。本撮影で得られた画像データは、図14に示したものと同じ第1から第3のスポットエリアを含む。
【0105】
埃A、Bの配置は、図15に示した状態と同じである。埃Cは、第3のスポットエリアの第1番目のスポットと第2番目のスポットの間に位置し、埃Cの外縁は、第1番目および第2番目のスポットの外縁のそれぞれに接している。この場合の埃A、Cの間隔が、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与えることになる間隔を規定する場合における最大埃間隔(埃の遠さの限界)である。すなわち、図17に示す状態が、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの各第1番目のスポットに影響を与える埃間隔の中で、一番遠い状態である。
【0106】
埃間隔が最大埃間隔の場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。埃間隔が最大埃間隔より大きい場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することができると判断される。また、埃間隔が、最小埃間隔以上、最大埃間隔以下の範囲にある場合は、第1のスポットエリアの第1番目のスポットを第3のスポットエリアの第1番目のスポットで補完することはできないと判断される。
【0107】
なお、図14から図17に示した例においては、埃Aが第1のエリアスポットの第1番目のスポットに対して影響を与える場合の埃の位置関係を示したものであるが、埃がどのスポットに影響するかはカートリッジのセット状態で変化する可能性がある。各スポットは、同一の径を有し、等間隔に配置されているので、最小埃間隔および最大埃間隔はどのスポットに対しても成り立つ。
【0108】
第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアの対応するスポットで補完する場合の最小埃間隔dminを、スポットの大きさと埃の大きさを加味して数式で表すと、以下のようになる。
【0109】
dmin=A−S−D1−D2
ここで、Aはエリア間隔、Sはスポットの直径、D1は第1のスポットエリアに位置する埃A(第1の付着物)の半径、D2は、第2のスポットエリアに位置する埃B(第2の付着物)の半径である。検出制御部43は、埃A、Bの間隔が最小埃間隔dminより小さいときに、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する。
【0110】
また、第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアの対応するスポットで補完する場合の最大埃間隔dmaxを、スポットの大きさと埃の大きさを加味して数式で表すと、以下のようになる。
【0111】
dmax=A+S+D1+D2
検出制御部43は、埃A、Bの間隔が最大埃間隔dmaxより大きいときに、埃A、Bが第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する。
【0112】
また、第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の最小埃間隔dminを、スポットの大きさと埃の大きさを加味して数式で表すと、以下のようになる。
【0113】
dmin=A×2−S−D1−D3
ここで、D3は、第3のスポットエリアに位置する埃C(第3の付着物)の半径である。検出制御部43は、埃A、Cの間隔が最小埃間隔dminより小さいときに、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する。
【0114】
また、第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の最大埃間隔dmaxを、スポットの大きさと埃の大きさを加味して数式で表すと、以下のようになる。
【0115】
dmax=A×2+S+D1+D3
検出制御部43は、埃A、Cの間隔が最大埃間隔dmaxより大きいときに、埃A、Cが第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する。
【0116】
以上の説明では、スポットエリアの並びの方向における埃とスポットの関係に基づいて補完の可能性を判断しているが、スポットエリアの並びの方向に対して少し斜めの方向における埃とスポットの関係に基づく補完の可能性も考慮することも可能である。この場合、範囲を数式で表すと、
[スポットの直径]+[埃Aの半径]+[埃Bの半径]
である。1つのスポットに対して、埃A、Bの間隔がこの範囲以下の場合は、埃がスポットに影響を与えると判定する。この判定手法と、前述の各数式で与えられる最小埃間隔dminおよび最大埃間隔dmaxに基づく判定手法とを併用して、埃とスポットの重なりの判定を行う。
【0117】
図18に、埃とスポットの重なり具合に応じた判定結果の一例を示す。第1番目のスポットと埃Aが完全に重なる状態は、影響ありとなる。第1番目のスポットの外縁が埃Aの外縁に接する状態は、第1番目のスポットと埃Aが重なる状態と見なし、影響ありとなる。第1番目のスポットと埃Aが完全に離れている状態は、影響なしとなる。
【0118】
以上の第2の蛍光検出処理によれば、埃(付着物)の位置と各仮想スポットエリアとの相対的な位置関係に基づいて、埃(付着物)の影響を受けない有効スポットエリアを判定することができる。この有効スポットエリアに基づいて埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。これにより、蛍光検出を正確に行うことが可能となる。
【0119】
また、有効スポットエリアがない場合は、埃(付着物)の影響を受けるスポットについて、他のエリアの対応するスポットで補完することで、有効スポットエリアを取得する。この有効スポットエリアに基づいて埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。
【0120】
(3)第3の蛍光検出処理:
ここでは、マーカー撮影なしに蛍光検出を行う場合の、第2の蛍光検出処理とは別の蛍光検出処理について説明する。
【0121】
スポットエリアは必ずしも等間隔で配置されていると限らない。また、スポットの並び順がスポットエリアごとに異なる場合もある。スポットの位置やスポットの種別(または並び)等の情報はカートリッジのICチップに記憶されている。制御部17は、ICチップからの受信情報から取得した、DNAチップのスポットエリアの数やスポットの配置を示すスポット情報を検出制御部43へ転送する。検出制御部43は、スポット情報に基づいて作成した、スポットの配置を示すテンプレートを埃画像と重ね合わせることで、スポットと埃の重なりやスポットの補完の可能性を判定する。
【0122】
図19に、テンプレートおよび埃画像を含む検出エリアを模式的に示す。テンプレート101は、スポット情報に基づいて作成したものであって、第1から第3のスポットエリアを含む。スポットの大きさおよび並びはスポットエリア間で異なる。具体的には、図19中の番号1、2、3で示したスポットの並びは、スポットエリア間で異なる。検出制御部43は、埃画像を含む検出エリア100上にテンプレート101を重ね、検出エリア100上でテンプレート101の位置を横および縦の各方向に一定の距離ごとに徐々に変化させ、各位置での各スポットエリアのスポットと埃の位置関係を調べる。そして、検出制御部43は、各スポットエリアのスポットと埃の位置関係に基づいて、スポットと埃の重なりやスポットの補完の可能性を判定する。なお、ここでは、3つのスポットエリアを含むテンプレートを例に説明したが、テンプレートに設定されるスポットエリアの数は、ICチップから受信した情報によって決まる。
【0123】
図20は、第3の蛍光検出処理手順を示すフローチャートである。図21は、その蛍光検出における付着物とテンプレート上のスポットエリアとの位置関係を説明するための図である。
【0124】
ステップS301からS305の処理は、図12に示したステップS201からS205の処理と同じである。ステップS305において、スポットエリアが1つの場合はステップS306に進み、スポットエリアが複数の場合はステップS330に進む。
【0125】
ステップS306で、検出制御部43は、図21に示すように、1つのスポットエリアが設定されたテンプレート101を検出エリア100上に重ね、テンプレート101が検出エリア100上のどの位置にあっても、埃がスポットと重ならないかを判定する。埃がスポットと重ならない場合は、ステップS307に進む。埃がスポットと重なる場合は、ステップS311に進む。
