説明

撮影装置

【課題】コストの上昇を招くことなく、盗撮行為を防止することのできる撮影装置を得る。
【解決手段】CPU40により、CCD24による撮影感度が所定感度以上の場合で、かつストロボ44による撮影補助光の発光を禁止する指示情報が入力された場合、他の場合に比較して、撮影によって得られる画像の品質を低下させる制御(例えば、AF機能による合焦距離を強制的に無限遠とする制御、AF機能による合焦距離を強制的に近接撮影時の距離とする制御、AE機能による露出状態を被写体の明るさに応じた実際の状態からずらす制御等)を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置に係り、特に、被写体に向けて撮影補助光を射出する機能を有する撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD(Charge Coupled Device)エリアセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージ・センサ等の固体撮像素子の高解像度化に伴い、デジタル電子スチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant,携帯情報端末)等の撮影機能を有する情報機器の需要が急増している。なお、以上のような撮影機能を有する情報機器をデジタルカメラと総称する。
【0003】
また、このようなデジタルカメラや銀塩写真式カメラ等の撮影装置には、被写体が暗い場合に対処するためにストロボを内蔵したものや、自動合焦機能等を実現するためにタリーランプを内蔵したもの等、被写体方向に向けて撮影補助光を射出するように構成されているものが多い。
【0004】
ところで、近年の撮影装置の小型化及び高感度化に伴い、撮影装置を用いた盗撮行為の発生する可能性が高まっており、これに対処するために、撮影時に必ずシャッタ音を鳴らす機能や、撮影禁止領域内で発せられている盗撮防止信号を受信した場合に電源をオフする機能等が搭載されている撮影装置がある。
【0005】
また、特許文献1には、CCDカメラ等の撮像手段を備え、盗撮を防止するための機能を有する撮像装置において、該撮像装置は、盗撮防止情報発生装置が発生する予め定められた特徴を有する盗撮防止情報を、撮像画像から得られる画像信号から検出して前記盗撮防止情報が撮像されていることを示す盗撮防止信号を出力する盗撮防止情報検出部を有することを特徴とする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−169175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記シャッタ音を鳴らす機能を設ける技術では、当該シャッタ音を鳴らすことのできるスピーカは撮影装置において必ずしも必須のものではないので、装置本体からスピーカが削除されてしまった場合には、盗撮行為を防止することができない、という問題点があった。
【0007】
また、上記盗撮防止信号を受信した場合に電源をオフする技術では、無線通信機能を有する撮影装置は一般的ではないため、無線通信機能を有しない撮影装置に当該技術を適用する際には無線通信機能を新たに追加しなければならず、コストの上昇を招いてしまう、という問題点があった。
【0008】
更に、上記特許文献1に開示されている技術では、盗撮防止情報発生装置を新たに用意する必要があるため、この技術においてもコストの上昇を招いてしまう、という問題点があった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、コストの上昇を招くことなく、盗撮行為を防止することのできる撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の撮影装置は、被写体に向けて撮影補助光を射出する発光手段と、撮影感度を取得する取得手段と、前記発光手段による前記撮影補助光の発光を禁止する指示情報を入力する入力手段と、前記取得手段により取得された前記撮影感度が所定感度以上の場合で、かつ前記入力手段により前記指示情報が入力された場合、他の場合に比較して、撮影によって得られる画像の品質を低下させる制御を行う制御手段と、を備えている。
【0011】
請求項1に記載の撮影装置は、被写体に向けて撮影補助光を射出する発光手段を有し、取得手段によって撮影感度が取得され、かつ入力手段によって前記発光手段による前記撮影補助光の発光を禁止する指示情報が入力されるものとされている。
【0012】
ここで、本発明では、制御手段により、前記取得手段によって取得された前記撮影感度が所定感度以上の場合で、かつ前記入力手段によって前記指示情報が入力された場合、他の場合に比較して、撮影によって得られる画像の品質を低下させる制御が行われる。