【0126】
ステップS307で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。次いで、検出制御部43は、ステップS308で、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させ、ステップS309で、図10に示した手順に従ってマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。そして、ステップS210で、検出制御部43は、撮像素子39から得られた画像データを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0127】
また、ステップS311で、検出制御部43は、本検出動作開始から現在までに清掃部42による清掃が行われたか否かを確認する。検出制御部43は、メモリー43bにて、清掃部42の動作回数を管理しており、その動作回数に基づいて初めての清掃動作であるか否かを判定する。初めての清掃動作であると判断した場合は、ステップS312へ進む。初めての清掃動作でないと判断した場合は、ステップS315へ進む。
【0128】
ステップS312で、検出制御部43は、清掃部42の動作回数を予め設定された最大動作回数(初期値)に設定する。ステップS313で、検出制御部43は、図11に示した手順に従って清掃部42に清掃動作を行わせる。清掃動作が行われると、ステップS314で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値を1つ減じる。その後、埃の除去がうまくいったかを調べる為に、ステップS303に戻る。
【0129】
また、ステップS315で、検出制御部43は、メモリー43bに格納している動作回数の値が0であるいか否かを調べる。動作回数の値が0でない場合は、ステップS313に進む。動作回数の値が0である場合は、ステップS316に進む。
【0130】
ステップS316で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。そして、ステップS317で、検出制御部43は、清掃により埃を取り除く(または移動する)ことができなかったことを本体(制御部17)に伝える。その後、本検出動作を終了する。
【0131】
また、ステップS330で、検出制御部43は、図21に示すように、複数のスポットエリアが設定されたテンプレート101を検出エリア100上に重ねて、各スポットエリアを構成するスポットの位置と埃の位置を調べる。そして、検出制御部43は、テンプレート101が検出エリア100上のどの位置にあっても、埃がスポットと重ならないスポットエリアがあるかを調べる。埃がスポットと重ならないスポットエリアがある場合は、ステップS331に進む。埃がスポットと重ならないスポットエリアがない場合は、ステップS336に進む。
【0132】
ステップS331で、検出制御部43は、埃がスポットと重なっていないスポットエリアの情報(番号)を有効スポットエリア情報としてメモリー43bに格納する。ステップS332で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。ステップS333で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS334で、検出制御部43は、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。ステップS335で、検出制御部43は、メモリー43bに格納した有効スポットエリア情報を参照して、本撮影で得られた画像データの中から有効なスポットエリアの画像データを抽出して、それを本体(制御部17)に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0133】
また、ステップS336で、検出制御部43は、複数のスポットエリアの間でのスポット補完が可能であるか否かを判定する。具体的には、検出制御部43は、図21に示すように、第1から第3のスポットエリアが設定されたテンプレート101を検出エリア100上に重ねて、各スポットエリアを構成するスポットの位置と埃の位置を調べる。そして、検出制御部43は、テンプレート101が検出エリア100上のどの位置にあっても、第1のスポットエリアと第2または第3のスポットエリアの間で、対応するスポットを補完することができるか否かを判定する。スポット補完を行うことができる場合は、ステップS337に進む。スポット補完を行うことができない場合は、ステップS311に進む。
【0134】
ステップS337で、検出制御部43は、面発光体44を消灯し、面発光体44を撮影位置から退避させる。ステップS338で、検出制御部43は、生化学反応カートリッジ1を撮影位置に移動させる。ステップS339で、検出制御部43は、図10に示したマイクロアレイ撮影モードでの本撮影を行う。
【0135】
ステップS340で、検出制御部43は、本撮影で得られた画像データから、第1から第3のスポットエリアのそれぞれのスポットを抽出して、それらスポットとステップS304で取得した埃との位置を比較する。そして、検出制御部43は、第1のスポットエリアにおいて、埃の影響を受けているスポットがあれば、そのスポットを、第2または第3のスポットエリアの対応するスポット(埃の影響を受けていないスポット)で補完する。この補完は、図12に示したステップS240における補完と同様な処理を適用することができる。S341で、検出制御部43は、スポットの補完がなされたスポットエリアのデータを本体に送る。その後、本検出動作を終了する。
【0136】
以上説明した第3の蛍光検出処理によれば、埃撮影モードで撮影した画像とテンプレートとの重ねあわせにおける、各位置での埃(付着物)の位置とスポットとの位置関係に基づいて、埃(付着物)の影響を受けない有効スポットエリアを判定することができる。この有効スポットエリアに基づいて埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。これにより、蛍光検出を正確に行うことが可能となる。
【0137】
また、有効スポットエリアがない場合は、埃(付着物)の影響を受けるスポットについて、他のエリアの対応するスポットで補完することで、有効スポットエリアを取得する。この有効スポットエリアに基づいて埃(付着物)の影響のない検査画像を作成することができる。
【0138】
次に、生化学反応カートリッジ1について詳細に説明する。
【0139】
生化学反応カートリッジ1の本体(筐体)は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂から構成されている。これらの材料は、透明または半透明である。
【0140】
図22に、生化学反応カートリッジ1の構成を示す。図22を参照すると、生化学反応カートリッジ1の上部には、注射器等を用いて血液等の検体を注入するための検体入口2が設けられ、ゴムキャップにより封止されている。また、生化学反応カートリッジ1の両側面には、内部の溶液を移動させるために、ノズルを挿入して加圧または減圧を行うための複数のノズル入口3が設けられ、ゴムキャップにより封止されている。
【0141】
生化学反応カートリッジ1には、ICチップ25が設けられている。ICチップ25は、不揮発性の記憶部と、外部からの電力の受信と信号の送受信のための通信部を有している。ICチップ25の記憶部には、生化学反応カートリッジ1を識別するための識別情報(ID)が書き込まれている。さらに、この記憶部に、生化学反応カートリッジ1の種別、処理工程の手順、生化学反応の結果を分析するための分析用情報などを書き込むことができる。
【0142】
通常、生化学反応分析装置の処理装置またはそれに付属する装置は、生化学反応カートリッジ1の種別ごとの処理工程の手順の情報を記憶部に記憶している。ICチップ25に生化学反応カートリッジ1の種別が書き込まれている場合には、その種別を読み取って、それに適合する処理工程の手順を記憶部に記憶した手順から選択し、その手順に則って処理を行う。しかし、生化学反応カートリッジ1の種別が、記憶部に記憶されていない場合には、ICチップ25に書き込まれている処理工程の手順を読み込んで、その手順に則って処理を行う。処理工程の手順として書き込まれるデータの中に、生化学反応を起こすために加えられる温度条件等が含まれていてもよい。
【0143】