【0013】
すなわち、盗撮を行う場合には、撮影感度を高く設定し、撮影補助光の発光を禁止する場合が多い。そこで、本発明では、この場合に撮影によって得られる画像の品質を強制的に低下させるようにしており、これによって盗撮を行っても低画質の画像しか得られないようにする結果、盗撮行為を防止することができるようにしている。なお、本発明は、従来の技術のような無線通信機能、盗撮防止情報発生装置等の新たな構成要素を必要としないため、コストの上昇を招くこともない。
【0014】
このように、請求項1に記載の撮影装置によれば、撮影感度が所定感度以上の場合で、かつ発光手段による撮影補助光の発光を禁止する指示情報が入力された場合、他の場合に比較して、撮影によって得られる画像の品質を低下させる制御を行っているので、コストの上昇を招くことなく、盗撮行為を防止することができる。
【0015】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記制御手段が、前記画像の品質を低下させる制御として、合焦位置を実際の合焦位置からずらす制御、及び露出状態を被写体の明るさに応じた実際の露出状態からずらす制御の少なくとも一方の制御を行うものとしてもよい。これにより、前記画像の品質を低下させる制御として合焦位置を実際の合焦位置からずらす制御を行う場合には、撮影画像をピントがずれたものとすることができ、前記画像の品質を低下させる制御として露出状態を被写体の明るさに応じた実際の露出状態からずらす制御を行う場合には、撮影画像を暗すぎたり、明るすぎたりするものとすることができる。
【0016】
ところで、盗撮を行う場合でなく、撮影感度を高く設定し、撮影補助光の発光を禁止する場合の撮影対象としては、合焦距離が無限遠となる天体(星)、夜景等や、合焦距離が近接撮影時の距離となる乳幼児、動物等の場合が多い。これに対し、盗撮を行う場合の被写体までの距離は、無限遠及び近接撮影時の距離を除く距離である場合が多い。
【0017】
そこで、請求項2に記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記制御手段が、前記合焦位置を実際の合焦位置からずらす制御を行う場合、実際の被写体までの距離にかかわらず合焦距離が無限遠となる状態か、又は予め定められた近接撮影時の距離となる状態とするように制御するものとしてもよい。これにより、無限遠又は近接撮影時の距離に位置される被写体については良好に撮影することができ、利便性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記制御手段が、前記取得手段により取得された前記撮影感度が所定感度以上の場合で、かつ前記入力手段により前記指示情報が入力されていない場合、予め定められたタイミングで前記撮影補助光を強制的に発光させるように前記発光手段を制御するものとしてもよい。これにより、被写体に対して盗撮が行われていることを容易に認識させることができる結果、より高いレベルで盗撮行為を防止することができる。
【0019】
特に、請求項4に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記予め定められたタイミングを、撮影直前のタイミング、又は撮影時のタイミング、又は撮影直後のタイミングであるものとしてもよい。これにより、前記予め定められたタイミングを撮影直前のタイミングとした場合には、盗撮行為を未然に防止することができ、前記予め定められたタイミングを撮影時のタイミングとした場合には、撮影によって得られる画像の品質を、より低下させることができ、前記予め定められたタイミングを撮影直後のタイミングとした場合には、盗撮ではない撮影を行う場合の短時間での撮影が可能となる結果、シャッタ・チャンスを逃す事態を回避することができる。
【0020】
また、請求項4又は請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記制御手段が、前記撮影補助光を強制的に発光させるように前記発光手段を制御する場合、当該発光を所定期間だけ継続するように制御するものとしてもよい。これにより、被写体に対して盗撮が行われていることを、より確実に認識させることができる。
【0021】
ところで、被写体に人の顔が存在する場合には、盗撮ではなく、通常の撮影を行っている場合が多い。
【0022】
そこで、本発明は、請求項7に記載の発明のように、被写体に人の顔が含まれているか否かを判定する判定手段を更に備え、前記制御手段が、前記判定手段によって人の顔が含まれていないと判定された場合のみ前記制御を行うものとしてもよい。これにより、何らかの理由で撮影感度を高く設定した状態で、人の顔が含まれる被写体に対する撮影を行う場合の当該撮影を支障なく行うことができる。
【0023】
更に、本発明は、請求項8に記載の発明のように、前記発光手段が、ストロボであるものとしてもよい。これにより、近年の撮影装置に一般的に設けられているストロボを利用して本発明を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、撮影感度が所定感度以上の場合で、かつ発光手段による撮影補助光の発光を禁止する指示情報が入力された場合、他の場合に比較して、撮影によって得られる画像の品質を低下させる制御を行っているので、コストの上昇を招くことなく、盗撮行為を防止することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、静止画像の撮影を行うデジタル電子スチルカメラ(以下、「デジタルカメラ」という。)に適用した場合について説明する。
【0026】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本実施の形態に係るデジタルカメラ10の外観上の構成を説明する。
【0027】
デジタルカメラ10の正面には、被写体像を結像させるためのレンズ21と、撮影時に必要に応じて被写体に照射する光(撮影補助光)を発するストロボ44と、撮影する被写体の構図を決定するために用いられるファインダ20と、が備えられている。また、デジタルカメラ10の上面には、撮影を実行する際に押圧操作されるレリーズスイッチ(所謂シャッター)56Aと、電源スイッチ56Bと、モード切替スイッチ56Cと、が備えられている。
【0028】
なお、本実施の形態に係るデジタルカメラ10のレリーズスイッチ56Aは、中間位置まで押下される状態(以下、「半押し状態」という。)と、当該中間位置を超えた最終押下位置まで押下される状態(以下、「全押し状態」という。)と、の2段階の押圧操作が検出可能に構成されている。
【0029】
そして、デジタルカメラ10では、レリーズスイッチ56Aを半押し状態にすることによりAE(Automatic Exposure、自動露出)機能が働いて露出状態(シャッタースピード、絞りの状態)が設定された後、AF(Auto Focus、自動合焦)機能が働いて合焦制御され、その後、引き続き全押し状態にすると露光(撮影)が行われる。
【0030】
また、モード切替スイッチ56Cは、撮影を行うモードである撮影モード及び被写体像を後述するLCD38に再生するモードである再生モードの何れかのモードに設定する際に回転操作される。
【0031】
一方、デジタルカメラ10の背面には、前述のファインダ20の接眼部と、撮影された被写体像やメニュー画面等を表示する液晶ディスプレイ(以下、「LCD」という。)38と、十字カーソルスイッチ56Dと、が備えられている。なお、十字カーソルスイッチ56Dは、LCD38の表示領域における上・下・左・右の4方向の移動方向を示す4つの矢印キーを含んで構成されている。
【0032】
更に、デジタルカメラ10の背面には、LCD38にメニュー画面を表示させるときに押圧操作されるメニュースイッチと、それまでの操作内容を確定するときに押圧操作される決定スイッチと、直前の操作内容をキャンセルするときに押圧操作されるキャンセルスイッチとが備えられている。
【0033】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係るデジタルカメラ10の電気系の要部構成を説明する。
【0034】
デジタルカメラ10は、前述のレンズ21を含んで構成された光学ユニット22と、レンズ21の光軸後方に配設された電荷結合素子(以下、「CCD」という。)24と、入力されたアナログ信号に対して各種のアナログ信号処理を行うアナログ信号処理部26と、を含んで構成されている。
【0035】
また、デジタルカメラ10は、入力されたアナログ信号をデジタルデータに変換するアナログ/デジタル変換器(以下、「ADC」という。)28と、入力されたデジタルデータに対して各種のデジタル信号処理を行うデジタル信号処理部30と、を含んで構成されている。
【0036】
なお、デジタル信号処理部30は、所定容量のラインバッファを内蔵し、入力されたデジタルデータを後述するメモリ48の所定領域に直接記憶させる制御も行う。
【0037】
CCD24の出力端はアナログ信号処理部26の入力端に、アナログ信号処理部26の出力端はADC28の入力端に、ADC28の出力端はデジタル信号処理部30の入力端に、各々接続されている。従って、CCD24から出力された被写体像を示すアナログ信号はアナログ信号処理部26によって所定のアナログ信号処理が施され、ADC28によってデジタル画像データに変換された後にデジタル信号処理部30に入力される。