図23は、生化学反応カートリッジ1の平面断面図である。生化学反応カートリッジ1の一方の側面には10個のノズル入口3a〜3jが設けられ、反対側の他方の側面には10個のノズル入口3k〜3tが設けられている。ノズル入口3a〜3jは、流路4a〜4jを介してチャンバ5a〜5jに連通している。ノズル入口3k,3l,3m,3o,3r,3tは、それぞれ流路4k,4l,4m,4o,4r,4tを介してチャンバ5k,5l,5m,5o,5r,5tに連通している。流路4a〜4tは空気が流れる空気流路である。チャンバ5a〜5tは、溶液を貯蔵する場所または反応を起こす場所である。なお、ノズル入口3n,3p,3q,3sは、予備のノズルであり、いずれもチャンバに連通していない。
【0144】
検体入口2aはチャンバ7に連通している。チャンバ7は流路6a,6b,6c,6kを介してチャンバ5a,5b,5c,5kに連通しているとともに、流路10を介してチャンバ8に連通している。チャンバ8は流路6g,6oを介してチャンバ5g,5oに連通しているとともに、流路11を介してチャンバ9に連通している。チャンバ9は流路6h,6i,6j,6r,6tを介してチャンバ5h,5i,5j,5r,5tに連通している。流路10は流路6d,6e,6f,6l,6mを介してチャンバ5d,5e,5f,5l,5mに連通している。
【0145】
チャンバ9の底面には角孔が開けられている。この角孔に、DNAチップ12が、プローブ面が上になるように貼り付けられている。DNAチップ12は、1平方インチ(約645mm2)程度の大きさを持つガラス板の固相表面に、数十〜数十万種類の異なるDNAプローブ37が高密度に並べられたものである。このDNAチップ12を用いて、検体中のDNAとハイブリダイゼーション反応を行わせることによって、一度に数多くの遺伝子を検査できる。これらのDNAプローブ37はマトリックス状に規則正しく並べられており、それぞれのDNAプローブ37のアドレス(何行目、何列目として示される位置)を、情報として容易に取り出すことができる。なお、検査の対象となる遺伝子としては、感染症ウィルス、細菌、疾患関連遺伝子、各個人の遺伝子多型等がある。
【0146】
ここで、本実施形態において検体の処理を行うための、各チャンバ5a〜5tのセッティング例について説明する。チャンバ5aには、細胞壁を破壊するEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含む第1の溶血剤が、チャンバ5bには、界面活性剤等のタンパク質変性剤を含む第2の溶血剤がそれぞれ収容されている。チャンバ5cには、DNAが吸着するシリカコーティングされた磁性体粒子が収容されている。チャンバ5l、5mには、DNAの抽出の際にDNAの精製を行うために用いられる第1、第2の抽出洗浄剤がそれぞれ収容されている。
【0147】
チャンバ5dには、DNAを磁性体粒子から溶出する低濃度塩のバッファからなる溶出液が収容されている。チャンバ5gには、PCRに必要な薬剤、すなわち、プライマ、ポリメラーゼ、dNTP溶液、バッファ、蛍光剤を含むCy3−dUTP(アマシャムバイオサイエンス株式会社製の蛍光標識)等の混合液が収容されている。チャンバ5h,5jには、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光物質(蛍光標識)付きの検体DNAと蛍光物質(蛍光標識)とを洗浄するための界面活性剤を含む洗浄剤が収容されている。チャンバ5iには、DNAチップ12を含むチャンバ9内を乾燥させるためのアルコールが収容されている。
【0148】
チャンバ5eは、血液のDNA以外の塵や埃を溜めるためのチャンバである。チャンバ5fは、チャンバ5l,5mからの第1、第2の抽出洗浄剤の廃液を溜めるためのチャンバである。チャンバ5rは、第1、第2の洗浄剤の廃液を溜めるためのチャンバである。チャンバ5k,5o,5tは、溶液がノズル入口に流れ込まないようにするために設けられたブランクのチャンバである。
【0149】
生化学反応カートリッジ1に血液等の液体状の検体を注入して、処理装置にセットする。そして、生化学反応カートリッジ1の内部で、DNA等の抽出および増幅を行わせ、増幅された検体DNAと生化学反応カートリッジ1の内部にあるDNAチップ12のDNAプローブ37との間で、ハイブリダイゼーションを行わせる。一方、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光物質(蛍光標識)付きの検体DNAと蛍光物質(蛍光標識)の洗浄を行うことができる。
【0150】
以下、検体の生化学反応を生化学反応カートリッジ1内にて生じさせる方法について具体的に説明する。
【0151】
まず、検査者は、生化学反応カートリッジ1の検体入口2aを塞いでいるゴムキャップを貫通すように、検体である血液を収容した注射器の針を検体入口2aに差し込み、注射器内の血液を検体入口2aからチャンバ7に注入する。その後、検査者は生化学反応カートリッジ1をテーブル13上に置く。そして、検査者が、図示しないレバーを操作することにより、図1に示したポンプブロック22,23を図1に示した矢印の方向に移動させる。この移動により、ポンプノズル20,21が、生化学反応カートリッジ1の両側面のノズル入口3a〜3tに、ゴムキャップを貫通するように挿入される。
【0152】
検査者が、入力部24から実験開始の命令を入力すると処理が始まる。図24は、生化学反応およびその後処理の手順を説明するフローチャートである。
【0153】
まず、ステップS1で、制御部17が、ポンプノズル20,21を制御してノズル入口3a,3kのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出させ、電動シリンジポンプ19から空気を吸引する。それによって、チャンバ5a内の第1の溶血剤を、血液の入ったチャンバ7に流し込む。このように、ノズル入口3aにポンプノズル20を挿入して空気を噴出して加圧し、ノズル入口3kにポンプノズル21を挿入して空気を吸引して減圧することによって、チャンバ5a内の第1の溶血剤が血液の入ったチャンバ7内に流れ込む。この様子が、チャンバ5a,7,5kを通る断面図である図25に示されている。
【0154】
空気の供給および吸引のタイミングをずらすことで各チャンバへの加圧および減圧を制御し、これによってカートリッジ1内において溶液を円滑に流すことができる。さらに、電動シリンジポンプ19による空気の吸引を、ポンプ18からの空気の開始時からリニアに増加させるなどの細かな制御を行って、溶液をより円滑に流すことも可能である。例えば、溶血剤の粘性や流路の抵抗にもよるが、ステップS1において、電動シリンジポンプ19からの空気の吸引を、電動シリンジポンプ18からの空気の噴出を開始してから10〜200ミリ秒後に開始するように制御する。この制御によると、流れる溶液の先頭で溶液が飛び出すことがなく、溶液が円滑に流れる。これは、以下の各工程における溶液の移動についても同様である。
【0155】
また、電動シリンジポンプ18,19を用いて空気の供給を制御しつつ、ノズル入口3a,3oのみを開にして、電動シリンジポンプ18,19によって空気の噴出および吸引を交互に繰り返す。こうして、チャンバ7の溶液を流路10に流し、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行う。あるいは、電動シリンジポンプ19から空気を連続して噴出することによって、気泡を発生させながら攪拌を行う。
【0156】
このようにして、第1の溶血剤の流動および撹拌の工程(ステップS1)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第1の溶血剤の流動および撹拌の工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報はICチップ25の記憶部に記憶される。
【0157】
次に、ステップS2において、ノズル入口3b,3kのみを開にして、ステップS1と同様の原理でチャンバ5b内の第2の溶血剤をチャンバ7に流し込む。そして、ステップS1と同様の攪拌を行う。
【0158】
このようにして第2の溶血剤の流動および撹拌の工程(ステップS2)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第2の溶血剤の流動および撹拌の工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報はICチップ25の記憶部に記憶される。
【0159】
さらに、ステップS3において、ノズル入口3c,3kのみを開にして、ステップS1,S2と同様の原理でチャンバ5c内の磁性体粒子をチャンバ7に流し込む。そして、ステップS1と同様の攪拌を行う。このステップS3によって、ステップS1,S2にて細胞が溶解して得られたDNAが磁性体粒子に付着する。