【0038】
一方、デジタルカメラ10は、被写体像やメニュー画面等をLCD38に表示させるための信号を生成してLCD38に供給するLCDインタフェース36と、デジタルカメラ10全体の動作を司るCPU(中央処理装置)40と、撮影により得られたデジタル画像データ等を一時的に記憶するメモリ48と、メモリ48に対するアクセスの制御を行うメモリインタフェース46と、を含んで構成されている。
【0039】
更に、デジタルカメラ10は、可搬型のメモリカード52をデジタルカメラ10でアクセス可能とするための外部メモリインタフェース50と、デジタル画像データに対する圧縮処理及び伸張処理を行う圧縮・伸張処理回路54と、を含んで構成されている。
【0040】
なお、本実施の形態のデジタルカメラ10では、メモリ48としてフラッシュ・メモリ(Flash Memory)が用いられ、メモリカード52としてスマート・メディア(Smart Media(登録商標))が用いられている。
【0041】
デジタル信号処理部30、LCDインタフェース36、CPU40、メモリインタフェース46、外部メモリインタフェース50及び圧縮・伸張処理回路54はシステムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU40は、デジタル信号処理部30及び圧縮・伸張処理回路54の作動の制御、LCD38に対するLCDインタフェース36を介した各種情報の表示、メモリ48及びメモリカード52へのメモリインタフェース46ないし外部メモリインタフェース50を介したアクセスを各々行うことができる。
【0042】
一方、デジタルカメラ10には、主としてCCD24を駆動させるためのタイミング信号を生成してCCD24に供給するタイミングジェネレータ32が備えられており、CCD24の駆動はCPU40によりタイミングジェネレータ32を介して制御される。
【0043】
更に、デジタルカメラ10にはモータ駆動部34が備えられており、光学ユニット22に備えられた図示しない焦点調整モータ、ズームモータ及び絞り駆動モータの駆動もCPU40によりモータ駆動部34を介して制御される。
【0044】
すなわち、本実施の形態に係るレンズ21は複数枚のレンズを有し、焦点距離の変更(変倍)が可能なズームレンズとして構成されており、図示しないレンズ駆動機構を備えている。このレンズ駆動機構に上記焦点調整モータ、ズームモータ及び絞り駆動モータは含まれるものであり、これらのモータは各々CPU40の制御によりモータ駆動部34から供給された駆動信号によって駆動される。
【0045】
更に、前述のレリーズスイッチ56A、電源スイッチ56B、モード切替スイッチ56C、十字カーソルスイッチ56D、メニュースイッチ等の各種スイッチ(同図では、「操作部56」と総称。)はCPU40に接続されており、CPU40は、これらの操作部56に対する操作状態を常時把握できる。
【0046】
また、デジタルカメラ10には、ストロボ44とCPU40との間に介在されると共に、CPU40の制御によりストロボ44を発光させるための電力を充電する充電部42が備えられている。更に、ストロボ44はCPU40にも接続されており、ストロボ44の発光はCPU40によって制御される。
【0047】
なお、本実施の形態に係るデジタルカメラ10には、CCD24による撮影感度を、予め定められた複数種類(本実施の形態では、ISO100,ISO200,ISO400,ISO800,ISO1600,ISO3200の6種類)から選択的に設定する機能を有している。ここで、デジタルカメラ10では、撮影感度の設定を、メニュースイッチを押圧操作することによりLCD38に表示されるメニュー画面上で行うものとされているが、例えば、撮影感度設定用の専用のスイッチを設けておき、当該スイッチを操作することにより設定する形態等、これに限るものではないことは言うまでもない。
【0048】
また、本実施の形態に係るデジタルカメラ10には、ストロボ44の発光を禁止する発光禁止機能を有している。ここで、デジタルカメラ10では、ストロボ44の発光禁止の設定も、上記メニュー画面上で行うものとされているが、例えば、ストロボ44の発光状態設定用の専用のスイッチを設けておき、当該スイッチを操作することにより設定する形態等、これに限るものではないことも言うまでもない。
【0049】
次に、本実施の形態に係るデジタルカメラ10の撮影時における全体的な動作について簡単に説明する。
【0050】
まず、CCD24は、光学ユニット22を介した撮像を行い、被写体像を示すR(赤)、G(緑)、B(青)毎のアナログ信号をアナログ信号処理部26に順次出力する。アナログ信号処理部26は、CCD24から入力されたアナログ信号に対して相関二重サンプリング処理等のアナログ信号処理を施した後にADC28に順次出力する。
【0051】
ADC28は、アナログ信号処理部26から入力されたR、G、B毎のアナログ信号を各々12ビットのR、G、Bの信号(デジタル画像データ)に変換してデジタル信号処理部30に順次出力する。デジタル信号処理部30は、内蔵しているラインバッファにADC28から順次入力されるデジタル画像データを蓄積して一旦メモリ48の所定領域に直接格納する。
【0052】
メモリ48の所定領域に格納されたデジタル画像データは、CPU40による制御に応じてデジタル信号処理部30により読み出され、所定の物理量に応じたR,G,B毎のデジタルゲインをかけることでホワイトバランス調整を行うと共に、ガンマ処理及びシャープネス処理を行って8ビットのデジタル画像データを生成する。
【0053】
そして、デジタル信号処理部30は、生成した8ビットのデジタル画像データに対しYC信号処理を施して輝度信号Yとクロマ信号Cr、Cb(以下、「YC信号」という。)を生成し、YC信号をメモリ48の上記所定領域とは異なる領域に格納する。
【0054】
なお、LCD38は、CCD24による連続的な撮像によって得られた動画像(スルー画像)を表示してファインダとして使用することができるものとして構成されており、LCD38をファインダとして使用する場合には、生成したYC信号を、LCDインタフェース36を介して順次LCD38に出力する。これによってLCD38にスルー画像が表示されることになる。
【0055】
ここで、レリーズスイッチ56Aがユーザによって半押し状態とされたタイミングで前述のようにAE機能が働いて露出状態が設定された後、AF機能が働いて合焦制御され、その後、引き続き全押し状態とされたタイミングで、その時点でメモリ48に格納されているYC信号を、圧縮・伸張処理回路54によって所定の圧縮形式(本実施の形態では、JPEG形式)で圧縮した後に外部メモリインタフェース50を介してメモリカード52に電子化ファイル(画像ファイル)として記録する。
【0056】
ところで、本実施の形態に係るデジタルカメラ10には、撮影感度として所定感度以上が設定されている場合に盗撮が行われる可能性が他の場合に比較して高いものとして、盗撮防止のための各種施策を実行する盗撮防止機能が搭載されている。
【0057】
次に、図3を参照して、盗撮防止機能を実行する際のデジタルカメラ10の作用を説明する。なお、図3は、撮影モードが設定されており、かつレリーズスイッチ56Aが全押し状態とされたときにデジタルカメラ10のCPU40によって実行される撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ48の所定領域に予め記憶されている。
【0058】
まず、ステップ150では、ユーザによって設定された撮影感度を示す撮影感度情報を取得し、次のステップ152では、取得した撮影感度情報により示される撮影感度が所定感度(本実施の形態では、ISO1600)以上であるか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ154に移行して通常の撮影処理を実行し、その後に本撮影処理プログラムを終了する。
【0059】
一方、上記ステップ152において肯定判定となった場合にはステップ156に移行し、ストロボ44の発光の禁止が設定されているか否かを判定して、肯定判定となった場合はステップ158に移行する。
【0060】
ステップ158では、撮影によって得られる画像の品質を低下させるものとして予め定められた処理を実行し、その後にステップ160に移行する。なお、本実施の形態に係る撮影処理プログラムでは、上記ステップ158において実行される処理として、AF機能による合焦距離を強制的に無限遠とする処理を適用しているが、これに限るものではなく、AF機能による合焦距離を強制的に近接撮影時の距離とする処理、AE機能による露出状態を被写体の明るさに応じた実際の状態からずらす処理(例えば、シャッタースピードを可能な限り遅くし、かつ絞りを可能な限り開く処理、シャッタースピードを可能な限り早くし、かつ絞りを可能な限り閉じる処理等)等の他の処理を適用することもできる。
【0061】
次のステップ160では、予め定められた警告画面をLCD38に表示させ、次のステップ162にて、所定情報の入力待ちを行う。
【0062】
図4には、上記ステップ160の処理によってLCD38に表示される警告画面の一例が示されている。同図に示されるように、本実施の形態に係る撮影処理プログラムでは、当該警告画面として、焦点がずれた状態で撮影が行われる旨のメッセージが表示されると共に、撮影を実行する際に指定される撮影実行ボタンと、撮影を中止する際に指定される撮影中止ボタンが表示される。同図に示されるような警告画面が表示されると、デジタルカメラ10のユーザは、撮影を実行する場合には撮影実行ボタンを、撮影を中止する場合には撮影中止ボタンを、各々十字カーソルスイッチ56D等による操作により指定する。これに応じて、上記ステップ162が肯定判定となってステップ164に移行する。