【0160】
このようにして磁性体粒子の流動および撹拌の工程(ステップS3)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、磁性体粒子の流動および撹拌の工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報はICチップ25の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0161】
そして、ステップS4で電磁石14をオンにし、ノズル入口3e,3kのみを開にし、電動シリンジポンプ19から空気を噴出し、電動シリンジポンプ18から空気を吸引して、チャンバ7内の溶液をチャンバ5eに移動させる。この移動の際に、磁性体粒子およびDNAを、流路10の電磁石14の上方位置で捕捉する。なお、電動シリンジポンプ18,19による空気の吸引および噴出を交互に繰り返して、溶液をチャンバ7と5eの間を2回往復させることにより、DNAの捕捉効率を向上させている。さらに往復回数を増やせば、捕捉効率を一層高めることができる。ただし、処理時間が余分に掛かることになる。
【0162】
このように、ステップS1〜S4にて、幅1〜2mm程度で高さ0.2〜1mm程度の小さい流路10上で、流動状態のDNAを、磁性体粒子を利用して極めて効率良く捕捉する。なお、仮に、捕捉ターゲット物質がDNAではなく、RNAまたはタンパク質の場合にも同様に効率の良い捕捉が行える。
【0163】
上述のようにして磁性体粒子およびDNAの捕捉工程(ステップS4)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、磁性体粒子およびDNAの捕捉工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0164】
次に、ステップS5において電磁石14をオフにし、ノズル入口3f,3lのみを開とする。そして、電動シリンジポンプ19から空気を噴出し、電動シリンジポンプ18から空気を吸引して、チャンバ5l内の第1の抽出洗浄液をチャンバ5fに移動させる。この際に、ステップS4で捕捉された磁性体粒子およびDNAが、抽出洗浄液と共に移動して洗浄が行われる。さらに、電磁石14をオンにして、ステップS4と同様の原理で磁性体粒子およびDNAと抽出洗浄液とをチャンバ5l内とチャンバ5fの間を2回往復させる。それによって、洗浄された磁性体粒子およびDNAを流路10の電磁石14の上方位置に回収し、第1の抽出洗浄液をチャンバ5lに戻す。
【0165】
このように、第1の抽出洗浄液により洗浄した後に磁性体粒子およびDNAを捕捉する工程(ステップS5)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第1の抽出洗浄液により洗浄した後に磁性体粒子およびDNAを捕捉する工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0166】
ステップS6において、ノズル入口3f,3mのみを開いてステップS5と同様の工程を行う。すなわち、チャンバ5m内の第2の抽出洗浄液と、磁性体粒子およびDNAとを移動させて、磁性体粒子およびDNAをさらに洗浄してから電磁石14の上方位置に回収し、第2の抽出洗浄液をチャンバ5mに戻す。
【0167】
このように、第2の抽出洗浄液により洗浄した後に磁性体粒子およびDNAを捕捉する工程(ステップS6)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第2の抽出洗浄液により洗浄した後に磁性体粒子およびDNAを捕捉する工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0168】
続いて、ステップS7において電磁石14をオンにしたまま、ノズル入口3d,3oのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引する。それによって、チャンバ5d内の溶出液をチャンバ8に移動させる。この溶出液の作用によって、磁性体粒子とDNAが分離し、DNAのみが溶出液とともにチャンバ8に移動し、磁性体粒子は流路10内に残る。
【0169】
このようにして、溶出液を流して磁性体粒子とDNAを分離させる工程(ステップS7)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、溶出液を流して磁性体粒子とDNAを分離させる工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0170】
このステップS7において、DNAの抽出および精製が行われる。実施形態では、抽出洗浄液を収容するチャンバ5l,5mと、洗浄後の廃液を溜めるためのチャンバ5fが用意されているので、カートリッジ1内でDNAの抽出および精製を行うことが可能である。
【0171】
次に、ステップS8において、ノズル入口3g,3oのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引する。それによって、チャンバ5g内のPCR用薬剤(例えば、プライマ、ポリメラーゼ、dNTP溶液、バッファ、蛍光標識等の混合液)をチャンバ8に流し込む。さらに、ノズル入口3g,3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18,19による空気の噴出および吸引を交互に繰り返し、チャンバ8の溶液を流路11に流して、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行う。そして、ペルチェ素子15を制御して、チャンバ8内の溶液を96℃の温度に10分保持した後に、96℃・10秒、55℃・10秒、72℃・1分のサイクルを30回繰り返してPCRを行い、溶出されたDNAを増幅する。
【0172】
このようにして、溶出されたDNAの増幅工程(ステップS8)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、溶出されたDNAの増幅工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0173】
ステップS9でノズル入口3g,3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引して、チャンバ8内の溶液をチャンバ9に移動させる。さらに、ペルチェ素子16を制御して、チャンバ9内の溶液を45℃で2時間保持し、ハイブリダイゼーションを行わせる。この時、電動シリンジポンプ18,19による空気の噴出および吸引を交互に繰り返して、チャンバ9内の溶液を流路6tに移動し、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行いながら、ハイブリダイゼーションを進める。
【0174】
このようにして、ハイブリダイゼーション工程(ステップS9)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、ハイブリダイゼーション工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。この例では、チャンバ9がハイブリダイゼーションの反応場になっている。
【0175】
次に、ステップS10において、同じく45℃に保持したまま、今度はノズル入口3h、3rのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引する。それによって、チャンバ9内の溶液をチャンバ5rに移動させるとともに、チャンバ5h内の第1の洗浄液を、チャンバ9を通してチャンバ5rに流し込む。このように、ノズル入口3hにポンプノズル20を挿入し空気を噴出して加圧し、ノズル入口3rにポンプノズル21を挿入し空気を吸引して減圧することによって、チャンバ5h内の第1の洗浄液が、チャンバ9を通してチャンバ5r内に流れ込む。この様子が、チャンバ5h,9,5rを通る断面図である図26に示されている。電動シリンジポンプ18,19の吸引および噴出を交互に繰り返して、この溶液をチャンバ5h,9,5rの間を2回往復させ、最後にチャンバ5hに戻す。このようにして、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光標識付きの検体DNAと蛍光標識とが洗浄される。
【0176】