【0063】
ステップ164では、上記警告画面においてユーザにより指定されたボタンが撮影実行ボタンであったか否かを判定することにより、ユーザによって撮影の実行が指示されたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ174に移行する一方、否定判定となった場合には本撮影処理プログラムを終了する。
【0064】
一方、上記ステップ156において否定判定となった場合にはステップ166に移行して、予め定められたタイミングでストロボ44を強制的に発光させるように設定し、その後にステップ168に移行する。なお、本実施の形態に係る撮影処理プログラムでは、上記予め定められたタイミングとして撮影時のタイミングを適用しているが、これに限らず、撮影直前のタイミングや、撮影直後のタイミングを適用する形態とすることもできる。
【0065】
ステップ168では、予め定められた警告画面をLCD38に表示させ、次のステップ170にて、所定情報の入力待ちを行う。
【0066】
図5には、上記ステップ168の処理によってLCD38に表示される警告画面の一例が示されている。同図に示されるように、本実施の形態に係る撮影処理プログラムでは、当該警告画面として、ストロボが発光する旨のメッセージが表示されると共に、撮影を実行する際に指定される撮影実行ボタンと、撮影を中止する際に指定される撮影中止ボタンが表示される。同図に示されるような警告画面が表示されると、デジタルカメラ10のユーザは、撮影を実行する場合には撮影実行ボタンを、撮影を中止する場合には撮影中止ボタンを、各々十字カーソルスイッチ56D等による操作により指定する。これに応じて、上記ステップ170が肯定判定となってステップ172に移行する。
【0067】
ステップ172では、上記警告画面においてユーザにより指定されたボタンが撮影実行ボタンであったか否かを判定することにより、ユーザによって撮影の実行が指示されたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ174に移行する一方、否定判定となった場合には本撮影処理プログラムを終了する。
【0068】
ステップ174では、以上の処理により、撮影によって得られる画像の品質を低下させる処理が実行されたか、又は予め定められたタイミングでストロボ44を強制的に発光させるように設定された状態下で撮影処理を実行し、その後に本撮影処理プログラムを終了する。
【0069】
なお、本実施の形態に係る撮影処理プログラムでは、上記画像の品質を低下させる処理として、AF機能による合焦距離を強制的に無限遠とする処理を適用しているので、撮影感度として所定感度以上が設定されている場合で、かつストロボ44による発光が禁止されている場合において、合焦距離が無限遠とされる被写体以外の被写体を撮影しようとしても、焦点(ピント)がずれた状態での撮影しか行うことができない。また、本実施の形態に係る撮影処理プログラムでは、撮影感度として所定感度以上が設定されている場合で、かつストロボ44による発光が禁止されていない場合において、撮影を実行する際には、予め定められたタイミング(本実施の形態では、撮影時のタイミング)でストロボ44が強制的に発光されるので、被写体に対して盗撮が行われていることを容易に認識させることができる。
【0070】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、撮影感度が所定感度以上の場合で、かつ発光手段(ここでは、ストロボ44)による撮影補助光の発光を禁止する指示情報が入力された場合、他の場合に比較して、撮影によって得られる画像の品質を低下させる制御を行っているので、コストの上昇を招くことなく、盗撮行為を防止することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、前記画像の品質を低下させる制御として、合焦位置を実際の合焦位置からずらす制御を行っているので、撮影画像をピントがずれたものとすることができる。
【0072】
また、本実施の形態では、前記合焦位置を実際の合焦位置からずらす制御を、実際の被写体までの距離にかかわらず合焦距離が無限遠となる状態とするように制御するものとしているので、合焦位置が無限遠とされる距離に位置される被写体については良好に撮影することができ、利便性を向上させることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、撮影感度が所定感度以上の場合で、かつ前記発光手段による撮影補助光の発光が禁止されていない場合、予め定められたタイミングで前記撮影補助光を強制的に発光させるように前記発光手段を制御しているので、被写体に対して盗撮が行われていることを容易に認識させることができる結果、より高いレベルで盗撮行為を防止することができる。