このようにして、第1の洗浄液による洗浄工程(ステップS10)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第1の洗浄工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0177】
さらに、ステップS11において、同じく45℃に保持したまま、ノズル入口3j、3rのみを開いて、ステップS10と同様の工程を行う。すなわち、チャンバ5j内の第2の洗浄液をチャンバ9を通してチャンバ5rに流し込んでDNAの洗浄をさらに行い、最後に溶液をチャンバ5jに戻す。
【0178】
このようにして、第2の洗浄液による洗浄工程(ステップS11)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、第2の洗浄液による洗浄工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0179】
本実施形態では、第1、第2の洗浄液を収容するチャンバ5h,5jと、洗浄後の廃液を溜めるためのチャンバ5rが用意されているので、前記の通り生化学反応カートリッジ1内でDNAチップ12の洗浄を行うことが可能である。
【0180】
ステップS12で、ノズル入口3i,3rのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引して、チャンバ5i内のアルコールを、チャンバ9を通してチャンバ5rに移動させる。その後に、ノズル入口3i,3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引してチャンバ9内を乾燥させる。
【0181】
このようにして、アルコールの流動および乾燥の工程(ステップS12)を行った後、通信部26からICチップ25の通信部に向けて信号を送信する。この信号は、アルコールの流動および乾燥の工程の完了と、その工程の各種条件と、終了時刻とを表すものであり、それらの情報がICチップ25の記憶部に記憶される。
【0182】
以上述べたステップS1〜S12によって、検体の生化学反応(例えばDNAのハイブリダイゼーション)を生化学反応カートリッジ1内で行わせることができる。
【0183】
なお、本実施形態では、ノズル入口3a〜3tがカートリッジ1の2つの面、つまり両側部に集中して設けられている。そのため、電動シリンジポンプ18,19、電動切換バルブ、ポンプノズルを内蔵したポンプブロック22,23等の形状や配置を単純化することができる。さらに、必要なチャンバや流路を確保しながら、ポンプブロック22,23により生化学反応カートリッジ1を同時に挟み込むという単純な動作だけで、ポンプノズル20,21を挿入することができる。それによって、ポンプブロック22,23の構成も簡単にすることができる。また、ノズル入口3a〜3tを全て同じ高さに直線的に並ぶように配置することによって、ノズル入口3a〜3tに接続される流路4a〜4tの高さは全て同じになり、流路4a〜4tの作製が容易になる。
【0184】
また、図1に示す生化学反応分析装置の処理装置において、n個の生化学反応カートリッジ1を同時に使用できるようにポンプブロック22,23をn倍に長くした構成にすることができる。その場合、n個の生化学反応カートリッジ1を直列に並べて、n個の生化学反応カートリッジ1のそれぞれに対して必要な工程を同時に行うことができる。したがって、構成は極めて簡単でありながら、多数の生化学反応カートリッジにおいて同時に生化学反応を行わせることが可能である。
【0185】
以上説明した処理工程(ステップS1〜S12)の後に、ステップS13において、検査者が図示しないレバーを操作して、ポンプブロック22,23を生化学反応カートリッジ1から離れる方向に移動させる。それによって、ポンプノズル20,21が生化学反応カートリッジ1のノズル入口3a〜3tから外れる。そして、ステップS14において、カートリッジ搬送部27を用いて、生化学反応カートリッジ1をテーブル13から検出部28に搬送する。ステップS15において、DNAチップ12に捕捉された、ハイブリダイゼーションされたDNAを蛍光検出ユニット30によって検出する。検出結果は、通信部31からICチップ25の通信部に向けて送信され、ICチップ25の記憶部に記憶される。こうして、ステップS1〜S12の各工程の(時間経過を含む)推移および各種条件と、その各工程を経たDNAチップ12の検出結果とが、生化学反応カートリッジ1のICチップ25に記憶される。この蛍光検出工程(ステップS15)の詳細については前述の通りである。
【0186】
最後に、ステップS16において、制御部17が、蛍光検出したパターンを分析する。なお、生化学反応カートリッジ1が、予め処理装置に記憶されていない種別である場合には、検出パターンの分析にあたって、ICチップ25に書き込まれている分析用情報を読み込み、その分析用情報に基づいて分析を行う。
【0187】
ここで、本実施形態における蛍光検出と分析の原理について説明する。例えば、生化学反応カートリッジ1およびDNAチップ12が感染症検出用のものである場合には、DNAプローブ37の設定の仕方によって、いくつかの感染症を一度に検出できる。DNAプローブ37が5×5のマトリックス状に配置されたDNAチップ12を例にとって考えると、感染症A〜Eがそれぞれ単独で検出されたときのパターンが図27(a)〜(e)に示す5通りとなるように設定できる。なお、図27(a)〜(e)において、黒丸は、ターゲットがDNAプローブ37とハイブリダイゼーションして捕捉されており、ターゲットに付着した蛍光物質(蛍光標識)が蛍光を発している状態を示す。白丸は、ターゲットがDNAプローブ37とハイブリダイゼーションせず捕捉されずに、蛍光標識が存在しない状態を示す。
【0188】
図27(a)〜(e)に示す例では、同一列に含まれるDNAプローブ37は全て、同じ感染症に感染したときに存在するDNAとハイブリダイゼーションするように設定されている。そして、列毎に異なる感染症のDNAに対応するように設定されている。従って、図27(a)のパターンの検出結果が得られた場合には、感染症Aへの感染が認められる。同様に、図27(b)〜(e)のパターンの検出結果が得られた場合には、それぞれ感染症B〜Eへの感染が認められる。このような検出パターンに基づく感染判断方法は、制御部17に予め記憶されている分析用情報に含まれている。
【0189】
このように、蛍光物質が付着したDNAプローブ37の配列パターンに基づいて、目的とする検体分析を精度良く行うためには、ステップS15において、蛍光検出を精度良く行うことが重要である。
【0190】
(第2の実施形態)
図28は、本発明の第2の実施形態である生化学反応分析装置に用いられる清掃部の概略構成を示す模式図である。本実施形態の生化学反応分析装置は、清掃部が異なる以外は、第1の実施形態の生化学反応分析装置と同様のものである。
【0191】
図28を参照すると、清掃部は、送風口201を備えた送風機200よりなる。送風機200は、送風口201から送り出された圧縮空気が撮像素子39のセンサー部にあたるように、検出ユニットに組み込まれている。第1の実施形態で説明した動作の流れ(図4、図12および図20参照)の中で、清掃処理にこの送風機200を用いる。送風口201から噴出された圧縮空気が撮像素子39のセンサー部にあることで、付着物を吹き飛ばすことができる。
【0192】
(第3の実施形態)
図29は、本発明の第3の実施形態である生化学反応分析装置に用いられる清掃部の概略構成を示す模式図である。本実施形態の生化学反応分析装置は、清掃部が異なる以外は、第1の実施形態の生化学反応分析装置と同様のものである。
【0193】
図29を参照すると、清掃部は、静電気吸着用のワイパー54よりなり、検出ユニットに組み込まれている。ワイパー54は、ワイパー部54の一端を支持する支持部と、この支持部を一方向に往復移動させるためのガイド部とを有する。ガイド部の一端にワイパー待機エリア54bが設けられている。支持部がガイド部に沿って移動することで、ワイパー部54は、撮像素子39のセンサー部(受光面)上を平行移動する。
【0194】
図30は、ワイパー54の制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置は、静電気吸着用ワイパー制御部51、埃位置記憶部52、ワイパー駆動部53、静電気発生部55および静電気保持部材移動部56を有する。
【0195】
静電気吸着用ワイパー制御部51は、静電気吸着用のワイパー54の動作全体を制御する。検出制御部43が得ている埃の位置情報が、検出制御部43から静電気吸着用ワイパー制御部51に転送される。静電気吸着用ワイパー制御部51は、検出制御部43から供給された埃の位置情報を埃位置記憶部52に格納する。ワイパー駆動部53は、支持部をガイド部に沿って移動させる。静電気発生部55は、静電気を発生する。静電気発生部55で発生した静電気は静電気保持部材に保持される。