【0074】
特に、本実施の形態では、前記予め定められたタイミングを、撮影時のタイミングであるものとしているので、撮影によって得られる画像の品質を、より低下させることができる。
【0075】
更に、本実施の形態では、前記発光手段としてストロボを適用しているので、近年の撮影装置に一般的に設けられているストロボを利用して本発明を実現することができる。
【0076】
なお、本実施の形態では、前記撮影補助光を強制的に発光させるように前記発光手段を制御する場合の当該撮影補助光の発光期間については特に言及しなかったが、当該発光を所定期間(一例として、10秒間)だけ継続するように制御してもよい。これにより、被写体に対して盗撮が行われていることを、より確実に認識させることができる。
【0077】
[第2の実施の形態]
本第2の実施の形態では、被写体に人の顔が含まれていない場合に盗撮防止のための施策を実行する場合の形態例について説明する。
【0078】
なお、本第2の実施の形態に係るデジタルカメラ10の構成は、上記第1の実施の形態に係るデジタルカメラ10(図1,図2参照。)と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、本第2の実施の形態に係るデジタルカメラ10の作用も、盗撮防止機能の実行時以外については、上記第1の実施の形態に係るデジタルカメラ10と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0079】
以下、図6を参照して、本第2の実施の形態に係るデジタルカメラ10の盗撮防止機能を実行する際の作用を説明する。なお、図6は、撮影モードが設定されており、かつレリーズスイッチ56Aが全押し状態とされたときに、本第2の実施の形態に係るデジタルカメラ10のCPU40によって実行される撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ48の所定領域に予め記憶されている。また、図6のフローチャートにおける図3と同一の処理を行うステップには、図3と同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0080】
まず、ステップ100では、この時点でメモリ48に記憶されているデジタル画像データを読み出し、次のステップ102にて、読み出したデジタル画像データにより示される被写体像から人の顔の画像を検出する処理を従来既知の顔認識アルゴリズムを用いて実行し、次のステップ104では、上記ステップ102の処理によって人の顔が検出されたか否かを判定することにより、被写体像に当該顔が存在するか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ154に移行する一方、否定判定となった場合にはステップ150に移行する。
【0081】
以上詳細に説明したように、本第2の実施の形態では、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができると共に、被写体に人の顔が含まれているか否かを判定し、人の顔が含まれていないと判定された場合のみ盗撮防止のための施策(撮影によって得られる画像の品質を低下させる施策、又は発光手段を強制的に発光させる施策。)を実行するようにしているので、何らかの理由で撮影感度を高く設定した状態で、人の顔が含まれる被写体に対する撮影を行う場合の当該撮影を支障なく行うことができる。
【0082】
なお、上記各実施の形態では、本発明の発光手段としてストロボを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、AF機能を実現するため等のためにタリーランプを内蔵したカメラにおける当該タリーランプ等の他の発光手段を適用する形態とすることもできる。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0083】
その他、上記各実施の形態に係るデジタルカメラ10の構成(図1,図2参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な構成要素を削除したり、新たな構成要素を追加したり、電気的な接続状態を変更したりすることができることは言うまでもない。
【0084】
また、上記各実施の形態において説明した撮影処理プログラムの処理の流れ(図3,図6参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、各ステップの処理順序の変更、処理内容の変更、不要なステップの削除、新たなステップの追加等を行うことができることは言うまでもない。
【0085】
また、上記各実施の形態において説明した警告画面の表示状態(図4,図5参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0086】
更に、上記各実施の形態では、本発明をデジタル電子スチルカメラに適用した場合について説明したが、本発明は、PDA、携帯電話機、銀塩写真式カメラ等、撮影機能を有する情報機器であれば如何なるものにでも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施の形態に係るデジタルカメラの外観を示す外観図である。
【図2】実施の形態に係るデジタルカメラの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係る撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施の形態に係る警告画面(その1)の表示状態の一例を示す概略図である。
【図5】実施の形態に係る警告画面(その2)の表示状態の一例を示す概略図である。
【図6】第2の実施の形態に係る撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
10 デジタルカメラ
24 CCD
40 CPU(取得手段、制御手段、判定手段)
44 ストロボ(発光手段)
56 操作部(入力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に向けて撮影補助光を射出する発光手段と、
撮影感度を取得する取得手段と、
前記発光手段による前記撮影補助光の発光を禁止する指示情報を入力する入力手段と、
前記取得手段により取得された前記撮影感度が所定感度以上の場合で、かつ前記入力手段により前記指示情報が入力された場合、他の場合に比較して、撮影によって得られる画像の品質を低下させる制御を行う制御手段と、
を備えた撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記画像の品質を低下させる制御として、合焦位置を実際の合焦位置からずらす制御、及び露出状態を被写体の明るさに応じた実際の露出状態からずらす制御の少なくとも一方の制御を行う
請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記合焦位置を実際の合焦位置からずらす制御を行う場合、実際の被写体までの距離にかかわらず合焦距離が無限遠となる状態か、又は予め定められた近接撮影時の距離となる状態とするように制御する
請求項2記載の撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記取得手段により取得された前記撮影感度が所定感度以上の場合で、かつ前記入力手段により前記指示情報が入力されていない場合、予め定められたタイミングで前記撮影補助光を強制的に発光させるように前記発光手段を制御する
請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の撮影装置。
【請求項5】
前記予め定められたタイミングは、撮影直前のタイミング、又は撮影時のタイミング、又は撮影直後のタイミングである
請求項4記載の撮影装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記撮影補助光を強制的に発光させるように前記発光手段を制御する場合、当該発光を所定期間だけ継続するように制御する
請求項4又は請求項5記載の撮影装置。
【請求項7】
被写体に人の顔が含まれているか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記判定手段によって人の顔が含まれていないと判定された場合のみ前記制御を行う
請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の撮影装置。
【請求項8】
前記発光手段は、ストロボである
請求項1乃至請求項7の何れか1項記載の撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−103810(P2008−103810A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282445(P2006−282445)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】