【0196】
静電気吸着用ワイパー制御部51からの指示により、静電気保持部材移動部56が、ワイパー待機エリア54bにおいて、静電気を保持した状態の静電気保持部材をワイパー部54aに詰め込む。静電気保持部材が詰め込まれたワイパー部54aは、先端から付け根までが静電気を保持した状態となる。ワイパー54がワイパー駆動部53によって駆動されることで、ワイパー部54aが撮像素子39の受光面上を平行移動する。この移動工程において、ワイパー部54aが、静電気により受光面上の埃を吸着する。
【0197】
静電気吸着用ワイパー制御部51は、埃位置記憶部52に記憶されている埃位置情報に基づいて清掃領域を決定する。そして、静電気吸着用ワイパー制御部51は、清掃領域をワイパー部54aで清掃するようにワイパー54における清掃動作を制御する。清掃終了後、ワイパー54は、ワイパー待機エリア54bに戻る。そして、静電気吸着用ワイパー制御部51は、静電気保持部材移動部56を動作させ、静電気保持部材を静電気発生部55に戻す。その際に、静電吸着した埃は静電気保持部材から取り除かれる。
【0198】
このように、静電気吸着用ワイパー制御部51は、検出制御部43からの埃の位置情報に基づいて、撮像素子39のセンサー部(受光面)上における付着物の領域を特定し、その領域に対して、ワイパーによる清掃処理を重点的に行う、といった制御を行う。この制御により、付着物をより確実に取り除くことが可能になり、付着物除去に要する時間も短くなる、といった効果が得られる。第1の実施形態で説明した動作の流れ(図4、図12および図20参照)の中で、清掃処理にこのワイパー54による付着物除去を用いる。
【0199】
以上説明した本発明によれば、受光面(赤外吸収ガラスやローパスフィルタなどの光学素子を含む)上の付着物を取り除くことで、付着物の影響のない検査画像を作成することができるので、蛍光検出を正確に行うことができる。
【0200】
また、撮像素子の受光面上に付着物がある場合、付着物が蛍光検出に影響を与えるか否かは、付着物とスポットとの位置関係によって決まる。すなわち、撮像素子の受光面上に付着物があっても、付着物が蛍光検出(スポットの撮影)に影響を与えない場合は、清掃動作を行う必要はない。検査画像のための本撮影を行う前に毎回、清掃動作を行うことは、蛍光検出処理時間の短縮という観点からすると、あまり好ましくない。本発明によれば、付着物が蛍光検出(スポットの撮影)に影響を与える場合にのみ、清掃動作を行うので、蛍光検出処理時間の短縮化を図ることが可能である。
【0201】
以上説明した各実施形態は、本発明の一例であり、その構成および動作は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】本発明の第1の実施形態である生化学反応分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す生化学反応分析装置の蛍光検出ユニットを示すブロック図である。
【図3】図2に示す蛍光検出ユニットの清掃部を示す模式図である。
【図4】図2に示す蛍光検出ユニットにて行われる第1の蛍光検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す第1の蛍光検出処理における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【図6】DNAチップの構成を示す模式図である。
【図7】マーカー検出時に得られる画像を示す模式図である。
【図8】図2に示す蛍光検出ユニットにおけるマーカー検出動作を示すフローチャートである。
【図9】図2に示す蛍光検出ユニットにおける埃撮影動作を示すフローチャートである。
【図10】図2に示す蛍光検出ユニットにおけるマイクロアレイ撮影動作を示すフローチャートである。
【図11】図2に示す蛍光検出ユニットにおける埃清掃動作を示すフローチャートである。
【図12】図2に示す蛍光検出ユニットにて行われる第2の蛍光検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】図12に示す第2の蛍光検出処理における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【図14】第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最小埃間隔を示す模式図である。
【図15】第1のスポットエリアのスポットを第2のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最大埃間隔を示す模式図である。
【図16】第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最小埃間隔を示す模式図である。
【図17】第1のスポットエリアのスポットを第3のスポットエリアのスポットで補完する場合の、埃がスポットに影響を与える最大埃間隔を示す模式図である。
【図18】埃とスポットの重なり具合に応じた判定結果を説明するための図である。
【図19】テンプレートおよび埃画像を含む検出エリアを示す模式図である。
【図20】図2に示す蛍光検出ユニットにて行われる第3の蛍光検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図21】図20に示す第3の蛍光検出処理における付着物とスポットエリアの位置関係を説明するための図である。
【図22】図1に示す生化学反応分析装置の生化学反応カートリッジの斜視図である。
【図23】図22に示す生化学反応カートリッジの平面断面図である。
【図24】図1に示す生化学反応分析装置における処理工程を示すフローチャートである。
【図25】図22に示す生化学反応カートリッジのチャンバの一部の縦断面図である。
【図26】図22に示す生化学反応カートリッジの他のチャンバの縦断面図である。
【図27】DNAチップの蛍光物質検出パターンの例を示す模式図である。
【図28】本発明の第2の実施形態である生化学反応分析装置の蛍光検出ユニットの清掃部の構成を示す模式図である。
【図29】本発明の第3の実施形態である生化学反応分析装置の蛍光検出ユニットの清掃部の構成を示す模式図である。
【図30】図29に示す清掃部の制御装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0203】
1 生化学反応カートリッジ
32 レーザー光源
33 レーザーシャッター
34 ビームエクスパンダー
35 ビームホモジナイザー
36 蛍光フィルタ
37 可変絞り
38 撮像レンズ群
39 撮像素子
40 シャッター
41 撮像部
42 清掃部
43 検出制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面を備え、基板面上に形成された複数のスポットからなる少なくとも1つのスポットエリアを前記受光面にて撮像する撮像素子と、
前記受光面上に付着した付着物を取り除くための清掃部と、を有する撮像装置。
【請求項2】
前記複数のスポットについての検査画像のための本撮影を行う前に、前記撮像素子で前記付着物を撮像して得られる撮影画像に基づいて前記受光面上の前記付着物を検出する検出制御部をさらに有し、
前記検出制御部は、前記撮像素子から出力される撮影画像上における前記複数のスポットと検出した前記付着物との位置関係に基づいて、前記付着物が前記複数のスポットの撮影に影響するか否かを判定し、前記付着物の影響がある場合に、前記清掃部による前記受光面の清掃を行わせる、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記検出制御部は、前記スポットエリアの数が1つである場合で、前記付着物が前記複数のスポットのいずれかと重なる場合に、前記清掃部に前記受光面の清掃を行わせる、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記スポットエリアは、当該スポットエリアを構成するスポットの位置を特定するための基準指標を有し、
前記検出制御部は、前記撮像素子で前記基準指標を撮像して得られる撮影画像に基づいて、前記複数のスポットのそれぞれの位置を特定し、該位置と検出した前記付着物との相対的な位置関係に基づいて、前記付着物が前記複数のスポットの撮影に影響するか否かを判定する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記検出制御部は、前記撮影画像上における前記スポットエリアに対応する仮想スポットエリアを想定し、該仮想スポットエリアと検出した前記付着物との相対的な位置関係に基づいて、前記付着物が前記複数のスポットの撮影に影響するか否かを判定する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記検出制御部は、前記スポットエリアについて、前記撮影画像上における前記複数のスポットの配置を規定したテンプレートを作成し、該テンプレートを、前記撮像素子で前記付着物を撮像して得られる撮影画像に重ね、該撮影画像上における前記テンプレートの位置を一定の距離ごとに変化させ、各位置における前記複数のスポットと前記付着物との位置関係に基づいて、前記付着物が前記複数のスポットの撮影に影響するか否かを判定する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記検出制御部は、前記スポットエリアの数が複数である場合で、該複数のスポットエリアの中に前記付着物が前記複数のスポットのいずれとも重ならない有効スポットエリアがない場合に、前記清掃部に前記受光面の清掃を行わせる、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数のスポットエリアのそれぞれは、当該スポットエリアを構成するスポットの位置を特定するための基準指標を有し、
前記検出制御部は、前記撮像素子で前記基準指標を撮像して得られる撮影画像に基づいて、前記複数のスポットエリアについて、前記複数のスポットのそれぞれの位置を特定する、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記検出制御部は、前記撮影画像上における前記複数のスポットエリアに対応する複数の仮想スポットエリアを想定し、これら仮想スポットエリアと前記撮影画像上における前記付着物との相対的な位置関係に基づいて前記有効スポットエリアを判定する、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記複数のスポットエリアは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に配置された第1および第2のスポットエリアからなり、
エリア間隔をA、スポットの直径をS、前記第1のスポットエリアに位置する第1の付着物の半径をD1、前記第2のスポットエリアに位置する第2の付着物の半径をD2とするとき、前記第1および第2の付着物が前記第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えることになる最小埃間隔dminが、
dmin=A−S−D1−D2
で与えられ、
前記検出制御部は、前記第1および第2の付着物の間隔が前記最小埃間隔dminより小さいときに、前記第1および第2の付着物が前記第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記複数のスポットエリアは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に配置された第1および第2のスポットエリアからなり、
エリア間隔をA、スポットの直径をS、前記第1のスポットエリアに位置する第1の付着物の半径をD1、前記第2のスポットエリアに位置する第2の付着物の半径をD2とするとき、前記第1および第2の付着物が前記第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えることになる最大埃間隔dmaxが、
dmax=A+S+D1+D2
で与えられ、
前記検出制御部は、前記第1および第2の付着物の間隔が前記最大埃間隔dmaxより大きいときに、前記第1および第2の付着物が前記第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記複数のスポットエリアは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に沿って等間隔に配置された第1から第3のスポットエリアからなり、
エリア間隔をA、スポットの直径をS、前記第1のスポットエリアに位置する第1の付着物の半径をD1、前記第3のスポットエリアに位置する第2の付着物の半径をD2とするとき、前記第1および第2の付着物が前記第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えることになる最小埃間隔dminが、
dmin=A×2−S−D1−D2
で与えられ、
前記検出制御部は、前記第1および第2の付着物の間隔が前記最小埃間隔dminより小さいときに、前記第1および第2の付着物が前記第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記複数のスポットエリアは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に沿って等間隔に配置された第1から第3のスポットエリアからなり、
エリア間隔をA、スポットの直径をS、前記第1のスポットエリアに位置する第1の付着物の半径をD1、前記第3のスポットエリアに位置する第2の付着物の半径をD2とするとき、前記第1および第2の付着物が前記第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えることになる最大埃間隔dmaxが、
dmax=A×2+S+D1+D2
で与えられ、
前記検出制御部は、前記第1および第2の付着物の間隔が前記最大埃間隔dmaxより大きいときに、前記第1および第2の付着物が前記第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記検出制御部は、前記複数のスポットエリアについて、前記撮影画像上における前記複数のスポットの配置を規定したテンプレートを作成し、該テンプレートを、前記撮像素子で前記付着物を撮像して得られる撮影画像に重ね、該撮影画像上における前記テンプレートの位置を一定の距離ごとに変化させ、各位置における前記複数のスポットと前記付着物との位置関係に基づいて前記有効スポットエリアを判定する、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記清掃部は、
前記撮像素子の受光面上に設けられた光学素子を振動させるための振動部と、
前記振動部を駆動する駆動部と、を有する、請求項1から14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記清掃部は、送風口を備えた送風機よりなり、該送風機は、前記送風口から送り出された圧縮空気が前記撮像素子の受光面に当たるように配置されている、請求項1から14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記清掃部は、静電気吸着が可能な棒状のワイパー部が前記撮像素子の受光面上を平行移動するワイパーを有する、請求項1から14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記清掃部は、
前記ワイパーによる清掃動作を制御するワイパー制御部と、
前記受光面上の前記付着物の位置を示す位置情報が格納される記憶部と、を有し、
前記ワイパー制御部は、前記記憶部に格納された位置情報に基づいて前記受光面上の清掃領域を決定し、該清掃領域を前記ワイパーにより清掃させる、請求項17に記載の撮像装置。
【請求項1】
受光面を備え、基板面上に形成された複数のスポットからなる少なくとも1つのスポットエリアを前記受光面にて撮像する撮像素子と、
前記受光面上に付着した付着物を取り除くための清掃部と、を有する撮像装置。
【請求項2】
前記複数のスポットについての検査画像のための本撮影を行う前に、前記撮像素子で前記付着物を撮像して得られる撮影画像に基づいて前記受光面上の前記付着物を検出する検出制御部をさらに有し、
前記検出制御部は、前記撮像素子から出力される撮影画像上における前記複数のスポットと検出した前記付着物との位置関係に基づいて、前記付着物が前記複数のスポットの撮影に影響するか否かを判定し、前記付着物の影響がある場合に、前記清掃部による前記受光面の清掃を行わせる、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記検出制御部は、前記スポットエリアの数が1つである場合で、前記付着物が前記複数のスポットのいずれかと重なる場合に、前記清掃部に前記受光面の清掃を行わせる、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記スポットエリアは、当該スポットエリアを構成するスポットの位置を特定するための基準指標を有し、
前記検出制御部は、前記撮像素子で前記基準指標を撮像して得られる撮影画像に基づいて、前記複数のスポットのそれぞれの位置を特定し、該位置と検出した前記付着物との相対的な位置関係に基づいて、前記付着物が前記複数のスポットの撮影に影響するか否かを判定する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記検出制御部は、前記撮影画像上における前記スポットエリアに対応する仮想スポットエリアを想定し、該仮想スポットエリアと検出した前記付着物との相対的な位置関係に基づいて、前記付着物が前記複数のスポットの撮影に影響するか否かを判定する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記検出制御部は、前記スポットエリアについて、前記撮影画像上における前記複数のスポットの配置を規定したテンプレートを作成し、該テンプレートを、前記撮像素子で前記付着物を撮像して得られる撮影画像に重ね、該撮影画像上における前記テンプレートの位置を一定の距離ごとに変化させ、各位置における前記複数のスポットと前記付着物との位置関係に基づいて、前記付着物が前記複数のスポットの撮影に影響するか否かを判定する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記検出制御部は、前記スポットエリアの数が複数である場合で、該複数のスポットエリアの中に前記付着物が前記複数のスポットのいずれとも重ならない有効スポットエリアがない場合に、前記清掃部に前記受光面の清掃を行わせる、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数のスポットエリアのそれぞれは、当該スポットエリアを構成するスポットの位置を特定するための基準指標を有し、
前記検出制御部は、前記撮像素子で前記基準指標を撮像して得られる撮影画像に基づいて、前記複数のスポットエリアについて、前記複数のスポットのそれぞれの位置を特定する、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記検出制御部は、前記撮影画像上における前記複数のスポットエリアに対応する複数の仮想スポットエリアを想定し、これら仮想スポットエリアと前記撮影画像上における前記付着物との相対的な位置関係に基づいて前記有効スポットエリアを判定する、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記複数のスポットエリアは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に配置された第1および第2のスポットエリアからなり、
エリア間隔をA、スポットの直径をS、前記第1のスポットエリアに位置する第1の付着物の半径をD1、前記第2のスポットエリアに位置する第2の付着物の半径をD2とするとき、前記第1および第2の付着物が前記第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えることになる最小埃間隔dminが、
dmin=A−S−D1−D2
で与えられ、
前記検出制御部は、前記第1および第2の付着物の間隔が前記最小埃間隔dminより小さいときに、前記第1および第2の付着物が前記第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記複数のスポットエリアは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に配置された第1および第2のスポットエリアからなり、
エリア間隔をA、スポットの直径をS、前記第1のスポットエリアに位置する第1の付着物の半径をD1、前記第2のスポットエリアに位置する第2の付着物の半径をD2とするとき、前記第1および第2の付着物が前記第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えることになる最大埃間隔dmaxが、
dmax=A+S+D1+D2
で与えられ、
前記検出制御部は、前記第1および第2の付着物の間隔が前記最大埃間隔dmaxより大きいときに、前記第1および第2の付着物が前記第1および第2のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記複数のスポットエリアは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に沿って等間隔に配置された第1から第3のスポットエリアからなり、
エリア間隔をA、スポットの直径をS、前記第1のスポットエリアに位置する第1の付着物の半径をD1、前記第3のスポットエリアに位置する第2の付着物の半径をD2とするとき、前記第1および第2の付着物が前記第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えることになる最小埃間隔dminが、
dmin=A×2−S−D1−D2
で与えられ、
前記検出制御部は、前記第1および第2の付着物の間隔が前記最小埃間隔dminより小さいときに、前記第1および第2の付着物が前記第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記複数のスポットエリアは、スポットの並び方向が同じで、該並び方向に沿って等間隔に配置された第1から第3のスポットエリアからなり、
エリア間隔をA、スポットの直径をS、前記第1のスポットエリアに位置する第1の付着物の半径をD1、前記第3のスポットエリアに位置する第2の付着物の半径をD2とするとき、前記第1および第2の付着物が前記第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えることになる最大埃間隔dmaxが、
dmax=A×2+S+D1+D2
で与えられ、
前記検出制御部は、前記第1および第2の付着物の間隔が前記最大埃間隔dmaxより大きいときに、前記第1および第2の付着物が前記第1および第3のスポットエリアの間で対応するスポットに影響を与えないと判定する、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記検出制御部は、前記複数のスポットエリアについて、前記撮影画像上における前記複数のスポットの配置を規定したテンプレートを作成し、該テンプレートを、前記撮像素子で前記付着物を撮像して得られる撮影画像に重ね、該撮影画像上における前記テンプレートの位置を一定の距離ごとに変化させ、各位置における前記複数のスポットと前記付着物との位置関係に基づいて前記有効スポットエリアを判定する、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記清掃部は、
前記撮像素子の受光面上に設けられた光学素子を振動させるための振動部と、
前記振動部を駆動する駆動部と、を有する、請求項1から14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記清掃部は、送風口を備えた送風機よりなり、該送風機は、前記送風口から送り出された圧縮空気が前記撮像素子の受光面に当たるように配置されている、請求項1から14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記清掃部は、静電気吸着が可能な棒状のワイパー部が前記撮像素子の受光面上を平行移動するワイパーを有する、請求項1から14のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記清掃部は、
前記ワイパーによる清掃動作を制御するワイパー制御部と、
前記受光面上の前記付着物の位置を示す位置情報が格納される記憶部と、を有し、
前記ワイパー制御部は、前記記憶部に格納された位置情報に基づいて前記受光面上の清掃領域を決定し、該清掃領域を前記ワイパーにより清掃させる、請求項17に記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2008−292283(P2008−292283A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137879(P2007−137879)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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